忍者戦隊カクレンジャー

(第25話からは、第二部・青春激闘編

平成6年2月18日〜7年2月24日 全53話

主題歌

 『カクレンジャー』のオープニングは、シリーズ初めての“OPの曲名が番組タイトルがそのままでない番組”になった。
 一応『デンジマン』のときは、初期に『電子戦隊デンジマン』という曲があった。すぐ『ああ電子戦隊デンジマン』になっちゃったけど。

 番組内容も相まって、OP・EDともにヒーロー物とは思えないような歌詞であり、特にED曲はカクレンジャーのことは全く謳っておらず、しかも画面を見る限り主役はドロドロである。
 こうした曲作りはかなり異質なものと言えるだろう。

 一方で、挿入歌の方にはオーソドックスなヒーロー物っぽい歌も多い。
 上で挙げているように、ヒット曲集に入っている歌のほとんど全てが本編で使われているが、このような戦隊は珍しい。
 猫丸で旅をしているシーンに使われる『走れ! 猫丸!』や、鶴姫専用の『鶴姫! 強さは目にも美しい』など、シーンごとに使い分けられた曲達は、いずれも印象が強かった。
 特に印象的なのが、第1部ラストでサスケ達がバラバラに行動する際に流れる決意の曲『星よ、にじむな!』であり、44話『傷だらけ大逆転』でサスケが単身大魔王の本拠に乗り込む際にもかかっている。

 また、この当時恒例のように入っていた悪の歌である『黒の貴公子』は、大魔王復活の儀式でジュニアが歌っているもので、本編中の小道具として利用される曲というのも珍しい使い方だった。
 反面、無敵将軍の歌がなく、獣将ファイターの歌の方があるということも、この番組を象徴しているかもしれない。
 それについては、巨大ロボのコーナーを見てもらうことにしよう。

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基本ストーリー

 ある日、サスケとサイゾウは、見知らぬ男(実はカッパ)からある島に金を届けてほしいと頼まれた。
 「礼ははずむ」という言葉に飛びついて島に向かった2人は、妖怪ヌラリヒョンの封印を解いてしまう。

 サスケ達の先祖は、400年前に妖怪忍軍の頭領ヌラリヒョンを封印し、それによって妖気を封じられた妖怪がサスケを利用して封印を解いたのだ。
 ヌラリヒョンの復活と共に妖気が天に渦巻き、妖怪達は力を取り戻した。

 サスケ、サイゾウ、そして鶴姫は、風雲幻城で秘剣カクレマルを抜き、先祖から与えられたドロンチェンジャーでスーパー変化して妖怪と戦う。
 途中、セイカイ、ジライヤを加えて5人になったサスケ達は、妖怪退治の旅を続ける。

▼ 「真実の物語」は…

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メンバー

ニンジャレッド:サスケ

 猿飛佐助の子孫。
 額のマークは丸で、メダルには「S」の字が入っている。
 「オン・サル・ニン」の呪文で火炎つむじの術を使うほか、分身(わけみ)の術を得意とし、得意剣技は満月斬り
 レッドサルダー、バトルサルダー、ゴッドサルダーと合身する。
 河童に騙されてヌラリヒョンの封印を解いてしまい、カクレンジャーの一員として妖怪退治の旅をすることになった。

 ほかの4人が捕らわれた状態などでの孤軍奮闘が多かった結果、戦闘面でのリーダー的立場になっていき、やがてカクレンジャーの中心となった。
 抜いた刀を右肩に担ぐのが癖。

ニンジャホワイト:鶴姫

 鶴姫家の第24代当主であり、ニンジャホワイトに変身するカクレンジャーのリーダー。
 額のマークは「く」の字で、メダルにはくさび(「くの字」)のマークが入っている。
 400年前にヌラリヒョンを封印したときから、代々カクレンジャーのリーダーとして行動してきた一族の末裔で、10年前に病気で他界した父の遺志を継ぎ、カクレンジャーを率いることとなった。
 父親からも「鶴姫」と呼ばれるところを見ると、代々当主が「鶴姫」を名乗るしきたり(白面郎も当時は鶴姫を名乗った!?)か、フルネームが「鶴姫鶴姫」かのどちらかだろう
 「オン・ツル・ニン」の呪文による折り鶴変化の術で短時間なら自在に飛行でき、得意剣技はくの字斬り
 ホワイトカーク、バトルカーク、ゴッドカークと合身する。
 ヌラリヒョンの封印が解けたため、三太夫から与えられた猫丸で妖怪退治の旅をすることになった。

 死んだはずの父が妖怪軍団の軍師白面郎として立ち塞がってきたことに大いに悩むことになる。
 幼なじみの雪代、月代と共に「おしおき三姉妹(シスターズ)」というチームを組んで悪ガキ退治をしていたこともある。
 演じるは、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』の三女花子を演じていた広瀬仁美(さとみ)。

ニンジャブルー:サイゾウ

 霧隠才蔵の子孫でニンジャブルーに変身する。
 額のマークは正方形で、メダルには「K」の字モチーフのマークが入っている。
 「オン・オオカミ・ニン」の呪文による水竜巻の術のほか、水面上を走る水走りの術を得意とし、得意剣技は正方の陣
 ブルーロウガン、バトルロウガン、ゴッドロウガンと合身する。
 サスケと共にヌラリヒョンの封印を解いてしまい、カクレンジャーの一員として妖怪退治の旅をすることになった。

 買ったばかりの車をアミキリに切り裂かれたり、ヌッペフホフに顔を盗まれたり 、ヌエに屁の河童にされたりと、とにかくついてない。

ニンジャイエロー:セイカイ

 三好清海入道の子孫でニンジャイエローに変身する。
 額のマークは三角形で、メダルには「M」の字モチーフのマークが入っている。
 得意剣技は三角斬り
 イエロークマード、バトルクマード、ゴッドクマードと合身する。
 ロクロクビに狙われたところを救われ、そのまま仲間になった。
 食べ物と女の子に目がないが、モテたためしもない。
 一時期は、鶴姫に惚れていた。

 ヌエに屁の河童にされ、殺し合って生き残った方しか人間に戻れないと知ったとき、サイゾウに襲いかかってわざと殺されようとした友達思いな面もある。

ニンジャブラック:ジライヤ

 児雷也の子孫でニンジャブラックに変身する。
 額のマークは五角形で、メダルには「J」の字モチーフのマークが入っている。
 「オン・ガマ・ニン」の呪文で岩地獄の術を使い、得意剣技は五芒星の形に敵を切る「流れ星」。
 400年前にアズキアライに奪われた「巨大獣将之術」の巻物を探し、代々世界中を旅していた家系のため、鶴姫家とも音信不通になっていた。
 先祖の霊に教えられて巻物の在処を知り来日したが、功名心に駆られて1人で奪い返そうとして罠に落ちた。

 数世代前からアメリカにいて本人もアメリカで生まれ育ち、日本語はほとんど話せない。
 妖怪に殺された父に代わり、父の親友で空手道場を開いているガリに育てられたが、そのガリが父を殺した張本人だった。
 ブラックガンマー、バトルガンマー、ゴッドガンマーと合身する。
 演じるはショー・コスギの息子のケイン・コスギであり、ガリを演じたのは実父のショー・コスギである。
 ケインは、その後リポビタンDのCMに登場してメジャーになり、ククレカレーのCMや筋肉番付などで人気者となった。
 また、アメリカ放送作品ではあるが、この番組以前に『ウルトラマンパワード』で主演している。

暴れん坊忍者:ニンジャマン(サムライマン)

 三神将の弟子で、1000年前に大魔王に騙されて人間を傷つけたために封印され、宇宙に追放されていた。
 封印の壷は、鶴姫家の人間でないと破壊できない。
 体の大きさを自在に変えられるため、巨大化した妖怪ともわたりあえる。
 「青二才」と言われると激怒し、サムライマンに変形する。

 復活当初、大魔王から「やがてカクレンジャーを倒すことになる」と言われていたが、単なるハッタリだったようだ。
 元々人間外生物だったのかどうかは不明だが、人間体を持たないところを見ると、最初から人間外なのだろう。
 戦いの後、三神将と共に天上の存在となった。
 声は矢尾一樹氏。

 カクレンジャーは、代々妖怪と戦う鶴姫家とその家来の子孫で、妖怪車両猫丸に乗ってクレープ屋を営みながら全国各地を巡り、そこにいる妖怪を退治している。
 寝るときはテントを張って野宿している。
 どうやら生計は主にクレープ屋の収入によっているらしい。
 5人のうち自分の先祖のことを知っているのは鶴姫とジライヤだけで、それ以外は忍術の訓練など受けたこともない連中なのだが、なぜか全員忍術を会得している。
 これは、スタートの前提から来る矛盾であり、この番組のとりとめなさの象徴とも言える。

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変身システム

 『カクレンジャー』では、前作に引き続き「変身」を意味する「スーパー変化(へんげ)」という造語を生み出すとともに、シリーズ初の“身につけない”タイプの変身アイテムを登場させた。

 普段ポケット等に入れている印籠型のアイテム:ドロンチェンジャーを胸にかざして「スーパー変化・ドロンチェンジャー!」と叫びながら脇のスイッチを押すと、一旦忍装束に変化し、その後装束がスーツに変わる。
 忍装束の方は、鶴姫のみ全身白く、あとの4人は黒装束にマフラーだけがパーソナルカラーというデザインになっている。
 ドロンチェンジャーは、サスケ達が秘剣カクレマルを手にすると同時に先祖の霊から与えられたもので、通信機になっているほか、封印の要としても使用される。
 
 また、内部のメダルが獣将ファイターに変わり、変身後にメダルだけ取り出したり、ドロンチェンジャー本体を取り出したりすることもできる。
 
 短縮バージョンとして、「スーパー変化!」と叫びながら服を脱ぐ(肩口を掴んで引っ張ると脱げる多羅尾伴内方式)というパターンもある。
 
 カクレンジャーは、忍装束をモチーフにしたデザインであり、変身前の忍装束の額にも、変身後のマークと同じ物が入っている。
 よく見るとゴーグルの形も、円形、下向きの「く」の字、三角、四角、五角となっているのがわかる。
 また、ゴーグルと襟元の黒い切込模様、手袋・ブーツの白黒の帯以外はほとんどパーソナルカラー1色になっており、かなり単調な色調になっている。
 特に、戦闘員であるドロドロが水色っぽいため、水色1色のニンジャブルーの周りにドロドロが集まると、誰が誰だか分からないということになる。
 なお、49話『突然!! ビンボー』では、5人揃ってビンボーガミに装備を貧乏モードにされ、スーツがジャージ、マスクがバケツなどに変えられた。

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名乗り

 「ニンジャレッド、サスケ!」

 「ニンジャホワイト、鶴姫!」

 「ニンジャイエロー、セイカイ!」

 「ニンジャブルー、サイゾウ!」

 「NinjaBlack、Jirya!」

 「人に隠れて悪を斬る」

 「忍者戦隊! カクレンジャー見参!」

 「成敗」

というのが基本パターン。

 セイカイとサイゾウの順番は結構微妙で、紋章の形を見れば分かるとおり、セイカイの三角、サイゾウの四角、ジライヤの五角の順に増えていることから、一応セイカイの方が3番手(ドロンチェンジャーについているマークもその順)ということになる(最終回での回想シーンもその順だった)。
 ただし、カクレマルのマークは四角、三角、五角の順になっている。
 実際、仲間になったのがサイゾウの方が早いため、OPではサイゾウが先になっているし、回によってはサイゾウが先に名乗っていることもある。

 このほか、

 「正義の味方、ニンジャマン!」

というのが加わるバージョンもあり、名乗りの際にニンジャマンが一緒にいるパターンも数回あった。
 また、『ダイレンジャー』で好評だった(と思われる)素顔の5人の名乗りも、前述の49話においてジャージ姿で披露しているほか、最終回Aパートでの名乗りは本人達がスーツを着ているらしい。

 もう1つ、忘れてならない名乗りが、

 雪代「乙女の純真、雪の如く」

 月代「月にきらめく三姉妹」

 鶴姫「折り鶴よ舞え、花と咲け」

 3人「3人揃って、おしおきセーラー三姉妹(シスターズ)!」

 雪代「クレヨンしんちゃん曰く『じゃ、そういうことで』」

 2人「『じゃ、そういうことで』」

だ。

 これは、35話『おしおき三姉妹』で使用されたもので、この後「そういうことってどういうことだ〜!」とわめく敵に向かっていくのだ。
 知っている人も多いと思うが、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』の名乗りをもじったもので、ポーズもカメラワークも当時と同じだったりする。
 この回では、『シュシュトリアン』の山吹雪子、月子役の田中規子、石橋けい両氏が山咲雪代月代という役名で登場しており、しかもご丁寧に、この回には花代という雪代達の妹が登場している。
 必殺技もまた、シュシュトリアンの必殺技シュシュファイナルをもじったおしおきファイナルというのが嬉しい。
 いや、妖怪を倒したのはカクレンジャーなんだけど。

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武器

 共通武器は、背中に背負った日本刀型の秘剣カクレマルと、左腰のホルスターに入っているカクレイザー、拳に付けるシノビナックル
 カクレイザーは、グリップを倒せばビームガンに、鞘から抜けば短剣になる。
 シノビナックルは、拳に装着するナックルガードだが、甲の部分に個人武器を付けることができ、主にその状態で使っている。
 なお、右拳に装着して使うことが多いが、それぞれ2つずつあり、両拳に付けて戦うこともできる。
 
 個人武器としては、巨大な十方手裏剣:レッドスライサー、二股の叉であるホワイトビーク、高圧水鉄砲:ブルーショット、鉤爪:イエロークロー、ボウガン:ブラックボウがあり、それぞれシノビナックルに合体させることができるほか、ほぼ同型の巨大なものを巨大獣将が使っている。
 
 必殺技としては、カクレマルを使用しての各人の得意剣技のほか、シャークマシンを使ってのシャークドライバーカクレンジャーボールを使用してのカクレシュートと豊富。
 カクレシュートはラグビーボール型のボールで、各人が触れるたびにその色になり、5人目がキックして敵にぶつけるというゴレンジャーハリケーンパターンの武器だ。
 21話『サルマネ必殺技』でヤマガミを騙すために、6人目がシュートの前にカズダンスを踊るニューカクレシュートをでっち上げていて時代が偲ばれるが、ニンジャマンが加わった後、5人目としてニンジャマンが銀色になったボールを抱えて6人目がシュートするパターンが登場している。
 また、29話『史上初の超対決(スーパーバトル)』で、ツバサマルがレッドに雷鳴剣ヒカリマルを与えており、ヒカリマルとカクレマルを併用しての雷鳴斬もレッドの必殺技になっているほか、後述のとおりサスケが火炎将軍剣を使ったこともある。 

 オモチャの方では、『共鳴秘剣カクレマル』という名称で“音の出る剣 ”を継いでいる。
 鞘から抜くとき、「ドゥルルリンッ」というような形容しがたい独特の音を立てるのだ。
 これは本編でも再現されていて、『カクレンジャー』では、この音と共に敵に斬りつけるというアクションが非常に多かった。

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移動装備

 普段の足になっているのは妖怪車両猫丸で、右脇が開いてクレープワゴンに変形する。
 また、普段は5人の誰かが運転しているが、必要に応じて単独走行や飛行も可能。
 さらには屋根から大砲まで出てくるという至れり尽くせりの装備で、サスケ達を縛っている鎖を口で噛み千切ってくれるなど、重要な戦力となっている。

 また、移動装備というより武器だが、シャークマシンという3台のバイクも持っている。
 鶴姫が忍法で出したもので、シャークブリッダー (赤)、シャークスライダー(黄と黒の右サイドカー)、シャークランチャー(青と白の左サイドカー)で、それぞれその色のカクレンジャーが乗る。
 スライダーのサイド部分の前にランチャーのサイド部分を合体させて発射台を形成し、弾丸形態に変形したブリッダーを撃ち出すのが必殺技の1つシャークドライバーだ。
 この変形の都合上、ランチャー、スライダーのサイド部は発射台のパーツが折り畳まれており、人が乗るような形をしていないため、ホワイトとブラックは座るのではなく掴まってしゃがんでいる状態で乗ることになる。
 これもビンボーガミに貧弱化され、自転車とリヤカーに変化させられてしまったのだが、元に戻るシーンはなく、しかもその後登場していない。

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ロボット

 『カクレンジャー』では、当初、ロボット(巨大戦力)は忍術で生み出すものとして描写されていた。
 巨大獣将は、隠流忍法の奥義の1つであり、「隠流巨大獣将之術」が記された巻物を手にすることによって使える忍術だし、忍者合体による無敵将軍獣将ファイターも忍術の1つとして扱われてきたわけだ。
 だが、ツバサマルの登場により、三太夫の口からその正体が明かされる。
 実は、無敵将軍もツバサマルも、当時未登場だった隠大将軍も、元は人間だったのだ。
 彼らは隠流忍法の始祖であり、奥義「心・技・体」を司る三神将の化身であり、巨大獣将の術や忍者合体は、無敵将軍を呼び出して意のままに動かすための術だったのだ。
 同様に、5体の超忍獣を召還して隠大将軍に五神合体する奥義が記された「忍の巻」の存在も明かされ、5人は「忍の巻」が課したそれぞれの試練を乗り越えて手に入れていった。
 これで、人智を超えた超生命体が3作連続で登場したことになる。
 まぁ、三神将はあまり押しつけがましい存在ではなかったからよしとしよう。

巨大獣将

 巻物を手に「隠流・巨大獣将の術!」と唱えると出現する巨大な戦士。
 レッドサルダー、ホワイトカーク、イエロークマード、ブルーロウガン、ブラックガンマーの5体で、カクレンジャーが胸の紋章部に合身することで動き出し、カクレンジャーが合身を解くと自動的に消滅する。
 それぞれ合身しているカクレンジャーと同じ属性の能力や武器を持っており、ポーズもクマード以外はカクレンジャー本人のものと一緒。
 クマードのポーズが違うのは、デザイン上ニンジャイエローのポーズを取れなかったせいだ。

無敵将軍

 「忍者合体!」の掛け声と共に、レッドサルダー(胴体)、ホワイトカーク(左腕)、ブルーロウガン(右腕)、イエロークマード(右脚)、ブラックガンマー(左脚)と、どこからか飛来した折鶴型の頭部が合体して完成する。
 武器は火炎将軍剣で、必殺技名も「火炎将軍剣!」

 物語当初は、風雲幻城(ふううんまぼろしじょう)として登場し、その後も度々その姿で登場している。
 第2部に入って、超忍獣が登場するようになり、サスケ達によって忍者合体することはなくなったが、「無敵将軍参上!」の声と共に勝手に出現し、自分の意志で攻撃するようになっている。
 27話『無敵将軍の最期』でヌエに破れて消えたが、その後も平気な顔で出現していた。
 実は、巨大獣将が登場する以前の1話で既に無敵将軍の姿で登場しており、しかも1話のラストでは、火炎将軍剣を振るってサスケ達のピンチを救っている。
 つまり、無敵将軍が自我を持っていることは最初から匂わせていたのだ。
 その後も、20話『花のくノ一組!!』では、サスケに火炎将軍剣を(サイズを人間用にして)貸し与えるなど、自我意識を持っていることを窺わせる行動を取っていたが、後に「体」を司る三神将の1人だったことが明らかとなった。
 普段は風雲幻城の状態でどこかに存在している。

 ツバサマルと「超忍者合体!」(肩と胴体の間に、ツバサマルの前向きになった翼を挟み込む)することでスーパー無敵将軍になり、ツバサマルの翼の先端部から発射する無敵キャノン一斉射撃が必殺技となる。
 スーパー戦隊史上、人間が乗っている巨大ロボでコクピット描写が全くなかったのは、この無敵将軍と巨大獣将、獣将ファイターだけである(2003年1月現在)。

獣将ファイター

 隠流忍術の奥義で、「隠流・獣将ファイターの術」と唱えながらドロンチェンジャーの中のコインを空に放ることで出現するバトルサルダーバトルカークバトルクマードバトルロウガンバトルガンマーの5体。
 基本的に巨大獣将をスリムにした姿であり、カクレンジャーの指示に従って戦うことができるが、カクレンジャーが額部分から合身する「一体化の術」によって、戦闘能力が巨大獣将を凌ぐようになる。
 また、獣将ファイターの状態でもカクレンジャーボール(巨大化バージョン)を使用することができるなど、その機敏性を遺憾なく発揮した。
 4体が組んだ腕を踏み台に、1体がジャンプして敵に体当たりする必殺技ファイター・クラッシュは多くの巨大妖怪を倒したが、第2部になってからはサスケがバトルサルダーを1回使った以外全く登場しなかった。

ツバサマル

 「心」を司る三神将の1人で、三太夫がどこからか連れてきた。
 必要に応じて飛来し、無敵将軍や隠大将軍と合体し、それぞれスーパー無敵将軍、スーパー隠大将軍となる。
 単体でも戦闘力があり、翼の先端からビームを発射して敵を攻撃する。
 29話『史上初の超対決』で、サスケに雷鳴剣ヒカリマルを与えた。

超忍獣

 「隠流・超忍獣の術」と唱えながら忍の巻を広げると、忍の巻から浮き上がった文字が超忍獣に変わる。
 5体の超忍獣ゴッドサルダーゴッドカークゴッドクマードゴッドロウガンゴッドガンマーは、「サスケ、さぁ私に乗り込め」などと言葉を話すことができる。
 ゴッドサルダー以外は人型をしておらず、それぞれ鳥型ジェット機、クマ、尻尾が刀のオオカミ、ガマガエルの形をしている。
 ゴッドガンマーは口から小さなガンマーを沢山吐き出して攻撃することができ、「ゾロメカのようだ」と言われていた。
 また、ゴッドサルダーの必殺2刀斬りは、巨大妖怪を倒すだけの威力がある。

隠大将軍

 ゴッドサルダー(右腕)、ゴッドカーク(頭部)、ゴッドクマード(胸部・腹部)、ゴッドロウガン(左腕)、ゴッドガンマー(腰部・脚部)が「五神合体!」して完成する「技」を司る三神将。
 必殺技は左右の拳でワンツーパンチを食らわす鉄拳ゴッドフィニッシュ
 ツバサマルと「翼合体!」することでスーパー隠大将軍になり、その際の必殺技は急降下しながら翼に集めたエネルギーを両拳に移してゴッドフィニッシュを食らわせる鉄拳フライングフィニッシュ
 また、無敵将軍同様、カクレンジャーが乗り込まなくても自由に出現して戦うことができる。

 5体揃わなくても一応合体は可能で、33話『あまのじゃく村』では、ゴッドサルダーがいないまま右腕のないスーパー隠大将軍として飛来し、ゴッドサルダーが合体した後、右拳だけで3回殴る鉄拳フライングフィニッシュ・サルダースペシャルを繰り出した後再びゴッドサルダーが分離、2刀斬りでアマノジャクを倒すということをやっている。

サムライマン(ニンジャマン)

 ニンジャマンが戦闘中、敵に「青二才」と言われると、「青二才だとぉ!? それを言っちゃあおしまいよ!」などと怒り出し、「怒り爆発!」の掛け声でサムライマンに変形する。
 ニンジャマンのときの刀の束に鞘を合体させたサムライジャベリンによる激怒斬りと、胸から発射する火球サムライ激怒ボンバーが武器。
 当然というか、師匠を立ててというか、サムライマンがトドメを刺すことはなく、敵の動きを止めたりするための前座的な見せ方だった。

 『カクレンジャー』では、シリーズ初の人型ロボ5体合体を実現し、また、その後の隠大将軍やサムライマンの登場により、人型巨大ロボ数がスーパー戦隊史上最多(2003年1月現在)を誇る。
 分離形態時なら12体もあり、合体できる物が全て合体した状態でも8体もあるのだ。
 話がややこしくなるので、ここでは“乗る人間の都合”は考えないものとしておく。
 確かに、単純に数を言うなら『ガオレンジャー』の方が21種類と多いが、この数字は組み合わせの結果であって、パーツの都合上並べることができるのは4体でしかなく、『カクレンジャー』の同時に存在できる人型ロボ8体は、他の追随を許さない品揃えだ。
 また、非人間型のメカや空母も含め、巨大化戦に参戦した総メカ数でも、『ガオレンジャー』の24体(パーツとしての登場分に限る)や『ギンガマン』の18体に次ぐ17体であり、こちらもトップクラスだ。

 巨大獣将という人型巨大ロボの5体合体が実現したことで、巨大化戦でもチームバトルが可能になったわけだが、一方で、合体ロボのパーツである以上どうしても巨大獣将自身がゴツゴツしたデザイン(所謂箱形ボディ)になってしまい、スピーディーなアクションはできないという弱味があった。
 そこで登場したのが獣将ファイターだ。
 頭部等の基本的なデザインを巨大獣将と同じにして胴体や手足を丸くコンパクトにまとめることで、外見的に似た印象を持たせつつ軽快なアクションができるようにしたわけだ。
 こうして巨大ロボがカクレンジャーボールを使ったり、やぐらを組んで立体殺法を使ったりといったアクションを多用できるようになったが、反面、妙に動きが軽くなった上、無敵将軍の合体に関与しない獣将ファイターが目立つ結果になってしまった。
 つまり、獣将ファイター自体は合体ロボのパーツでもないし所謂超合金系オモチャ(この時期、『超合金』の商標は使われていない)として売り出すわけでもないのに、メインアイテムである合体ロボの出番を奪ってしまうという本末転倒な事態を招いてしまったのだ。
 これは、当初はカクレンジャーと合身する巨大獣将と、単独で行動する獣将ファイターとが一同に並ぶこともあったのに、獣将ファイター一体化の術でカクレンジャーが合身するようになると、両者が一緒に存在できなくなってしまったことによる。
 そこで、メインで戦うのは獣将ファイターとなり、トドメを刺す段になると巨大獣将を呼び出して直ちに無敵将軍に合体する(合体シーン省略)という形式が出来上がった。
 こうなると、巨大獣将は無敵将軍になる前段階でしかなくなり、さらに獣将ファイター自体にもファイタークラッシュやカクレンジャーボールという必殺技があるため、無敵将軍がトドメを刺す必然性すら失われてしまった。

 更に、第2部ではカクレンジャーが乗るのが隠大将軍に完全にシフトしてしまった上、サムライマンまでいるものだから、無敵将軍はもはや援護役になってしまった。
 これは、1号ロボと2号ロボの合体というシステムがなくなったことによって2号ロボに見せ場が増えた反面、1号ロボの出番が減ったということを意味する。
 言うまでもなく、新しく登場したロボットを活躍させなければならない以上、1号ロボに乗らなくなってしまうからだ。
 新登場の超忍獣を呼び出すアイテム「忍の巻」が商品化された『カクレンジャー』では、この傾向が極端に表れており、第2部で巨大獣将や獣将ファイターが登場するのはたった1回だけとなっている。
 この巨大ロボのインフレと1号ロボの埋没は、その後も宿命的な命題としてスタッフの頭を悩ませ続けることになる。

 さて、合体システムやオモチャに関して見てみよう。

 無敵将軍は、番組中では

と3パターンあったが、オモチャで再現されるのは当然の如く忍者合体だ。
 『六神合体ゴッドマーズ』を思い出させる人型ロボから手足への変形だが、微妙に変形パターンが違っていたりして、設計者の拘りが見える。
 本編ではどこからか飛んでくる頭部は、オモチャの方ではサルダーの胴体に収納されるギミックがあった。
 合体において主要パーツである頭部を完全に別パーツにしてしまったというのも凄いのだが、この点については、結局無敵将軍は自我意識を持つ存在だという説明により、なんとなく納得してしまった。
 また、当時、童友社から「戦うお城シリーズ」と称して姫路城などのプラモデルが発売されていたが、一部では風雲幻城も出してほしいなどという冗談が囁かれていた。
 鷹羽も、城形態に変形できるオモチャがあったら凄かったろうと思う。

 なお、巨大ロボオモチャの剣に刃のエッジがあったのは、無敵将軍付属の火炎将軍剣が最後となっている。
 次の『超力戦隊オーレンジャー』からは、PL法の関係で、剣の刃のエッジ部分が板状のカバーで覆われてしまったからだ。
 ところでこの火炎将軍剣、グリップの先に鯱(しゃちほこ)が付いていて、その口からの炎が刀身になっている。
 スチール写真ではちょっと変わった形の剣という印象しかないが、本編の画面上では、右肩の鯱が光ると同時に右手に火炎将軍剣が出現し、鯱の口から本当に火を吹いている状態で振り回しているのだ。
 敵を斬る場面では、刀身の表面が燃えている状態だが、出現時は刀身が炎だけで構成されている。
 これの撮影用実物はかなり重いそうで、素早く振るうのは至難の業だったという。

 次に隠大将軍だが、スーパー戦隊で初めてレッドの乗るメカが中枢部分にならなかった
 右手がゴッドサルダー、左手がゴッドロウガンで、それぞれの頭部に拳パーツが被さるという形式になっており、絶対に開きようのない拳を持っているロボットとしても初めてだった。
 オモチャで拳が開かないのはむしろ当たり前の感があるが、本編中で、着ぐるみの都合でなく合体設定上“開きようがない”拳というのは ちょっと凄い。
 人型でないジェットガルーダでさえ、爪状の手は開閉したものだが。
 で、必殺技が右左の拳で敵を殴りつけるゴッドフィニッシュなものだから、当時鷹羽の友人の間では、「ワン公チョップ、エテ公パンチ」と呼ばれていた。
 なお、当然の如く、オモチャの方でも拳パーツはグレーの被せ物が付くという形で再現されている。
 
 一方、サムライマン(ニンジャマン)は、スイッチを押すことにより頭部がニンジャマンからサムライマンのそれに入れ替わるほか、大腿部のカバーがすねに降り、上腕カバーが開いて肩アーマーになるというギミックを持ち、『瞬間変形』という名称で売り出された。
 これは、『パワーレンジャー』オモチャからの逆輸入とも言うべきシステムで、首の付け根を軸に人間の頭部とスーツの頭部が繋がっていて、スイッチを押すと胸部が開いて首が半回転するというギミックだった。
 つまり、首から下がパワーレンジャーのスーツで頭部が人間の人形が、スイッチで頭部が変身後のそれに替わるわけで、人形で変身を手軽に再現するためのギミックとして使用されていたものだ。
 ニンジャマンでは、それを“ニンジャマンの頭部からサムライマンの頭部に”変形するようアレンジし、同時に手足のシルエットも変えることで違うキャラへの変身を端的に表すようにしたのだ。
 ギミックが単純な割にシルエットが完全に変わるため、結構印象の違うデザインになったのは秀逸だった。

 ニンジャマン自身の登場が10/21放送分からということもあり、商品の発売時期も10月末から11月にかけてだったと思われるが、発売総数が少なかったのかあっと言う間に店頭から消えたそうで、番組終了後にはかなりのプレミアがついたらしい。

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その他の人々

守り役:百道三太夫

 「〜やけ」「〜なんよ」という喋り方をし、ポップキャンディを舐めながら登場したりする妙なおっさんで、鶴姫家の執事のような存在。
 ヌラリヒョンの復活後、鶴姫に妖怪車両:猫丸を与えて彼らを旅立たせた。
 その後、無敵将軍の危機にツバサマルを呼び出すなどして、カクレンジャーを補佐し続けたが、ジュニアに殺されてしまった。
 白面郎の裏切りの目的を知り、太郎と次郎の正体も知っているが、白面郎の命令で「殿(白面郎)は我々を裏切ったんよ」と言い続けて死んだ。

犬:太郎と次郎

 白面郎が育てた双子の兄弟で、鶴姫が小さいころ兄妹のように育った。
 10年前、白面郎と共に大魔王の秘密を調べるべく行動していたが捕らえられ、呪いをかけられて犬になってしまった。
 たった2度、それも短時間だけ人間の姿に戻れるものの、2度目に人間の姿に戻ったときは死ぬことになる。
 太郎を演じたのは、前作『ダイレンジャー』で知を演じた土屋圭輔氏で、次郎は翌年の『重甲ビーファイター』の甲斐拓也を演じる土屋大輔氏(土屋圭輔氏の双子の兄)が演じている。
 弟である圭輔氏が兄役になっているのは、氏の方が演技に慣れていたからだろう。

三太夫の弟子:ブン

 白面郎が太郎と次郎を逃がす際、一緒に逃がした妖怪の子供。
 他の妖怪に虐められているのを白面郎に助けられたため、白面郎・三太夫に協力する。

講談師:三遊亭円丈

 番組の初めと締めの講釈と、敵妖怪出現時に妖怪の能力などを説明しに登場する講談師で、自称「おじさん」。
 単なるナレーターではなく、番組世界に存在しカクレンジャーの戦いを見守るキャラクターという形で登場する。
 番組中で鶴姫が投げた花束を受け取ったり、サスケ達が忍術の訓練をしている現場で講釈を始めて手裏剣に当たりそうになったりと、本編と微妙にリンクしている。
 言うなれば“劇中世界に存在し、事件を横から見ている人物”である。

 第2部に入ってからは登場しなくなったが、39話『特別編だよっ!!』で1度だけ再登場し、カクレンジャーも場所を知らないガイコツ城に忍び込んで生還するという離れ業を演じた。

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敵組織

妖怪忍軍

首領:ヌラリヒョン

 400年前、カクレンジャーの先祖達によって封印された妖怪忍軍の頭領で、その封印と共に妖怪達の妖気も封印されたため、現在の妖怪達は力をほとんど失っていた。
 サスケが封印を解いたために脱出し、その後行方をくらましてしまった。
 実は大魔王の封印を解くのが目的だったのだが、肝心の大魔王が復活した後もその配下に収まることなく、今もどこかに潜伏している。

幹部:アズキアライ

 400年前、カクレンジャーの先祖達から4本の「巨大獣将之術」の巻物を奪い取り、妖気が封印された後も人間界で上手く立ち回っていたようで、現在は警察署長となっており、妖怪サロンに仲間を集める顔役になっている。
 カクレンジャーに巻物を奪われた挙げ句やられてしまった。


妖怪軍団

首領:大魔王

 2000年前、三神将によって封印された。
 多くの妖怪を統括する大妖怪で、ヤマンバを妹に、ダイダラボッチを弟に持つ。
 大量の人間の生命エネルギーを生け贄として1か月間儀式を続けることにより封印を破ることができるが、ほとんど1か月儀式が続いたせいか、儀式が完成しないうちに復活してしまった。
 貴公子ジュニアの父であり、ジュニアに跡を継がせようと考えていたが、その割には、あからさまに白面郎を重用してジュニアを苛立たせるなど、首領としての度量は狭い。
 10年前に太郎・次郎の命と引き替えに白面郎を降伏させ、いつか利用するために泳がせていたが、それは分身ダラダラを使用しての作戦の際、鶴姫達をおびき出す餌にするためだったらしい。
 ニンジャマンに「いつか三神将をお前が倒すことになる」と言っていたが、それはダラダラを使ってニンジャマンを人質にするという意味合いだったらしい。
 前述の『突然!! ビンボー』 では、大魔王自身もマルビモードにされてしまい、眼鏡にヒビが入ってハタキを持った大魔王が見られる。
 声は柴田秀勝氏。

幹部:貴公子ジュニア(ガシャドクロ)

 大魔王の息子で、普段はヘビメタルックの人間体になっている。
 オカマ言葉を喋るが、声は太い。
 持っているエレキギターを剣として使う。
 1か月にわたる儀式(ほとんど歌っていただけのようだが)によって大魔王復活に成功した。
 白面郎を疑い、彼と内通していると思われる三太夫を殺したが、隠大将軍に破れた。

幹部:軍師白面郎

 鶴姫の父で、鶴姫家の前当主。
 本名は「よしてる」という。
 10年前、大魔王について調べているうちに囚われの身となり、太郎と次郎の命を救うことを条件に妖怪の協力者となったが、実は大魔王の弱点を調べて暗躍していた。
 裏切り者を装い、影ながらカクレンジャーを助けていたが、大魔王はそんなことは先刻承知の上で、まんまと鶴姫達は捕らえられてしまう。
 ただし、その際白面郎が太郎らの元に飛ばした鶴の紋章にダラダラの弱点を記していたため、怒った大魔王に石にされてしまった。
 その後、石のまま操られていたが、太郎・次郎の命と引き替えに元に戻った。

幹部:ユガミ博士

 テングに協力して妖怪を機械的に強化する研究をしていた妖怪科学者で、テングの死後はジュニアの下で働くようになった。
 様々な強化パーツを作ってカクレンジャーに対抗していたが、ガシャドクロが死んだ際、封印の扉の破片の下敷きになって死んだ。

準幹部:花のくノ一組

 アヤメ(紺色・菖)サクラ(ピンク色:桜)スイレン(緑色・蓮)ユリ(オレンジ色・百)ラン(濃いピンク色・蘭)の5人で、元々はジュニアが飼っている猫の化身。
 普段は忍装束だが「バトル変化!」の掛け声で戦闘スーツに変身する。

 戦闘スーツは、ヘルメットにモチーフの花の絵が、胸にその花の名前の(一部の)漢字一文字が書いてあり、上の括弧書きはバトルスーツ(忍び装束の時はスカーフ)の色と漢字を表している。

「花忍者、アヤメ!」

「花忍者、サクラ!」

「花忍者、スイレン!」

「花忍者、ユリ!」

「花忍者、ラン!」

「花のくノ一組!」

という名乗りを持っている。

 『ファイブマン』に登場したギンガマンに続く敵方の戦隊だが、統一されたコスチュームを持つという点で、正式な元祖と言っていいだろう。
 全員が女性、しかもコスチュームはハイレグということで、当時結構な人気を呼んだ。
 ジュニアの元にいるころは、通常は猫の姿でいたが、大魔王復活後は普段から人間体でいるようになったところを見ると、他者からの妖力の供給によって人間体になるらしい。
 戦闘能力は、数人がかりならカクレンジャー1人に対して優勢に戦えるといった程度で、必然的に5人一組で襲ってくることが多い。
 妖怪に命令を与えることもあるが、指揮系統から言えば妖怪の補佐的な立場でしかなく、あくまで大魔王やジュニアの命令の伝令役をしているだけ。
 『海のトリトン』の伝令マーカスのような立場と言える(分かる人、何人いるんだろ)。
 大魔王が封印される際、隠大将軍の発した光線を受けて猫の姿に戻ってしまった。
 なお、サクラを演じたのは『ファイブマン』ファイブイエロー:星川レミ役の早瀬恵子(本作当時は改名して咲田めぐみ)氏で、ランを演じたのは『ビーロボ カブタック』カブタックの中身を演じた田辺智恵氏。

怪人:妖怪

 時代の流れにより、姿形はかつてとは全く異なっているが、一応日本古来の妖怪達。
 ヌラリヒョンが封印されたことによって妖力を失ったため、人間体のままでいるしかなくなってしまった者が多かった。
 タクシー運転手として細々と生きてきたオボログルマや、ディスコを経営するなどして生計を立ててきたロクロクビのような者もいれば、アズキアライやヌエのように、人間界に潜り込んでそれなりに勢力を保っていた者もいた。

戦闘員:ドロドロ

 どういう種類かは分からないが、特殊能力を持たない最下級の妖怪。
 サイゾウやセイカイが同じく最下級の妖怪「屁の河童」にされながらヌエに立ち向かう姿を見て、思わず手助けしてしまうなど、妙に人間くさい奴ら。
 EDで主役を張っているように、この番組の顔とも言える存在。
 デザインは、ムンクの叫びを抽象化したものらしい。

 妖怪は、人間界の裏側にずっと存在してきたものであり、人工生命体の類ではない。
 妖怪は本来人間の想念のマイナスエネルギーの塊からカウンターウェイトとして生まれるため人間あるところ必ず発生し、根絶することは不可能であり、その必要もない。
 また、ザシキワラシやブンを見れば分かるとおり、全部が全部人間にとって危険というものでもなく、明確な侵略組織は形成されていない。
 今回の場合は、あくまで「大魔王」を自称する1体の強力な妖怪が他の妖怪を手足として使い人間を襲っていたと考えるべきだろう。
 ただし、明確な組織化こそしていないものの、妖怪による社会も形成されているようで、妖怪刑務所があったり「週刊妖怪」などという雑誌が発行されていたりもする。

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巨大化

 妖怪は、空に渦巻く妖気の雲からエネルギーを取り入れて巨大化することができる。
 元の大きさに戻るのも自在で、要するに全身に集めた妖気の量で体の大きさが変わるらしい。
 倒されると、自分のエネルギーは妖気の雲に帰っていくことになる。

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真実の物語

 2000年前、3人の賢者が隠流忍法を生み出して大魔王を封印し、その魂は昇華して三神将となった。
 そのうち隠大将軍は、自らを復活させるために必要な5つの忍びの巻を各地に飛ばしている。

 1000年前、人間と妖怪の戦いの中、三神将の弟子のニンジャマンは、人間に化けた大魔王に騙されて人間を傷つけたため、壺に封印されて宇宙に追放された。

 400年前、大魔王復活を目論むヌラリヒョンが妖怪忍軍を率いて戦ったが、鶴姫率いる先代カクレンジャーに封印され、妖怪達の力は失われた。

 そして10年前、鶴姫家当主よしてる(白面郎)は大魔王の存在を知り、太郎・次郎と共に妖怪世界に潜入した。

 だが、大魔王配下の者に捕らわれ、白面カは太郎・次郎の命と引き替えに大魔王の配下にされてしまう。
 呪いを掛けられて犬にされた太郎と次郎をブンと共に脱出させた白面カは、軍師として働くかたわら大魔王の弱点を探り続けた。

 そして現代、ヌラリヒョンの復活と共にカクレンジャーの戦いが始まるが、白面郎は大魔王復活のときを待ち続ける。

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ラストへの流れ

 1200歳の誕生日を迎えた大魔王は、生み出した分身ダラダラにニンジャマンのエネルギーを吸収させ、巨大化させて三神将と戦わせる。
 ダラダラを攻撃すれば、そのダメージは全てニンジャマンが受けることになるため、このままではニンジャマンが死んでしまう。
 一旦引いた三神将は、カクレンジャーに、次にダラダラが暴れればニンジャマンを死なせてでも倒す覚悟を語る。
 そして、白面郎に会ってダラダラの弱点と大魔王の本拠地を聞くよう命じるが、父が裏切り者でなかった喜びのあまり平常心を欠いた鶴姫は、大魔王らの待ち伏せに遭ってしまう。

 大魔王は、カクレンジャーのチームワークをかき乱すために白面カを泳がせておいたのだった。
 助けに出た白面カも、鶴姫達4人も捕らえられ、唯一残ったサスケもくノ一組に追い詰められたが、そのとき犬の太郎と次郎が人間の姿になって現れ、サスケを救った。
 そして、白面郎は捕らえられる直前、鶴の紋章にダラダラの弱点のデータを入れて猫丸に送っていた。
 太郎と次郎から白面カ裏切りの真相を聞かされ、鶴の紋章のデータを見たサスケは、大魔王にダメージを与えればダラダラを倒せることを知る。

 そのころ、街には鶴姫達のエネルギーをも吸収したダラダラが現れ、三神将はやむを得ず鶴姫達も殺す決意で出撃する。
 白面カにもたらされたガイコツ城の場所に潜入したサスケは、大魔王に一太刀浴びせて鶴姫達5人の奪われたエネルギーを奪い返し、隠大将軍に乗り込んで戦う。
 ダラダラを倒され、自身も傷ついた大魔王は、捕らえた白面カを石化してガイコツ城を浮上させた。
 
 妹ヤマンバを擁し、石化した白面カに呪いを掛けた大魔王は、白面カを操って街を破壊し、被害者達に白面カが鶴姫の父であることを教えると共に、鶴姫に白面カに掛けられた呪いを解く方法:解呪の剣で心臓を貫くことを教える。
 父を手に掛けさせることで鶴姫の戦士としての力を奪おうという策略だった。
 白面カの眠る洞窟に走る鶴姫と、それを止めるべく追うサスケ達、サスケ達の行く手を遮るヤマンバ達の戦いが続く中、父を殺すことを諦めた鶴姫を目覚めた白面カが襲う。
 再び人間化した太郎と次郎に救われた鶴姫を加え、隠大将軍に乗り込んだサスケ達と、無敵将軍、ニンジャマンだが、白面カに襲われた人々の怒り、憎しみ、欲望によって力を増した妖気の雲から無限のエネルギーを供給されるヤマンバには、全ての攻撃が効かない。
 カクレンジャーは、愛、希望、勇気という人間の善の心を集中することで妖気の雲を蹴散らし、遂にヤマンバを倒した。

 そして、太郎・次郎の命と引き替えに呪いの解けた白面カと鶴姫の感動の再会の中、大魔王は最後の戦いを挑む。
 だが、あまりにも無防備に襲いかかる大魔王を前に、なぜか三神将はカクレンジャーに攻撃を禁じる。
 実は大魔王は怒り、憎しみ、欲望の心の化身であり、大魔王を傷つければ、せっかく蹴散らした妖気の雲が復活してしまうのだ。

 人を襲う大魔王を前にして手出しできないカクレンジャーだったが、人間なら誰でも持っている怒り、憎しみ、欲望を心の奥底に封じることこそ妖怪を封じる道なのだと気づいた。
 それこそが最後の試練であり、試練を乗り切ったサスケ達は、三神将の助力により大魔王を封印の扉に閉じこめてドロンチェンジャーで封印した。

 全てを終えた5人は、人間が怒り、憎しみ、欲望を強く持てば妖怪は再び力を取り戻してしまうのだということを1人でも多くの人に伝えるため、猫丸でのんびりと旅に出た。

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傾向と対策

 『カクレンジャー』は、別名「不思議コメディー戦隊」とも呼ばれ、シリーズの転換点となった作品だ。
 この理由として、前年に終了した不思議コメディーシリーズ最終作『有言実行三姉妹シュシュトリアン』から鶴姫役広瀬仁美やスタッフの一部が流入していること、同シリーズに付き物だった説明役の変な脇キャラの延長として講談師が登場していること、アメコミ調にデザインされた初期妖怪達の容貌などが挙げられる。
 そして、“世界征服を目指さず、特定の組織に所属していない怪人(妖怪)達”という一風変わった敵を相手にしていること、主人公達がいかにも(当時の)今風な若者で、当初は子供達のヒーローという印象ではなかったことなどから、イマイチ真剣味に欠ける戦いが毎週展開されることになった。

 また、本作はアメリカ『パワーレンジャー』への輸出を前提に企画された初めての作品でもあり、妖怪のデザイン・忍者というモチーフ・アメコミ調効果文字(手裏剣の飛ぶ「SHU SHU SHU」など)など、随所に“何か間違ったアメリカ向けテイスト”が見られる。

 これらのため、この『カクレンジャー』は、正当派ヒーロー好きな人間からすればかなり頭の痛い番組であり、しかも妖怪を復活させた原因が(一応)主役であるサスケだということもあり、世のため人のために戦っている気がしないという大問題を抱えている。
 また、妖怪の姿がいわゆる伝統的な妖怪像と違いすぎるデザインだったりすることもあって「昔の○○は××だったが、今の○○は△△なのであります」といった講談師による解説が入るわけだが、それが妙にわざとらしくてどうにも滑りが悪いため、空回りしてしまっている感が強い。

 2クール目に入ると、なぜか番組ラストに講談師がクイズを出し、その答がEDの終わり際に表示されるというのが恒例になる。
 が、クイズの内容自体が、最初こそシュテンドウジの角の数だったりしていたものの、徐々に番組と関係ない問題になっていき、第1部の終了で講談師が消えたのに伴って終了するなど、試行錯誤の跡が見てとれる。
 なお、講談師の降板に伴い、妖怪の能力説明等は妖怪自身の口から行われるようになった。
 やっぱり「この俺(○○)様は、昔は××だったが、今では△△なのだ〜」調の説明になるのだが、目の前に立ちはだかった敵にいきなりイラスト付きで自己紹介を始められるとなんだか妙な気分になってしまう。
 これもまた試行錯誤の1つと言えるだろう。
 
 そして、『カクレンジャー』はリーダーがレッドではない初めての戦隊であり、その意味でも異色作となっている。
 ただし、鶴姫が『戦う姫君』という役割を持って、先頭に立って有象無象のサスケ達を率いていくという形は、鶴姫がキャンキャン叫んでばかりで、リーダーシップをとるタイプではなかったことも相まって、どうにも統率が取れていない印象を与えた。
 カクレンジャー側に指揮官やアシスタント的な一歩引いたキャラがいない(三太夫がそれに近いが)ことや、初期エピソードでサスケ達個人にスポットを当てた話で、そのキャラ1人が孤立して動いていたことなどもそういった印象を与える一因であり、一方で敵方にも明確な組織性を持たせていないため、敵も味方もバラバラな個対個の対決という図式になっている。
 初期1クールは、アズキアライが周辺の妖怪の顔役としてまとめ役になっていたほかは本当に組織化されていない連中ばかりだ。

 2クールに入ると、貴公子ジュニアとユガミ博士が敵方代表という形で登場する。
 ただし、この時点ではやはり組織というより“ジュニアが知り合いの妖怪を次々と呼んではぶつけてくる”という印象が強い。
 シュテンドウジ兄弟は妖怪刑務所から連れてきたわけだし、配下の妖怪を使うというより、カクレンジャーが立ち寄った先々で、地元の妖怪を利用した作戦を立てているといった雰囲気が強いのだ。
 だが、敵方にジュニアという代表者を置いたことで、番組の体裁として、カクレンジャー側に倒すべき敵の存在が明確に認識されるという効果はあった。
 そして、強敵との戦いでピンチを助け合って切り抜けていくという形になり、それらを核にして徐々に5人に友情が芽生えていく姿を描いていくことになっていく。
 
 そうなったところで、遂に妖怪側にも組織性が生まれる。
 大魔王の復活という番組最大のイベントだ。
 ジュニアによる大魔王復活の儀式を阻止するには、隠流忍法の奥義“心・技・体”を極めなければならず、“技”の化身である隠大将軍を呼び出すための5つの「忍の巻」を手に入れるため、サスケ達は個々バラバラに旅に出ることになる。
 儀式完成までの1か月の間に5つの「忍の巻」を手にするには、5人が一緒に行動していては間に合わない、しかも「忍の巻」が課するそれぞれの試練を1人1人が乗り越えなければならないという理由から、5人は泣く泣く仲間と別れていく。
 こうして、1か月にわたる復活の儀式という、トクサツ番組ではあまり類を見ない大規模なイベントの中、せっかく一致団結したチームが再びバラバラに行動することになる。
 既に揃っているチームをわざわざ分割して行動させるというのは、鷹羽は『鎧伝サムライトルーパー』で、烈火の遼ら5人が超弾動力を求めてそれぞれ復活の地で修行するというネタくらいしか思いつかない。
 特に第2部の1話目となった25話『新たなる出発』では、サスケ以外の4人はちょっと映るだけで、本当にサスケ1人の戦いだけを描いた。
 ただし、鶴姫のときにはサスケ達の人形(ロボット)が鶴姫をサポートしたし、サイゾウとセイカイは2人ペア、ジライヤのときはサスケが駆けつけている。
 これは、やはり戦隊ヒーローを単独で描くのが画面的にも苦しいことなどによる妥協だろう。
 このため、同時進行で旅に出たのにミッション達成の時期がずれている、もっと言うと目的地に到着するまでの時間が数週間単位でずれていることになってしまった。
 しかも、ジライヤが目的地に着いたときにはサスケが忍の巻を手にして追いついているわけで、考えようによってはバラバラに行動したのが無意味だったかのようにさえ見える。
 戦力の分散は、戦術上不利なことが多いわけだし、だからこそ通常は5人で戦っているのだから、同時に数ケ所で戦わなければならないという部分をもっと強調するべきだったろう。
 その分強調されているのが、忍の巻が5人に課した試練だ。
 それぞれ与えられる試練が違い、しかも自力で乗り越えなければならないとされたことで、一応バラバラに行動したことの言い訳がついた。
 そして一旦バラけて寂しがらせてみせることで、再集結したときの団結力の強さに説得力が生まれ、最終回での“戦いは終わったのに、まだ5人一緒に旅をする”という特殊な終わり方に繋がるのだ。

 スーパー戦隊シリーズでは、戦いが終われば5人の戦士はそれぞれの道を歩くために解散するのが通常で、元々一緒にいた5人組(フラッシュマン、ファイブマン、カーレンジャー、ギンガマン、ゴーゴーファイブ)を除けば、戦いが終わった後の新たな生活の場を敢えて5人一緒に送ることを選んだ戦隊はダイナマンとカクレンジャーしかない。
 こういったアットホームな一体感は、カクレンジャーの大きな特徴の1つとなっている。
 
 だが、こうして強い絆で結ばれた5人に対し、せっかく組織化した敵方がどうにも結束が弱い上に、それが強い結束対弱い結束という対比にもならないのは問題だ。
 儀式は阻止したのになぜか復活した大魔王は、鶴姫の父である白面カを軍師として前面に出して精神的な揺さぶりを掛ける形で対抗してくる。
 確かにそれ自体は無駄なことではないのだが、大魔王は白面カの裏切りを知っているわけで、結局白面カを生かしておいたことには鶴姫への人質的な意味合いしかなく、そのためにジュニアを無駄死にさせ、ダラダラの弱点を暴露されることになったのだから、もうどうしようもない。

 これはシリーズ構成上の失敗として見るべき要素だろう。

 白面カが本当はカクレンジャーの味方であるということは、登場当初から明確に出されている。
 それを鶴姫が知らないまま物語を引っ張ったことには、前年の嘉挧の裏切り同様、一時的に視聴者の興味を惹くこと以上の意味は感じられない。
 同様の無意味な伏線として、ニンジャマン初登場時の「やがてニンジャマンが三神将を倒すことになる」という大魔王の予言がある。
 こっちはまだ、ダラダラの作戦のことだと言えば問題ないかもしれないが、ニンジャマンを騙したり操ったりして云々というのではないため、やはりハッタリくさいのは否めない。
 
 そもそもこの『カクレンジャー』は、最初から大きな問題をいくつか抱えている。
 猿飛佐助と児雷也が同年代の忍者ではないという基本的な部分はとりあえず無視するが、そもそもの発端である“サスケとサイゾウがカッパに騙されてヌラリヒョンの封印を解いてしまった”ということ自体が問題の塊だったりする。
 サスケ達がカッパに騙されて動き回っているとき、三太夫は既に姿を見せているのであり、一言忠告すれば事態は終わっているはずだ。
 また、この時点で三太夫の力はサスケ達を大きく上回っているのだから、口で言って聞かなければ力ずくで止めればいいだけの話で、どう考えても三太夫にヌラリヒョンの復活を止める気がなかったのがはっきりしている。
 こう考えると、むしろヌラリヒョンの封印を解かせることで、サスケ達に戦う責任を負わせているのではないかとさえ思えてくるのだ。
 また、大魔王復活のときに白面カがカクレンジャーの邪魔をしていることの言い訳も全くなされていない。
 復活さえしなければ大魔王の弱点を調べることも不要なのだから、自分の正体を悟られないためだけに復活阻止の邪魔をするというのは本末転倒だし、そもそもヌラリヒョンの封印が解かれていなければ、ジュニア達も妖力がほとんどない状態だったはずなのだ。
 この場合、“現代という人間の悪意に満ちた時代では、大魔王復活は阻止不可能な段階になっていた”というようなエクスキューズが必要なはずだ。
 この一言で、白面カの行動も正当化されるし、大魔王が復活する以上、ヌラリヒョンごときは小者として捨て置くという考え方もできるし、大魔王封印後にヌラリヒョンのことをすっかり忘れ去ってしまったことにも納得できる。
 今回は、大魔王が封印されたことによって妖気の雲(怒り、憎しみ、欲望のエネルギー)が消滅したことから、取りあえずヌラリヒョンやほかの妖怪達が力を失っているであろうことが窺えるからだ。
 どうしてヌラリヒョンと戦うことなく終わってしまったのかは分からない。
 ジュニアや大魔王が登場したことで、出しようがなくなったのかもしれない。
 だが、少なくとも当初敵の総大将のような扱いで登場させた以上は、戦わなくて済む理由を番組中で出さなければ、中途半端のそしりを免れないだろう。
 
 こういったストーリー的な部分のほかにも、『カクレンジャー』には妙な部分は多い。
 そもそも企画そのものが変なのだから、ある程度は狙っていたのだろうが、ミスマッチ感覚を狙った確信犯にしては微妙にズレており、何も考えずに受け狙いの要素をかき集めたのではないかと邪推したくなる。

 まず、何と言っても忍者が妖怪と戦うというのが変だ。
 普通、忍者が戦う相手は忍者であり、忍術で魑魅魍魎と戦う番組はあまり聞かない。
 『忍者キャプター』にしても『世界忍者戦ジライヤ』にしても、ほとんど怪物みたいな奴もいるが、一応忍者対忍者という図式になっている。
 『仮面の忍者 赤影』のように怪獣と忍術で戦っていた怪しい忍者の最高峰があるから、妖怪と戦うというだけで鬼の首を取ったように騒ぎ立てるのは大人気ないが、やはり妖怪がマキビシを踏んで痛がる姿はシュールだ。
 『カクレンジャー』の場合、ご丁寧に銃も剣も特殊なことが一目で分かるし、手裏剣だってちょっと特殊な形をしているのに、マキビシだけはどう見ても何の変哲もないのだからますます変だ。
 一応、ヌラリヒョンが妖怪忍軍の総大将であるという設定に、制作者側が忍者対忍者という線を狙っていたことが表れている。
 これは結局、前作『ダイレンジャー』の初期で拳法対拳法というのを狙って途中で諦めたのと同様に、あっという間に忘れ去られてしまった。
 ヌラリヒョンが最後まで登場しなかったのは、今更妖怪忍軍の頭領に出てこられても困るからだろう。
 開き直って忍軍という設定を忘れて登場させる手もあっただろうが、やはり、当初敵の首領的立場として登場した妖怪、しかも大魔王の直接の配下でない者を登場させるのはためらわれたのだろう。
 そもそも「忍者」という企画そのものが、恐らくアメリカへの輸出を前提にしたせいと思われる。
 変身前も忍者装束で戦うとなれば、素面でのアクションシーンもそのまま流用できるわけで、流用素材が増えることは、向こうでの撮影作業を軽減する上で相当なプラスになる。
 敵妖怪達のデザインにしても、人間の顔出し幹部がジュニアとユガミしかいないのも、そういった考えからだろう。
 
 ただし、そういった少々無理のある展開のため、いくつかしわ寄せがきてしまった。
 その最大のものは、ある日突然、それまで何の自覚もなかったサスケ、サイゾウ、セイカイが忍法の名手になってしまったことだ。
 それまでただのフリーターだったサスケ達が、スーパー変化する前から抜け身の術を駆使する姿は一種異様ですらある。
 何の力もなかった人間が成長していく物語として考えるなら、一足飛びに能力が鶴姫達に追いついてしまったのは失敗だろうし、最初から凄い奴として考えるには、カッパに騙された姿が情けなさ過ぎる。
 こうした中途半端さ加減は、やはりマイナスポイントだろう。
 
 序盤戦の踊りまくる妖怪達というのも、好き嫌いの分かれるところだろう。
 何を思って、当時既に衰退していたジュリアナブームを引きずってしまったのか分からないが、ジュリアナ系のBGMが初めて戦闘シーンに流れた時の衝撃は結構大きかったことを覚えている。
 このジュリアナ系の曲は、番組終盤になっても戦闘シーンで使用されており、『カクレンジャー』戦闘シーンBGMの代表格になっている。
 
 第2部からはかなり普通のヒーローっぽい展開が多くなってきたが、それでもやはりどこかとぼけた部分があり、それが『カクレンジャー』の大きな特徴でもある。
 シリアスな展開もコメディタッチの展開も自在にこなせる土壌を作ったという点では、開始当初の妙なノリにも十分意味があったと言えるだろう。
 
 変なノリの代表格と言えるのが、上でも挙げている『おしおき三姉妹』でのシュシュトリアンネタと『特別編だよっ!!』での突撃リポートだろう。
 『おしおき三姉妹』のときは、次回予告時のBGMでも少し遊んでいて、『シュシュトリアン』OP『思い立ったが吉日!』のインストゥルメンタルで始まり、途中からいつもの予告BGMに変わっていくというもので、鶴姫によるナレーションでも
「雪姉ちゃん、月姉ちゃん! 花ちゃんはあたし…じゃないか。
 それじゃ、有言実行三姉妹…じゃない、忍者戦隊カクレンジャー『おしおき三姉妹』」

などととんでもないことを言っている。
 また、『特別編だよっ!!』では、講談師がテレビ局のスタッフを引き連れて、サスケ達の寝姿をこっそり覗いたり、当時まだどこにあるかも判明していなかった大魔王の本拠に忍び込んだりしている。
 これは通常の番組だったら「おいおい」となるようなかなりの悪ノリなのだが、この『カクレンジャー』にはそれが許されるような土壌があったということなのだ。
 
 その一方で、44話『傷だらけ大逆転』の予告では、BGMに『星よ、にじむな!』を歌入りで使い、ナレーションもなく「痛みも、恐怖も感じなかった。ただお前達のことを思い、俺は走った」というサスケのモノローグでやっている。
 そして、それほどシリアスに決めた翌週にサンタの住む国に行く話になり、49話『突然!! ビンボー』50話『特選!! 妖怪の宿』の翌週から最終決戦が始まるというごった煮ぶりが、この番組の味なのだ。

 カクレンジャー5人の側だけ見れば、確かに忍者物としての体裁をある程度保っていたと言えるだろう。
 レッドは火遁、ブルーは水遁、ブラックは土遁という具合に、忍者としての系統を持っていたし、攻撃を受けたときにスーツだけ残して消える抜け身の術など“いかにも”忍者らしい技も使っていた。

 特に、レッドの分け身の術は代表的な技だった。
 これはOPでもやっているが、敵の剣を肩に受けた瞬間、レッドが2人になって左右に分かれ側転して剣をかわし、敵を左右から攻撃できるという技だ。
 撮影としては、肩に剣が当たった瞬間で一旦カメラを止め、レッドの後ろにもう1人レッドを立たせてカメラを回すというだけなのだが、カットの繋ぎ方が巧いため、スピード感があって、レッドが本当に2人に分かれたかのような印象を受けるのだ。
 猿飛佐助の子孫という設定のせいもあって、5人の中で一番身が軽いのがレッドという面白い形になった。
 
 ただ、そういういい部分もあるにせよ、問題も多い作品なのは確かだ。
 上でいくつか挙げているが、もう一度整理してみると、

と枚挙に暇がない。

 実のところ、これらが問題になるのは、一応不思議コメディシリーズではなくスーパー戦隊シリーズだから、ということになる。
 不思議コメディならば不条理で当然というイメージがある。
 だからこそ、敵が“十二支に入れなかった猫”だったり、正体がばれたらローストチキンになるなどというような不条理なペナルティが課されても、誰も文句を言わない。
 だが、スーパー戦隊シリーズには、最低限ヒーロー物としての体裁が必要なため、戦闘による話の盛り上げやピンチによる緊迫感、敵の強大さの強調といった要素が必要になる。
 そのため、『カクレンジャー』はどちらとも言えない中途半端なものになってしまった感がある。
 これが、後の『カーレンジャー』になると、より不思議コメディ色が強くなり、不条理が通りやすくなっている。
 その分、真面目に戦っている印象が更に薄くなってしまい、正当派ヒーロー物を求める人はおしなべて『カーレンジャー』を嫌う傾向があるようだ。
 鷹羽は、バカに徹した分だけ『カーレンジャー』の方が『カクレンジャー』より好きだ。
 つまり、『カクレンジャー』が問題なのは、基本形は真面目に戦っているはずの番組なのに不条理を感じさせる展開が多いということなのだと思う。

 それと、内容的なものとは全く関係ないのだが、巨大化が手抜きになったのもこの作品からだったりする。
 元々このシリーズでは、巨大化した怪人を下から空を背景にアオリで撮ることで、巨大感を出していた。
 だが、『カクレンジャー』では、撮影場所の関係か空が背景になりきれないことが多い。
 具体的に言うと、建物や電柱などがある場所で撮影しているために、下からアオリで撮ってもバックに建物の屋根や電線が映りこんでしまうのだ。
 巨大な敵の頭上に電線…これでは気分が台無しだ。
 こういうところに気を使わなくなったのか、それともそういう場所でしか撮影できなくなったのか…いずれにしても残念なことだ。
 
 なお、『カクレンジャー』にはもう1つ特徴がある。
 それは、“6人目の戦士が人間の姿を持たない”ということだ。
 登場も通常より1クール以上遅く、『今年は6人目は出ないんだろう』と思っているところに登場した上、人間の姿にならなかったことの衝撃は大きかった。
 当時鷹羽が耳にした噂に“6人目の人間体を演じる予定の役者の事務所との折り合いが付かなかったらしい”というのがあったが、真偽のほどは分からない。
 前作『ダイレンジャー』から始まったキャラ萌え傾向は、『カクレンジャー』では更に強くなっており、制作側でも少なからずそれを考慮したキャスティングをしていたのではないかと思われるが、その関係で何かもめたのかもしれない。
 バンダイの『Bクラブ』でも、サスケ達を取り上げて特集記事を組んだりしていたし、くノ一組の面々まで特集を組まれたことがあったくらいだ。

 番組全体としてのムーブメントも大きく、前年に続いて東映ヒーローフェアと称して『ブルースワット』『仮面ライダーJ』と抱き合わせでの劇場公開をしており、ゴールデンウイークには高輪プリンスホテルでスーパー戦隊ワールドというスーパー戦隊シリーズのイベントを開いている。
 また、そのイベント専用に『ファイブマン』〜『カクレンジャー』が共演する立体映画が撮影されている。
 なお、この時点では、バトルジャパン以下歴代のレッドの衣装が展示されているが、アカレンジャーのマスクがスーパー戦隊系の小道具とは別に参考展示されており、この時点で『ゴレンジャー』がスーパー戦隊に数えられていないことが分かる
 また、この当時は、大泉にある撮影所の一部を開放しての撮影使用小道具等の展示イベントや本人の顔出しトークショーなども行われており、全般的にムーブメントは大きかったようだ。
 
 そういったモーメントのうち、役者人気が最も色濃く表れているのが後楽園野外劇場だろう。
 野外劇場では、やはり『ダイレンジャー』に引き続いて秋公演での本人ショーが行われており、役者目当てに裏口で待ち伏せるファンが出没した。
 当時、後楽園野外劇場には、何十人もの鶴姫、サスケの格好をした人達が押し掛けた。
 下手をすると、都内在住の人が自宅からその格好でやってくるというコミケも真っ青な状況になっており、ファン同士の派閥まで生まれて罵り合うような状況も出ていた。

 そして、これらの事態は、無視できないレベルに非常識化していったのだ。

 野外劇場では、通常、1回のショーごとに入場整理券を配布し、整理券番号順に100人ずつ入場するという方式を採っている。
 通常は、ショーが始まると次の回のショーの整理券を配布するのだが、本人ショーの際には、多少の時間差をもって1〜5回目全てのショーの分の整理券が配布されていたため、1人で数回分の整理券を入手するのは難しい。
 そこで、5回分のショーの整理券をいかに効率的に入手するかということに腐心する大きなお友達が、グループを作り、手分けして並んで融通し合う(余裕をみて1人が20枚くらい貰ったりすることもあった)などするようになったため、本来の客層であるべき一般親子客が座って見られないという本末転倒な事態に発展してしまった。
 これは、整理券順に入場になり、整理券を持たない人はまともに座って見られないことを知らない親子連れが、“劇場前で並んでいれば開場と同時に入れるはず”と信じて1時間以上待った挙げ句、「整理券のない人は入れないので下がってください」のアナウンスにショックを受けたり、乗り物に乗って遊んだ後に整理券配布場に来てみたら既に配布は終了していたという不幸な事態に遭遇するなど、場慣れしていない普通の人が貧乏くじを引く羽目になっていた。

 こうした事態に、野外劇場側としては、1人が貰える整理券の枚数を制限(2〜3枚までとか)したり、劇場中央最前列から数列の特等席部分を「ファミリー席」と定めて親子連れ以外座れないことにしたりするなどして対応した。
 ただし、これには“ファンが独身者ばかりとは限らない”という大きな抜け道があり、カモフラージュ用に子供を連れてくる母親が登場し、更に母親の友人が最前列に座るために子供を借りるという恐ろしい事態になった。

 これらファンに手を焼いた劇場側は、それまで大人も入会可能だった秘密隊員クラブに年齢制限を設け、更に本人ショーのみ入場料を高く設定するという手段に出る。
 この「秘密隊員クラブ」というのは、年会費2,000円を払うと、年間通して野外劇場の入場が無料になる会員証を貰えるというもので、当時1回のショーが500円だったことから、5回ショーを見るつもりなら入会した方が安くなるというお得なものだった。
 さらに、半券を千切ってもらわねばならないチケットと違い、バッジを見せるだけで入場できるため、混雑している入場口を比較的早く通過できるという効果まであった。
 これらがなくなったことで、ショーを何度見ても懐が痛まないという常連の特権は失われた。
 だが、隊員クラブの年齢制限はともかく、ショーの入場料が値上げされたという点については、やはり一般親子客の方がダメージが大きかったと思われる。
 親子3人で入場する場合、100円の値上げでも3人で実質300円の値上げになる。
 これだと安い乗り物に一回乗れるわけで、長蛇の列に並んで整理券を入手し、1,800円を払って入場に1時間近く掛かった上に、舞台正面に面した席にはいい年した兄ちゃん姉ちゃんが陣取っていて自分達が並んで座れるような席は残っていないとなれば、不満を感じもするだろう。
 このころの野外劇場は、親子連れに優しくないシステムにならざるを得なかったのだ。
 
 かといって、役者が悪いわけではないのは当たり前のことで、むしろ役者5人はテレビにせよショーにせよ真面目にやっていたと思われる。
 特に、サスケ役小川輝晃氏は、サスケには“抜いた刀を右肩に担ぐ癖”があると設定し、ニンジャレッド役・高岩成二氏と話し合って、その旨統一していた。
 言うまでもなく、変身前と変身後の一体感を強めるためだ。
 これは、当時小川氏が雑誌のインタビューで話していたのだが、彼の方から高岩氏に話を持ちかけたということで、実際、画面を見てみるとサスケもニンジャレッドも刀を抜いた状態で立っているとき、刀を右肩に載せている(細かいことを言うと、担ぐ角度が違うのだが)ことが分かる。
 役作りを大切に考えていたことが窺われるエピソードだ。
 高岩氏は、後年『仮面ライダー龍騎』で龍騎を演じたスーツアクターでもあるが、主人公城戸真司と龍騎の一体感を生んでいたのは、この当時培われたスタイルだったのではないかとさえ思える。
 
 また、前述の後楽園野外劇場での2月の最終公演は、やはり本人ショーになっていたのだが、そこでの最終日、千秋楽公演(この日は雪が降ったため、最終上演しかされていなかった)で、サスケ達5人が涙ながらに挨拶した際、最後に挨拶した小川氏が
  君達がこれから生きていく上で、苦しいこと、辛いこと、頑張ることが沢山あると思う。
  そのとき、この同じ空の下で、きっと僕も頑張っています。
  それを忘れないでほしい

と挨拶している。
 また、小川氏の音頭取りで、最後に5人が舞台の方に向かって、「JACの皆さん、ありがとうございました!」と挨拶している。
 鷹羽は、本来、こういった子供も見ているショーの現場で、主役自ら子供の夢を否定するようなこと(自分がニンジャレッドのスーツを着ているわけではないこと)を公言するのは嫌いなのだが、彼らが真摯に仕事上のパートナーであるスーツアクターの面々に感謝の意を表したということについては好感を持っている。
 
 『カクレンジャー』は、シリーズ構成やキャラクター設定にはかなり難のあった番組だが、正義側の役者はそれなりに良かったのかな〜、などと思っている。

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