主題歌
- オープニングテーマ:JIKU〜未来戦隊タイムレンジャー〜
Beyond All Space and Time(45話のみ) - エンディングテーマ:時の彼方へ
ミラクル☆Xmas(44話のみ)
ETERNAL WIND(45話のみ)
未来のゆくえ(50話のみ)
Don't Stop Your Story!(51話のみ) - 挿入歌:OK!!タイムロボ
タイムシャドウ〜姿なく、音もなく〜
深紅の同士〜タイムファイヤーのテーマ〜
覚醒!ブイレックスロボ!!
あいたいよ
『タイムレンジャー』は、シリーズで初めてOPの前に「スーパー戦隊シリーズ」のマークが登場するようになった。
そして、歌詞の「go over time & space…」が流れた後、「西暦3000年の未来人達と1人の男が出会った。新しい時を刻むために」というナレーションが入る。
この後、竜也達5人による「未来戦隊タイムレンジャー!」というタイトルコールが流れるが、ここが本作で唯一「未来戦隊」という単語が出る部分になっている。
歌詞の中でも、「未来戦隊」どころか「タイムレンジャー」すら「タイムレンジャー britening hope」という部分にしか入っておらず、OPの歌詞がヒーロー名で終わることの多いスーパー戦隊シリーズにあって、非常に異質なものになっている。
画面構成も特徴的で、当初は、このシリーズお約束である“変身前・変身後・役者”の名前の列記がなく、例えば「TIME RED」という文字が画面左から、「TATSUYA」という役名が画面右から出てきて、ぶつかったところで「永井マサル」という役者名に変わるという表示の仕方で、3つの名前が同時に表示されていなかった。
また、タイムレッドら変身後の姿はブレたような戦闘シーンが流れるのみで、役者の顔も額の前から接写しているような映し方で顔がよく分からないなど、意欲的というよりは奇をてらった画面になっていた。
どうやら歌詞が聞き取りにくいとか画面が見づらいとかいう苦情があったらしく、13話から“変身前・変身後・役者”の名前が列記されるようになり、またシリーズで唯一歌詞テロップが表示されるようになった。
ただし、歌詞テロップは、30話でタイムファイヤーとブイレックスの画像がOPに加わった変更に伴ってなくなった。
EDの方は、未来人4人が街角や公園から突如消えるという“この世界の人ではない”的な画が続き、最後に竜也と一緒に走り出すという流れになっている。
勿論「タイムレンジャー」という単語は出てこず、コーラスで「タイム」というのが入っている程度だ。
ただ、「遙か巡る時の彼方見つめて」という歌詞や、上記の画像など、番組テーマな部分は持っている。
なお、曲調がストップウォッチや柱時計のリズムになっているなんて意見もあるらしい。
基本ストーリー
西暦3000年。
異星人との交流が盛んに行われ、多くの異星人が地球に居住していた。
また、重犯罪者は圧縮冷凍という、縮小されて凍結された状態で、意識を持ったまま完全に自由を奪われるという刑に服するようになっていた。
タイムマシンが発明されて10年が経ったが、開発当初の時間移動実験で30世紀が消滅寸前の危機に瀕するという大事件が起きたため、時間移動は時間保護局によって厳重に管理されていた。
新たに時間保護局に採用された新人レンジャー隊員達がレクチャーを受けている最中、逮捕され圧縮冷凍を受けるためにロンダー刑務所に送られたマフィアのボス:ドン・ドルネロが仲間のギエンと刑務所の施設ごと姿を消すという事件が起きた。
ドルネロは、何らかの方法によって2000年に逃亡したと見られ、直ちに追撃チームが編成されることになった。
リュウヤ隊長の人選により、リュウヤのほかに新人の中からアヤセ、ドモン、シオン、ユウリの4人でチームを組むことになった。
新人ばかりによるチーム編成に時間保護局上層部は難色を示したが、リュウヤの強弁により承認された。
だが、リュウヤらの乗る時間飛行体がタイムゲート(時間移動するための門)に向けて発進しようとした瞬間、ゲートの手前にロンダー刑務所の建物が出現した。
実はドルネロは、最初から時間飛行体の出動を利用して過去へ飛ぶつもりだったのだった。
そして、リュウヤは、時間飛行体の発進を止めようとしたナビゲーションロボ:タックを破壊する。
実は、このリュウヤは、ドルネロファミリーの一員:リラの変身だったのだ。
リラは、2000年に到着すると、ユウリ達4人を拘束し時間飛行体を爆破した。
シオンが修理したタックによって拘束を解かれた4人はなんとか爆死を逃れたものの、爆風に吹き飛ばされて意識を失った。
その頃、リラと合流したドルネロとギエンは、早速資金稼ぎのために銀行強盗などを始めていた。
ユウリ達は、たまたま通りがかったリュウヤそっくりの20世紀の人間:浅見竜也に介抱されて事件を知ったが、緊急システムであるクロノチェンジャーの最初の起動には、規定人数である5人による同時操作が必要だ。
4人は、竜也の協力でクロノチェンジャーを起動し、ドルネロの銀行強盗を最小限の被害で阻止した。
そして、ドルネロは20世紀に来たことを機に、名前をドン・ドルネロファミリーからロンダーズファミリーと改め、ロンダー刑務所に圧縮冷凍されたまま連れて来た囚人を解凍して金稼ぎを始める。
ドルネロは、手始めに、解凍した爆弾魔ジェッカーにビル街に爆弾を仕掛けさせ、身代金を取ることにした。
竜也の父:渡の持つビルも犯行予告にあっていたが、竜也はタイムレンジャーの力で解決できると踏んで、ビルも身代金も守ったら好きなように生きるという賭けを渡に持ちかける。
その頃、竜也に別れを告げた4人に、時間保護局から“ドルネロ達を全員逮捕し、全囚人を確保するまで帰還するな”との命令が届いていた。
4人が20世紀にいることでドルネロ達とのパワーバランスが取れ、歴史が狂わずに済んでいるらしいのだ。
バランスを狂わせる危険があるため、未来からの増員派遣もできない。
絶望する4人に、事情を知った竜也は言う。
「未来は変えられなくたって、自分達の明日くらい変えようぜ」
現地調達の増員ならば、歴史のバランスは崩れない。
再び変身した5人は、タックのデータベースからジェッカーの犯行パターンを分析し、仕掛けられた爆弾を全て除去した。
だが、レッドの攻撃がジェッカーのリバウンド抑制シールを破壊してしまったため、ジェッカーは巨大化してしまう。
タックが緊急システムの発動依頼の連絡をするが反応がない。
どうしようもないかと思われたその時、「緊急システム発動を許可する」という返答があり、5機のタイムジェットが飛来する。
タイムロボαに合体してジェッカーを圧縮冷凍した5人は、ドルネロ達を全員逮捕することを誓った。
だが、緊急システム発動を許可してくれたのは、果たして誰だったのか…?
メンバー
タイムレッド:浅見 竜也(たつや)
ゴーグルと胸の模様の形は逆三角形。
政財界の大物・浅見グループ総帥:浅見渡(わたる)の一人息子で、グループのことを第一にする父に反発して育った。
祖父の影響で幼い頃から空手をやっており、父と、インターハイで優勝できたら好きな大学に進学するという賭けをしていたが、そのせいで浮き足だって決勝で滝沢直人に敗れ、父の言うとおりの大学に進学した。
大学卒業と同時に父から就職先を押しつけられていたところにユウリ達と出会い、再び父と賭けをして勝ち、無理矢理家を出て、以前から用意していた事務所で何でも屋:トゥモローリサーチを開いた。
主な仕事は空手の指導員。
子供の頃から、辛い時にふざけて誤魔化す癖がある。
アヤセの病気を知っているため、心配のあまり逆にチームワークを乱すこともしばしば。
演じた永井マサル(現:永井大)氏は、本作後1年間の休業の後、『マイリトルシェフ』でブレイクした。
タイムピンク:ユウリ
トゥモローリサーチでの主な仕事は、探偵。
元々インターシティ警察のマフィア専門捜査官で、ドルネロファミリーが時間保護局を狙っているとの情報で、潜入捜査のために時間保護局に入局した。
そういう経緯もあって、捜査活動については5人中唯一のプロであり、タイムレンジャーの実質的なリーダーとなっている。
10年前、何者かに両親と妹を殺されており、その事件にドルネロが絡んでいると思われることからドルネロ逮捕に燃えている。
5話『第3の合体』で、犯人がドルネロに依頼されたマッドブラストであることを知り、復讐に狂ってマッドブラストを殺そうとしているふりをして、真相を知ることに成功した。
演じた勝村美香氏は、2006年に『仮面ライダーアギト』でギルス:葦原涼を演じた友井雄亮氏と結婚し、2008年に離婚した。
タイムブルー:アヤセ
ゴーグルと胸の模様の形は逆五角形。
トゥモローリサーチでの仕事は運転代行。
運転免許を取るため、「綾瀬慎之介」という偽の戸籍を作った。
レーシングドライバー志望だったが、30世紀でも不治の病である心臓病:オシリス症候群に罹っていることが分かって断念し、時間保護局に入局した。
死の恐怖を分かっている分、他人の死の危険を放っておけないというのが理由だ。
時々胸が苦しくなる発作が起こるが、病気のことは達也しか知らない。
タイムイエロー:ドモン
ゴーグルと胸の模様の形はしずく型。
トゥモローリサーチでの主な仕事は、護身術の指導員。
自称タイムレンジャーのリーダー。
未来の格闘技:グラップのプロファイターだったが、大きな試合をすっぽかしたため永久追放になって時間保護局に入局した。
プロファイターだけあって極限状態での精神力は強く囚人ゼクターの精神攻撃にも耐えたが、繊細な一面もあり、データ酔いやホームシックになったりもしている。
7話『ドモン入院中』で入院した際、竜也が書類に「土門太郎」と書いたため、20世紀ではその名前で通している。
20話『新たなる絆』では、自分達の知らないところで歴史が狂い始めているのではないかという不安から時間保護局への怒りを仲間にぶつけたりと、実は精神的に一番脆い気がする。
また、人情に厚く、仲間想いでもあるため、孤独なシオンに特に目を掛けている。
30世紀に早く帰りたいという気持ちが4人の中で一番強かったが、やがて事件の中で知り合った森山ホナミに惹かれ…。
タイムグリーン:シオン
ゴーグルと胸の模様の形は菱形。
天才的な頭脳を持つハバード星人で、母星が2984年に消滅した際、地球に漂着した脱出カプセルの唯一の生き残り。
貴重な生き残りとして施設で育てられたため、故郷や友達というものを知らず、初めてできた仲間:竜也達4人と一緒にいること自体に大きな喜びを感じている。
特に、4話『人質は異星人』で、ドモンから「お前に死なれる方がよっぽど迷惑なんだよ!」と言われたことから、ドモンになついている。
外見上は地球人と変わらないが、ネオアルコールに酔っぱらわないなど体質が違う面があり、1年に1回だけ、1週間ぶっ続けで眠り続ける時期がある以外は全く睡眠を必要としない。
また、タック程度のロボットは目をつぶっていても直せると豪語し、実際に後ろ手に拘束されたまま修理してしまった。
壊れたクロノチェンジャーを修理したり、サーチ機能を組み込んだり、アサルトベクターを開発したり、クロノスーツを改造して超高速戦闘モード:アクセルストップを組み込んだりと、天才ぶりを遺憾なく発揮している。
トゥモローリサーチでは、その能力を活かし、電気製品の修理など正に何でも屋でこなしていて、会社の収入のほとんどを1人で稼いでいる(シオンが睡眠期に入った際、収入が激減した4人は、タクアンでご飯を食べている)。
ちなみに、髪は染めているだけ。
3才の頃から染めており、番組開始当初は青だったが、11話から緑色に染め変えた。
ナビゲーションロボ:タック
過去で活動する時間保護局員支援のために同行するミミズク型のロボット。
時空通信機を内蔵しており、ぴったり千年の時間幅で、未来の時間保護局とリアルタイムで通信できる。
だが、徐々に記憶されている情報と現実とにズレが見え始めた。
タックの記憶回路は、データが改竄されていて…。
声の出演は、『超電動ロボ 鉄人28号FX』で主人公:金田正人を演じた沼田祐介氏。
マスコット:タイムロボター
タックが情報収集に専念できるよう、シオンが作ったサポートロボット。
シオン制作の割には大した機能は持っておらず、挨拶とスケジュールを言ってくれる程度しか役に立たない。
語尾に「〜ターイム」と付ける。
声の出演は、『ONE PIECE』でミス・バレンタインを演じた折笠富美子氏。
タイムファイヤー:滝沢直人
ゴーグルと胸の模様の形は逆三角形の下の辺が2段階のギザギザになっているもの。
竜也の空手のライバルで、インターハイで竜也を破って優勝した男。
この優勝によって、特待生として竜也と同じ大学に推薦入学したが、周囲があまりに毛色が違いすぎて中退してしまった。
28話『再会の時』で、シティガーディアンズの隊員として竜也と再会する。
上昇志向や権力欲が強く、ブイコマンダーとブイレックスを手に入れたことを利用してシティガーディアンズの隊長に抜擢され、その後も本部長へと昇進していく。
銃を構える時、左手の甲を前に右肩の上に構え、コンコンと甲に当てるようにするのが癖。
文鳥をつがいで飼っており、名前は「トラ」と「サクラ」。
竜也の父:浅見 渡
政財界に顔の利く浅見グループの総帥。
若い頃、家を継ぐのが嫌で独立しようとしたこともあるが、結局は家の名から逃れることができず、グループ成長に励む道を選んだ。
そのため、竜也の独立を苦々しく思いつつもどこかで許している。
ロンダーズの暗躍をビジネスチャンスと見て、政府に働きかけ、まずは政府委託により巨大戦車ライメイを開発し、その後、武器を携帯する許可を受けてシティガーディアンズ(CGC:シティガーディアンズコーポレーション?)を組織した。
演じたのは、『高速戦隊ターボレンジャー』太宰博士役の岡元富士太氏。
時間保護局レンジャー隊隊長:浅見リュウヤ
竜也に瓜二つの時間保護局のレンジャー隊隊長。
実は、竜也の子孫。
タックの依頼に応じて緊急システムを発動しているが、その裏には…。
タイムレンジャーは、時間飛行体(タイムマシン)を悪用する時間犯罪者を逮捕するために時間保護局から派遣されるレンジャー隊員だ。
移動の前には、規定の装備以外は取り外して移動先の時代の服装に着替え、30世紀の細菌・ウイルスを持ち込まないよう徹底的な消毒を受ける。
また、過去の世界で突飛な行動を取らないように、行く時代に合わせて、その時代での常識などを脳に直接刷り込まれる。
ただし、刷り込まれた知識は1年で消えてしまう。
十分に目的を果たしなおかつ歴史に大きな影響を与えないよう、5人編成で活動することになっており、状況に応じてクロノチェンジャー・タイムフライヤーなどの非常用緊急ツールを使用することが許されている。
緊急ツールの中には、ボルユニットのような殺傷能力の高い武器も含まれるが、タイムレンジャーには逮捕権までしかなく、犯罪者を殺すことは許されていないため、通常はボルユニットの出力は低めに抑えられている。
当然、犯罪者が制作した戦闘ロボットなど非生命体なら破壊が許されるのであり、ボルユニットの最大出力はそのような事態にそなえてのものと思われる。
これら緊急ツールで対処できないほどの大事件に遭遇した場合には、緊急システムの発動を申請し、許可されればタイムジェットが飛来するのだが、そのような事態は滅多にないことのようだ。
そもそも時間保護局自体、発足して10年足らずなのだから、例が少なくて当たり前と言える。
それでも、リュウヤ隊長は過去に時間移動した実績があり、それが発言力の大きさになっている。
5人は、普段は、生活費を稼ぐため、竜也が独立用に契約していた事務所スペースを使って「トゥモローリサーチ」という何でも屋をやっている。
事務所は、中央に接客スペース込みのメインルームがあり、ユウリの個室と竜也ら4人の部屋がある。
メインルームには、竜也の趣味で畳のスペースがあり、タックと接続するコネクタを備えた20世紀のパソコンによるデータベースシステムや、圧縮冷凍した囚人を保管しておくロッカーがある。
ここのパソコンからは、あちこちのサーバなどにハッキングできるようで、アヤセの免許証取得に必要な住民票の書式なども入手して偽造したらしい。
これらの設備や会社のブルゾンは、竜也の小遣いで購入された。
変身前に、トゥモローリサーチの青いブルゾンを着ているのが特徴。
背中に「Tommorow Resarch」の文字があるが、竜也がブルゾンを発注したのがタイムレンジャーになった後であること、ブルゾンにタイムレンジャーのマークが入っていることを考えると、社名については「TimeRanger」と引っ掛けての命名と思われる。
袖が取り外せるため、シオンのようにベストとして着用することもできる。
変身前のジャケットが完全に5人共通のデザインなのは、シリーズでも本作だけとなっている。
これは、『ゴーゴーファイブ』のジャケットの売れ行き好調に気をよくしてのことだろう。
また、『ゴーゴーファイブ』のジャケットが10月発売だったのに対し、21話『シオンの流儀』(7/9放送)で子供用(身長120cm用)を視聴者プレゼントしているなど、商品展開が早くなっている。
その後、大人用Lサイズが8月1日からネットで100着限定販売された後、子供用が一般販売された。
変身システム
左手首に付けた変身ブレス:クロノチェンジャーの左のボタンを押して機能選択し、中央のボタンを押しながら起動コード「クロノチェンジャー!」を叫ぶと、周囲に時空間を展開し、その中でクロノ粒子を装着して緊急戦闘モード:タイムレンジャーになる。
アンダースーツの上にクロノ粒子を装着することでクロノスーツが完成するシステムになっており、変身前に普段着を脱ぎ捨ててアンダースーツ姿になることも多い。
ただし、ユウリの普段着はミニスカートなのにアンダースーツが見えないことや、1話での初変身の際にもアンダースーツが装着されていたことなどを考え併せると、普段着の下にアンダースーツを着込んでいるわけではなく、何らかの条件によってクロノチェンジャーからアンダースーツが展開されて装着者の身体を覆うシステムのようだ。
緊急モードだけに、レンジャー隊員にスーツの装着経験が少ない(或いは全くない)ことが前提なのか、ゴーグルに武器の使用方法やタイムジェット、タイムロボの操縦方法などを表示するレクチャー機能が付いている。
踵には噴射装置があるらしく、タイムフライヤーに飛び乗る時などにはジャンプ力を強化することができる。
クロノスーツは改造することも可能で、21話『シオンの流儀』で、シオンによって改造され、超高速戦闘モード:アクセルストップが使用可能になった。
このモードでは、3秒間だけスピードが数倍になるが、防御力が著しく低下する。
タイムファイヤーの変身は、左手首に付けた変身ブレス:ブイコマンダーに「タイムファイヤー!」と音声入力することで、クロノギア(本編未呼称)が装着される。
声紋登録された者しか使えない分、クロノチェンジャーと違い、音声入力だけでボタンは押さずに変身する。
スーツの性能は、5人のものとほぼ同じようだ。
恐らく変身の理屈はタイムレンジャーと同じと思われるが、粒子状の光が一気に全身を覆うなどタイムレンジャーと異なる装着方法を取っている。
アンダースーツや時空間の展開があるのかは、画面上は不明。
クロノギアについては、書籍等により“クロノスーツの試作品”であったり“クロノスーツの発展・強化型”であったりと、説明が一定していない。
タックのデータにこのスーツに関するデータが存在していないこともあって、本編中でも一切説明されておらず、正確なところは不明である。
DVディフェンダーがクロノアクセスによって召喚される武器でないことを考えると、試作品である可能性も否定できないが、逆にDVディフェンダー側面に「6」の表示があり、ボルユニットのナンバーより大きいことなどを考え併せると、むしろ新型である可能性が高い。
なお、ブイコマンダーは、タイムファイヤーの変身ブレスであると同時に、ブイレックスの制御装置でもある。
最初に「タイムファイヤー」と音声入力した人間の声紋を登録し、以後その声紋以外による命令を受け付けないようになっている。
また、各種ボタンを押しながら音声入力することで、ブイレックスを自在に操ることができるようになっている。
タイムレンジャーのスーツと同様、武器の使用方法等がゴーグルに表示される他、初期使用の際には、ブイコマンダーから音声(英語)によるガイダンスがなされる。
なお、49、50話では、竜也がブイコマンダーを左手に、クロノチェンジャーを右手に付けてタイムレッドに変身しているが、ここでのタイムレッドは、左手にブイコマンダー、右手にクロノチェンジャー、右腰にDVディフェンダーを装備した姿になっている。
また、この際の変身は、クロノチェンジャーが前になるよう、いつもと異なり右手を前にクロスしたところから変身ポーズを取っている。
タイムレンジャーのスーツは、デンジマン、バイオマン、マスクマン、メガレンジャーの流れを組む“頭部にメカ”タイプのスーツで、アップ用のスーツにはマスクの黒い部分にLEDが組み込まれていて光るようになっている。
額だけでなく、ゴーグル下の黒い部分にも電飾が仕込まれている。
スーツごとの固有能力等はないようだが、スーツによって自動的にボルユニット(個人武器)が決定される。
このスーツデザインには、大きな特徴が3つある。
まず、変身後も変身ブレスが常に露出しているデザインであるということ。
これまで、『鳥人戦隊ジェットマン』のコレスポンダー(左のブレス)のように、変身後でも必要な時に出現するタイプのブレスはあったが、変身アイテムが変身後も常に露出していたのはジュウレンジャーのダイノバックラー(ベルト)だけで、ブレスでは初めてだった。
また、ジュウレンジャーの場合、変身の際はダイノバックラーを手に持っているのであり、変身後にベルトのバックルになっていることには連続性がない。
その意味からも、左手首の変身ブレスが変身後も左手首に残り、戦闘時にも武器召喚アイテムとしてそのまま使用されるというのは、かなりのエポックだった。
ただし、『バトルフィーバーJ』の前作品である『スパイダーマン』で、スパイダーブレスレットが変身前後を問わず左手首に装着されており、また戦闘時にはスパイダーストリングスなどの発射装置となっていることからすると、先祖返りとも言える。
くどいようだが、『バトルフィーバー』は『スパイダーマン』に続くマーベルヒーローシリーズ第2弾として企画されたのであって、『スパイダーマン』はスーパー戦隊シリーズのルーツと言える存在である。
このブレス露出デザインは、本作後『忍風戦隊ハリケンジャー』や『爆竜戦隊アバレンジャー』などに引き継がれることとなる。
もう1つの特徴が、スーパー戦隊に限らずヒーロー物初となる“全員パーソナルカラーのゴーグル”だ。
黒くないゴーグルという点では、メタルヒーローシリーズの『特捜エクシードラフト』が先だし、『ゴレンジャー』や『ジャッカー』の顔面の模様をゴーグルと捉えれば、パーソナルカラーのゴーグルは以前にもあった。
だが、全員がパーソナルカラーのゴーグルというのは初めてだった。
『エクシードラフト』では、パーソナルカラーなのはレッダー(赤)とブルース(青)だけで、キース(黄)は銀色だったし、『ジャッカー』ではクローバーキング(緑)だけで、いずれも全員ではない。
3つ目の特徴が、6人目もレッドであることだ。
タイムレッドでは白・銀色の部分が黒であること、ゴーグルと胸の逆三角模様の下側がギザギザになっていること、ベルトのバックルが違うこと、右腰にホルスターがあること、ブレスがブイコマンダーであることの5点以外はほとんどそっくりなデザインになっている。
なお、5人の変身シーンは、『超力戦隊オーレンジャー』と同様の“顔をヘルメットパーツが覆っていく様子をCGで表現する”というものだが、技術の進歩により、オーレンジャーより遙かに自然な表現になっている。
時空間でジャンプしたところを足下からスーツが覆っていき、首まで覆うと今度はヘルメットが上から覆ってくるという手順で変身する。
ヘルメット装着のときはアップになるので顔のCGが細かくなっていて、ボディ部分装着時とは別人のようだと言われた。
また、ジャンプした5人はそれぞれポーズを取っているが、ユウリのポーズはしゃがんで両手を広げたようなポーズであり、放映当時、間抜けなポーズだと笑われていた。
恒例の変身アイテムとして、クロノチェンジャーが商品化されている。
前年のゴーゴーブレス同様、ゲーム機能が組み込まれているが、電池は単4に戻った。
黒い半透明パーツの中に12個のLEDが仕込まれており、12秒で光が1回転するなど、多分に時計をイメージしている。
このLEDの発光場所に合わせて中央のボタンを押すことによって、変身音、クロノアクセス(武器召喚)音、通信呼出音が鳴るほか、ゲームモードに入るようになっている。
また、左右のボタンを押すことでLEDの発光場所が左右に1つずつ移動するので、決して“12秒に1回しか変身できない”わけでもない。
劇中の変身シーンで、中央のボタンの他に左のボタンを押しているのは、そのためだ。
ブイコマンダーも商品化されてはいるのだが、『ゴーグルファイブ』で変身ブレスが商品化されるようになって以来初めて(そして2011年現在唯一)、単品売りされないブレスとなった。
これは、本編でもそうだが、ブイコマンダーが変身ブレスというよりブイレックスのコントロールユニットという側面の方が強いためだ。
商品では、『DXボイスフォーメーション ブイレックスロボ』に、音声入力式赤外線リモコンとして同梱されている。
また、タイムファイヤーへの変身コマンド用のボタンはないため、変身ブレス玩具としての機能は持っていない。
これは、ブレス内部のスペースがマイクや赤外線発射関係の基板などに占領されているためにスピーカーを収納できなかったのと、その分値上がりするのを避けるのとが理由だろう。
詳しくは後述する。
名乗り
「タイムレッド!」
「ピンク!」
「ブルー!」
「イエロー!」
「グリーン!」
(5人)「タイムレンジャー!」(タイムエンブレムの中央が光る)
(その回の主役)「××(囚人の名前)、時間保護法違反で逮捕する!」
というのが代表例。
名乗りの順番は特に決まっておらず、その回の主役から始まることが多い。
最初の1人だけ「タイム○○!」と名乗り、他の4人は色だけで名乗る。
タイムエンブレムは、全員で構えることもあるし1人だけのこともある。
「未来戦隊」と名乗らないのが特徴…というより、「未来戦隊」というのは番組タイトルとしての戦隊名であって、本編中には存在しない単語である。
また、タイムファイヤーは、その場で「タイムファイヤー!」と叫んで変身するせいか、名乗りはなく、タイムエンブレムを見せることもしない。
タイムエンブレムは、レンジャー隊員の身分証明書(警察手帳)のようなもので、同時に圧縮冷凍した囚人のカプセルを召喚する機能もある。
名乗りの際に5人(またはその回の主役)が右手で示すと、中央の飾りの部分が開く。
タイムエンブレムには、「T.E.D TIME RANGER TIME OO(REDなど各人の色)」と特殊なアルファベットで記載されている。
インターシティ警察の身分証も同じ字体で表示されているが、30世紀のアルファベットなのかというとそうでもなく、タイムファイヤー変身時には、ブイコマンダーに現在のアルファベットで「FIRE」と表示される。
また、リュウヤが操作するコンピュータの表示は、現在のアルファベットと同じものや異なるものが混在しているが、それらもエンブレムとは字体が異なる。
シオンが作ったタイムファイヤー用のエンブレムには竜也達のエンブレムと同じ字体で「TIME FIRE」と記載されているので、身分証の類にだけ使われる装飾文字なのかもしれない。
なお、「T.E.D」は時間保護局の略称と思われるが、本編内で英語による略称は紹介されていない。
「Time Environment Defender」くらいしか思いつかなかった。
タイムエンブレムも商品化されている。
本編同様、飾りの部分が開くほか、圧縮冷凍カプセルが付属しており、囚人などの写真を入れられるようになっている。
このカプセルにエンブレムを上から押しつけることでスイッチが押され、カプセル内部が反転して圧縮冷凍された囚人をイメージした銀色の塊と入れ替わるというギミックになっている。
ネーム部分に張るためのシールが付属しており、これで各人のエンブレムに差別化できるが、プロップでは「TIME BLUE」となっているところを商品では単に「BLUE」となっているため、レッド以外は本物同様とはいかない。
当時の「てれびくんデラックス未来戦隊タイムレンジャー超全集」のレッドなどのページに大きく映っているタイムエンブレムや、巻末のインタビューページで永井氏らが持っているのは、この商品のようだ。
武器
標準装備は、クロノチェンジャーを操作してクロノアクセスすることで時空間から召喚される2本の剣:ダブルベクター。
時計の長針と短針をイメージした形で、長剣スパークベクターと短剣アローベクターからなっており、柄の部分で合体させるとツインベクターになる。
刀身が透明な材質でできており、アローベクターの先端部はそれぞれのゴーグルと同じ形状と色の半透明になっている。
また、刀身にエネルギーを集中(ビートアップ)させることができ、2本の剣で交差斬りするベクターエンドという技がある。
2本の剣を振り抜く角度によって、時計の回転軸から針先への方向になぞらえて“ビート・シックス”“ビート・ナイン”などと名前が付いており、レッドはスリー、ピンクはシックス、グリーンはナインを多用する。
イエローは、ツインベクターでビートアップさせたまま敵を滅多切りにするベクターディバイディングという技(『時空戦士スピルバン』のアークインパルスのような技)を得意とする。
また、ビートアップしたスパークベクターの刀身からエネルギーを敵に向けて発射するベクターハーレーは、携帯型のビームガンを持たないタイムレンジャーにとって使い勝手の良い飛び道具となっている。
スパークベクターに、23話でシオンが開発した5つのパーツを合体させると、ライフル形状のアサルトベクターになる。
当初は手でパーツをはめ込んでいたが、「アサルトベクター!」と叫んでスパークベクターを上に放り投げるとパーツが装着されて落ちてくるようになった。
クロノアクセスによる召喚のシークエンスを改良したものと思われる。
アサルトベクターは、スパークベクターのエネルギーを加速・増幅することにより、通常モードでベクターハーレーの30倍の威力のビームを連射できる。
このビームはタイムレンジャーの等身大装備の中で最大級の破壊力を持ち、一撃でゼニットを蒸発させることができる。
また、ビートアップさせて放つアサルトバーニングは、敵の活力を焼散させる=エネルギーを奪って動けなくすることができる。
これは、当初の開発目的が、エネルギーを溜め込んで爆発する性質を持つ囚人を安全に逮捕するためだったからだが、非生命体のエネルギーも焼散できるため、26話『信頼の秒読み(カウントダウン)』では、異空間ゲンブゾーンを形成するバリアを消滅させるために使用されている。
なお、アサルトベクターのパーツが収められているアタッシュケース(商品名はタイムアタッシュだが、本編未呼称)は、1話でクロノチェンジャーなどが入っていたもので、ロッカーにしまっておいたのを再利用している。
個人武器として、ボルユニットがある。
これもクロノチェンジャーでクロノアクセスすることで時空間から召喚するもので、各人によって形状と能力が若干違う。
いずれも出力調整が可能で、最大出力にするとかなりの防御力を持つ異星人でも殺せるが、敢えて殺さないよう出力が抑えられている。
ユニットナンバー1がレッドのボルブラスター、2がブルーのボルランチャー、3がグリーンのボルパルサー、4がイエローのボルバルカン、5がピンクのボルスナイパー。
書籍等では、ボルブラスターは1発撃つとエネルギーの再チャージに10秒掛かるとされているが、本編中ではバンバン連射しているので、再チャージに時間が掛かるのはフルパワーで撃った時か、単なる設定だけの話かのどちらかだろう。
ボルランチャーを基部に、下にボルスナイパー、左側面にボルパルサー、右側面にボルバルカン、前部にボルブラスターを合体させると、マイナス270度の超低温加圧弾を発射できる逮捕用アイテム:ボルテックバズーカになる。
ただし、巨大戦を行う都合上、圧縮冷凍に成功したのは13、28、37話の3回しかなく、そのうち37話はDVリフレイザーとの同時攻撃となっている。
圧縮冷凍された囚人にタイムエンブレムを近づけると、カプセルが形成されて囚人が収納される。
このカプセルは、トゥモローリサーチの事務室のキャビネットで保管されることになる。
タイムファイヤーは、当初エンブレムを持っていなかったが、45話『終末!TR』で、シオンが直人に縁が金色のファイヤー専用バージョン(ノーマルは縁が銀色)をプレゼントしている。
ただし、上記のとおりファイヤーには名乗りがないので、タイムエンブレムを使うのは、圧縮冷凍した囚人をカプセルに入れる時だけである。
いずれの武器も、スーツ装着時以外にも召喚することができ、修理や改良、パワー調整などしている。
また、変身の項で書いたとおり、超高速戦闘モード:アクセルストップがある。
シオンは、他の4人の分も改造したため、レッド以外は全員が使用したことがある。
タイムファイヤー専用の武器が、右腰のホルスターに入っているビームガン:DVディフェンダーだ。
ボルユニットとの連携機能はないが、側面にユニットナンバー6が入っている。
ボタンを押して「DVチェンジ!」と音声入力することで、連射モード:DVバルカンになったり、ブレードフォーム:ディフェンダーソードに変形したりする。
更に、ディフェンダーソード形態の時に「DVチェンジ! ファイナルモード!」と音声入力すると、刀身に圧縮冷凍用のエネルギーが迸り、その状態で斬ることで圧縮冷凍技:DVリフレイザーが使用できる。
ただし、これも上同様の理由から、29、37話の2回しか圧縮冷凍に成功していない(37話はボルテックバズーカとの同時攻撃)。
『タイムレンジャー』では、『激走戦隊カーレンジャー』以来3年ぶりに“個人武器の合体による大型バズーカ”が復活した。
また、武器を全て召喚式にしたことで、『バトルフィーバー』以来20年ぶりにメインメンバーのベルトにホルスターが付いていない。
これは、変身ブレス玩具のギミックとして武器召喚音を付けたことに連動している。
また、必殺武器(技)のパワーアップ(バージョンアップ)がなかったのは、『超獣戦隊ライブマン』以来11年ぶりのことだった。
こちらは、ボルテックバズーカが殺すための装備ではなく「逮捕(圧縮冷凍)」を目的とする道具であるため、パワーアップするには冷凍能力の強化しかなく、そしてまた、演出上相手に巨大化してもらわなければならない関係上、確実に圧縮冷凍できるようになっては困るからだろう。
設定上、装備の強化がやりづらいこともあって、メインメンバーの新型武器は23話から登場のアサルトベクターしかなく、ダブルベクターとボルユニットは1話から、ボルテックバズーカは3話から、6人目の武器DVディフェンダーは29話から登場で、それ以降新兵器が登場しないなど、武器のバージョンアップが非常に少なく、しかも展開が早い。
ダブルベクターは、“透明な剣”という非常に変わったアイテムとなっている。
透明な剣というと『超新星フラッシュマン』レッドフラッシュのプリズム聖剣以来となるが、透明な剣の商品化は初のことだ。
もちろん、刃の部分は安全のために軟質樹脂製なのだが、透明度は高いので、一見すると透明プラスチック製のように見える。
製造者責任法が施行され、玩具の刃パーツが軟質樹脂製になった『オーレンジャー』以降、剣の刃部分が灰色になってしまって悲しい思いをしてきたが、いっそこういう処理もいいなと思わされた。
また、既に登場している剣に接続する増加パーツだけを商品化するというアイデアも初の試みだ。
強化武装のついでに剣の強化パーツも発売、というのなら、『ギンガマン』の獣装光セットがあったが、剣の強化パーツだけが発売されたことはない。
銃の強化パーツとして『ジェットマン』のビークスマッシャーや『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のサンダースリンガーといったものがあるが、これらはいずれも単品としても遊べ、本編でも単体で使用されているものばかりだ。
ところが、アサルトベクター用の増加パーツは、本編では単独での使用方法がない。
玩具としても、発光・音声機能が内蔵されていない単なるプラスチックパーツの集まりでしかなく、アサルトベクターに合体させた上で引き金を引くことで、スパークベクターの発射音スイッチが押されるという連動ギミックになっている。
これによって値段を抑えているわけだ。
一応、商品展開上のオリジナル設定として、この増加パーツだけでライフル型に合体できたり、増加パーツがそれぞれアサルトモビルという乗り物となって、別売りのシャイニングヒーロー・タイムレンジャーを乗せることができるという連携を狙っている。
ただし、乗り物と見るには相当無理のある形状なので、プレイバリューを増やすという名目に過ぎないものと思われる。
そして、ひときわ異彩を放つのがDVディフェンダーだ。
恐竜の顔を模した銃という、本作に相応しくないようなデザインながら、本作を象徴するアイテムとも言える。
『超電子バイオマン』バイオソードの系列の“銃から剣に変形する”タイプの銃で、恐竜の顎の部分が可動するようになっており、そこを口を閉じるように押し上げると、「ガシャッ!」という電子音を発しながら刃の基部が本体上部から起き上がる。
手で基部を完全に起こして刃パーツを引っ張り出し、グリップ上部のストッパーを外して真っ直ぐにするとディフェンダーソードになり、その状態で引き金を引くと剣戟音が出る。
更に、この形状で本体左脇にある音声入力ボタンを押しながら本体上部のマイクに音を入れた後で引き金を引くと、DVリフレイザーの必殺技音になる。
銃形態で上記の音声入力ボタンを押しながらマイクに音声を入れると、発射音がバルカンモードになる。
その上、銃形態では、銃口下の赤外線発信部から赤外線を発射し、ブイコマンダー同様にDXブイレックスを操作できる機能が付いている。
この辺の連携販売は、本作の商品展開の大きな特徴となっているので、後述する。
この赤外線用のランプが付いているついでか、DVディフェンダーはこのタイプの変形銃には珍しく、銃口が光るようになっている。
このタイプの変形銃は、銃口が刃の基部になる場合が多いこと、グリップ部が可動するため銃身部に重量のある電子装置を仕込むと剣形態で振り回した時に可動部に負荷が掛かりすぎることなどから、銃口にLEDなどの発光パーツを仕込まないことが多い。
実際、DVディフェンダーは銃本体にギミックを仕込んだ結果、かなりの重量になり、グリップの回転基部に負担が掛かってすぐにグラグラになるという欠点がある。
とはいえ、暗いところで壁に向かって撃つと壁に光点が見えるというのは、捨てがたい魅力ではある。
移動装備
緊急装備アタッシュケースの中に小型化されて収納されていた移動マシン:タイムフライヤーが、「タイムフライヤー、セットオン!」の起動コードで巨大化・起動する。
一旦起動した後は時空間に待機しているようで、クロノチェンジャーに「タイムフライヤー!」と音声入力すると飛んでくる。
通常5人で乗るが1人でも操縦可能。
上部中央と両翼端に計3門のビーム砲を装備している。
事件現場への移動に使用するほか、タイムジェットには、タイムフライヤーから飛び降りて搭乗することになる。
面白いことに、タイムフライヤーには、向かって左からイエロー、グリーン、レッド、ピンク、ブルーの順に並んで乗るが、飛来するタイムジェットは向かって左から5(ピンク)、2(ブルー)、1(レッド)、4(イエロー)、3(グリーン)の順になっており、レッド以外の4人はタイムフライヤーから外側に(つまりタイムジェットとは反対側に)飛び降りたのに、ちゃんと自分用のタイムジェットに乗るという器用な真似をしていることになる。
またタイムフライヤーの武装はボルユニットの最大出力以上の破壊力があるため、タイムロボが使えなくなった46話以降では、攻撃手段としても重宝されている。
ロボット・メカニック
タイムレンジャーのロボは、各時代に派遣されたレンジャー隊員が、緊急戦闘モード(変身)によってさえ打開不可能な危機に直面したと認められる時にのみ発動される緊急システムとなっている。
30世紀の時間保護局で管理・整備されており、各時代に派遣されたナビゲーターロボからの時空間通信による「緊急システム発動依頼」を受けた保護局が承認した場合に発進する。
ロボ関連のメカに限らず、時間飛行体などもタイムゲートを通ることで時間移動する。
このタイムゲートは、時間管理局が持つプロバイダーベースに巨大ロボプロバイダスの一部が出入口として合体することで完成し、時間移動するメカは、プロバイダスの右手で叩かれて射出される。
ただし、ブイレックスが時間移動する時は、自力でタイムゲートに向かって走っていったらしい。
また、最終回ではタイムジェットγが格納庫から直接単独時間移動している。
3Dフォーメーションシステム
タイムジェット1(レッド搭乗)、タイムジェット2(ブルー搭乗)、タイムジェット3(グリーン搭乗)、タイムジェット4(イエロー搭乗)、タイムジェット5(ピンク搭乗)の5機編成の飛行メカからなる緊急システム。
通常は、ビッグエッグの天井部分(または観覧車)をゲートとして出現し、圧縮冷凍が終了すると勝手に分離し、タイムレンジャーを強制排出して未来に帰投する。
5機のタイムジェットが合体パターンを変えることで、陸戦型タイムロボα、空中戦型タイムロボβ、高速戦闘機タイムジェットγの3形態になる。
最初に合体する際は「3Dフォーメーション、タイムロボα!」、一旦分離して別形態に合体し直す時は「チェンジフォーメーション、タイムジェットγ!」といった具合に、合体コードが変わるのが特徴。
合体時のコクピットは5人が立っている形式で、床から生えている棒(コントロールスティック)を掴んで操縦する。
30世紀には物質移動技術があるので、タイムジェットのコクピットからの瞬間移動と思われる。
タイムロボα
タイムジェット1が頭部・胴体部・クロノシールドの中央部を、タイムジェット2が腰部左側・左脚を、タイムジェット3が腰部右側・右脚を、タイムジェット4が左腕・クロノシールドの下半分を、タイムジェット5が右腕・クロノシールドの上半分を構成して完成する陸戦タイプのロボで、圧縮冷凍機能を持っている。
胸部が時空間へのゲートになっており、圧縮冷凍用アイテム:時空剣を召喚でき、これで斬りつける技プレスブリザードで囚人を圧縮冷凍する。
この際、コクピットでも、操縦桿が時空剣の形に変化しており、それを引き抜くことで、使用者の動きがタイムロボに反映される。
斬りつけた後は、その回の主役の「タイムアップ!」の声で、時空剣の鍔の部分が4段階に閉じながらカウントダウンし、鍔が閉じきって刀身に沿った段階で囚人は爆発と共に圧縮冷凍される。
他の形態は圧縮冷凍用の技を持っていないので、敵に隙を作ったらαにチェンジして圧縮冷凍するという流れが基本。
タイムロボβ
タイムジェット1が頭部・胴体部を、タイムジェット2が左腕を、タイムジェット3が右腕を、タイムジェット4が腰部右側・右脚を、タイムジェット5が腰部左側・左脚を構成する空戦型ロボ。
タイムフライヤーをフライヤーマグナムに変形させて銃として使用する。
圧縮冷凍(逮捕)の必要がない巨大メカが相手の際は、フライヤーマグナムフルパワーで破壊することもある。
タイムジェットγ
タイムジェット1が機首を、タイムジェット2が右側を、タイムジェット3が左側を、タイムジェット4が後部中央左側を、タイムジェット5が後部中央右側を構成する大型戦闘機で、遠隔攻撃用の形態。
高速で回転して竜巻を作って敵の動きを止めるガンマトルネードが得意技。
タイムシャドウ
より凶悪な犯罪を鎮圧するために、インターシティ警察と時間保護局が極秘で共同開発していた自律型戦闘メカ。
「シュワァ」という声を発するが、言葉は話せない。
3000年に開発されたばかりの超高効率エネルギー:Ζ−3(ゼータ・スリー)で動く。
巨大戦闘機型のステルスモードで発進し、日食の影の部分をゲートにして出現すると、勝手にロボットモードに変形して戦闘開始する。
ビルの壁を壊すことなく水平状態で走ることができ、その身軽さとスピードで戦う。
また、ステルスモードだけでなく、ロボ形態でも姿を消す機能があり、姿を消して敵を斬るという悪者のような戦い方ができる。
両手に装着されたシャドウセイバーと、それを合体させたダブルシャドウ、両翼から発射するミサイル:ライトニングシュートが武器。
タックのデータでは3010年に完成予定のはずだったが、なぜか3000年に存在している。
タイムゲートより広い全幅のくせにゲートを通過する、いつでも日食を起こしてそこをゲートに出現するなど、色々と謎の多いロボット。
タイムロボシャドウアルファ
「デルタフォーメーション、シャドウアルファ!」の掛け声で、タイムシャドウとタイムロボαが合体して完成する超巨大ロボ。
何故か「α」ではなく「アルファ」とカタカナ表記になる。
タイムシャドウが展開したパーツにはまりこむ形で、αの足首がシャドウが変形した足首パーツを踏み、αの肩の上を通ったシャドウのパーツが胸部装甲となり、ヘッドギアが合体して完成する。
両肩から発射する電磁ネットバーチャルネットで敵の動きを封じ、プロディバイダー(剣モード)で斬るブリザードスラッシュで圧縮冷凍する。
プロディバイダーは、デルタフォーメーション発動後にプロバイダスが追加で打ち出し、合体前にタイムシャドウステルスモード上部の緑色の円形部から出現する。
コクピットでは、やはりその回のメインキャラがプロディバイダーを振るっている。
タイムロボシャドウベータ
「デルタフォーメーション、シャドウベータ!」の掛け声で、タイムシャドウとタイムロボβが合体して完成する超巨大ロボ。
シャドウアルファ同様、タイムシャドウが展開したパーツにはまりこむ形で、βの足首がシャドウが変形した足首パーツを踏み、βの肩の上を通ったシャドウのパーツが胸部装甲となり、ヘッドギアが合体して完成する。
ノーマルのβと違い、圧縮冷凍技を持っているのが特徴。
召喚したプロディバイダー(ライフルモード)を使用して敵の周囲に時計の文字盤状の12個の結界ポイントを撃ち込んでから敵本体に圧縮冷凍エネルギーをぶつけるプレッシャーカノンで圧縮冷凍する。
ブイレックスロボ
時間保護局が開発した生体メカ。
恐竜型のブイレックスから、尻尾の生えた人型のブイレックスロボに変形する。
時間移動実験の失敗により、時間の中を彷徨っていたが、時空の裂け目から20世紀に出現した際、制御ユニットが外れたために制御不能になった(ということになっているが、実際は違う。詳しくは「真実の物語」参照)。
タイムレンジャーとロンダーズによる制御ユニット争奪戦の中、滝沢直人が制御ユニット:ブイコマンダーに音声登録したため、直人の命令にのみ従う。
シティガーディアンズが保有することになったため、基本的には契約者の財産が脅かされた時にしか出動しないが、入手初期は戦闘データを取るために損得抜きで出動することが多かった(勿論実態は販売促進が目的)。
完全な遠隔操作ロボで、内部にコクピットはない。
直人(またはファイヤー)がブイコマンダーで「ブイレックス、来い!」などと命じることで出動する。
そして、ブイコマンダーの「VC」ボタンを押しながら「ボイスフォーメーション、ブイレックスロボ!」と音声入力することで巨大ロボ:ブイレックスロボに変形する。
変形後も尻尾が残っており、厳密には人型ロボではない。
武器は、右前腕部の6連装のミサイルランチャー:リボルバーミサイルと、左拳を高速で射出するレックスパンチ。
また、両肩に装備された冷凍ビーム:マックスブリザードにより圧縮冷凍も可能。
「VC」ボタンを押しながら「リバースフォーメーション、ブイレックス!」と音声入力することで、ブイレックス形態に戻る。
ブイレックス形態時の武器は、両肩のレックスレーザーで、相手が単なるメカならば、ブイレックスの頭上にファイヤーが立って、最大出力のDVディフェンダーとレックスレーザーを同時発射するマックスバーニングで破壊する。
自己修復機能があり、ある程度のダメージを受けると、ブイレックス形態に戻って24時間の休眠状態に入る。
…のだが、最終回では、下半身が動かなくなるほどのダメージを受けていながら休眠状態に入らなかった。
頭部に高密度に圧縮されたλ-2000が内蔵されており、それをエネルギー源としている。
プロバイダス
時間保護局が所有する時間航行マシン発射装置。
右前腕だけが肥大化した人型ロボで、エプロン状に装備されたパーツを分離してタイムゲートにし、右手で時間飛行体やタイムジェットを叩いてタイムゲートへと押し出し時間移動させる。
スーパー戦隊史上唯一の戦闘しない巨大ロボだが、38話『ぐっどないと』で、シオンの夢の中では、自分で自分を叩いて時間移動し、現代で戦闘した。
本作では、それまで数年の流れから方向性を変え、5機のメカが合体パターンを変えることで複数の形態を持つという『ジェットマン』ジェットイカロスの路線に戻した。
ジェットイカロスがロボと戦闘機の2形態だったのに対し、ロボ2種類と戦闘機という3形態に分けたことで、複数のロボの使い分けができるというのが新味なのだが、残念ながら成功したとは言い難い。
失敗要因はいくつかあるが、
- 圧縮冷凍できる技を持っているのがαだけで、βやγの影が薄い
- βはαのボディをひっくり返して手足を入れ替えるだけなので不格好
という要素が大きいだろう。
これは、複数の合体パターンを持つ合体ロボが大抵陥るジレンマだ。
まず1だが、各形態を完全に平等に使うということが作劇的に不可能であるために仕方がない面がある。
例えばトクサツの場合、ロボと戦闘機の2形態を持っていれば、着ぐるみによって撮影できるロボ形態が中心にならざるを得ない。
アニメの場合は、こういうタイプのロボが登場すると、形態ごとに操縦者が違うという場合が多く、主人公が操縦する形態がメインになりやすいという宿命がある。
本作では、この点については、2号ロボとのスーパー合体であるシャドウベータに圧縮冷凍技を持たせたことで、多少のフォローがされている。
2は、合体ギミックを持った商品が発売されることによって発生するジレンマだ。
同じパーツを使いながら、組み合わせ方によって別の形態になるということは、それぞれのパーツが複数の役割を果たすよう作られているということだ。
そのようなギミックを再現した商品を作るとなると、合体前のパーツもしくはいずれかの形態の時に格好良くなるようにデザインせざるを得ないため、他の形態時には手が足より長くなったり、胴体並みの厚みを持った翼の戦闘機になったりする。
最悪の場合、合体ギミックを再現することそのものに腐心した挙げ句、どの形態でも不格好ということもある。
本作の場合、玩具による形状再現には特に問題ないと思うのだが、デザインの段階でβが割を食った感がある。
αの足が手になるため、肩の上の方が無意味にごつく長くなっている。
有り体に言えば「不格好」になってしまった。
しかも、着ぐるみはまだマシな方で、商品のβの肩の大きさはかなりとんでもないレベルだ。
そして、本作のロボ最大の特徴が3号ロボであるブイレックスだ。
名前からして「Tレックス」に引っ掛けているくらいだから、ティラノサウルス型のロボなのだが、本作の8年前に放送されていた『ジュウレンジャー』の守護獣ティラノサウルスとは相当体型が違う。
8年の間に現実世界で恐竜の研究が進み、ティラノサウルスの体型の解釈が変わってしまったせいだ。
「未来戦隊」というタイトルと恐竜型ロボとの間には全く接点が感じられないのだが、これは、商品展開主導故の弊害だろう。
恐竜型から人型に変形するこのブイレックスは、玩具でも完全自動変形、つまり手で補助しなくてもきちんと変形するのが特徴になっている。
ブイコマンダー・DVディフェンダー同様、まとめて後述する。
敵組織:ロンダーズファミリー
首領:ドン・ドルネロ
30世紀のマフィア:ドルネロファミリーのドン。
どこに行っても追っ手が掛かるため、20世紀に逃亡して好き勝手に暴れようとしていた。
幼い頃に母に捨てられたトラウマのため、“金さえあれば何でもできる”が信条。
それが高じてか、金そのものが好きというところまでいってしまい、ある程度の現金が手元にないと熱が出る。
その分、欲と金勘定で繋がった関係は強固だと信じており、母の面影に似ているリラを金で繋ぎ止めている。
家計簿を付けるという妙に几帳面なところもある。
「ファミリーってのは仲良くなきゃいけねぇ」が信条で、仲間内のいざこざを嫌う。
人間の姿に変身することもでき、金城銅山(きんじょう・どうざん)と名乗って暗躍する。
人間体を演じたのは悪役商会の千本松喜兵衛氏、声を演じたのは、本体・人間体とも『メガレンジャー』でジャビウス1世を演じた大友龍三郎氏。
幹部:ギエン
ドルネロの片腕というより相棒といった感じのサイボーグ。
とはいえ、ファミリーに参加したのはリラより相当後のようだ。
左手がバルカン砲など様々な形状に変形するほか、興奮すると顔面が展開して恐ろしい形相になる。
リラはロボットだと思っていたようだが、一緒にワインを飲むなどのシーンは当初からあった。
破壊と殺戮をこよなく愛するため、金稼ぎの役に立たない囚人を解凍することも多い。
実は元々は人間で、10年前(2990年)にドルネロをかくまったため、対抗組織から重傷を負わされ、ドルネロによってメカの身体になった。
その際、電子頭脳を2つ持たせたせいで徐々に残虐性が強くなるという副作用が出てしまい、遂にはドルネロを殺してしまった。
声を演じたのは、戸部公爾氏。
幹部:リラ
ドルネロの所謂「情婦」で、ギエンが参入する前、アーノルドKが圧縮冷凍される前からドルネロと一緒にいた。
変装が特技。
「金をくれるからドルネロが好き」と言って憚らない女で、囚人達に稼がせた金で豪遊するのが趣味。
収支バランスなど全く意に介せず贅沢するため、番組開始当初はあまり稼ぎのなかったロンダーズファミリーの金庫を空同然にすることもあった。
基本的には贅沢ができればそれでいいので、通常はキャッシュで高価な服や宝石を買い漁っているが、ファミリーの資金が乏しい時には、凄腕のドライバー:バロンを配下に、お試しで出させた宝石を持ち逃げするような事件を起こしていたこともある。
ドルネロの死に伴い、それまで蓄えた金と数体のゼニットを引き連れて逃走した。
実のところ、ドルネロに対しては、金絡み以外でも好意を持っていたとのこと。
演じた久瑠あさ美氏はモデル出身で、現在はカウンセラーやプロスポーツ選手のメンタルトレーナーとして活動しているそうだ。
怪人:囚人
ロンダー刑務所に格納されていた圧縮冷凍刑に処された囚人達が、ドルネロらの逃亡に伴って20世紀に来てしまった。
ドルネロらは、それら囚人の中から金稼ぎに使えそうな者を選んでは解凍している。
中には、ヘルズゲートという半永久房に厳重に格納されている凶悪犯もいる。
ドルネロは同時進行で複数の囚人に金稼ぎをさせていたが、危機を感じたドルネロによって全員圧縮冷凍し直され、タイムレンジャーに託されることになった。
戦闘員:ジャンクドロイド・ゼニット
ファミリーの手足として働かせるためにギエンが作った簡易アンドロイド。
ネジのような部品から出現する。
それなりの知能を持ち、指示に従って行動する。
身体に光沢のある者とない者がいるが、性能に差はないようだ。
素手なら、格闘技の覚えがある人間なら組み伏せられる程度の戦闘能力だが、普通の拳銃などでは破壊することはできない。
武器は、銃にもなる剣。
ロンダーズファミリーは、地球の征服も人類の絶滅も考えていない、ごく真っ当な犯罪者集団だ。
元々はドン・ドルネロファミリーという名前だったが、20世紀に来た際に、気分一新するためにロンダー刑務所にちなんでドルネロが命名した。
ロンダー刑務所の建物を囚人ごと時間移動した後、刑務所建物が人目に付かない樹海の中に落下したため、そのままアジトにしている。
ドンであるドルネロが金の亡者であるため、その目的は金を稼いで好きなように生きることであり、そのための資金源として様々な犯罪を囚人達に行わせている。
囚人が逮捕されたとしても、それまでに稼いだ金は手元に残るため、一銭の得にもならなかったということは少ない。
また、当初は、銀行強盗などで一気に大金を稼いでいたが、ドルネロ曰く「ドカンと入ると、その分派手に使っちまう」とのことで、地道にちまちまと稼ぐようになっていった。
ただし、ギエンは、金稼ぎよりも破壊活動を好む傾向が強く、そのため徐々にファミリー内で浮いていった。
なお、ネーミングとしては、全て金関係の言葉に引っ掛けられており、
- ロンダーズ マネーロンダリング
- ドルネロ ドル(アメリカの通貨)
- ギエン 円(日本の通貨)
- リラ リラ(イタリアの通貨・当時はユーロではなかった)
- ゼニット 銭
となっている。
巨大化
圧縮冷凍されていた囚人は、解凍された際に反動で細胞が膨張する宿命があり、これをリバウンドという。
そのため、圧縮冷凍する前にリバウンド防止のための抑制シールが身体のどこかに貼られるのだが、解凍後、これを剥がしたり壊したりすると全身の細胞(機械化部分も含む)が20倍の大きさに膨張してしまう。
この作用は、ボルテックバズーカで圧縮冷凍されようとしている最中でさえ発生する。
ロンダーズの囚人達は、圧縮冷凍されるのを避けるために破れかぶれで抑制シールを剥がしたり、戦闘中に抑制シールが偶然破壊されたりして巨大化する。
この作用は、サイボーグ等の機械化部分にも作用するため、ベリトのように本体から離れたメカボディ部分だけが巨大化することもある。
その性質を利用して、完全に機械であるノヴァも、あらかじめ圧縮冷凍しておくことでリバウンドを起こさせて巨大ロボとして使用していた。
抑制シールの模様は、英語で刑務所を意味する「JAIL」を意匠化したものだろう。
真実の物語
2990年頃、完成したばかりのタイムマシンの時間移動実験の失敗から、30世紀が消滅の危機に瀕し、二度とそのようなことのないように時間保護局が設立された。
しかし、Gゾードの時間移動実験失敗やリュウヤの暗躍などにより、3つの流れができてしまった。
正しい歴史
2994年、Gゾードの時間移動実験が失敗し、行方不明となった。
3000年2月、ドン・ドルネロファミリーが千年前(2000年2月)に逃亡した。
それを追ったレンジャー隊員達は、偶然居合わせた浅見竜也を加えてタイムレンジャーに変身し、囚人ジェッカーを逮捕しようとしたものの、リバウンドを起こしたジェッカーによって、竜也以外の4人が殺されてしまった。
そして、後任としてタイムファイヤー:リュウヤがブイレックスと共に派遣され、1年近く掛かって囚人達を回収していった。
一方、ロンダーズの脅威に対し、浅見渡はシティガーディアンズを組織するが、2000年12月、λ-2000を狙ったヘルズゲート囚ハーバルの襲撃により死亡したため、竜也が後継者となった。
2001年2月4日、ギエンが開発したネオクライシスとブイレックスとの戦いが元で、2001年の大消滅と呼ばれる大規模事故が発生し、世界の3分の2が消滅した。
この戦いにより、タイムファイヤー:リュウヤは死亡した。
大消滅後、生き残った人々により、世界は徐々に復興を遂げ、浅見竜也会長率いるシティガーディアンズは組織を拡大し、やがて世界的な治安組織インターシティ警察へと発展していくこととなった。
Gゾードによって狂った歴史
行方不明になったGゾードは、タイムファイヤー:リュウヤがロンダーズと戦っている2000年12月に出現した。
ギエンがGゾードを攻撃したことからGゾードは暴れだし、ギエンを殺してしまう。
そのために2001年の大消滅が起こらなくなり、30世紀が消滅の危機に陥った。
ロンダーズ逮捕のために20世紀にいたタイムファイヤー:リュウヤがGゾードを破壊するが、自身もまた死亡する。
リュウヤが改変した歴史
2994年、Gゾードの時間移動実験に立ち会ったリュウヤは、実験の失敗により巻き込まれた時空の中で、ロンダーズ逮捕のためタイムファイヤーとして派遣された自分が死亡する未来(正しい歴史)を見てしまう。
同時に、タイムファイヤーがGゾードによって殺されるという歴史に記されていない間違った歴史も。
正しい歴史、間違った歴史、どちらに転んでも自分の死は動かない。
だが、歴史的事実として、死亡するのはブイレックスのパイロット:タイムファイヤーであり、その事実を知っているのはリュウヤ自身だけだった。
そこでリュウヤは、ブイレックスのパイロットを自分以外にすることで、正しい歴史を守りつつ自分が助かるよう仕向けることにした。
そのため、あらかじめタックの中からタイムファイヤー関連のデータを全て消去し、時間移動実験で行方不明になったのがGゾードでなくブイレックスであるという偽の情報を与え、自分の命令に従うよう指令チップを内蔵させておいた。
3000年2月、ドルネロは歴史どおり2000年へと逃亡し、リラが変装したリュウヤと、レンジャー隊員4名がそれを追った。
予定どおりタイムレンジャーは変身し、ジェッカーはリバウンドを起こした。
リュウヤは、後に起きるGゾードとの戦いに自分がタイムファイヤーでなくタイムレッドとして参加できるよう、また、それまでに4人のタイムレンジャーをタイムロボの操縦に慣れさせておくようにとの考えから、独断でタイムロボの出動を許可した。
そして、後々の災いを断つため、リラと共に20世紀に行った4人のレンジャー隊員の身元や過去を調べ、彼らに都合の良い30世紀が何かを調べ始めた。
また、リュウヤは、自分がブイレックスのパイロット:タイムファイヤーにならないよう、ブイコマンダーごとブイレックスを20世紀に送り、手にした者が身代わりとなるようにした。
そして、予定どおりGゾードが2000年に現れるや、自らも20世紀に出向き、正しい歴史を辿るように、ドルネロに封印されていたギエンを解放した。
リュウヤは、その後ユウリ達の前に現れ、竜也のクロノチェンジャーを取り上げてタイムレッドとなった。
だが、ギエンの解放を先に行ってしまったのが災いして、自力でGゾードを破壊できなかったため、竜也が再びタイムレッドとなってGゾードを破壊した。
多少予定が狂ったものの、自分は死なずにGゾードを破壊できたことから、リュウヤはユウリらに帰還を命じ、30世紀に戻った。
そして、2001年2月4日、身代わりであるタイムファイヤー:滝沢直人が死亡し、リュウヤは、3001年に帰還したユウリ達の記憶を消去して完全犯罪の完成を企む…。
ラストへの流れ
ギエンの破壊と殺戮への欲望は日に日に増すばかり。
とうとう致死率100%の細菌兵器レダーウイルスに感染しているヘルズゲート囚エンボスを解凍し、死を待つばかりのエンボスにウイルスをばらまかせ始めた。
ドルネロは、タイムレンジャーに対し、レダーウイルスに免疫のある自分の血液を5億円で売るという取引を持ちかける。
その血液からワクチンを作って投与すれば、発症後1週間以内の患者は助かるのだ。
そんな大金を用意できない上、ワクチンの大量生産設備も持たない竜也達は、シティガーディアンズの力を借りることにし、竜也では話がこじれそうなのでアヤセに交渉させることにした。
快諾した滝沢は、アヤセに「やっぱり力は必要だろ?」と言うが、アヤセは「そうだな。でも、力だけじゃ生きられない…」と呟く。
ワクチンを作られては、死ぬのが自分だけになってしまうエンボスは、ドルネロとの取引を妨害しようとする。
血液を持ってその場から離れたアヤセだったが、心臓発作を起こして倒れてしまった。
アヤセを心配する竜也の態度があまりに深刻そうなため、ドモンら3人は竜也を問い詰め、アヤセがオシリス症候群だということを知って、なんとかアヤセを30世紀に帰そうと考え始めた。
だが、意識を取り戻したアヤセは、タイムレンジャーとして戦い続け、明日を変えることが自分が生きるただ1つの方法だと言って、タイムレンジャーを続けることにする。
そして、業を煮やしたドルネロは、ついにギエンに制御装置を付けて封印した。
だが、数日後、何者かがその制御装置を破壊し、ギエンを解放した。
解放されたギエンは、戦闘ロボのエネルギーとしてλ-2000を手に入れるべく、ヘルズゲート囚ハーバルを使って、今はシティガーディアンズの本拠となっている第三総合研究所を襲った。
その騒動の中で、浅見渡は瀕死の重傷を負ってしまう。
ギエンが解放されたことを知ったドルネロは、やむなくタイムレンジャーにギエンの逮捕を依頼し、制御装置の作り方を教える。
だが、完成した制御装置をギエンに差し込もうとした瞬間、何者かの妨害で制御装置が破壊されてしまった。
ギエンが逃走した後姿を見せたのは、リュウヤ隊長だった。
リュウヤは、竜也達5人に、30世紀が消滅の危機に瀕していること、それを防ぐには、これから20世紀に出現するGゾードを破壊するしかないことを語った。
時間移動実験に失敗したのは、ブイレックスではなくGゾードだったのだという。
そして、竜也達5人にとって驚愕の歴史上の事実…アヤセ達4人は最初にリバウンドした囚人との戦いで死亡したことになっていること、竜也がタイムレッドになったことも歴史上の事実だったことを告げる。
リュウヤは、自分が竜也の子孫であること、渡は今日明日にも死亡し、竜也はその跡を継いでシティガーディアンズを発展させ、やがてはインターシティ警察へと成長させることを説明し、竜也に歴史上の役割を果たすよう言ってクロノチェンジャーを取り上げた。
竜也は、自ら選んだはずのタイムレンジャーになったことまでが歴史に定められたことだと知らされ、母からの渡の重傷の連絡を受けて1人その場を去っていった。
そしてリュウヤは、Gゾードが出現すると緊急システムを発動させ、ユウリら4人を従えてタイムロボβに合体した。
リュウヤは、ユウリ達をロボットでの戦闘に慣れさせるためにこれまでタイムロボを使わせてきたのだった。
Gゾードの装甲は強固なため、ミュートエネルギー炉に通じる背後の排熱口を狙うしかない。
Gゾードが戦闘モードにならないうちに破壊しようとしたリュウヤ達だったが、ギエンがGゾードを攻撃したためGゾードは戦闘モードになってしまった。
そして、リュウヤはGゾードの反撃からギエンを守るためにタイムロボβを盾にする。
ブイレックスも戦闘に加わったが、大きなダメージを受けて自己修復モードに入り、Gゾードには逃げられてしまった。
ユウリ達に待機を命じたリュウヤは、ギエンの元を訪れ、Gゾードとの戦いには干渉しないよう命じた。
ギエンを解放したのは、リュウヤだったのだ。
だが、ギエンは、Gゾードのミュートエネルギー炉を狙って何かを作っていた。
そして、そこには、ドルネロが放った探知盗聴メカの姿もあった。
渡の病室を訪れた竜也は、浅見グループの重役達から、明日の役員会に会長代理として出席するよう求められた。
ワンマンである渡が倒れた今、長男である竜也が会長代理となる以外にグループをまとめる方法はないというのだ。
グループ数万人の従業員とその家族のことを考え、竜也は承諾するしかなかった。
一方、竜也が家に戻ることで自分の立場が危うくなることを危惧した滝沢は、治安維持局の伊吹長官に面会を求めた。
そして、そんな竜也に、母:奈美江は、「会社、辞めちゃうの?」と、渡の昔のことを教えた。
渡もまた、若い頃に家を飛び出して自力で立とうとしたことがあったが、成功の裏に全て浅見家の根回しがあったことを知り、家に戻ってグループの発展に全力を注ぐようになったのだという。
父も運命に負けたのかと諦めかけた竜也は、「でも、お父さん、一度もそれを誰かのせいにしたことなんてないわよ。全部自分で決めたことだから」という奈美江の言葉に衝撃を受ける。
翌日、再び現れたGゾードに対し、リュウヤは、タイムシャドウでGゾードを押さえ、タイムロボβで排熱口を狙う作戦に出る。
だが、ギエンの拘束装置によって3体は動きを止められてしまった。
「ギエンをGゾードから遠ざける」と、あくまでギエンを逮捕する気のないリュウヤに、ユウリ達は激しい違和感を感じるが、仕方なく命令に従い、ギエンを排除するために戦うことになった。
一方、役員会に出席するため重役達と共に車で病院を出発した竜也は、最後に一目見ようとトゥモローリサーチの事務所に立ち寄る。
そこへ、ギエンの攻撃を受けてボロボロのタックが戻ってきた。
タックは、竜也にユウリ達が苦戦中であることを告げて機能停止してしまった。
竜也は、今一番やりたいこと…ユウリ達を救うために走った。
そして竜也は、ユウリの指示に従って拘束装置を破壊し、リュウヤからクロノチェンジャーを取り戻して再びタイムレッドに変身する。
自己修復を終えたブイレックスの背に乗り、その突進力を利用してGゾードを飛び越えたタイムロボαは、見事Gゾードの排熱口を通してエネルギー炉を破壊した。
Gゾードの破壊を見届けたリュウヤは、5人に衝撃の事実を伝えてタイムジェットで30世紀に帰った。
もうじき2001年の大消滅が発生し、世界の3分の2が消滅する。
だが、それは歴史上の事実なので、一切手出ししてはならない。
その前に、リュウヤが乗ってきた時間飛行体で31世紀に帰還せよ、と。
事務所に戻った竜也の下に渡の意識が戻ったとの連絡が入った。
また、タックも修復は可能のようだ。
未来に帰れる喜びよりも、大消滅にさらされる21世紀への心配の方が勝っている4人だったが、ひとまずクリスマスを楽しんだ。
そして、シオンはタックの修復作業を開始し、タックの内部にリュウヤの指示によって行動させるためのチップが内蔵されていることを知った。
一方、盗聴メカでタイムレンジャーの会話を聞き、ギエンのせいで大消滅が起きることを知ったドルネロは、ギエンを殺すことを決意し、殺し損なった時のことを考えて作戦行動中だった囚人達を再び圧縮冷凍し、まとめていた。
ドルネロは、最悪の場合、タイムレンジャーに引き渡してでも囚人達を助けようと考えたのだ。
だが、再び圧縮冷凍されることをよしとしない囚人:ゲートは、そのまま作戦を続けていた。
年が明け、タックの修理が完了した。
タックは、自分がリュウヤによって間違ったデータを与えられていたことにショックを受けて一旦は5人の元を去ったが、シオンの説得により、5人の元に帰ってきた。
タックの活躍で作戦が失敗したゲートは巨大化し、タックは緊急システム発動依頼するが、拒否された。
タイムロボもタイムシャドウも使えなくなった5人は、タックのアドバイスで、タイムフライヤーでブイレックスを援護する。
タックは、リュウヤの命令を無視して竜也達をフォローし続けたために回路がショートして機能停止してしまったが、シオンがリュウヤの秘密チップに気付いた時にデータのバックアップを取っていたため、復活することができた。
しかも、リュウヤの呪縛から解き放たれたタックは、自分のデータの中に消去されたデータの断片が残っていることを知り、その復元作業を開始した。
Gゾードのミュートエネルギー炉にλ-2000が使われていたことを知ったタックは、λ-2000についてのデータ修復を急ぐ。
その頃、滝沢は、内閣調査室の伊吹と手を組んで、シティガーディアンズを政府の管理下に移し、竜也が浅見家に戻ってきても自分の立場が揺らがなくなるよう手を打っていた。
時を同じくして、ギエンは、λ-2000をΖ−3に変換して戦闘ロボ・クライシスを作成し、破壊を開始する。
そんなギエンの前にドルネロがやってきた。
ドルネロは、大消滅阻止のため、直接ギエンを殺そうとしていた。
対峙する2人を目にしたユウリは、ギエンの攻撃からドルネロを庇って足に傷を負う。
ユウリを後目に、ギエンとドルネロは場所を変えて戦い続ける。
それを追ったユウリと竜也が見たのは、非情になりきれなかったためにギエンに返り討ちにされ、既に虫の息のドルネロだった。
ドルネロは、竜也にアジトの在処を教え、囚人達を30世紀に連れ帰るよう頼んで息絶えた。
家族の仇のドルネロを逮捕できず終いになったユウリは竜也の胸で号泣する。
そして、クライシスを破壊されたギエンは、更に強化してネオクライシスを作り始めた。
一方、病床から復帰した渡は、シティガーディアンズを簒奪しようとした直人を解任した。
シティガーディアンズの技術陣は、既にブイコマンダーの声紋ロックを解除する方法を発見し、直人の声紋を解除していたのだ。
直人は、ブイコマンダーを奪って逃走したが、タックから、歴史では、今日タイムファイヤーが死ぬことになっていると知らされた。
竜也は、時間飛行体の動かし方をタックに習っておき、回収した囚人とユウリ達4人を無理矢理31世紀に戻らせた。
1人になった竜也は、ゼニットとの戦いで負傷した直人を見付け、避難所に運ぶ。
運命にあらがおうとした直人だったが、結局、自分が飼っていた文鳥を譲った少女を庇い、ゼニットの銃弾を受け、竜也にブイコマンダーを託して逝った。
31世紀に戻った彼女らを待っていたのは、記憶と異なる世界だった。
ユウリの両親・妹は生きており、ドモンの処分は1年間の出場停止に変わっていて、オシリス症候群の治療法も確立されていた。
嬉しい変化に戸惑いながらも、20世紀・21世紀での記憶を消されると知らされたことで、きな臭いものを感じ始める4人。
4人は真実を求めて脱走する。
エネルギーを抜かれて廃棄処分にされたタックは、周囲のスクラップからありったけのエネルギーを吸い取って活動を再開し、ユウリ達の行動を支援する。
クロノチェンジャーとタイムジェットγの強奪、そして緊急システム発動スイッチの確保…だが、スイッチ確保に向かったアヤセにリュウヤが迫る。
司令室に飛び込んだユウリ達が見たのは、揉み合いの末に自らを撃ち抜いてしまったリュウヤの姿だった。
リュウヤは、一連の事件全てが、自分の死という歴史的事実を消すためのことだったと語った。
「自分の死を知ったら、それを変えられる手段があったら、誰だってそうする。そうだろう…」と言うリュウヤ。
「あんたも明日を変えたくて…」と呟くアヤセの腕の中で、リュウヤは「6年掛かった…だが、結局、同じ結末だ…」と事切れた。
タックは、タイムジェットの発進スイッチを押すために司令室に残り、「君たちの選択は間違っているかもしれない。でも僕は信じる。君たちが自分で選んだ明日を。そこでまた会おう!」とユウリ達を送り出した。
明日を変えようと足掻いて敗れたリュウヤの死体を後に、ユウリ達は21世紀へと向かう。
21世紀では、ゼニットの大群を相手に孤立無援で戦っていたタイムレッドがダメージで変身が解け、大消滅の危険を減らすため攻撃を禁じたブイレックスもまた倒れ伏していた。
そこにユウリ達が駆け付け、ガンマトルネードでネオ・クライシスを吹き飛ばし、ボルユニットでゼニットを蹴散らす。
どうして戻ってきたと聞く竜也に、アヤセは「31世紀は、とんでもない世界になってたんだ」と笑う。
タックとシオンの分析で、2001年の大消滅の原因は、ブイレックスとギエンのエネルギー源:λ-2000であることが分かった。
DVディフェンダーでブイレックスのλ-2000をΖ−3に変換させ、マックスバーニングでギエンのλ-2000を粒子レベルに分解すれば大消滅は防げる。
シオンはλ-2000を変換するビームを撃てるようにDVディフェンダーの調整を始めた。
その間に、ドモンはホナミと最後の時間を過ごす。
大消滅を食い止めれば歴史が変わってしまうため、未来人であるユウリ達は、どうなってしまうか分からないのだった。
DVディフェンダーの改造が終わり、ブイレックスのλ-2000はΖ−3に変換できた。
後は、ギエンのλ-2000を分解するだけだ。
先の戦いで足が動かなくなったブイレックスのために、タイムロボαがネオ・クライシスを正面に引きずってきた。
そして、マックスバーニングによって、ギエンのλ-2000は分解され、同時にネオ・クライシスは大爆発を遂げた。
歴史が変わり、竜也達は時空流に飲み込まれた。
シオン「僕たち、戻らなきゃいけないみたいですね。新しい31世紀に」
竜也「やっぱり未来は変わったのか」
アヤセ「さあな。だが、お前と変えた明日の延長にあるんだ。悪いはずがない。だろ?」
1人、また1人と竜也の周りから消えていく仲間達。
竜也は、最後にユウリを抱きしめて告白したが、彼女もまた消えていった。
消えた仲間達が未来でどうなるのかは、分からない。
だが、竜也の胸には、ユウリの「私たちバラバラになるんじゃないわ。繋がった時間を生きてる。竜也達の明日の中に生きてるのよ」という言葉が響いていた。
竜也が現実世界に戻った時、そこにはブイレックスもタイムロボもなかった。
1年後。
ホナミには、ドモンとの子供が生まれていた。
竜也は、相変わらず家には戻っていなかった。
やがて戻るにしても、きちんと真正面から浅見と向き合える人間になるために自分を鍛える日々を送ろうと決意していた。
「お前達は千年先にいる。俺はそこへ向かってるんだ。辿り着くわけないけど、でも、お前達と確実に繋がってる。俺がこれから作る『明日』っていう時間の中で」
竜也は、明日を変えるために、今を全力で生きる。
Vシネマ:未来戦隊タイムレンジャーVSゴーゴーファイブ
VシネマのVSシリーズ第6弾。
『ゴーゴーファイブ』最終回においてはっきりと死亡を描かれなかったピエールが生きていて、ロンダーズに力を貸したという設定。
既に基地を失い、モンドにブレスも持って行かれてしまって変身不能になったゴーゴーファイブが、ロンダーズの破壊活動を歯噛みして見ている状況から始まる。
その意味では「ありかな」と思わせる物語ではあるが、違う時代に放り出されて変身不能になる10人、普通の拳銃で破壊されるゼニット、何故かタックとの合体用ソケットが内蔵されているブイレックスなど、本編の設定が無視されている描写が多い。
また、10月中の設定なのに、12月に竜也が初めて思いついたブイレックスにタイムロボαが乗る戦法が使われているなど、かなり頭の痛い展開が続く。
ただし、四次元ポケットよろしくタイムロボαの胸のタイムゲートから、マックスゴーライナーが飛びだしてくる描写と、ビクトリーロボのブレイバーソードから時空剣に炎が移っていく画面は圧巻。
なお、こういった作品になると、『タイムレンジャー』の特殊性が浮き彫りになる。
通常だと、VSシリーズでは、画面をにぎわすために復活怪人が登場するのだが、『タイムレンジャー』では所謂怪人が死なないため、復活怪人が登場できない。
そのため、双子の弟、姉、伯父、又従兄弟といった設定で着ぐるみの使い回しをしている。
その中に「ブラスター・マドウの隣に住んでいた」囚人が登場するが、笑うところなのか突っ込むところなのか分からなかった。
また、タイムレンジャーの名乗りがいかに味気ないかもよく分かる。
5人揃っての口上がないために、タイムレッドが「人の命は地球の未来」と言っているくらいだ。
『海賊戦隊ゴーカイジャー』での展開
18話『恐竜ロボットドリルで大アバレ』
突然現れた凄い銀色の男:伊狩鎧。
交通事故で死にかけた際、仲代壬琴からゴーカイセルラーを与えられ、既にジュウレンジャー、タイムレンジャー、アバレンジャーの大いなる力を得ており、レンジャーキーさえあれば発動できるという。
そして、ゴーカイセルラーにタイムファイヤーのレンジャーキーをセットすると、31世紀から豪獣ドリルがやってきた。
鎧の回想シーンで、アバレキラー:仲代とドラゴンレンジャーと共にタイムファイヤーが並んでいる。
仲代がゴーカイセルラーを授ける間、変身も解かず、一言も喋らないで立っているだけだったが、DVディフェンダーを左手の甲にぶつける仕草だけはしていた。
40話『未来は過去に』
突然呼びもしないのに豪獣ドリルが現れた。
その中には、大いなる力を手に入れるために2010年10月2日に行って寝隠神社を守れとのドモンからのメッセージビデオが入っていた。
メッセージに従って過去に行った6人は、骨のシタリやザンKT0を倒し、寝隠神社を守った。
2011年1月公開の映画『天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー』にゴーカイジャーが出演したことを巧く説明しつつニンジャマンの眠る壺を守らせてカクレンジャーの大いなる力の発現に繋げた一編。
ラストに森山ホナミが登場したことで、途中で絡む少年がドモンとホナミの息子:未来(みらい)だということが分かる。
鎧が神社を守った証拠写真としてホナミと未来も写った写真を豪獣ドリルに載せて帰したことから、ドモンは息子の顔を見ることができた。
ドモンが出てくること自体反則だが、ホナミと我が子の写真を見て涙する姿はなかなかの見所。
『タイムレンジャー』50話の演出からすると、ドモンはホナミの妊娠を知らないはずだが、ホナミに子供がいるのを見て「なんだ、俺に似てハンサムじゃないか…」と言えるほどホナミを信じているのだろう。
なお、この回で登場するメッセージビデオはタイムエンブレムからの投影だが、エンブレムの文字は玩具準拠になっている。
傾向と対策
シリーズ22作目(『ゴレンジャー』からは24作目)となった『タイムレンジャー』は、正統派だった前作とはうって変わって変則的な戦隊となった。
敢えて統一感をなくしたメンバー、最初から謎を匂わせた物語展開、組織に属しながら孤立したチーム、自由に使えない巨大ロボなど、妙なリアル感の漂う作品だ。
OPが女性ボーカル、OPでの歌詞表示、タイトルコール以外に「○○戦隊」の部分が全く存在しない、怪人を殺さない、パーソナルカラーのゴーグル、赤のレギュラー戦士が2人と、シリーズ唯一となっている要素も多い。
設定面ではかなりリアルでハードな物語を目指しているし、デザイン面ではこれまでにない方向性を打ち出している。
また、最初から謎を見え隠れさせるなど、リアル指向ならではの物語展開を見せている。
まず、リアルな設定という面から見ていこう。
設定がかなり細かく作られており、1話ではタイムレンジャーが所属する時間保護局という組織の背景が丁寧に語られている。
時間保護局が作られた経緯、5人一組のレンジャー隊員とタイムレンジャーという戦闘モードの意味、向かう時代の基礎知識が1年の期限付きで脳に刷り込まれるといった物語中の基本知識が正面から語られるのだ。
この情報密度は相当なものだ。
さらに、逃走したドルネロらを追うメンバーを新人隊員から勝手に選ぶリュウヤと、反対はするものの言いくるめられて止めることもできない保身主義の上役といった裏側も見せてくれている。
この時に上役を言いくるめたリュウヤは、実はリラの変装なのだが、そのリラに易々と言いくるめられてしまう(ということは、それが通じるとリラが思っている)上役の存在が、時間保護局という高尚な組織を人間臭い俗なものにしている。
逆に言うと、1話でこれをやっているから、その後毎週のようにリュウヤがタイムロボを勝手に送っても違和感がないのだ。
続く2話では、20世紀に取り残された4人の境遇が描かれているが、これは伏線としてラストできちんと決着が着けられている。
次に、タイムレンジャーのメンバーについて見てみよう。
タイムレンジャーは、スーパー戦隊シリーズでは非常に珍しい、と言うよりほとんど唯一の面識もなく能力を買われて選ばれたわけでもない全くの寄せ集め戦隊だ。
スーパー戦隊シリーズには、互いに面識のないメンバーを集めて戦隊が結成されるというパターンが多い。
だがその場合、何らかの理由をもって集められるのが普通だ。
『デンジマン』『サンバルカン』『ゴーグルV』『ダイナマン』『バイオマン』『チェンジマン』『マスクマン』『ターボレンジャー』『ジェットマン』『ジュウレンジャー』『ダイレンジャー』『カクレンジャー』『オーレンジャー』『ガオレンジャー』『アバレンジャー』では、戦士としての資質を買われて集められている。
『オーレンジャー』については、グリーン以下4人は元々同じ部隊の所属だったが、肝腎の隊長が全く知らない人なので、ここでは面識がないという扱いにしている。
『チェンジマン』について異論があるかもしれないが、チェンジマンの5人は、1話の地獄の特訓に参加させられた時点で、アースフォースに選ばれる可能性のある者と目されていたのだ。
このように、戦隊のメンバーが特に理由もなく集められるということは、『タイムレンジャー』以前にはなかった。
『タイムレンジャー』は、『カクレンジャー』や『シンケンジャー』同様、見知らぬ5人が戦いの中でまとまっていくという展開を見せるが、“見知らぬ5人”という点では『カクレンジャー』『シンケンジャー』より念入りだ。
何故なら、タイムレンジャーのメンバーはリラが適当に選んだ4人の新人レンジャー隊員と20世紀の人間:竜也からなっているからだ。
『カクレンジャー』『シンケンジャー』のように宿命で結ばれた戦士達ではない。
リラが4人を適当に選んだのは、タイムレンジャーとしてドルネロ達を追っていくという体裁を整えて時間飛行体を使うために過ぎない。
だから、最初から2000年に着き次第4人を殺すつもりでいたし、そのために経験のない(抵抗される心配の少ない)新人を選ぶことにしたのだ。
物語展開としても正しい判断なのだが、このことがタイムレンジャーの群像劇を成立させている。
新人隊員ということは、互いにそれまで面識がないということで、現代人の竜也だけでなく未来から来た4人も知らない人同士、しかも、例えば『ダイナマン』の夢野博士のような“悪を察知した正義の科学者に選ばれて集められた”わけでもないから、彼らをまとめてくれる“選んだ人”もいない。
更に、戦いをやめて未来に帰るためには“ロンダーズファミリー全員を逮捕する”=20世紀に来た目的を完遂することが条件なのだ。
彼らは、自分達の意思と理由で結束していかなければならない。
だからこそ“自分の力で明日を切り開こう”と言った竜也を求心力としてまとまっていくことになる。
勿論、作劇的にはこの5人には理由があるのだが、その点は後に触れることにする。
敵方に目を向けると、これまたかなり変則的だ。
首領であるドルネロと、ほぼ同格の幹部2人というかなり小規模なキャラ配置もそうだが、金儲けというせこいんだかリアルなんだかよく分からない目的も独創的だ。
ロンダーズファミリーは、簡単に言えばギャング組織で、ボス、参謀格のナンバー2、ボスの愛人という最小限の幹部と、無機物であるゼニット、“とりあえずそこにいるからファミリーに加えてしまえ”的なノリで解凍される囚人達によって構成されている。
この世界征服も人類絶滅も企まない小市民的な悪の組織が、本作のリアリティを支えている。
ロンダーズの武装は30世紀の科学力のため、正面から力押しすれば銀行強盗だろうが金庫破りだろうが自由自在だ。
実際、1話では派手に銀行強盗をして当座の資金稼ぎをしている。
ところが、荒稼ぎしたはいいが、リラがどかすか使ってしまって金庫が空同然になってしまったことなどもあって、ドルネロが「ドカンと入ると、その分派手に使っちまう」と反省したことから、堅実に“長期的にそれなりの収益が見込める犯罪”を主体として経営していくこととなった。
こう書くと何が何だか分からないだろうが、ドルネロやリラは、悪の組織としては常識はずれなことに、レストランで金を払ってディナーを食べるし、洋服店や宝石店で高価な服や宝石を買い漁るのだ。
しかも現金の即金払いだ。
欲しい物があれば奪い取るのが悪の組織だろうに、あろうことか金を払って買う!
どうして、こんな非常識な行動を取るのかといえば、先にも書いたがロンダーズがギャング組織だからだ。
敢えて分かりやすい喩えをするなら、ロンダーズは社会の寄生虫であり、社会そのものが機能しなくなれば存在が危うくなるのだ。
彼らには別に思想や自分達なりの正義といったものはなく、楽して大金を稼いで面白おかしく暮らしたいだけだ。
だからこそ、何かと動きづらくなってきた30世紀に見切りを付けて20世紀にやってきたわけだ。
こういった行動理念だから、無駄な殺人も破壊もしない。
金儲けに繋がる破壊なら全く躊躇しないが、基本的には邪魔をしない奴は傷つけない。
破壊活動によって安く買い叩いた土地を企業用地として売る、ビルを破壊すると脅して金を巻き上げるなど、時折“破壊活動ありき”な作戦もあるが、これも目的があってターゲットを絞った小規模な破壊だ。
また、ドルネロは効率的な金の儲け方を色々考えているようで、同時に複数の囚人を解凍して、その能力に合わせた作戦行動を行わせている。
タイムレンジャーにバレた作戦から潰されているため、結果的に1人ずつ活動しているように見えるだけだ。
この手の番組でよくある“どうして一度に大勢の怪人を出さないのか”という疑問に対する1つの回答と言える。
金儲けのやり方も、必ずしも暴力的なものばかりではなく、宝石泥棒やインチキカウンセラー、インチキ宗教など、現実的な犯罪も多い。
特に21話『シオンの流儀』での、未来の飲料ネオアルコールを薄めたパワースプリッティーなる清涼飲料水の販売作戦は、現代日本の法律から言えば違法ではない。
このエピソードでは、ドルネロ自身が人間(金城銅山)に化け、弱小飲料メーカーにネオアルコールの濃縮原液を持ち込んで製造販売させ、ヒットさせるという作戦が遂行されている。
その流通には現代の日本のメーカーによる生産・販売ルートを使用しており、暴力的な行動も囚人の特殊能力による支援もない。
本当に“社会のニーズにあった商品”による商業的利益だけを追求しており、しかも労働搾取すらしていない。
ドルネロが日本のメーカーを利用してパワースプリッティー製造・流通を行った理由は、設備投資が不要であること、設備の建設期間を必要としないこと、あくまで裏で利益を得たいことなどからと思われる。
恐らく提携先に弱小メーカーを選んだのは、利益配分の契約上有利になるからで、この辺は金の亡者ドルネロの面目躍如といったところだが、それだって正当な商取引の範囲内のことのようだ。
何しろ、メーカーの社長は、金城を社の救世主のように扱い、心から感謝していたくらいだ。
この作戦で唯一違法性があるのは、未来の化学が生みだした化合物であるネオアルコールを20世紀で製造したことが歴史の改変に繋がる恐れがあり、時間保護法に触れることだろう。
番組中では、ドルネロがいたから逮捕だ的な展開だったが、ドルネロとしては、ネオアルコールに気付いたタイムレンジャーが踏み込んでくるころまでは普通に売り、気付かれた後はハイドリッドを用心棒に、原液がなくなるまで一気に製造しようという作戦だったと思われる。
短期間ではあったが、あれだけ爆発的に売れたのだから、数千万円は稼げただろう。
しかもロンダーズ側の被害は、戦う以外に能のない囚人1人だけ。
作戦行動にかかる経費が掛からなかったのは大きい。
地味ではあるが、費用対効果から言えば大成功だ。
このように、ロンダーズの、というよりはドルネロの作戦は、非常に合理的かつ小市民的だ。
ロンダーズが金儲け主体の組織であることは、タイムレンジャーの面々の思考にも反映されている。
19話『月下の騎士』でロンダーズがλ-2000を強奪した時も、その目的がλ-2000をΖ−3に精製するつもりだというところまでは読めたが、タックは「この時代では金儲けの種にもならない。恐らく自分達で使うつもりだろう。ロンダーズとはいえ生活エネルギー源は必要だからな」とあっさり片付けているくらいだ。
また、リラが主体の作戦の場合、金よりはもっと即物的な行動になる。
未来の有名画家に自分の肖像画を描かせるために誘拐するとか、エステのために異星の植物を養殖したら海が汚染されたとかいった具合で、ワガママが悪事に直結しているだけだ。
これにより、ロンダーズは、スーパー戦隊シリーズ屈指の大破壊をしない組織となった。
これは、ドルネロの金中心のものの考え方から来ている。
得にならない殺人も破壊もしたがらないのだ。
もちろん、ユウリの父親のように、自分に敵対する存在は、放っておくと損失を生むから躊躇なく殺すのだが。
解凍した囚人は、新たなファミリーの一員であり、それなりに扱う。
最終回間際では、自分がギエンを殺せなかった場合=大破壊が起きてしまう場合のことを考えて、作戦行動中だった囚人全てを呼び戻し、事情を話して再び圧縮冷凍している。
そして、自分の死に際し、ユウリにアジトの場所を教えて囚人の保護を依頼するなど、囚人達を救うことを真剣に考えている。
囚人の中には、ドルネロとは無関係な者も多いが、それも含めて全員未来に連れ帰ってくれるよう依頼していることからも、ドルネロが無益な殺生を好まない性格であることが分かる。
9話『ドンの憂鬱』では、昔つるんでいたアーノルドKが古株面してファミリーに不協和音をもたらしたため、いきり立つギエン・リラを見かね、ドルネロはアーノルドの銃が暴発するよう細工し、圧縮冷凍されるよう仕向けた。
そして、ギエン達に「昔なじみより金と欲で繋がった仲間を選ぶぜ」とうそぶいている。
ここには、旧友をあっさり見限る非情なボスの姿があるようだが、その本心は、「殺されちまうよりはマシだろう」とアーノルドのことも考えてのことだった。
この“強面のくせに妙に愛嬌があって人情家”というのがドルネロの魅力で、ロンダーズを魅力的な組織にしている。
そして、それがまたドルネロの弱点でもあり、ラストへと繋がっていくのだ。
ドルネロの作戦方針は個人的には大好きだが、物語展開上では、派手な映像が出てこない、悪の脅威が描けないというジレンマに陥る。
結婚詐欺師や悪徳警官では、恐怖の組織という印象は持てないだろう。
それだけでなく、スーパー合体や新ロボ登場などの説得力も得難い。
その穴を埋めるのがギエンとヘルズゲート囚だ。
元々ギエンには、手がマシンガンになるとか顔が展開して怖い表情になるなどのギミックがあり、攻撃的なイメージのキャラになっている。
そこを活かし、ドルネロ・リラのペアから若干距離を置くことで、“破壊と殺戮”という自分の楽しみのためなら何でもやるようなイカレたキャラにしてしまった。
これにより、突発的に何の脈絡もなく大破壊をやらかす展開に無理が生じない。
そして、特に凶悪囚人だけを集めて厳重に隔離したブロック:ヘルズゲートに収納されている、金儲けのタネにはならない囚人達は、その設定故に凶悪なまでの破壊力に説得力が出る。
タイムシャドウ、シャドウベータ、ブイレックスの初登場は、いずれもギエンの行動時であり、スーパー合体であるシャドウアルファと新ロボ:ブイレックス登場時はヘルズゲート囚が関わっている。
いつもより破壊力のある囚人が相手だから、新ロボの強さをアピールできるわけだ。
特に、圧縮冷凍能力を持たないタイムシャドウの初登場時が、破壊して構わない破壊兵器:ノヴァである点は巧い。
作劇的にも、金儲けの仕組みについての描写が不要であること、戦闘描写的には凶悪犯が相手であることと、いずれのニーズにも合っている。
18〜20話でノヴァやヘルズゲート囚ブラスター・マドウを使う際には、あらかじめギエンがドルネロとリラに高級リゾートへのバカンスをプレゼントしておくなど、妙に用意周到だ(そのためこの18、19話は2日間の連続した話になっている)。
バカンスから帰ってきたドルネロにどやされ、ヘルズゲートの鍵を取り上げられても「鍵が1つとは限らんぞ」と笑いながらスペアキーを作っていたり、ギエンの危険人物ぶりがこれでもかと強調されている。
そして、23話『ビートアップ』では、電気を吸収してやがて自爆する体質の囚人ウーゴを爆発させようと暗躍しているが、停電してセキュリティが利かなくなった銀行等から金を盗み放題になったこと、結果としてウーゴは大爆発を起こさないまま圧縮冷凍されたことなどから、こちらはお咎めなしだった。
外見上は、いつもの金儲けのための作戦と変わらないからだ。
ちなみに、この回がアサルトベクターの初登場だったりするわけで、やはりギエンがやってくれたと言うべきか。
ギエンはこの後、28話『再会の時』でまたヘルズゲート囚を勝手に解凍し、ドルネロとの不協和音が徐々に大きくなっていき、最終的には、実質3人しかいないロンダーズが組織崩壊を起こすという前代未聞の結末を辿ることになる。
後に、『轟轟戦隊ボウケンジャー』でダークシャドウが似たような崩壊を見せるが、ロンダーズは中盤からじっくり見せていただけに説得力が段違いだった。
そして、ギエンは、作中唯一のタイムレンジャーによって殺された犯罪者となった。
そう、タイムレンジャーが殺したのはギエンただ1人だ。
ドルネロはギエンに殺され、リラは逃走し、所謂「怪人」に当たる囚人達は全員圧縮冷凍されている。
タイムレンジャーは、スーパー戦隊シリーズで唯一“怪人を1体も殺さなかった”戦隊なのだ。
『タイムレンジャー』に登場する「怪人」は、全て異星人の犯罪者であり、既に刑に服していたのをドルネロらが解凍したものだ。
タイムレンジャーは本来、時間犯罪者を逮捕するために過去に派遣される時間保護局の職員だ。
言ってみれば、現実の刑事と同様の存在であり、逮捕権と捜査権はあるが、勝手に犯罪者を処罰することはできない。
もし囚人を殺せば、タイムレンジャー自身が犯罪者になるということが劇中で語られている。
ほかにも再三にわたり逮捕が目的であることが語られる。
タイムファイヤー登場から3話後の32話『犯罪者を救え』では、事情を知らないタイムファイヤーが囚人DDラデスを殺そうとするのを止め、「お前達も殺してるじゃないか」と反論されて「僕たちは圧縮冷凍して逮捕しているだけです」と言い返している。
実際、タイムレンジャーの使命は、刑務所建物内の全ての囚人を取り戻し、ドルネロ・ギエン・リラを逮捕することにある。
最終的に、ユウリ達はギエンを殺す道を選び、なおかつ歴史を変えることまでやっているわけだが。
まぁ、歴史を変えることに比べたら、犯罪者を1人殺すくらいは大した罪ではないだろう。
リュウヤといい、よりにもよって時間保護局の職員が積極的に歴史を改変しようというのだから、困ったものだ。
さて、そのタイムレンジャーだが、『カクレンジャー』以来の“紅一点がリーダー”の戦隊となっている。
これは、ユウリが元々時間保護局の新入隊員ではなく、新入隊員のふりをして潜入してきたインターシティ警察の捜査官だという事情による。
序盤は、時間保護法その他の法律関係にも詳しく、逮捕術や射撃、格闘術にも通じたユウリが捜査活動のイニシアティブを取っている。
だが、リーダーはユウリでも、求心力を持っているのはやはり竜也なのだ。
30世紀から帰還禁止を言い渡されて混乱していたアヤセ達に対し、「自分達の明日くらい変えようぜ」と言ってのけ、能動的に動くことを促した。
このことが、竜也の求心力になっている。
10話『明日への脱出』で竜也自身が言っているとおり、それは軽いノリで言っただけのことだったが、“明日を変えるため”に危険な戦いに自ら飛び込む竜也の姿は、4人に大きな影響を与えたのだ。
伊達に浅見財閥の御曹司ではないというところか。
狙ってやってるわけではないところが、ますますカリスマっぽい。
アヤセ達未来男3人は、それぞれ居場所を求めて時間保護局に入った。
アヤセは、発病すると1〜2年で死ぬといわれるオシリス症候群に罹っていることを知って、夢だったプロレーサーを諦めて。
ドモンは、グラップの試合をすっぽかしたことで永久追放となって。
シオンは、観察される動物のような境遇から抜け出したくて。
そんな彼らは、竜也を中心に次第にチームになっていく。
20話『新たなる絆』では、時空の乱れからもう1人の自分を見てしまった5人が、予想以上に歴史が狂っているのではないかと不安に陥り、また、時間保護局から見捨てられたのではないかと猜疑心に駆られ、更に最初のヘルズゲート囚:ブラスター・マドウに惨敗して八方塞がりとなる。
その時5人は、タイムレンジャーを続ける意味を自らに問い直し、自分の理由で再びブラスター・マドウに立ち向かうべく走り出す。
真っ先に走り出したのはアヤセだった。
アヤセは、竜也の「未来は変えられなくたって、自分達の明日くらい変えようぜ」という一言で、自分にとっての生き甲斐のある“明日”が見付かるかもしれないという希望を持った。
39話『雨に濡れた嘘』で言っている「でも、力だけじゃ生きられない」という言葉は、端的に言うと生き甲斐とか生きる張りといったものが必要だということだろう。
アヤセは、人の命を守るために戦う。
ユウリは、ドルネロを逮捕するために戦う。
シオンは、5人でタイムレンジャーをやっている中に居場所を見出したから、タイムレンジャーとして戦う。
竜也は、ドモンに「目の前でやられてる人達ほっとけない。見てられないんだ」「俺達、みんな自分でタイムレンジャーやること選んだんだ。だったら、その意味も結果も自分で掴めばいいんだよ」と言って戦う。
最後に残されたドモンは、気持ちを整理しきれないながらも仲間と共に戦うことを選ぶ。
このエピソードでは、5人がタイムレンジャーとしての決意を新たにすると共にタイムロボとタイムシャドウの合体という、文字どおり新たな絆を描いている。
“この5人で共に戦う”という自分達なりの決意とそれぞれの戦う理由。
これがあるからこそ、30話『届け炎の叫び』でユウリ達4人はシティガーディアンズに勧誘されてもなびかなかったし、リュウヤが指揮してGゾードと戦う際にも志気が上がらなかったのだ。
ところで、20話で注目すべきは、最後まで煮え切らないドモンだ。
とりあえず戦うことを選んだドモンだが、本来彼は早く30世紀に帰ることを願っていた。
4人の中で最も30世紀に帰ることを願い、そのためにもロンダーズを逮捕し続けることを誓った。
だからこそ、作劇的にホナミというキャラが必要だったのだろう。
タイムレンジャーの5人のキャラには、1年間通しての縦糸となる物語が最初から用意されている。
『フラッシュマン』での“親探し”のような5人共通の縦糸ではなく、1人1人に縦糸があるのだ。
いくつかの戦隊でキャラ1人ずつに年間通しての縦糸を持たせることはしている(『ボウケンジャー』の菜月の正体や『海賊戦隊ゴーカイジャー』のジョーとバリゾーグの因縁など)が、5人全員に縦糸を持たせているのは珍しい…というより、唯一と言っていい。
『ダイレンジャー』では、知やリンには縦糸がなかった。
『タイムレンジャー』では、11話までの間に5人それぞれの縦糸となる背景を描いており、それが年間通しての縦糸として最終回に結実する。
もちろん、縦糸だけでキャラ描写されているわけではないことがキャラの深みになっているというのが前提なのだが。
竜也は、父との確執。
ユウリは、父の仇であるドルネロの逮捕と、竜也との関係。
アヤセは、オシリス症候群と「明日を変えようぜ」という竜也の言葉。
シオンは、故郷を失った孤独と自分の居場所。
そして、ドモンにはホナミとの恋愛。
現代人である竜也は当然として、アヤセは竜也と関わることで希望を抱き、ユウリは20世紀で戦うことがドルネロ逮捕に繋がり、シオンは、20世紀でタイムレンジャーとして“みんなと一緒に頑張ること”がようやく手に入れた自分の居場所だった。
その中で、ドモンだけは、20世紀を守る明確な理由がなかった。
ホナミの登場そのものは9話『ドンの憂鬱』だが、ドモンとの関連は11話から始まり、具体的に話が回り出すのは24話『黄色、時々青』からだ。
30世紀に繋がっている20世紀を守るというのは、具体性を欠く。
だからこそ、ドモンは20話では最後まで煮え切らなかった。
ドモンは、ホナミと恋仲になることで、ようやく20世紀そのものを守りたいという思いを抱いたのだ。
ホナミと付き合い始めてから、ドモンは30世紀に帰りたいと言わなくなっていく。
30世紀への未練は薄れていったが、かといっていつまでも20世紀にいられないことも重々承知していた。
それら各キャラの描写がラストで結実する。
4人は、自分達を救おうと無理矢理31世紀に送り返した竜也のため、共に戦った記憶まで消されることへの反発、そして何よりも竜也と共に生きた世界を守るために都合のいい未来を捨て、時間保護局を裏切り、歴史を変えるという犯罪を犯すために21世紀へと向かうのだ。
だが、その暴挙には、見ている側がすんなり納得できるだけの重さを持った背景があった。
6人目の戦士であるタイムファイヤー:滝沢直人も立ち位置の面白いキャラだ。
前述のとおり、1つの作品にレッドが2人レギュラーで存在するというのは、スーパー戦隊シリーズでも唯一となっている。
そのせいかどうかは知らないが、ファイヤーはタイムレンジャーの一員ではない。
これまでも追加メンバーが“メインメンバーと行動を共にしない”ことは多かったが、明確に別組織に所属していて利害が一致しないというのは珍しい。
前々作『星獣戦隊ギンガマン』の4クールでは、黒騎士ヒュウガがブクラテスと手を組む形でアースを捨て、独自のアプローチでゼイハブ打倒に動いた。
だが、これは方法論が違うというだけで、バルバンを、ゼイハブを倒すという目的は同じだ。
『オーレンジャー』のキングレンジャー:リキも、ドリンの騎士として独自に動いているが、バラノイアと戦う味方の勢力だった。
後の『忍風戦隊ハリケンジャー』のシュリケンジャーは、御前様の密偵として独自に行動し、ハリケンジャーにもその目的を告げないまま共闘関係を築いていたが、御前様はハリケンジャーにとっても背後組織の長であり、同じグループの別会社のような存在だった。
だがタイムファイヤーは、タイムレンジャーの5人とは根本的に存在理由が異なる。
滝沢直人は、竜也と旧知の仲ではあったが、その立場はあくまでシティガーディアンズの一隊員でしかない。
たまたまブイコマンダーを手に入れたことからシティガーディアンズ内部で突出した戦力となり、その重要性から出世していったに過ぎない。
そもそもシティガーディアンズは、浅見渡が対ロンダーズのアプローチとして結成したもので、時間保護局とは関係ないし、ロンダーズの正体すら終盤まで知らなかったのだ。
滝沢直人は、シティガーディアンズの隊長として契約者の生命・財産を守る傍ら出世を目指すという目的で戦っているわけで、タイムレンジャーと目的がまるで違う。
ただ、方法論において、ロンダーズの囚人を圧縮冷凍するという手段を取っているに過ぎない。
シティガーディアンズ発足の流れを見てみよう。
浅見渡は、ロンダーズの脅威から国民を守るという命題を抱えた政府の委託を受け、グループ傘下の第三総合研究所に命じ、高純度エネルギーλ-2000と、それを動力源とする巨大戦車ライメイを開発させた。
これは、巨大化したロンダーズに対する抑止力となることを目論んだもので、企業家としての浅見グループとしては、軍需産業への進出も睨んでのものと思われる。
本作には自衛隊は登場しないが、ロンダーズが犯罪者として扱われていることなどからすると、自衛隊の出動は政治的に難しいという前提がある。
民間委託の防衛力というのも国家としてはいい加減な話だが、他国や宇宙からの侵略という金看板がなければ、自衛隊を投入はなかなかできないのがリアルな作劇と言える。
さて、満を持して投入されたライメイだが、所詮は20世紀の技術であり、巨大な生物に対応できるほどの機動力は持っておらず、あっさり破壊されてしまった。
これにより、対ロンダーズのアプローチは、等身大での戦闘と避難誘導による被害防止へと変更せざるを得なくなった。
それがシティガーディアンズだ。
“武装を許可された警備会社”という形式で、携行火力の充実と車両による機動力で契約者を守るという方向性へと変化したわけだ。
実際にロンダーズと対峙した結果としては、“ゼニットは撃退できるが囚人相手は無理”というレベルのものだった。
初戦でゼニットを破壊しリラを退散させたものの、既にその時点でリラには攻撃は通じていなかった。
また、次の出動では、ヘルズゲート囚ジャグルに全く歯が立たず、隊長の土方が負傷して入院するほどの被害を受けている。
この時点で、世間的にはタイムレンジャーは“警視庁の秘密特殊部隊”だろうと思われているわけだが、実際そんな組織が存在しないことを知っている浅見渡にとっては、タイムレンジャーは民間の科学者が個人的に開発した超科学であり、誰が何のためにロンダーズに対抗できるほどの攻撃・防御力を備えた装備を用意できたのかが謎となっている。
また、この一戦で、竜也がタイムレンジャーの一員であることを知り、ますます“民間で組織された特殊装備”であるとの思いを強くする。
浅見渡にすれば、竜也は“空手の経験を持つ身体能力の高い人間”であり、そういった人間を集めて組織されたのがタイムレンジャーだという感覚だろう。
この後、浅見渡は、事情は不明ながら“タイムレンジャーと同じ力”であるタイムファイヤーのスーツを手にした直人を通じて、タイムレンジャーをシティガーディアンズの一員として迎え入れようとして失敗する。
これにより、ブイコマンダーを持つ直人の重要性が大きくなる。
いざという時ロンダーズに対抗できる戦力はシティガーディアンズにはタイムファイヤーだけなのだから、直人を中心として、ファイヤーの戦力を核とした部隊編成にすることでシティガーディアンズは機能していくことになるのだ。
ブイコマンダーを解析し、ブイレックスともども量産化を模索していくことになる。
この結果が48話における“実はブイコマンダーのボイスキー解除”だった。
結局、量産化できるほど内部機構を解析することはできず、単に誰でも使える装備に変えられただけだったが、これがラストでの切り札となったのは前述のとおり。
ボイスキーの解除に成功していながら直人を篤く扱っていたのは、その功績と戦闘能力や経験を浅見渡が高く買っていたからにほかならない。
ここで、直人の出世欲が重要なファクターになっている。
直人は、37話『狙われた力』において、ロンダーズが30世紀から来たことを知ったのに報告しなかった。
いざという時の切り札にするつもりだったのだろうし、実際シティガーディアンズ簒奪を画策した時の切り札となったわけだが、浅見渡に対するこの裏切りが失脚の原因となってしまった。
直人は、浅見渡と竜也の親子の間に入ることで、間接的に両者の対立を再現し、また、組織で昇り詰めて力を得ようとする直人と、与えられた力ではなく自分の力で立ちたいと願う竜也という好対照となった。
言ってみれば、直人は竜也のアンチテーゼなのだ。
49話『千年を越えて』で、直人は竜也に「お前は浅見という力から逃げているだけだ」と言っているが、実際竜也は、自分で何かを起こしたいという野心から浅見の家を出たわけではなく、いきなり地位と責任を押しつけられる立場を嫌って逃げただけとも言える。
この両者の対立は、最終的に、地位も人間関係も一瞬で失った直人と、わざわざ未来に帰したにもかかわらず仲間が助けにきた竜也という対比で、竜也の生き方を認めるような描写がなされている。
『タイムレンジャー』は、基本的には設定がよく練られていてストーリー展開にも無理が少ないのだが、それはメイン脚本の小林靖子氏の力量によるところが大きいと思われる。
というか、情報量が多すぎるせいかサブの脚本家が把握しきれていない様子がまま見られる。
井上敏樹氏脚本の14話『デッドヒート』で、リラが宝石などを盗んで逃げるなどがそうだ。
リラは贅沢をするのが好きなのであって、コソ泥ではない。
特に山口亮太氏の脚本ではそれが顕著で、12話『星に願いを』では、シオンやドモンが「宇宙人」というセリフを連呼する。
『タイムレンジャー』の作品世界では、30世紀では「異星人」という言葉を使うのが普通で、「宇宙人」と言ってはいけないらしい。
4話『人質は異星人』でシオンがハバード星人だと分かった時、竜也が「宇宙人」と言うのをドモンが「宇宙人じゃなくて異星人!」と何度も訂正している。
そのドモンが12話で「宇宙人」と言っているのは、違和感がありすぎる。
また、内容的には良かったが、32話『犯罪者を救え』で、直人が圧縮冷凍を知らないような発言があったのは手抜かりだと思う。
タイムファイヤーの初戦闘時、ブイコマンダーからのナビゲートに対し「圧縮冷凍? 何だか知らないが、了解!」とDVリフレイザーを使っているのに、圧縮冷凍そのものを知らないかのような反応はおかしい。
まぁ、具体的になんなのかは知らなかっただろうから、タイムレンジャーが囚人を殺していると思っていても不思議はないが、もう少し突っ込んでほしかったところだ。
『タイムレンジャー』は、商品展開も独創的だ。
どうやら各種アイテムをリンクさせてプレイバリューを増やそうとしていたのではないかと思われる。
時空剣は、タイムロボαになったつもりで振るうもよし、コクピット内のタイムレッドになったつもりで振るうもよしといった1粒で2倍おいしいを狙ったアイテムだ。
過去、巨大ロボの武器をなりきり系アイテムとして発売したのは、『ターボレンジャー』の高速剣だけだ。
また、巨大ロボの武器をレッドが振るうといった展開は、『カクレンジャー』でサスケが火炎将軍剣で戦ったことが1回あるだけだ。
こういったアイテムが発売されるのは非常に珍しい。
このプレイバリューアイテムの象徴とも言えるのがタイムフライヤーだ。
移動装備の項で書いたとおり、タイムフライヤーはタイムレンジャーにとって高速長距離移動用アイテムであると同時に最も破壊力の大きい武器であり、タイムロボβの武器:フライヤーマグナムでもある。
そのタイムフライヤーの商品は、大小2種類ある。
これは、DXと廉価版という差別化ではなく、巨大ロボ系となりきり系のリンクの関係なのだ。
まず、なりきり系アイテムとして、フライヤーマグナムに変形するタイムフライヤーが発売されている。
このフライヤーマグナムは、商品名は「タイムフライヤー」であり、フィギュア系であるシャイニングヒーローシリーズを乗せることのできるアイテムとして発売されている。
つまり、巨大ロボのなりきり武器兼フィギュア用の乗り物なわけだ。
これは、スケール的に釣り合うからという発想だろう。
もう1つのタイムフライヤーは、巨大ロボ系の玩具として、3Dフォーメーションタイムロボと同サイズで発売されている。
こちらにも同スケールのタイムレンジャーのフィギュアが同梱されており、タイムフライヤーに乗せることができるほか、タイムジェットにも乗せることができる。
その上、タイムフライヤーはフライヤーマグナムに変形してタイムロボβに持たせることができるのだ。
タイムロボβの可動範囲の関係でフライヤーマグナムを格好良く持てないのと、2つ買うと9000円くらいしてしまうのが欠点だが。
子供が持つためのフライヤーマグナムとロボ玩具が持つためのフライヤーマグナム、どちらにもちゃんとタイムレンジャーの人形が乗れるなんて、なんて贅沢な話だろう。
同じような発想で、ちょっとずれてしまった例が「タイムアタッシュセット」だ。
要するにアサルトベクター用の追加パーツがアタッシュケースに入った商品なのだが、商品名に「アサルトベクター」と入れられないのは、追加パーツだけで、肝腎のスパークベクターが同梱されていないからだろう。
武器の項で書いたとおり、このセット内の追加パーツだけ合体させても銃(玩具オリジナル:アサルトライフルと呼称)になるが、玩具オリジナルであり番組内に登場しないのだから、商品名にするわけにはいかない。
ビークスマッシャーやサンダースリンガー、ゴーブラスターと違い、剣を銃に変えるための追加パーツでしかないという性格上、追加パーツだけで銃になっては演出的にアサルトベクターとの差別化がしにくいのだろう。
また、アサルトライフルの形状はアサルトベクターとさほど変わらないため、ますますやりにくい。
こちらもフライヤーマグナムと同じく本編中では演出的にできないが、この追加パーツをそれぞれ乗り物に見立て、シャイニングヒーローを乗せられるようになっている(玩具オリジナル:アサルトモビルと呼称)。
とはいえ、シャイニングヒーローが乗っている姿はあまりにもあまりなため、むしろやらなければ良かった感が強い。
まして、そのせいで銃口や銃把にあるはずのない車輪がくっついているのだから、本末転倒だ。
パーツ自体には電子機器は内蔵されておらず、アサルトベクターの引き金パーツがスパークベクターの引き金部分と連動するような構成にすることで、スパークベクターの音を利用している。
5つのパーツのお陰で、子供が持つと本物と同レベルの対比になるサイズだ。
銃撃音に聞こえる音もあるのでいい手ではあるが、増加パーツの取り付けが難しいことや本編であまり目立った活躍をしていないことなどもあって、残念ながら売れなかったのではないかと思われる。
残念といえば、3Dフォーメーションタイムロボもそうだ。
5機のタイムジェットが2種類のロボになる上、大型戦闘機にもなる。
それだけでも結構凄いのに、5機それぞれに着陸脚が付いていてコロ走行できる。
これは、プロバイダーベースとのリンクで、プロバイダスに叩かせて発進シーンを再現するためのものだ。
タイムロボは、タイムフライヤー、プロバイダーベース、タイムシャドウと、3つの商品とリンクできるように企画されているのだ。
当初の時点ではタイムシャドウそのものまではなかっただろうが、スーパー合体の予定はあったはずだ。
単体で3種類、連携できる玩具が3種類となれば、凄い話だ。
ところが、これが器用貧乏の見本のような話になっている。
タイムロボで圧縮冷凍できるのはαだけなので、どう戦ってもトドメはαになり、その分βやγの印象が弱くなる。
また、チェンジフォーメーションがウリであるからには、本編でも頻繁にチェンジするが、巨大化戦に割ける尺は限られているから、それぞれの活躍シーンが減ってしまう。
βがトドメを刺せるのは相手が単なるメカの時だけなので、フライヤーマグナムも強い印象を与えられない。
フライヤーマグナム&レンジャーセットは、今でこそ「『タイムレンジャー』唯一のプレミアム商品」などと言われているが、放送当時は、あまり売れないまま姿を消し、だからこそ品薄でプレミアム商品になっているのだ。
βは、シャドウベータになってやっとメインを張れるようになったのだ。
戦いに参加しないプロバイダスは、発進シークエンスを笑われておしまい。
…といった具合で、スーパー合体に関与するタイムシャドウ以外はあまりプラスにならない。
一応、ブイレックスにタイムロボαを載せたまま走行させることができ、本編でもクリスマスの総力戦でやってはいるが、所詮載せるだけなので、焼け石に水だったようだ。
商品的にも、関節部の耐久性に問題があるらしく、タイムロボの肩関節可動軸となるタイムジェット1のプラズマバルカンが折れやすいのだそうだ。
タイムロボの中で一番複雑な変形をこなすところだから、負担が集中するのだろう。
プロバイダーベースは、滑走路のオモチャという斬新なアイデアもすごいが、バネの勢いそのままにコロ走行のタイムジェットを叩き出すという神をも恐れぬギミックは破壊神の名を轟かせた…とかなんとか。
場所は取るはギミックは叩くだけだわで、売れる訳ないオーラ全開だ。
また、『タイムレンジャー』という番組自体、ドラマ重視で巨大化戦は単調になりがちだったので、その点でも不利だった。
自由に呼び出せず、勝手に帰ってしまうタイムジェットの見せ場の1つとなるのが発進シークエンスのはずだったが、千年前に来るだけなのになぜか恐竜時代の空を飛んだりしているという謎の演出があって、これまたぱっとしない。
一応、一旦昔に送って云々という設定はあるようだが、1話で同じシステムで送り出された時間飛行体が時空間の中しか飛んでいないことを考えると、現実世界で恐竜の頭上を飛んでいる理由は見付からない。
タイムシャドウに至っては、なぜか月面付近を飛んで、空気もないのに宇宙飛行士を巻き上げるという謎の現象を起こしたり、吸血鬼の邪魔をしたり、謎の日食を起こしたりと全くもって演出意図が分からない。
このように『タイムレンジャー』の商品展開は、アイデアは悪くないのに、どこかイマイチだ。
タイムエンブレムにしても、名乗り用のギミックだけでなく、圧縮冷凍カプセルとの連動ギミックを搭載している。
カプセルのギミックは、あらかじめカプセルに囚人やドルネロなどのカードを入れておいてエンブレムでカプセル上部のスイッチを推すと、カプセル内部が反転してカードが銀色の塊と入れ替わり、同時にエンブレム裏面のスイッチが押されて圧縮冷凍音が鳴るというものだ。
これは、囚人をカプセルに入れると凍り付くというイメージなわけだが、本編では、圧縮冷凍済みの囚人をカプセルに入れるわけで、カード反転のギミックには意味がない。
どうも微妙に本編での扱いと玩具の設計が合ってないように感じる。
まぁ、ストーリー重視の戦隊では、オモチャが売れないというのはよくある話なのだが…。
そんな中で、唯一気を吐いているのがブイレックス関連だ。
元々『DXボイスフォーメーション ブイレックス』は、バンダイが前年に発売した超合金『超絶自動変形 大鉄人ワンセブン』の変形システムを一歩進めたものだ。
ブイレックスの自動変形機構は、変形部位のバランス制御が最大のキモのようで、低めの重心を与えて下半身を無変形とし、上半身の変形だけでシルエットを変えている。
上半身も、自動変形にするため、腕が前後反転し、上半身を起こして恐竜の頭部が胸に降りていくとロボの顔が出るという程度の変形だ。
そのため、ブイレックス時にはロボの手が背部に露出しているし、ブイレックスロボ時には背部にブイレックスの前足がみっともなく左右に広がったままへばりついている。
もちろん、着ぐるみでも、玩具のものよりは小さいながら、背部に手が生えており、デザイン段階からそのように作られていることが分かる。
そんなわけで、変形ロボのギミックとして見た場合、ブイレックスはあまり面白い変形ではないし、出来がいいとも言えない。
玩具の下半身が恐竜形態とロボ形態で全く変わらないのも、変形の順序がテレビ本編と異なっている(作中では、体を起こして腕が変形、最後にフェイスガードが開くが、玩具では体を起こすのと腕の変形が同時で、フェイスガードは変形中に開く)のも、重量配分の関係上の要請であり、自動変形というギミック主導故の問題点だ。
何故かリボルバーミサイルの発射位置は、本編では最上段の弾を発射するが、玩具では最下段から発射するといった差異もある。
だが、この商品の最大のウリは、変身の項で書いたとおり、ブイコマンダーからの赤外線によるリモートコントロールなのだ。
上記の低重心設計により、下半身が巨大な電池・モーターボックスになったため、自動変形だけでなく、電動走行機能も持たせることができた。
そのため、前進・右旋回・停止といったリモコンロボの必須機能は持っている上、遠隔操作での自動変形、更には攻撃までできるのだ。
それも、LEDが光るレベルではなく、実際にミサイルやロケットパンチが発射できるという、かなり画期的なアイテムとなっている。
レックスパンチは自重がありすぎてほとんど前に落ちるだけではあるが、これがロボの1メートル背後から操作できるとなると、かなり嬉しいのではないだろうか。
特にリボルバーミサイルは、それなりの射程距離があるし、自分の意思で発射数を1〜6発と変えられる。
このリボルバーミサイルは、『黄金勇者ゴルドラン』(1995年放送)のキャプテンシャークの玩具に搭載されているスパイラルランチャー同様、ミサイルランチャー部分を回すとミサイルが発射されるというギミックになっているため、手動でも発射可能。
同時期放送の『仮面ライダークウガ』のDXビートゴウラム同様、赤外線通信を使っての連携だが、レベルは段違いで、ブイコマンダーからは9種類のコマンドを送信でき、変形、走行、パンチ、ミサイルといった物理的な行動が取れるというかなりハイレベルなリモコンロボだ。
ただし、受信部がタイトなため苦情があったようで、第2期発売分以降は使用方法をユウリが説明するビデオが同梱されるようになったとのこと。
説明役が直人でなく無関係のユウリというところが、とてもらしい。
高性能な分、値段も1万4,490円と跳ね上がってしまった。
これは、ロボット単体の値段としては、『ファイブマン』マックスマグマに次ぐ高額となったが、『タイムレンジャー』関連の玩具の売上を支えた功労者だったらしい。
このブイレックスのコントロールは、本編と同様にブイコマンダーからの音声入力による。
「音声入力」と言っても言葉を認識するわけではなく、『重甲ビーファイター』のパルセイバーや『仮面ライダー555』のデルタドライバーのように、単にマイクが何らかの音を拾うことで「入力」される。
つまり、待機状態のマイクが音を拾うと、それがどんな音であれ正規の入力として扱われるため、にぎやかな場所では、常に入力状態になってしまうという欠点がある。
言葉を認識しない分、ブイコマンダーの各ボタンと音声の組み合わせによって機能が選択されるようになっており、
という組み合わせになっている。
前述のとおり、入力された言葉を認識しているわけではないので、前進ボタンを押しながら「動くな!」と言って歩かせたり、「いや〜、撃たないで〜〜〜!」と言いながらリボルバーミサイルを連射したりといった間抜けな遊びが可能。
また、DVディフェンダーからも赤外線によりブイレックスを操作することができる。
こちらは本編とは関係のない玩具オリジナルの連携だ。
DVディフェンダーの赤外線発射機能は、ブイコマンダーとは違い、特定の連続行動のみとなっている。
ブイレックス時に撃つと、ブイレックスロボに変形し、前進した後リボルバーミサイル1発とレックスパンチを発射する。
ブイレックスロボ時に撃つとブイレックスに変形し、レックスレーザーを連射しながら右旋回で1回転する。
余談だが、ブイコマンダーでのコントロール時、角度などの条件が揃うと、誤動作してDVディフェンダーでのコマンド扱いになるという裏技がある(狙ってやるのは無理だと思うが)。
『タイムレンジャー』は、メイン視聴者層を考えると相当にハードなSFだったと思う。
何しろ“ちょうど千年の時間差で現代と未来が同時進行”で動いているドラマだ。
タックが「緊急システム発動依頼!」と通信すると、ちょうど千年後のその日その時間でリュウヤが発進スイッチを押し、発進したタイムジェットが現代に来て戦闘し帰還すると、ちゃんとその分の時間が経過した未来へと戻ることになる。
番組中では30世紀との双方向通信で会話する描写はなかったが、本当に会話が成り立つことになるのだ。
OPで歌っている「今を生きる未来人」は、正に自分の時代の千年前をリアルタイムで生きているユウリら4人のことを示している。
ただ、ここで1つ大きなミスがあった。
放映当時から言われていたことだが、途中で日付がズレてしまっているのだ。
閏年だ。
元々閏年は、地球の公転周期が正確に365日でなく365.242199日であることから、4年に1回366日の年を設けて誤差を修正するためのものだ。
現在の暦では、閏年は
- 西暦が4で割り切れる年は閏年
- その内、西暦が100で割り切れる年は閏年にならない
- 更にその内、西暦が400で割り切れる年はやはり閏年になる
というルールがある。
100で割り切れるということは当然4で割り切れるのだが、そこを敢えて例外にすることで、0.242199と0.25との間を更に詰める。
つまり、西暦の下2桁が「00」の年は基本的に閏年にならないが、400年に1回だけ閏年になる例外があるのだ。
話を『タイムレンジャー』に戻すと、西暦2000年は閏年だが3000年は閏年にならない。
ところが、『タイムレンジャー』1話は、ユウリ達が3000年2月13日から2000年2月13日にやってくるところから始まるのだ。
当然、2000年2月29日のちょうど千年後は3000年3月1日であり、ここで1日ズレてしまう。
だが、最終回では、2000年2月4日の千年後が3000年2月4日となっており、いつの間にか追いついている。
これは、脚本が上記のルールを知らなかったか、或いは知っていたが話を分かりやすくするため敢えてそのままにしたかのどちらかだろう。
鷹羽は、恐らく後者だと思っている。
こういったネタを使うからにはそれなりに暦のことは調べていただろうから、単に知らなかったというのは間抜けすぎるからだ。
では、なぜこんなミスを敢えて犯したのか。
これは、1話の日付を3月1日にする、或いは未来を2400年にしていれば発生しなかった問題だ。
なのに何故敢えてズレるようなことをしたのか。
まず、2400年=24世紀では、切りが良くなかったのだろう。
やはり20世紀と30世紀とした方が未来感が出る。
また、番組の放送開始は2月13日であり、半月以上先の日付から始めるのは憚られたのではないだろうか。
この手の番組では、放送日と作品内日付の差は1週間程度に抑えられるのが通常だ。
『仮面ライダークウガ』のように1か月以上もズレさせておいて、一気に飛ばすという豪快なことをする番組もたまにはあるが、やはり正月にクリスマスの話をするような真似はなかなか出来ないものだ。
これは簡単に分かるミスだが、『タイムレンジャー』という番組は、非常に難解な作りになっていて、子供向けは勿論、大人向けの各種ムックでもきちんと説明できているものを見たことがない。
上記の「真実の物語」で、ユウリの家族やドモンの出場停止などの変化について、各種ムックではGゾードを破壊したことで変わった部分とされている。
だが、ちょっと考えてみると、それがおかしい。
Gゾードが20世紀に現れることは、元々歴史上あってはならないことだったのだから、それを排除できたからといってそう都合良く歴史が変わるはずはない。
だから、リュウヤが何らかの手を打った結果のはずだ、というのが鷹羽の考えだ。
「だって番組内で示された公式見解でしょ?」と思う人もいるだろうが、あれは、リュウヤがユウリ達に語った内容に過ぎず、決して公式見解などではない。
つまり、この作品の場合、“劇中でキャラクターによって語られた嘘”が多すぎて、どれが本当でどれが嘘か、非常に見分けづらいのだ。
リュウヤ自身が語ったことだけではない。
リュウヤによってデータを改竄されているタックの情報だって信用ならない。
いい例がブイレックスだ。
当初はタックの情報から、時間移動実験で行方不明になっていたブイレックスがジャグルによる時空パルス刺激の影響で20世紀に現れたと思われていたが、実際は時間移動実験に使われたのはGゾードであり、タックのデータが書き換えられていたことが判明している。
ただ、シオンも「(実験で失敗したのが)たしかブイレックス…」と言っているので、シナリオ上のアラである可能性が高い。
しかし、たとえシナリオのアラだったとしても、終盤でそういう話になっているということは、タックが劇中で明言したことが必ずしも正しいとは限らないことになる。
となると、疑ってかからなければならない情報が随分あることに気付くだろう。
何しろ、まず、ユウリ達4人への帰還禁止命令=“4人が20世紀にいるから歴史のバランスが保たれる”から疑わなければならないのだ。
というのも、本来の歴史では、ユウリ達4人は20世紀に行った翌日にはもうジェッカーに殺されているからだ。
そして30世紀では、20世紀でロンダーズの起こした事件についてデータが残っているのだから、タイムレンジャーの4人が死んだ後、直ちにブイレックスとタイムファイヤー=リュウヤが派遣されたことも確かだ。
そうでないと、リバウンドしたジェッカーによって20世紀が大破壊されてしまう。
一方で、本来の歴史でも4人は30世紀に帰れないままジェッカーと戦っているわけなので、正しい歴史でも帰還禁止を言い渡されていた可能性もある。
それらを考え併せると、やはり歴史のバランスは抑止力たるタイムレンジャーやタイムファイヤーの存在によって保たれていたのだろうと思われる。
…与えられた情報をいちいち検証していかなければならないとは、なんて難儀な番組だろう。
では、タイムシャドウは、本来いつ製造されるものだったのだろう?
鷹羽は、この点についてはタックの情報は正しかったのではないかと思っている。
というのは、本来の歴史ではリバウンドした囚人とはブイレックスが戦っていたわけだが、リュウヤによって変わった歴史では、タイムロボが戦い続けている。
番組中での描写から見て、ブイレックスロボの戦闘力はシャドウアルファらと互角以上と思われるから、その辺の事情を調べているであろうリュウヤは、ブラスター・マドウが出てくる辺りではタイムロボでは力不足になるであろうことも分かっていただろう。
そこで、タイムロボを強化するためにタイムシャドウの実用化を急いだと考えられる。
既にロンダーズが20世紀に行ったという既成事実があるのだから、今後のことを考えて早急に必要だと開発を前倒しさせることは可能だろう。
次に、タイムファイヤーのスーツについてだが、これについてはよく分からない。
タックが持っていた情報は、ブイレックスが時間移動実験の失敗で時空を彷徨っているという間違った情報と、制御ユニットによる外部操作タイプであるという漠然としたものだけだ。
本編中での扱いを見ている限り、ファイヤーは独力で圧縮冷凍できる装備を持っていること、ブイレックスという汎用性に優れ圧縮冷凍能力を持つ上、自己修復機能を持つメンテナンスフリーな巨大メカを従えていることなどから、単独で過去に滞在して活動することを前提としていることは間違いない。
となると、クロノスーツより新型もしくは上位の高性能スーツであることは間違いない。
そして、竜也が浅見の家を継いでシティガーディアンズを拡充し、インターシティ警察へと発展させるという話は、恐らく本当だろう。
シティガーディアンズが設立された当初から、ユウリはインターシティ警察は元々民間会社から発展したものだと言っているからだ。
問題は、31世紀へと帰還したユウリ達に突きつけられた新しい未来…彼らにとって都合良く変わっている未来はどういうことなのか、だ。
これが非常に胡散臭い。
上記のとおり、Gゾードを破壊したくらいで関係者の周辺が都合良く変わるというのはおかしい。
しかも、シオンだけ変わらない。
リュウヤは、異星人であるシオンは地球の歴史の影響を受けないと言うが、ハバード星そのものの歴史はともかく、地球に来てからのシオンの周囲に影響がない理由の説明にはなっていない。
一応、リュウヤが歴史を改竄したと考えるのが最も合理的と思われるが、ドモンの永久追放→1年出場停止やユウリの家族生存くらいはまだやりようがあるとして、アヤセのオシリス症候群治療法は普通に考えればちょっと無理がある。
過去をいじるならまだしも、いつ治療法が確立されるかも分からないような病気というのは、どうにもならない。
それらから、少し大胆な推測をしてみよう。
実は、状況が変わったというのは、全てリュウヤの嘘だったのだ。
考えてみれば、リュウヤが言っただけで本当かどうか分からない。
ユウリの家族にしても、映像で見せられただけだ。
リュウヤとしては、ユウリ達の20世紀での記憶を消して自分が微妙に変えた歴史を隠したいわけだから、ユウリ達が「30世紀はいいところだ」と思うだけの条件を提示しなければならないが、逆に言えば、「うん」と言わせてしまえば、記憶処理の際に20世紀の記憶と一緒に家族が生きていたといった記憶も消してしまえばいい。
リュウヤの準備は、ドモンがグラップを永久追放されたこと、アヤセがオシリス症候群であること、ユウリの家族が殺されたことを調べ、それに合わせた嘘を用意して、ユウリの家族の映像を作ればいいだけだ。
どうせ記憶を消すなら、どんな都合のいいことを言っても構わないわけで、いかにも都合のいい世界が用意できる。
シオンについては、まさかハバード星の消滅がなかったことになったなどといったら嘘くさいから、何を喜ぶか分からないし、放置するしかない。
記憶を消す順番がまずシオンから、というのがますます怪しい。
一番得のない、言い換えれば不満を持つ可能性があるシオンの記憶を最初に消せば、あとの3人は大丈夫と踏んだのだろう。
かなり疑り深い推測になったが、何しろリュウヤは自分を救うために無関係の他人をタイムファイヤーに仕立て上げて犠牲にするような男だから、これくらいはしてもおかしくないだろう。
では、なぜユウリ達が帰ってきた直後にさっさと記憶を消してしまわなかったのか。
それは、
- 予告なくユウリ達が帰ってきたから
- リュウヤはユウリ達が都合のいい未来を放り出すなど想像も付かなかったから
- 作劇的の必要性から
の3つの理由からだろう。
実際に記憶を消す作業をするにはそれなりの準備もいるだろうから、事前に準備してあったにしてもすぐに処置室に連れて行くわけにはいくまい。
そして、一番大きな理由は、作劇上の要請だろう。
第1に、ユウリ達の帰還後に直人が死ぬ必要があったこと、第2に、竜也が孤立無援で戦い続けて悲壮感を出す必要があったこと、第3に、ユウリ達が20世紀に戻るタイミングをギリギリに遅らせる必要があったことだ。
ユウリ達が30世紀に戻ったのが48話『未来への帰還』、続く49話『千年を越えて』では直人の死やユウリ達にとって都合のいい30世紀の話と記憶を消される話が語られ、ユウリ達が脱走し、竜也がゼニットの群れに突っ込むところで引きとなる。
この緊迫感を出すために、ユウリ達は大消滅の前日に未来に帰り、当日に現代に戻ってくる必要があったのだ。
さて、ここらで核心に触れておきたい。
正しい歴史とは何なのかだ。
リュウヤが語る正しい歴史には、ロンダーズが30世紀からやってきたことが既定事実として存在する。
しかし普通に考えれば、ロンダーズが20世紀にいることは本来おかしい。
たとえて言うなら『ドラゴンボール』で未来から来たトランクスがフリーザとコルド大王を殺したようなもので、未来から来た誰かが本来の歴史の必然であることはありえない。
だが、未来から来た誰かのお陰で存在する未来という考え方も存在する。
それが「ドラえもん理論」、またの名を「時間軸柔軟性説」という。
つまり、『タイムレンジャー』の世界では、ロンダーズが20世紀にやってきたせいで大消滅が起きることが既に歴史上の必然になってしまっているということなのだろう。
対象年齢高めという趣旨なのか、結構英語も多用されている。
時間保護局のコンピュータのオペレーション画面は英語表示だし、クロノスーツのゴーグルに表示される取扱説明も英語だ。
また、ブイコマンダーのガイダンスも英語で行われている。
対訳で書いておくが、残念ながら聞き取りにくい部分が多かったため、多分こうだろうというレベルであることをお断りしておく。
まず、29話で直人が“ブイレックスの制御装置”に手を入れる場面
Now on stand up.(起動しました)
Put your left arm into the box.(左手を箱に差し込んでください)
これで「左手を入れろって?」と直人が制御装置に手を入れると、“制御装置”がブイコマンダーに変化して
V-commander mounted.(ブイコマンダーが設置されました)
Call your vice input a start code,TIMEFIRE,TIMEFIRE.(スタートコード「タイムファイヤー」を音声入力してください)
となる。
その後のハマーとの戦闘で
Final mode DVPB is stand-by.(ファイナルモードDVPB、準備完了。)
Take it press blizzard.(圧縮冷凍してください)
というような内容のガイダンスが入っており、直人が「圧縮冷凍? 何だか知らないが、了解!」と言ってDVリフレイザーを使っている。
「DVPB」は、「DVプレスブリザード」の略ではないかと思われるが、ファイヤーは技名を「DVリフレイザー」としている。
そして圧縮冷凍後、
Press blizzard compreted.(圧縮冷凍完了しました)
とガイダンスしているが、その後の処置を指示していないこともあって、ファイヤーはハマーを回収していない。
続く30話では、マスターハンターにコントローラーを付けられて操られているブイレックスと対峙した際、
V-rex check.(ブイレックス確認)
Voice imput system on go ahead (システムに音声登録してください)
とガイダンスするが、マスターハンターのコントローラーがブイレックスのコントロールシステムに影響を与えているため
Error, the certain system is distort.(エラー、システムのどこかに異常があります)
となり、タイムファイヤーがコントローラーを破壊して「俺の声を聞け〜〜〜!」と叫ぶと、これが音声登録され、
You can control it.(コントロール可能です)
となった。
戦闘になると、
Imput transform code, Voice-formation go ahead.(変形コード「ボイスフォーメーション」を入力してください)
とガイダンスしてブイレックスロボに変形させ、
Max freeze maser Max-blizzard stand-by.(強力冷凍光線マックスブリザード準備完了)
のガイダンスでマックスブリザードを発射している。
マックスブリザードという技名は、ファイヤーが決めたわけではないようだ。
英語を使っているのは本編中だけではなく、1〜21話までの次回予告には、画面一杯に「They travel
the presantpast and future to explore the future all by myself. Heroes of justice
going over time and space,whose name is TIMERANGER!!」と出た後、「next TIMERANGER!!」に変わる。
この訳は、「自らの力で未来を切り開くために過去と未来を超える。時空を超える正義のヒーロー、その名はタイムレンジャー!!」といった意味だ。
22話以降は、予告ナレーションを次回のメインとなるキャラが行うようになった。
ホナミやタック、ドルネロなども行っている。
クリスマス前の総力戦は、42話『破壊の堕天使』でのギエン暴走と浅見渡の重傷、43話『歴史修正指令』、44話『時への反逆』でのGゾードとの戦いが描かれている。
『タイムレンジャー』では巨大ロボの乗換がないこともあって、いつもどおりタイムロボ・タイムシャドウ・ブイレックスが戦うので、総力戦という感じはしない。
まして正にクリスマス直前の44話では、ブイレックスは自己修復中、Gゾード・タイムロボβ・タイムシャドウはギエンの拘束装置で身動きできない状態にされていて、ちっとも活躍しない。
やっと4体が揃ったと思ったら、ブイレックスの上にタイムロボαが乗っかって突っ込んで終わりと、恐ろしくあっさりしている。
シナリオ的には、竜也が浅見の家を継ぐという歴史的事実が明かされたり、ユウリ達4人が2話で死んでいたはずだったことが明かされたりと盛り上がるのだが、いかんせんそっちに尺を取られて、巨大戦の方は“Gゾードの背面の排熱口を攻撃する”という地味な作戦のせいもありイマイチ盛り上がらない。
本来なら、強力な敵を前に大ピンチに陥り、それをはね除けて勝利するのが見せ場のはずなのに、Gゾードはそんなに強く見えないし、確かにピンチはピンチだが、その原因はリュウヤの暗躍と浅見渡の重傷なので、妙に暗い印象になってしまうのだ。
これではクリスマスの販促にならない。
走るブイレックスの上にタイムロボαが乗っかるシーンがあるのが唯一の販促演出と言えるだろうか。
なんとも驚いたことに、この後タイムシャドウは本編に登場しない。
タイムロボも最終回までは登場せず、巨大戦はブイレックス任せになる。
クリスマスが過ぎればオモチャ絡みの露出がいい加減になることが多いスーパー戦隊とはいえ、ここまでロボがないがしろにされた作品は珍しいだろう。
一応、少し前の38話『ぐっどないと』では、タイムシャドウとブイレックスロボが戦ったり、プロバイダスが自分で自分を叩いて20世紀にやってきて戦うなど、夢オチながらロボの露出を増やしていたが、大した効果はなかったと思われる。
ちなみに、クリスマス絡みのネタとして、この3話の間で、竜也達がクリスマスパーティーのために事務所を飾り付けたりしているのだが、42話で飾りなどを竜也とシオンがオモチャ屋で買ってくるシーンがある。
撮影はセットではなく、愛媛県松山市にあった「ふぁんたじ屋」という店まで行っている。
これは、この店がタイムレンジャーのおもちゃ売場のディスプレイを競う「売場コンテスト」で優勝し、その特典が本編に出演できるというものだったからだ。
ホンの一瞬だが、店長と思しき人も出ている。
このシーンが本作唯一の“同時録音”だった。
同時録音というのは、撮影しながらセリフも録音するという方式で、『シンケンジャー』以降は役者によるシーンでは全てこの方式だが、当時スーパー戦隊シリーズはオールアフレコだったため、非常に珍しいことだった。
たった一言のセリフのためだけに愛媛のオモチャ屋さんを東京に連れてくるわけにはいかないから、現場で録音したというわけだ。
なお、「ふぁんたじ屋」は既に廃業しているとのことで、これもまた時代を感じる話だ。
『メガレンジャー』以来恒例のクリスマス前に総力戦をして、年末最後の放送では息抜きのおふざけ総集編をやるという悪しき伝統は、今回は、放送日が大晦日ということもあって、トゥモローリサーチが大晦日に年末に家賃滞納で立ち退き要求され、同時に半解凍状態の囚人ゲーマルクが逃走するというドタバタ喜劇となっている。
大家のおばさんを、金城銅山を演じた千本松氏が(声も)演じている。
圧縮冷凍されているはずのゲーマルクが小さいままで動いていたりして、設定を考えると頭の痛い内容だ。
ただ、金策として「俺に考えがある」と自信ありげに言ったアヤセの策が商店街の福引きだという展開は笑えた。
例によってOPが英語版になっている。
『タイムレンジャー』は、複雑なストーリーになっている割には年間を通して無理な展開が少ないと思うが、それでも矛盾やミス、問題点はいくつもある。
まず、ブイレックスはどうやって2000年にやってきたのか。
前述のとおり、2994年に時間移動実験に失敗したのがGゾードであることは間違いない。
また、本来の歴史では、ユウリ達が死んだ後(恐らくは直後)にブイレックスとリュウヤが派遣されるのだから、ドルネロ達が20世紀に逃亡した時点でブイレックスが30世紀の時間保護局にいることも間違いない。
だが、タックだけならともかく、シオンやユウリまでブイレックスが時間移動実験に失敗したと思っていた。
シオンに至ってはニュースで見たというのだから、単なる勘違いで片付けるのは難しい。
となると、2話から28話の間にリュウヤが発進させたことは間違いなかろう。
だとすると、どうしてすんなり現代に出現しなかったのだろうか?
時間移動で来るなら、時空パルスの異常だけでなど終わるはずもない。
どう考えても、目的の時代に出現させるより、目的の時代の時空間に留まらせる方が難しいだろう。
ヘルズゲート囚ジャグルによって時空パルスが刺激されたタイミングを見計らってブイレックスを送るという手もないではないが、では、その時空パルスの異常はどうやったのかという疑問は払拭できない。
シオンのセリフがどうこうというレベルではなく、ブイレックスの時間移動には疑問が多いのだ。
また、Gゾードがかつて30世紀を消滅させかけた原因だというのはおかしい。
番組開始前にそれが解決されたからこそ1話のリュウヤのセリフに繋がるわけで、2000年の年末になってから問題が顕在化するはずはない。
もし原因が取り除かれないままだったのなら、解決のために時間保護局が奔走していなければならず、ロンダーズ逮捕のために派遣されているユウリ達(本来の歴史ならリュウヤ)が排除するのではなく、Gゾード破壊のために誰かが派遣されてこなければならないだろう。
これは、今更時間移動実験が行われるはずもなく、別の犯罪による結果というのも難しいから、こじつけと考えるのが筋だ。
このように、終盤の展開には色々な問題がある。
考えてみると、21世紀の大消滅の原因はかなりおかしい。
簡単に状況をおさらいしてみると、λ-2000は2000年に浅見グループ麾下の第三総合研究所によって開発され、それを精製してΖ−3にする技術は3000年1〜2月に開発された。
そして、λ-2000には時空を歪める性質があるため、ブイレックスとギエンに内蔵されたλ-2000が原因となって2001年2月14日に21世紀の大消滅が起きたということになっている。
そこで、ブイレックスのλ-2000をΖ−3に変換し、マックスバーニングでギエンの体内のλ-2000を分解することで大消滅を食い止めたというわけだ。
だが、それはどう考えてもおかしい。
ブイレックスがいつ製造されたのかは明らかにされていないが、少なくともΖ−3開発の前で、なおかつ30世紀終盤のことのはずだ。
ギエンが改造されたのだってそうだ。
それでも当時最高峰のエネルギーだからこそ採用されていたのだろう。
ということは、2000年に開発されたλ-2000が2999年まで千年に亘って最高峰のエネルギー源として利用され続けていたということになる。
その上、30世紀人であるユウリ達はλ-2000を知らないのだ。
いつ誰が開発したかは知らなくても、λ-2000が何かは知っているものだろう。
ちょうど自家用車を持っている人なら、ガソリンの精製方法やガソリンエンジンの構造を知らなくてもガソリンスタンドで「レギュラー満タン」と注文できるようなものだ。
しかもシオンは、Ζ−3は知っていたのに精製元であるλ-2000を知らないのだ。
もっとおかしいのは、2001年に大消滅の原因になったλ-2000が、その後千年に亘って利用され続けているということだ。
大消滅の原因だったことに気付かず使っていたとしても、ブイレックスとギエンに内蔵されていた分だけで大消滅の原因になったほどのものなら、千年の間にもう2〜3回くらい大消滅が起きていてもおかしくない。
もっと言うと、ブイレックスくらい巨大なら内蔵のλ-2000もある程度大きいのかもしれないが、ギエンの体内に収まる程度の量のλ-2000なら、第三総合研究所内にあったはずだし、千年の間に同量のλ-2000が1ヶ所に揃わないことなどなかっただろう。
ラストの盛り上げの核心部なのに、こんな破綻した設定でいいのかと思ってしまう。
もっと単純に、ギエンがGゾードの破片からミュートエネルギー炉を復元させたせいで21世紀が消滅の危機に陥った…としようとすると、Gゾードが20世紀に現れたことが必然になってしまい、間違った歴史という認識と矛盾する。
かといって、ギエンは既に19話で最新鋭で安全なΖ−3を使用してノヴァを作っているわけだから、今更旧型の危険なエネルギーを使う理由がない。
そこで、ギエン自身がλ-2000を内蔵していたことにして、それだけではいかにも量が足りないからブイレックスも巻き込んでみたというところだろう。
要するに、作劇的にギエンを最後の敵として成立させる理由を求めていったら、全部λ-2000のせいでしたとするしかなかったのだ。
あと、これはミスというより問題のある演出と言うべきなのだろうが、最終回、竜也がホナミとドモンJr.と出会った後、ランニング中にユウリ、アヤセ、ドモン、シオン、直人のそっくりさん達とすれ違うシーンは、3人で押さえておくべきだった。
未来人であるユウリ、アヤセ、ドモンのそっくりさんがいるのは、いいだろう。
先祖なのかもしれないという含みを持たせるのはアリだ。
だが、異星人であるシオンのそっくりさんや、現代人である直人のそっくりさんはいただけない。
いきなりエンディングが安っぽくなってしまった。
前々作『ギンガマン』でもそうだったが、全員幸福であるかのようなねじ曲げた描写はこの当時の小林脚本の悪い癖だと思う。
ところで、上では「最終回」と書いたが、実は『タイムレンジャー』の最終回は、翌週の『スーパー戦隊大集合』だ。
ビデオ等で連続で見ていると、盛り上げた最終回の後でのタキシードを着込んだ竜也達のオチャラケは、違和感が大きい。
実は、番組中で公式に『ゴレンジャー』をスーパー戦隊の1作目と明言した瞬間でもある。
ちなみに、『ゴレンジャー』を1作目とした場合、『タイムレンジャー』は25年目に当たっている。
大々的に「25周年記念」と謳ってこそいないものの、OPの冒頭で「スーパー戦隊シリーズ」と表示されるようになったのはそのためらしい。
小ネタをもう1つ。
1話で時間移動のオペレータをしているのは、次作『百獣戦隊ガオレンジャー』でテトムを演じた岳美氏だ。
決して次作のための顔出しではなかろうが、次作のレギュラーを演じることになる役者がゲスト出演するのは随分久しぶりだった。
そろそろまとめに入ろう。
『タイムレンジャー』は、前々年の『ギンガマン』、前年の『救急戦隊ゴーゴーファイブ』の流れとうって変わって異色作となった。
目的としては“歴史を守る”“ロンダーズに襲われた人々を守る”という純粋な正義の味方ながら、“戦うことが同時に自分の居場所を守ることに繋がっている”“敵を殺さない”“自由にロボットを使えない”“敵の目的は金儲け”など、スーパー戦隊としてはかなり独特なスタンスだ。
5人のキャラそれぞれに背景をきっちり持たせ、主役回以外でもその立ち位置を描写して積み上げた結果、キャラクターは明確に立っているし、リアリティもあり感情移入もしやすい。
反面、そちらに尺を取られすぎたのと、敵を殺せないという枷が付いたこと、怪人が戦闘的な能力の持ち主でないことの方が多いなどの理由から、強いヒーローという印象にはなりにくい。
戦闘も割と地味で派手さに乏しく、メイン視聴者である子供達には今ひとつアピールしなかったようだ。
『タイムレンジャー』は、同時期放送の『仮面ライダークウガ』に引っ張られる形で、視聴率的にはかなり良かったそうだが、オモチャは売れなかったし、スーパー戦隊シリーズの中でも知名度は低めのようだ。
むしろ、同時期放映のライダーが似たような毛色の『クウガ』だったことで、陰に隠れてしまったように感じる。
これが例えば後年放送の『仮面ライダー555』や『仮面ライダー剣』などと同時期だったなら、ストーリー的に破綻しているが戦闘シーンは派手な『555』『剣』と、戦闘シーンは地味めだがストーリーの出来がいい『タイムレンジャー』という棲み分けができたのではないかと思うと、少々残念だ。