激走戦隊カーレンジャー

平成8年3月1日〜9年2月7日 全48話+Vシネマ1本

主題歌

 『カーレンジャー』では、久しぶりにアバンタイトルが入らなかった。
 その分、というわけでもなかろうが、OPが上記のとおり3パターン使われている。
 これ以後、年の途中から2コーラス目を流すというのはときたまあるのだが、アレンジ違いとはいえ、レギュラーで3パターンのOPを持っているのは、2004年現在『カーレンジャー』だけである。
 そして、14話のフルアクセルヴァージョン以降、OPのみシリーズ初のステレオ放送になっている。
 番組の内容に反して歌詞は正統派で、2番では「自分にもある弱さを知れば本当のヒーロー」なんて歌っていたりする。
 
 ただし、このフルアクセルヴァージョンOPの画面では、画面の向かって左にカーレンジャー、右に変身前の姿で、左右対称に、しかも同じ画面に映っているため、“変身前と後が別人にしか見えない”という批判もあった。
 
 最終回のEDでは、その後の5人の日常が少し映っているが、これは、車の試運転中に故障して困る恭介、製図中にくしゃみして図面を駄目にしてしまった直樹など、OPでの素顔の5人の紹介画面と引っかけた構成になっている。
 
 また、「暴走戦隊ゾクレンジャー」は、25話『ナゾナゾ割り込み娘!』に登場する敵方戦隊のテーマソングとして流れたものだが、当初のOP「激走戦隊カーレンジャー」とオケも歌手も同じという豪華な替え歌だ。
 ご丁寧に、オケ冒頭のエンジンを掛ける音に被せて暴走族風のパラリラパラリラという音が入っていたり、間奏部に“カーブを曲がりきれずに激突する効果音”が入っているなど、遊び心盛り沢山の曲になっている。
 人気があったのか、ヒット曲集3にフルコーラス版が収録されている。
 
 また、EDの「天国サンバ」は、スーパー戦隊シリーズの全ED中、唯一明確に敵方の歌となっている。
 「この次は絶対勝つぞ」と言った直後に「キックは優しくしてね たまには負けたりしてね」と言う歌詞もさることながら、「電線に鳩が2羽サンバ」や「7から4引けばサンバ」などという語呂合わせ系のお遊びがあったり、「カーレンジャーお疲れサンバ/俺達を甘く見るなよ/ラーメン奢っちゃうから/たまには負けたりしてね」というふざけた呼びかけがあったりして、良くも悪くもこの作品を象徴する曲だ。
 
 なお、本作では、OPとEDをそれぞれ別のシングルCDとして発売しているほか、恭介役の岸祐二氏やゾンネット役の七瀬理香氏が歌う挿入歌、OPの英語バージョンなどもそれぞれシングルCDとして発売するなど、売らんかな主義が見え隠れしていてあまりいい気がしない。
 また、OPの英語版が挿入歌として使われているが、OPに英語版が存在するのはシリーズ初だったと記憶している。
 次作『電磁戦隊メガレンジャー』では、年始の総集編の際に特別バージョンとして英語版OPが流れることになる。

▲ TOP ▲

基本ストーリー

 宇宙暴走族ボーゾックが地球を花火にしようと襲ってきた。
 ボーゾックに母星を花火にされたハザード星人ダップは、ハザード星に伝わる星座伝説の神秘の力:クルマジックパワーを身につけ、星座の導きにより、激走戦隊カーレンジャーとなるべき若者を地球で見付け出した。
 さっそく5人の若者をカーレンジャーにしようとするが、彼らは無料奉仕で他人のために戦うことを拒否してしまう。
 そして、ダップはただ1人、ボーゾックの副長:ゼルモダに挑み、敗れてしまった。
 死に瀕したダップの身の上話に感動した5人は、カーレンジャーとなって無料奉仕で戦うことを了承する。
 すると、ダップはいきなり元気になって5人に変身ブレス:アクセルチェンジャーを渡してきた。
 実は、ダップは死んだふりしていただけだったのだ。
 うまいことノセられてしまった5人とボーゾックの戦いが始まった。

▼ 「真実の物語」は…

メンバー

レッドレーサー:陣内恭介

 個人武器はフェンダーソード。
 自動車会社ペガサスのテストドライバーだが、自社製の車はまだ開発していないので、実質は修理した車の試運転と納車時の運転が仕事。
 伝説のマシン:ペガサスサンダーと心を通わせ、乗りこなすことができた初めての人間。
 ボーゾックからの通称は「猿顔一般市民」。
 ボーゾックのマスコット:ゾンネットからレッドレーサーとして告白され、そのうち恭介自身もゾンネットを好きになったため、どう対応するべきか悩むことになった。

ブルーレーサー:土門直樹

 個人武器はマフラーガン。
 設計担当で、いつも図面を引いているが、社長の意向もあり、一向に自社製の車は作る気配がない。
 それでも、5人の中では一番給料が高い。
 彼の設計技術が役立ったのは、ギガブースターの設計時だけだったように思う。
 ボーゾックに囚われたドラゴンクルーザーを守ろうとしたことから、ドラゴンクルーザーと友達になり、乗ることができた。
 演じた増島愛浩氏は当時高校生で、撮影スケジュールが非常にタイトだったらしい。

グリーンレーサー:上杉実

 個人武器はエンジンキャノン。
 営業担当で、給料は5人の中で一番安い。
 ギガブースター制作にただ1人関与せず、しかも完成したばかりのギガブースターを間違えて客に送ってしまったり、変身ブレスを落としてしまったりと、そそっかしいところが目立つ。
 関西出身。

イエローレーサー:志乃原菜摘(しのはら・なつみ)

 個人武器はサイドナックル。
 修理担当で、実はペガサスの仕事は、ほとんど菜摘がこなしていると言える。
 幼いころに貰ったスパナをお守りにしている。
 アクセルブレスの故障を直せるくらいメカに強い。

ピンクレーサー:八神洋子

 個人武器はバンパーボウ。
 経理担当。
 極度の方向音痴で、カーナビックの開発は彼女の方向音痴がきっかけだった。
 演じた来栖あつこ氏は番組終了後、5代目ミニスカポリスリーダーになっている。

リーダー:ダップ

 ハザード星人。
 語尾に「〜だっぷ」と付けるのが癖。
 花火にされたハザード星の生き残りで、ボーゾックを倒すためにクルマジックパワーを身につけ、星座伝説の戦士を探していた。
 普段は、ペガサスの工場裏にクルマジックパワーで作った亜空間秘密基地に潜んでいる。
 夏眠する習性があるらしい。
 声は『絶対無敵ライジンオー』星山吼児役の、まるたまり氏。

救世主:VRVマスター

 ダップが夏眠してしまい、ブレーキングに敗れてRVロボも失った5人の前に現れた黒ずくめの男。
 スモークシールドのフルフェイスヘルメットを被っており、その素顔は分からない。
 ダップ以上の超クルマジックパワーの使い手で、ビッグエッグ地下に巨大な秘密基地を作り、5人にビクトレーラーとVRVマシンをもたらした。
 ハザード星と同じ匂いがするドロップを持っていたり、コーヒー牛乳の蓋を手裏剣に使ったりと、ダップが懐かしがることをやたらとする人物。
 その正体は、死んだと思われていたダップの父親だったが、あの巨大な頭にどうやって普通サイズのヘルメットを被っていたかは不明。
 ダップが夏眠していた時期に平気で行動していたのがなぜかも不明。
 髪の毛などないように見えるが、行きつけの床屋がある。
 また、パチンコが好きだったり、コーヒー牛乳が好きだったりと、妙に日本人的な面を持っている。
 声は、『ルパン三世』の次元大介などで有名な小林清志氏。

 カーレンジャーは、自動車修理工場に勤めるかたわら地球の平和を守るために戦う戦士だ。
 当初、自動車会社ペガサスの修理工場の奥の、ダップがクルマジックパワーで作った空間が基地だったが、VRVマスターの登場と共にビッグエッグ地下の巨大格納庫:ビクトリードックが与えられた。
 基地には探知機があり、ボーゾックが発生すると赤ランプが灯る。
 5人は、なかば無理矢理戦士にされた割には、結構真面目に戦っており、ダップにも内緒で体力増進のトレーニングをしていたりする。
 特徴的なのは、彼らは星座の力を受けることができる戦士として選ばれただけで、特殊な能力を得たわけではないということだ。
 要するに5人は力の依代でしかなく、車を象った5つの星座が与える力:クルマジックパワーはダップが持っており、ダップや星座による力の供給がなければ変身すらできない。
 
 もう1つ特徴的なのは、変身前の5人がシグナルマンやボーゾックの幹部連中と顔見知りだということだ。
 もちろん、彼らは誰もカーレンジャーの正体を知らず、5人を「(自動車会社ペガサスに勤める)チーキュの一般市民」と呼んでおり、カーレンジャーのことは、どこかの星から来たおせっかいな宇宙人だと思っている。
 
 なお、5人の名前は、

  • んない・きょうすけ
  • もん・なおき
  • えすぎ・みのる
  • のはら・なつみ
  • がみ・ようこ

となっており、頭の1文字を並べると「自動車」となる。

▲ TOP ▲

変身システム

 今回はネタが尽きたのか、『ダイレンジャー』の「転身」、『カクレンジャー』の「スーパー変化」、『オーレンジャー』の「超力変身」のような変身を意味する造語は特にない。
 「激走」がそれに近いが、「激走する」などという言い方はせず、「変身が解けた」という言い方をしており、やはり「変身」に戻ったらしい。

 変身アイテムはアクセルチェンジャーで、ブレスレットのアクセルブレスとエンジンキー型のアクセルキーからなる。
 右手に持ったアクセルキーを掲げ「激走!」と叫び、左手にはめたアクセルブレスに差し込み、エンジンを掛けるとき同様にキーを捻って「アクセルチェンジャー!」と叫んで変身する。
アクセルチェンジャー(玩具)
 このブレスは、クルマジックパワーによってたった一度だけ生み出されるものであり、二度と手にすることはできないが、その割に壊れたり修理したりはできるという機械としての特性も持っている。
 
 なお、アクセルキーには、5人それぞれが思い思いのキーホルダーを付けており、この辺も自動車のエンジンキーのイメージがある。

 スーツデザインは、ターボレンジャーと同じ“車を象ったマスク”タイプで、それぞれの星座(5人の夢の車)を象徴している。
 スーツの能力・性能は5人共通。
 マスクには、超アップ用としてバンパーなどがメッキされたバージョンもあると思われ、ロボのコックピットシーンではそれを使用しているようだ。

 恒例の変身アイテムとして、ブレスは商品化されている。
 アクセルキーは本編どおり折りたたみ式になっており、材質もダイキャスト製と結構頑丈だ。
 ただし、変身ポーズを取りつつ鍵穴にキーを差し込むのはかなり難しい。

▲ TOP ▲

名乗り

 「レッドレーサー!」

 「ブルーレーサー!」

 「グリーンレーサー!」

 「イエローレーサー!」

 「ピンクレーサー!」

 5人「戦う交通安全! 激走戦隊! カ〜〜〜〜〜〜レンジャー!」

というのがフルバージョン。
 大抵は、個人の名乗りは省略されている。
 
 また、47話『決死の大宇宙ドライブ』では、変身できないまま「激走戦隊! 心は、カ〜〜〜〜〜〜レンジャー!」という名乗りを行っている。
 
 シグナルマンは、単独で

 「シグナルマン・ポリス・コバーン!」

と名乗る。
 
 なお、25話『ナゾナゾ割り込み娘!』では、カーレンジャーによる名乗りの後で、ラジエッタによる

 「夢見る交通安全! 激走少女ホワイトレーサー!」

という名乗りが加わっている。

▲ TOP ▲

武器

 標準装備は、右腰のホルスターに入っている銃:オートブラスターと、バックルに入っているという設定の剣:バイブレード
 オートブラスターは赤い本体にタイヤ状の飾りが付いている銃で、「シフトアップ!」と叫んで後部を引っ張ると銃口部が伸びて上下に開き、オートパニッシャーに変形する。
 オートパニッシャーは、オートブラスターの20倍の威力がある。
 バイブレードの方も、柄の下部のグリップを引っ張るとフルパワーモードになって破壊力がアップする。
 
 そのほか、ダップがクルマジックパワーで生み出したギガフォーミュラという個人武器セットがある。
 これは、自動車形状のギガフォーミュラを分解すると、フェンダー部がフェンダーソードに、マフラーがマフラーガンに、エンジンがエンジンキャノンに、サイドガードがサイドナックルに、バンパーがバンパーボウに変形するというもの。
 さらに、残ったシャーシ部分にそれぞれの武器を別形態で合体させると、必殺武器モードのフォーミュラーノバになる。
 ただし、巨大化したボーゾックには全く通じない。
 
 後に、実を除く4人とダップの手で新兵器:ギガブースターが作成された。
 ギガブースターは、ギガフォーミュラのシャーシ部分に合体してブースターマシンになるが、ブースタージェットとして単体飛行も可能で、翼を下に畳むと新必殺武器ブースターキャノンになる。
 ブースターキャノンは、フォーミュラーノバの5倍の威力だ。
 
 このほか、カーナビックというカーナビ機能を備えた銃がある。
 カーナビ形態:ナビックコムは、姿を消したボーゾックを発見することができ、銃形態:ナビックショットに変形すると、姿を消した敵でも追尾して命中するという便利な武器だ。
 更に、障害物は曲折して避けるという芸の細かさも持っている。
 ただし、『ジェットマン』のビークスマッシャーと違い、通常時はビームが直進する。
 オートパニッシャーと合体させると、更に3倍の威力のナビックブラスターになる。

 また、シグナルマンの武器シグナイザーは、警察手帳であるIDモード、ガンモード、ポリスバトンモードに3段変形する武器で、『星雲仮面マシンマン』のワープスロットルと同系列の武器だ。

 『カーレンジャー』では、通常装備である銃と剣がそれぞれ単独でパワーアップするという型式を取り、前年の“銃に剣を合体させて強化する”武器と変化を付けた。
 これは、もちろんオモチャでの再現を念頭に置いたものだが、すぐに必殺武器ギガフォーミュラが登場したため、いずれも必殺武器にはなりえず、印象としては通常武器というものでしかなかったように思う。
 ギガフォーミュラは、個人武器合体による必殺武器に、車形態という更なる別形態を持たせた面白い武器だ。
 今なら、きっとラジコンカーとしても発売されていたことだろう。
 2台目のギガブースターは、ギガフォーミュラの余剰パーツであるシャーシを使ったという点は面白いのだが、ブースタージェットが単体で飛行できるため、走行する意味が薄く、個人的には好きではない。

▲ TOP ▲

移動装備

 5人それぞれに専用の小型車両:レッドスピーダー〜ピンクスピーダーがある。
 いずれもゴーカートサイズで、RVマシンに収納されてコクピット部になる。

 ペガサスサンダードラゴンクルーザーは、いずれも意思を持った機械生命体で、誰も乗りこなすことのできなかった銀河に伝わる伝説の“野生の車”で、隕石に閉じ込められていた。
 それを改造・洗脳して使おうとしたリッチハイカーの作戦で地球に持ってきたため、カーレンジャーに奪われたという形になっている。
 従って、カーレンジャーの装備で、唯一クルマジックパワーに依存していない。
 ペガサスサンダーは恭介と意気投合し、ドラゴンクルーザーも、自分を助けようと必死になった直樹の姿に感動して友情を結び、共に戦うようになる。
 その際、ペガサスサンダー達自身の意志で、ボディにカーレンジャーのマークが入った。
 2台とも、宇宙空間では自在に走れるようだが、ドラゴンクルーザーは大気圏内では飛べないらしく、ペガサスサンダーが翼を持ったスカイモードに変形し、ドラゴンクルーザーはウインチでそこに掴まって飛ぶという形を取っている。
 
 当然というか、2台ともほかの3人のメンバーのことはどうでもいいので、一応頼めば乗せてくれるが、あまり言うことは聞かない。
 26話『ノンストップ宅配武器』では、グリーンがドラゴンクルーザーで北海道を目指したが、目立ってしまうので、ドラゴンクルーザーに頭を下げて帰ってもらうシーンがあった。
 ただし、44話『不屈のチキチキ激走チェイス!』で、故障したドラゴンクルーザーを菜摘が修理しており、以後ドラゴンクルーザーは菜摘の言うことも聞くようになったようだ。

 なお、ペガサスサンダー、スカイモード、ドラゴンクルーザーなどの名称は、全て恭介と直樹が付けた。

 シグナルマンは、ポリスピーダーという白バイに乗っている。
 これ単体で宇宙空間を移動(ワープも)できるらしく、28話『さらば信号野郎!!』では、サイレンダーではなくこれでポリス星に帰ってしまった。

 スピーダーマシン走行シーンの撮影については、道交法等の絡みから、スピーダーマシンで一般道を走ることが非常に面倒なため、専ら撮影所内で行われていた。
 これには、当初、ロケなどに行く時間さえも惜しいといった撮影スケジュールの関係などの理由があったものと思われる。
 が、やはり一般道で使えないと撮影に支障を来すこともあったのか、それとも最初から増加装備として車を出すつもりだったのか、ペガサスサンダー達が登場することになり、以後スピーダーマシンはほとんど出番がなくなってしまった。

▲ TOP ▲

ロボット・メカニック

RVロボ

 レッドビークル(スポーツカー型・レッド搭乗:頭部・胸部)、ブルービークル(4WD型・ブルー搭乗:腰部・大腿部)、グリーンビークル(バン型・グリーン搭乗:右脚部)、イエロービークル(バン型・イエロー搭乗:左脚部)、ピンクビークル(クーペ型・ピンク搭乗:両腕)の5台のRV(レンジャービークル)が「激走合体!」する巨大ロボ。
 巨大化するボーゾックに対抗するため、ダップが5人の夢の車の模型にクルマジックパワーを宿して作り出した。
 合体前のレッドビークル単体時にもロボの顔を出すことができるが、その際ロボが喋ることも可能で、5話『この先激走合体』での初合体の際、「注意一秒怪我一生」と喋っている。

 合体時には、「激走合体!」で荒れ地を走り出し、グリーンビークルとイエロービークルが隣接・併走したままターン&バック走行してブルービークルに衝突気味に合体する。
 そのまま走行しているブルービークルに、左右に分離したピンクビークルが合体した後、ジャンプしたレッドビークルがブルービークルに突き刺さるように合体する。
 各メカが合体するたびに搭乗者がメインコクピットに移動し、5人が揃った時点で、「バトルモード、チェンジアップ!」と言いながらそれぞれコンソールにアクセルキーを差し込んで回すと、ハンドルの上下の丸み部分が収納され、ロボットの操縦桿っぽい形になる。
 この間、メカはグリーンビークルとイエロービークルを前にしたビークル連結状態で走行したままなのだが、ここで急ブレーキを掛け、その勢いでつんのめるようにしてボディが起き上がる。
 そして、起き上がった上半身が変形し、「エンジン快調! RVロボ!」で完成する。

 変形が終了するまでの間、いったいどんな広い荒地を何km走り続けているのかは、放映当時話題になった。

 必殺技はRVソードを構えたまま高速でコマのように回転して接近し、その勢いで敵を斬り裂くRVソード激走斬り
 スーパー戦隊ロボ史上、初めて水平回転から放つ必殺技だが、斬り終わった後、片膝を付いた低い姿勢を下から見上げるというパースがついており、非常に格好いい。
 クルマジックパワーがないと動かないが、32話『RVロボ大逆走!』でボーゾックが操縦した際には、巨大な乾電池型バッテリーを付けられて動いていた。

VRVロボ

 奪われたRVロボに代わり、VRVマスターが秘密基地と共に持ってきた2台目の巨大ロボで、VRVマスター曰く「必ず勝つことを約束されたロボット」とのこと。
 ビッグエッグ地下のビクトリードックからビクトレーラーが発進し、そこからVファイヤー(消防車・レッド搭乗:頭部・胴体部)、Vポリス(パトカー・ブルー搭乗:腰部・大腿部)、Vダンプ(ダンプカー・グリーン搭乗:右脚部)、Vドーザー(高速仕様にアレンジされたタイヤつきブルドーザー・イエロー搭乗:左脚部)、Vレスキュー(救急車・ピンク搭乗:両腕)の5台のVRV(ビクトリーレンジャービークル)マシンが発進する。
 5台は「必勝合体!」して「エンジン絶好調! VRVロボ!!」でVRVロボになる。
 実は、固定武装としては2丁拳銃のVガンしか持っていない。
 必殺技は人型(?)に変形したビクトレーラーの腕部分のVバルカン、Vバズーカを取り外し、両手に持って同時発射するビクトリーツイスター
 RVロボと同じく、クルマジックパワーがないと動かない。
 
 また、それぞれ「必勝変形!」で中型ロボのVRVファイターに変形する。
 VRVファイターの名前は、それぞれファイヤーファイター、ポリスファイター、ダンプファイター、ドーザーファイター、レスキューファイターとなっている。

ビクトレーラー

 VRVマスターが秘密基地、VRVロボと共に持ってきた巨大トレーラー。
 ビッグエッグ地下からVRVマシンを載せて発進し、戦闘時には一応の人型形態になる。
 両腕部がそれぞれVバルカン、Vバズーカとなり、これをロボに転送して必殺武器として使用させるのが役目。
 Vバルカン、Vバズーカは、RVロボ、VRVロボ、VRVファイターいずれも使える武器だ。

浪速のど根性ロボ

 40話『浪速ともあれスクランブル交差ロボ!?』で、RVロボ、VRVロボともに大ダメージを受けたため、「緊急合体!」で使えるパーツを寄せ集め、VRVロボのボディにRVロボの手足を付けた特別バージョン。
 必殺技としてビクトリーツイスターを使った。

サイレンダー

 シグナルマンが使う巨大ロボ。
 シグナルマンがシグナルホイッスルを吹くと、どこかに隠されている巨大パトカーが発進し、「スタンダップ! サイレンダー!!」で変形する。
 武器は、大型手錠:ワッパガン、下腕部から拳方向にセットされるサイレンダガーと、サイレンバルカン。
 ほかに、サイレンシールドも装備している。

 RVロボは、当時のRVカーブームを反映して設定・設計されたものと思われる。
 本来のRVは、レクリエーショナブル・ビークルの略だが、これを「レンジャー・ビークル」とすることで、割と自然に持ってきたのはアイデアだったと思う。
 また、本来のRVは、タイヤが大きく車高が高く、カンガルーバンパーやフォグランプが付いているものが多く、レンジャー・ビークルの方でも、元の車の形状にそれを付け加えた形でアレンジされている。
 また、これらレンジャー・ビークルの外見はカーレンジャーのマスクデザインにも反映されており、前述のとおり、自分の巨大メカと同じデザインのマスクということになる。
 なお、番組が車に拘っているせいもあるのだろうが、Vドーザーはブルドーザーでありながら、バケットパーツをウイングとして使用するなど、レーシングカーのような形状にアレンジされている。
 
 『カーレンジャー』では、前年の『オーレンジャー』でロボットが増えすぎた反省から、1号ロボと2号ロボ、空母的な意味合いのキャリアマシンが変形する要塞ロボと、第3勢力であるシグナルマンのサイレンダーだけの構成にして、スーパー合体もなしにした。
 要塞ロボは腕を武器として供給する形で、ほかの2体と連携する形になっている。
 これにより、巨大ロボは実質4体に抑えられることになった。
 増加武装等も含めて超合体をするロボットが全くないのは、『マスクマン』以来8年ぶりのことだ。
 また、VRVマシーンのように、巨大ロボのパーツとなるメカ全てが合体形態・ロボット形態・単独活動形態に3段変形できるのも初めてのことだった。
 人型ロボによる5体合体ということでは、『カクレンジャー』の巨大獣将、『オーレンジャー』のブロッカーロボがあるが、あれは人型以外の活動形態を持っていない。
 一応、巨大獣将には、合体して風雲幻城になるという描写はあったが、玩具でも再現されておらず、明確なものではなかった。
 過去には、『ダイレンジャー』の龍星王が龍形態・武人形態・(一応)合体形態を持っているだけだったのだ。
 また、『ファイブマン』のファイブロボ→ファイブトレーラーや『ジェットマン』のジェットイカロス→イカロスウイング、『ジュウレンジャー』のダイノタンカー→大獣神のように別の合体パターンを持っているケースはあるが、5つのメカがそれぞれビークル形態とロボット形態を取れるというケースは初めてだったのだ。
 そういう変形の都合もあって、VRVロボの合体は、それぞれのメカがボディ、手足という具合に各ブロックをそのまま構成する形を取らざるを得ず、合体そのものはかなり単調なものになっている。
 
 だが、この単調な合体変形システムを別の意味で生かす方法があった。
 それが手足の換装だ。
 RVロボとVRVロボは、どちらもボディと手、足というパーツ構成になっており、しかもジョイントパーツは共通のものを使用している。
 そのため、RVロボのボディにVRVロボの手足を付けるといったイレギュラー合体が可能であり、1回だけとはいえ、実際に本編でやってしまったのだ。
 しかも、この換装は、最初から企図されていたらしい。
 というのは、実際の商品で浪速のど根性ロボを組み立てると、前後の重心バランスが狂って立たなくなるのだが、VRVロボの商品には、それを補正するための下駄パーツが付属しているからだ。
 つまり、最初からプレイバリューとして用意されていたものを、本編中でイレギュラー合体として実現しているだけなのだ。
 両方の商品を持っている人なら、事前に試した人もいたのではないだろうか。

 この考えを進めた結果が『百獣戦隊ガオレンジャー』の百獣合体や百獣武装による手足の換装で、Vシネマ『忍風戦隊ハリケンジャーVSガオレンジャー』では、さらに別番組のロボットである旋風神に百獣武装している。

 ところで、RVロボの合体の際には、上記のとおりアクセルキーを差し込んで回すというアクションがある。
 これは、正にエンジンを掛けるという感覚で、車をモチーフとした『カーレンジャー』の面目躍如なのだが、通常、こういった変身アイテムとコクピットの連動がある場合にはコクピットのオモチャが発売されるのに、今回は発売されていなかったようだ。
 ハンドルの変形を伴うからやりにくかったのだろうか…?

▲ TOP ▲

その他の人々

社長の息子:天馬 市太郎

 ペガサスの社長の息子で、よく工場に遊びに来る。
 シグナルマンと仲が良い。
 レギュラーキャラとよく絡むだけあって、ボーゾックの作戦によく巻き込まれたり、事件に関係したりする。
 そういえば、巨大化の秘密である芋羊羹も、市太郎がグラッチに渡したんだった。

共闘者:シグナルマン・ポリス・コバーン

 ポリス星人で、宇宙警察の警察官。
 チーキュ(地球)担当として、妻シグ恵と息子シグ太郎を置いて単身赴任中。
 移動交番コバーンベースで警ら活動しているが、なぜかへんぴなところにしか置かないため、「…誰も通らない…」が口癖になってしまった。
 信号や道路標識に徹底的に従う交通安全体質の持ち主。
 シグ太郎と同じくらいの年頃の市太郎に息子の面影を見ているため、市太郎に優しい。
 声は、『機動武闘伝Gガンダム』チボデー・クロケットなどの大塚芳忠氏。

共闘者:ラジエッタ・ファンベルト(ホワイトレーサー)

 ファンベル星の第2王女。
 カーレンジャーに憧れ、自らホワイトレーサーを名乗って地球にやってきた。
 その際、「銀河伝説のクルマジックパワーに導かれたかのようにチーキュにやってきたカーレンジャー6番目の妹」と、某ウルトラの星が見える少年のようなことを言っている。
 一旦は帰ったものの、人型ロボに変形(巨大化も可)するラジエッカーに乗って再度やってきた。
 実は、ゾンネットの妹。

 演じた女優は、1回目の登場と2回目以降で代わっており、最初は濱松恵氏で、以降は須藤実咲氏。
 噂では、水着姿にさせられたり超ミニスカートの衣装をアオリで撮られたりしたため、濱松氏が学校でからわれ、嫌気が差して降板したための交代だとか。
 濱松氏は、後に濱松咲と名を変えて、'99年ビジュアルクイーンになっている。

▲ TOP ▲

敵組織:宇宙暴走族ボーゾック

首領:総長ガイナモ

 一応ボーゾックでは一番の実力者であり、結成当時からの総長でもあるらしいが、マスコットであるゾンネットにぞっこんで頭が上がらない。
 ゾンネットの願いにより、地球(チーキュ)を花火にするためにやってきた。
 声の出演は、『マジンガーZ』ボスの声で有名な大竹宏氏。
 氏は、1988年から放送の『キテレツ大百科』でブタゴリラの声優をやっている最中に一旦引退したのだが、ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズにボス役で出演するために現役復帰したらしい。

幹部:副長ゼルモダ

 ボーゾックの行動隊長的な立場。
 戦闘能力はかなり高く、機会があればガイナモを蹴り落として総長になろうという野望も持っているらしい。
 不利になると「撤収!」と言って撤退する。
 声の出演は、『おジャ魔女どれみ』シリーズであいこの父を演じた津久井教生(つくい・きょうせい)氏。

幹部:グラッチ

 ボーゾックの知恵袋。
 芋長の芋羊羹でボーゾックが巨大化できることを発見した功労者。
 声の出演は、長嶝高士(ながさこ・たけし)氏。

幹部:ゾンネット

 ボーゾックのマスコットだが、わがままでガイナモをあごで使う。
 星が花火になって散るところを見るのが好きで、ハザード星に引き続き地球を花火にすることをガイナモに求めた。
 実は、ファンベル星の第一王女:バニティミラー・ファンベルトであり、家出中。
 レッドレーサーに恋をしたが、後にその正体が恭介だと知った。
 憧れのレッドレーサーが冴えない「猿顔一般市民」だったことにかなりショックを受けたが、自分を救おうと必死になって戦う恭介の姿に心が動いたらしく、最終回、ファンベル星に帰った後、恭介のことを思い出していたようだ。
 演じた七瀬理香氏は、水谷リカ名義でアダルトビデオに出演したりしている。

雇われ幹部:リッチハイカー教授→リッチリッチハイカー教授

 ボーゾックに取り入り、参謀として力を振るいつつ組織を奪おうとした宇宙人。
 宇宙の邪悪エネルギーを浴びてリッチリッチハイカー教授にパワーアップし、ガイナモの貯金をこっそり下ろして巨大ロボ:ブレーキングを作り上げ、RVロボを捕獲することに成功したが、VRVロボに敗れた。
 声の出演は、田中信夫氏。

怪人:ボーゾック

 BB(ビービー)ドンパなど、同じアルファベット2つを重ねた後にカタカナ名前が付くボーゾックの構成員。
 アルファベットの読み方は、そのままではなく、「G」を「ゴー」と読ませるなど、ローマ字や英単語の子音として使っているパターンもある。
 基本的には適当に付けているようだが、中には、ゾクレッドことSS(スースー)パマーン(スーパーマン)や、MM(メチャメチャ)シューリスキー(メチャメチャ修理好き)、EE(エンエン)ムスビノフ(縁結び)など、本編の内容に合わせて語呂合わせをしているケースもある。
 大抵の連中が「ボーゾック一の○○」といった称号を持っているが、単に特技を自慢しているだけで、EEムスビノフの「ボーゾック一の縁結び名人」のように、戦闘能力に全く関係ない部分を誇っている場合も多い。
 
 彼らは要するに宇宙人なのだが、怪人を表す特定の名称はなく、単に「ボーゾック」と呼ばれる。
 種族や出身星はそれぞれ違う(たまに兄弟がいたりするが)のに、なぜか全員(ゴキブリに至るまで)芋長の芋羊羹を食べると巨大化する体質を持っているらしい。

戦闘員:ワンパー

 ボーゾックの下級構成員で、ゼルモダの持っているカメの中からわらわらと現れる。
 体色は、ホワイト、ブルー、ピンク、グリーンの4色。
 やはり宇宙人と思われるが、なぜこいつらだけ同じような姿形で大量にいるのかは不明。

裏の悪役:暴走皇帝エグゾス→エグゾス・スーパーストロング

 悪の大宇宙ハイウェイを建設するため、邪魔になる星を潰していた宇宙人。
 ガイナモに「『ハ』で始まる星を滅ぼすといいことがあるでしょう」という年賀状を出してハザード星を破壊させたり、巨大ロボ:ノリシロンなどを与えて地球を破壊させようとしていた。
 「皇帝」と名乗ってはいるが、帝国を持っているわけではなく、自前の戦闘軍団も持ってはいないようだ。
 ただし、ノリシロンのような強力な組立ロボを開発できるようなので、何らかの配下を従えてはいるのだろう。
 宇宙ランドという雑誌を発行していると言っているが、本当に発行しているのか、ボーゾックを騙すためにそういう言い訳をしていたのかは不明。
 ただし、エグゾスのマークは結構有名らしい。
 最終的には、エグゾス・スーパーストロングになり、直接カーレンジャーと戦った。
 声の出演は、小林修氏。

 ボーゾックは、宇宙船バリバリアンで宇宙を旅しつつ、あちこちの星で暴走行為を行っている宇宙暴走族だ。
 バリバリアンの周囲には、暴走用の道路があり、構成員達は好きなときにそこを走り回って騒音を立てることができる。
 豚型のブヒバリッカーなど数種類の先頭車両:バリッカーを持っており、これで地表侵攻する。
 星を花火にするほどの科学力があるとはとても思えないのだが、ある程度地表を荒らした後でないと花火にできないようなので、何らかのシステムがあるのだろう。
 暴走皇帝エグゾスとは全く関わりのない組織で、エグゾスが一方的に利用しているだけ。
 ガイナモ達の方は、エグゾスのことを“ボーゾックのファンで、色々物をくれる気前のいいおっさん”程度にしか考えていない。

 なお、登場する宇宙人達は、基本的に車関係の名称でネーミングされており、

という具合だ。

▲ TOP ▲

巨大化

 ボーゾックの構成員達は、その体質から、芋長(いもちょう)という店の芋羊羹を食べると巨大化する。
 そのことを偶然グラッチが発見した。
 なぜか芋長のものでなければ駄目で、コンビニの芋羊羹を食べると逆に小人化してしまう。

 ボーゾック側では、一応巨大化の秘密を隠そうとしており、38話『バックオーライ!? イモヨーカン人生』では、年を取って店を畳もうとしていた芋長の店主を若返らせたところ、カーレンジャーに発見され、「たまたま芋長の店主が犠牲者になったのだ!」などと白々しく言い訳をしている(もちろん、カーレンジャーは素直にそれを信じた)。

 腐った芋羊羹を食べると、一旦は巨大化するがすぐに元の大きさに戻ってしまい、しかもダメージを伴うため、最終回では、ガイナモがエグゾス・スーパーストロングに腐った芋羊羹を食べさせて等身大に戻している。

▲ TOP ▲

真実の物語

 悪の大宇宙ハイウェイを建設しようと目論むエグゾスは、その建設予定地にある星を自分の手を汚さずに破壊しようと考え、ちょうど宇宙を荒らし回っていたボーゾックを利用してハザード星を破壊した。
 同じように地球も邪魔だったが、その後、ボーゾックがうまい具合に地球に向かったため、エグゾスはそのまま静観していた。
 だが、いつまで経っても地球がなくならないので、ボーゾックの前に姿を見せ、あれこれと手を出すようになっていった。

▲ TOP ▲

ラストへの流れ

 ダップを捕らえることでクルマジックパワーの供給を絶ち、カーレンジャーを倒そうというエグゾスの作戦は、ダップとカーレンジャーの友情の前に潰えた。
 ダップは、囚われている間に、ハザード星を滅ぼすようボーゾックをそそのかしたのがエグゾスだったことを知った。
 
 そして、ガイナモとゾンネットを結婚させればガイナモが発憤するのではないかというゼルモダのアイデアに乗ったエグゾスは、費用を負担して結婚式を挙げさせることにする。
 一方、レッドレーサーとしてでなく陣内恭介としてゾンネットと付き合いたい恭介は、ゾンネットをボーゾックから抜けさせ、正体を明かそうと考えていた。
 恭介は、ボーゾック一の縁結び名人:EEムスビノフに追われて地球へやってきたゾンネットを守るため、目の前で変身して戦うが敗れてしまい、ゾンネットを連れ去られてしまった。
 正体がばれたことで覚悟を決めた恭介は、変身せずにゾンネットを助け出すことを決意し、単身EEムスビノフに挑む。
 憧れのレッドレーサーが冴えない猿顔一般市民だったことにショックを受けたゾンネットだったが、EEムスビノフに取り憑かれた自分を救うために必死で戦う恭介の姿に心が動く。
 恭介は、ボロボロになりながらも変身しないままでEEムスビノフを撃退し、ゾンネットを取り戻した。
 そしてゾンネットは、迎えに来たラジエッタと共に、バニティミラー・ファンベルトとしてファンベル星に帰っていった。

 業を煮やしたエグゾスは、最後の作戦に出る。
 100万年に1度、酒樽座の酒がこぼれるという事象が起きるのだが、その際、5つの車型の星座を守る守護星座が酔っ払ってしまうのだ。
 その時期が近づいていることを知ったエグゾスは、そこを突き、車型の星座を飲み込みんだ。
 これによりカーレンジャーは変身不能に陥り、巨大ロボも作動不能になってしまう。
 ここぞとばかりに本性を現し、ボーゾックごと地球を滅ぼそうとしたエグゾスだったが、戻ってきたゾンネット(バニティミラー)がボーゾックと恭介達の手を結ばせてしまう。
 バリバリアンを借り受けた恭介達は、エグゾスに体当たりして倒し、クルマジックパワーを取り戻すことに成功した。
 
 だがエグゾスは、全宇宙の邪悪エネルギーを吸収して巨大なエグゾス・スーパーストロングとして復活し、カーレンジャーと戦う。
 ガイナモは、カーレンジャーに加勢しようと芋長の芋羊羹を食べて巨大化するが、芋羊羹が腐っていたためすぐに元の大きさに戻ってしまった。
 エグゾス・スーパーストロングの前に、VRVロボもRVロボも破壊され、カーレンジャーは絶体絶命のピンチとなる。
 このとき一計を案じたガイナモは、エグゾス・スーパーストロングの口に腐った芋羊羹を放り込んで縮小させ、普通のエグゾスに戻してしまった。
 力を失ったエグゾスに、カーレンジャー・クルマジックアタックが決まり、エグゾスは滅んだ。
 
 その後、ボーゾックは解散した。
 ガイナモは焼肉屋に就職、ゼルモダとグラッチは小学校からやり直すことにし、ほかの構成員達は芸能プロを興してそれぞれの人生を歩くことになった。
 使命を終えたシグナルマンもまたポリス星へ帰り、警部補昇進試験目指して猛勉強を始めた。
 また、ファンベル星に帰ったゾンネットは、次々舞い込む見合い写真を眺めながら、恭介のことを考える日々を送る。
 そして、とりあえず復讐を終えたダップとその父(VRVマスター)は放浪の旅に出、恭介達は本来の自分達の日常へと戻っていった。

▲ TOP ▲

Vシネマ 激走戦隊カーレンジャーVSオーレンジャー

 VシネマでのVSシリーズ第2弾。

 第1弾であるオーレVSカクレンジャーの好評により作られたもので、前回はカクレンジャー側の顔出しキャラはサスケと鶴姫しかいなかったが、今回はオーレンジャーの役者5人がちゃんと揃っている。
 また、1999年結成のオーレンジャーが1996年にいけしゃあしゃあと先輩面して登場したり、5人揃わないとオーレンジャーロボが動かないなどと、本編での設定をすっかり忘れてしまったかのような展開がまぶしい。
 しかもオーレンジャーは世界規模の事件であるバラノイアの侵略を描いていたのに、恭介が全く存在を知らないなど、前作の世界観は忘れてくださいと言わんばかりのスタンスで、お祭りとして開き直ってしまっているのがよく分かる。
 
 その点を呑んだ上で見れば、カーレンジャーの世界観に染まってしまっているオーレンジャーの面々は、かなり笑える。
 恭介が「UAOH(United Airforce OHranger)」を「うあおー」と読んでしまったり、マシン獣にあっさりと騙されて「(自分を踏んづけた)こっち(裕司)の方が悪者っぽい」などと言っていたりと、ネジの外れた会話が楽しい。
 また、オーレッドがさらわれてしまったため、前述のとおりオーレンジャーロボが動かなくなってしまい、4人では使い物にならないオーレンジャーの代わりに、(さらわれる原因を作った)カーレンジャーに救出に行かせるという三浦参謀長のアイデアが泣かせる。
 そのため、三浦がカーレンジャーの5人を鍛え直すことになるのだが、その前に自分の部下4人を鍛え直せと突っ込みたい衝動を抑えきれなかった。
 ともあれ、三浦が課した試練を、小狡い手口で1人ずつクリアしていく様と、信じられないくらいあっさりと騙される三浦というのは、なかなか笑える光景で、この作品の最大のウリではないかと思われる。
 『オーレンジャー』を7話くらいまでしか見ていない人がこれを見たら、きっと腰を抜かすに違いない。
 
 結局のところ、世界観も作品の方向性も違う2戦隊を共演させるためには、前番組の細かいところは忘れて現役番組のカラーに染めた方がいいという方法論は、ここで確立されたのかもしれない。

▲ TOP ▲

傾向と対策

 シリーズ18作目(『ゴレンジャー』からは20作目)となった『カーレンジャー』は、シリーズ屈指の異色作だ。
 何よりもまず、『カクレンジャー』以上に不思議コメディ色が強い作品になっていることが挙げられる。
 メイン脚本に不思議コメディシリーズを担当していた浦沢義雄氏を迎えたことが大きいのだろうが、とにかく敵も味方もどこかズレていて、真面目に戦っているという印象を受けない。
 また、巨大化するために芋羊羹を食べるという発想も相当ぶっ飛んでいるが、それ以上に、敵の侵略目的が地球を花火にするためというのがふざけている。
 これがエグゾスのように“地球を破壊する”という言い方ならば、まだ押し出しも強いのだが、ゾンネットが体をクネクネさせながら「チーキュが花火になるところが見た〜いぃ♪」などとガイナモに甘えてねだっているのでは、なんだかちっとも怖くない。
 これは無邪気な怖さを狙っているわけでもなんでもなく、単に間抜けな侵略理由にしているだけと思われ、その意味でも不思議コメディシリーズに近い存在になっている。
 カーレンジャーの正体を知らない宇宙人連中が、シグナルマンも含めて全員、地球を「チーキュ」、日本を「ニッポンポン」と呼んでいるのも、そういったコメディ色の発露の1つと言えるだろう。
 
 また、『ナゾナゾ割り込み娘!』では、ラジエッタを人質に取ったSSパマーンに「卑怯よ!」と言ったピンクに対し、SSパマーンが「暴走戦隊だからいいパマン。大体、普段1人のボーゾックに5人でかかってくるお前らに言われたくないパマン」と言っていたり、46話『突然失効! 変身パワー』で、VRVファイターに分離してノリシロン・ファイナルと戦うカーレンジャーに対し、ゼルモダが「おめえら、5対1だぞ! 卑怯だとは思わねえのか!?」と複数ヒーロー物では禁句のはずの台詞を言っていることも特徴的だ。
 そして、そのゼルモダに対して、レッドが「勘違いするな! 俺達は1の力を5分割して戦っているだけだ!」と言い返しており、タブーさえネタにしてしまうほどの開き直りを見せている。
 なお、このときは、グリーンの「けど、そんな風に言われると卑怯な気もしてきたな」との意見で、VRVロボに再合体して1対1に戻している。

 特筆すべきなのは、『カクレンジャー』でさえ第2部以降は一般的なヒーロー物としての色を強めたのに対し、『カーレンジャー』では最後までふざけた路線を曲げなかったということだ。
 敵側に悪意ある人物を配置させようとした痕跡は確かにあり、それがリッチハイカーだったりエグゾスだったりするわけだが、それらとて本作のコメディ色を払拭させるほどのものではなく、何よりゼルモダらが「エグゾスのとっつぁん」などと呼んでいることなどから、むしろエグゾスをボーゾックのカラーの中に埋没させようという意図が見える。
 また、最終決戦でのヒーロー側のピンチの理由が守護星座が酔っ払ったためだったり、勝機を掴んだ決め手が腐った芋羊羹だったりと、徹底的におちゃらけた作品として作り上げられたと言える。
 そういうわけで、正統派ヒーロー物が好きな人からは毛嫌いされる作品となっており、そのせいか、25話では視聴率1.9%というスーパー戦隊シリーズ最低記録を樹立している。

 25話だけではなく、中盤前後の視聴率は軒並み低く、番組の存続にも黄信号が灯るほどのものだったらしい。
 実際、このサイトの管理人:後藤夕貴は、初期の展開に呆れ果て、以後完全に見切りをつけてしまっていた。
 どれくらい嫌いかというと、最終回時期の放送時間帯ころに鷹羽が遊びに行った際、見させてほしいと頼んでも見せてくれなかったほどだ。

 ただ、鷹羽は『カーレンジャー』を“コメディ系の番組”として、それなりに評価している。
 何より、正統派を目指して大コケした『オーレンジャー』の後だけに、今更正統派はできないだろうという感もあり、無碍にけなすのもどうかと思う部分もあるのだ。
 もちろん、それでもスーパー戦隊を名乗る以上はそれなりの作品であってほしいと思うファンも多いだろうし、同時期のメタル作品が、正統派ではあるがどうも空回りしていた感の強い『ビーファイターカブト』だっただけに、スーパー戦隊が完全おちゃらけ系だったのは辛かったという人も多かったことと思う。
 
 特に、最終的にエグゾスが全ての元凶だったかのようにして解決させているが、ハザード星を花火にしたのも、地球を次の目標にしたのも、ガイナモやゾンネット達の自由意思だ。
 そんな彼らが、最後に利用されただけのいい人であるかのような扱いをされていることに腹を立てた人も多かったことと思う。
 また、警察官であるシグナルマンが、指名手配犯であるガイナモやゼルモダを見過ごして帰ってしまうというのは説明が付かない。
 この辺は言い訳のしようもない本作最大の矛盾点だと思う。
 …が、不思議コメディ系だと、そういうとんでもないオチは結構あるので、鷹羽はまだ許せたりする。
 『ビーロボ カブタック』最終回みたいに、“スターピースを全部集めてみたら、ラッキィ池田演じる神様が出てきて地球を滅ぼそうとした”というオチもあったわけだし。
 
 また、「宙スポ」や「チーキュの歩き方」、「宇宙ランド」などの新聞・雑誌類の細かいプロップが作られていたりと、結構細部に拘ってもいるようだ。
 
 なお、結構有名な話だが、最終回近くで登場しているボーゾック側の巨大ロボは、本来「バリンガーZ」という名称で、マジンガーZのパクリデザインのものだった。
 テレビランド、テレビマガジン、てれびくんなどの児童誌には、このバリンガーZで決戦を行うような記事が載っており、実際に収録・アフレコも終わっていたのだが、実際に画面に登場したのは、以前に登場したノリシロン12の塗り直し改造版のノリシロン・ファイナルだった。

 詳しい事情は諸説あるが、どうやら、雑誌発表後にダイナミックプロから版権絡みでクレームがつき、ノリシロン・ファイナルで撮影し直したということらしい。
 なにしろガイナモの声は『マジンガーZ』のキャラ:ボスなわけで、知っている人が見れば“ボスがマジンガーZを操縦している”ような感覚が味わえる。
 もし、実際にバリンガーZがテレビに出ていたら、相当なインパクトがあったことだろう。
 ちなみに、その後、ゲーム『スーパーロボット大戦シリーズ』では、本当にボスがマジンガーZを操縦することができるようになっている。
 もちろん、声付きで。

 ところで、どうして『カーレンジャー』のような作品が作られることになったのだろうか。
 どうやら、当時の東映には、正統派ヒーローを作りにくい空気があったのではないかとも思われる。
 これは、シナリオや演出、役者など色々絡んでくる問題なので一概には言えないのだが、メタルシリーズがこの年で(一応)終焉を迎え、翌年は不思議コメディ的な『カブタック』になっていることを考えると、そんな気がするのだ。
 もっとも、この年の9月にスタートした『ウルトラマンティガ』は正統派のヒーローだったのだから、全く正統派が作れない世の中だったというわけでもあるまい。
 どちらかというと、東映トクサツの手法が方向性を見失って行き詰まっていたと言うべきなのだろう。

 さて、コメディタッチに目をつぶってこの『カーレンジャー』を見てみると、実は意外と拘った作りになっていることに気付く。

 まず目に付くのはネーミングだろう。
 先に挙げたとおり、レギュラーキャラの名前はほとんど車関係から付けられている。
 デザイン面を見ても、カーレンジャーの装備は、変身ブレスはエンジンキー、必殺武器は車に変形、剣はチョークを引っ張るとエンジンが回転、銃もオートブラスターは車型でカーナビックはカーナビから変形と、全て車関係に統一されており、とにかく車に拘っている。
 ボーゾックが出現したときの「ボーゾック発生」という台詞も独特で、「交通事故発生」のようなニュアンスだと思われる。

 また、サブタイトルにも全て車・道路関係の言葉が入っており、しかも次回予告の最後には、キャラクターの1人による交通安全についての台詞が入るという凝りようだ。
 これらサブタイトルの中には、35話『裏切りの信号野郎』43話『メリークルマジッククリスマス』のように無理矢理っぽいものもあるが、すれ違いから菜摘と洋子がケンカする6話『私達…一方通行』や、誕生パーティーの準備をこっそりやっている4人にブルー:直樹が疎外感を感じる7話『青は進入禁止?!』、洋子のダイエットを描いた11話『怒りの重量オーバー』、シグナルマンがポリス星に帰るかどうか迷う27話『単身赴任の分岐点』など、巧いものも多々ある。
 実は、『バトルフィーバー』に始まるスーパー戦隊シリーズにおいて、ネーミングやデザインはともかく、サブタイトルの付け方にまで拘りを持ったのはこの『カーレンジャー』が初めてなのだ。
 
 ただし、戦隊そのものの始祖である『ゴレンジャー』では、『カーレンジャー』と同じく、戦士5人の名前の頭を並べると

と、「カシオペア」になるようになっている。
 モモレンジャーが「ペギー」なんて変な名前なのは、この語呂合わせのためだ。
 また、毎回のサブタイトルにも色名をはめ込んでいるなど、『カーレンジャー』との共通点は多く、逆に言うと、『カーレンジャー』がそれらを真似たと思われる。
 この意味では、前作『オーレンジャー』の時に、『ゴレンジャー』を第1作として引っ張ってきたことが影響していると言えるだろう。
 もっとも、その割には、20作目という宣伝はしていなかったようだ。

 さて、この作品の特徴としては、ほかに誰1人としてヒーローの正体を知らないことと、普通の人間が変身するという2点がある。
 前者は、5人とダップ、VRVマスター以外にカーレンジャーの正体を知る者が誰もいないということだ。
 ボーゾックはもちろん、一応味方であるシグナルマンでさえ、恭介達のことは「自動車会社ペガサスに勤めているチーキュの一般市民」だと信じている。
 カーレンジャーのマスクは口のあるデザインだし、シグナルマンのような“ああいう素顔”の宇宙人もいることから、彼らはカーレンジャーを“ああいう顔の宇宙人”だと思っているわけだ。
 首から下は服と思っているらしい。
 何しろ、ゾンネットの想像の中のレッドレーサーは、あの顔の下に学生服を着ているし、45話『ホントの恋の出発点』では、恭介の変身を見たEEムスビノフの「カーレンジャーの正体が分かりました」という報告に、ゼルモダが「カーレンジャーに正体なんてあるわけねえだろが」と返しているくらいだ。
 ちなみに、11話『怒りの重量オーバー』で、トーク番組のコメンテーターが「ピンクの服を着ているから太って見える」とファッションセンスを問題にしている。
 
 この辺まで来ると、ちょっと笑える状況とも言えるが、冷静に考えれば、敵にさえ正体がバレていない変身ヒーローというのは、結構少数派だ。
 ここ20年くらいで考えると、『機動刑事ジバン』や『兄弟拳バイクロッサー』、『星雲仮面マシンマン』、大分遡って『スパイダーマン』くらいだと思う。
 このうち、『ジバン』と『バイクロッサー』には、変身シーンをウリにしていないという特徴がある。
 『ジバン』に至っては、変身ヒーローなのに変身シーンそのものがない。
 
 一般にヒーロー物では、敵組織が正体を知っている方が、変身前から敵と絡められるので作劇がやりやすい。
 特に、主人公側が多人数構成であるスーパー戦隊では、敵と顔見知りでないと、各話のメインキャラを事件に絡めるのが難しくなる。
 
 そして、ヒーローの正体が分からない作品では、正体を知られると家族や周囲の人間に危険が及ぶという背景を持つことで、正体隠しをサスペンスにしていることが多い。
 スーパー戦隊シリーズでは、基地や住処は隠しているが、素顔自体は敵に知られているというパターンが続いており、正体不明なのは『カーレンジャー』が初めてだった。
 ただ、これはサスペンスのためではなく、普段の顔見知りが敵同士というコメディのためだったと思う。
 なんだかつまらない結論だが、それでも全く意味がないわけではない。
 それがもう1つの特徴である“普通の人間”というファクターだ。
 
 カーレンジャーの5人は、格闘技など全く縁のないごく普通の会社員だ。
 スーパー戦隊シリーズには、カーレンジャー以前にもデンジマン、ゴーグルV、ダイナマン、バイオマン、マスクマン、ターボレンジャー、ジェットマン、ダイレンジャー、カクレンジャーと、それまで一般市民だった者が選ばれて戦士となったパターンも多いが、それらについては戦士としての能力・資質を見込まれてスカウトされる例が多く、事実、バイオマン、マスクマン、ターボレンジャー、ジェットマン、ダイレンジャーは、本人の自覚があるかどうかはともかく特殊な能力を持っていたし、カクレンジャーは血筋によって選ばれた戦士だ。
 デンジマンの5人が何を根拠に選ばれたのかは語られていないが、それぞれ運動能力は優れていたようだし、少なくともピンク:桃井あきらはデンジ星人の子孫であり、ほかの4人についてもその可能性が否定できない。
 
 対してカーレンジャーは、確かにクルマジックパワーによって変身して強くなる。
 だが、クルマジックパワーは彼らに変身能力を与えたが、決して肉体的に強化したわけではない。
 例えばジェットマンには、雷太や香、アコなど全くのド素人がいるが、彼らはバードニックウェーブで肉体を強化されているわけで、基本的な戦闘能力は高いのだ。
 この点、ちょっと考えてみると、『カーレンジャー』では、恭介達が生身で戦闘しているシーンはほとんどないことに気付く。
 彼らは、まず変身してから戦いに赴くことが多いのだ。
 特に怪人と絡むことは少なく、せいぜい8話『変身腕輪不携帯』で、ブレスを落として変身不能になった実が、単身YY(ヤーヤー)ゴンザに立ち向かって一方的にやられていたことと、『ホントの恋の出発点』で、恭介がEEムスビノフと戦ったことくらいではなかろうか。
 こういう変身前は戦わないというのは、スーパー戦隊では初めてのことだったのだ。
 
 考えてみれば、強化服ヒーローであるスーパー戦隊シリーズでは、生身の耐久力・攻撃力は普通の人と変わらない場合が多い。
 そんな連中が、生身で、軍隊でも相手にできない敵戦闘員を相手に戦うというのはある意味変なことだとも言える。
 そもそも本来は、その耐久力と攻撃力の弱さを補うために強化服を着るはずなのだ。
 
 もちろん、『カーレンジャー』は、そんなリアルな理由からそうしたのではないだろう。
 役者がアクションができないとか、撮影スケジュール、先程書いたとおりのコメディ描写というのが主な理由のはずだ。
 だが、この設定は、次の『電磁戦隊メガレンジャー』に継承され、花開くことになる。
 そのための試金石だったと思えば、それなりの意味があると言える。

 ちなみに、ピンク:洋子を演じた来栖氏は、スーパー戦隊からメジャー化した珠緒(現:さとう珠緒)氏の2匹目のドジョウを狙っての出演らしく、番組終了後にミニスカポリスのリーダーになり、一時期はグラビアアイドルとしてかなり売れたようだが、さほどメジャーになりきれないまま影が薄くなっていったようだ。
 それでも、その後もスーパー戦隊にアイドル系女優の出演が時折あるところを見ると、今でもそれなりの効果は期待されているのだろう。
 
 また、『カーレンジャー』も、前作『オーレンジャー』に続いて敵幹部が着ぐるみ系になっている。
 当然、輸出版『パワーレンジャー』を意識してのことなのだが、ここに1つ強烈な例外が混じった。
 ゾンネットだ。
 わざわざほかの連中を全部着ぐるみにしたのに、どうして1人だけ顔出しでボディラインを強調するデザインの衣装なのかといえば、たまたまテレビを見たお父さん達を籠絡するためだろう。
 こうして、本作から、着ぐるみ幹部だらけの敵方に、AV系やグラビア系などのセクシー系女優を顔出しでレギュラーで起用するようになっており、この傾向は『爆竜戦隊アバレンジャー』のジャンヌまで8年間続くことになった。
 なお、8年間でレギュラー顔出し幹部は延べ10人いるが、その中で男性幹部は、次作『メガレンジャー』のDr.ヒネラーただ1人である。

 なお、『カーレンジャー』も、後楽園遊園地の野外劇場で本人ショーをやっているわけだが、どうもこの役者5人、現場でのスタッフの評判は良くなかったようだ。
 なんでも、悪ノリしすぎて段取りを守らないとかいった理由で、疎まれていたらしい。
 鷹羽は、裏方さんの話を人づてに聞いただけなので断言はできないのだが、2月の千秋楽を見た限りでは、本当なのではないかと思う。
 ショーの序盤で、悪役達が踊っている中、ステージ最上段で『8時だヨ!全員集合』の「えんやーこらや」を踊っている怪しい5人組が恭介達なのだが、実はこれ、千秋楽以外ではやっていない。
 服装も、大きなゴミ袋に顔を書いたものを被っているだけで、ほかのキャラと踊りも合っていない。
 5人の勝手なアドリブだったという話には信憑性がある。

 さて、そろそろ話をまとめよう。

 前述のとおり、この『カーレンジャー』は、好き嫌いが分かれ、しかもシリーズ全体を見続けているような人の中には、嫌いな人の方が多いであろう作品だ。
 実際、ヒーロー物として考えるなら、こんなふざけた番組は滅多にないだろう。
 ただ、それを確信犯としてやっている以上、好き嫌いや視聴率の悪さという動かせない問題があるとしても、無碍に否定できないのもまた事実だ。
 そして、続く『メガレンジャー』では、ライト感覚な描写ではあるが、シビアな戦いや正義が描かれるようになっており、更に続く『星獣戦隊ギンガマン』に至って正統派のヒーローが復活を遂げている。

 鷹羽は、どちらかというと『カーレンジャー』が好きな人間であり、元来この作品を認めている。
 だが、そういった好みを排除してみても、こういったシリーズの流れから考えれば、『オーレンジャー』『カーレンジャー』で一旦落ちるところまで落ちた後、再生への道を辿ったのではないかとも思えるのだ。

 『カーレンジャー』は、1つの作品として見るならかなりの問題作だが、シリーズとして見た場合、決して無駄な作品ではなかった。
 鷹羽はそう信じている。

▲ TOP ▲