光戦隊マスクマン

昭和62年2月28日〜63年2月20日 全51話

主題歌

 前作『フラッシュマン』に続き、『マスクマン』でもアバンタイトルが流れる。
 「人の体には未知の力が秘められている。鍛えれば鍛えるほど、それは無限の力を発揮する!」というナレーションと共に、筋骨隆々の男が手から発する力で氷を砕く。
 肉体を鍛えることでオーラパワーも鍛えられるという、この作品における定義を象徴するかのようだが、その直後に現れる5人の姿は、たくましいとは言い難い気がするのがミスマッチだ。

 OP・ED共に、影山ヒロノブが歌っている。
 『チェンジマン』当時は、トクサツの主題歌を歌うのが恥ずかしいからと『KAGE』名義で歌っていた氏だが、その後『宇宙船サジタリウス』などのアニメの主題歌も歌ったせいか開き直ってしまい、影山ヒロノブの名を出すようになった。
 OPは、「気! 気! オーラパワー!」が「キック! キック! オーラパワー!」と聞こえた人も多かったらしい。
 つーか、「気!」なんて思いつかないよね、フツー。

 EDは、ほとんどタケルと美緒(イアル)が砂浜を楽しそうに走っているだけの映像だが、逆にそのことが「約束しよう、君のためなら体なげうち戦うぜ」という歌詞に説得力を持たせており、さりげにスーパー戦隊屈指の名曲だったりする。

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基本ストーリー

 F-1チームとしてサーキットを目指すタケル達5人の前に、タケルの恋人美緒が現れた。
 美緒は地底からの侵略をタケルに告げ、地底へと連れ去られていく。
 美緒を助けるため、タケルはレッドマスクに変身し、仲間と共に地帝獣イグアドグラーを倒すが、浮上した地帝城の前に巨大ロボグレートファイブは破れてしまった。

 実は、美緒は地底帝国チューブの地上侵略のために派遣されたスパイ:イアル姫だったのだが、裏切りの罰として氷漬けにされてしまった。

 一方、タケルは美緒を救い出すためにもまずチューブの侵攻を止めるべきだということに気付き、5人の振り絞ったオーラパワーで地帝城は地底に沈めることができた。
 美緒の正体を知らないタケルは、美緒を救い出すことを誓う。

 地上の平和を守るマスクマンの戦いは、こうして幕を開けた。

▼ 「真実の物語」は…

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メンバー

レッドマスク:タケル

 空手の達人。
 個人武器はマスキーブレードで、剣身に集めたオーラパワーを敵に撃ち出すレーザーアローが得意技。
 恋人:美緒が絡むと判断力を失うため、仲間の足を引っ張ることもしばしば。
 美緒が地底に飲み込まれる寸前に渡されたペンダントを常に持っている。

ブラックマスク:ケンタ

 カンフーの達人。
 個人武器はマスキーロッドで、棍にも五節棍にもなる。
 演技が下手なせいもあり、5人の中で一番影が薄い。

ブルーマスク:アキラ

 中国拳法の達人。
 演舞を見る限り得意な武器は剣のようだが、個人武器はマスキートンファー
 5人の中では最年少だが、ショットボンバーさえはじき返したクレッセントスクリューを破ったこともある。
 ちょっと話数が出てこない(28話だと思う)が、アキラのヌードシーンがあったりする。
 アレって、一体誰に向けてのサービスかしら?

 なお演じる広田一成氏は、本当に中国拳法の大会優勝歴があったりする人で、『世界忍者戦ジライヤ』にも初期レギュラーとして出演している。

イエローマスク:ハルカ

 忍者。
 個人武器は、コマにもヨーヨーにもなるマスキーローター
 地底忍フーミンとは宿敵。
 いつの間にか仲間に頼る癖ができたため、忍術の腕が落ちたこともあったが、1人1人が一人前であってこそ5人揃ったときに最大限の力が発揮できると悟り、立ち直った。

ピンクマスク:モモコ

 太極拳の達人。
 個人武器はマスキーリボン
 どうして太極拳でリボンなのか分からないが、細かいことを考えるのはよそう。
 責任感が強く、意地っ張りで努力家でもあるが、そこを突かれてグレートファイブを奪われる元を作ってしまった。

長官:姿三十郎

 地底帝国チューブの地上侵略を提唱し、国連に光戦隊の設立を認めさせた凄い人。
 光戦隊の装備は、姿長官の設計思想を元に、各分野の専門家が具体化したものも多い。
 一応グレートファイブは、姿長官自身の設計である。
 自らも強いオーラパワーを持ち、5人を導いていく。
 マスクマンというと、2話での長官の空中浮遊を思い浮かべる人も多かろう。

 演じる谷隼人は、放映当時、『風雲たけし城』で、たけし城に攻め込む側の頭領をやっており、「一向にたけし城を落とせない谷隼人に地帝城を落とせるのか!?」と心配されていた。

X1マスク:飛鳥リョオ

 光戦隊のスーツ試作品。
 不完全なスーツだったりと色々あって姿長官と袂を分かったが、39話『復活! 謎のX1マスク』で、一時的にマスクマンと共闘した。
 よって、初めての6人目の戦士ということになる。
 が、やはり1回しか登場していないために誰も覚えていなかったのか、『ターボレンジャー』1話の特番には出演できなかった

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変身システム

 印を組んで精神を集中し、オーラパワーを高めて「オーラマスク!」と叫んでジャンプすると、オーラの奔流の中でスーツが装着される。
 左手にはめたマスキングブレスがスーツ装着の要らしいが、本編中では特に強調はされておらず、単なる通信機のような印象を受ける。

 スーツは、内蔵されたコンピュータを作動させるための電気的な部分と、装着者のオーラパワーによって作動する特殊な部分が共存しているようで、頭部の表示窓に常にオーラレベルが表示されている。
 撮影用のスーツには、頭部に電飾が仕込まれた超アップ用、電飾が仕込まれていないアップ用、電飾部分に模様が書き込まれたアクション用に分けられる。
 デザインとしては、パーソナルカラーと黒・白・銀だけで構成されたシンプルな配色に、ベルトのバックルが銀色無地だったり、手の甲の部分にパーソナルカラーの拳サポーターらしきものがあったりと、結構凝っている。
 また、イエローとピンクのマスクにはイヤリングが付いており、アップ用などではちゃんと揺れる。
 このような装飾品がマスクに付いたのは初めてのことだ。
 ただし、シンプルな配色がアダとなり、ブラックは黒・白・銀だけの構成になってしまった。
 結果、ブラックのマスクは、黒地に黒のゴーグルと黒い表示窓という組み合わせになってしまった。
 申し訳程度にゴーグルの縁取りが白なのだが、遠目にはほとんど真っ黒にしか見えない。
 グリーンならそんな問題は起きなかったものを、どうしてグリーンにしなかったのだろう。
 ケンタの演技がとんでもないことも加味され、鷹羽的にはブラックの印象は最悪である。

 このマスキングブレスも商品化されており、『フラッシュマン』のプリズムフラッシュ同様にフラッシュ機能が付いているのだが、本編でそんな機能を見た覚えはないので、あまり嬉しくない。
 商品と同じ型を使って作った物が本編中で使用されている。

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名乗り

 「レッドマスク!」

 「ブラックマスク!」

 「ブルーマスク!」

 「イエローマスク!」

 「ピンクマスク!」

 「光戦隊! マスクマン!」

 レッドマスク以外は、複雑かつ中腰の姿勢がきつい名乗りポーズ。
 5人揃っての決めポーズも個人ポーズの集合体である。

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武器

 共通武装は右腰のレーザーマグナム
 グリップの部分から拳銃のマガジンに当たる部分を引き抜くと、剣になる。
 これにより、全員が剣を持ちつつ銃を撃てるという状況が生まれた。
 剣と盾に分離するシステムは、恐らくネタが尽きたのとマスクマンのアクション上は盾を持たせても無意味との判断から来ているものと思われる。
 トリガー部の前にマガジン状のパーツが付いているのは、オモチャの電池ボックスにするためのデザインだろう。
 グリップ内には剣が仕込まれているため、電池ボックスが別に必要だったのだ。

 必殺武器はショットボンバー
 どこかから取り出した全長2メートルを超える大砲で、レッドマスクが背負ったバックパックから供給される破壊エネルギーと5人のオーラパワーをミックスしたエネルギーを発射する。
 合体も可動も飛行も走行もしないという実にシンプルな珍しい武器だが、バックパックがランドセルを背負っているようで、非情に情けなかった。
 27話『盗賊騎士キロス!』で、発射したエネルギーをキロスのクレセントスクリューで跳ね返され、破壊された。

 その後、29話『友情の新必殺武器』で、新たな必殺武器ジェットカノンが完成する。
 呼ぶと飛んでくるジェットカノンは、内部に破壊エネルギーを持っており、そこに5人のオーラパワーを加えたエネルギーを発射する。
 5人揃わないと撃てないため、1人でも欠けるとレッドマスクやブラックマスクが跨って体当たりをするだけの飛行機になってしまう。
 ジェットカノンに跨って地帝獣やアングラー兵を殴るレッドマスクの図はマヌケ以外の何者でもなかった。

 その形状から、オモチャでは丸い玉を発射することができず、プラスチックコインのようなものを発射していた。

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移動装備

 地上移動には、レッドはスピンクルーザー(4輪)、ほかの4人はマスクローダー(バイク)を使う。
 スピンクルーザーには、タケル達が作っていたF-1のエンジンが使用されている。
 マスクローダーは、平面で構成されたバイクで、大変シンプルな印象を受ける。

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ロボット

グレートファイブ

 まるでナイアガラのような巨大な滝の中から、飛行空母ターボランジャーが発進し、そこからマスキーファイター(頭部・胸部飾り:レッド搭乗)、マスキードリル(胸部・腹部・腰部・大腿部:ブラック搭乗)、マスキータンク(脚部:ブルー搭乗)、マスキージェット(左腕・盾:イエロー搭乗)、マスキージャイロ(右腕:ピンク搭乗)が発進し、「合体! ファイブクロス!」でグレートファイブになる。
 戦隊初の5機合体ロボットだった。
 また、右腰にグレートガンを装備しており、銃を使うロボットとしても初となっている。
 今回は、左腕のマスキージェットの翼が盾になるほか、右腕のマスキージャイロのプロペラもブーメランになるなど、合体前のパーツを生かす工夫を一歩進めている。
 必殺技は、光電子ライザー・ファイナルオーラバースト
 光電子ライザーは、チェンジロボの電撃剣と同様にシールドから引き抜くのだが、どう見てもシールドの後ろに発生した異空間から取り出しているようにしか見えない。
 エネルギーは主に5人のオーラパワーらしく、1人でも欠けると戦闘不能になる。

ギャラクシーロボ

 骨妃(ドクロドグラー)の策略にはまり、たった1人で骨妃を倒したハルカは、オーラパワーを消耗しすぎてしまった。
 その上、巨大化したドクロドグラーをファイナルオーラバーストで倒すためにオーラパワーを振り絞ったため、ドクロドグラーを倒した途端、ピンクマスクはオーラパワーを使い果たし、グレードファイブは戦闘不能になってしまう。
 それこそがチューブの狙いで、マスクマンは脱出に成功したものの、グレートファイブは地底に引きずり込まれ、チューブに奪われてしまう。
 事態を打破しようと考えた姿長官は、かつて光戦隊が採用する巨大ロボの座を争ったギャラクシーロボを手に入れることを考えた。
 だが、ギャラクシーロボは、実験中に開発者の山形博士を殺して行方不明になっていた。
 ようやく見付けたギャラクシーロボを、オーラパワーを同調させることでコントロールしたマスクマンは寄生獣キメンに操られたグレートファイブを取り戻し、2台の巨大ロボを手に入れた。

 ギャラクシーロボは、巨大トレーラー:ランドギャラクシーから「ギャラクシーチェンジ!」で変形する。
 機械のくせにオーラパワーを持っているロボットであり、扱いが難しいために、光戦隊のロボットとしては採用を見送られた。
 合掌することや座禅を組むことで知られている。
 どう見ても収納部より大きい手首も有名だ。

 必殺技は、オーラパワーで作ったオーラロードをランドギャラクシー形態で走って加速し、敵に突っ込みながら変形して放つ手刀:鉄拳オーラギャラクシー

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敵組織 地底帝国チューブ

首領:地帝王ゼーバ

 ある日突然、地底王国を侵略し、支配してしまった謎の男。
 闇の地帝城に住み、地上をも闇の世界に変えて支配しようと目論んでいる。
 正体は、かつて地底王国に滅ぼされた最凶の地帝獣:リサールドグラーの子供。
 興奮すると正体を表しそうになって、指先から粘性の体液をこぼす。

大幹部:地奇地奇獣(ちきちきじゅう)アナグマス

 ゼーバに仕える妖術使い。
 数々の妖術を使うが、一番得意なのは作戦に失敗したイガムやバラバをののしること。
 最後は巨大化して戦った。

大幹部:地帝王子イガム

 ゼーバに滅ぼされた地底王国の王子。
 実は女であり、王家を継ぐため男として育てられた。
 ゼーバには敵わないと諦め、手柄を立てて地底王家を再興しようと考えている。
 そのための布石として、双子の妹イアル姫をスパイとして地上に派遣したが、イアルがタケルへの愛を選んで裏切ったため、逆に立場が悪くなった。
 バラバが大地帝剣を手に入れて強くなったことに焦り、地底王家の守護神であるイガム竜を呼び出したが、その力でゼーバを倒そうという発想がなかったところを見ると、よほどゼーバを恐れていたのだろう。
 ゼーバが地帝獣に過ぎなかったことを知り、地帝獣に平伏していたことにいたくプライドを傷つけられて裏切った。

大幹部:地帝司令バラバ

 バルーガ族一の勇士であり、地底の一部族に過ぎない自分を元王子のイガムと同格に取り立ててくれたゼーバに忠誠を誓っている。
 何かとイガムを馬鹿にするのは、そのあたりのコンプレックスのせいと思われる。
 マスクマンを倒す力を手に入れるべく、デビルドグラーを倒して地底最強の剣:大地帝剣を手に入れた。
 とはいえ、母ララバ(演:曽我町子)の犠牲の上でようやく手に入れたのであり、自力では手に入れられなかった程度の勇者である。
 どうでもいいが、あの顔で「ママ」とか言われると不気味だ。

幹部:地底忍フーミン

 代々王家に使えてきた忍の末裔。
 イガムに忠誠を誓っている。
 一応書いておくと、細川ふみえの登場よりもこいつの方が古い

幹部:地底忍オヨブー

 ブヨン族の忍で、足が速いのが自慢。
 バラバの直属の部下だが、本人はバラバではなくゼーバに仕えているという意識らしく、土壇場でバラバを裏切った。
 演じるは岡本美登氏だが、今回は目と声だけの演技である。

怪人:地帝獣

 ○○ドグラーというネーミング。
 地帝ドグラーに寄生獣○○が合体して地帝獣になる。
 それなりの知能がある者もいるようだが、やはり人間以下の生物として扱われている。

戦闘員:アングラー兵

 どういう出自かよく分からない戦闘員。
 地底人というわけでもないらしい。
 一応ネーミングは「アンダーグラウンド」から来ているらしい。

ならず者:盗賊騎士キロス

 風地獄からやってきた盗賊。
 氷漬けにされたイアル姫に一目惚れし、イアル姫を手に入れるために手柄を立てるべく、時たまマスクマンに戦いを挑んでくる。
 バラバがイアルを引っぱり出したのをチャンスと考えて横取りしたため、ゼーバに処刑された。

裏切り者:イアル姫

 地上偵察のために派遣されたイガムの双子の妹。
 だが、タケルを愛してしまったため、チューブの侵略をタケル達に教えることとなり、裏切り者として氷漬けにされている。

 地底帝国チューブは、リサールドグラーJr.が人間型に化けて父の復讐&征服欲の満足という目的のために作った組織だ。
 父の敵であるイガム王家を完全に滅ぼすことはせずに、敢えてイガム王子を配下に置き、こき使って溜飲を下げているのだろう。
 
 あの巨大な地帝城をどのようにして作ったのかは知らないが、相当な知能を持っているようだ。

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巨大化

 地帝獣が倒されると、エネルギー獣オケランパが呼び出される。
 オケランパは、「ケラケラケラケラ…オケランパ!」と唱えながら、頭頂部のつぼみ状の部分からエネルギーを放出し、地帝獣は巨大化する。

 放出の終わったオケランパは、「は、やれやれ…」と一息ついて地底に戻る。

 ちなみに、巨大化時のBGMは、「ドン、パッ!ドン、パッ!」という感じの妙に楽しい曲で、オケランパの放出するエネルギーも、線香花火を逆さにしたような可愛い映像だったりする。
 でも、オケランパ自体は可愛くない。

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真実の物語

 かつて地底で暴れ、地底王家に倒されたリサールドグラー。
 その息子リサールドグラーJr.は、地底王家に復讐し、地底を我が物にするため、地底人の姿になり、力を蓄えていた。
 やがて地底王家を倒し、地底帝国チューブを興して地帝王ゼーバを名乗り、仇敵である王家のイガムを配下にした。

 そして、地上をも闇の世界にして支配しようと企み、地上侵略を開始した。

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ラストへの流れ

 キロスの企てにより、アキラが地帝剣士ウナスにされてしまった。

 アキラを失ってジェットカノンが使えないマスクマンは苦戦するが、地底人のリセとセトの強力により、アキラに取り憑いたウナスの魂を切り離すことに成功する。
 その戦いの中、イガムが女であることが分かった。
 王家を継ぐために男として育てられてきたのだ。

 一方、バラバは、イアル姫を人質にレッドマスクと戦うが、キロスにイアルを奪われ、オヨブーにも見限られて敗死した。
 怒ったゼーバに処刑されたキロスだったが、イアルはタケルの元へ。
 そして、ゼーバの正体がリサールドグラーJr.と知ったイガム王子は、ゼーバと戦うことを決意し、マスクマンと共にゼーバと戦う。

 マスクマンは、巨大化したリサールドグラーJr.を倒し、地帝城も破壊して勝利したが、イガムは地帝獣に踊らされて多くの人間の命を奪ったことを反省して巡礼の旅に出ることにし、イアルが地底王家を再興して地底を治めることになった。

 かくしてタケルとイアルの恋は、地上と地底に引き裂かれて悲恋に終わった。

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傾向と対策

 『マスクマン』は、前作『フラッシュマン』での“親探し”を“正義の戦士と敵方の姫との愛”に置き換え、タケルと美緒(イアル)との恋愛を縦糸として大河ドラマにしようとした作品だ。
 当初は、イアルの正体を知らないままに地底に飲み込まれた恋人美緒を探し求めるタケルを描き、キロスの登場と共に、美緒が地底人だと分かった上で、それでもイアルを愛し続けるタケルを描こうとしていたのだ。

 が、残念ながらこの目論見は、大コケしてしまった。

 1つには、視聴者は1話から美緒の正体がイアルだと知っているわけで、タケルが「美緒」と呼び、美緒の正体を知らないことを強調するたびに違和感を感じることが挙げられる。
 答えの明かされた謎なのに、主人公側が知らないことを強調されると、どうも主観のズレを見せつけられるような気分になるのだ。
 また、美緒が普通の人間だったと仮定すると、地底に飲み込まれてしまったら死んでしまうはずだ。
 タケルもそのことは半ば理解しているものの、それでも美緒が生きているという希望を捨てきれない。
 これもまた視聴者の感覚と齟齬を生む元になってしまっている。
 分かり切っていることをうじうじ悩まれるとイライラするものだが、視聴者は“美緒が生きている”ことを知っているのに、タケルは「生きているはずはない、いや生きているかもしれない」などと悩んでいるため、感情移入しづらいのだ。
 チューブ側の視点が入る以上、美緒の正体が視聴者に分かってしまうのは仕方ないことだが、だったらさっさとタケルに正体を気付かせるべきだったろう。

 そしてタチの悪いことに、タケルとイアルの愛は成就しなかった。
 最終回では、どちらも生きているにもかかわらず、タケルは地上、イアルは地底と、別の生き方を選んでしまう。
 『フラッシュマン』と違い『マスクマン』には、一緒にいられない理由も時間制限もなかった。
 サラが時村一家と親子の名乗りをあげられなかったのは、それまで描いていた反フラッシュ現象によって地球に留まれないという境遇と、最後まで戦い続けたことによる時間切れのせいだから、取り敢えず納得はできる。

 だが、『マスクマン』の場合は事情が違う。

 イアルが残された地底人達のために地底に残らねばならないのは分かる。
 ゼーバの手下として働いていたイガムでは、その後の地底統治は難しかろうし、悔い改めたイガムの姿勢自体は評価すべきものだ。

 だが、タケルが地上に残る必要はあっただろうか

 タケルには、“イアルとの愛を貫くために地底に住む”という選択肢があったのだ。
 サラが時村一家と暮らそうとすれば、確実に死ぬ。
 だが、タケルが地底に住んだとしても、イコール死にはならない。
 もちろん、長期間太陽光を浴びなければ身体を壊すだろうが、時々日光浴に出るなり、地底から地上に通勤するなりという生活は可能なのだ。
 鷹羽はこの点が納得できない。
 タケルは、結局イアルとの愛を捨てたのだ。
 1年間引っ張ってきた恋愛物語は、大した理由もなく別れた2人という結末になってしまった。

 一事が万事で、『マスクマン』には透徹したビジョンというものが存在しない。
 1つ1つの話を見ればいいエピソードもあるのだが、1年を通じての縦糸が全く機能していないこともあって、総合的には支離滅裂な物語になっている。
 物語の流れから、どうやっても回避しようのないグレートファイブの敗北など、巧いエピソードも作れるのに、肝腎の縦糸のターニングポイントになると、作り方がなっていない。
 バラバが大地帝剣を手に入れ、イガムがイガム竜を蘇らせて、何が変わったかというと何も変わっていない。
 ブルーマスク・アキラがウナスになっても、ドタバタしただけで結局は何も変わらない。
 ゼーバの正体も、引っ張るだけ引っ張ってラストで突然秘密を明かしてしまう。

 こういった空回りが多かったことに加えて、敵味方とも大根役者が多かったことが敗因だろうか。

 もう1つ、うまく作用しなかった演出として、設定による5人の特徴づけの失敗が挙げられる。
 タケルは空手、ハルカは忍術と一本立ちしているが、ケンタのカンフー、アキラの中国拳法、モモコの太極拳はいずれも拳法系であり、言葉すると特徴に欠けるところがある。
 確かに拳法には多くの流派があり、それぞれ動きも違うが、言葉にしてしまうとどうしてもインパクトが弱いのだ。
 これは、ピンクマスクの武器がリボンだったり、剣が得意なアキラの武器がトンファーだったりするという、アイテムによる部分も大きいのだろう。
 マスキートンファーをふりまわすブルーマスクからは、悪いがアキラの動きは全く感じられなかった。
 マスキーブレードと被ってもいいから、ブルーマスクにも剣を持たせるべきだったろう。
 せめてサイくらいなら、印象的に演舞に近いアクションができたのではないかと考えると残念だ。

 結局、このマスクマンは、タケルとアキラに女性ファンが多く付いたこと、イガム・イアルに男性ファンの人気が多かったことを除けば、谷隼人が司令官、合掌し座禅を組むギャラクシーロボ、「イガム王子、君はオカマ!」というギャグネタ以外には、インパクトに欠ける作品になってしまった感が強い。

 シリーズ初の5機合体、開発過程から描かれた新必殺武器ジェットカノンなど目新しい部分もあったにもかかわらず、怪人デザインが出渕裕氏でなくなったことや連続ドラマとしてのテンションが『チェンジマン』『フラッシュマン』に比べて大きく落ちたことなどから、評価は落とさざるを得ない。

 なお、ジェットカノン開発スタッフの1人として、次作『ライブマン』の大原丈:西村和彦が出演している。

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