恐竜戦隊ジュウレンジャー

平成4年2月21日〜5年2月12日 全50話

主題歌

 OPは、『ターボレンジャー』を歌った佐藤健太が歌っている。
 イントロが1分以上も続くというもの凄い歌だが、結構盛り上がる曲になっている。
 反面、ED曲は、「これが戦隊の歌か!?」と思うくらい軽いノリで、当時少々物議を醸した。
  水を引くんだ運河 ウンガ  お米作ろう田圃 タンボ
といった歌詞は、その曲調もあって脱力感抜群。
 歌として見ればそんなに悪いものでもないのだが、やはりヒーロー物のEDとしてはどうかと思う。
 もっとも、それが良くも悪くも『ジュウレンジャー』という番組の味ではあったのだが。
 ただ、当時、ブライの最期を見た後でこの曲を聴くと涙が出るという意見を某同人誌で読んだのが心に残っている。
 ちなみに、これがスーパー戦隊シリーズ初の “OPとEDのボーカルが違う番組”になっている。

 また、ロボットの曲が過去最低のもの(当社比)になっており、「大獣神 獣神 大獣神!」というサビの部分が特に脱力感バリバリになっている。
 合体ロボのCMで使われていた 「だ〜い〜じゅ〜う〜じん〜♪」という歌の方がよほど耳に心地よい。

 『Dolla!』は、歌っているのがバンドーラ本人で、番組中でもよく歌っていたこともあって、非常に印象が強い。

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基本ストーリー

 1億7千万年前、地球には恐竜から進化した人類が生息していた。

 あるとき、魔女バンドーラが5部族に攻め込んだことによって大戦争となり、ヤマト族の王をはじめ多くの民が死んだが、5部族の守護獣達の加勢もあって、バンドーラは敗れ、封印されて惑星ネメシスに追放された。
 そして、バンドーラの封印が解ける日のことを考えた5部族は、それぞれの代表者1名を選んで人工冬眠させ、不思議仙人バーザをお目付役として残した。

 そして現代、惑星ネメシスに着陸したスペースシャトルの乗組員が封印の蓋を開けてしまったため、バンドーラは復活し、地球へとやってきた。
 ビルを幾つか奪って月面にバンドーラパレスを築いたバンドーラは、遊びとして、シャトルに乗っていた子供を殺すことにする。
 そのとき、バーザによって眠りを覚まされた5部族のナイト達は、恐竜戦隊ジュウレンジャーとなってバンドーラに挑む。

 バンドーラの配下であるドーラモンスターとの戦いに、復活した守護獣達も交えての戦いが始まった。

▼ 「真実の物語」は…

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メンバー

ティラノレンジャー:ゲキ

 ヤマト族プリンスで、ティラノザウルスを守護獣とする正義の戦士
 個人武器は龍撃剣で、ティラノザウルスのメダルを持つ。
 本人も知らなかったが、実はヤマト族王の子ではなく、ヤマト族の黒のナイトの次男で、赤ん坊のころに養子になっていた。
 兄の存在を知らなかった分、相当なブラコンになっており、ブライが絡むと判断力を失う。
 ドラゴンレンジャー・ブライから獣奏剣、胸の鎧:ドラゴンアーマー、両腕のリング:レンジャーアームレットを引き継いだことで、アームドティラノレンジャーに二段変身を遂げるようになった。
 その際、ベルトはドラゴンバックラーに変わる。

マンモスレンジャー:ゴウシ

 シャーマ族ナイトで、ジュウマンモスを守護獣とする知恵の戦士
 個人武器はビームガンにもなるバトルアックス:モスブレイカーで、マンモスのメダルを持つ。
 知恵の戦士の割には知恵が足りないが、メンバーの中で真面目にものを考えられるのがゲキとゴウシだけなので、冷静さを失いやすいゲキのフォローに回ることが多かった。
 かなり無表情なキャラクターであり、ドーラピクシーの術でサイドザウラー2に恋したときのハマリようは不気味ですらあった。

トリケラレンジャー:ダン

 エトフ族ナイトで、トリケラトプスを守護獣とする勇気の戦士
 個人武器は三つ又の槍:トリケランスで、2本に分離させることもできる。
 トリケラトプスのメダルを持つ。
 今作の美形担当なのだが、2枚目にはなれなかったこともあって今ひとつ影が薄い。
 何かというと、真っ先に弱音を吐くのはダンだった。

タイガーレンジャー:ボウイ

 ダイム族ナイトで、サーベルタイガーを守護獣とする希望の戦士
 個人武器は2本のサーベルダガーで、サーベルタイガーのメダルを持つ。
 また、35話『忍者戦士ボーイ』では、分身の術などの忍者技を身に付けていた。
 演じるは、『世界忍者戦ジライヤ』で山地学を演じた橋本巧で、バク宙が得意らしくOPでも披露している。

プテラレンジャー:メイ

 リシヤ族プリンセスで、プテラノドンを守護獣とする愛の戦士
 個人武器はプテラアローで、プテラノドンのメダルを持つ。
 演じるは、当時新人アイドルで、後にチェリーベイブ社長になったチバレイこと千葉麗子。

お目付役:不思議仙人バーザ

 5部族とは直接関係ない種族らしい。
 1億7千年前にバンドーラとの魔法合戦に敗れて魔法を封じられ、今でもほとんどの魔法を使えないままになっている。
 ジュウレンジャーが眠る神殿の上に建っているビルの管理人をしており、エレベーターで神殿に降りられるようにした。
 ジュウレンジャーのメダルを預かり、バンドーラ復活に合わせてゲキ達を起こすのが役割だったが、鍵の手入れをしていなかったために折れてしまい、ゲキの眠る部屋のドアを開けることができず、大砲でドアを撃ち破ろうとするなど、とにかく思慮が浅くその場しのぎに徹する役立たず。
 ブライの眠りを覚まそうとする5人に事情を説明することなく戦車で攻撃するなど、何を考えているのか理解に苦しむ。
 最後には魔法の使い方を思い出した。

 演じるは、トクサツ物古参の多々良純だが、『帰ってきたウルトラマン』 のころより演技が下手になっているのはどうしてだろう?

ドラゴンレンジャー:ブライ

 ヤマト族黒のナイトの長男で、ドラゴンシーザーを守護獣とする力の戦士
 ゲキの兄であり、自分の父を殺したヤマト族王を恨むあまりゲキを憎むようになった。
 ゲキ達が眠りに就いたのを知って、自分も盗み出したドラゴンバックラーと共に眠りに就いて復讐の時を待っていた。
 当初はバンドーラに荷担するなどしてジュウレンジャーと敵対していたが、ゲキの心に触れて目覚め、以後は正義の戦士として戦うようになる。
 武器は獣奏剣で、爪を象ったメダルとドラゴンバックラーを持つ。
 氷河期のころに岩の下敷きになって一度死んだが、大獣神が命の精霊クロトに頼んで蘇らせた。
 そのため、残った寿命が30時間になったとき、クロトによって時の止まった部屋に住まわされることになった。
 ここから出ると、寿命はどんどん減っていく。
 ブライは、それでもゲキ達のピンチを救うために外へ出て戦うのだ。

 演じるは、『チェンジマン』のチェンジペガサス:大空勇馬こと和泉史郎。

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変身システム

 ベルトのバックル部に付いているダイノバックラーを外し、「ダイノバックラー!(ドラゴンレンジャーのみ「ドラゴンバックラー!」)」の掛け声と共に正面にかざしてスイッチを入れると、ダイノバックラーが上下に開いて変身する。
 バックラーの中心には、それぞれの守護獣を象ったメダルがはまっており、それが全ての力の源となっているため、メダルを外すと変身できなくなるが、変身後に外しても短時間なら変身したままでいられるようだ。
 普段は裏返しに付いているダイノバックラーが、そのまま変身後のベルトのバックルになるわけで、デザイン的な面白さ、変身後との一体感はそれまでの変身アイテムと一線を画すものになっている。
 また、後から登場したドラゴンレンジャーだけが金色のバックラー(ほかの5人は銀色)という変化の付け方もなかなか。

 スーツは、頭部はそれぞれの守護獣の口の部分がゴーグルになっている。
 胸や手袋、ブーツの市松模様のようなデザインが非常に格好悪く、ドラゴンレンジャーのようにこの部分を隠すだけであれほど格好良くなるものをどうしてと言いたくなる。
 ドラゴンレンジャーの身体は、基本的にほかの5人と共通だが、胸のドラゴンアーマーと腕のレンジャーアームレットが全く違うシルエットを与え、よく見ると手袋とブーツにも金色のリングが付いている。
 アームドティラノには、この手袋とブーツのリングは受け継がれなかった。

 オモチャは、ダイノバックラー、ドラゴンバックラーと2種類出ている。
 ダイノバックラーには5人分のメダルが付属しているが、プラスチックにメッキしただけの安っぽい物で、ちょっと情けない。
 そのせいか、『てれびくん』あたりで金属製のメダルのプレゼントをやっていた。

名乗り

 「ティラノレンジャー、ゲキ!」

 「マンモスレンジャー、ゴウシ!」

 「トリケラレンジャー、ダン!」

 「タイガーレンジャー、ボウイ!」

 「プテラレンジャー、メイ!」

 「恐竜戦隊! ジュウレンジャー!!」

というのが通常パターン。

 このほか、22話『合体!剛龍神』で6人揃った記念に名乗った

 「ティラノレンジャー、ゲキ!」

 「ドラゴンレンジャー、ブライ!」

 「マンモスレンジャー、ゴウシ!」

 「トリケラレンジャー、ダン!」

 「タイガーレンジャー、ボウイ!」

 「プテラレンジャー、メイ!」

 「恐竜戦隊! ジュウレンジャー!!」

というパターンがある。

 ちなみに、ティラノレンジャーとドラゴンレンジャーの名乗りポーズはほぼ左右対称になっている(ドラゴンは指を鉤爪状に曲げて動きもワイルドだが)ので、真ん中に2人並ぶと結構絵になる。

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武器

 メイン5人の基本装備は、左腰のホルスターに入っているレンジャースティック
 龍の顔のようなデザインになっており、先端から刀身を出して短剣:レンジャーソード、グリップを降ろしてビーム銃:レンジャーガンに変形する。
 レンジャーガンへの変形が絵になっているのが特徴で、ホルスターから右手で抜いた後、左手で銃口を手前に倒し、回転させて敵方へ銃口を向け、その後左手で龍の顔の部分を前方に押し出すという変形パターンを持っている。
 これはオモチャの方でも再現でき、ショーでも使える小道具だった。

 個人武器としては、4話『蘇れ伝説の武器』で手に入れた5つの伝説の武器龍撃剣モスブレイカートリケランスサーベルダガープテラアローがある。
 これらは、変身前も(普通の武器の形になって)使えることや、レンジャーソードより間合いが遠い(要するに長い)ことなどから多用された。
 また、これらが合体するとハウリングキャノンという必殺武器になるが、珍しく1年通して主力必殺技として使われている。
 ハウリングキャノンは、モスブレイカー銃モードの上にプテラアローを載せ、そこにジェット機のエンジンよろしくトリケランス、サーベルダガーを後ろ向きに左右1つずつぶら下げ、上に正面を向けた龍撃剣を載せて完成する。
 モスブレイカーとトリケランス、サーベルダガーが5つの銃口になるのだ。
 どう見ても龍撃剣だけ何の役にも立っていないのだが、その辺については下で説明しよう。

 後に手に入れたのがサンダースリンガーだ。
 ドキータ粘土で作られた強化ゴーレム兵を倒すための唯一の武器として、大獣神がゲキとブライに取りに行かせた。
 キングブラキオンが守る沼に隠されており、ティラノレンジャーから龍撃剣を借りたドラゴンレンジャーが囮となり、ドラゴンレンジャーからドラゴンアーマーを借り受けたティラノレンジャーが奪い取った。
 スリング型の光線獣銃で、パワーアップしたゴーレム兵も一撃で消し去ることができる。
 演出の都合上、強化ゴーレム兵がほかの武器でも倒せてしまうようになったためほとんど活躍しなかったのが悲しい。
 そして、レンジャーガンとサンダースリンガーを合体させるとレンジャースリンガーになり、これがジュウレンジャーの最強武器となる。
 5人が一斉発射するファイナルショットは、不死身の巨大ゾンビフランケにかなりのダメージを与えたほどの破壊力を持つが、残念ながら番組中では巧く生かせなかった。

 ドラゴンレンジャーは、左腰のホルスターに入っている短剣:獣奏剣が唯一の武器だ。
 クロトに獣奏剣を貰う前は、バンドーラの元で手に入れた魔剣ヘルフリードを使っていたが、これはブライの改心と共に崩れ去った。
 獣奏剣は、その音色でドラゴンシーザーを呼び出し操るための道具であると同時に、ビームを撃つこともできる万能武器であり、これ1つでジュウレンジャーの伝説の武器とレンジャースティックを凌ぐ能力を持っている。
 ブライの死と共に獣奏剣はゲキに譲られ、アームドティラノレンジャーの右のホルスターに入ることになった。

 『ジュウレンジャー』では、共通武装を『バイオマン』当時の“銃に変形する剣”というスタンスに戻し、変形ギミックを戦闘シーンに巧く取り入れることでイメージを強くしようと考えたようだ。
 レンジャーガンのギミックは、基本的にバイオソードと同じものであり、むしろスイッチ1つで変形しない分退化しているとも言える。
 だが、この退化は、むしろ手動で変形する様をアクションの一環として見せるための英断だったのだと思える。
 それほどまでにレンジャーガンの変形は格好良かった。
 そして、この頃には既に安全のため固い材質で刀身を作ることはできなくなっていたわけだが、刀身を軟質ビニールの半透明パーツにすることで“刀身が光る”というギミックを盛り込んだ。
 これも逆転の発想として評価したい。
 そして、こういった剣につきまとう“短くて剣殺陣には使いにくい”という弱点については、別に伝説の武器を持たせることで解決し、更に個人武器合体による必殺武器の完成というシステムを生みだした。
 これは、個人武器が合体して武器になる『ライブマン』のトリプルバズーカと、必殺武器のパーツを5人それぞれが持って武器としても使う『チェンジマン』のパワーバズーカなどの融合というところだろうか。
 さて、上で述べたハウリングキャノン形態で龍撃剣が上にちょこんと載っているだけということについて説明しよう。
 実は、龍撃剣のデザインは、この番組よりちょっと前の平成3年9月に放送が終了したアニメ『からくり剣豪伝ムサシロード』で、主人公ムサシが使用する天空丸・天地丸という剣と全く同じ形だったりする。
 どうもそのオモチャの型を流用して作っているようなのだ。
 もちろん、龍撃剣でティラノザウルスのマークが入っている部分には、天と地のマークがそれぞれ入っていた。
 『ムサシロード』では、この2本の剣の柄同士を合体させるというギミックがあり、龍撃剣の柄の先に付いている飾りは、その合体パーツなのだ。
 これについては、詳しい事情が分からないためはっきりしたことは言えないのだが、そっくりな形、ハウリングキャノンへの不自然な合体など、何らかの事情で新しいデザインを起こせなかったと思われる。

 そしてサンダースリンガーは、前作『ジェットマン』でのビークスマッシャーの流れを継ぐ発想だ。
 だが、単体では数種類の音がなるだけのオモチャであり、レンジャーガンに合体させるギミックだけしかないようなものだったことや、本編中でほとんど活躍しなかったことなどから、あまり売れなかったようだ。

  反面、獣奏剣はバカ売れした。
 獣奏剣は、短剣であり笛であるというデザイン上の理由から、元々円い筒に刃が付いているような形状をしている。
 そのため、刃の部分をグレーのゴムにしても目立たず、しかもほぼ実物大のオモチャになっている。

なんと柏木悠里所有! 今回初めて箱から出した完品♪ 単三電池を柄の部分に挿入、笛の吹き口がメロディスイッチとなる。

▲ 獣奏剣 (バンダイ製品 92年製)

 加えてドラゴンシーザーを操る笛の音を(2小節だけだが)3種類(召還、攻撃、沈静)奏でられるというギミックも楽しく、売れたことに納得できるものだった。
 今の技術で作っていれば、文句なくフルで演奏できただろうに、ちょっと惜しい。  なにしろ、
今時ならケータイの着メロでもそっくりの音が出るのだ。
 実際、鷹羽はケータイの着メロに獣奏剣の音色(召還)を使っている。

 余談だが、後述する『パワーレンジャー』での獣奏剣は、オモチャの音をそのまま使っていて、“番組中の音と商品の音が違うとクレームが付きかねない”というアメリカ社会の一端が見えるような気がする。

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移動装備

 ティラノレンジャーが乗るティラノザウルス型カウルのバイク:ロードザウラー1、マンモスレンジャーが運転し、タイガーレンジャーがサイドシートに座るマンモス型カウルの左サイドカー:サイドザウラー2、トリケラレンジャーが運転し、プテラレンジャーがサイドシートに乗るトリケラトプス型カウルの右サイドカー:サイドザウラー3の3台のマシーンがある。

 玩具限定で、3台のザウラーが合体するギミックがあった。

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ロボット

 この『ジュウレンジャー』には、正確にはロボットは登場しない。
 全て意志を持った機械生命体のような存在として描かれ、しかもジュウレンジャーにとっては、彼らが崇める守護獣(=神)という形になっているからだ。
 「現れよ、守護獣達よ!」の叫びに応え、マグマの中からティラノザウルス、氷山からジュウマンモス、砂漠からトリケラトプス、草原からサーベルタイガー、火山からプテラノドンがそれぞれ現れる。
 ジュウマンモスなど相当歩くのが遅そうだが、氷山から現れてきっちりほかの4体と一緒に到着するというものすごさだ。
 ちょっと特殊なのは、守護獣を単体でも呼び出せることで、その場合は「現れよ、守護獣ティラノザウルス!」などという呼び方になる。
 1体目の巨大ロボのパーツ達が別々の発進場所を持っているのも、単体でやってくるのも、この『ジュウレンジャー』が初めてだ。

 ドラゴンシーザーは、ブライ(その死後はゲキ)が獣奏剣を吹いて呼ぶと、海中から現れる。
 この発進シーンがゴジラを彷彿とさせる格好いいデキであり、 ドラゴンシーザー人気の理由の1つとなっている。
 ドラゴンシーザー以外の守護獣は、変身しないと呼べないようだ。
 また、守護獣の体内にはコクピットがあるが、通常のレバーなどは一切なく、2つの盛り上がりがある。
 右が守護獣、左がジュウレンジャーを表しており、それぞれを手で握ることで、ジュウレンジャーが守護獣と一体となって戦うようになる。
 それぞれの守護獣が技を持っているが、特にティラノザウルスのティラノソニックは強力で、単独で巨大ドーラモンスターを倒せるほど。
 ドラゴンシーザーは、指先からジャイアントロボのようにミサイルを発射するドラゴンハーレーや、尻尾のドリルを回転させるスピニングシーザーなどの豊富な技を持っている。

 ほかに 獣機神キングブラキオンがおり、「現れよ、獣騎神キングブラキオン!」の掛け声で現れる。
 尻尾が大砲:テイルキャノンになっているほか、口から炎を吐き、超獣戦車:キングタンカーに変形して大獣神を乗せることもできる。
 37話『恐竜が生まれる』以降、2個の恐竜の卵を体内で守ることになった。

ティラノザウルス

 守護獣達のリーダーにして、大獣神の本体となる守護獣。
 ほかの守護獣達にも一応 意志があるのだが、メインとなって話すのはティラノザウルスであり、大獣神と同じ声をしている。
 剛龍神以外の各形態時の意志を司るのもティラノザウルスである。

大獣神(だいじゅうじん)

 ゲキが大獣神の試練に耐え、ダイノクリスタルを手に入れたことによって得られた新しい力。
 5人それぞれがコクピット内の右の盛り上がり中央の穴にダイノクリスタルを刺して「合体! ダイノミッション!」と叫ぶと、5体の守護獣が合体して獣戦車ダイノタンカーになる。
 合体後は、ダイノクリスタルがレバーの役目を果たすようになる。
 ダイノタンカーは、ティラノザウルスを核に左前にトリケラトプス、右前にサーベルタイガー、中段にジュウマンモス、後方にプテラノドンが合体した形態で、ブレーメンの音楽隊よろしく守護獣の顔がほぼ一直線に並んでいる。
 この状態でも戦闘できるが、どちらかというと大獣神への合体の中間形態といった趣が強く、「発動! 大獣神!」の声と共にダイノタンカー形態から起き上がりつつ、プテラノドンが一旦分離し、ティラノザウルスの顔が大獣神のそれと入れ替わり、変形したプテラノドンが胸部装甲に合体して完成する。
 ほとんどの場合、「合体! ダイノミッション! 発動! 大獣神!」で済まされており、ひどいときには「発動! 大獣神!」だけで終わることもある。
 大獣神の構成は、ティラノザウルスが頭部、胴体部、大腿部、ジュウマンモスが背部、両腕、盾、トリケラトプスが左膝下、サーベルタイガーが右膝下、プテラノドンが胸部装甲になる。
 大獣神自身が意志を持っているが、通常戦闘時にはジュウレンジャーの思い通りに動く。
 マンモスシールドという盾を持っているのだが、何しろジュウマンモスの顔なので、あまり使うことはなかった。
 必殺武器は恐竜剣ゴッドホーンで、ティラノレンジャーの「恐竜剣ゴッドホーン!」の掛け声で空から降ってくる。
 必殺技は、ゴッドホーンを使っての「超伝説雷光斬り」で、大獣神も一緒になって掛け声を掛けるが、ちょっと聞くと「超伝説大根斬り」に聞こえる。
 結局のところ、大獣神(というかティラノザウルス)が神の本体という形になっており、とにかく偉そうな物言いをする。

剛龍神(ごうりゅうじん)

 ドラゴンシーザーが加わったことで得られた新たな合体パターン。
 これまでの2号ロボと違い、手足はそのままに胴体部を変える組替変形になっている。
 「合体! ドラゴンミッション!」の掛け声で、ドラゴンシーザー(頭部、胴体部、大腿部、膝アーマー)、ジュウマンモス(背部、両腕)、トリケラトプス(左膝下)、サーベルタイガー(右膝下)の4体の守護獣が合体する。
 構成的には、ティラノザウルスとプテラノドンが抜けた分をドラゴンシーザーが埋める形になるが、マンモスシールドは使用しなかった。
 一応書いておくと、操縦するのはいつもの5人である。
 ツノを飛ばすヒートホーン、剛龍槍ドラゴンアントラー(シーザーの胸と尻尾が合体した槍)を使って身を守るアントラーバリヤーなどの技があるが、必殺技はドラゴンアントラーを高回転させて敵に突き刺す「超爆裂龍神突き!」
 見た目は大獣神よりごつい気もするが、スピード重視型の戦闘をする。

獣帝大獣神(じゅうていだいじゅうじん)

 大獣神とドラゴンシーザーが「獣帝合体!」して完成する、これまでの超巨大ロボに相当する存在。
 胸の装甲(ブレストラー)を外したドラゴンシーザーが首を基点に左右に割れて大獣神の肩・頭部に被さる形で合体する。
 必殺技は、両肩外側の装甲(シーザーの足の裏)の「Z」の紋章からエネルギーを集めて作った巨大な紋章が回転しながら飛んでいくエンパイアアタック
 このほか、ショルダーブラストカイザーバーストなどの技もある。
 ただ、大獣神の上に、ドラゴンシーザーの開きが載っただけであり、上半身のボリュームを無理矢理支えている状態になっている。
 当然ほとんど動けず、そのせいか登場回数も少ない。

究極大獣神

 6体の守護獣とキングブラキオンが「究極合体!」して完成する最強形態で、これまでの要塞ロボに相当する。
 キングタンカーに獣帝大獣神が載り、ブラキオンの胸のパーツが獣帝大獣神の胸に合体して完成する。
 実は、これが神である大獣神の本来の姿であり、遙か昔の大サタンとの戦いで傷つき、この姿に戻れなくなっていたのだ。
 31話『復活!究極の神』で、ジュウレンジャーの6人が石版に自らの使命を唱えながらメダルをはめ込むことで、合体する能力を取り戻した。
 必殺技は、全身から砲撃するグランバニッシャー

 『ジュウレンジャー』では、これまでの1号ロボと2号ロボが合体して超巨大ロボになるというパターンを捨て、組替変形による2台目ロボという形式を生みだした。
 その分、各巨大ロボのメインパーツを人型に近くして2体のロボが画面に並ぶという図式自体は変えることなく、逆にティラノザウルスとドラゴンシーザー、ティラノザウルスと剛龍神、ドラゴンシーザーと大獣神といった具合に、並ぶパターンを増やしている。
 これは、前作『ジェットマン』で、ジェットガルーダという人型の顔や拳を持たないロボットに市民権を与えたことが大きい。
 あれによって、“人が入れる着ぐるみなら、そのまま敵怪人と戦闘できる”という道が開かれ、怪獣型ロボットという新たな形式を選べるようになったのだ。

 商品展開としては、「超合金」のタイトルは今作から外されたものの、大獣神はスーパー戦隊として初のブラックバージョン発売がされている。
 そして、ドラゴンシーザーは初の電飾ギミック付きロボ、キングブラキオンは初の電動走行ロボという具合に、初めて尽くしのラインナップになっている。
 ただし、獣帝大獣神、究極大獣神とも寄せ集め合体の極みであり、格好悪いことこの上ない。
 また、大獣神の別形態であるダイノタンカーは格闘戦ができないため、結局合体前の中間形態の座に甘んじることとなった。

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敵組織 バンドーラ一味

首領:魔女バンドーラ

 1億7000万年前、軍を率いて5部族に戦いを挑んできた魔女。
 杖:ドーラセプターを振るい、数々の魔法を使う。
 バーザの魔力を封じ、ヤマト族の王を殺したりと大暴れしたが、守護獣とジュウレンジャーの前に敗れ、惑星ネメシスに封印されていた。
 子供の泣き声と混沌を好み、地球を石ころだらけの星にしようとしている。
 一方で部下には優しく、少々の失敗では大して怒らない良い主でもある。
 実は、息子カイが恐竜に悪戯して襲われ死んだことを逆恨みし、大サタンに魂を売ったダル族の女王であり、元々はゲキ達と同じ恐竜人類だったりする。
 演じるは、日本一の魔女役者:曽我町子。
 シリーズ通して2回も顔出しで悪の首領をやったのは、この人くらいのものだ。

 なお曽我氏は、シリーズ29作目「魔法戦隊マジレンジャー」のマジエル役で出演後、2006年5月7日膵臓癌で急逝された。

幹部:プリプリカン

 レプラカーンの流れを組むモンスター。
 職人気質で、ドーラモンスターやゴーレム兵の製造を担当する。
 いつも「プリプリ」と言って怒っているが、だから何をするというわけでもなく、不機嫌なのが通常の状態となっている。
 基本的には、物を作り出すのが好きなだけらしく、最終回ではグリフォーザーとラミィの子供のためにゆりかごを作ると張り切っていた。

幹部:トットパット

 吸血コウモリのモンスター。
 コウモリのくせに翼がなくて飛べないので、バンドーラのご機嫌を取って翼を付けてもらおうと思っている。
 大変にせっかちで、のろまなブックバックとは凸凹コンビ。

幹部:ブックバック

 小鬼のモンスター。
 のろまで口べたで、いつもトットパットにせっつかれている。
 人間体に変身したこともあるが、非常にマヌケ顔でイメージがピッタリだった。
 って、褒めてんのよ、これでも。

幹部:グリフォーザー

 グリフォン型のモンスター。
 最初はしゃべれなかったが、後にバンドーラにしゃべれるようにしてもらえた。
 一味の荒事担当で、 剣:グリフォカリバーを手に前線で戦う。
 ただし、戦闘指揮をするほどの頭は持ち合わせていないらしい。

幹部:ラミィ

 グリフォーザーの妻。
 1億7000万年前に封印を免れたが、そのままどこかでバンドーラ達の復活を待っていたようだ。
 バンドーラ一味では珍しい人間型のモンスターだが、戦闘時には怪物型のラミィスコーピオンに変身する。

怪人:ドーラモンスター

 ドーラ○○という名称で、プリプリカンが作った粘土細工をモンスター製造マシンで実体化させて作る。
 知能を持っている者が多い。
 28話『大改造!粘土獣』以降、新しく発掘されたドキータ粘土で作られるようになったが、第1号のドーラフランケ以外は特に強くなったようには感じなかった。

戦闘員:ゴーレム兵

 型枠を使って粘土細工で作られる量産型のモンスター。
 手の部分だけがごつくなっており、その部分が刃状に変形したりする。
 また、型が違うのか、数体だけ全身ごついタイプが混じっている。
 バラバラに破壊しても、その破片それぞれから復活するため、どんどん増えていく。
 強力な武器で破壊すると復活しなくなる。
 ドキータ粘土で作られるようになって目が赤くなり、伝説の武器でも倒せないほどしぶとくなった。
 …が、その設定はほんの2週間ほどで忘れ去られ、生身でも倒せるようになってしまった。
 ちなみに、「ドキータ粘土」とは、『ド汚ねぇ』からの語呂合わせになっているネーミングだ。

諸悪の根源:大サタン

 遙かな昔、究極大獣神に敗れて地獄の底に追い払われた究極の悪魔。
 息子を失って悲しみに狂ったバンドーラに魔力を与え、自分を復活させる道具として利用したようだ。
 ラストでわざわざカイを蘇らせて自分の復活に当たらせたことから、そう思える。
 口から溶解液を吐いたり突風を起こしたりするが、残念ながら顔だけという間抜けなデザインには神々しさも禍々しさも迫力も全くなかった。

 バンドーラ一味は、基本的にバンドーラの意思に基づいて行動する。
 一味の忠誠の全てがバンドーラ一身に帰属するというのは、同じ曽我町子氏が演じた『デンジマン』のベーダー一族を彷彿とさせる。
 バンドーラの魔力それ自体は、確かに大サタンによって与えられたものではあるが、一味はあくまでもバンドーラの配下であり、一種アットホームな組織という特徴を持っている。
 年間を通して内紛や内部分裂が全くなかった組織というのは非常に珍しい。
 彼らは、一族ではなくあくまで“一味”であり、異なる種族の混成集団に過ぎない。
 それなのにあれだけ統率が取れているということは、バンドーラの人間的魅力=カリスマによって団結していたと結論づけられる。
 これは、最終回にバンドーラが全ての魔力を失ってさえ部下達の対応が全く変わらなかったことからも分かるだろう。

 実は、1億7000万年前に5部族と戦ったときは、ダイノ伝記に書いてあるとおり、人間(恐竜人類)の軍団を率いており、ドーラモンスターを開発したのは、封印されている最中のことだ。
 1話でバンドーラが「よく寝た」と言っているのは、どうやら“することがないから寝ていた”ということらしい。
 最終回を見れば分かるとおり、封印の壺の中ではかなり自由に行動できるから、バンドーラはともかく、プリプリカンあたりが一所懸命開発作業をやっていたのだろう。
 つまり、バンドーラ一味は、この手の番組には珍しい“復活して強くなった”理由がある組織なのだ。

 バンドーラの当初の目的が、息子の仇である恐竜の絶滅にあったということも、バンドーラの子供嫌いと相まって単なる八つ当たり的な印象を受ける。
 自分の子供が死んだのに、幸せな子供がいることが許せないという感覚は、理解できると思う。
 最終回でラミィが抱いた赤ん坊に相好を崩したのがその証拠だ。
 一口に言えば、わがままおばさんの大いなる八つ当たりなのだ。
 まったくはた迷惑な話である。
 無論悪の組織であることは動かしようがないのだが、こういった事情が、なんとなく彼らを憎めないものにしている。

 この一味の最大の特徴は、スーパー戦隊シリーズ唯一の“幹部クラスのキャラが全く死んでいない組織”であることなのだが、その点は後述することにしよう。

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巨大化

 バンドーラが「大地に眠る悪霊よ、○○に力を、ハッ! 与えよ!」と呪文を唱えながらバンドーラパレスからドーラセプターを戦場に投げ込むと、地割れと共にエネルギーが噴出して敵が巨大化する。
 巨大化するのは生死を問わず、しかも一定時間で元の大きさになれる上、ドーラモンスターである必要もない。
 どうやらバンドーラが「大きくしたい」と思っている相手なら誰でもいいようで、グリフォーザー、ラミィスコーピオン、果てはドラゴンレンジャーまで巨大化させている。

 月から地球までドーラセプターを投げ込む力も相当なものだが、その後どうやって回収しているかは遂に明かされなかった。

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真実の物語

 遙かな大昔、恐竜の神である究極大獣神は大サタンを倒して地獄の底に封じたが、同時に自らも傷ついて7つのパーツに分かれてしまった。
 そのうちの5つは、守護獣の姿で恐竜人類である5部族の守護神として民を導いていた。
 やがてバンドーラ率いる侵略軍が5部族を襲い、守護獣達は支援して侵略軍を潰し、生き残ったバンドーラ達を惑星ネメシスに封印して、いずれ復活するバンドーラに対抗するため、5部族の勇者であるジュウレンジャーも人工冬眠させた。
 ドラゴンバックラーを盗んで復讐のチャンスを狙っていたブライもまたゲキを追って人工冬眠に就いた。
 やがて恐竜や5部族が滅び、大獣神は雌雄一対の恐竜の卵をアペロ族に委ねて地上を離れる。
 その後の氷河期でブライが死に、大獣神はなぜかジュウレンジャーに敵対する存在であるはずのブライを甦らせるようクロトに頼んだ。
 そして1億7000万年が経ってバンドーラが復活し、新たな戦力であるドーラモンスターに対抗するため、大獣神は再び降臨してジュウレンジャーに力を貸すのだ。

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ブライの最期

 いよいよ寿命が尽きようというころ、ブライは夢を見た。
 自分が乗った死神の車(人力車!)が通り過ぎた道で、迎えの車を待っている少年の夢だ。

 そのころ、ゲキ達は大獣神に頼み、ブライの命を救うために5人のメダルと引き替えにゴウシとダンを命の水の在処へと送ってもらっていた。

 一方、現実にその少年:耕太と出会ったブライは、何とか耕太を元気づけようとするが、逆に耕太は、ブライの近くにいたせいでドーラガンサクの攻撃を受けて重態になってしまう。
 ドーラガンサクの攻撃に、メダルがないため変身することも守護獣を呼ぶこともできないゲキ達は手も足も出ない。
 ブライもまた、耕太を治すためにメダルを渡しており、変身できないままドラゴンシーザーに乗り込んで戦う。
 命の水の泉に到着したゴウシとダンは、変身できないために泉を守る戦士に苦戦していた。
 必死に戦うブライの願いに応え、大獣神は6人にメダルを返し、自らも戦いに加わった。
 ようやく変身できたゲキ達はドーラガンサクを倒し、ゴウシ達は命の水を手に入れた。
 だが、戦士はクロトの姿になってゴウシ達に告げる。
 1度死んで蘇ったブライを救うことは、命の水の力を持ってしても無理だから、耕太に水を飲ませろ、と。

 命の尽きたブライは、ゲキに獣奏剣とドラゴンアーマーを遺して死に、耕太は命の水の力で死の淵から舞い戻った。

 夢と同じように、死神の車に乗っているブライ。
 夢で耕太がいた場所には、誰もいなかった。

 ブライは満足げな笑みを浮かべて黄泉への道を進む。

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ラストへの流れ

 バンドーラの息子カイが大サタンの力で復活し、ドーラタロスを操って再び大サタンを復活させようとする。
 バンドーラも、バンドーラパレスを地上に降ろしてカイに協力する。

 遂に復活した大サタンとドーラタロスの前に大獣神さえ破れ、大獣神はゲキ達を脱出させてバンドーラの魔法界に封じられてしまう。
 一時的に復活したブライの励ましにより、大獣神を救うべく命綱を付けて魔法界に飛び込んだゲキ、ゴウシ、ダンだったが、バンドーラの妨害に大ピンチ。
 命綱を支えきれなくなったボーイ、メイを救ったのは、魔法の使い方を思い出したバーザだった。

 ようやく魔法界の中心に辿り着いたゲキは、大獣神、ドラゴンシーザー、キングブラキオンの封印を解き、合体して究極大獣神となって遂に大サタンをも倒した。
 破壊されたドーラタロスから脱出したカイは、バンドーラパレスに戻り、バンドーラに抱かれて2度目の死を迎えた。
 バンドーラはカイの死に涙を流したために魔力を失い、一味は大獣神によって壺に封印されて宇宙を彷徨うこととなった。
 壺の中では、グリフォーザーとラミィの間に赤ん坊が生まれ、赤ちゃんを囲んでそれぞれが浮かれていた。

 恐竜の卵からも無事赤ちゃんが生まれ、使命を終えたジュウレンジャーの5人とバーザは、子供達に恐竜の赤ちゃんを託して大獣神と共に天界に昇ることになり、ダイノ伝記に記された伝説の戦士の物語は終わりを告げた。

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『海賊戦隊ゴーカイジャー』での展開

18話『恐竜ロボットドリルで大アバレ』

 突然現れた凄い銀色の男:伊狩鎧。
 交通事故で死にかけた際、仲代壬琴からゴーカイセルラーを与えられ、既にジュウレンジャー、タイムレンジャー、アバレンジャーの大いなる力を得ており、レンジャーキーさえあれば発動できるという。
 そして、ゴーカイセルラーにタイムファイヤーのレンジャーキーをセットすると、31世紀から豪獣ドリルがやってきた。

 鎧の回想シーンで、アバレキラー:仲代とタイムファイヤーと共にドラゴンレンジャーが並んでいる。
 サブタイトルで分かるとおりアバレンジャー回で、仲代がゴーカイセルラーを授ける間、変身も解かず、一言も喋らないで立っているだけで、タイムファイヤーのように独特の仕草をすることもなく、ただいるだけという感じだったのは残念だった。

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傾向と対策

 本作は、前作『ジェットマン』が高年齢層を狙いすぎたとの反省からターゲットを子供に戻し、RPGやファンタジーの要素を取り込んで、敵怪人をスケルトン、ナイト、スフィンクスといったRPGゲームに登場するようなモンスターにしている。
 また、絶望の大地に封じられた伝説の武器、守護獣を大獣神に合体させるためのダイノクリスタル、キングブラキオンが守るサンダースリンガー、山奥にある究極大獣神復活のための石版、戦士が守護する生命の水など、大獣神が与えた試練の数々は、そのままゲームの展開を彷彿とさせる。
 どうせなら、正義側もドラゴンなどのモンスター系を揃えればよかったのだが、恐竜をモチーフにしたのは、恐らく『チェンジマン』が西洋型モンスターを使ってしまっていたからだろう。
 次作『ダイレンジャー』は、東洋型のモンスターだから使えたのだ。

 ただし「恐竜」と言っても、ジュウレンジャーの中で恐竜といえるのは、竜盤目のティラノサウルスと鳥盤目のトリケラトプスだけだ。
 プテラノドンは翼竜で、厳密には恐竜ではない。
 ましてやマンモス、サーベルタイガーなどは生息した時代そのものが1億年単位で違うわけで、どう考えても看板に偽りありだ。
 どうしてこんなことになったのか?
 それは、メジャーで格好良く、パッと見て見分けが付く特徴があり、合体ロボのパーツに使えるデザインの恐竜が少ないせいだと思われる。

右足とシールドに注目…って事で♪

▲ 鷹羽的理想的大獣神乃図(BYきょろら)

 特に見分けやすいという命題は重要で、ジュウレンジャーのマスクデザインに反映されることもあって、ある程度顔で見分けの付く恐竜であることが求められたのだ。

 この点について、鷹羽は当時から『魚竜とかでもいいじゃないか』と文句を言っているところだ。

 実際、守護獣トリケラトプスなど足の代わりにキャタピラが付いている始末で、イクチオサウルスのような魚型でも、ちょっとデザインを工夫すれば戦車型にできるはずだ。
 なんなら下半分を開いてホバリングさせてもいいだろう。
 また、ジュウマンモスの代わりは、シールドにできるパーツを持つアンキロサウルスやステゴサウルスのような4つ足の恐竜で足りるだろう。
 双方とも背中の部分を取り外してシールドにするようにして、その他はジュウマンモスと同じ変形で足りる。
 マスクデザインとの絡みでは、アンキロサウルスは難しいかもしれないが、ステゴサウルスなら頭頂部に板状のパーツを並べるような感じでOKだ。

 こうして年代を揃えた守護獣で構成した大獣神を作ってみた(イラスト参照)。
 ほら、格好良くできるじゃん。

 そういや、同じようなコンセプトの合体をする『ゴウザウラー』では、ホントにステゴサウルスが盾になったっけ。
 大丈夫、ジュウレンジャーの方が古いぞ。

 …と、ここまで考えてふと気付いたのだが、ジュウレンジャーの名前は守護獣の名前の一部を使うことになる。
 イクチオレンジャーはいいとして、ステゴレンジャー…捨て子レンジャー!?
 あ、そりゃまずいや。
 もしかして、恐竜に拘らなかったのってそのせい?

 さて、気を取り直して、と。
 この『ジュウレンジャー』、タイトルの印象から10人組の戦隊だと思われることが多い。

 理由はもちろん『ゴレンジャー』という偉大な先駆者の影響だ。

 この当時、『ゴレンジャー』はスーパー戦隊シリーズとして計上されていなかったが、それでも世間的にはやはり「5人揃って! ゴレンジャー!!」という認識が強いわけで、「ゴ」に対しての「ジュウ」だから10人いると思う人は多いようだ。
 今でも、戦隊にあまり詳しくない人に「『ジュウレンジャー』って何人いるか知ってる?」と聞いたら「6人」という答えは返ってこないだろう。
 そのせいか、タイトルロゴの下には、わざわざ漢字で『獣連者』と書かれている。

 で、この番組、メインライター杉村升氏の癖なのか、その場その場の盛り上がりばかり考えて結構無茶苦茶な展開を見せる。
 例えば、ブライが復活する様子を描いた17話『六人目の英雄』では、ブライ復活を阻止するためにバーザとノームがゲキ達5人を戦車で攻撃する。
 無論バーザとしては、ブライがゲキを憎んでいるという事情を知っているから阻止したいわけだが、そのために戦車を持ち出す理由が見付からない。
 口で説明すれば分かることを、どうしてことを荒立てるのか? もしそれでゲキ達の誰かが傷ついたり死んだりしたらどうするつもりなのか? ちょっと考えれば分かるはずなのだが、そんなことを考える頭を持っていないのだろうか。

 また、まず結果ありきで作劇することもよくある。
 31話『復活!究極の神』では、マンモスレンジャーがサンダースリンガーで木材を縛っていたロープを切り、崩れた木材でゴーレム兵を倒すというシーンがある。
 知恵の戦士ゴウシを表現するシーンなのだが、このとき戦っていたのはドキータ粘土で作られたゴーレム兵だ。
 まだ登場したてで、伝説の武器ですらこいつらを倒せないという展開を見せたばかりだ。
 そもそもそんな相手だからこそ、苦労してサンダースリンガーを手に入れたのではなかったか?
 また、それほど強力な武器をロープを切るためだけに使う奴が「知恵の戦士」を名乗っていいのか?

 同様に、バンドーラは伝説の武器が安置されていた絶望の大地にも自由に出入りでき、ジュウレンジャーより先に武器の元に辿り着いていた。
 “邪悪な者は伝説の武器に触れられない” という縛りはないわけだから、ゲキ達が到着する前に伝説の武器をどこかに移動させるとか、何かで固めてゲキ達が入手できなくするといった妨害工作が当然予測されるところなのだが、困ったことに奴らにはそういう発想はないらしいのだ。

 こういうその場しのぎのご都合主義的展開は、ちょっと見ていてクラクラしたものだ。

 だが、こういった問題点をある程度帳消しにできるネタがある。
 本来なら、上の 『真実の物語』で語るべきなのだが、あまりにも衝撃的なので敢えてこっちに書くことにした。

 それは、“バンドーラとの戦いの全ては大獣神の計画だった”という考え方だ。

 そもそもジュウレンジャーは何のために戦っていたのか?
 “恐竜という種を存続させるため”ではなかったか。
 それなのに、現代で恐竜(しかも一つがいしかいない)を育てようなどと考えたら、環境の変化などによって長くても数十年単位で死滅してしまう。
 ましてや恐竜が死滅したら、大獣神も存在できなくなると言っているのだ。
 アペロ族などに卵を預けっぱなしになどせず、さっさと回収する必要があったはずだ。

 そこで考えてみよう。
 大獣神は、どうして脅威の芽となりうるバンドーラを生かしておいたのだろうか?
 バンドーラがいつか復活するということは、それに備えてゲキ達を眠りに就かせたことからも明らかだ。
 そんな不完全な封印などせずに殺してしまえば、大サタンを召還するようなことにはならなかったはずだ。
 大サタンが完全に復活を遂げたら、究極大獣神になれないままでは勝ち目がない。
 ならば、どんな小さな芽も摘んでおくのが最良ではないのか。

 また、ブライの最期では、街で巨大ドーラガンサクが暴れる中、ゲキ達を変身不能にした上でゴウシとダンだけに命の水を取りに行かせているが、実はブライを助けようなんて気もその力もなかったのは間違いない。
 そもそも助けるつもりなら、もっと早く獣奏剣をゲキに譲らせておけば、ブライがドラゴンシーザーを呼ぶためだけに命を削る必要はなかった。
 第一、大獣神は、その気になればゲキ達が呼ばなくても勝手に現れて戦えるのだ。
 だが、これは全て大獣神なりの計算の上のことだった。

 どうやら大獣神は、真の姿に戻り大サタンを完全に葬るためには自分だけではダメだと悟った上で、状況を利用していたと思われる。
 だから、自らと共に強い意志で大サタンと戦う者を育てることにしたのだ。
 つまり、「正義・知恵・勇気・希望・愛・力」を象徴する6人の戦士だ。
 そのため、将来6人を精神的・肉体的に鍛えるための相手として、バンドーラ達を生かしておいた。
 簡単に殺せるのに、敢えて(前より強い戦力を持って復活するような)中途半端な封印をしたのは、ジュウレンジャーと渡り合えるように強くしたかったからだろう。
 また、氷河期に死んだブライを蘇らせたのも、「力の戦士」という手駒を失うわけにはいかなかったからだ。
 6人を成長させる上で、“悪に染まった兄と弟の和解”が必要だったから、敢えてゲキにブライを殺すよう命じてみたりもしている。
 もちろんゲキがブライを殺せないことは承知の上だ。
 そう考えれば、ブライの最期にあれほど無茶苦茶なことをさせたのも納得がいく。
 つまり、一旦は悪に染まって弟に剣を向けたブライの悔恨を断ち、満足した死を与えるためだったのだ。
 自分が必死に戦うことで耕太を救えたことがブライに満足した死を与えた。
 だから、ゴウシ達が取りに行った「命の水」は、最初から耕太に飲ませるために取りに行かせたのだ。
 それぞれを必死にさせるために、ブライの延命という希望を持たせて、だ。
 全くとんでもない神様だ。

 こうして育て上げた6人の戦士の力を借りた大獣神は、遂に宿敵大サタンを葬り去った。
 そうなれば、バンドーラ達は用済みだが、利用しっぱなしで殺すのは忍びなかったのか再封印で終わらせている。
 用が済んだら殺す、というほど冷酷でもないらしい。
 そして、ゲキ達も天界に連れていったわけだが、恐竜の子供も、死なないうちに天界に連れていくのだろう。
 存在理由から言えば、ゲキ達恐竜人類が天界で永遠に生きていられるなら、大獣神自身も恐竜の神として存在し続けられるだろうが、やはり恐竜の赤ちゃんも死なせたくはないだろう。

 こうして考えると、筋は通る。
 全てが、大獣神の手の平の上で起きていたのだ。
 ゲーム『久遠の絆』のように、大獣神が「我がこと、なれり」とでも言って終わりそうだ。
 随分ひどい話だが、さりとて神様のやることと考えれば、理不尽なほど凶悪でもあるまい。
 神様なんてそんなもんだ。

 恐らく制作者側は、こんな背景は考えていなかっただろう。
 ただ、こう考えないと辻褄が合わない展開が随所に見られるので、鷹羽なりに納得できる解釈をしてみただけのことだ。
 敢えて『真実の物語』に書かなかったのは、そういう理由からなのだ。

 どうしてこうなったのか。
 1つには、シリアスな物語のはずなのにご都合主義と刹那的な演出が多すぎるということが挙げられる。

 上述のバーザの例を見れば分かるとおり、“どうしてそんな無駄なことをするのか” という疑問に答えられない展開をするのだ。
 元々ギャグ的な要素が強いなら問題ない。
 スーパー戦隊は、本来ギャグありシリアスありで作られてきたシリーズだから、包容力はある。
 だが、シリアスな物語は、きっちりした結末と展開が必要なのだ。
 もう1つの問題は、役者が下手でノり切れなかったことだ。
 舌足らずでセリフ棒読みのメイはもとより、メインの5人+バーザの演技力は問題が多い。
 鷹羽は、一番巧かったのはボーイだと思うが、それ以外のキャラクター達は、演技力の問題でシリアスな物語にブレーキを掛けていたように感じる。
 好きな人には申し訳ないが、ゲキ役の望月祐多氏の鼻詰まりのような声はヒーロー向きではないと思う。

 さて、この『ジュウレンジャー』では、後のシリーズに多大な影響を与える事件がいくつか起きている。
 1つは、前述のとおり、巨大ロボを機械ではなくしたことだ。
 これ以降、さすがに神様はいなかったが、気伝獣や星獣などの超生命体、果ては人間(!)が巨大ロボになるというのが頻出することになる。

 次に、変身アイテムがブレスでも指輪でもなく、手に持って変身する方式になったことだ。
 これがなければ、後のキバチェンジャーやアクセルチェンジャー、ドロンチェンジャーは生まれなかった。
 さらに変身後の姿にもアイテムが見えたままになっているという特徴もあり、これは『タイムレンジャー』で結実することになる。

 3つ目は、ヒロインが千葉麗子という新人アイドルだったことだ。
 アイドルというだけなら、『ライブマン』の森恵という前例があるが、新人という条件が付けば話が変わる。
 『ジュウレンジャー』が始まる前、プロデューサーあたりから「今年は女性メンバーが1人に減る分、可愛い娘を用意しました」というコメントがあったのだが、モデル上がりの新人アイドルを引っ張ってきたわけだ。
 結局、超絶的な演技力のなさから、この作品でのブレイクはならなかったものの、『オーレンジャー』の玉緒(現:さとう玉緒)より先に戦隊出身のメジャーアイドル化という可能性は十分にあったのだ。
 実際、番組終了後には、ちょっと筋は違うものの『電脳アイドル』の元祖という方向でメジャーになっている。

 地下鉄サリン事件の1〜2日前(平成7年3月)ころのことだと記憶しているのだが、こんなエピソードがある。

 後楽園のショーを見るために元締宅に遊びに行っていた鷹羽が、元締とテレビ(某国営放送?)を見ていると、 ゲームの特集番組を放送していた。
 チバレイがその番組にゲストコメンテーターのような立場で出演していたのだが、ゲストの民間ゲーマー達とファイナルファンタジーの話題で盛り上がった。
 奇数番号のシリーズと偶数番号のシリーズではゲームの傾向が違うという話題だったのだが、FFをやったことがない鷹羽はさっぱり理解できず、同様に番組の司会者も話に付いていけなくなっていた
 元締の解説で一応理解はできたのだが、これで鷹羽のチバレイを見る目は一気に変わった。

 なんでも、当時発売されていた全種類の家庭用ゲーム機を所有し、メジャーなタイトルは遊び倒していたというディープなゲーマーなのだそうだ。

 パソコンについても、『ジュウレンジャー』のころに上京したばかりで、オフの日の暇つぶしなどにマックを覚えてハマり込んでしまったらしい。
 人生、何がどう転ぶか分からない。
 チバレイは、不知火舞のコスプレやチャムチャムなどゲームキャラの声をやったりした後、結局、「ゲームを作りたい」と言って引退してしまった。
 発売されたゲーム『アリス・イン・サイバーランド』はコケたそうだが、好きなことをやるために引退したという姿勢は高く評価している。
 千葉麗子以降にいわゆる「電脳アイドル」というカテゴリーが生まれているが、そのほとんどが“あんた本当にゲームとかパソコンとか好きなの?”という印象を受ける者ばかりで、“芸能界で生きるためのポーズ”としか思えなかった。
 対して千葉麗子は、少なくとも“本当にゲームやパソコンが好きで、そのために芸能界を辞めた”のだから、やはり一味違う。
 鷹羽はそういう理由で、女優・千葉麗子は大嫌いだが電脳アイドル・千葉麗子は好きだ。

 4つ目は、これが一番大きいのだが、“6人目のメンバー”がレギュラーとして登場するようになったことだ。
 これまでもメンバー交代のためにメンバーが重複するというパターンや、『マスクマン』での6人目の戦士:X1マスクの登場などはあったが、いずれもレギュラーメンバーが増加したわけではない。
 ドラゴンレンジャーは、毎回必ず戦闘に加わるわけではないにしろ、敵味方共にジュウレンジャーの戦力として認識している点で、これまでと大きく違うのだ。
 そして、6人目登場というインパクトを強くするために当初5人と敵対させたことがドラゴンレンジャーのイメージを決めた。
 メインの5人と変化を付け、1人で5人に匹敵する力を持つということを視覚化させたドラゴンアーマーというデザイン的な違い、メイン武器として5人と違う獣奏剣を持たせたという差異だ。
 そして何よりも、“強すぎるからあまり前面に出てこられると5人が霞む”という存在上の弱味を逆手に取った“普段は別行動だが、ピンチのときには助けに来てくれるメンバー”という独特のポジション。
 ブライに『時の止まった部屋』から出ると残り少ない寿命がすり減っていくという宿命を与えることで、普段登場しないことに説得力を持たせ、さらにいざとなったら命を削ってでも仲間を助けに来るという行動がヒーロー性を生む。
 さらに、弟達に心配を掛けまいと当初それを秘密にしていたこと、近い将来確実に訪れる兄弟の死別の予感が、ブライを悲劇の主人公たらしめたのだ。
 獣奏剣とドラゴンアーマーをゲキに譲り渡して死んでいった最期に、泣いたファンは多い。
 以後のシリーズでは6人目のメンバーはほとんどお約束になっているが、ブライほどドラマを背負っている者はいない。
 本放送当時、ブライの人気がダントツに高かったのは、そういった部分が評価されたのだろう。

 5つ目は、そのブライ人気に関連することだ。

 本編には直接関係ないのだが、東京後楽園遊園地の野外劇場(現・スカイシアター)では、毎年スーパー戦隊のショーが1年を通じて行われている。
 1年間の演目は、3〜4月中旬で新ヒーロー登場編、GW〜6月に巨大ロボ登場編、7〜9月は夏休み用に同時期放映の単体ヒーロー等が登場、10〜11月は歴代レッドが登場する『レッド大会』、12〜2月には単体ヒーロー+過去のヒーロー数人が登場する『スーパーヒーロー大集合』となっている。
 … 前作『ジェットマン』までは。

 この『レッド大会』では、ほぼ全作品のレッドが登場するのが恒例になっており、『ジェットマン』では、同じ鳥モチーフのバルイーグルとレッドファルコンを除く9人が登場している。
 既にメインであるジェットマンの倍の人数がゲスト出演しているわけで、毎年必ずレッドが増えていく展開に、目先を変えたかったようだ。
 そういった事情とブライ人気とから、『ジュウレンジャー』では、『レッド大会』に代わってブライ役の和泉氏が出演するドラゴンレンジャー編が上演された。
 本人が登場するのは隔週の土日だけだったが、これによって役者目当ての追っかけ的なファンが多数押し寄せることとなり、翌年の『ダイレンジャー』以降も、俗に『本人ショー』と呼ばれる役者出演のシリーズが恒例となった。
 余談だが、このドラゴンレンジャー編の際、和泉氏と同じ事務所という縁で、シシレンジャー:大五役の能見達也氏が会場整理(ブライが控え室から観客席後部の花道に移動する際の通路確保)をしていたそうだ。

 6つ目は、有名な海外輸出版『パワーレンジャー』だ。

 これは平成5(1993)年9月からアメリカで放送されたもので、舞台を架空の都市エンゼルグローブ市に移し、『ジュウレンジャー』の正義側の役者を丸々アメリカの役者に変えた番組だ。
 当然、ゲキ達が登場するドラマ部分は差し替えられている。
 主人公達はアメリカ人の高校生という設定になっており、パワーレンジャーは、賢者ゾードンによって選ばれた正義の心を持つ少年少女になっている。
 各ヒーローの名前は、レッドレンジャー〜ピンクレンジャーという具合に色で名付けられているが、ブラックレンジャーが黒人イエローレンジャーが中国人(女性)なのは何か悪い冗談を見ているようだった。 
 バンドーラ(向こうではリタ)側については、幸いというか、ほとんど着ぐるみ幹部なので、そのままの画像を使用しており、リタの声はそのまま曽我氏が英語でアフレコし直している
 まったく芸達者な人だ。

 元々『ジュウレンジャー』のストーリー展開は、ドーラモンスターの能力によったものになっているので、初期は本当に役者登場部分のドラマを差し替えただけのものになっている。
 ご丁寧に、途中で バンドーラに操られたグリーンレンジャーが登場し、パワーレンジャーの努力で呪いが解けて仲間になるという展開もあった。
 ここは『パワーレンジャー』 のためのコーナーではないので多くは語らないが、この“アクションシーンがほとんど全部『ジュウレンジャー』からの流用”という番組の存在によって、鷹羽が改めて知ったことがある。

 それは、『ジュウレンジャー』のアクションは見応えのあるものだったということだ。

 『パワーレンジャー』のストーリーは、ホームドラマに近いノリの、どちらかというと軽いものだ。
 これには、コメディリリーフとして登場する主人公達のライバルキャラ:バルクとスカルの2人組がいい味を出していた功績も大きい。
 ドラマがシリアスタッチでなくなったお陰でアクションシーンに集中でき、新堀アクション監督による殺陣の冴えを堪能できたのは、意外な収穫だった。
 さらにメガゾート(大獣神 )が、単なるメカという扱いになっていることも影響しているだろう。
 シリアスで収拾がつかないよりも、コメディタッチでバランスが取れている方が面白いという好例だと思う。

 それはさておき、この『パワーレンジャー』、アメリカで大ヒットしてしまったため、その後も延長が続くことになり、今年(2002年)で10年目を迎えた。
 このことが、本家であるスーパー戦隊シリーズに逆に影響を与えてしまった。

 それは、“着ぐるみ幹部ならそのまま画像流用がきく”という発想から、敵側が着ぐるみ幹部ばかりになってしまったことだ。

 上記のとおり、『パワーレンジャー』 の放送は『ジュウレンジャー』終了の半年後なので、『ダイレンジャー』には顔出し幹部が多数登場するが、その翌年の『カクレンジャー』以降、幹部のほとんどが着ぐるみになってしまった。
 顔が出ているのは、『カーレンジャー』のゾンネットなどのグラビア系お姉ちゃん幹部のほかは『メガレンジャー』のDr.ヒネラーくらいのものだ。
 これはつまり、表情が出しにくいということであり、敵側のドラマを描く上でかなりのマイナス要因になっていると思う。

 これら6つの事件に象徴されるように、『ジュウレンジャー』 はスーパー戦隊における一大転機と言える。
 ストーリー性を重視する鷹羽からすればかなりの問題作なのだが、ほのぼのとした独特の雰囲気やちょっとしたファンタジーっぽさなど、この番組を好きだという人も多い。

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おことわり

 習慣鷹羽では、鷹羽自身がリアルタイムで見た番組の評価と、その時々の周辺事情を総合して番組を語るという方式を取っています。
 『フラッシュマン』 での路線変更の事情などがその顕著な例と言えるでしょう。

 これは、その時代に放送された番組の意義まで含めた上での評価という観点に立ち、後で仕入れた情報などで構成しても正当な評価にはなり得ないという鷹羽の信念によっています。

 次回予告を見て、どんな展開になるのかをワクワクドキドキしながら待つという感覚は、事前情報が氾濫する中では難しいことですが、それでもそういったドキドキ感なくしては感動も薄れるというもの。
 例えば、『新世紀エヴァンゲリオン』 は、新潟では1年ほど後で放送されましたが、そうなると最終回がどういうものであったかまで知った状態で見ることになり、本放送当時に見て怒り狂った人の気持ちは到底分からないでしょう。

  『パワーレンジャー』 は、本放送がアメリカでなされた以上、リアルタイムで見ることは鷹羽にはできませんでした。
 また、日本での放送にしても、鷹羽の住む新潟ではやっておらず、鷹羽は友人に頼んでエアチェックしてもらったものを、後でまとめて見ました。

 これでは、鷹羽の理想とする評論は到底書けません。

 よって、この『スーパー戦隊の秘密基地』では、『パワーレンジャー』 シリーズは例示することはあっても、1つの番組として評価対象にすることはありません

 以上の点を、ご承知おきくださるようお願いします。