救急戦隊ゴーゴーファイブ

平成11年2月21日〜12年2月6日 全50話 + Vシネマ2本

主題歌

 『ゴーゴーファイブ』のOPにはアバンのナレーションはないが、十字に並んだ惑星が燃え上がる図から始まる。
 これは、本作が放送された時期を受けてのもので、今ではナンセンスとも言えるノストラダムスの大予言の「1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる」と、1999年8月11日に起きる太陽系のグランドクロスを引っ掛けてのものだ。
 グランドクロスというのは、『聖闘士星矢』ハーデス編でもネタにされているが、1999年8月18日に、金牛宮に土星と木星が、獅子宮に太陽、水星、金星が、天蠍宮に月、火星、冥王星が、宝瓶宮に天王星と海王星が、それぞれ入るという形で、地球以外の8つの惑星(冥王星を含む)と太陽、月が十字を形成するという天体現象で、有史以来初めての、今後も恐らくないだろうといわれている非常に珍しいものだった。
 
 そして、このOPは、本作を象徴する歌詞となっている。
 「待ってろよ、生きてろよ、絶対そこに辿り着く」「1つの命を救うのは、無限の未来を救うこと」という歌詞は、何よりもまず人の命を守ることを最優先課題としているゴーゴーファイブの本質をよく表している。
 ゴーゴーファイブの名乗りにある「人の命は地球の未来」というのも、これを短縮したものだ。

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基本ストーリー

 ある日、巨大な隕石が落下した。
 その隕石は、巨大な怪物マグマゴレムとなって、街を破壊する。
 そんな中、5人兄弟がそれぞれ救命士などをやっている巽(たつみ)一家に、10年間行方不明だった父:巽モンドが帰ってきた。
 モンドは、このことを予測して、10年掛けて対抗するための武器を開発していたのだ。
 その武器:アンチハザードスーツと99(キューキュー)マシン、55(ゴーゴー)マシンを与えられた5人兄弟は、マグマゴレムを倒す。
 
 そして、地球に災魔一族が降り立った。
 彼らは、魔宮殿(サイマパラディコ)に潜み、大魔女グランディーヌ降臨の聖地となる地球を悲鳴と絶望で満たすべく行動を開始する。
 モンドによってそれぞれの職場に辞表を勝手に提出されていた5人は、ゴーゴーファイブとして災魔一族と戦うこととなった。

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メンバー

ゴーレッド:巽 纏(マトイ)

 巽兄弟の長男で25才、元の職業は首都消防局レスキュー隊隊長。
 「気合い」が口癖で、全てを気合いで乗り切ろうとし、ことあるごとに「気合いが足りねえんだ」などと言う。
 一種の脳筋野郎だが、それなりに筋は通っており、20話『不滅の救急魂』では、敵に肉薄してカラミティブレイカーとVマシンガンを同時零距離射撃するに当たり、「俺は死なない! 気合いが違うからな!」と言い放ち、爆発の中でしっかり生き残っている。
 また、さすがにレスキュー隊出身だけあって緊急事態での判断力は素晴らしいものがある。
 長男として兄弟をまとめ、守ろうとする一方で、兄貴風を吹かせる暴君としての一面も持つなど、大変人間くさい性格。
 それだけに、弟達から煙たがられたり反発されたりすることもあり、13話『弟たちの反乱』では、高級レストランでのランチに誘ってもらえなかった。
 料理は大の苦手で、カレーしか作れない。

ゴーブルー:巽 流水(ナガレ)

 次男で24才、元・消防局科学消防班。
 父の科学者としての才能を最も強く、というか唯一受け継いでおり、その才能は時として父をも凌ぐ。
 考え事をする時に首をコキコキさせる癖があるのも、かんぴょう巻きが好きなのも父親譲り。
 そのほかにも父親似の癖が多い。
 ただし、次男として常にマトイに虐げられてきた影響か、父と違って協調的で、人間的にも丸い。
 ハンサムでもてるらしいが、恋愛関係にはウブで、高校時代から岩倉小百合への想いを大切に抱いている。

ゴーグリーン:巽 鐘(ショウ)

 三男で23才、元・消防局航空隊のヘリコプターパイロット。
 幼い頃から、パイロットになって人助けをするのが夢だった。
 若干けんかっ早く、他人に食ってかかることが5人の中で最も多いが、他人に対して感情移入することも最も多い。
 それは、人間のみならずライナーボーイやビッグドーザーなどのロボットに対しても同様。
 男兄弟の中では、一番まともな性格である。
 演じた原田篤氏は、4年後に『仮面ライダー555』にデルタ:三原修二役で出演しており、その当時、秋本奈緒美氏と結婚した。

ゴーイエロー:巽 大門(ダイモン)

 四男で22才、元・巡査(本作では警視庁は存在せず、架空の「首都警察」所属)。
 交番勤務であり、5人の中では救急活動から最も遠く、特殊技能も持っていない。
 格闘技だけは天下一品で、番田流奥義:真空竜巻落としをアレンジして牛乳竜巻落としを編み出したほどだが、甘ったれた性格が災いして試合に負けることも。
 男兄弟の中で一番下なことや、末っ子のマツリがしっかりしていることもあり、かなり“おみそ”な感じがある。

ゴーピンク:巽 祭(マツリ)

 末っ子の長女で21才、元・国立臨海病院の救急救命士…なのだが、なぜか病院に担当の患者がいたりする。
 父が帰ってきたことを一番素直に喜んでおり、父に反発する兄達をたしなめることが多い。
 末っ子ながら、唯一の女手として家事全般を取り仕切っていたため、兄のダイモンよりもしっかりしている。

博士:巽 世界(モンド)

 天才科学者にして、江戸時代から代々続いた火消しの家系:巽家の現当主で巽防災研究所所長。
 10年前、宇宙から迫る巨大なマイナスエネルギーの存在に気付き、対抗策を探すために姿を消した。
 東京湾の海底に巨大基地:ベイエリア55(ゴーゴー)を築き、その中でアンチハザードスーツや、99マシン、55マシンなどを制作していた。
 正義感に溢れ、私費を投じて世界の危機を救おうとする心意気は天晴れなのだが、天才の常か大変に独善的で、何も言わずに10年も行方を眩ませたり、最初から息子達を戦わせるつもりで装備を作っていたり、それぞれの勤め先に勝手に辞表を提出したりと、周囲の迷惑は全く考えていない。
 演じたマイク眞木氏は、「バラが咲いた」などで有名な歌手であり、俳優でもある。
 また実子である真木蔵人氏が41話『マトイが負けた男』で、マトイの先輩役として出演している。

マスコット:アシスタントロボ・ミント

 モンド博士がサポート用に作ったロボット。
 戦闘能力はないが、内蔵している専用のゴーグリップで99マシンを操縦することができる。
 プログラムが2000年問題に対応していなかったため、大晦日に対応用のソフトがインストールされた。
 最終決戦において、ベイエリア55と運命を共にした。
 声を演じた相田さやか氏は、映画『機動戦士Ζガンダム』シリーズでシンタを演じている。

押し掛けアシスタント:速瀬京子

 ショウの航空学校時代の先輩で、スペースシャトルのパイロットになっていたが、2話『竜巻く災魔一族』で救われたのが縁で、ゴーゴーファイブの正体を知ることとなった。
 実家は、代々続いた寿司屋。
 ゴーゴーファイブの一員になるべく奮闘するが、結局はアシスタントで終わってしまった。
 ただし、45話『初夢は災魔の旋律』では、夢の世界で、長いマフラーをしたゴーレッド(マスクなし)になって名乗りやVアタックを決めているほか、Vシネマ『激突! 新たなる超戦士』ではジークジェンヌとして参戦している。
 演じた宮村優子氏は元々は声優であり、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で惣流・アスカ・ラングレーを演じており、本作でもアスカの決め台詞だった「あんたバカァ!?」を度々発している。
 氏は、元々この手のトクサツ番組が好きで、オリジナルの『根性戦隊ガッツマン』の歌などを歌っていたりもしており、それが高じてJAE(ジャパン・アクション・エンタープライズ:旧JAC)にまで入ってしまったほどなのだが、本作出演が叶ったのは、その甲斐あったというところだろうか。

支援者:乾 謙二

 巽家同様、代々火消しの家系の現当主で、首都消防局総監をしている。
 幼い頃から神童として有名だったモンドとライバルで居続けるため、相当な努力を重ねてきた。
 ゴーゴーファイブが正体不明の独立部隊として行動していることを苦々しく思っていたが、その正体が旧友にしてライバルのモンドの子供で、現場を離れて久しい自分よりモンドの方が遙かに正しい状況判断ができることを知るに至り、ゴーゴーファイブを後方支援するようになった。
 特にマトイのことを高く買っており、娘・つぐみと見合いさせたりしている。

母:巽 律子

 8年前にモンドを追って旅に出た直後、乗った旅客機ごと行方不明になった。
 12月24日が誕生日であり、マトイ達は、その後毎年クリスマスイブには誕生日ケーキと「おかあさんおかえりなさい」のカードを用意して待っている。
 飛行機事故の後、どうやらアメリカに流れ着いて救助されたらしいが、8年間意識不明のままで、最終決戦直前にようやく意識を取り戻した。
 戦闘には全く役に立っていないが、常に5人の精神的支えであり続けていた。

 ゴーゴーファイブは、父モンドによって無理矢理組織されたチームだ。
 とはいうものの、元々兄弟が力を合わせて救助活動に勤しんでいた5人にとっては、少々立場が変わっただけで、ちっともマイナスにはなっていなかった。
 
 母律子は、5人に常々「あなた達兄弟5人力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられる。母さんはそう信じています。そして、そんなあなた達の父さんを信じています。信じ合うのが家族です」と言い聞かせており、行方不明の間(マトイがまだ17才の頃から5人だけで住んでいた)も、5人の精神的支えとなっていた。

 5人の名前は、それぞれ火消しや職業に因んだもので、

  • 纏   火消しが屋根の上で振っているもの
  • 流水  竜吐水(りゅうどすい:江戸時代の消火器)の読みから
  • 鐘   「半鐘」など、火事を告げる鐘
  • 大門  「め組の喧嘩」(町火消しと力士の乱闘事件)のあった芝神明宮の所在地
  • 祭   火消しと祭りは切っても切れない縁

から来ている。
 また、名字の「巽」は辰と巳で、南東の方角を表している
 本編では、首都中心部から南東の方向に防災研があるという設定になっている。
 また、ライバルである「乾」も方角を表し、戌と亥で、巽の逆方向(北西)を示す。

 変身前に、5人全員がオレンジ色のジャケットを着ているのが特徴。
 このジャケットがオレンジ色なのは、実際のレスキュー隊がオレンジの消防服やつなぎを着ているからで、“レスキュー=オレンジ色”という一般的なイメージによっている。
 全員同じように見えて、実は左上腕部にはV1〜V5の数字が、右上腕部にはそれぞれのゴーグルと同じマークが入っており、微妙に違っている。
 左胸には巽防災研究所のマーク(ゴーゴーファイブのエンブレム)が入っていたり、背中には「SUPER RESCUE LAB」「Saving one's life means saving the future.」の文字があったりと、さりげなく深いアイテムとなっている。
 うろ覚えなのだが、このジャケットは、メガシルバー:早川勇作のジャケット同様、一般流通している製品を改造したものだったと記憶している。
 ただ、「欲しい」という声が大きかったらしく、番組中盤の10月に、子供用として商品化・一般販売された。
 この商品はそれなりに売れたらしく、戦士の普段着が子供用のなりきり商品として売れるということで、戦士にユニフォームを着せて商品化しようという流れを生むことになった。
 次作『未来戦隊タイムレンジャー』では、5人が普段来ているトゥモローリサーチの青いジャケットが、子供用、大人用共に発売され、次々作『百獣戦隊ガオレンジャー』では更に進んで、ガオジャケットは一見して違いが分かるほどに個々の差別化が図られている。
 
 ちなみに、ゴーゴーファイブのエンブレムは、巽家の家紋“重ね三剣”を意匠としている。
 ただし、着物用の家紋一覧表を見ても載っていないので、よほどマイナーなものか、作中設定によるものと思われ、また、“丸に重ね三剣”と呼ぶのが正しいと思われる。

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変身システム

 

 「着装!」と叫んで、左手に付けた変身ブレス:ゴーゴーブレスのカバーを開き、4つあるボタンのうち右上のものを押すと、ブレスに内蔵されたアンチハザードスーツが装着される。
 救急隊の面装を発展させたそのヘルメット内部には、鼻と口を覆うマスク部があり、それぞれのパーソナルカラーに点滅するインジケーターが付いている。
 変身時には、まず全身をスーツが覆い、次にマスクが鼻と口を覆い、ヘルメットが頭部を覆った後、ゴーグルが降りる。
 バンクの変身シーンでは、最初にジャケットを脱ぐシークエンスがあるが、半纏を纏うイメージではないかと思われる。
 ゴーグルの形は、マトイ達の元の職場のマークになっている。
 これは、モンドがアンチハザードスーツを設計するに当たって、マトイ達がそれぞれ職場で培ってきた技能を活かして戦うことを念じてデザインしたため。

 5人のスーツは、各スーツごとの固有の能力差がなく(能力差があるという設定はあるが、本編中はそういった描写はない)、ゴーグルの形状以外には変化もないもので、デザイン的にはかなり単調になっている。
 特に背面の単調さはシリーズでも屈指で、後頭部に白い帯が十字に入っている他は、首と手袋、ブーツ、ベルト以外全てパーソナルカラーになっている。
 また、シリーズ最大の面積を持つゴーグル部も特徴の1つだが、こちらは、レスキュー隊の面装を模しているためで、逆に上記の呼吸用マスクを模したパーツのお陰で特殊レスキュー隊の装備という印象を持たせることに成功している。
 また、時折ゴーグル部を透けさせることによって、5人の目の演技で表情を付けるという演出がなされている。
 当然、そういうシーンの撮影時には役者がスーツを着込むわけで、役者がスーツを実際に着た回数としては、2007年現在シリーズ最多を誇る。
 そのため、マトイを演じた西岡氏は、「これはフィクションじゃない、ドキュメンタリーだ」と言っていたとか。
 一方で、撮影用マスクとして考えると、面積の大きいゴーグルは、アップにした時に透けやすいという欠点を持っているわけで、“必要な時以外は透けない”ことが求められる。
 そのため、アップシーン用に、絶対に透けない&周囲が映り込まないように処理された、ゴーグルの表面がざらついた感じのマスクが使用されている。

 恒例の変身アイテムとして、ゴーゴーブレスが商品化されている。
 『フラッシュマン』で単5電池になって以来久しぶりの、ボタン型電池で作動するタイプで、変身時に開くカバーの下に液晶画面を付けて、変身ボタンを押すことによりゴーレッドの顔が表示されたり、画面を利用した簡単なゲーム機能を付けるなどしている。
 メインスイッチがないのも特徴で、暫くいじらずにいると勝手に電源が切れるようになっている。

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名乗り

 「ゴーレッド!」

 「ゴーブルー!」

 「ゴーグリーン!」

 「ゴーイエロー!」

 「ゴーピンク!」

 その回の主人公「人の命は地球の未来! 燃えるレスキュー魂! 救急戦隊!」

 「ゴー!」

 「ゴー!」

 (5人)「ファイブ!」

 (レッド)「出場!」

というのが一般的。
 「ゴー!」の部分はその回の主役が1人で2回とも言ったり、主役の後レッドが言うなど、いくつかパターンがある。
 5人が万遍なく喋るバージョンとして、

 (レッド)「人の命は地球の未来!」

 (ブルー)「燃えるレスキュー魂!」

 (グリーン)「救急戦隊!」

 (イエロー)「ゴー!」

 (ピンク)「ゴー!」

 (5人)「ファイブ!」

というパターンもある。

 34話『死 さもなくば 破滅』では、ゴーグルが透けた状態で個人名乗りをやっている(「人の命は…」以降は通常どおりのゴーグル)。
 45話『初夢は災魔の旋律』では、変身しないまま「人の命は〜」以降の名乗りをやっている。
 また、キャラクターの項にあるとおり、このエピソードでは、京子が顔出しでゴーレッドの名乗りをやっている。

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武器

 標準装備は、右腰のホルスターに入っているファイブレイザー
 銃身部を外して反転させ。付け直してグリップ部から直線になるよう角度を変え、先端部を伸ばすとスティックモードになる。
 また、このグリップ部は取り外してレイザーグリップになり、各種装備の操作部として使用する。
 また、材質不明のロープ:レスキューロープも全員が持っており、災魔獣の動きを封じるなどしていた。
 
 ほかに、マルチレスキューツール:ライフバードがある。
 これは、5つのレスキューツール用アイテムが合体したもので、呼ぶとベイエリア55から飛んでくる。
 これらのパーツにレイザーグリップを合体させると、それぞれビークドリラー(嘴)、特殊消火器ビルドディスチャージャー(ボディ)、切断・こじ開け用具ウイングスプレッダー(翼)、クローアンカー(足)、注射器テイルインジェクター(尾羽)になる。
 これらのレスキューツールは、どれが誰専用ということはなく、必要に応じて全員が使い分けている。
 また、前から順にビークドリラー、ビルドディスチャージャー、クローアンカー、ウイングスプレッダー(用のパーツ)を合体させ、テイルインジェクターをビルドディスチャージャーの脇にサイドグリップとして付け、レイザーグリップを1つ合体させるとブレイカーモードになり、初期必殺技:カラミティブレイカーを発射できる。
 
 18話からは、新兵器:Vランサーが登場する。
 変身前から使える「V」の字型の武器Vブーメランを本体にセットすることで起動し、「エクステンド!」の掛け声で伸展させて槍として使用する。
 刃先にエネルギーを集中して敵をVの字型に切り裂くVスラッシュが使えるほか、Vブーメランを外して投擲することもできる。
 また、レイザーグリップを合体させることでビーム銃:Vマシンガンになる。
 このVマシンガンのビームを5人分収束させたエネルギーを敵にぶつけるのが新必殺技ビッグブイバスターだ。

 次に、右手首に装着するパワーアップブレス:Vモードブレスが登場する。
 これは、ライナーボーイ開発に伴うベイエリア55のマックスシステムが完成したことで使用可能になったシャトル型のブレスで、5人分あり、右手首に装着する。
 数字3つと「V」のボタンを押すことで、

と様々な能力を発動できる。
 このうちいくつかは、ナガレが後で付け足した能力で、発展性の高さが窺われる。
 「478V」では、強化したスーツのパワーにより、VモードパンチVモードチョップなどの強化技を使えるが、『メガレンジャー』のバトルライザーと違いスーツ全体をパワーアップするため、右手による攻撃だけでなく頭突きなども強化されるという特徴を持つ。

 更に、29話『胸騒ぎの星空』でナガレが開発したゴーブラスターは、ノーマルモードの他、グリップ下部のアタッチメントを本体上部にセットすることで、消化弾やネット弾を発射できるレスキューモードに、折り畳まれている銃身を伸ばし、本体上部にVモードブレスをセットすることでハイパーモードに変形する。
 全員が2丁拳銃を持つのは、『ジェットマン』以来となる。
 5人がハイパーモードで一斉射撃すると、新必殺技ハイパーファイブになる。
 威力はビッグブイバスターと同等らしく、後半は状況に応じてどちらかでトドメを刺すようになっている。

 『ゴーゴーファイブ』では、前作『ギンガマン』に引き続き、個人武器は出さずに全て共通装備としている。
 ライフバードのレスキューツールを全員が状況に合わせて自在に使い分けているのも前作の機刃に似ている。
 初期武装であるファイブレイザーは、銃が警棒になるというよくあるパターンだが、“一旦銃身部を外して反転させると棒状になる”という新機軸を取っている。
 このギミックによるグリップ部の独立は、『ファイブマン』のファイブラスターで失敗したグリップ部を他のシステムと連動させるというアイデアの復活に繋がっている。
 レイザーグリップは、ライフバードによるレスキューツールのグリップとなり、カラミティブレイカーのグリップとなり、Vマシンガンのグリップともなるという形で、『ゴーゴーファイブ』の武器の中枢となった。
 商品展開上は、一応、カラミティブレイカーにもVランサーにもグリップが付属するという形になっていて、ファイブレイザーを持っていないと遊べないということにはならない。
 また、商品展開には反映されなかったが、レイザーグリップは各巨大メカの操縦桿の役も果たしており、アンチハザードスーツを核とする透徹された設計思想の存在を見せつける。
 1人の天才科学者が自費で開発した装備であるという背景を考えると、これは非常に合理的に感じられて好感が持てる。
 この装備の使い回し的な発想は、第2期武器群の核となるVモードブレスにも生かされている。
 Vモードブレスは、アンチハザードスーツの強化装置であり、マックスビクトリーロボやビクトリーマーズの合体スイッチであり、ゴーブラスターハイパーモードの中枢部でもある。
 Vモードブレスの商品価値から言うと、それだけでもごっこ遊びの武器(パンチの他ビームも撃てる設定)として使える上、ロボットの合体ごっこもでき、しかもゴーブラスターを買えば更にプレイバリューが増えるというおいしいアイテムだ。
 特にゴーブラスターは、本編中で非常に面白い開発過程が描かれている。
 ナガレの口から“Vモードブレスの機能をもっと引き出すために”と開発意図が語られ、父の作ったものを息子が流用して新機能を付加しているのだ。
 これに先立って、14話『恐怖のウイルス』で、ナガレが開発したアンチウイルスガンをモンドが強化して実用化するという展開があるため、ナガレがVモードブレスを利用した新兵器を開発することに無理がない。
 開発時間も予算も限られている個人経営の戦隊において、機能強化の余地のある武器はいくらでも使い回したいところだろうし、実に無駄がない。
 
 また、ファイブレイザー、ゴーブラスター共にビームガンという設定ながら、本編中では火薬着火式のプロップを用いてガンアクションを行っており、ある種の迫力を醸し出していた。
 2丁拳銃を撃ちながら突進するシーンは、本作のアクションシーンの随所に見られる。
 撃つ時に武器の名を叫ばず「シュート!」と叫ぶのも特徴だ。

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移動装備

 サイドカー型のコマンドアタッカー
 移動だけでなく武器としても使用される。
 ドリルの付いたサイドカー部分は、突撃武器アタッカーポッドとして射出できる。

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ロボット・メカニック

ビクトリーロボ

 

 ゴーライナーによって現場に輸送されるレッドラダー(はしご車:胸部・腕部を構成・はしごの先には拳がある)、ブルースローワー(消防車:腰部・大腿部)、グリーンホバー(V-TOL:頭部・背面)、イエローアーマー(多目的装甲車:左脚部)、ピンクエイダー(救急車型車両:右脚部)の99(キューキュー)マシンが「緊急合体!」して完成する。
 また、グリーンホバーが他の4機を吊り下げて飛んできて合体するパターンもある。

 

▲99マシン
左上からレッドラダー、ブルースローワー、イエローアーマー、ピンクエイダー、手前がグリーンホバー

 合体時は、イエローアーマーとピンクエイダーが油圧ジャッキによりボディを起こし、グリーンホバーに吊り下げられたブルースローワーが変形して合体し、まず下半身が完成する。
 この状態をビクトリーウォーカーと呼び、巨大歩行消防車として使用できる。

 

▲ビクトリーウォーカー

 このビクトリーウォーカーに、レッドラダーが合体し、最後にグリーンホバーが頭部に変形しながら降下して、合体が完了する。
 レッドラダーの合体方法には、レッドラダーがはしご部分である腕部を伸ばしてビクトリーウォーカー上部(腰回り)を掴み、自力で本体を持ち上げて変形しつつ合体するパターンと、グリーンホバーがレッドラダーを吊り下げて合体するパターンの2種類がある。
 
 強靱な腕部が伸びるのがビクトリーロボ最大の特長であり、交互に伸ばして連続ラダーパンチ、両腕を伸ばしたまま全身を横回転させて敵を殴りつけるスクリューラダーパンチ、伸ばした両腕で身体を支えて肩を軸に後方宙返り状に回転して連続キックするウインドミルラダーなど豊富な技を持っている。
 武器は、レイザーグリップを押し込むことで腹部のエンブレムから出現するブレイバーソードで、必殺技は、「剣よ、光を呼べ!」と叫んで発動するビクトリープロミネンス
 ビクトリープロミネンスは、ブレイバーソードにプラスエネルギーを迸らせて敵を斬る技であり、死霊(マイナスエネルギーの塊)である巨大災魔獣用に特化した技と言える。

グランドライナー

 

▲グランドライナー

▲ゴーライナー(&収納状態の99マシン)

 99マシンを現場に運ぶ役割を持つゴーライナー1(無人:右腕部)、ゴーライナー2(無人:左腕部)、ゴーライナー3(5人搭乗:頭部・胴体部・大腿部)、ゴーライナー4(無人:左脚部)、ゴーライナー5(無人:右脚部)の5台の55(ゴーゴー)マシンが、99マシンを搭載した状態で「連結合体!」することで完成する超々巨大ロボ。
 戦力強化のためモンドが55マシンを改造し、12話『決死の新連結合体』で未完成のまま実戦投入された。
 合体後、「グランドライナー、連結完了!」と言う。
 なぜか、どこにいても線路が持ち上がり、ゴーライナーが銀河鉄道999やデンライナーよろしく空中に舞い上がって合体する。
 コクピットは、ゴーライナーと同じくゴーライナー3の先端部に5席揃っている。
 武器を使用する際には、操縦席に強烈な電磁波を発生させるため、アンチハザードスーツを着ていてすら耐え難いほどのダメージを操縦者に与える。
 武器は右肩(1の車両先端部)から発射するライナーガトリングと左肩(2の車両先端部)から発射するミサイル:ライナーホーミングで、同時発射するグランドファイヤーが得意技。
 必殺技は、1と2の車両先端部を両拳の先に合体させ、パワーを集中させた後でライナーガトリングとライナーホーミングを放ちながらパンチを繰り出すグランドストーム
 発射の前に「怒りの拳よ、灼熱の嵐を呼べ!」と言う。
 
 ただし、物理的な出力・破壊力はビクトリーロボの数倍だが、プラスエネルギーを乗せた攻撃はできないため、肉体を持つゴレム災魔獣以外は倒すことはできない。
 
 また、こまめに改修を重ね、電磁波を発生しなくなったり、99マシンを内蔵していない状態でも合体・戦闘できるようになったりしている。

ライナーボーイ

 

 ビクトリーロボのサポート用に開発された自律型ロボットで、会話が可能なほど優秀なAIを搭載している。
 普段はライナーボーイ形態でベイエリア55のマックスエリアに格納されているが、出撃時には電車型のマックスライナー形態で巨大な線路を走って出場し、「シャトル変身!」の掛け声でスペースシャトル型のマックスシャトルに変形して飛来する。

 

▲マックスライナー

 

▲マックスシャトル

 太陽エネルギーで活動しており、戦闘時は、一旦大気圏外まで上昇してパネルに太陽光線を浴びて「特急武装!」の掛け声で人型に変形する。
 変形時、「マックスシャトルは、大気圏を飛び出し、太陽光をエネルギーパネルに浴びた時、ライナーボーイに変形する」というナレーションが流れる。
 素早い動きが特徴で、一旦ライナーボーイに変形した後は、自由自在にシャトル形態とロボット形態を使い分けて戦う。
 必殺技は、シャトル時の機首下部が変形した“銃の生えた盾”ブラスターシールドによる射撃。
 ライナーボーイの人工知能を開発した加賀美博士を演じたのは、『オーレンジャー』の主題歌を歌っていた速水けんたろう氏。
 氏は、元NHK『おかあさんといっしょ』の歌のお兄さんで、本作放送中(出演の少し前)に『だんご3兄弟』で一世を風靡した。

マックスビクトリーロボ

 

 ビクトリーロボとライナーボーイが「マックスフォーメーション!」の掛け声で合体する超巨大ロボ。
 ビクトリーロボがマックスシャトルに掴まって飛翔した後、マックスシャトルが分割され、ライナーボーイの脚部が脛の一部と足首に、胸部が腰部装甲に、腕部が腰のマキシマムキャノンに、ブラスターシールドが胸部装甲に、大腿部が前腕部装甲に、マックスシャトルの機首が肩部装甲になり、内蔵されていたヘッドギアがビクトリーロボの頭部に被さって合体する。
 巨大な推力を利用してホバリング移動することができ、巨体の割にビクトリーロボ以上の機動性を誇る。
 また、敵の攻撃による爆発エネルギーを吸収することもできる。
 ただし限界はあり、25話『大魔女降臨の時』では敵の攻撃エネルギーを吸収しきれず苦戦し、最終話では特殊ガスの爆発によって大破した。
 必殺技は、胸部・腕部・腰部のビーム砲を一斉に放つマックスノバだが、発射の前に全身のエネルギーパネルから太陽光を吸収しなければならないため、暗黒災魔空間では力を発揮できない。

ビクトリーマーズ

 

 災魔の脅威が現実化したため、世界中の科学者・研究所からの技術支援を受けられてるようになったことで開発できた万能ロボ。
 ゴーライナーに収納されて発進したレッドマーズ1(レッド搭乗:頭部・胸部)、ブルーマーズ2(ブルー搭乗:両腕)、グリーンマーズ3(グリーン登場:腰部・大腿部)、イエローマーズ(イエロー搭乗:左脚部)、ピンクマーズ5(ピンク搭乗:右脚部)の5台のマーズマシンが「流星合体!」の掛け声で4脚歩行メカ:ビートルマーズに合体し、更に「ライジングフォーメーション!」の掛け声で人型に変形して完成する。

 

▲マーズマシン

  

▲ビートルマーズ

 元々宇宙での活動も可能なように開発されたため、それに伴ってゴーライナーもマックスシャトルに連結したスペースゴーライナーとして宇宙に飛び出せるように改良されている。
 前述の設計思想のお陰で、ビクトリーマーズは、ゴーゴーファイブのロボの中では群を抜いた推力を持っており、独力で地球の重力圏を脱出して太陽の引力圏まで到達することが可能。
 更に、6000度近い高熱に耐え、水深8000メートルでも活動できるなど、劣悪な環境での戦闘を想定されて開発されている。
 そのため、暗黒災魔空間で唯一自由に戦えるロボとなっており、後半の主戦力として活躍した。
 必殺技は、槍ジェットランス先端のミサイルトップジェットを撃ち出してダメージを与えた後、ジェットランスで×の字に斬るマーズフレア
 39話『無限連鎖を断て!』では、ビクトリーロボのブレイバーソードを使って「剣よ、紅蓮の炎を呼べ!」の掛け声と共にマーズプロミネンスを使っている。

マックスビクトリーロボBバージョン

 モンドが最後の切り札として、ベイエリア55の外で建造していた新型ロボ。
 黒いマックスビクトリーロボといった姿をしているが中身はまるで別物で、マトイ達5人に合わせてチューニングしてあり、スーツの首の部分にコードを接続することで、5人の精神波によってパワーを得、操ることができる。
 人工知能を積んでおらず、分離機能もないと思われるが、単独での飛行能力を持つ。
 必殺技は特にないが、精神波をプラスエネルギーに変えて刀身に迸らせることのできるブレイバーソードを武器とする。

 本作では、ジャッキアップして脚部に変形する車両メカやウインチで持ち上げられて合体するメカといった、ある意味リアルな合体シーンが描かれている。
 特に、グリーンホバーによるブルースローワーの吊り下げ合体は、スーパー戦隊シリーズの他作品では見られないタイプのものだった。
 例えば後年の『特捜戦隊デカレンジャー』では、デカレンジャーロボが合体する際、メインボディとなるパトストライカーが、両腕となるパトアーマーとパトシグナーをサブアームで引っ張って合体するが、肝腎のパトストライカーが脚部メカに合体する際には妙な軌道のジャンプをしており、必ずしもリアルな描写を目指してはいない。
 そういった意味で、非常に意欲的だったと言えるだろう。
 また、合体前のメカも割と活躍している。
 ピンクエイダーの内部に一般車両を避難させたり、疾走するイエローアーマーの上にスペースシャトルを軟着陸させて着陸脚代わりにしたり、レッドラダーの腕部を利用してビル突入したりといったレスキューシーンや、ビクトリーウォーカーによる消火活動などが存在したからだろう。

 

▲レッドラダー、はしご部分延長状態(劇中ではもっと長く伸びる)

 通常、2号ロボは全くの別物かスーパー合体用ロボとなるのだが、本作の2号ロボ:グランドライナーは、1号ロボの運搬メカであるゴーライナーの変形合体という形を取った。
 1話から登場しているメカが実は巨大ロボになるというのは、『ファイブマン』のマックスマグマ以来だ。
 しかも、マックスマグマは形状や前年のターボビルダーのことなどから、要塞ロボになるのが丸見えだったのに比べ、ゴーライナーは形状から単なる運搬メカに見えて実はロボになるというサプライズがあった。
 OPラストで空に伸びる線路からゴーライナーが飛び出すシーンが、実は合体のためのジャンプだったというのもサプライズだった。
 空母系に連なる運搬メカが人型ロボになるというのは、『カーレンジャー』のビクトレーラーや『ギンガマン』のギガバイタスという例があるが、格闘戦までこなせる人型ロボになるというのは例がない。
 しかも、腕になる車両の先端を肩部に持っていって手足の長さに差を持たせるなど、プロポーションを保とうという努力も見える。
 同様の列車メカの合体である『魔法戦隊マジレンジャー』のトラベリオンが、手足の太さ長さが全く同じ箱ロボだったことに比べると、雲泥の差と言えよう。
 また、巨大故の圧倒的な破壊力を“死霊である巨大災魔獣は倒せない”という設定によって無力化し、ビクトリーロボの出番を奪わなかったことも特筆に値する。
 それだけに、42話『地獄の災魔獣軍団』で、肉体を持たない幽魔災魔獣を倒して設定無視してしまったのが悔やまれる。
 
 また、1年ぶりにスーパー合体も復活させているが、そのための増加メカとして自律型ロボのライナーボーイを登場させており、6人目のメンバーが登場しない代わりとなっている。
 『ジュウレンジャー』の守護獣、『カクレンジャー』のニンジャマン、『爆竜戦隊アバレンジャー』の爆竜、『炎神戦隊ゴーオンジャー』の炎神など、会話できる巨大メカ(の類)は多々あるが、これらはいずれも生命体だ。
 2008年現在、非生命体(=単なる機械)でありながら会話ができる巨大メカはライナーボーイだけなのだ。
 
 最後に登場したビクトリーマーズは、『ジュウレンジャー』の大獣神以来の“合体途中の戦闘形態を持つロボ”となっている。
 4足歩行メカ:ビートルマーズは、一種の歩行戦車といった趣で、後半登場ということもあって、終盤でも多少は出番があった幸運なメカだった。
 
 玩具的には、ゴーライナーに99マシンorマーズマシンを搭載することが可能であり、同じスペースに収納できるよう合体ロボパーツを設計しなければならなかった苦労が偲ばれる。
 一方、そのゴーライナーがグランドライナーになる関係上、収納されているメカの合体であるビクトリーロボもビクトリーマーズも小型化せざるを得なくなったが、それなりに重量感のある商品になっている。

 また、最終回で突然登場するマックスビクトリーロボBバージョンは、玩具展開として発売されたブラックバージョンを本編に出したもので、新メカの前振りをかなり丁寧に行っていた本作では異様なほど唐突な登場だった。
 ただし、本編中では「最後のロボット」などとしか呼ばれておらず、正式名称は出てこない。
 開発資料に「マックスビクトリーロボB(ベータ)バージョン」と記載されているのみである。
 『ジュウレンジャー』の大獣神以来、スーパー戦隊ロボ玩具のブラックバージョンは数多いが、実際に本編に登場したのは2008年現在これだけである。
 活躍内容的には、ブレイバーソードで破壊神を斬っただけで、人工知能も搭載していなかったようだし、単にビクトリーロボの黒バージョンでもいいような気がするが、玩具がシリーズ初の“スーパー合体ロボセットのブラックバージョン”だったこともあって、マックスビクトリーロボでなければならなかったのだろう。

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敵組織:災魔一族

首領:大魔女グランディーヌ

 宇宙の彼方に潜む巨大なマイナスエネルギー生物。
 降臨の地と予言された地球(日本)を中心に太陽系の惑星がグランドクロスを起こした時、地上が破壊と混沌の支配する場所になっていると降臨できるため、子供達を先遣隊として魔宮殿(サイマパラディコ)を建造させた。
 25話『大魔女降臨の時』で一応降臨したが、モンドの捨て身の活躍で儀式が失敗に終わったため完全体として降臨はできず、自らを完全体にするべく子供達に破壊活動を続けさせた。
 声を演じたのは、『オーレンジャー』でマルチーワを演じた山田美穂氏。

大幹部:冥王ジルフィーザ→ジルフィーザII

 災魔4兄弟の長男にして長子。
 天の属性のデッキを主に使うが、切り札として冥界のデッキを持つ。
 一見、長男としての威厳を持っているように見えるが、実は4兄弟の長であることに拘っており、ドロップが急成長して自らの地位を脅かす存在になることを知っていて亡き者にしようとするセコさを持っている小人物。
 終盤にグランディーヌの力で蘇るが、その際は別人のように兄弟想いになっていた。
 胸の赤い「冥王の星」が冥王の証であり、ジルフィーザの死後、サラマンデスに受け継がれたため、復活後は付いていない。
 声を演じたのは、『勇者特急マイトガイン』のガインを演じた中村大樹氏。

大幹部:童鬼ドロップ→龍皇子サラマンデス→龍冥王サラマンデス→幽魔王サラマンデス→サラマンデスドラゴン

 三男にして末子。
 火の属性のデッキを持つ。
 当初は赤ん坊で「ドロップ」しか言えなかったが、ジルフィーザの死と共に冥王の星を受け継ぎ、急成長してサラマンデスとなった。
 かなりの自信家で、当初はコボルダやディーナスを立てるかのような下手な態度を取っていたが、実は蔑んでおり、後に本性を現してからは非常に態度が大きくなった。
 冥王の星の力で、暗黒災魔空間(暗黒サイマゾーン)を作って敵を閉じ込めることができる。
 その際、「サラマンデスの作り出す特殊空間:暗黒災魔空間は、マックスビクトリーロボのエネルギー供給を絶ち、更には災魔獣の力を10万倍に高めるのだ」とナレーションが流れていたが、ビクトリーマーズの登場に伴い流れなくなった。
 ドロップの声を演じたのは速瀬京子役の宮村優子氏であり、本作のみの別名:闇村悠之介名義でテロップされている。
 サラマンデスの声を演じたのは『機動新世紀ガンダムW』のヒイロ・ユイを演じた緑川光氏。

幹部:獣男爵コボルダ

 次男にして第2子。
 地の属性のデッキを持つ。
 力押しを好み、作戦というものを理解できない粗暴者。
 声を演じたのは、『キン肉マンII世』のバッファローマンを演じた乃村健次氏。

幹部:邪霊妃ディーナス

 長女にして第3子。
 水の属性のデッキを持つ。
 少々陰険な性格で、粗暴なコボルダをバカにしたところがあるが一応兄として立てている。
 ジルフィーザに心酔しており、再三ジルフィーザ復活作戦を行い、遂には自分の命を代償として復活させた。
 演じた平沢草(かや)氏は、本作後引退したらしい。

召使い:呪士ピエール

 災魔一族に使える召使いで、災魔4兄弟の持つデッキのカードを災魔獣に変えたり、倒された災魔獣を巨大化させたりする役目を持つ。
 声を演じたのは、アニメ『金田一少年の事件簿』で金田一一を演じた松野太紀氏。

怪人:災魔獣

 4兄弟が持つデッキの中の災魔獣のカードを、ピエールが祭壇に投げ入れ、「悪の魔力よ、ここに集い、闇の世界より我らが災魔獣を生み出すのだ。アミアス、アミアス、アビディール」と唱えることで誕生する。

怪人:魔闘士

 ジルフィーザ秘蔵の冥界のデッキに3枚だけ入っている、災魔獣を遙かに超える強さを持った戦士。
 ジルフィーザ自身が祭壇にカードを放り入れることによって、呪文なしで出現する。
 一応ジルフィーザに服従しているものの、かなり強い自由意思を持っており、戦い方についてはジルフィーザの命令にも従わない。

戦闘員:使い魔インプス

 黒い小悪魔的な姿をした魔物。
 背中にコウモリのような小さな羽が生えている。
 知能はあまり高くないようだ。
 ディーナスの配下には、少々知能レベルの高い女性版のインプス親衛隊がいる。

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巨大化

 倒された災魔獣の残骸にピエールが再生カードを投げ、「闇の世界の力よ、最後の力を! アミアス、アミアス、アビクロス! 災魔復活!」と唱えると、肉片がコウモリのようになって集まりながら巨大化する。
 その際、ナレーションによって、「死せる災魔獣は、ピエールの再生カードにより巨大な死霊として復活する。巨大災魔獣は、破壊本能のみに従い、1万倍の力を発揮するのだ」と説明される。
 再生するとは言っても、本当に生き返るのではなく、死んだ災魔獣の肉片を依代として強大なマイナスエネルギーの塊を動かしているだけであり、元の災魔獣の個性は能力以外残っていない。

 もう1つの巨大化の方法として、マグマゴレムの破片から生まれたゴレムカードを使うというものがある。
 倒された災魔獣の残骸にゴレムカードを投げ、「大魔女の祈りよ、更なる力を! アミアス、アミアス、アビゴレム」と唱えると、災魔獣が巨大化し、強化再生する。
 その際、ナレーションによって、「マグマゴレムから生まれたゴレムカードは、死せる災魔獣の肉体を分子レベルで再構成し、更に凶悪な能力を加えて生き返らせるのだ」と説明される。
 再生カードによる再生との違いは、本当に生き返るという点であり、肉体を持っている分、普通に巨大化した災魔獣より遙かに強力である。
 ただし、ゴレムカードは枚数が限られている。

 魔闘士は、冥界のデッキの中にある専用の巨大化カードによって巨大化する。
 持ち主であるジルフィーザ自身によって巨大化させられたため、特に呪文や巨大化に伴うナレーションはない。

 災魔一族は、大魔女グランディーヌの子供であり部下でもある4兄弟が、母に代わって動く組織だ。
 大魔女降臨の地として予言されている日本を破壊と混沌で満たすため、北極に降臨した魔宮殿(サイマパラディコ)に潜んで破壊の限りを尽くす。
 後半は、中途半端な降臨をしたグランディーヌを完全復活させるために破壊活動を行った。
 末子のサラマンデスが冥王の座に就いたこともあって、兄弟仲は良くないが、それぞれがグランディーヌを敬愛していることは共通している。
 ただし、グランディーヌ自身は、我が子であっても所詮は使い捨ての手駒としか見ていない。
 また、「子供」と言っても、エネルギー体であるグランディーヌに生殖機能があるとも思えず、単に「作成した」というだけかもしれない。
 当然、父親と言うべき存在がいるのかどうかも不明。
 
 怪人である災魔獣がカードから生み出されるというのは、当時人気だった『遊戯王』などカードゲーム系の影響を受けたものだろう。
 「カードデッキ」という言葉がトクサツファンに浸透したのは『仮面ライダー龍騎』からだが、「冥界のデッキ」といった言い方で、本作で先に使われていたのだ。
 
 なお、ネーミングとしては、

といった具合に、その属性に因んだ妖精や魔物の名前から付けられている。

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ラストへの流れ

 サラマンデスは、一度受けた攻撃を二度と受けなくなるという無限連鎖のカードを使ってゴーゴーファイブを苦しめるが、災魔獣リザーデスごと無限連鎖のカードを太陽に放り込まれ、回収できなくされてしまった。
 グランディーヌに見限られたサラマンデスは、幽魔地獄にゴーゴーファイブを閉じ込め、幽魔災魔獣に襲わせる作戦を開始する。
 だが、ゴーゴーファイブの脱出を防ごうとするグランディーヌによって、幽魔地獄の扉は閉ざされ、サラマンデスも幽魔災魔獣に襲われ始める。
 ゴーゴーファイブは、行方不明の母律子の声に導かれて幽魔地獄を脱出し、サラマンデスは幽魔災魔獣を喰らい尽くして幽魔王サラマンデスにパワーアップして脱出した。
 そんな中、マツリは、母に捨てられたことを知らず、2年間迎えに来るのを待ち続けている少女:梓を知る。
 マツリは梓の姿に、8年前から行方不明の母を待ち続けている自分を重ね、待つことの虚しさを感じるが、そんなマツリにマトイは「俺は(母さんが)帰ってくると信じて待ち続ける。信じ合うのが家族だ」と言い切る。
 サラマンデスは配下の災魔獣カオスと共に、人間の命を吸い取って力に変える災魔ツリーからのエネルギー供給によって巨大化し、ゴーゴーファイブに戦いを挑んできた。
 災魔ツリーには、梓も取り込まれていた。
 ビクトリーロボとライナーボーイがサラマンデスらと戦う中、ゴーライナーはマーズマシンを搭載し直してミントの操縦で再出場する。
 グランドライナーがカオスを倒したものの、ビクトリーロボはサラマンデスの猛攻に叩き伏せられてしまった。
 倒れ伏したビクトリーロボのコクピットから、マトイ達は、梓の母が災魔ツリーに取り込まれた娘を助け出そうとしている姿を目撃する。
 梓の母は、やはり娘を迎えに来たのだ。
 親子の絆の深さを目にした5人は、再び立ち上がった。
 マトイは、サラマンデスの攻撃からビクトリーロボを守ってバラバラになったグランドライナーの中から、マーズマシンを発進させる。
 マックスビクトリーロボとビクトリーマーズの攻撃により、サラマンデスは死んだ。

 幽魔王サラマンデスの死に伴い、グランディーヌはコボルダとディーナスを見捨てて姿を隠した。
 途方に暮れた2人は、ジルフィーザ復活に全てを賭けることとし、マトイに寄生獣パラサイトを寄生させ生命エネルギーを奪ってジルフィーザを復活させる作戦に出た。
 マトイに取り憑いたパラサイトのオスは、ジルフィーザに憑いたメスのパラサイトにマトイの生命エネルギーを送り続け、マトイの命が尽きた時、ジルフィーザは完全に復活するのだ。
 これまでマトイに何度となく救われてきたナガレ達4人は、マトイを救うため、ジルフィーザに挑む。
 パラサイト同士が繋がっていることに目を付けた4人は、メスのパラサイトを攻撃することでオスにダメージを与え、マトイから離すことに成功した。
 エネルギーの供給を絶たれたジルフィーザは、このままでは復活できない。
 ジルフィーザを庇って傷を負ったディーナスは、自らの生命エネルギーをジルフィーザに与えて復活させ、代わりに消滅した。
 
 一方、姿を消していたグランディーヌは、数億年掛けて宇宙から降り注いで地底に溜まっていたマイナスエネルギーを吸収し、遂に完全体になった。
 グランディーヌは、冥王の座をちらつかせてコボルダを利用し、ゴーゴーファイブを災魔ロードに引きずり込んで一気に殲滅することにする。
 生命エネルギーを大量に吸われて弱っているマトイを残して出場した4人は、グランディーヌによってコボルダごと災魔宮殿のある災魔ロードに引きずり込まれた。
 そして、ジルフィーザの助力を拒んだコボルダは、切り札の地霊砲を使ってブルー達4人と戦うが、グランディーヌはジルフィーザにコボルダごとブルー達を倒すよう命じる。
 弟の命を奪うことを躊躇い、初めて母に反抗したジルフィーザだったが、グランディーヌはジルフィーザの身体を操って攻撃させ、コボルダは死んだ。
 グランディーヌは、元々ジルフィーザ達4兄弟を自分が降臨するための捨て石としか考えていなかったのだ。
 そしてグランディーヌは、ジルフィーザの身体を炎と変えてブルー達4人を焼き尽くそうとする。
 一方、突然反応の消えたブルー達を探すマトイは、弟達の声の位置から災魔ロードへの入り口を見付け出し、変身して飛び込む。
 そして、燃え尽きようとするジルフィーザから、グランディーヌを倒す以外に弟達の周りの炎を消す方法はないことを知らされる。
 ジルフィーザは、レッドに、「お前は良い肉親を持って幸せだ」と言い残して燃え尽きた。
 ジルフィーザに教えられたとおり災魔宮殿に突入したレッドは、グランディーヌの攻撃を受けつつもVモードパンチを叩き込み、災魔宮殿ごと災魔ロードを粉砕して弟達を救い出した。
 現実世界に巨大化して現れたグランディーヌも、5人が操縦するマックスビクトリーロボのマックスノバで粉砕された。
 
 だが、グランディーヌの正体はマイナスエネルギーの塊そのものであり、肉体を失ったことで精神体となって地球全体を覆い始めていた。
 グランディーヌは、サラマンデスを復活させ、自我を奪って復活させたジルフィーザと共に破壊活動を行わせる。
 この騒ぎで首都消防局本部は壊滅し、脱出した乾総監はベイエリア55から救助活動の指揮を取ることとなった。
 そして、近くのビル内に取り残された子供達を救うため、ブルー、グリーンがジルフィーザとサラマンデスを引きつけ、レッド達3人が救助に向かう。
 ピンクが子供達のところまで到達することに成功したが、ビルの内部には特殊ガスが充満しており、レスキューツールを使用すれば引火する恐れがあるため、レッド達は手作業で瓦礫の撤去を決意した。
 一方、ブルーの言葉に自我を取り戻し掛けたジルフィーザはサラマンデスに殺され、そのサラマンデスもブルー達のゴーブラスターでダメージを負った。
 ジルフィーザらに心が残っているのが敗因と見たグランディーヌは、2人の心を消去し、ジルフィーザIIとサラマンデスドラゴンとして巨大化させた。
 ブルーがグランドライナーで、グリーンがビクトリーマーズで応戦するが歯が立たないため、イエロー、ピンクを現場に残してレッドがマックスビクトリーロボで参戦した。
 イエローとピンクは無事子供達を救出するが、二大破壊神の攻撃で引火したガスでビルは爆発した。
 マックスビクトリーロボは、救出されたばかりの子供達を守るため盾となって爆風に身を晒し、大破してしまう。
 グランドライナー、ビクトリーマーズも二大破壊神の猛攻に倒れた。
 モンドは、京子に“最後の希望”のケースを渡してベイエリア55から脱出させる。
 京子が防災研(巽家)に到着した時、ベイエリア55は海に沈んでいた。
 ちょうどその時、防災研の電話が鳴った。
 それは、飛行機事故で行方不明になって以来8年間意識不明だった母律子が、ようやく意識を取り戻してかけてきた電話だった。
 
 勝利を確信したグランディーヌが、二大破壊神を己が本体とするため全エネルギーを注入し始めたため、二大破壊神は動きを止めた。
 そして、兄達の消息を調べるために一旦防災研に戻ったダイモンとマツリは、京子からケースと母の連絡先を渡された。
 京子から渡された最後の希望…それは、5人の精神波で動く最後のロボット:マックスビクトリーロボBバージョンだった。
 ダイモンとマツリは、Bバージョンの元へ急いだ。
 一方、グランドライナーとビクトリーマーズから脱出し、マトイを救出したナガレとショウだったが、勝ち目のない戦いに弱気になる。
 そんな2人に、マトイは「地球上に人間が1人でも残っている限り、戦いは負けたことにはならねぇ」と発破を掛ける。
 レッドが囮になっている間にブルーとグリーンが傷だらけのグランドライナーとビクトリーマーズロボに再び乗り込み、動き出した二大破壊神に挑むが、2台のロボは完全に破壊されてしまった。
 そこへダイモンとマツリが操縦するBバージョンが到着し、5人揃ったコクピットで、母の生存が告げられた。
 信じ続けたからこそ母は生きていた。
 自分達を信じているからこそ、父はBバージョンを遺してくれた。
 「信じ合う力こそ俺達の絆だ!」「剣よ、光を呼べ!」5人の精神波は最高潮に達し、Bバージョンのブレイバーソードが二大破壊神を切り裂いてグランディーヌのマイナスエネルギーを全て消し去った。
 
 戦いが終わった。
 モンドも無事生還し、律子も帰ってきた。
 5人はそれぞれの職場に復帰し、母の手作り弁当を持って出勤する日々が始まる。
 人の命を救うために。

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Vシネマ 

Vシネマ 新たなる戦士

 『ゴーゴーファイブ』のVシネマ第1弾。
 VSシリーズでないVシネマがあるのは、2008年現在、本作のみ。
 『ダイレンジャー』でリュウレンジャー亮を演じた和田圭市氏がジーク役で登場していること、宮村氏がジークジェンヌに変身していることがウリの娯楽編。
 本編との直接の繋がりがあるかどうかは不明。

Vシネマ 救急戦隊ゴーゴーファイブVSギンガマン

 『ゴーゴーファイブ』のVシネマ第2弾にしてVシネマでのVSシリーズ第5弾。
 『ギンガマン』の敵バルバンには生存者がいないため、敵は災魔一族だけになっている。
 災魔兄弟の真の長男:闇王ギルが登場しているが、これによって災魔兄弟もゴーゴーファイブと同じ男4人女1人の5人兄弟となって好対照であるため、本編と繋がりありとする意見もある。
 ただし、本編中に挿入可能な時期はなく、あくまで番外編である。
 何より、子供を自由に操れるグランディーヌが自分の長男をもてあますとは考えにくい。

 本作の最大の特徴は、ビクトリーマーズが超装光している点であり、ギンガマンが5人揃った場所ならどこにでも発現できる超装光を使ったアイデアはさすがと思わせる。

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傾向と対策

 シリーズ21作目(『ゴレンジャー』からは23作目)となった『ゴーゴーファイブ』は、「人の命を守る」ことを最優先に掲げたことから、番組開始前からファンの不安の的となっていた。
 同様の路線だったメタルヒーローシリーズのレスキューポリスが、3作目の『特捜エクシードラフト』で低迷した(次作はガラリと変え、ロボット物の『特捜ロボ ジャンパーソン』)という苦い前例を知っていたからである。
 5人のスーツデザインの、ゴーグルが顔の面積の大部分を占めている点など、単調なデザインも不安を煽る要素となっていた。
 だが、蓋を開けてみれば、前作『ギンガマン』以上に正統派の熱い正義の味方となった。
 デザイン的な単調さはいかんともしがたいが、不安の的となったばかでかいゴーグルも、顔が透けて見えるという演出の小道具として効果的に作用していたため、当初の不安は吹き飛んだというファンは多い。
 
 結局、レスキューポリスとの最大の違いは、戦うべき怪人が存在するかどうかという点ではないかと思う。
 装備やロボのオモチャを売ろうとすれば、それらを番組中で活躍させなければならない。
 そして、ヒーロー物というカテゴリーである以上、メイン視聴者である子供が求めるのは強い武器ということになる。
 例えばレスキューポリスシリーズ1作目の『特警ウインスペクター』では、中盤にギガストリーマーという万能ツールが登場する。
 これは、マジックハンドでありドリルでもあるというレスキューツールなのだが、結局のところは強力なプラズマ光弾を発射するマキシマムモードでの活躍がほとんどだった。
 ところが、レスキューにはこんな強力な武器は必要ないわけで、作中ではもてあまし気味になってしまった。
 その理由としては、『ウインスペクター』には明確な敵組織は存在せず、主に地球人の犯罪者を逮捕するために活動していたことが大きい。
 1立方メートルの鉄塊を蒸発させるプラズマ光弾など、そこら辺の犯罪者相手に使ったら殺してしまう。
 基本的に逮捕を目的とする警察組織の物語にあって、うっかり犯人を殺してしまうような武器を使うわけにはいかないが、さりとて使わないとオモチャが売れない。
 そのため、ひどい時には、逃げる車のタイヤを撃ち抜くために(腰のビームガン:デイトリックで十分なのに)マキシマムモードを使用するというとんでもない状況が発生していた。
 このギガストリーマーは、次作『特急指令ソルブレイン』中盤の必殺武器として再登場するが、既にマキシマムモード以外で使われることはなかった。
 更に、番組後半の必殺武器として登場したパイルトルネードも、各種弾丸を発射できるという触れ込みながら、やはり必殺武器としてのバーストモードばかりが使われるという状況になっている。
 そして、次の『特捜エクシードラフト』では、設定はともかく完全に武器としてしか使われないエンブレードやサイクロンノヴァが登場するに至っており、強力な武器を出さなければならない宿命が露わになっている。
 この点は、本作においても、ライフバードのツールのうち、一見して武器っぽいウイングスプレッダーとビークドリラーの使用頻度が飛び抜けて高かったり、ゴーブラスターのレスキューモードがほとんど使われなかったりするのに似ている。
 つまり、たとえレスキューがメインのチームであっても、ヒーロー物であるからには強い武器が求められ、それが活躍するには強い敵が必要になる…といったジレンマが存在するのだ。
 この問題に対し、本作では、人間の悲鳴を求めて破壊活動を行う災魔一族というレギュラーの敵を配し、怪人と戦い倒すことが人の命を救う道であるという理由付けを行っている。
 “人を救うには、まず破壊活動を行っている張本人を倒さなければならない”というのは、非常に分かりやすく説得力もある。
 実のところ、ゴーゴーファイブの面々がレスキュー活動を実際に行うシーンは、そんなに多くない。
 前述の“戦わないとオモチャが売れない”という影響もあるし、レスキュー活動している間は災魔獣の破壊活動が放っておかれてしまうという問題点もあるからだ。
 ライフバードの注射器:テイルインジェクターをレスキューシーンで使用した姿を見た記憶はないくらいだ。
 一部で「どこがレスキューソルジャーだ! 戦ってるだけじゃないか!」という声が上がる所以だ。
 ただし、この辺のジレンマは、首都消防局のトップである乾長官がゴーゴーファイブの正体と行動を認知しているという描写があるお陰で相当解消されている。
 これによって、ゴーゴーファイブが災魔獣と戦い食い止めている間に首都消防局が救助活動する、或いはレスキュー隊が動きやすいようにゴーゴーファイブが災魔獣を現場から遠ざけるなど、救助活動を行うのがゴーゴーファイブだけではないという描写に繋がっているからだ。
 逆に世界観を広げる役割も果たしているので、鷹羽的には決して印象が悪くない。
 
 ただ、99マシンを使用してのレスキューシーンが少ないという点はいかんともしがたい。
 なぜなら、そのようなシーンは、大規模なセットを組んでのミニチュア特撮になってしまい、時間と予算を食いまくるため、番組初期や中盤の盛り上げくらいでしか撮れないのだ。
 考えてみれば、前述の『ソルブレイン』でも、大規模事故のシーンがバンクだらけだという批判があった。
 現在ではCGによってかなりクリアできる部分ではあるが、本作当時はまだミニチュア主流であり、こういった部分はクリアできなかったのだ。

 さて、ゴーゴーファイブの当初の装備を見ていると、モンドは、マイナスエネルギーを持つ何かと戦うと漠然と考えてはいたが、災魔獣のような怪物を相手にする前提ではなかったというのが見える。
 完全に武器として装備されているのは、アンチハザードスーツではファイブレイザー、ビクトリーロボではブレイバーソードだけであり、後はレスキューにも使えるアイテムとして作られている。
 特に、歩く消防車:ビクトリーウォーカーの存在は、大規模な破壊がもたらされた際に速やかに消火活動を行えるようにするという明確な目的意識がある。
 モンドは、戦う相手が明確になった段階で、武器以外の何者でもないVランサーを開発したり、破壊力の大きなグランドライナーを開発するようになるのだ。
 その後も、敵の脅威が大きくなるに従って、総合戦闘補助システム:マックスシステムという構想の下、基地の増築:マックスエリアや強化合体用のロボ:ライナーボーイ、戦闘力強化用アイテム:Vモードブレスを開発し、戦力を上げていく。
 そして、当初は情報提供や技術提供をしてくれるのがモンドの個人的な知り合いだけだったのが、災魔の脅威が世界的に知れ渡ったことで世界中の科学者から情報・技術協力を得られるようになるなど、行動範囲も広がっていった。
 ほかの科学者からの技術提供を受けたお陰で、強大な出力を持つビクトリーマーズの開発のような、モンド1人ではできなかったことが可能になっている。
 また、ナガレも、Vモードブレスを更に有効に活用するためにゴーブラスターを開発するなど、周囲も動き始めていく。

 これらの状況をオモチャの元となる新兵器やスーパー合体等の登場とリンクさせていったところは、なかなか素晴らしい。
 モンド自身はかなり先を見越して装備の開発を始めているのに、なかなか進まないといった焦りが随所に描かれているのだが、これが新兵器登場の伏線を兼ねているわけだ。

 元々この『ゴーゴーファイブ』は、「1999年7の月、恐怖の大王が降りてくる」というノストラダムスの大予言と、1999年8月11日に実際に起きる太陽系のグランドクロスを下地に企画されている。
 本作放送当時は、まだノストラダムスの大予言をネタに、「恐怖の大王」を悪役とする作品を作ることが笑われない時代だった。
 また、グランドクロスの方は、前述のとおり、地球を中心に太陽系の惑星が十字を描いて並ぶという、本当の天体現象だ。
 ちょうど7月から8月にかけてグランディーヌの復活絡みの山場を持ってくることで、実際の事象と物語をリンクさせようとしたわけだ。
 更に、1999年と引っ掛けてタイトルを「きゅうきゅう戦隊」としたり、ロボに合体するメカを「99マシン」としたりしている。
 
 『メガレンジャー』以来恒例のクリスマス前に総力戦をして、年末最後の放送では息抜きのおふざけ総集編をやるという悪しき伝統は、今回は、年末のデータ整理の形で行われている。
 また、本作では、出演者が歌う挿入歌にもかなり力を入れており、1月2日放送の45話『初夢は災魔の旋律(メロディ)』では、各キャラの歌う歌をバックに話が進み、特にピンクとディーナスの歌合戦では、ピンクがマスクを外して戦うイメージシーンが挿入されるなど、ほとんどイメージビデオのノリだ。
 更に、次回予告後に、マトイによる“今回流れた曲が収録されたCD”の宣伝が入っていたりして、挿入歌の宣伝の回だったと思わせられる。
 もしこれが翌年以降も続いていたら、かなり嫌味に感じられただろうと思う。
 1回限りで本当に良かった。
 
 恒例となり始めていたサブタイトルの拘りは、今回はしていない。
 また、前年の『ギンガマン』同様、恒例の主役キャラによるアイキャッチもやっていない。
 セクシー系女優の顔出しレギュラー出演は、今回はディーナス役として平沢草氏が出演しているが、この作品のすぐ後に引退してしまったらしい。

 『ゴーゴーファイブ』という番組の最大の特徴は、シリーズでも屈指の結束力の高さだ。
 ただ単にチームワークがいいというのではなく、しょっちゅう本気でケンカし、互いの性格的な欠点を知った上で、それでも心から信頼しあっている戦隊は、なかなかない。
 本音でぶつかり合いながらも、繋がっている。
 これは、兄弟戦隊の特徴とも言えるが、それだけではない。
 スーパー戦隊シリーズには、他にも『ファイブマン』や『マジレンジャー』といった兄弟戦隊があるが、『ゴーゴーファイブ』はそのどちらとも性格を異にしてる。
 『ファイブマン』の“完璧な長男に率いられた弟達”とも、『マジレンジャー』という“突っ走る弟を支える兄達”とも違う。
 これは、モンド博士という“父”の存在によるところが大きい。
 兄弟戦隊の中で、親がレギュラーとして登場しているのは、『ゴーゴーファイブ』だけだ。
 モンドは、5人の精神的なよりどころであり、気兼ねなく文句を言える開発担当者であり、的確な判断力を持つ頼りになる司令官でもある。
 現場指揮官であるマトイも相当優秀な部類だが、大局的にものを見つつ事態を打開する方法を模索する後方支援が存在するということが、ゴーゴーファイブの戦いを支えていた。
 気合いで戦う現場指揮官と、理論的にそれを支える司令官というバランスのいい組み合わせながら、それだけでもない。
 5話『救急戦隊活動停止』や13話『弟たちの反乱』、20話『不滅の救急魂』を見ると分かりやすい。
 マトイは、確かに二言目には「気合いだ!」と叫ぶ脳筋野郎だが、決して単なる体力バカではない。
 伊達にレスキュー隊の隊長をやっていたわけではなく、目に見える(現場で手に入る)情報から周囲の状況を冷静に分析し、最良と思った方法を即座に実践する。
 5話ではビル風を計算して救助より消火を優先し、13話では修理の終わったゴーゴーブレスを取りに行ってナガレ達のいる火災現場まで戻る時間を計算し、20話では敵のバリアが至近距離では使えないことを見抜いている。
 計算だけでなく、20話では死の恐怖に震えながらも無辜の民を守るために戦いに赴き、咄嗟に閃いた戦法“零距離射撃”による爆風をまともに食らうというリスクを、13話では現場までの炎がひどくなっている中を走るというリスクを、その身に引き受けている。
 それが「気合いがあれば耐えられる」という信念だ。
 また、モンドも決して後方支援専門ではなく、5話や20話では、戦いで手一杯の5人に代わって救助活動を行い、25話『大魔女降臨の時』では、生死の境を彷徨うほどの重傷を負いながらグランディーヌ降臨の魔法陣を破壊している。
 だからこそ、なんだかんだ言いながらもモンドやマトイは全幅の信頼を置かれているのだ。
 劇中マトイ達が頻繁に口にする「信じ合うのが家族です」という母の言葉は、正にこの作品のバックボーンになっている。
 ゴーゴーファイブは兄弟戦隊なのではない。
 家族戦隊なのだ。
 それも、最終回だけ家族戦隊だった『マジレンジャー』と違い、最初から最後まで家族戦隊だ。
 
 そして、対する災魔側も家族であるというのがこの作品の大きな特徴だ。
 だが、災魔の方は、当初から兄弟仲があまり良くない。
 冥王たる自分の地位を守るために次期冥王となるべき弟ドロップを殺そうとする兄ジルフィーザ、我が子を“自分が肉体を得て降臨するための尖兵”としか思っていない母グランディーヌ。
 母に対する子供達の忠誠も、所詮は自分が最も優れた子であるという自尊心のために過ぎない。
 信じ合い支え合う家族と対をなす利己的な家族を敵とすることで、本作は年間通して一貫した物語となっている。
 
 ただし、最終回では、それを強調しすぎて少々残念なことになってしまった。
 最終回『燃える救急魂』では、モンドはベイエリア55と共に海に沈み、レッドはマックスビクトリーロボで、ブルーがグランドライナーで、グリーンがビクトリーマーズで破壊神と戦い、イエローは崩れた壁の外側で、ピンクはその内側で子供達を救出すべく奮闘している。
 そして、イエローとピンクは、子供達を救うために駆け付けたその親達と共に救出作業を成功させ、京子からBバージョンのファイルと母の連絡先を渡され、最終決戦に駆け付けるわけだ。
 そして、ゴーゴーファイブの面々は、離れていても家族の心は1つという信念の下にそれぞれがその持ち場で最大限の努力をしていたからこそ勝利できた。
 一方でグランディーヌは、復活させたジルフィーザやサラマンデスの敗北を心があるのが原因と考え、単なる操り人形として破壊神に再生した。
 これもまた好対照だ。
 だが、少しやり過ぎた。
 ここで問題なのは、この土壇場で降って湧いた“ビルに取り残された子供とそれを助けにきた親”だ。
 取り残された子供の中に親の愛を信じていない子供を配し、手作業での救出を手伝う親を見せることで“信じ合う家族”といったものを出したかったというのと、ゴーゴーファイブを1人ずつに分けて行動させることで“離れていても心は1つ”という状況を作りたいという演出上の要請によるものだろうが、特に前者は、いくらなんでもありえないだろう。
 引火や爆発はするくせに呼吸を妨げない都合のいい特殊ガスを充満させてレスキューツールを使えない状況にしているのも相当ご都合主義的だが、その状況下で、自分の子供がどこにどういう状態で取り残されているかなんて、一般人が知りうる情報ではないし、わざわざ危険な場所で作業させて被害者を増やすようなことが許されるとも思えない。
 まして、素人があんなに整然と作業を行えるものだろうか。
 レスキューのプロを描いてきた作品で、最後の最後に素人がプロ並の救助作業をするというのは、やはり苦しい。
 
 また、最終回に限らず、巽一家と災魔一族を対照的にしすぎたために問題が出てしまったという部分も否めない。
 まず、ジルフィーザの性格が一定していないというのが挙げられる。
 ジルフィーザは、当初は尊大な兄であり、死の直前には長男としての体面から戦果を挙げることに固執し、また、将来自分の地位を脅かすことが約束されているドロップを亡き者にしようとする情けない小人物でもあった。
 しかも、自分の配下である魔闘士が言うことを聞かないとみるや自分で殺して巨大化させるといった恐ろしく短慮な男でもある。
 ところが、終盤に復活してみると、弟・妹想いの優しい兄になってしまった。
 自分が殺そうとし、実際に自分の後を襲った形になるドロップ(サラマンデス)を可愛がろうとし、不出来な弟コボルダの死を悼み、自分を復活させるために命を捧げたディーナスの死を悲しむといった“なんか、よくできた兄ちゃんみたい”な状態になっている。
 ジルフィーザなら、どちらかというと“俺が俺が”系であり、「せっかく復活したのだから、いっちょいいところ見せて母上様のお気に入りに返り咲こう…」といった思考パターンのはずなのだが。
 この辺は、グランディーヌの冷酷さを際立たせるために、敢えてジルフィーザをいい奴にしてしまったということのように感じる。
 「感情など不要」というグランディーヌと、「信じ合うのが家族です」のゴーゴーファイブを対比するには、結局ゴーゴーファイブ寄りのキャラが敵方に必要になってしまったということだろうか。
 こういった部分以外にも、その結束の悪さ故に敵側のキャラが弱くなってしまったという点も否めない。
 兄弟仲の悪さから、各キャラの絡みがほとんど罵り合いと「母上様、母上様」のワンパターンになってしまい、キャラクターのイメージがふくらまなかったのだ。
 サラマンデスは、放送当時、結構人気があったが、それは主に声を演じた緑川氏の人気であって、サラマンデスのキャラクターに魅力があったからというわけではないように見受けられた。
 ディーナスだけは、かなりキャラが立っているのだが、それは相手によって対応が大きく違うことと、何より顔出し幹部であることが大きい。
 そう、ジルフィーザ達は着ぐるみ幹部だったためにキャラが弱い部分もあるのだ。
 彼らの着ぐるみは、口の部分が開閉するようになっているのだが、そのギミックを仕込むために口の部分の奥に機械が入ることになってしまった。
 そのため、スーツアクターの頭は着ぐるみの頭部の中には収まらず、首から下に入ることになってしまい、異様に座高が高い上に、首から上が固定された着ぐるみになってしまった。
 顔の向きが固定されるということは、それだけ表情付けが難しいということであり、表情を付けるために口を動くようにしたことが、却って無表情さに拍車を掛けるという本末転倒な事態となってしまった。

 かといって、キャラが立っているゴーゴーファイブ側はいいのかというと、そうでもない。
 一部ではマトイは相当嫌われているらしい。
 あの独裁的な長男っぷりが鼻につくという人も多いのだとか。
 確かに、鷹羽はマトイが好きだが、ああいうのが実際に自分の兄だったら嫌だろう。
 あのワンマンぶりに付き合わされると、自分の時間というものは持てなくなるだろうし、唯我独尊ぶりも相当なものだ。
 ただ、マトイが高校生にして一家のまとめ役(最年長)になってしまったという背景も考え併せると、仕方ない面もあると思う。
 律子がいなくなった時点で、マトイは17才、最年少のマツリは13才だ。
 中高生をまとめていくには強烈なリーダーシップが必要だったろうし、長男としての重圧は相当なものだったはずだ。
 元々リーダーシップは強い方だったようだから、それが(多少歪んだ形で)強化されてしまったのだろう。
 最終回での「この子達を育てたのはこいつだ。情けない親父に代わってな」というモンドの言葉と母のねぎらいに泣き出したマトイの姿は、それを裏付けるものだったと言えるだろう。
 
 また、マトイのこの強烈すぎるキャラクターの前で、弟妹達が割を食ってしまったことは否定できない。
 弟妹4人も、主役回はもとよりメインでない時でもかなり個性を発揮していて、キャラクターは十分立っていると思う。
 ところが、世間的には、“影の薄い弟達”という印象になってしまっているらしい。
 その理由を考えてみると、つまるところマトイの個性が強すぎるということのようだ。
 意志が強く強烈なリーダーシップを持つ頼れる兄という長所が、そのまま我が強く長男の権威を振りかざすワンマンで自分勝手な兄という短所になっているマトイのキャラは、なまじ現場での能力が高い分、常に前面で発揮されまくる。
 その上、後方支援であるモンドのキャラも異様に濃い。
 他の4人は、そんな2人の強烈な個性に押し潰されかねない状態に置かれている。
 それでも、武器を開発するナガレ、肉体的には強いのに精神面が弱いダイモン、紅一点のマツリは、ウリがある分まだいい。
 一番の常識人であるショウは、パイロットである以外に特殊技能もなく、最大の特徴が常識的であることなので、埋没してしまったようだ。
 ショウの主役話は、28話『奪われたボーイ!』にしても38話『無限連鎖と孫と柿』にしても、絡むキャラと衝突しながら、相手の気持ちを大事にするという展開になる。
 いい人なのだが、その分ストーリーも変化が少ないのだ。
 46話『火を吹く消防ロボ』でのビッグドーザーを破壊するしないというナガレとのやりとりでも、ナガレと意見が衝突したからこそ映えたわけで、ショウ1人で物語を牽引できるほどの暴走はできなかった。
 また、2人の衝突の結果を尊重しようとするマトイの描写が入ることで、マトイの引き立て役のようにもなってしまった。
 そういう意味では、濃くて非常識な2人の間で埋もれてしまったことは間違いない。
 
 とはいえ、決して彼らのキャラクターが立っていなかったというわけではない。
 真昼の太陽の光の中では白く見える程度でしかない月も、夜空では一等星より遙かに明るく輝いている。
 ナガレ達は、個性が弱いのではなく、突出した個性を持っていないだけで、キャラは立っていたのだ。
 決して“キャラが立つ=目立つ、目立たない=キャラが立っていない”ではないのだが、キャラが立っていてしかも目立ちまくるマトイの前では、勘違いしても仕方ないのかもしれない。

 そろそろまとめに入ろう。
 『ゴーゴーファイブ』は、前年の『ギンガマン』の流れを受け継ぎ、正当な正義の味方となった。
 厳密には、「正義」を守るのではなく「人の命」を守る戦隊であって、純粋な正義の味方かというと、若干違和感があるかもしれない。
 これは、単なる正義の味方を描くにはパターンが出尽くしてしまった感のある当時の状況から、少し捻ってみた結果だろう。
 敵味方を好対照にするため、ゴーゴーファイブ側は父を中心とする団結力のある家族、敵組織は母を頂点とするまとまりの悪い家族としている。
 これは、『ゴーグルV』の未来科学と暗黒科学、『ライブマン』の正義の青春と野望の青春、『カーレンジャー』の戦う交通安全と宇宙暴走族といった対照的な敵の系譜に属する。
 この基本路線は、途中で変更されることなく最後まで貫かれた。
 途中での路線変更というのは、多くのトクサツ番組に見られる。
 良く言えば視聴者のニーズに合わせて軌道修正するということだが、悪く言えば当初の見通しが甘かったせいで軌道修正せざるを得ないということだ。
 『ウルトラマンA』での南夕子の退場が分かりやすいだろう。
 スーパー戦隊でも、『フラッシュマン』で肉親探しがなりを潜めたり、『ダイレンジャー』で拳法対決がなくなったりと、細かい軌道修正は度々起きている。
 だが、『ゴーゴーファイブ』では、災害を引き起こす災魔と人を守るゴーゴーファイブという形式は最後まで変わらなかった。
 基本路線の変更は、新戦士の参入によって引き起こされる場合もある。
 『ライブマン』では、正義側にブラック、グリーンという新戦士が加わり、悪側からオブラーが消えてアシュラ、ガルドス、ブッチーが加わったため、当初の3対3のライバル関係が破綻し、それに伴って正義の青春と野望の青春という対照も失われてしまった。
 その点、本作では、既に恒例だった6人目の等身大戦士を登場させず、最後まで5人で通した。
 どういう位置付けであれ、『ジュウレンジャー』以降で新たな等身大戦士が登場しなかったのが本作のみであるという事実を考えれば、それがいかに英断であるかが分かろうというものだ。
 6人目の戦士というのは、1つには、5人のピンチに駆け付けて突破口を開いたり、メインキャラと掛け合いして話を転がしたり、戦闘のコンビネーションに変化を付けたりして演出の幅を広げる存在だ。
 もっと重要なことに、マーチャン的にも手持ち武器のオモチャや変身アイテムを売るためのファクターだ。
 その恩恵を廃してまで兄弟5人の戦士に拘ったことには、素直に敬意を表するべきだろう。
 新戦士が参入していたら、後の『ガオレンジャー』のガオイエローのように、途中でキャラが変わっていたかもしれない。
 
 全く矛盾がないわけではないにせよ、新兵器の開発には伏線を張るなど、全般的に筋の通った展開をしていることも好印象だ。
 先にも書いたが、超巨大ロボであるグランドライナーが通常の巨大サイマ獣には歯が立たないという設定を与えたことは、作劇上非常に巧い手だった。
 暗黒災魔空間によってマックスビクトリーロボを無力化し、ビクトリーマーズに必然性を与えたことも巧かった。
 このお陰で、その後マックスビクトリーロボが登場しなくなっても疑問を抱く必要がない。
 
 そして、そういった好条件もさることながら、5人の戦士達の戦う理由が一貫していたことが本作の屋台骨となっている。
 何よりもまず“力無き人々”を救うことに全てを賭けた5人の姿は、紛うかたなき正義の味方だった。
 3魔闘士に完膚無きまでに敗れ、勝算もないまま震えながら、それでも人々を救うために戦いに赴く彼らの姿は、それこそ純粋な正義感に彩られている。
 純粋な正義感と使命感から、何の見返りも求めずに全てを賭けて戦った戦士達。
 直球ではあるがど真ん中ではない、正統派でありながら小技の効いた秀作だった。

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