主題歌
- オープニングテーマ:オーレ! オーレンジャー
- エンディングテーマ:緊急発進!! オーレンジャー
虹色クリスタルスカイ(最終回のみ) - 挿入歌:虹色クリスタルスカイ
超力合体!! オーレンジャーロボ
真っ赤な闘魂! レッドパンチャー
アクション! オーレンジャー
『オーレンジャー』では、1〜6話まではアバンタイトルに
地球侵略を企むマシン帝国バラノイア!
人類最大の危機を救えるのは、超文明のパワーを身に付けた彼らしかいない!
というナレーションが入っていた。
このシーンでは、バラノイアの月面基地と、そこにウジャウジャいるバーロ兵が映されており、バラノイアの強大さが表現されていた。
7話以降、アバンには『ダイレンジャー』以来伝統の毎回のクライマックスシーンが入るようになった。
また、巨大ロボの歌が毎回のように入るのも久々で、正統派の巨大ロボソングが流れるのはいいなぁと思わせられた。
「虹色クリスタルスカイ」は、『ジェットマン』の「時を駆けて! ジェットマン」同様、新番組予告に流れた曲であり、一説にはEDの候補曲だったらしい。
「吹きすさぶ嵐の向こうは虹色に揺れるクリスタルスカイ」という歌詞には、辛い戦いの向こうにある幸せな未来が暗示されており、荒廃した地球の再生というオーレンジャーの新たな戦いへの出発のシーンにこの曲が使われたのは大きな意味があると思う。
なお、OP曲「オーレ! オーレンジャー」は、スーパー戦隊のOP曲としては、2003年現在唯一「〜戦隊」の部分が曲名にも歌詞に入っていない曲になっている。
曲名に入っていないのは、『シークレット・カクレンジャー』があるし、歌詞に入っていないのは『ああ電子戦隊デンジマン』があるが、両方に入ってないのはこれだけ。
また、歌っているのは、当時NHKの歌のお兄さんだった速水けんたろう氏で、氏はこの3年後、「だんご3兄弟」を大ヒットさせている。
基本ストーリー
1999年、突然マシン帝国バラノイアが世界の主要都市を破壊し、人類に宣戦布告してきた。
国際空軍(ユナイテッド・エアフォース:U.A.)の三浦大佐は、かねてから研究していた超古代遺跡から得た神秘のエネルギー超力を利用した戦闘装備を使用して超力戦隊オーレンジャーを結成、U.A.から選び抜かれた5人の兵士達と共にバラノイアの侵略に立ち向かう。
メンバー
オーレッド:星野吾郎
ゴーグルの形は★型で象徴する遺跡はピラミッド、個人武器はスターライザー、必殺技は秘剣超力ライザー。
U.A.の大尉でオーレンジャーの隊長。空手を得意とし、「ぅおぁたぁ!」の気合いと共にバーロ兵を粉砕していく。
ほかの4人とは違う部隊に所属していたため、オーレンジャーになって初めて出会った。
所謂正義の味方タイプの人で、一番大切にしているものは日本一長い母からの手紙だったりする。
オーグリーン:四日市昌平(よっかいち・しょうへい)
ゴーグルの形は■型で象徴する遺跡はギリシャ風の神殿、個人武器は斧型のスクエアクラッシャー、必殺技は電光超力クラッシャー。
ほかの3人と同じくU.A.の中尉であり、同じ部隊に所属していた。
そのせいか、同格である他の3人に対して若干リーダー的な行動を取る。
ボクシングが得意で、プロボクサー志望でもあったらしい。
オーブルー:三田裕司
ゴーグルの形は▼型で象徴する遺跡はスフィンクス、個人武器は刃の付いたトンファ:デルタトンファ、必殺技は稲妻超力トンファ。
体操が得意で、回転蹴り系統の技を好んで使う。
オーレンジャー5人の中で、一番暢気かつお子様な性格をしており、15話『友よ 熱く眠れ!!』では、マシン獣バラリベンジャーと友情を結んだ反面、17話『強奪 変身ブレス』ではあっさり普通の人間にパワーブレスを奪われるというミスを犯してしまった。
オーイエロー:二条樹里(にじょう・じゅり)
ゴーグルの形は〓型で象徴する遺跡は遮光器土偶型のモニュメント、個人武器はヌンチャク:ツインバトン、必殺技は炸裂超力バトン。
マーシャルアーツが得意。
どういう巡り合わせか孤軍奮闘する場面が多く、それでも何とかしてしまうという頭脳と根性の持ち主。
実は吾郎の次に頼りになる人間だったりする。
オーピンク:丸尾 桃(まるお・もも)
ゴーグルの形は●型で象徴する遺跡はモアイ、個人武器は円形のシールド:サークルディフェンサー、必殺技は疾風超力ディフェンサー。
中国拳法が得意だが、根は臆病者であまり深くものを考えないタイプ。
それでも裕司よりは落ち着いているらしい。
演じたのは珠緒(現:さとう珠緒)氏で、この後『ミニスカポリス』初代リーダーとしてブレイクし、数々のバラエティ番組に登場している。
スーパー戦隊出身のタレントとして1、2を争う出世株であり、この後、2匹目のドジョウを狙って失敗したタレントが数名生まれている。
そのせいか、平成4年に週刊ポストで発表したヌード写真が話題になったりと、妙な方向で有名になっている。
バラエティなどでは、今でもオーピンクだったことをネタに色々やらされているようだ。
長官:三浦尚之参謀長
3年前に日本某所で発見された遺跡の欠片から、6億年前の超古代遺跡を発掘し、そこから得た超エネルギーを「超力」と名付けて戦闘兵器の開発に当たっていた天才科学者で、階級は大佐。
かなり秘密主義なところがあり、新兵器の発表のタイミングを常に窺っているかのようで、ピンチになると嬉々として新型メカを出撃させる。
バーロ兵を素手で倒すという人間離れした戦闘力を持つ反面、スーツやメカのデザインセンスには乏しいようだ。
演じるは“日本一のヒーロー役者”宮内洋氏。
それだけに、物語序盤では、世間で「6人目の戦士は参謀長自らが変身するのでは!?」と囁かれていた。
キングレンジャー:リキ
ゴーグルの形は王で、武器はキングスティック、必殺技はキング・ビクトリーフラッシュ。
6億年前、たった1人でバッカスフンドらマシン獣の反乱を鎮圧した英雄であり、逃亡したバッカスフンドの再来に備えてドリンと共に異空間で眠りに就いていた。
当然、現人類ではない。
ドリン専属のナイトであり、基本的にドリンの命令以外には従わず、オーレンジャーとは別行動している。
ただし、逆にドリンの命令には従わねばならず、逃げた兎を追い掛けさせられたりすることもある。
ちなみに、ゴーグルの「王」マークはリキの紋章であり、漢字の「王」とは違うという設定になっている。
ドリン
6億年前のパンゲア文明時代に存在した神秘の生命体。
外見は人間の少女のようだが、中身は全く違う。
個体名は与えられず、「ドリン」は種族としての名称であり、同時に個体に対しての呼び名でもある。
6億年前のバッカスフンドらの反乱によって個体数が激減したが、そのうちの1体がリキと共に人工冬眠に就いていた。
その後どういうわけかほかのドリンは地球からいなくなってしまったらしく、彼女が地球に滞在する唯一のドリンということになる。
地球の生命の象徴とも言える存在で、彼女が地球からいなくなると地球の自然環境は大きなダメージを受けることになる。
オーレンジャーは、国際空軍の中の特殊部隊という位置づけにあり、制服の腕に書いてある「U・A・O・H」はその略称だ。
超力基地内には、整備・開発スタッフは多いが、戦闘要員はほとんどいないようだ。
基地の地下深くにはパンゲア文明の5つの遺跡が眠っており、地磁気、地熱などのエネルギーを複合し、その頂点に築かれたピラミッド型の増幅装置を通すことで超力エネルギーを発生させているらしい。
基地は日本アルプスのどこかにあると思われるが、敵の来襲に備えてドックの一部を地下に隠したりすることもできるなど、かなりの用心深さを持って作られている。
たかだか大佐に過ぎない三浦参謀長があれだけの大規模な基地のトップに位置することからも、彼の天才ぶりが分かろうというものだ。
なお、5人の名前は星野、四日市、三田、二条、丸尾となっており、強化スーツのゴーグル部の★■▼〓●に、それぞれ対応している。
これは、『カクレンジャー』の額のマークの逆で、五角、四角、三角、二本線、円という具合に角の数を減らしているのだ。
ちなみに、キングレンジャーの王の字は、よく見ると六角形を形作るものであり、オーレッドより一段上になっている。
もちろん円よりも角の数を減らせないせいだろうが、これが強さに対応していると考えるのも楽しいだろう。
変身システム
『ダイレンジャー』の「転身」、『カクレンジャー』の「スーパー変化」に続き、『オーレンジャー』でも変身を意味する「超力変身」という用語を生みだしている。
両手にはめたパワーブレスを合わせて「超力変身!」と叫ぶと、強化スーツが装着される。
変身ポーズの最後は、スペシウム光線のようなポーズだが、両手共に握り、右手は甲を前に向ける角度になる。
パワーブレスは、通信機になっているレフトブレスと、ストレージクリスタルをセットされたライトブレスとからなっており、2つのブレスを合わせることによってレフトブレスのカバーが開き、ストレージクリスタルが起き上がってレフトブレスに触れ、エネルギーがスパークして強化スーツが装着される仕組みになっている。
装着シーンは、レフトブレスから飛び出して全身を覆ったスーツの元となるエネルギーが、下から実体化していき、最後にマスクが実体化するというものだが、レッド以外の4人の装着シーンでマスクの下に人間の顔がないのは一部で有名。
要するに、レッドは、マスクの形の下に吾郎の顔が描かれているが、他の4人では中の顔が描かれていない=手抜きされているのだ。
このスーツは、超力エネルギーを浴びた人間でないと装着できない特質を持っており、5人はあらかじめ遺跡が発する超力エネルギーを浴びせられている。
また、スーツの装着には異常な体力の消耗が伴うため、初期は、5人が変身を解くと、汗びっしょりでフラフラになっていた。
ストレージクリスタルは、超力を生み出す何らかの結晶らしく、三浦参謀長の力を持ってしても作ることができない。
パワーブレスに使われているのは、基地地下にある遺跡から得られたたった5つの貴重なものなのだ。
このストレージクリスタルは、オーレンジャーロボの合体の際は操縦席にはめ込まねばならず、また、レッドパンチャーの操縦席にもクリスタルのはめ込み口がついている。
なお、オーレンジャーの5人のスーツは、他のスーパー戦隊と違い、特段モチーフになったものが描かれておらず、主に色とゴーグルの形だけで変化を付けているという実に珍しいタイプだ。
その分、ゴーグルが極端に見分けやすくデザインされているのだろう。
オーレンジャーのマークが
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というゴーグルの形の寄せ集めになっているのは、これがキャラクターを特徴づける一番いい方法だからだろう。
この“ゴーグルが特徴になっているデザイン”という部分に、オーレンジャーがゴレンジャーを意識したと感じる因子があるのだと思う。
ただし、折角マスクに口がモールドされているのに、基本色と同じなので全く目立たないというデザイン上の欠点を持っている。
キングレンジャーもまた両手のキングブレスを使い、最初のポーズは違うがオーレンジャー同様に「超力変身!」の掛け声で変身する。
キングブレスは、パワーブレスとほぼ同じデザインながら、全般に金色になっていて、レフトブレスのカバーにリキのマークが入っている。
また、ストレージクリスタルにも金色の飾りが付いており、名称もキング・クリスタルと別物だ。
そのせいか、キングレンジャーのスーツは、ベルトのバックルがリキのマークになっているほか、胸の部分が金色のアーマーで覆われ、上腕にアームレットがつき、手袋のカバーが二重になっていて足にはニーカバーも付いている。
これは、唯一パンゲア文明そのものが生みだしたスーツであることに起因していると思われる。
つまり、三浦が遺跡から得られた数々のデータを基に、キングレンジャーのスーツのレプリカを作ったと考えると、パワーブレスや超力スーツがキングレンジャーに酷似していることや、オーレンジャー5人がかりでキングレンジャー1人とさほど変わらない程度の戦闘能力であることの説明が付く。
恒例の変身アイテムとして、パワーブレス・キングブレス共に商品化されている。
上記のとおり、変身ポーズでは両手を十字にクロスさせるわけだが、レフトブレスのカバーの付いている部分の身体側と、ライトブレスのストレージクリスタル下部にそれぞれスイッチが付いていて、両手をクロスさせたときにそれぞれのスイッチ同士を押し合わせる方式だ。
分かりにくいところだが、レフトブレスのスイッチを押すとカバーが開き、ライトブレスのスイッチを押すとストレージクリスタルが倒れるようになっているため、両方を一度に押すと、カバーが開いたところにストレージクリスタルが倒れてくることになる…つまり、両手を十字に交差させたとき、レフトブレスとライトブレスのスイッチ同士をぶつけるようにして押さなければならないのだ。
この変身は非常に難しい。
変身ポーズが両手を大きく回す形になるため、ライトブレスが腕に対して斜めにずれてしまい、クリスタルが倒れるだけ、或いはカバーが開くだけで終わってしまう。
これがどれだけ難しいかは、『ダイレンジャー』同様に本編中での変身シーンではポーズを取るだけで、カバーが開くシーンはバンクだったということを考えれば理解してもらえるだろう。
ちなみに、ストレージクリスタルはライトブレスから取り外すことができ、別売りのオーレンジャーロボバトルコクピットにはめ込むことができる。
要するに、『ジェットマン』のときと同じくブレスパーツを巨大ロボの操縦アイテムにすることで、コクピットオモチャと変身ブレスの連携プレイバリューを持たせているわけだ。
なお、このバトルコクピットには、これまた別売りの「超力変身オーレンジャー人形」を1体座らせるスペースがあるほか、残り4体を立たせて固定するための突起も付いている。
このオーレンジャー人形は、アメリカのパワーレンジャー人形で好評を博し、前年のニンジャマンでも採用されていた“変身前の顔→変身後の顔”チェンジギミックが内蔵されていて、吾郎の顔がボタン1つでオーレッドの顔になるという試みがなされていた。
つまり、吾郎の生首の下に逆さま後ろ向きのオーレッドの生首をくっつけて、その中間に回転軸を仕込むことで、首の付け根から回転させるというギミックが仕込まれているのだ。
背中にあるスイッチを押すと、胸がカパッと開いて吾郎の首とオーレッドの首が入れ替わるというわけだ。
この胸が開くというのがくせ者で、胸が開くためのヒンジを仕込んだために上半身のボリュームが凄いことになってしまった。
無論、男女同じ体型をしているわけで、どれくらい凄いかというと、男のボディビルダーがオーピンクの衣装を無理矢理着込んだ姿を想像してもらうと分かりやすい。
名乗り
「オーレッド!」
「オーグリーン!」
「オーブルー!」
「オーイエロー!」
「オーピンク!」
「超力戦隊! オーレンジャー!」
「オーレ!」
というのが基本パターン。
大抵は個人の名乗りは省略されている。
なお、キングレンジャーは「キングレンジャー!」と1人だけで名乗る。
武器
標準装備は、左腰のホルスターに入った特殊警棒:バトルスティックと、右腰のホルスターに入ったビームガン:キングブラスター。
キングブラスターの銃身上部を起こして前に伸ばし、縮めたバトルスティックを装着すると、強力銃:キングスマッシャーになる。
また、ゴーグルの前に手をかざすと、個人武器であるスターライザー、スクエアクラッシャー、デルタトンファ、ツインバトン、サークルディフェンサーがゴーグル部から出現し、それらにエネルギーを集中させることで必殺技を繰り出すことができる。
キングスマッシャーにこれら個人武器を合体させると、初期必殺武器ビッグバンバスターになる。
その後、ビッグバンバスターのエネルギーを吸収してしまうマシン獣に対抗するため、巨大な車輪の中にオーレッドが乗り込んで車輪ごと体当たりする新必殺武器ジャイアントローラーが登場した。
これは、スカイフェニックスから投下されるユニットの内部にレッドが乗り込んで、そのまま高速回転させた車輪を打ち出してローラーごと爆発させるという質量兵器で、基本的にレッドしか使用できない。
というのは、操縦だけならレッドでなくても可能らしいのだが、激突の後の脱出が非常に難しく、脱出の技術はレッドしか持っていないからだ。
ブルーが無理矢理使ったことがあるが、脱出に失敗して自分も大きなダメージを受けていた。
もう1つの問題点として、使用者以外は発射台を囲んでいるだけというのがある。
はっきり言ってレッドだけいればいい武器だった。
そして、巨大バズーカ:オーレバズーカの登場に伴い、ジャイアントローラーは使われなくなる。
まさか、毎回自爆させてるもんだから作る予算がなくなったか?
オーレバズーカは、25話『お祭り一発勝負』で、何の前置きもなく登場したもので、どこかから現れた巨大なバズーカに、5人がそれぞれゴーグルと同じマークのハイパーストレージクリスタルをセットすることで稼動し、強力なエネルギー弾を撃ち出す武器で、後期はこれが標準の必殺武器となっている。
セットされるハイパーストレージクリスタルがどういうものであるのかは語られていないが、ブレスに付いている小さなクリスタルでさえ二度と作ることができないのだから、代替品や新造品とは考えられず、何らかの方法でブレスのクリスタルを巨大化させたものだと思われる。
なお、このほかに肉弾系の必殺技として超力ダイナマイトアタックがある。
これは、5人それぞれが象徴の遺跡のビジョンをバックに縦回転を続けて光の玉になり、合体した巨大なエネルギー球が敵を撃破するという『ダイナマン』のスーパーダイナマイトの流れを組む体当たり技だ。
オーレバズーカより先に登場したが、特に破られることもなく時たま使用され、最終決戦でカイザーブルドントにダメージを与えたのもこの技だった。
一応書いておくと、このほかに25話限定でビッグバン掃除機というのがあり、バラハングリーの出したカビを吸い取っている。
ご丁寧にビッグバンバスターと同じフォーメーションで掃除機のノズルを構えているのでかなり笑える。
なお、キングレンジャーは、変身前から持っている杖型の武器:キングスティックのみが固定装備で、変身後もホルスター等はない。
キングスティックは、頭の部分にリキの紋章(王)の飾りが付いており、必殺技:キングビクトリーフラッシュを使用する際には、この紋章が左右に割れて衝撃波の発射口が表れる。
また、スティックの中間部分に付いている飾りは、杖の先端に移動することができ、刃として機能する。
『オーレンジャー』では、通常装備を“右腰に銃、左腰に剣”という『ジェットマン』のスタイルに戻した。
バトルスティックは剣ではなく棒ではあるが、作中での使われ方は剣のそれと変わらなかったように見受けられる。
また、バトルスティックとキングブラスターを合体させると強力銃キングスマッシャーになるという設定も、ジェットマンのジェットハンドカノンを彷彿とさせる。
少し違うのは、キングスマッシャーに5人の個人武器を合体させることで必殺武器を完成させたという点だ。
個人武器5つを合体させての必殺武器には、『ジュウレンジャー』のハウリングキャノンという先駆があったが、ビッグバンバスターの場合、個人武器合体による必殺武器という面と同時に通常装備のパワーアップバージョンという側面をも持っている点が目新しい。
このビッグバンバスターは、個人武器のレンジャーアイテムセットとキングブラスターセット両方を買わないと再現できない武器であり、複数のアイテムを無理なくリンクさせる良い方法だったと言えるだろう。
2つ目の必殺武器となったジャイアントローラーは、車輪を回転させて発射するという、いわばボウリング系の遊びに使えるようなオモチャが発売されていたが、本編中での扱い方が難しかったのか、あっと言う間に使われなくなってしまった。
そして、恒例とも言えるバズーカ型必殺武器:オーレバズーカが登場する。
上でも書いたとおり、オーレバズーカには開発経緯、転送方法、破壊力などの説明が全くなく、どうしてジャイアントローラーや超力ダイナマイトアタックがあるのにオーレバズーカが必要なのかさっぱり分からないままの登場となったため、何だかインパクトが弱かった。
当然、商品も出ているのだが、上記のバトルコクピットと違い、ブレスに付属しているストレージクリスタルを使用するわけではないため、わざわざ同型のクリスタルをセットするというシステム・演出には首を傾げざるを得ない。
恐らくは『ダイレンジャー』の気力バズーカに装填される巨大な天宝来来の球を継承したつもりだと思うのだが、それならせめてクリスタルが巨大化していることを画面上で触れてほしかった。
天宝来来の球は、弾丸として発射されるから巨大になっても許せるのであって、単なる飾りでしかないハイパーストレージクリスタルなど、まったく意味がないのだ。
商品展開として考えるなら、ブレス付属のストレージクリスタルに合わせて、ハイパーストレージクリスタルを1個にし、商品展開をリンクさせるべきだったろう。
移動装備
5人それぞれに専用のバイク:レッドジェッター〜ピンクジェッターが与えられている。
それぞれカウルの先端にゴーグルと同じマークが描かれており、マーク部分からライトの光が出るようになっており、現場への急行時のほか、パトロールなどにも使用され、
変身しない状態でもこれに乗っている。
また、5人全員がバイクに乗っているのは、2003年現在、『オーレンジャー』が最後である。
これ以後、バイクに乗らない戦隊が多くなり、乗っても1人だけになってしまった。
ロボット・メカニック
サンダーウイング
U.A.で一般に使用されている戦闘機だが、超力戦隊に配備されている3機には、超力を利用した特殊銃:超力砲が搭載されているほか、吾郎の乗る機体にはレッドジェッターの収納スペースもある。
吾郎が1人で乗るほか、昌平と樹里、裕司と桃がペアで乗る。
超力モビルで飛べるのがスカイフェニックスだけであるため、初期は重要な航空戦力だった。
ほかの巨大メカを差し置いて、EDで「テイクオフ、テイクオフ、サンダーウイング」 と歌われていることからも、その重要性が分かろうというものだ。
オーレンジャーロボ
スカイフェニックス(レッド搭乗:背面・基本頭部)、グランタウラス(グリーン搭乗:腰部・大腿部)、ダッシュレオン(ブルー搭乗:胸部・両腕)、ドグランダー(イエロー搭乗:左脚部)、モアローダー(ピンク搭乗:右脚部)の5台の超力モビルが「超力合体!」して完成する巨大ロボ。
三浦参謀長がバラブレインに捕らわれたため、吾郎達の手によって完成した。
登場初期は、合体シークエンスも丁寧に見せており、ドグランダーとモアローダーが膝下に変形する際「ボトムモードに変形」、グランタウラスが腰部・大腿部に変形する際に「ミドルモードに変形」、ダッシュレオンが胸と両腕に変形する際、「アームモードに変形」と言った台詞が入り、最後にスカイフェニックスが「ヘッドモード、チェンジ。入射角良し!」と言いながら接近するという画面構成になっていた。
必殺技はスーパークラウンソードを使用したクラウンファイナルクラッシュ。
基本的に「超力モビル発進!」の声で超力モビルが発進するが、オーレンジャーロボに合体した状態でも発進可能。
超力モビルが発進する際は、チャリオットフォーメーションといって、グランタウラスがドグランダーを、ダッシュレオンがモアローダーを牽引して出撃する。
合体の際にそれぞれのモビルから外れたパーツがオーレンジャーロボの基本頭部の上にヘルメットのように被る形になっている。
「ヘッドチェンジ」と呼ばれるシステムで、それぞれの頭部に応じて能力が変わり、メイン操縦席に座る者も変わる。
それぞれの能力は
- ウイングヘッド:スカイフェニックスのパーツを被ったノーマルな状態で、この状態でしかスーパークラウンソードは使えない。レッド操縦だが、レッドパンチャー登場後はグリーンが操縦。
- ホーンヘッド:腰部のグランタウラスの頭部を被った状態でグリーン操縦。普段より強力なパワーを発揮でき、得意技は頭突き:タウラスダイブ。
- グラビティヘッド:ダッシュレオンのパーツを被った状態でブルー操縦。頭部から重力光線:超力レオンビームを放つ。
- バルカンヘッド:ドグランダーのパーツを被った状態でイエロー操縦。頭部からドグバルカンを発射する。
- キャノンヘッド:モアローダーのパーツを被った状態でピンク操縦。頭部からモアキャノンを発射する。
となっている。
レッドパンチャー
2年前に三浦参謀長が制作していた巨大ロボで、バラノイアの先遣隊を発見した際は未完成だったのだが、桐野中尉が三浦の制止を振り切って発進させた挙げ句、制御不能になって墜落し、行方不明になってしまっていた。
その時点で既にオーレンジャーロボとの合体プログラムが搭載されているなど、三浦の計画性が表れている。
三浦は、勝手に出撃したとは言え、可愛い部下を死なせてしまったことを深く悔やみ、レッドパンチャーを発掘せずに埋もれさせておこうと考え、吾郎達にもその存在を教えていなかった。
「レッドパンチャー発進!」の声で、超力基地の巨大大砲から射出される。
顔は、オーレッドと同じように、星形ゴーグルになっている。
ボクサーロボであり、得意技は空中から両拳のパンチを加えるマグナパンチャーと、両下腕から連続発射されるパンチャーガトリング。
パンチャーガトリングのシーンでは、ミニチュア使用の際は両手が伸縮するのだが、着ぐるみ使用の撮影では両手を交互に前に突き出すだけであり、違和感が結構ある。
吾郎は、レッドパンチャーを使いこなすために昌平からボクシングの特訓を受けていた。
だったら、最初から昌平を乗せてやればいいのに。
なお、桐野中尉役は、『ファイブマン』ファイブブルー:星川健役の信達谷圭(しんだつや・けい)氏。
バスターオーレンジャーロボ
オーレンジャーロボとレッドパンチャーが「超砲撃合体!」することで完成する超巨大ロボ。
ウイングヘッドを外したオーレンジャーロボとレッドパンチャーが背中合わせになり、レッドパンチャーが腿を伸ばし、背面に回したレッドパンチャーの腕がオーレンジャーロボの肩の上を通って砲門になる。
この際、オーレンジャーロボの基本頭部には、レッドパンチャーの頭部が(前後逆に)ヘルメットとして合体する。
必殺技は両肩の砲門から強力なエネルギー弾を連続発射するビッグキャノンバースト。
レッドパンチャーから外れて行方不明になっていた合体プログラム回路の争奪戦になり、バラマジロが回路を破壊したとき、その爆風を浴びた吾郎の背中にプログラムが文字となって浮かぶ。
このときの、背中を見せてべらんめえ口調で喋る吾郎は爆笑モノ。
ブロッカーロボ
レッドブロッカー〜ピンクブロッカーの5体のロボット。
それぞれオーレンジャーが乗り込んで操縦するが、ストレージクリスタルは使用しない。
1度に複数のマシン獣が出現する事態に備えて三浦が極秘に開発していた。
それぞれ胸の部分に、乗っているオーレンジャーの色で、マークが入っている。
レッドパンチャー同様、巨大大砲から射出される。
キングブラスターやスターライザーなど、オーレンジャーが使用する手持ち武器の大型版をそれぞれ使用できる。
オーブロッカー
レッドブロッカー(胸部・腹部)、グリーンブロッカー(脛部)、ブルーブロッカー(腰部・大腿部)、イエローブロッカー(頭部・肩部・両腕)、ピンクブロッカー(両足首)が「超重合体!」して完成する巨大ロボ。
5人の心が最高の状態で1つにならなければ合体できないため、吾郎達は兜割りの特訓をさせられた。
ただし、基地内で合体状態で収納されていることも多く、その場合、巨大大砲から射出して発進する。
オーブロッカーは、ストレージクリスタルをセットしなくても行動できる。
設定を見ると、動力源に超力を使っておらず、5人の心を1つにするというのは、それを補うために付加される条件だったらしい。
必殺技は、両手にエネルギーを集めて作った2本の剣:ツインブロッケンソードの刀身を合わせ、そこから発するエネルギーを刃として敵を斬るツインブロッケンクラッシュ。
また、タックルボーイとの共同技であるダイナマイトタックルも必殺技となっている。
タックルボーイ
三浦が密かに開発していたオーブロッカー用の武器ロボット。
タイヤの円周部から頭部・手・足が生えているような体型をしており、手足を収納してホイール形態(タイヤ)に変形する。
巨大大砲からホイール形態で射出されて、地面を走行して出撃する。
オーブロッカーがボウリングよろしくホイール形態のタックルボーイを敵に投げ、途中でロボ形態に変形したタックルボーイが赤熱して敵に体当たりするダイナマイトタックル用にしか使われない。
キングピラミッダー
パンゲア文明が作り上げた機動要塞。
リキの召還に応じて出現するが、普段リキ達の家としても使われているらしい。
その内部には“禁断の部屋”という領域があり、そこには手にした者をバーサーカーにしてしまう剣が安置されている。
キングピラミッダーには、通常のピラミッドフォーメーション、超力モビルとレッドパンチャーを載せて疾走するキャリアフォーメーション、人型に変形するバトルフォーメーションの3形態があり、バトルフォーメーション時には、背面から超力モビルまたはオーブロッカーを収納し、腕を砲門状に変形させたレッドパンチャーを背面上部に載せることができ、全身から強力なエネルギー弾を連射する必殺技:スーパーレジェンドビームを発射できるようになる。
ピラミッドフォーメーションの際は、頂上部からエネルギーを発して地面を走らせるスーパーバーンウェ−ブを武器とする。
本来超力モビルなどオーレンジャーのメカとキングピラミッダーは設計者も設計思想も違うわけで、収納や合体が可能なわけはないのだが、初めてバトルフォーメーションになった際には、それぞれのメカのモニターにリキのマークが表示されている。
そのときに三浦もまた驚いていることから、オーレンジャーロボなどの設計上では予定されていない事態であることは確実であり、超力を使用したメカ同士であるために起きたハプニングの類であろうと思われる。
バトルフォーメーションには、オーブロッカーをそのまま収納する合体パターンもあるが、超力を使っていないはずのオーブロッカーがどうして合体できるのかよく分からない。
オーレンジャーロボに合体する超力モビルには、チャリオットフォーメーションという移動形態がある。
これは、前々作『ダイレンジャー』までの伝統である“巨大ロボ以外の合体形態”を継承したものと思われるが、残念ながら、単なる出撃時の形態以上の意味を持たせることはできなかった。
それどころか、ドグランダーとモアローダーは自走することすらできないという印象を与える結果となってしまい、残念なことこの上ない。
また、最大の特徴であるヘッドチェンジシステムも、バスターオーレンジャーロボになることで完全に意味を失ってしまった。
このオーレンジャーロボから、オモチャに付属する剣のエッジがなくなり、剣の縁を不格好な板状カバーが覆うという安全措置を取るようになった。
オーブロッカーのツインブロッケンソードでは、メッキすらされなくなり、黄色の軟質樹脂製に材質が変更されている。
恐らくツインブロッケンソードが妙に短いのも安全面を考えてのものだろう。
全てはPL法のせいだ。
2台目ロボのレッドパンチャーは、電動で両腕がピストン運動するというギミック(左右同時と互い違い伸縮の2パターン)ができ、バスターオーレンジャーロボやキングピラミッダー合体時用としてそれなりに見栄えがしたが、その反面、電池などを内蔵するためにボディを変形させられなくなってしまい、バスターオーレンジャーロボ合体の際には足を伸ばして手を上後方に上げるだけ、キングピラミッダー合体時は立っているだけと、合体ギミックを犠牲にしており、バスターオーレンジャーロボは、着ぐるみ・オモチャ共に格好悪かった。
続いて登場するオーブロッカーは、5つのロボがブロック状に変形して合体するという方式になっている。
余剰パーツが出ない完全変形がウリだったようだが、その分、背中を見るとブロッカーロボの腕が露出しているのが見えたり、単体時、イエローブロッカーの背後にオーブロッカーの頭部がぶら下がっていたりする。
また、隠大将軍に続き、レッドの搭乗機が頭部になっていないが、これは左右に分かれるパーツ分解しやすいマークとして、〓が使いやすかったからだろう。
車輪を転がすと人型に変形するタックルボーイは、ニンジャマンで好評だったワンタッチ変形の後継を狙ったのだろう。
ホイール形態にして転がすとロボ形態に変形するのだが、個人的には、ギミック的にも番組内での扱いも面白いものとは思えなかった。
もっとも、このギミックが気に入っている人というのも結構いるらしい。
久々の要塞ロボ:キングピラミッダーは、基本的に“載せる&収納する”しかできないため、プレイバリューに乏しく、鷹羽の友人の間ではキング棚ダッターと呼ばれていた。
これら巨大ロボットが次々と出てくる背景には、の問題点は、前作の獣将ファイターで“たとえ激しいアクションができても、変形合体しない巨大ロボは商品としてまずい”ことに気付いたスポンサーサイドからの“ギミックを持った巨大ロボを沢山出せ”という指令によるものだと思われる。
下に書いたガンマジンも、神面岩の額に鍵を入れて回すと、石が中央から開いて、縮めていた手足が伸びるというワンタッチ変形ギミックの商品だった。
その他の人々
第3勢力:ガンマジン
人の顔のような形をした神面岩と鍵の状態で眠っており、神面岩の額の部分に鍵を差し込んで「ガンマ・ガンマ・ドンドコガンマ」と呪文を唱えると、神面岩の顔が左右に割れて中からガンマジンが頭部・手足を伸ばしつつ巨大化して現れる。
この際、 神面岩の部分はマントとして背後に残っている。
別段封印されているわけでもなく、また、自分を呼びだした相手を「ご主人様」と呼ぶが、元々ランプの精のようなものなのか、大昔に誰かが作った機械生命体の類なのかは分からない。
鍵を差し込んで呪文を唱えた者の願いを1つ叶えると、元の神面岩に戻ってどこかへと飛んでいくのだが、この願いがなかなか難しい。
ガンマジンの願いのルールは、「自分が気に入らない願い以外は何でも叶えるが、途中で願いの取り消しや変更は受けない」という形であり、願いの主が鍵を失うと神面岩に戻ってしまう。
また、「町を破壊しろ」といった明らかに悪辣な行動に関しては「悪いことはしない」と突っぱねるのだが、手段には拘らないため、「オーブロッカーに乗りたい」という子供の願いを叶えるために裕司を捕まえて「オーブロッカーを渡せ」と迫り、出撃したオーブロッカーを動けなくして奪おうとするなど、はた迷惑なところがある。
また、人のいいところがあるため、ブルドントが「オーブロッカーに乗りたい」 と言ったのを真に受けてしまうなど、騙されて利用されることもある。
お化けが苦手で、お化けを見ると、願いを放り出して神面岩に戻ってしまう弱点がある。
武器はマジンサーベルで、魔神一刀流という技を使う。
本編では一之太刀〜七之太刀までを1回ずつ使っている(つまり、全部で7回しか技を使っていない)。
声は流竜馬やひびき晄で有名な神谷明氏。
被害者代表:豊の父
妻と長女、長男(豊)とマイホームで暮らしている普通(?)のサラリーマン。
25話『お祭り一発勝負』で初登場し、バラグースカが食べた特上生寿司100人前の代金(1人前3千円として30万円相当!)を払わされ、吾郎に「弁償は期待できないでしょう」と言われたことに始まり、時たま登場してはバラノイアの作戦でひどい目に遭い続け、とうとう40話「出現!謎の姫!!」でマイホームを壊されてしまった。
オーレンジャーに実質絡むのは豊なのに、なぜかお父さんの方が目立つのは、やはり役者によるところが大きいだろう。
演じるは、『歌う! 大竜宮城』で亀を演じ、『踊る大捜査線』で湾岸署副署長を演じた斉藤暁氏。
氏は、後に『電磁戦隊メガレンジャー』で久保田博士を演じることになる。
一般市民(?)代表:辺名 小太郎(へんな・こたろう)博士
豊の知り合いの科学者。
バラハングリーを分解しようとした経験から、壊れているバラグースカをゼンマイ仕掛けで動くように改造したところを見ると、それなりの頭は持っているようだ。
ネーミングの由来は「変な博士」。
1回きりのゲストかと思ったら、再登場したので驚いた。
敵組織:マシン帝国バラノイア
首領:皇帝バッカスフンド
マシン帝国バラノイアの皇帝で、メカは不滅だと生物をバカにした態度を取る傲慢な性格。
ただし、皇妃ヒステリアにはなぜか弱い。
5体の超マシン獣を使っての分散攻撃作戦をブロッカーロボに妨害され、自らスペースメタルの剣で挑むが、オーブロッカーのツインブロッケンクラッシュの前に散る。
頭部だけで他の惑星に逃げ延びており、ボンバー・ザ・グレートにバラバラにされたブルドントを最後の力で強化修理して機能停止した。
声の出演は、『バトルフィーバー』〜『ダイナマン』、『ジュウレンジャー』のナレーションやハクション大魔王の声で有名な大平透氏。
簒奪者:ボンバー・ザ・グレート
かつてバッカスフンドが作り上げたマシン獣の1体だが、反乱を起こして破れ、処刑寸前に逃走していた。
バッカスフンドの死を知ってバラノイアを乗っ取るべく戻ってきてブルドントを倒し、力でバラノイア帝国を奪い取ったが、マルチーワ、カイザーブルドントの出現により敗北・改造され、対オーレンジャー用のマシン獣になってしまった。
さらに、スーパーレジェンドビームに敗れた後は、巨大爆弾となって太陽に向かって発射されたが、ガンマジンによって軌道を変えられ、太陽付近のどこかで爆発して果てた。
声の出演は、『ダイレンジャー』神風大将、『カクレンジャー』イッタンモメンに続いて3作連続登場の檜山修之氏。
大幹部(3代目首領):皇子ブルドント→カイザーブルドント
バッカスフンドの息子で、バカ皇子丸出しだったが、ボンバー・ザ・グレートに簒奪されたことが余程悔しかったのか、強化改造されてからは冷酷な性格になった。
その分、バカがマルチーワとの会話に溢れたのか、マルチーワを「マルピー」と呼んで、大変なバカップルぶりを発揮する。
半年にわたって地球を支配した実績の持ち主だが、最期はマルチーワと共に爆死した。
声の出演は、成長前・成長後とも『Gガンダム』のドモン・カッシュ役の関智一氏。
皇子の頃は甲高い声だったため、氏は当時、 ドモンのファンから「機械を使って声を変えてまであんな役やらないで!」と言われたらしい。
それに対する氏の返事は、「あれは自分で作り声を出しているだけで、機械なんか使っていない」というものだった。
大幹部:皇妃ヒステリア→皇太后ヒステリア
バッカスフンドの妻で、冷酷だがかなりのヒステリー持ち。
ブルドントがボンバー・ザ・グレートに破れた後、ブルドントの残骸と共に宇宙に追放されたが、誘導電波によりバッカスフンドのいる秘密基地に到着。
ブルドントが強化改造を受けている間に、自分の全エネルギーを与えてマルチーワを蘇らせた。
その後は、ボディが金色からくすんだ銀褐色に変化し、動きも少々ギクシャクしている。
最期には、孫の助命をオーレンジャーに頼んで自爆した。
声は『キン肉マン』ミート役などの松島みのり氏。
大幹部:皇妃マルチーワ
ヒステリアの姪であり、必要な時が来るまで眠りに就いていた。
ヒステリアによって眠りを覚まされると共に、その全エネルギーを与えられ、強力なマシン獣として復活した。
武器は、剣にも弓にもなるマルチアローで、他に全身を火球にして体当たりする攻撃が得意。
カイザーブルドントと結婚し、子供を産んだ。
カイザーブルドントを「ブルピー」と呼ぶ。
声は、後に『ゴーゴーファイブ』で大魔女グランディーヌを演じる山田美穂氏。
幹部:侍従アチャ
お調子者の侍従で、人類に対してのスポークスマンの役割も果たしている。
日和見主義で、ボンバー・ザ・グレートに従ってブルドントやヒステリアを追放したり、カイザーブルドントの配下に戻ったりし、バラノイア壊滅後も何とかして生き残ろうとしていた。
声はスネ夫で有名な肝付兼太氏。
幹部:侍従コチャ
アチャの肩に乗っている小型ロボで、アチャとは凸凹コンビ。
主な役割はマシン獣を巨大化させること。
アチャと共に生き残った。
声は『魔動王グランゾート』 ラビ役などの安達忍氏。
怪人:マシン獣
バラ○○という名称の戦闘用ロボット。
この作品では、バッカスフンドも含め、全ての機械生命体達の総称がマシン獣なのだが、特に戦闘用のロボを指して「マシン獣」と呼ぶことが多いようだ。
1体ずつ製造され、何らかの特殊能力を与えられているが、中にはスクラップの中から勝手に生まれたバラリベンジャーのような存在もいる。
なお、劇場版に登場した数体のマシン獣の名前が「バラ○○」でなく、しかもそのうちの1体:ジャグチャックが改造されてバラジャグチになったことから考えると、バラノイア内部では「バラ○○」の名称を与えられる基準があると見るべきだろう。
戦闘員:バーロ兵
工場で大量生産される機械兵。
『サンバルカン』のマシンマンや『バイオマン』のメカクローン、『ライブマン』のジンマーの流れを組むロボット兵士だが、そのしぶとさはジンマーほどではない。
ロボットのくせに中腰の姿勢で動き、ゴリラのように胸を叩いて威嚇する。
電撃を発する棒を武器にしているほか、顔面のカバーを開いて、中の目から破壊光線を出したり、歯車型のカッターを発射することもできる。
非常に頑丈で、通常の武器ではほとんど破壊できない。
反面、知能は低く、命令されたことには疑問を抱かずに行動するため、アチャの命令でヒステリアを袋叩きにしたりもしている。
バラノイアは、月に秘密基地を建設し、大型母艦バラクティカと、8本足の小型空陸戦闘機タコンパスをもって全世界の主要都市を破壊し尽くし、無条件降伏を勧告した機械生命体の軍団だ。
実は、6億年前に戦いに敗れて地球から逃走したバッカスフンドが、バラノイア星で作り上げた集団だったわけだが、それを誰にも(ヒステリアにすら)教えずに知らん顔で地球を侵略しに来たということは、バッカスフンドとしては意趣返しのつもりだったのかもしれない。
文明が代替わりしたころにやってきて、その世界を滅ぼして溜飲を下げようとしたのだとすれば、バッカスフンドもとんでもない小心者である。
なお、メイン4人の名前はなぜか犬の種類をもじったものであり、バッカスフンド→ダックスフンド、ヒステリア→ヒステリー+テリア、ブルドント→ブルドッグ、マルチーワ→マルチーズとなっている。
マルチーワに関しては、マルチーズ+チワワではないかという説もあるが、ほかに2種類の犬の名前を合成したキャラがいないため、鷹羽は支持しない。
巨大化
オーレンジャーロボに対抗するため、バッカスフンドはマシン獣を巨大化させる光線を開発し、発射装置をコチャに内蔵させ、それに伴ってアチャも腕力を強化されることになった。
マシン獣が破れると、アチャとコチャが出向き、コチャが頭部・両腕を引っ込め、アチャがそれをハンマー投げのようにマシン獣の残骸のところまで投げ飛ばす。
マシン獣のところまで行ったコチャは、元の形に戻り、「大きくなってね」と言いながら口からのビーム、次いで胸からのビームでマシン獣を巨大化再生させ、自分はそのビームの反動でアチャの元に戻る。
なお、この際の「大きくなってね」は、アフレコの際、スタッフから「何か呪文のようなものをお願いします」と言われたコチャ役の安達氏が「呪文なんて思いつかないよぉ」とアドリブで言ったものだったそうな。
真実の物語
6億年前、地球には、先住人類がパンゲア文明と呼ばれる高度な文明を築いていた。
彼らはドリンという妖精のような存在を多数飼育していたが、やがて彼らが生み出した機械生命体:マシン獣の反乱により、多くのドリンが殺されていった。
彼らはマシン獣に対抗するために戦士リキにキングブレスを与える。
ブレスの力でキングレンジャーとなったリキの活躍により、マシン獣軍団は滅ぼされた。
だが、唯一人逃げのびたマシン獣バッカスフンドが6億年後に再び襲来することを予知した先住人類は、生き残ったドリンのうちの1人とリキをキングピラミッダーに乗せて異空間で眠りに就かせ、それらと戦わせることにした。
一方、逃走したバッカスフンドは、バラノイア星でヒステリアやブルドントをはじめとするマシン獣軍団を製造し、マシン帝国バラノイアを築き上げて力を蓄え始めた。
そして1996年、U.A.の三浦大佐は、日本で発見されたパンゲア文明の遺跡を発掘し、それらからキングレンジャーとマシン獣の戦いの記録を発見したほか、超力を合成する方程式を解明することに成功し、世界各国から莫大な予算を集めて遺跡の上に超力基地を建設すると共に、遺跡から入手した5つのストレージクリスタルを使って超力を利用した新兵器を作り始める。
1年かけてレッドパンチャーが完成間近になったころ、バラノイアの先遣隊が地球に襲来、焦った桐野中尉は、制御系が未完成なままのレッドパンチャーで無理矢理出撃し、レッドパンチャーごと地底に埋もれてしまった。
桐野を死なせてしまった後悔から、三浦はレッドパンチャーの発掘・完成を断念し、U.A.の標準戦闘機であるサンダーウイングに装備可能な超力砲や、強化スーツ、超力モビルの開発を開始する。
そして1999年、遂に本格的に侵略を開始したバラノイアに対し、三浦は超力戦隊オーレンジャーを組織して対抗することとなった。
ラストへの流れ
バッカスフンドが最後の力を振り絞って強化再生したカイザーブルドントと、ヒステリアがその全エネルギーを与えて甦らせたマルチーワ。
2人の出現によって、バラノイアは組織再編を遂げ、遂にオーレンジャーに対して最後の戦いを仕掛けてきた。
バラミクロンの発する暗黒素粒子によって全ての機械が機能を狂わされ、東京は壊滅的な被害を被る。
バラミクロンを倒すべく出動したオーブロッカーとレッドパンチャーだったが暗黒素粒子によって機能を止められ、オーレンジャーの変身も解けてしまった。
これこそがカイザーブルドントの目的であり、捕獲したオーブロッカーのコンピュータから超力基地の在処を読み取ったバラノイアは、超力基地を総攻撃する。
勝機なしと見た三浦は、残ったオーレンジャーロボとタックルボーイを地下に隠し、がれきの下に消えた。
バラノイアに囲まれた吾郎達は、キングレンジャーに救われてキングピラミッダーに乗せられたものの、キングピラミッダーも暗黒素粒子の前に機能を停止し、キングレンジャーもまた変身能力を奪われてしまう。
絶体絶命のピンチに、ドリンの祈りに応えて“超力の故郷”からピラミッド型のクリスタルが飛来し、キングピラミッダーの機能を復活させ、バラミクロンも消滅させた。
吾郎達5人は、キングピラミッダーで“超力の故郷”へと送られるが、カイザーブルドントの張り巡らせた魔空間に引きずり込まれてしまう。
そして、ドリンがマルチーワの矢を受けて消滅してしまったことにより、地球から全ての超力が消え、自然も枯れていき、青い地球は赤茶色に変わり果ててしまった。
一方、キングピラミッダーは、ドリンの力に導かれて魔空間から脱出し、“超力の故郷”へと到着した。
そこには数多くのドリンがおり、傷を癒すため地球から戻っていたドリンも傷ついた身体を横たえていた。
だが、ダメージは深く、傷が癒えるには当分掛かるため、その間はオーレンジャーが地球を守らなければならない。
ドリンは、吾郎達に「5人の心が1つになれば、愛の力で超力が蘇る」と教えて再び地球へと送り返す。
魔空間に引き込まれた影響で、吾郎達が地球に戻った時には既に半年が過ぎており、地球はバラノイアに占領され、三浦やリキがレジスタンスとして戦い続けていた。
そんな中、吾郎達の帰還を知ったカイザーブルドントとマルチーワは、レジスタンスのアジトを襲う。
戦いの中、愛の心で超力を取り戻した5人は、オーレンジャーの姿に戻ることができ、それに呼応して超力基地地下の遺跡やリキも超力を取り戻した。
オーレンジャーは、赤ん坊を人質に変身を解くよう迫るカイザーブルドントとマルチーワから、生身のままで赤ん坊を取り戻し、超力ダイナマイトアタックで2人を吹き飛ばす。
そして、巨大化した2人に対し、超力に導かれて発進したオーレンジャーロボで立ち向かうオーレンジャーだったが、まるで歯が立たない。
三浦は、2人を倒すにはオーブロッカーを使うしかないと考え、キングレンジャーと共にバラノイアの地上宮殿に潜入して、特殊合金の扉で閉ざされた格納庫に収納されたオーブロッカーとレッドパンチャーを発見するが、仕掛けられていた罠でキングレンジャーも身動きが取れなくなり、扉を破ることができない。
そのとき、ガンマジンの神面岩が飛来した。
三浦はガンマジンを呼び出し、扉を破壊してもらう。
キングレンジャーの操縦するオーブロッカー、レッドパンチャー、そしてタックルボーイの参戦で形勢は逆転し、カイザーブルドントとマルチーワは、キングピラミッダーのスーパーレジェンドビームの前に砕け散った。
2人の敗れる様を見ていた皇太后ヒステリアは、宮殿に乗り込んだオーレンジャーに孫の助命を願い出て、自らは自爆した。
マシンであるヒステリアの心にも愛があったことに驚いた吾郎は、その遺言を守ってガンマジンにカイザーブルドントらの子供とアチャ・コチャを委ね、破壊された地球の自然を復活させるという新たな目標のために戦う決意を固めるのだった。
そして、その足下には、ガンマジンの鍵が光っていた…。
傾向と対策
シリーズ17作目となった『オーレンジャー』は、シリーズの1つのターニングポイントとも言える作品だ。
これにはいくつか理由があるのだが、最も大きなものは、この作品がシリーズの定義をねじ曲げてしまったことだろう。
言うまでもなくシリーズを『秘密戦隊ゴレンジャー』から数えるようになったことだ。
宮内洋氏の出演、顔がゴーグル部分の形状によって特徴付けられているデザインライン、そのゴーグル部から同じ形状の個人武器が出現すること、選ばれたエリート軍人による特殊部隊であるという設定、当初はシリアスな物語展開をしておきながらいつの間にかギャグ化していることなどなど、『ゴレンジャー』との共通点は多い。
『ゴレンジャー』から数えて20年になることを、どこまで狙っていたのかははっきりしないのだが、春の『東映ヒーローフェア』で公開された劇場版では、“スーパー戦隊20周年記念”という冠が付いているわけで、昭和50年放送開始の『ゴレンジャー』を意識しているのは明らかだ。
ひょっとすると、宮内氏をレギュラーに迎えたこと自体が『ゴレンジャー』に因んでのものだったのかもしれない。
ともあれ、前々作『ダイレンジャー』が「シリーズ15作目」を謳い文句にし、前作『カクレンジャー』の際のスーパー戦隊イベントで、歴代レッドがバトルジャパンから始まっていたことを考え併せると、「スーパー戦隊シリーズ」に『ゴレンジャー』が含められるようになったのはこの『オーレンジャー』からということで間違いないようだ。
また、後楽園遊園地の野外劇場では、平成8年1月に『復活! 伝説のヒーロー・ゴレンジャー』と題して、オーレンジャーとゴレンジャーが競演するステージをやっていた。
これらの状況証拠から逆算すると、制作当初から「20周年」という宣伝文句を付加するつもりがあったであろうことは想像に難くない。
まぁ、「シリーズ17作目」と言うよりは「シリーズ20周年記念作品」と銘打った方が押し出しが強いことは疑いないから、無理からぬことなのかもしれない。
『ダイナマン』以降の放送時間の短縮、『ターボレンジャー』からの時間移動、はたまた『ダイレンジャー』からの劇場版復活など、シリーズを取り巻く環境が変化していることもあり、ここらで勢いをつけたかったのだろう。
ただ、鷹羽の印象としては、あまり大々的に「『ゴレンジャー』から20年!」と謳ってはいなかったように感じる。
先に挙げた野外劇場でも、「馬鹿な! ゴレンジャーなど伝説に過ぎん」というような台詞が入っていた。
この辺の事情としては色々あるのだろうが、“かつて『ゴレンジャー』を見て育った世代が親になっている”という部分もその1つではないかと思われる。
ともあれ、『ゴレンジャー』を含めてしまったことについての是非はともかく、それなりに気合いを入れて作られたことは間違いないようだ。
前述の劇場版の上映時間が、『ダイレンジャー』『カクレンジャー』での30分から、40分に増やされたこと(通常のテレビ本編が実質17分程度なので2倍以上になっている)もその表れだ。
また、テレビ本編の構成としても
- いきなり全世界に宣戦布告する敵組織
- 1話にはレッドしか登場しない
- 巨大メカが6話で初登場
- 巨大ロボが7話で初登場
と、ちょっと見ただけでも特殊なのが分かる。
1話で全員が揃わないというのは、『ジェットマン』『カクレンジャー』でもやっていたが、「戦隊」なのに変身後のヒーローがたった1人しか登場しないなんて、かなり特異なことだ。
また、1台目の巨大ロボの初登場としては、『ギンガマン』と並んで最も遅い7話になっているが、これは本来巨大化戦に回す時間を“厳しい戦い”という世界観の描写に回したかったからだろう。
その分、オーレンジャーをとんでもなく強い戦士として描写しており、2話では、巨大なバラソーサーをビッグバンバスターで倒すという快挙を成し遂げてもいる。
この当時はバラノイアには巨大化システムがなかったため、バラソーサーは最初から巨大な姿で現れており、それだけに突然現れた5人組ごときにそれを破壊されたバッカスフンドの驚きが理解できるというものだ。
序盤戦の力の入れ方としては、サンダーウイングの発進シーンや、タコンパスの空中戦などにも表れている。
その辺のことは、九拾八式工房きっての航空機ふぇちのきっか氏が詳しいので、そちらに任せるが、ともかく世界規模の軍隊を空軍に限定する必要は全くないわけで、いささか逆説的ではあるが、サンダーウイングや整備員達を描くために国際空軍という組織の設定があるようにすら思える。
そして、バンク用としてではあるが、CGによるバーロ兵の集団やバラクティカの船団なども、当時としてはかなり綺麗にできている。
そのバラノイアは、シリーズで唯一、敵側に顔出しのレギュラーが1人もいない組織だ。
その分なのか、大平透、肝付兼太、松島みのり、神谷明などの大御所や、関智一、安達忍、檜山修之など当時アニメで人気のあった人が揃っている。
役者に払うギャラと声優に払うギャラでは、多分声優のギャラの方が安いのだろうが、海外輸出を念頭に置いて着ぐるみキャラばかりにしたであろう事情を考慮すると、せめて声優陣を豪華にしようという意図が窺われる。
ほかにも、スーパー戦隊シリーズの番外編的Vシネマ作品が作られるようになったのもこの作品からで、前作『カクレンジャー』、次作『カーレンジャー』それぞれとの共演作計2本が作られているわけで、40分の劇場版を合わせれば、かなり豪華なラインナップだ。
Vシネマ進出がどういう意図の下でなされたのかは不明だが、やはり力を入れていたからという理由が含まれていることは間違いあるまい。
もっとも、『オーレンジャー』は、バラノイアを恐怖の大王に引っ掛けたらしく時代設定が1999年であり、『カクレンジャー』『カーレンジャー』いずれも放送年を舞台にしているため、時代設定の違う2番組を無理矢理同時代のものとして扱っていたり、国際組織として有名なはずの国際空軍やオーレンジャーをカーレンジャーの面々が全く知らないなど、本編設定と齟齬する設定が多いので、鷹羽は、スーパー戦隊Vシネマシリーズについては、本編と関係のないファンサービス用番外編として扱うこととしている。
余談だが、『カーレンジャーvs』の方では、レッドレーサー:恭介が「U・A・O・H」を「うあおー」と読んでいる。
まぁ、気持ちは分かる。
さて、この『オーレンジャー』、企画時の名称が『古代戦隊ナゾレンジャー』だったりしたこともあったそうで、企画当初から古代文明の力を引き継いだ戦士という設定だったらしい。
その意味では、古代文明を象徴する宝石を頭部にいただいた『ゴーグルV』と似ている。
ただ実際にあった古代文明ではなく、架空の超古代文明の複数の王家の力をそれぞれ受け継ぐという形であり、「王」、「オーパーツ」と、Jリーグなどで一時期流行った「オーレ!」を引っかけて『オーレンジャー』に決まったらしい。
その後、更に変更が加えられ、5つの王家という設定が消えて「パンゲア文明」に統一された。
「パンゲア」というのは、地球の大陸が大昔は1つだったという説による最初の大陸なのだが、『オーレンジャー』の中では、単に“6億年前に栄えた文明”としてのみ触れられている。
おそらく、途中で登場したキングレンジャーのデザイン等には、「王家」という設定の名残が反映されているものと思われる。
「リキ」のマークが「王」である必然性などあるわけもなく、また、リキはパンゲア文明の王だったというわけでもないのだから、そのマークも名前も「王レンジャー」という一種のシャレなのだろう。
上でも書いたとおり、ちょうど「王」の字の各頂点を結ぶと6角形になるので、都合が良かったということもあるのかもしれない。
ともかく、こうして5つの超古代文明という予定が崩れて1つの文明になった時点で、「超力」という超エネルギーの設定が生まれたらしい。
その名残が、名乗りの際などに5人の背後に浮かぶ5つの遺跡や、超力モビルのデザインモチーフに見え隠れしているわけだ。
ピラミッド、ギリシャ風神殿(グランタウラスと引っ掛けて、ミノタウロスの地下迷宮がイメージだろう)、スフィンクス、遮光器土偶、モアイなどという企画者の頭を疑うような取り止めのないモチーフは、“誰が見ても古代遺跡を思わせるオブジェ”としてのみ機能していると言っていい。
結局、超力のイメージリーダーとしては、超力基地の地下で、5つの遺跡の上にそびえる白く輝くピラミッド(増幅装置)ということになったようで、最終回間際で地球から超力が失われ、その後復活した際にも、この白いピラミッドが輝きを失い、輝きを取り戻すという形で表現されていた。
ただし、番組内での「超力」のイメージがある程度確立していたかということになると、大失敗したと言わざるを得ない。
終盤に至って「超力」自体の定義までも揺らいでしまったからだ。
なんとドリンのお陰で保たれているエネルギーにされてしまったのだ。
たしかにドリンは、当初から妖精のような存在と説明されていたが、「ドリンは“超力の故郷”にいる」「ドリンがいなくなると地球の自然が滅ぶ」ということになると、たった1人のドリンが地球の命運を握っていることになる。
6億年前にマシン獣達に大量に殺されたドリン達はなんだったのか、“超力の故郷”にウジャウジャいるドリン達は、どうして地球のドリンが消えたとき代わりに来てくれなかったのか、そもそもどうして“超力の故郷”にドリンがいるのか、答の得られない疑問がラスト4話で大量発生してしまった。
実のところ、これらは脚本家による問題だと言っていい。
『オーレンジャー』は、大きく分けると
- 結成〜オーレンジャーロボ完成編 杉村 升
- レッドパンチャー登場〜超砲撃合体編 曽田博久
- キングレンジャー登場編 杉村 升
- オーブロッカー、タックルボーイ登場編 曽田博久
- ガンマジン登場〜カイザーブルドント登場編 杉村 升
- 最終回4部作 杉村 升
という流れになっており、全48話のうち27話がこれに当てはまる。
残り21話が単発話として、これらの合間に挟まっているわけだ。
前述のバラリベンジャー(15話)などもそういった単発話の1つだ。
そして、メインライターの杉村氏担当以外の回では、世界観や基本設定を無視している、もしくは知らないとしか思えないストーリー作りがなされていることもある。
曽田氏脚本の42話『戦隊公開処刑!!』などはその1つで、キングピラミッダーの項にあるとおり、禁断の部屋に収められた魔剣の話だが、何が悲しくてそんなものをわざわざキングピラミッダーに入れておくのか理解に苦しむ。
曽田脚本としては、20話『鉄拳100連発』でのパンチングミットを持ったオーレンジャーロボがレッドパンチャーのスパーリング相手を勤めているシーンや、22話『合体マル秘指令』(本来は○の中に秘)でのかけっこや跳び箱、エアロビクス、バスケットボールをするオーレンジャーロボとレッドパンチャーといったふぁんたじっくな映像も記憶にこびりついて離れない。
リキやドリン、キングピラミッダーの設定を忘れているとしか思えない。
ちなみに、レッドパンチャーの登場が、『マスクマン』ギャラクシーロボ登場のくだりに似ているのは、同じ曽田脚本によるものだからだろう。
なお、『オーレンジャー』が途中で大きく路線変更したように思える理由として、プロデューサー交代劇を挙げる人が多いらしい。
メインプロデューサーが吉川進氏から高寺成紀氏に変わったことにより、高寺氏が路線変更させてしまったとする説だ。
高寺氏が最初からメインプロデューサーになった『激走戦隊カーレンジャー』で、それまでのスーパー戦隊シリーズとうって変わった作品作りをしたことなどから言われている話のようだが、鷹羽はこの説には懐疑的だ。
はっきり断定できない理由は、プロデューサー交代がいつ行われたのか分からないからなのだが、鷹羽としては、いつ変わったにしても、当時の高寺氏にそれほどの発言力があったとは思えない。
理由の1つは、OPクレジットのスタッフリストの中での高寺氏のヒエラルキーだ。
『オーレンジャー』は、1話のOPクレジットの段階で、
吉川進、鈴木武幸、高寺成紀(東映)
と、3名列挙されているが、高寺氏は最後位にいるのだ。
途中で吉川氏や鈴木氏が降板したとして、直ちに高寺氏の発言力が大きくなるとも限らないし、高寺氏のプロフィール上は、『カーレンジャー』がメインプロデューサー初作品として扱われていて「l『オーレンジャー』途中から」とはなっていない。
こういう場合、その力を振るい始めたならば、たとえ作品途中からだったとしても、「『○○』途中から交代した××プロデューサーは…」という話がムック等にも載ると思うのだが。
また、『オーレンジャー』は、1クール末頃には既に11話『服従 愛の冷蔵庫』やら12話『爆発!! 赤ちゃん』などのバカな話が存在する。
制作スケジュール的に言えば、これらは放送開始直後くらいにはシナリオが書かれ始めているはずであり、これが高寺氏の影響による物とは考えがたい。
もし、これが高寺氏の発言力によるものだとするなら、何のことはない、途中で交代も何も、最初から高寺氏の意見で作られているということだ。
というわけで、鷹羽はその説を信じる気にはなれない。
さて、ラスト4話を書いたのは、メインライターの杉村升氏だが、氏は“その場を盛り上げるために場当たり的に新設定を持ち出し、しかも後で設定を変えてしまう”という悪い癖を最大限に発揮してしまった。
45話『壊滅!! 超力基地』、46話『地球最期の日!!』、47話『立て輝け甦れ!!』、最終話『愛の勇者たち』の4部作は、ファンの間で非常に評価が高い。
暗黒素粒子の影響で変身不能になった6人、遂にバラノイアに在処がばれて総攻撃を受ける超力基地、苦労の末、変身能力を取り戻してカイザーブルドントを倒す6人という流れは、確かに燃える展開だ。
特に、赤ん坊を人質に取られて変身を解除させられた吾郎達が、徒手空拳で赤ん坊を取り戻すくだりなど、相当燃える。
だが、要約すれば燃える話だが、よく見ると辻褄が全く合わないというびっくりな展開だったりする。
まず、変身不能になった原因だが、暗黒素粒子の影響ということになっている。
暗黒素粒子というのは、あらゆるメカの機能を狂わせる極微粒子だと説明されている。
それで変身不能になるということは、強化スーツの機能が狂ったか、ストレージクリスタルから超力を引き出すというパワーブレスの機能が狂ったかということだ。
ところが、超力の秘密を知るためにドリンの手で“超力の故郷”に送られた吾郎達は、宇宙のあちこちの星を担当するドリンの団体に会い、傷を癒しに戻っていた地球担当のドリンから「心の力で超力は甦る」と言われて地球に帰され、愛の力で再び変身能力を取り戻す。
ちょっと待て。
変身不能になったのは単にメカが狂ったからであって、超力の有無は関係ない。
本来ならば、ドリンの力でバラミクロンが消滅し、暗黒素粒子が消えた時点で変身機能が回復しているはずだ。
それとも、暗黒素粒子の知られざる能力として、ストレージクリスタルから超力を消滅させるというのもあったのだろうか。
それにしたって、この時点では地球のドリンはピンピンしているし、基地の増幅装置も稼働していたのだから、ドリンがここで一言「愛の力を信じろ」と言っていれば、すぐに変身機能は回復したはずだ。
わざわざ次元の彼方の“超力の故郷”に行かせる必要などなかったのだ。
さらに、はるばる“超力の故郷”に旅立ったというのに、そこでは直接超力を回復させるためにプラスになることは何もしていない。
要するに、吾郎達は地球を離れることなく変身機能を回復させえたはずなのに、わざわざ半年も地球を留守にして、バラノイアに征服されるに任せたということになる。
この4部作での矛盾をちょっと列記してみると
- メカを狂わせる暗黒素粒子で変身不能になったはずなのに、メカに関係なく変身できた
- 超力がなくなっただけなのに、地球の自然は枯れてしまった
- ドリンがいないまま、吾郎達は独力で超力を復活させた
- 超力はパンゲア文明の産物ではなく、ドリンによってもたらされる宇宙共通の力
- ドリンは地球だけでなく、色々な星にその星担当の者がいる
- せっかく“超力の故郷”に行ったのに、そこでは得るものが全くなかった
- マルチーワは、ロボットのくせに子供を産んだ
- ガンマジンの神面岩が屋内に飛んできて、鍵を回しても巨大化しなかった
- 三浦の願い事を叶えたガンマジンが飛び去らない
- ガンマジンが飛び去った後に、鍵が落ちている
ということになる。
その場を盛り上げるために全く必要のない遠回りをするのは杉村脚本の得意技なのだが、こうまで大々的に無茶苦茶やられると、とても感動できない。
結局、超力って何だったんだろう?
2話での吾郎の説明からすると、地熱や地磁気など様々なエネルギーを機械的に増幅・合成して作り出す超エネルギーということになっていた。
そもそも、超力を合成するための方程式が書かれた文字盤の欠片を少年が発見したことが始まりだったはずだ。
だが、ドリンがいなくなった途端に地球から消え失せたのだから、超力はパンゲア文明の産物ではなく、ドリンというあちこちの星にいる生命体が生み出す力ということになる。
しかも、超力がなくなると自然が枯れ果ててしまうのだから、その星に生きる生物全体の生命力を維持するために必要な力なのだろう。
その一方で、ドリンがいないままに吾郎達は超力を取り戻すことができたのだから、超力の維持には必ずしもドリンが必要というわけではない。
ということは、今回地球から超力が消え失せたのは、ドリンと吾郎達両方がいなくなったからということになる。
それから半年、誰も回復させていなかったのだから、吾郎達が死んでドリンがいなくなったら、地球は滅ぶということだろうか。
ちなみに、細かいことだが、吾郎達が地球を離れたときに赤茶色になっていたはずの地球が、半年後に吾郎達が帰ってきたときには青かったという大ボケをやっているが、これは単なるミスだろう。
困ったことに、問題は超力に止まらなかった。
バラノイアという組織そのものの性質というものが迷走してしまっているからだ。
実のところ、鷹羽は今回この原稿のためにビデオで見直すまで、『オーレンジャー』の戦いのイメージは“心のない機械の軍団と、超文明の力と熱い心を持った人間の激突”だと思っていた。
番組中で何度となく繰り返された「愚かな人間」という言葉が、どう“愚か”なのかと言えば、やはり“不合理な行動原理”を指すものだと思えるし、実際、番組中でも「○○などという愚かな感情を持った人間」というセリフはあったからだ。
ところが、実は1〜4話という物語の導入部分には、「心」とか「感情」といった単語は全く出てこない。
つまり、本当に描こうとしていたのは、OPの歌詞「熱い血流れぬ鋼のマシン」のとおり、“命を持たない機械の軍団と、超文明の力を持ち命ある全てを守ろうとする人間の激突”、つまり生物vs非生物の戦いだったということなのだろう。
ところが、それにしてはどうも描写が妙だったりする。
バラグースカの催眠音波で眠ってしまうのも、考えてみれば馬鹿馬鹿しい話なのだが、カイザーブルドントの強化改造は、機械的に改造したというより何らかのエネルギーを与えて復活させたという趣がある。
このとき、頭部だけになっていたバッカスフンドは、培養液を思わせる液体の中に浸かっていた。
もしかしたら何らかの演出意図があってのことかもしれないが、“頭だけになっている者が液体に浸かってコポコポいっている”姿というと、どうにも生物的に感じてしまうのが普通だろう。
そして、「限りある命の人間と違い、部品さえ取り替えれば機械は永遠だ」と言っていたはずのバッカスフンドは、ブルドントを強化再生した後、その機能を停止している。
さすがに跡形もなく壊れてしまえば、記憶の再生ができないだろうから再生不能としても、記憶回路が残っている以上、新造ボディに回路を移植すれば十分復活可能だろう。
バッカスフンドは確かに機能停止したが、その直前までちゃんと記憶も能力も残っていた。
まさか、電源が切れるだけで内容が消えるようなメモリーシステムになっているのだろうか。
バラバラになって完全に機能を停止したはずのブルドントはきっちり復活しているのだから、記憶回路は電源が切れたくらいで内容が消去されてしまうようなものではないはずだ。
また、マルチーワに全エネルギーを与えたヒステリアは銀褐色に変色しているが、「メカは永遠」なのだから、それこそエネルギーユニットの交換でも何でもして元の色に戻せるはずだ。
そもそもヒステリアやブルドント自体、バッカスフンドが作ったマシン獣に過ぎないというのに、ヒステリアに姪がいるというのはどういうことだろうか。
おかしいことはまだまだある。
3話『危機!! 超力の秘密』で登場したバラバニッシュは、超力の合成方程式の記された文字盤の破片を拾った少年の記憶を再生する機能を持っていたが、バラバニッシュが破壊された後、バッカスフンドは>「バラバニッシュがいなくては記憶を再生できない」と言って少年を付け狙うのをやめているが、同じ機能のマシン獣を再度作ろうという発想はなかったのだろうか。
『仮面ライダー』のピラザウルスのように、その特殊能力故に、異様に強靱な肉体を持つ人間でなければ耐えられないとか、『ジェットマン』の隕石ベムのように簡単に手に入らない材質を使っているわけではないのだし、それこそマシン獣の記憶回路などどうでもいいことなのだから、新しい同型機を作ることなど簡単にできるはずだ。
まさか、簡単に作ったマシン獣のくせに、二度と手に入らないような珍しい素材を使っているとでもいうのだろうか。
もしそうなら、それを作品中で語らなければなるまい。
ましてや、オーレンジャー側では、その少年が今後も狙われることを予測して警護する話をしているのだから。
そして、トドメになったのが、上に挙げたカイザーブルドントとマルチーワの間に産まれた子供だ。
カイザーブルドントとマルチーワは、結婚して子供を産んでいる。
“作った”のではなく、“産まれた”のだ。
その姿は、ご丁寧に赤ん坊だったりする。
ヒステリアとブルドントは、バッカスフンドが“作った”ものだ。
決してバッカスフンドがヒステリアを産んだ訳ではない。
それなのに、どうしてマルチーワは子供を産めたのか?
また、最終回では、ヒステリアは、カイザーブルドントが人間の赤ちゃんを人質に取り、「お前達(オーレンジャー)の使命は、命を守ることなんだろう?」と嘲笑うのを見て、「あの赤ちゃんも、この子と同じ命を持っている」と言っている。
ちょっと待て。
命を持たないからこそ、「マシンは永遠」なんじゃなかったのか!?
この作品には、もう1つ大きなポイントがある。
この作品は、スーパー戦隊シリーズには珍しく、第1話で敵が大々的に世界中の大都市を攻撃している。
これは、先に述べたとおり、序盤に力を注いだ結果の1つだ。
一部の都市を空爆するなどした組織はいくつかあるものの、いきなり世界中を相手に降服勧告したほどの組織はブラックマグマくらいなものだ。
これほど大規模な攻勢を掛けておきながら、その後のバラノイアの侵略作戦は実にちまちまとしている。
もちろん、ここには予想外の敵:オーレンジャーの出現で出鼻をくじかれたことによる目的変更という面もあるのだが、それならそれで対オーレンジャーの作戦だけを遂行すればいい。
当初物量作戦で圧倒的な優位に立ちながら、その後、食料をなくすだの子育てを辞めさせるだのと妙に小市民な作戦ばかりというのは首を傾げるばかりだ。
これらは、最初に大風呂敷を広げすぎたことによる問題だ。
番組初期に金を掛けすぎて段々制作費が辛くなって安っぽくなるというのはトクサツ物では結構見られることなのだが、『オーレンジャー』の場合、敵組織を強大かつ冷酷に描きすぎたために、その後のコミカルな部分とのバランスが取れなくなってしまったようだ。
まぁ、この手の小市民化は、多くのトクサツ作品で見られることなので、あまりあげつらうのは酷だろう。
だが、根幹的な部分に、もっと重要な設定変更がある。
それがキングレンジャーの存在だ。
そもそも、バッカスフンドがパンゲア文明によって生み出されたマシン獣である以上、敵も味方もパンゲア文明の科学力を根底に持っているということになる。
何のことはない、パンゲア文明の不始末をパンゲア文明の装備で後始末しているだけのことだ。
「超文明のパワーを持つ」などと言ってみても、敵を作り出したのもその超文明なのだから、ありがたくも何ともない。
全く大迷惑な文明だ。
更に、このころ特に顕著だった傾向として、続々と登場する巨大ロボというのがある。
ここでは、便宜上、正確にはロボットでないもの(大獣神やターボビルダーなど)や、必ずしも味方でないもの(大神竜など)も含めて巨大ロボと総称することにする。
単純に数だけ言えば『カクレンジャー』や『百獣戦隊ガオレンジャー』の方が多いが、年間25体という凄まじいペースで巨大ロボのパーツとなるパワーアニマルが登場し続けた『ガオレンジャー』を除けば、新商品となる巨大ロボが登場する頻度は、『オーレンジャー』が1位なのだ。
例えば、『カクレンジャー』の隠大将軍のように、巨大ロボのパーツとなる巨大メカが数回にわたって登場し、揃ったところで合体するといった新登場の仕方もあるが、それによって登場する巨大ロボはあくまで1体に過ぎない。
同様に、『タイムレンジャー』の場合、タイムロボα、β、γは組み合わせが変わるだけで新メカの登場は伴わないから、結局、巨大ロボの新登場は、プロバイダス、タイムロボ、タイムシャドウ、Vレックスの4回だけとなる。
例外として、十把一絡げで登場した『カクレンジャー』の獣将ファイターは、頻度を1回として計上している。
『オーレンジャー』は、オーレンジャーロボ、レッドパンチャー、キングピラミッダー、オーブロッカー、ガンマジン、タックルボーイと実に6回にわたって新ロボが登場しているのだ。
年間に6回も新ロボが登場するとなると、当然のことながらその頻度というか展開ももの凄く、27話(9/1放送)でキングピラミッダーが、34話(11/3放送)でオーブロッカーが、36話(11/17放送)でタックルボーイが、37話(11/24放送)でガンマジンがそれぞれ登場しており、特にオーブロッカーからのたった4話で3体という連続登場はただごとではない。
これに伴い、商品発売も連続で発売されることになってしまい、非常に忙しい発売ペースになってしまった。
こうして、『オーレンジャー』では巨大ロボの出入りがかなり激しい。
まず、オーレンジャーロボの場合、初登場(7話)から完全敗北(19話)までがたったの13話、本編と明確にリンクしている劇場版を加えるとしても14話しかない。
まぁ、この記録自体は、後にビクトリーロボなどに破られていくことになるのだが、7話という遅い時期にようやく登場したことが徒となり、妙に弱い印象を与えてしまった。
また、バスターオーレンジャーロボへと超砲撃合体するようになると、ウリのヘッドチェンジが全く生かされなくなってしまい、この点でも損をしている。
もっとも、バスターオーレンジャーロボもまた不遇だったりする。
キングピラミッダーが登場してからというもの、最大の見せ場をバトルフォーメーションでのスーパーレジェンドビームに持っていかれてしまったからだ。
実は、バスターオーレンジャーロボが倒したマシン獣はたったの4体でしかなく、超巨大合体ロボとしては驚異的に少ない。
これは、獣帝大獣神が倒したドーラモンスターが少ないのとは似て非なるものだ。
獣帝大獣神の場合、どちらかというと最終合体形態である究極大獣神になる過程での中途半端な形態といった趣が強く、しかも大抵の場合は大獣神や剛龍神がトドメを刺しているから出番が少ないだけだ。
これに対してバスターオーレンジャーロボの場合、合体形態としてはキングピラミッダーバトルフォーメーションとは流れが違い、しかも出番が少ないのは、オーブロッカーに出番を取られているからというのが主な理由になっている。
これは、むしろ前作『カクレンジャー』での無敵将軍と隠大将軍の関係に近い。
ただ、無敵将軍は自意識を持っている生物だったため、誰も乗らなくても登場して戦ってくれたが、単なる機械であるオーレンジャーロボは勝手に戦うわけにはいかなかった。
それに、登場しても結局トドメを刺すのが新ロボになるのは、隠大将軍で実証済みだ。
最強武器がスーパーレジェンドビームであることは最後まで変わらなかったので、その後に登場したツインブロッケンクラッシュにせよダイナマイトタックルにせよ、最強の技ではないことになり、もしオーレンジャーの都合だけでキングピラミッダーが使えるなら、どうしてそれでトドメを刺さないのか疑問が出てしまう。
普段はリキを登場させず、登場したときだけ最強形態になるという構成にしたのは、ある意味正解だった。
ただ、それでもやはり巨大ロボを多く出しすぎたことは、マイナスに働いたといわざるを得ない。
変化を付けるために付加したであろう各ロボの設定が、話の都合上などでねじ曲げられ、あまり生かされなかったからだ。
タックルボーイ初登場時のマシン獣は、何でも腐食させるガスを発するバラスカンクだったのだが、十分距離を取ってトドメを刺せるツインブロッケンクラッシュを使いもせずに、わざわざ体当たり兵器であるダイナマイトタックルで倒している。
また、動力に超力を使っていないオーブロッカーまで商品展開の都合でキングピラミッダーと合体(というより収納)できるようにしてしまったのも失敗だったと言えるだろう。
上記のとおり、オーブロッカーは、設定上も画面情報上も超力を使っていないことが明らかなのだ。
リキ達の登場による設定の変更や、ガンマジンの登場による世界観の混迷は、序盤戦で丁寧に作品世界を構築したことが裏目に出るほどの路線変更を強いた。
これら商品展開上の矢継ぎ早登場は、巨大ロボだけにとどまらず、ジャイアントローラーやオーレバズーカにしても、そういう方面からの弊害だったように感じる。
もはや新兵器の開発過程を描く暇もないほどにシナリオを圧迫してしまったのだ。
この反省からか、次作『カーレンジャー』では、巨大ロボが合計3体と少なくなっている。
もっとも、スポンサーからの圧力だけが『オーレンジャー』の設定を狂わせたわけではない。
メインライターである杉村升氏の作風それ自体も問題だし、他のライターとの作風の違いや、設定伝達の不徹底なども大きく絡んでいるのだ。
例えば、井上敏樹氏が執筆した15話『友よ熱く眠れ!!』は、バラノイアのスクラップ置き場に捨てられた出来損ないマシン獣の怨念によって誕生したバラリベンジャーと裕司との友情を描いた話で、ファンの人気も高い。
バラノイアにコントロール装置を付けられて自我を失ったバラリベンジャーを、せめて自分の手で倒したいという裕司の願いに応え、ジャイアントローラーを使わせるオーレッドなど、見所が多い。
実は、ジャイアントローラーをレッド以外の者が使ったのも、その理由に触れているのも、この話だけだったりする。
だが、確かにいい話なのだが、“怨念で誕生したマシン獣”という設定は、バラノイアの本質に抵触する問題だ。
盤石であるべきバラノイアから心を持った裏切り者を出すのは、敢えて“メカも盤石でない”ことを強調するためでなければ、やってはいけないことだ。
こういう話は、『オーレンジャー』でやるべきではなかった…と思うのだが、後に、かつてボンバー・ザ・グレートという反逆者がいたことや、そもそもバッカスフンドもパンゲアの人類に反逆した存在だったという話が出てしまったので、マシン獣達は元々そういう因子を内包しているということになるのだろう。
さて、第3勢力として登場したガンマジンは、当初は完全に敵にも味方にもなりうる存在だったのだが、大神龍の二の轍を踏まないためか、“どちらかというと味方”というスタンスにせざるを得なかった。
「悪い願い事は聞かない」というルールは、そこに由来している。
ただ、“悪意のない願いを叶えるためなら、方法は問わない”という性質と“一度言った願いは変更できない”というルールを与えられることによって、全く悪気なくオーブロッカーを奪おうとするなど、結構面白いキャラクターとなった。
ガンマジンは、神面岩からの変形というギミックと、鍵を使った者の願いを叶える魔神という設定に一体感があって、キャラクターとしては立っていた。
ボンバー・ザ・グレートと一緒に宇宙へ行ったきり帰ってこなければ、破綻のないキャラとして終われただろう。
だが、それでは大神龍みたいにオモチャが売れなくなるため、その後も困っている人の前に神面岩が飛んでくるといった都合のいい存在に成り下がってしまった。
最終回クライマックスのピンチに、三浦参謀長が「ガンマ・ガンマ・ドンドコガンマ」などと大真面目な顔で唱えている姿を見ると、手に汗握ればいいものやら笑っていいものやら困ってしまう。
しかも、ガンマジンの去り際のセリフ「いつでも呼んでほしいでござる」や、最後に砂浜に落ちていた鍵を見ると、ブルドントらの子をガンマジンに託したのは誰だったのか、今後ガンマジンが呼び出された場合、子供はどうなるのかなど、いらない心配が湧いて仕方がない。
※ なお、東映のビデオ等に収録された版では、三浦の呪文は削られているという情報があるが、これについては確認していません。
さて、この『オーレンジャー』も、後楽園遊園地の野外劇場で9〜11月に本人ショーをやっているわけだが、上記のとおり、特別公演的にゴレンジャーとの共演をさせている。
ここでは、ゴレンジャーの声をわざわざオリジナルと似た感じに出していたりするし、ゴレンジャーのアクションをちゃんと大野剣友会風にやっていたりして、いい味を出していた。
ちなみに、その後2月末まで上演されたスーパーヒーロー大集合では、吾郎、昌平、桃の3人が日によって素面で出演しているが、最終公演が異様に豪華になっていた。
このスーパーヒーロー大集合は、『重甲ビーファイター』からヒーロー3人とブラックビート(シャドー)、ギガロがゲスト出演しているのだが、シャドーは日によっては本物(土屋圭輔)が演じている。
ラストシーンでは、命尽きて果てるシャドーをブルービートが抱きかかえたりして、すっかり『ビーファイター』ショーに『オーレンジャー』がゲスト出演しているみたいになってしまった。
そして、最終公演では、ブルービート:甲斐拓也役の土屋大輔氏も出演したのだ。
ラストでは、死にゆくシャドーを拓也が抱き留め、客席からは黄色い声が…。
ほかにも、『カクレンジャー』最終公演に続いてリュウレンジャー:亮(和田圭一)とテンマレンジャー:将児(羽村英)もちょこっと出演している。
更に豪華なのがラストの舞台挨拶で、リキ(山口将司)が顔を出したり、次作『カーレンジャー』からレッドレーサー:陣内恭介(岸祐二)、イエローレーサー:志乃原菜摘(本橋由香)、シャリバン:伊賀電(渡洋史)も登場したりした。
ここで、亮と将児が「五星戦隊ダイレンジャーマイナス3」と名乗って、シャドーを指さして「あ〜っ! 知!」と呼び掛けたり、恭介と菜摘が吾郎に「これからは、地球の平和は、俺達『激走戦隊カーレンジャー』が守ります!」と引継をしたりといった、大きいお兄さんお姉さん向けのネタがあったりした。
このときの名乗りは「カ〜〜〜〜〜レンジャー!」ではなく、普通に「カーレンジャー」だったことを付記しておく。
この『オーレンジャー』は、意気込みだけは良かったのだが、メインライター自身が、自分で作った設定を自分で崩してしまったため、とんでもないオチが付いてしまった。
折角“スーパー戦隊シリーズで初めて、半年も世界を支配した組織”を生みだしたのに、その理由がヒーロー側がバカだったからでは、何だか浮かばれない。
また、最終回の矛盾のところに書いたとおり、ブルドントの子やアチャ・コチャを連れて去った後、砂浜に鍵が落ちているシーンで番組が終わったのは、何か悪い冗談だろうか。
ガンマジンは、鍵を持つ者の願いを聞き、その者が鍵を手放すと神面岩に戻ってしまうはずだ。
砂浜に鍵が落ちていたということは、ガンマジンはアチャ・コチャともどもブルドントの子を放り出して神面岩に戻っているのでは…?
そもそも、何の罪もないブルドントの子が許されるのは分かるが、世界征服の尖兵だったアチャとコチャの命が救われる理由って何だろう?
間抜けな奴らではあったが、助かるには悪事を重ねすぎている。
せめて封印でもするならともかく、ガンマジンに預ける程度では心配だ。
アチャ達が生き残った理由としては、カーレンジャーとのVシネマにマシン獣を登場させるためという説があったが、そこにも出ていないのだから困ったもんだ。
結局、『オーレンジャー』という番組は、最初に作った設定の意味を自分でうち崩した結果、何が何だか分からないものができてしまった作品ということになるだろうか。
なお、この作品、関東地方では金曜午後5時半が放送時間なのだが、新潟地方では10月放送分から、放送時間が金曜午後4時50分からに変更になった。
しかも、1週遅れなどにはならなかったので、なんとわずか40分とはいえ関東地方の本放送よりも早く放送されていたのだ。
どうしてなのかは分からないが、不思議な話ではある。
この妙な現象は、『メガレンジャー』で日曜朝7時半に移動になるまで続いていた。