鳥人戦隊ジェットマン

平成3年2月15日〜4年2月14日 全51話

主題歌

 ジェットマンのOPは、映像的にはともかく、歌詞をよく考えると本編と全く関係ない、というより本編のイメージとギャップの激しい歌だ。
 ただ、影山ヒロノブの歌声と曲調で、非常に印象の強い歌になっており、カラオケで歌うと盛り上がる。

 EDの方も、ヒーロー物のED曲としてはかなり異色だが、鷹羽的には香の荷物でプラモを潰されて慌てる竜が気に入っている。
 最終回で流れたロングバージョンは、バックで流れている回想シーンと相まって名曲の名を不動のものとした。
 
 挿入歌が凝っているのもこの番組の特徴だ。
 『時を駆けて! ジェットマン』は、新番組予告の際インストで流れた曲だが、本来は主題歌になるはずだったらしい。
 諸般の事情で主題歌にはならなかったものの、人気は高い。

 ちなみに、『陽気なアコちゃん』は、10話『カップめん』で、カップラーメンのCMソングとして使われた曲で、ブラックコンドル:結城凱役の若松俊秀が作曲し、ホワイトスワン:鹿鳴館香役の岸田里佳とブルースワロー:早坂アコ役の内田さゆりが歌っているという無意味に豪華な曲だ。

 また、『悲しきグリナム兵』は、28話『元祖次元獣』で流れた挿入歌で、実は『ターボレンジャー』『ファイブマン』と続いた戦闘員の歌なのだが、歌っているのは『ジェットマン』の劇伴曲の作曲担当の外山和彦だったりする。
 また、この回に登場した次元獣ドライヤージゲンの声も外山氏が演じている。

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基本ストーリー

 199X年、地球防衛軍スカイフォースの隊員である天童竜藍リエ(あおい・りえ)は、その能力を見込まれてジェットマンメンバーに選抜され、ジェットマンを生み出す超エネルギー:バードニックウェーブを浴びるため、宇宙ステーション:アースシップに赴いた。
 まず竜がバードニックウェーブを浴びたが、そのとき突然、次元戦団バイラムの襲撃が始まる。
 竜は、隔壁に開いた穴から吸い出されそうになるリエの手を必死に掴むが遂に力尽き、リエは宇宙空間へと消えていった。

 鳥人戦隊長官:小田切綾に連れられてアースシップを脱出した竜は、バイラムの襲撃で地球に降り注いだ残り4つのバードニックウェーブを浴びた人間を探し始めた。
 結城凱を説得し、ようやく5人揃ったジェットマンの前にバイラムの幹部達が現れ、自分達を楽しませるためにせいぜい抵抗しろと宣言した。

 こうしてジェットマンとバイラムの戦いが始まったのだ。
 そして、香は竜に、凱は香に好意を持つようになり…。

▼ 「真実の物語」は…

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メンバー

レッドホーク:天童 竜(てんどう・りゅう)

 モチーフは鷹で、横頭の羽模様の黒ラインはなし。
 メンバー唯一の正規メンバーであり、世界の平和を守るためにジェットマンを率いていこうと頑張っている。
 左手のブレス(コレスポンダー)の裏側には、リエの写真が貼られている。
 バイラムの襲撃の際、リエの手を掴み続けられなかったことを悔やんでおり、裏次元ベルセルクに帰るルーとデュランの2人に「決してこの手を離さないように」と言っていた。
 当初からマリアがリエとそっくりなことには気付いていたが、その性格的な違いから、“リエに似ているくせに悪魔のような女”と思っており、マリアがリエだと知ったときにはショックのあまり戦意を喪失してしまった。
 何とか立ち直ったが、その後、戦う目的が“リエを元に戻す”にシフトしていたような気もする。
 深層心理に隠された性格は怠け者。
 下戸であり、みんながシャンパンで乾杯しているときも1人牛乳を飲み、バーでホットミルク砂糖ヌキを頼む男。
 結局リエの最期を看取ることすらできなかったことが、ラディゲへの怒りを燃え上がらせることとなった。

ホワイトスワン:鹿鳴館 香(ろくめいかん・かおり)

 モチーフは白鳥で、横頭の羽模様の黒ラインは3本。
 世界を股に掛ける鹿鳴館財閥のお嬢様で、退屈な日常から自分を解放するためジェットマンとなった。
 ひたむきに戦う竜の姿に憧れ、やがて竜に告白するもあっさりフラれてしまう。
 一方で凱から積極的にアプローチされており、3魔人との戦いで自分を救うために命を投げ出そうとした凱の姿にほだされ、凱と付き合うようになった。
 その後、色々あって凱とは別れることになる。
 隠された性格は金持ち根性丸出しの嫌味女。

イエローオウル:大石雷太

 モチーフはフクロウで、横頭の羽模様の黒ラインは2本。
 冴えない農業青年であり、戦うことを拒否していたが、香の説得とバイラムに畑を荒らされたこととでジェットマンになった。
 得意技は文字通り岩を投げつける岩石落とし。
 逆上がりも満足にできないというスーパー戦隊史上最高の運動音痴だったが、その後の努力でかなりの運動能力を発揮するようになる。
 女の子に優しくされた経験がなかったせいか香を好きになったが、香が竜に惹かれていることを知って諦めた。
 原始時代に放り出された際、香そっくりのリーカといい雰囲気になりながら、仲間のために現代に戻る道を選んだ雷太は、実はジェットマンの中で一番純粋に世界のために戦っている人間だったりする。
 隠された性格はキザ。
 戦いの中で幼なじみのさつきと再会し、その後婚約した。

ブルースワロー:早坂アコ

 モチーフはツバメで、横頭の羽模様の黒ラインは4本。
 ジェットマンになるに当たって時給1,500円を要求したが、結局無料奉仕することに。
 恋愛ドロドロのジェットマンメンバーにあって、1人だけ色恋沙汰に巻き込まれなかったため、一歩引いた観点から4人を見ていた。
 隠された性格は乙女チック。
 戦いの後、アイドル歌手としてデビュー。

ブラックコンドル:結城 凱(ゆうき・がい)

 モチーフはコンドルで、横頭の羽模様の黒ラインは1本。
 束縛されることを嫌い、なかなかジェットマンになろうとしなかったが、自分を助けるために身体を張り、「俺達は仲間だ。仲間を助けるのは当然のことだ」と言い切った竜のまっすぐさを認めて仲間になった。
 その後、香のことを巡って竜と度々トラブルを起こすが、こと戦闘となるとすぐに協力的になる。
 これは竜のことを認め始めていることの表れだ。
 マリアの正体を知ってふぬけになった竜をけなした雷太に「竜の悪口を言うんじゃねぇ。いいか、世界中で奴を、竜をけなしていいのは俺だけだ!」と口走って、初めて自分が竜を認めていたことを自覚し、ふぬけた竜に「勝手にしろ、だが俺達は待ってる」と言って戦いに赴いた。
 それ以降竜との友情を深め、最終回では、「お前の命、俺が預かる!」と、竜の乗ったジェットガルーダごとラゲムを貫いた。

 念願叶って香と付き合い始めたものの、住む世界の違いを徐々に認識してしまい、香の両親と会ったのが決定的となって破局してしまった。
 ただ、それ以後仲が悪くなったというわけではなく、自然消滅といった感じ。
 隠された性格は真面目な寂しがり屋であり、なんだかんだ言って凱がジェットマンであり続けたのは、この性格の故ではないかと思われる。
 この手の番組には非常に珍しく、酒を飲み、タバコを吸い、時にノーヘルでバイクに乗り、カジノでイカサマをするキャラクターだった。
 特に凄いのは、婦警に声をかけて貰うためにミニパトの目の前で信号無視をしたことだろう。
 一匹狼を気取っているが、基本的に仲間想いなところもあり、9話『泥んこの恋』では、雷太がさつきとデートで不在中にバイラムに襲われた際、すかさず雷太を呼ぼうとした竜を制し、「雷太を呼ぼうってんならやめとけ。あいつの場合、デートなんて一生に3回くらいしかなさそうだしな」と言っている。
 口は悪いが、あくまで雷太のことを考えてのことだった。
 マッカラン(ウイスキーの銘柄)のストレートを好んで飲む。

長官:小田切 綾(おだぎり・あや)

 スカイフォースの幹部であり、Jプロジェクトの中心としてジェットマンの各種装備開発を進めていた。
 アースシップ壊滅後、スカイキャンプを根城にジェットマン残り4人を探し出して無理矢理民間人戦隊を完成させた女傑。
 「完璧な人生を送ってきた」とのことで、実際、あの若さであれだけ大規模な特殊部隊を設立させたのだから、とんでもないエリートなのだろう。
 43話『長官の体に潜入せよ』では、1人でジェットガルーダを操縦して巨大バイオ次元獣ヒルドリルを倒すという快挙を成し遂げた。
 巨大化した敵を1人で倒した長官キャラは、2002年春現在では彼女ただ1人である。
 最終回、香の持っていたブーケをちゃっかりゲットしていたようだ。
 なお、OPテロップでは、1話のみ「小田切綾」で、2話以降は「小田切長官」となっている。

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変身システム

 左手のコレスポンダー、右手のエンブレムフォーメーションからなるクロスチェンジャーブレスによって変身するが、変身に必要なのはエンブレムフォーメーションだけ。
 コレスポンダーは、通信機としての機能が主体だが、パーツの一部がバードロックというキーになっており、イカロスハーケンジェットイカロスへの合体の際のセーフティロック解除に使用する。

 「クロスチェンジャー!」と叫んでエンブレムフォーメーションのスイッチを押す(叫ばずにスイッチを押すだけのこともある)とブレスから頭と羽のパーツが飛び出して鳥型のエンブレムになり、、バードニックスーツ(ジェットマンスーツとも呼ばれる)が装着される。
 5人のバードニックエネルギーがなくなっている状態では変身不能となり、エンブレムフォーメーションはスイッチを押しても開かない。

 ジェットマンは、それぞれ波長の微妙に違うバードニックウェーブを持っており、その波長の違いがカラーの違いに反映されている。
 5つのバードニックウェーブが1ヶ所に集まると、共鳴効果でパワーが数倍化するため、ジェットマンの行動は5人一緒が基本となる。
 「5人揃うと最大の力を発揮する」という戦隊の基本を体現した設定と言えよう。

 バードニックスーツの背面から上腕にかけては、ジェットウイングという翼が隠されており、ジャンプや滑空の際には、ジェットウイングを広げて使用する。
 襟の部分の飾りもそうだが、こういったスーツから半独立した飾りというのは、戦隊シリーズではゴーグルX以前のマフラーしかなく、変わったデザインだった。

 クロスチェンジャーのオモチャでは、TV同様エンブレムフォーメーションのスイッチを押すとエンブレムが展開し、コレスポンダーのスイッチを押すとシグナル音が流れ、バードロックが外せる。
 このバードロックの部分のパネルを空けると通信機用の画面になる設定だが、バードロックが外れる都合上バネを仕込めなかったらしく、蓋を手で開けるという様式になっている。
 これはTV本編でもそうしており、ギミック上の限界ながら少々安っぽい印象を受けた。
 また、取り外したバードロックは、当時発売されていたグレートイカロスの操縦席オモチャ(ジェットシミュレーター)にセットすることができた。
 というより、そのためのギミックだったのだろうが、本編でも合体シーンでしか使っていないため、ジェットシミュレーターはあまり売れなかったようだ。

 なお、ブレスのオモチャには、エンブレムフォーメーション用に黄色のシールがついているが、本物は赤一色なので、シールを貼らない方が本物に見えるという困った構成だった。

 あんなシール、いらなかったのに。

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名乗り

 「レッドホーク!」

 「ブラックコンドル!」

 「イエローオウル!」

 「ホワイトスワン!」

 「ブルースワロー!」

 「鳥人戦隊!」

 「ジェットマン!」

というのが基本パターン。
 「鳥人戦隊!」と音頭取りをするのは、その回の主役である。

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武器

 ジェットマンは個別武器を持たず、全て共通の武装となっている。

 右腰のバードブラスターと左腰のブリンガーソードが基本装備で、そこに右手用パンチ力強化アタッチメント:ウイングガントレット、フェザービームガン:ビークスマッシャーが加わる。
 バードブラスターとブリンガーソードを「セットアップ!」の掛け声で合体させるとジェットハンドカノンになり、たった1発だけ強力な破壊ビームを撃つことができる。
 これを5人分集中させることで、初期必殺技バードボンバーになる。

 ウイングガントレットは、重力制御によってパンチ力を上げるための強化パーツで、右手に装着して使う。
 また、ウイングビームという重力波光線を発射することもできる。

 バードボンバーを上回る必殺武器として開発されたのが中〜後期必殺技:ファイヤーバズーカだ。
 ジェットストライカーを変形させたバズーカ砲に5人のバードニックエネルギーを送り込んで弾丸として発射する。
 先のとおり、バードニックウェーブは1人でも欠けると威力ががた落ちになるため、5人揃わないとまともな威力を発揮できず、何度か敗北する要因となった。
 この威力の描写については、通常は鳥の形のエネルギーを発射するのを、メンバーが足りないと鳥型にならないというやり方で視覚的に説得力を持たせていたことが印象深い。
 50話『それぞれの死闘』で竜に改造され、オートコントロールで撃てるようになったが、ラディゲの光線一発で吹き飛んでしまった。

 ビークスマッシャーは、33話『ゴキブリだ』で完成した新兵器で

  1. ロックオンした相手をどこまでも曲がりながら追い続けるビーム
  2. 狙った敵に向かって乱反射しながら進むビーム

の2種類の分子破壊光線(フェザービーム)を発射できる。
 特に乱反射しながら進む(直進しない)ビームは、ジェットマンの攻撃を主に手の平で跳ね返して防御するバイラム幹部には有効な攻撃だった。
 この特徴を最も有効活用したのが38話『いきなりハンマー!』で、ハンマーカメレオンを押さえつけたホークが「俺に構わず撃て!」と言うと、それを受けたコンドルが「ようし、分かった!」とすかさずビークスマッシャーを発射し、ビームは射線上にいるホークを回り込んでハンマーカメレオンを背後から襲うのだ。
 また、「ビルドアップ!」の掛け声と共にバードブラスターと合体させると、スマッシュボンバーという形態になる。
 これは、ジェットハンドカノン以上の破壊力を持つビームを連続発射できる物で、5人のビームを同時発射すると、後期必殺技のスマッシュボンバーになる。

 実は、ビークスマッシャーは設計上は完成しており、アースシップで現物を製造中だったが、バイラムの攻撃により開発者相沢博士と共に宇宙の塵になってしまい、設計図を博士の娘の記憶から復元するのに半年以上掛かってしまったのだ。
 つまり、ファイヤーバズーカは、スマッシュボンバーを失ったジェットマンがその破壊力の穴埋めとして急遽生みだした新兵器なのである。

 『ジェットマン』は、前作『ファイブマン』の失敗から、個人武器を廃し、全てを共通武器にした。
 また、それまで2作続いた“銃から分離する剣”をやめて単独の銃と剣にして左右のホルスターに別々に収め、“銃と剣を合体させることによってより強力な銃になる”という逆転の発想を生みだした。
 鳥型のバードブラスターの口が開き、中から大口径のバレルが出てくるギミックは、オモチャでも再現されており、結構遊べる。
 ただ、ブラスターの開閉スイッチが引き金の左上方にあるため、左手でブラスターを持って右手でソードを合体させることになり、ブラスターを右手で持って左手でソードを合体させるというTVでのセットアップポーズと逆になってしまったのは欠点だと思う。
 だが、構造上スイッチを右側に持っていくことも可能だし、TVでオモチャと同じ持ち方をさせることもできるわけだから、ギミック的な失敗というよりも演出的な失敗もしくは打ち合わせ不足ということになるだろうか。
 また、ビークスマッシャーもバードブラスターと合体できる。
 これは、後で登場した武器が前半の武器と合体して超兵器となるという新機軸で、これにより、前半の武器を買ってしまった子供は買い足して遊べるし、スマッシュボンバーが欲しい子供は一気に両方買ってくれるという美味しいやり方だった。

 ファイヤーバズーカは、例によって下から“誰が持つんだこんな大きなグリップ”というパーツが生えており、これがオモチャで子供が握るためのグリップとなる。
 『ファイブマン』のアースカノンと違い、車(ジェットストライカー)のオモチャからの変形であり、変形前・変形後とも遊べることでプレイバリューを増やしていた。

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移動装備

 レッド用にバギー型のジェットストライカー、ブラック、ブルー用にオフロードバイク:ジェットスピーダー、イエロー、ホワイト用にオフロードカー:ジェットバンサーがあり、それぞれ変身前も使用可能。
 だが、バンサーやスピーダーは移動用によく使われたが、ジェットストライカーは主にファイヤーバズーカ使用時に呼ばれることが多かった。

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ロボット

 『ジェットマン』では、初めて3体のロボットが登場するが、元々ジェットマン用に開発されていたのはジェットイカロスのみで、後は必要によって付け加えられた装備とも言える。

ジェットイカロス

 ジェットホーク(レッド搭乗:頭部・胴体部)、ジェットコンドル(ブラック搭乗:右脚)、ジェットオウル(イエロー搭乗:右腕)、ジェットスワン(ホワイト搭乗:左脚)、ジェットスワロー(ブルー搭乗:左手・盾)の5機のジェットマシンが、「合体! スクラムウイング!」で合体して完成する巨大ロボ。
 合体の際、5人それぞれがコンソールにバードキーをセットしてから合体するが、スカイキャンプからの無線誘導で合体する場合にはバードキーは不要。
 イカロスアックス(手斧)、イカロスクラッシャー(分銅)、イカロスマグナ(ハンマー)、ジェットランサー(槍)、ジェットダガー(ナイフ)、ショットパンチャー(右拳を飛ばす)などの豊富な武器を持つ。
 必殺武器はバードニックセイバーで、必殺技には特に名称はなく、「バードニックセイバー!」の掛け声と共に刀身にエネルギーを集中させて斬る。

イカロスハーケン

 ジェットマシンが合体する重爆撃戦闘機形態で、「合体! ジェットスクラム!」の掛け声で合体する。
 ジェットホークを機首にし、あとの4機が後部に(上面から見て)左側からスワロー、スワン、コンドル、オウルの順に並列で合体する。
 必殺技は、エネルギーを放出し火の鳥になって体当たりするジェットフェニックス

ジェットガルーダ

 ディメンシアの鳥人戦隊が乗ってきた巨大戦闘機バードガルーダの格闘戦形態。
 レイ達の死により、ジェットマンに受け継がれた。
 「変形! ジェットガルーダ!」の掛け声で変形する。
 ジャンプし、脚部のブースターで勢いを付けて蹴るブーストキッカー、胸からの熱光線ガルーダバーストなどの武器を持つ。
 必殺技は、両手の鉤爪にエネルギーを集中して切り裂くガルーダクロー。
 「変形! バードガルーダ!」の掛け声でバードガルーダに変形する。
 バードガルーダの武器は、翼で敵を切るウイングスラッシャー、エネルギーミサイル:ガルドバルカン、口から発射するガルドビーム、ダイヤブリザードなど。
 当然裏次元へも自由に行ける。
 普段はバードガルーダ形態でスカイキャンプの屋上に停泊しているが、整備時などはジェットガルーダ形態でスカイキャンプ内に収納することもできる。

グレートイカロス

 ジェットイカロス、ジェットガルーダそれぞれ単体では勝てない魔獣セミマルに勝つために、両者に合体システムを搭載して完成した超巨大ロボ。
 「合体! グレートスクラム!」の掛け声で合体する。
 イカロス・ガルーダともに一旦手足を外し、ガルーダのボディを展開してイカロスのボディをはさみ込み、双方の腕を縮め、イカロスを上腕、ガルーダを下腕にしてグレートイカロスの腕に、同様にイカロスの脚を縮めて大腿部にし、ガルーダの脚を縮めて下腿部にする。
 合体前に拳を合わせるポーズがバロムクロスに似ていると、評判だった。
 必殺技は胸の鳥のマークから発射するバードメーザー

ハイパーハーケン

 イカロスハーケンとバードガルーダが「合体! ハーケンスクラム!」で合体した超大型戦闘機。
 武器はビーム砲:ハイパーバスター
 裏次元にも自由に行くことができ、場所さえ分かれば敵要塞バイロックにも行ける。
 必殺技は、やはり体当たり技でハイパー・G・アタック

テトラボーイ

 戦闘補助用にジェットマンが建造した3号ロボ。
 「テトラボーイ発進!」の掛け声でスカイキャンプから発進する。
 ニューロコンピュータ内蔵で、搭乗者を必要とせず、自らの判断でイカロス・ガルーダを援護する。
 カション、カションという軽いフットワークが身上で、素早い動きからのパンチ・キックで戦い、武装は持っていない。
 攻撃力は弱いが、隕石ベム、ベロニカ、ラゲム以外の敵にはほとんどダメージを食らったことがない鳥人戦隊最強のロボットだったりする。
 また、細かい作業も得意で、グレイにすら感じ取れないほど微妙に建物を傾けることができる。
 「テトラフォーメーション!」の掛け声で変形し、手足から4門の砲塔を出して巨大バズーカ砲テトラバスターになり、ジェットイカロスやジェットガルーダが抱えて撃つ。
 また、バードメーザーと共に敵に体当たりすることもでき、特に名称はないが、ベロニカを倒したこの技が鳥人戦隊最強の技である。
 ちなみに、テトラボーイは、鳥人戦隊の装備で唯一鳥型にならず、鳥の名前もついていない。

 『ジェットマン』では、前作『ファイブマン』に続いて、ジェットイカロスにロボット形態とは別形態の合体を持たせ、更にその形態イカロスハーケンにも必殺技を持たせることで、本編内で活躍できるようにした。
 合体シーンでは、脚部が合体すると脚を動かし、腕部が合体すると拳を開くシーンが入るなど、合体用のプロップから着ぐるみへの繋がりを意識したシーンを取り入れており、特に拳を開くシーンは、アニメロボットの合体シーンを意識していたという。
 また、久しぶりに剣・銃・盾以外の武器を持つロボットだったが、オモチャには残念ながらバードニックセイバーしか付属しなかった(シールドはジェットスワローのパーツ)。

 また、2台目ロボであるジェットガルーダは、鉤爪状の手と人間型でない顔を持つロボットであり、“必ずしも人間型でなくてもロボとして成立する”という条件を確立したことは、次作『ジュウレンジャー』の守護獣ティラノザウルスやその後の隠大将軍などに受け継がれることになる大きな転機だった。

 そして、ジェットイカロスの各パーツをジェットガルーダのパーツで延ばす形にして完成するグレートイカロスは、デザインとして超巨大ロボの頂点を極めたと言っていいだろう。
 ロボ2台が合体する超巨大ロボで、グレートイカロス以上にまとまったデザインのものは戦隊シリーズにはない。

 また、ハイパーハーケンも、出番が2回と少ないながら、魔神ラモンを倒したりバイロックに突入したりと、印象的な活躍をしていた。
 ただ、ハイパーハーケンのオモチャは、合体を固定することができず、専用の台座に載せることでくっついているように見せるだけという欠点があった。

 テトラボーイは、合体しない変わりに武器に変形するロボットとして、ジェットイカロス、ジェットガルーダどちらとも連携できる支援兵器として登場した。
 また、イカロス・ガルーダとの対比のため、一回り小型として設定され、『フラッシュマン』のタイタンボーイのような軽くてチャチな感じのする動きでありながら、それを「スピード」として描写することで、“非力だが素早く動いて敵を翻弄する”撹乱戦力としての使い方に説得力を持たせた。
 上記のとおり“敵の攻撃を食らわない”ことが特徴のロボットなのだ。
 オモチャの方では、イカロス・ガルーダどちらの肩にも合体させられる接続パーツがつき、また、子供が銃として持てるようにグリップパーツも付属していた。
 このオモチャは製造数の関係か非常に手に入りにくかったらしい。

 なんと、2,000円でグレートイカロスが揃ってしまう…ばら売りならば。
 イカロスとガルーダのセットボックスも発売されており、こちらの方は値崩れしなかったそうだ。
 ただ、グレートイカロスのボックスは、鷹羽は見た記憶がないので、やはり値崩れを起こす暇もなく売り切れたということなのだろう。
 それだけ生産数が少なかったらしい。

 もちろんテトラボーイも値崩れは起こさなかったが、鷹羽はこっちは番組終了後に近隣市町村を駆けずり回ってゲットした。

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その他の人々

裏次元ディメンシアの鳥人戦隊:レイ、カンナ、ダン

 かつてバイラムに滅ぼされた裏次元ディメンシアの生き残り。
 バードガルーダに乗り、バイラムと戦うために地球にやってきた。
 戦闘スタイルに変身したのはダンだけだったが、恐らく3人とも変身できるものと思われる。
 ラディゲによって殺されてしまったが、彼らの残したジェットガルーダは、ジェットマンにとって大きな力となった。

 なお、レイを演じたのはブルーフラッシュ・ブンの石渡康浩氏、カンナはピンクマスク・モモコの前田賀奈子氏、ダンは次作『ジュウレンジャー』のトリケラレンジャー・ダンの藤原秀樹氏という豪華メンバー。

第2の鳥人戦隊:ネオジェットマン(J1〜J5)

 元々ジェットマンはスカイフォースから選び抜かれた隊員による精鋭部隊となるはずだったのに、よりにもよってろくでもない民間人ばかりが揃ってしまった。
 上層部はそれが気に入らず、取り敢えずジェットマンに戦いを任せつつ、もう1度ジェットマンを作り出す研究を命じた。
 とはいえ、バードニックウェーブを生み出すバードニウム鉱石はもはや残っていない。
 そこで新たに疑似バードニックウェーブを生み出す研究がなされ、バードニック反応炉が開発された。
 ネオジェットマンは、バードニック反応炉を体内に埋め込み、正規の訓練を受けたサイボーグ戦士による第2の鳥人戦隊として組織された。
 小田切長官に出世競争で敗れた一条が総司令として率い、隕石ベムの反バードニックエネルギーによるジェットマン変身不能の危機に、満を持してスカイキャンプに乗り込んできた。
 バードニック反応炉から発生するエネルギーは純粋なバードニックエネルギーではないため、反バードニックウェーブにも耐え、必殺武器フレアーバスターで一度は隕石ベムを撃退した実力を持つ。
 竜達を追い出し、巨大化した隕石ベムと戦うものの敗れ、トドメを刺されそうなところを竜達のガルーダに救われた。
 変身能力を失っても戦おうとする竜達の心に触れ、その変身能力を回復させるためにバードニック反応炉の全パワーを与えて戦闘能力を失った。

 なお、J1を演じるのは、次作『ジュウレンジャー』でティラノレンジャーを演じる望月祐多氏。
 2回限りのゲストの割には、新作の開閉型ヘルメットを使っており、その額の「J」マークも鳥をイメージした格好いいものだが、さすがに手甲パーツがファイブテクターの流用だったり、J3のネオカッターがサイカッターの流用だったりする。

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敵組織 次元戦団バイラム

首領:女帝ジューザ

 バイラムを支配する女帝。
 とはいえ、登場するのは17話『復活の女帝』18話『凱、死す!』の2回だけであり、実質はゲストの扱いだった。
 裏次元侵略戦争の際に行方不明になっていたが、魔獣セミマルの卵を宿して魔城バイロックに戻ってきた。
 ラディゲ同様魔獣ジューザに変身する。
 ラディゲの反逆に怒り、ラディゲの記憶を消し人間にして地上に落としたが、復活したラディゲがジェットマンに弱点を教え、ここぞとばかりにジェットマンに協力した4幹部の総攻撃とファイヤーバズーカの前に敗れた。
 その後、セミマルの卵はラディゲが育てることになる。

幹部:裏次元伯爵ラディゲ(凶獣ラディガン、ラゲム)

 バイラム幹部の1人。
 長剣ブラディゲートを持つ、バイラムで一番行動的な幹部。
 感情が高まると凶獣ラディガンに変身するが、その際ブラディゲートは左手と一体になる。
 魔神ロボベロニカのエネルギーを吸収した後は、巨大なラゲムにも変身できるようになったが、その際もブラディゲートは身体の一部になっていた。
 非常にプライドが高い反面、目的のためなら何でもするタイプで、ジューザを倒すためにジェットマンに協力し、トランザを倒すためにレッドホークと共闘した。
 宇宙空間に放り出された藍リエを洗脳・改造してマリアに仕立て上げた。
 マリアという“運命を自分に握られた存在”がそれと知らずに生きている様を見て楽しむのが目的だったらしい。

 ジューザに敗れて人間にされた際、病気の少女早紀と出会い、早紀と心の交流を持ち、超能力で早紀の病気を治したが、記憶を取り戻した途端、早紀を殺してしまった。

 なお、バイラムの主要なキャラであるラディゲが、35話『鳩がくれた戦う勇気』では、たかが鳩1羽に翻弄されて崖から落ちた挙げ句、頭の飾りがとれてプカプカ浮いているという醜態を曝していることはここだけの秘密だ。

幹部:グレイ

 ロボット幹部。
 誰に作られたのかは分からないが、かなり以前からバイラムの幹部だったようだ。
 もしかしたらジューザに作られたのかもしれない。
 寡黙で、葉巻とワインと音楽を愛する変わったロボットであり、マリアのピアノに憧れてマリアを愛するようになるが、機械の身の自分がマリアと愛を育めないことは承知しているため、常に一歩引いた行動を取る。
 両手の人差し指がライターになっている。
 武器は右肩のグレイギャノンと右手に内蔵された銃。
 何度かブラックコンドルと死闘を演じるうち、凱をライバル視するようになった。

 竜の前から息を引き取る寸前のマリアを連れ去ったのは、竜の前に死体を残すことで竜の記憶に留まることを拒んだマリアの意志に従った行為であり、グレイはそれだけマリアを見守っていたのだ。
 抱いた腕の中で、マリアが竜の名を呼びつつ死んでいくのをじっと見つめていたグレイの胸の内はいかなるものだったのか。

 着ぐるみ幹部だが、半球状に盛り上がった部分にスリット状の目があるというデザインのため、角度によって怒ったり悲しんだりと目の印象が変わり、非常に表情豊かだった。
 中身・声とも演じるのは日下秀昭氏。

幹部:トラン、帝王トランザ

 超能力を持った少年幹部。
 何歳かは分からないが、本当に子供であるらしい。
 右手に付いているメタルトランサーで超能力を制御する。
 “ジェットマンを倒した者がバイラムの頂点に立つ”という賭を提案した。
 敵味方双方から「子供、子供」とバカにされた怒りで急成長し、トランザになった。

 トランザは、竜以上の剣の腕と凱以上のたらしの腕、雷太以上の胃袋を併せ持ち、メタルトランサーのほかに、剣:ボルトランザを武器とする。
 トランザは、ほかの3幹部を力で下し、無理矢理帝王の座に就いた。
 その力は、正面から戦えば、ベロニカのエネルギーで大幅にパワーアップしたラディゲですら歯が立たないほど。

 演じるは広瀬匠氏で、非常に嫌味なキザ男を好演していた。

幹部:マリア(藍リエ)

 バイラムの幹部の1人だが、実は竜の恋人リエの変わり果てた姿。
 ラディゲによって洗脳・改造を受け、マリアとなった。
 武器は万能スティック:ネクロッド
 リエが得意だったベートーベンの『熱情』をよく弾いている。
 31話『戦隊解散!』で一旦記憶と姿が戻ったが、その後またマリアに戻った。
 基本的に地球侵略とジェットマン抹殺しか頭になく、次元虫を改造してバイオ次元虫を作り出した。
 竜の説得にリエの自我を取り戻したものの、自分の犯した罪の大きさを自覚して、竜の前から消える決心をした。
 その際、ラディゲに付けた傷が最後の勝利の鍵となる。

怪人:次元獣

 ○○ジゲンという名称で、物体に次元虫が取り憑いて怪物化した怪人。
 次元虫は、バイラムの主力兵器となる特殊な虫で、1話で親虫が産み落とした卵の数だけ存在し、それらが成長すれば、また親虫となるはずだった。
 取り憑いた物自体の大きさに合わせて怪物化するため、ハウスジゲンやファイタージゲンのように最初から巨大な者もいる。
 かなりの知能を持っている。
 バイオ次元獣の登場で出番を失ったドライヤージゲンは「元祖次元獣」を名乗ってジェットマンを苦しめたが、その穏和な性格からバイラムを裏切り、床屋に就職した。

バイオ次元獣

 マリアがジゲン虫にあらゆる動物の遺伝子を組み込みバイオ次元虫にしたことで、取り憑いた物体と動物の合成怪人になった。
 デストロン怪人タイプの怪人で、スナイパーキャット、ライトアルマジロのような物体(にまつわる言葉)と動物を合わせた名前になっている。
 バイオ次元虫になることで、次元虫自身が繁殖するための細胞核が動物の遺伝子と合成されてしまい、バイオ次元虫は繁殖能力を持たない欠陥動物になってしまった。
 マリアは現存する次元虫を全てバイオ次元虫に変えてしまったため、この時点で次元虫の絶滅が決定した。

魔獣セミマル

 裏次元に伝わる伝説の魔獣。
 ジューザは、どこかでセミマルの卵を見付け、自分の身体に埋め込んでいた。
 ジューザを倒した際、ラディゲが卵を奪い、バイロックで育てていた。
 ジェットイカロスを倒し、ジェットガルーダをも圧倒したが、グレートイカロスに敗れ去った。

魔神ロボ・ベロニカ

 トランザが研究の末作り上げた究極のロボット。
 トランザは、ラディゲ達3人もコクピットに招いて自分の勝利を見せつけようとした。
 体内に取り込んだ人間の生体エネルギーで動き、グレートイカロスを倒して雷太・香・アコを捕らえたが、ジェットマン打倒に燃えるラディゲが反逆したため、トランザは罰としてラディゲをもベロニカのエネルギー吸収装置にかけて殺そうとする。
 ところが、ラディゲは逆にベロニカのエネルギーを吸収し、捕らえられていた雷太らを助けてどこかへと消えた。
 そのため、ベロニカは出力低下を起こしてグレートイカロスとテトラボーイに敗れてしまったのだ。
 結局、ベロニカから吸収したエネルギーでラディゲはパワーアップしたわけで、トランザは自らの首を絞める結果となった。

戦闘員:グリナム兵

 グリナムの種から生まれる下等生物で、言葉は話せないが一応知能は持っているらしい。
 股間が弱点らしく、股間を握られると顔を点滅させて苦しむ。

 28話『元祖次元獣』では、ドライヤージゲンが人の良さから失敗する姿に、「もうやってられるか!」とばかりにドライヤージゲンの元を去って行くが、その姿は草野球チームで誰かのエラー連発で負けたときのようで非常にラブリーだった。

 次元戦団バイラムは、魔城バイロックを駆って裏次元を滅ぼし尽くした後3次元にやってきた集団で、特に目的もなく文明を滅ぼしているらしい。
 元々は女帝ジューザによって頭を押さえられた組織だったようで、ジューザが行方不明になったとき、ラディゲ達は「これで自由になった」とばかりにロクに探しもせずに移動してしまったようだ。
 結局、バイラム幹部は総出でジェットマンがジューザを倒すのに協力している。
 それほどまでにジューザは強く、邪魔な存在だったのだろう。

 ラディゲ達幹部は自由に次元を超えられるようだが、次元獣やグリナム兵達はバイロックにある次元転移装置によって次元を超えている。
 その気になれば、スカイキャンプごとジェットマンを殲滅できるだけの戦力を持っているが、破壊と殺戮を楽しむという嗜好のせいか、敢えて直接対決を望む傾向が強い。
 また、“ジェットマンを倒した者が頂点に立つ”という賭を始めてしまった関係上、ジェットマンを正面から叩き潰す必要があるのだ。
 ただし、バイラム幹部は、攻撃力は非常に強いが防御力はさほどでもないようだ。
 幹部達の戦い方を見ると、ジェットマンの攻撃を手の平で受け止めたり跳ね返したりしている。
 そのくせ、身体に直撃を食らうと、案外あっさりとダメージを受けるのだ。
 これは、攻撃力を手の平に集め、一種のバリアフィールドを張っているものと思われる。
 だからこそ、予想も付かない方向から飛んでくるビークスマッシャーの攻撃が有効なのだ。

 さて、ラディゲによって改造されたマリアはともかく、ほかの3幹部の実力はそれなりに伯仲していたらしく、また互いに不干渉なこともあって、バイラムは組織だっていないもののまとまった集団だったと言える。
 ラディゲは元来お山の大将タイプなのだが、グレイやトランはそこから一歩引いているため、確執は生まれなかったのだ。
 この“ラディゲが一番アクティブに動くキャラ”であることは、デザイン当初から決まっていたことのようで、白と黒で構成されたバイラム幹部(ジューザ含む)の中で、ラディゲだけが青を取り入れているという事実がそれを物語っている。
 デザイナーの野口竜によれば、ラディゲをイメージリーダーとして変化を付けるためにそうしたとのことだ。
 とにかくバイラムは、ラディゲが実態的に中心ではあるが、それでも同格の幹部によって構成されていた。
 突然幹部の仲間入りしたマリアに対しても、トランやグレイは“ラディゲの酔狂”と考えていたようで暖かく迎えていた。
 だが、トランザの登場でバランスが極端に狂ってしまった。
 トランザの、ラディゲ達が束になっても敵わない強大な戦闘能力とラディゲの鼻っ柱を真っ向から叩き折るようなやり方がバイラムの崩壊を招いたのだ。

という具合で、トランザはラディゲを力でねじ伏せて、本来“ジェットマンを倒した者”が座るはずだった帝王のイスに着いたわけだ。
 これが後にラディゲの反撃を招き、トランザの脱落を生み出す要因になっている。
 なお、非常に分かりにくいことに、トランザは「帝王」と名乗っているだけで実際にはバイラムをまとめ上げたわけではなく、相変わらず勝手な幹部達の中でトランザが一番強いだけなのだ。

 また一方で、マリアを巡るラディゲとグレイの愛の形の違いもバイラムのドラマを彩っていた。
 ラディゲの場合は、マリアを所有することに意味があり、事情を知らず、自分をバイラムの幹部と信じて疑わないマリアを傍目で見て自分がマリアの運命を弄んでいることを楽しんでいた。
 ただ、ラディゲなりにマリアを相当気に入っていたのは間違いなく、だからこそマリアの最期の抵抗で手傷を受けた後、敢えてレッドホークとの一騎打ちを受けたのだ。
 そしてグレイは、マリアが弾いたピアノに魅せられ、機械の自分にはない人間性というものをマリアに求めていたようだ。
 グレイにとって永久に手の届かない血の通った美しさ…それこそがグレイの憧れたものだったのだろう。
 そして、それ故にグレイはマリアに何も求めない。
 ただ自分が憧れているだけでいいという一歩引いたところで見守っている。
 だからこそ、マリアが魔獣と化したとき、魔獣としてラディゲのものになるくらいなら、人間に戻して竜の手に渡した方がいいという結論を生みだした。
 マリアの最期を看取りながら、決して自分のことを振り向いては貰えなかったグレイは、戦士としての生き様に全てを賭け、宿敵結城凱との戦いに挑むのだ。

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巨大化

 次元獣、バイオ次元獣とも、等身大で倒されると、次元虫が依り代から離れ、巨大な姿で復元する。
 この次元虫が離れた瞬間を狙えば巨大化するのを防止できるわけで、実際38話『いきなりハンマー』では、バイオ次元虫を凍結させて捕獲することに成功している。

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ラストへの流れ

 トランザのバイオガンによって、竜を除く4人は石版に捕らえられてしまった。

 1人残った竜と、竜に協力する“トランザに恨みがある戦士”は、トランザを追い詰める。
 だが、その戦士は、ベロニカから消えて以来行方不明だったラディゲであり、レッドホークを盾に取ったトランザに対し、容赦ない攻撃を掛ける。
 レッドホークの必死の反撃でメタルトランサーが誤作動を起こして凱達4人は解放され、ファイヤーバズーカがトランザを吹き飛ばす。
 傷を負ったトランザの前に現れたラディゲは、トランザの左手をブラディゲートで地面に縫いつけ「俺の名を言ってみろ」とトランザに迫る。
 メタルトランサーを操作する左手を封じられ、情けなく「ラディゲ様〜!」と絶叫したトランザは、命は奪われなかったものの、人格を破壊されて戦線から脱落した。

 トランザを倒すほどにパワーアップしたラディゲに憧憬を抱いたマリアは、ラディゲの血から生まれたヒトデを受け、強くなるため人間の血を吸い続ける。
 このままでは完全に魔獣になってしまうと心配したグレイは、凱達の前に現れ、今なら人間に戻せる可能性があるから、助けてやってほしいと頼んだ。
 竜のキスで元の姿に戻ったリエは、抱きしめようとする竜にブリンガーソードを向け、「もう昔には戻れない」とラディゲの傍らに立つ。
 呆然とする竜に勝ち誇るラディゲだったが、その背に深々と突き刺さるブリンガーソード。
 「せめて一矢、お前に報いたかった。ラディゲ!」と叫ぶリエ。
 リエは、このためにラディゲの近くに行ったのだ。
 怒ったラディゲはリエを斬り捨て、「レッドホーク、貴様にマリアは渡さん!」と捨てぜりふを残して去っていった。
 リエは駆け付けようとする竜に「来ないで! お願い、私のことを記憶からぬぐい去って」と言い残し、現れたグレイに抱き上げられて消えた。

 残された竜は号泣する。
 そして、グレイに抱きかかえられたまま海岸に現れたリエは、竜の名を呼びながら息絶え、その亡骸はグレイの涙を受けて光となって散った。

 数日後、リエの死から立ち直ったかに見えた竜だったが、実は1人でラディゲに復讐するための準備として、密かにファイヤーバズーカをオートコントロールで撃てるよう改造していた。
 そして、改造が終わったとき、竜は置き手紙を残してラディゲと決着を付けるべくスカイキャンプを出ていく。
 置き手紙を見て慌てて追い掛けた4人の前には、凱と決着を付けるべくグレイが待っており、凱は雷太達を先に行かせてグレイとの最後の戦いに挑む。
 そして、ファイヤーバズーカを破壊され、ラディゲに敗れた竜に迫るトドメの衝撃波は、割って入った香に命中した。
 その場を雷太とアコに任せて傷の手当のために一旦引いた竜と香。
 竜は、『リエは、正義のために戦う竜の姿が好きだったはず、復讐のために戦ってもリエは喜ばない』と諭す香の姿にリエの面影を見て、リエの死を受け入れる。

 その頃、グレイとの死闘を繰り広げるコンドルは、グレイの左腕を斬り落とし、グレイギャノンを叩き落としたものの、自らも全ての武器を叩き落とされていた。
 ブリンガーソードを拾ってトドメとにじり寄るグレイに、コンドルはグレイギャノンを拾っての反撃に出て、奪い返したブリンガーソードをグレイの腹に突き立てた。
 決着はついた。
 凱は、末期の一服をしようとするグレイの葉巻に火を付けてやり、グレイの「俺は戦士。最期の姿を見られたくない」という言葉を受けて立ち去り、グレイは、マリアの弾く『熱情』を思い出しながら、静かにその全機能を停止した。

 そして、竜・香・凱は、ラディゲに翻弄される雷太とアコの元に駆け付け、今度こそ一致団結して炎の鳥となってラディゲに一撃を加え、ラディゲは巨大獣ラゲムに変身して巨大戦を挑む。
 グレートイカロスとテトラボーイで戦うジェットマンだが、ラゲムの力の前にまるで歯が立たない。
 だが、テトラボーイのパンチがラゲムの背中にヒットしたとき、ラゲムは異常なまでに苦しんだ。
 リエが最期に刺したブリンガーソードの傷が癒えていないのだ。
 そのことに気付かれたラゲムは、バイロックを呼び寄せ背中に装着して弱点をカバーし、テトラボーイを破壊してしまう。
 ホークは一計を案じ、グレートイカロスを分離させ、ガルーダでバイロックを破壊してラゲムを正面から抑え込んだ。
 そして「人類の、いや俺達の未来がかかってるんだ!」とガルーダごとラゲムを刺すよう指示するホークに、コンドルは「お前の命、俺が預かった!」と躊躇なくバードニックセイバーを叩き込んだ。

 戦いが終わり、昇る朝日を眺めながら、長官は戦いが終わったのではなく、これから人類の輝かしい未来が始まるのだと語った。

 そして3年後、竜と香の結婚式の日がやってきた。
 遅刻しつつ花束を買っていた凱は、ひったくりを捕まえるが、逆恨みしたその男に腹を刺されてしまった。
 傷の痛みと出血に耐えつつ教会にやってきた凱は、傷のことを悟らせないようベンチに座っていた。
 そして、隣に座り、顔色が悪いことを心配する竜に

 凱は、写真を撮りにきたアコに、竜の肩を抱いた姿を撮らせ、竜をみんなの方へ送り出す。
 『(凱は)疲れているらしい。そっとしといてやろう』という竜の言葉に、香が凱の方を見ると、凱は笑顔で手を振って香を祝福していた。

 安心して輪の中に戻る香、そして凱は静かに崩れ落ちる。

 そして、竜は物陰で微笑みながら消えていくリエの幻を見た…。

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『海賊戦隊ゴーカイジャー』での展開

28話『翼は永遠に』

 マーベラスがかつてボロ負けした、賞金稼ぎのキアイドーが地球にやってきた。
 ゴーカイジャーは敗れるが、キアイドーはトドメを刺さずに立ち去る。
 キアイドーを前に戦意を喪失したマーベラスの前に結城凱が現れた。
 死してなお仲間を守るために1人戦う凱の姿に、マーベラスは戦意を取り戻す。

 かなり変則的なジェットマン編。
 東映の公式サイトによると、なんでも『ゴーカイジャー』メインライターである荒川氏は、ブラックコンドルの参戦に反対し続けていたのだそうだ。
 どうやら荒川氏にとっては、『ジェットマン』最終回で死んでしまっている凱がレジェンド大戦に参戦することが許せなかったらしい。
 プロデューサーが「(凱同様死んだキャラである)アバレキラーやドラゴンレンジャーはいいのにブラックコンドルだけはダメなんて分からない」と言って相当揉めたらしい(結局押し切られて参戦しているが)。
 ブラックコンドルだけは別格ということか。
 凱が死ぬ最終話を書いたのは井上氏の方だが、なぜか荒川氏も思い入れたっぷりだったようだ。
 やはり、戦いとは別の理由で自分の美学に殉じて死んだからだろうか。

 ともかく、その絡みもあって荒川氏でなく『ジェットマン』メインライターだった井上敏樹氏がジェットマン編を執筆することになったのだそうだ。
 「ただし、凱を書くよ」という条件付きで。
 戦士としてでなく1人の男として死んだ凱をそっとしておきたい荒川氏と、凱という1人の男の生き様(死んでるけど)を書きたい井上氏の立場の違いといったところだろうか。
 そのため、“女神との賭けに勝った褒美に地上に降りた凱”という井上節全開な展開を見せる。
 ストーリー的には、ひたすら凱を描いており、「俺は納豆と男は大嫌いなんだ」「ケツが痒くなるからな」といった凱の印象的なセリフが散りばめられており、『ジェットマン』、ことに結城凱好きにはたまらないだろう。
 ブラックコンドルのスーツアクターを、当時と同じ大藤直樹氏が務めているのも『ジェットマン』好きにはポイント高いところだ。
 戦い方も昔のままで、決してキアイドーを圧倒することもない劣勢な戦いも、なんだか“らしい”感じでいい。
 ジェットマンの“大いなる力”が、最終決戦でラディゲに放った5人で火の鳥になっての突進だったことも嬉しい話だ。
 『ジェットマン』ラストを彩った「空が目に染みやがる。綺麗な空だ…」「ああ、俺達が守ってきた青空だ」に対応する「綺麗な空だ。目に染みやがる。分かってるな、お前らが守る番だ。あの空を」は、『ジェットマン』最終回をリアルタイムで見た人間には重さが違う。
 まさか20年も経ってから、あのセリフを引き継ぐ展開を見ることになるとは思わなかった。
 勿論、『ゴーカイジャー』は『ジェットマン』の正当な続編ではないから、あくまで派生作品としての位置づけだが、それでも嬉しかった。
 レジェンド話の中で、かつての戦隊メンバー全員の去就が語られるのも珍しい。
 もっとも、去就といっても、雷太が無農薬野菜のネット販売会社社長になったということ以外は『ジェットマン』最終回で既に語られているところなので、今更目新しいこともないが。

 一方で、凱が存在感ありすぎる分、ゴーカイジャー側の描写が薄くなっており、『ジェットマン』に思い入れのない『ゴーカイジャー』のファン、或いは井上脚本に拒否反応を示す人には少々辛いだろう。
 ゴーカイジャーの面々は初戦でキアイドーにあっさり負けたかと思えば、再戦では押せ押せになっているなど、御都合的でもある。
 バイオマンやマスクマンに豪快チェンジしての攻撃が通じなかったのに、ジェットマンに豪快チェンジしての攻撃が通じるのも謎。
 確かにジェットマンの“大いなる力”を手に入れた後ではあるが、既に大いなる力を得ていたバイオマンでもまるで歯が立たなかったのだ。
 全員が空を飛びながらの攻撃というのは、レジェンド戦隊の中ではジェットマンだけの特徴ではあるが、それとてキアイドーが手こずるほどの変則攻撃とは思えないレベルだった。
 マーベラスに限れば、腰が引けていたのが闘志を取り戻したわけだから強くなるのも分かるが、他のメンバーは特に何かが変わったわけでもなく、急に優勢になると唐突感が否めない。
 凱の姿は鎧に見えないとか、レンジャーキーの力を使わずにブラックコンドルに変身したりとか、特に説明もないまま勢いで進んでいく辺りも、好き嫌いが分かれるところだろう。

 なお、一部に凱の死を認めていなかったジェットマンファンもいたようで、「今更公式見解で死亡とか言われても困る」といった意見もあったようだが、鷹羽に言わせれば、『ジェットマン』最終回を見て凱が生きていると思う方がどうかしている。
 「傾向と対策」に書いているとおり、ストーリー展開上、凱は死んでいないと話が繋がらないのだ。
 恐らく制作側としては、凱が死んでいることを疑っている人がいるなんて思いも寄らないだろう。

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傾向と対策

 『ターボレンジャー』の車、『ファイブマン』の先生に続き、『ジェットマン』では鳥がモチーフとなっている。
 鳥モチーフの5人組と言えば『科学忍者隊ガッチャマン』が有名だが、ジェットマンはそのパクリではないかというくらいよく似ている。
 外見が似ているわけではないが、鷹・コンドル・フクロウ・白鳥・ツバメというモチーフは、ガッチャマンの鷲・コンドル・ミミズク・白鳥・ツバメの組み合わせとほとんど同じだ。
 ジェットマンが鷲でなく鷹を使ったのは、『サンバルカン』で鷲を使っているので避けたかったのだろう。
 また、イカロスハーケンはガッチャスパルタンのような形だし、その必殺技ジェットフェニックスは科学忍法火の鳥だ。
 どこまで狙ったかは分からないが、少なくともかなり意識して作ったことは間違いない。
 ただ、さすがにと言うか、内容的には全く『ガッチャマン』とは似ていない。

 デザイン的には、よそのシリーズの影響を無茶苦茶受けていた『ジェットマン』だが、内容的にはオリジナリティがかなり強く、スーパー戦隊シリーズ屈指の異色作であり、シリーズ初という試みも多い。
 試しに、『ジェットマン』で初めてやってことを挙げてみよう。

  1. 女性長官
  2. 1話でヒーローが揃わない
  3. 敵組織に首領がいない
  4. 変身後も本名で呼び合う
  5. メンバー同士での恋愛
  6. 3台目のロボットが登場
  7. 5人揃わない話がある
  8. スーツのマスクが破損
  9. 最終回のAパートで戦いが終結
  10. 戦いと関係なく死ぬヒーロー

といったところだろうか。
 では、これらについて簡単に説明していこう。

 1と6については上で触れたので割愛するが、2、4、5は“偶然選ばれてしまった戦士”であるジェットマンの特徴と密接に関係しており、9と10は1セットになってそのジェットマンの物語の結末としてを描くための味付けとなっているのだ。
 ちなみに、3について「上でジューザが首領って自分で書いただろう!」という意見があるだろうが、ジューザはバイラムの組織図上は確かに首領なのだが、上記のとおり、番組としての扱いは単なるゲストに過ぎない。
 スーパー戦隊シリーズに限らず、悪の組織には首領というべきものが存在し、そいつを倒すことが最終目的となる。
 だが、バイラムの首領たる女帝ジューザは、「え!? あれが首領なの!?」というくらい首領らしくない。
 それはそうだ、全51話中たったの2話、しかもラストではなく前半で出てきて倒されてしまったのだから。

 この2つの特異な条件により、『ジェットマン』では敵も味方も内部分裂し続けた。
 また、“変身した途端にコードネームで呼び合うのはおかしい”との主役達(役者)の意見で、シナリオでは変身後は「レッドホーク」などと呼び合う予定だったのが、「竜」などと呼ぶことになった。
 今では当たり前のようになった“変身後も本名で呼び合う”というのは、『ジェットマン』から始まったのだ。
 お陰で、彼らをレッドホークなどとコードネームで呼ぶのは、ほとんどバイラムの連中だけだった。
 バイラムにしても、グレイは最後の戦いで「ブラックコンドル…いや、結城凱」と呼び掛けており、コードネームで呼ぶことをやめている。
 完全に変身前のキャラクターが勝ってしまったわけだ。

 9の“マスクが破損”は、マスクのゴーグル部分が破損して中から凱の顔が見えるという描写で、それほどの激闘の中で苦戦しながら闘志を失わない凱を表現するための技法として使われている。
 かつて『巨獣特捜ジャスピオン』最終回で、エジンの死を前に怒りを燃え上がらせるための描写として、ジャスピオン(変身後)のマスクのアップに変身前(黒崎輝)の姿をカットインして変身後の姿と変身前の役者の一体感を出そうとしたことがあったが、あのときはマスクの中に腰辺りまでの変身前がインサートされてしまい、臨場感を損なっていた。
 その点、“割れたゴーグルから覗く素顔”には、文句なしの一体感がある。
 難点を言えば、構造上目の位置がゴーグルより若干上になるため、撮影する角度が面倒ということくらいか。
 そう言えば、1話では、マスクの中の映像を基地内のモニターに映すという演出もやっていた。
 マスクの中で、ちゃんとマイクが口の辺りについているのに感心したものだ。

 『ジェットマン』は、ヒーロー物という枠の中でできるだけドラマ中心のストーリー展開をしようとした作品だと思う。
 まず、全編通じてリエ・竜・凱・香の4人(一時期は雷太も加わって5人)の恋愛を軸に物語が進む。
 このため、『戦うトレンディードラマ』とか『トレンディー戦隊』などと呼ばれていた。
 逆に言えば、トレンディードラマを見るような年代層にまで視聴者が多かったということになる。
 実際に当時、鷹羽の同級生などでも、ほかのトクサツ物など見ない連中が『ジェットマン』は見ているという話が聞こえてきたものだ。
 良くも悪くもこれがこの番組の最大の特徴であり、高年齢層の視聴者が多かった原動力となっている。

 これによって必然的にドラマ部分が多くなり、戦闘シーンの比率が低くなっている。
 22話『爆発する恋』に代表される巨大メカが全く登場しない話もあるし、変身後の姿が登場するシーンが少ない回もある。

 上記7のジェットマンが5人揃わない話というのは1回限りのことではない。
 最初が27話『魔界大脱出』で、この回ではホワイトスワン=香が変身しない。
 この回には、ホワイトスワン役のスーツアクターのOPテロップ(変身していないのにテロップがある)がそれまでの蜂須賀祐一氏から赤田昌人氏に変更されており、その後赤田氏のままであることや当時の噂などから、どうやら蜂須賀氏が怪我をして降板したものと思われる。
 つまり、急遽のアクター変更で登場シーンを削ったという可能性が大きく、わざとではないかもしれない。
 だが、その後も変身後が登場しない話がある。
 一番凄いのは、49話『マリア…その愛と死』で、なんとコンドル・オウル・スワローがほんの数秒登場するだけで、ホークは全く登場しないのだ。
 考えてもみてほしい。レッドが登場しない戦隊物など、どうやったら成立する?
 『ジェットマン』は、それを必然として成立させ、しかもマリア=リエの死という非常に重要なイベントを描ききってしまったのだ。
 『仮面ライダークウガ』が“戦闘シーンが少ない!”と不評を受ける9年も前のことだ。
 また、Aパートで終わる最終決戦というのも、『仮面ライダーアギト』より10年早くやっている(同じ脚本家だな、そういえば)。
 こう言えば、どれほどの重大事か分かるだろうか。

 もちろん、良い悪いはともかく、これらは狙ってやった演出だ。
 正義側について言えば、上記のとおりまったくの偶然から集まった民間人の寄せ集め戦隊であることからの当然の流れとして描かれている。
 これまでも民間人を集めた戦隊は多々あるが、彼らは何らかの理由から戦士として選ばれている。
 元は民間人でも、その性格、能力、血筋などの理由により、その人でなければならなかったわけだ。
 だが、ジェットマンでは、竜以外の4人は、たまたまバードニックウェーブを浴びただけであり、戦士になるべき素質も自覚もない。
 それ故に、地球の平和云々よりもまずエゴが優先される。
 凱が再三言い続けた「俺達は戦士である前に人間だ」というセリフがこれを端的に表している。
 逆から見れば、『ジェットマン』とは、偶然集まった人間達が仲間として団結して行くまでの過程を描いた物語だったと言える。
 最終回の1話前でようやく“真の力”を発揮するのもそのためだ。
 竜と凱、香の関係が端的で分かりやすいだろうから、凱を中心に語ってみよう。

 凱は、3話『五つの力!』で、竜のひたむきな戦いを認め、竜をリーダーとしてジェットマンに加わることを了承した。
 クロスチェンジャーをはめてもらうために竜に右手を差し出すときの凱の表情は、「いいぜ、付けろよ」という感じに見える。
 そのことをストレートに出すのが照れくさいため、仲間に加わった直後、香やアコにだけ挨拶をして「俺が加わったからには面白くなるぜ」などと言っているのだ。

 また、ムックでの出演者インタビューで主役達が言っていることだが、ジェットマンが内輪もめしているとバイラムが攻撃を仕掛けてくることが多い。
 これは、戦隊としての体裁を保つ=戦闘シーンを入れるという目的が多分にあったと思われるが、敵の攻撃が始まった途端に凱が突然協力的になるのは、隠れた性格である「真面目で寂しがり屋な良い子」の部分が影響しているのだろう。
 凱自身そのことに気付かないよう自分にブレーキを掛けているのだ。
 その一方で、凱は竜に対してかなりの敵対意識を持っている。
 戦闘面について認めている分鬱屈したものになっているのか、竜の人間性というか普段の行動に対して反感を示すことが多い。

 鷹羽の私見だが、凱が香に対して急に好意を持つようになったのは、竜に好意を持っている香の目を自分に向けることで竜に対する優越感を抱くというのが無意識下での目的だったのだろう。
 その後、魔神ムーとのことがあり、遂に凱は香と付き合うようになり、32話『翼よ!再び』で、凱は自分が竜を気に入っていることを自覚する。
 以後、凱がほとんど竜と悶着を起こさなくなるのはそのためだ。
 そして、43話『長官の体に潜入せよ』で、香の両親が相手の学歴や仕事などによって評価するという、凱が一番嫌いなタイプであることを知って以来、香と距離を置き始めた。
 このころ、香は両親に会わせて以来上手くいっていないことを(無謀にも)アコに相談している。
 結局この溝は埋まらず、45話『勝利のホットミルク』のころには、2人の仲はほとんど自然消滅していた。
 ベロニカの中から脱出した香が凱に礼を述べたとき、凱は「気にするな、俺達は仲間だ」と言っている。
 以前なら、「自分の女を守るのは当然のことだ」という答え方になっているはずなのに、「仲間だ」と言っているのは、既に付き合う以前のレベルに戻ってしまっていることの表れだろう。

 この後、凱が香の手を握ることは二度となかった。

 逆にこれ以降、凱は竜との信頼関係を強めていく。

 リエを失い、竜が泣き崩れたときも、「見るんじゃねぇ」と雷太達を追い払ったのは彼だった。
 その後、バイラムとの戦いを終え、竜と香が付き合い始めた後も、2人の友情は続き、最終回『はばたけ!鳥人よ』では、凱は「今日はめでたい日なんだ。親友が結婚する…」と言っている。
 凱が最後に言った「ありがとう」は、親友に込めた万感の思いだ。
 『ジェットマン』は、最初あんなにも反目していた凱と竜が親友になったように、最初は全く接点のなかった5人がチームとしてまとまっていく物語だったのだ。
 だからこそ、ラストバトルがAパートで終わり、後日談がBパートを占めてしまったわけだ。

 それだけに、5人の軋轢や反目、チームとしてまとまっていく様子をかなり丁寧に描いている。
 最初に挙げた『ジェットマン』の特徴10個の中の2つ目“1話でヒーローが揃わない”というのもそのための手法だ。
 6人目ならともかく、最初の固定メンバーが1話で揃わなかったのは『ジェットマン』と『カクレンジャー』くらいだ。
 また、『バトルフィーバーJ』のようにロボットの着ぐるみが完成していないためでもないのに、初代ロボ:ジェットイカロスが6話で初登場というのもほかに類を見ない。
 別形態であるイカロスハーケンにしても5話が初登場だ。
 その間に、香が竜に、凱が香に惹かれていく様子が描かれたわけで、これもまた5人を大事に描写していたことの表れだろう。

 だがその一方で、やはり『ジェットマン』はヒーロー物としてしか存在し得ない番組だった。
 恋愛劇も5人のまとまりも、戦いを軸に展開されていく。
 マリアの正体を知って戦意喪失した竜が立ち直る姿を描いた『翼よ!再び』は、ヒーロー物でしか描けないかっこよさだったのだから。

 逆に、5人のチームワークの悪さが戦いの帰趨に直結していたことが『ジェットマン』の弱点であり、再三敗北を重ねては敵前逃亡を繰り広げるため、弱いヒーローという印象を持たれることになった。
 子供の人気が今3つくらい足りなかったのは、それが原因だと思う。

 また、『ジェットマン』の欠点として、組織の背景が見えないことが挙げられる。
 寄せ集めとは言えスカイフォースの内部組織でありながら、イカロスやガルーダの整備をするのは、戦士である竜達であり、格納庫だけでロボット3体が収納できるほど広いスカイキャンプ内には、整備員どころか警備兵の姿も全く見られない
 ファイヤーバズーカやテトラボーイを作ったのも彼ら自身だ。
 こういった部分は、組織力の薄さとしてずっと認識されてきた。
 結局、ネオジェットマンの登場でジェットマンの5人がスカイフォースの鼻つまみ者だったことが判明するまでその認識は変わらなかった。
 つまり、ジェットマンは必要な存在ではあるけれど、独立愚連隊でしかなく、最小限の援助しか受けられなかったのだ。
 こういった部分はもっと早く前面に出しても良かったのではないかと思うが、さりとて正義の戦隊が嫌われ者というのを前面に押し出すのもはばかられるから、仕方なかったのだろうか。

 映像面での『ジェットマン』の特徴を見てみよう。
 『ジェットマン』には、雨宮慶太監督が参加している。
 2話でのファイタージゲンとジェットホークの空中戦や、OPでおなじみのジェットマシンがビル街を飛ぶシーンは、雨宮監督の手による。
 この飛行シーンは、戦隊シリーズのレベルを超えるもので、トクサツをあまり見ない人でも驚く出来映えだった。
 放映リストを見れば分かることだが、1、2話やガルーダ、グレートイカロスの登場編、竜が立ち直る『翼よ!再び』、ベロニカ編、ラスト2話など、ストーリーの要所要所は井上脚本と雨宮監督のコンビで占められており、2人のコンビがこの番組のカラーを生んだと言っても過言ではない。

 ここら辺で、余談を3つばかり披露しよう。
 『ジェットマン』のラストバトルでは、イカロスが左腕を失い、ガルーダはラゲムの爆発で大破、テトラボーイも両腕を破壊されて作動不能になっており、Aパートラストでは、朝日を浴びて佇むイカロスと、その足下に横たわるガルーダ・テトラが映っている。
 実はこのシーン、当時見た人には非常にデジャ・ビュを感じさせるものだった。
 『ジェットマン』と同時期に放送されていたタカラの勇者シリーズは『太陽の勇者ファイバード』だが、その最終回では、戦いで破壊され尽くした勇者ロボ達の残骸が岩山に横たわっているシーンになっている。
 この構図が、前記のイカロス達のシーンによく似ているのだ。

 『ファイバード』の最終回の放送は平成4年1月25日、つまり『ジェットマン』最終回の3週間前だ。
 無論真似をしたわけではないのだが、激しいデジャ・ビュを感じるのも当然だろう。

 2つ目は、同じく同時期に放送していた『きんぎょ注意報』のキャラ達がジェットマン風のコスチュームを着ている話が2回ほど存在していることだ。
 見ていないのでどういう内容だったのかは分からないが、次回予告で見る限り、ヒーロー物のパロディのような使い方をされたのだろう。
 鷹羽は『ジェットマン』は子供にあまり人気がないと思っているのだが、こういうのがあると、もしかしたら結構人気があったのかもしれないと思ってしまう。

 3つ目は、商業ベースでノベライズやコミカライズされていることだ。
 コミカライズは後日談マンガで、バンダイが発行していた『Bクラブ』に短期連載され、トランザの身体を乗っ取って復活したラディゲや、凱:ブラックコンドルに代わりジェフリー:グリーンイーグルを擁して再びバードニックウェーブを浴びて戦う竜達の姿を描いたが、正式な続編とは言えず、婦人コミック的なノリに過ぎなかった。
 特にラディゲの復活については、最期の言葉「裏次元から永遠に呪い続けるだろう」を曲解したとしか思えない展開であり、同人マンガを商業ベースに載せただけというのが鷹羽の見解だ。
 主婦の友社からコミック化されているが、今はもう手に入らないだろう。
 ノベライズの方は、メインライターだった井上敏樹氏が執筆しており、テレビベースでは展開できなかった“本当にやりたかった”であろう物語を展開している。
 善し悪しは別として、これを読むと、井上氏がジェットマンで描きたかったものの片鱗が見えてきて面白い。
 まず、一時期物議を醸した凱の生死について、氏の見解が分かる。
 『凱の生死』というのは、言うまでもなく最終回で崩れ落ちた凱が生きているのかどうかということで、まぁ、死んでいないと話が繋がらないのだが、それを認めたくない人が多かったというところだろうか。
 小説の中で、凱はきっちり死んでいる。
 つまり最終回で凱は死んでいたということだ。
 また、ラディゲが滅ぼした星で必ず生命体を1体捕らえてコレクションしていることや、スカイフォース上層部が竜達を汚点と見て排除し、新ジェットマンを生み出そうとしていること、バードニックウェーブは2年ほどで効力を失うことなどにも触れられている。
 特に興味深いのは、ラディゲが生命体をコレクションしているという点だで、マリアが地球から採取した生命体のコレクションなのだということが分かる。
 ただし、これはいかにメインライターの手になるものとはいえ、テレビ本編ではないので、この評論中では特に参考にしていないことをお断りしておく。

 凱の死については、上でも特徴の10番目にしているが、元来ヒーロー物では最終回で死ぬパターンも数多く存在するので、死んだこと自体はさほど凄いことではない。
 凄いのは“戦いに無関係な展開で死んだ”こと、つまり戦士の死ではないことだ。
 これは、彼らの戦いが最終的に自分達の未来のための戦いになっていたからだ。
 生きている限り、彼らの物語は続く。
 チンピラに刺されて終わる一生も1つの生き様なのだ。

 ちなみに、凱を刺したチンピラ役がブラックコンドルのスーツアクター大藤直樹氏であることは有名だが、この最終回には、レッドホークほか歴代レッドのスーツアクター(これでレッド役は引退)である新堀和男氏が神父役で出ているほか、結婚式の客は蜂須賀兄弟などJACの人達が多い(蜂須賀昭二氏は奥さんと子供連れのようだ)し、アコのマネージャー役は東條正平監督だったりする。

 この結婚式のシーンは、スーパー戦隊シリーズ異色作である『ジェットマン』の面目躍如たるものだが、このシーン故に鷹羽の『ジェットマン』に対する評価は高いというくらい意味深い。
 重傷をおして凱が結婚式に駆け付けたのは、香とのことがあったからに他ならない。
 かつて凱と付き合って分かれた香が、その親友である竜と結婚する。
 香の心に負い目のないはずがない。
 それを和らげるために、凱はどうしても2人の結婚を祝福しなければならなかった。
 みんなで記念写真を撮ろうと言っているときに、昔の彼氏だけがそこに加わろうとしなければ、やはり気になるだろう。
 不安そうに凱を見た香は、祝福の笑みを浮かべて見守っている凱の姿でどれ程救われたことか。
 そして、竜もまた微笑みと共にうなずいて去っていくリエの姿を見る。
 それは、もしかしたら本当にリエの幽霊かもしれないし、竜が勝手に思い描いたリエの幻に過ぎないのかもしれない。
 だが、いずれにしろ竜は、リエとの思い出を過去の輝きとして抱いたまま、今現在愛している香との幸せな家庭を築くことができる。
 そして、このリエの微笑みのシーンから流れる『こころはタマゴ』をもって『ジェットマン』は終わる。
 5人それぞれの変身シーンや活躍シーンを1人ずつ流した後、5人揃っての変身シーン(『それぞれの死闘』でのもの)が映り、並んだ5人が変身を解いて肩を並べ空を見る。
 ラストに映っているのは、アイキャッチのBパート、Aパートに使われている画像と同じ構図だ。
 アイキャッチの画像は、新番組予告の時から使われているもので、Aパートは変身前、Bパートは変身後の5人が、同じ構図で竜(ホーク)を中心に崖の上に並んでいるものだ。
 エアチェックの際CMカットをしていると、変身前の5人が変身後の姿にそのまま置き換わるというのでちょっと話題になった。
 この構図では、竜の両脇に香と雷太が立ち、凱とアコは崖に腰掛けている。
 5人はそれぞれ違う方向を向いており、彼らのチームワークの悪さを象徴するかのようだが、最終回、エンディングが流れ終わるその時、これと同じ構図の5人が映る。
 そして、崖に座っていた凱とアコが立ち上がり、5人が寄り添って同じ方向を見つめるのだ。
 鷹羽は、長い間、新番予告の画像そのものだと思っていたが、残念ながら、これは、新番予告のものとは違う場所で撮影されたらしく、背景が異なっている。
 少々残念ではあるが、それでも、わざわざそれと同じ構図で撮り直して番組を締めくくったことには意味がある。
 それぞれ勝手な方向を向いていた5人が同じ方向を向いた。
 先に述べた“最初は全く接点のなかった5人が仲間としてまとまっていく物語”は、このシーンで完成した。
 これが『ジェットマン』で描きたかったものなのだ。

 1年間見続けてきた人にしか分からない感慨、それがここにある。

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