主題歌
- オープニングテーマ:五星戦隊ダイレンジャー
- エンディングテーマ:俺達無敵さ! ダイレンジャー
- 挿入歌:風の戦士
OPは、「転身だァァッ! 気力だァァッ!」とかなり力強い曲になっており、勢いでぐいぐい押していく曲だ。
シリーズで初めて、OP映像にその回の名場面を入れるという手法を用いており、OP映像も毎回の楽しみの1つとなった。
また、イントロのラストに重なる夕陽をバックにした龍星王の美しさは特筆モノで、決して直線的でない躍動的な龍の動きを見せてくれる。
EDは、これまたシリーズ屈指の勢いのある曲で、「ウ―――ッ! ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」と掛け声が妙に勇ましい曲だが、「世界で一番強い奴」という歌詞は、絶対に嘘だと突っ込みを入れたくなってしまう。
挿入歌である「風の戦士」は、33話『アイドル初体験』でリンが歌っている劇中歌の形を取っている。
基本ストーリー
6千年前、地上にはダイ族、ゴーマ族の2つの種族によるダオス文明が栄えていた。
ダイ族は気力、ゴーマ族は妖力と呼ばれる超能力をそれぞれ持ち、それぞれが共存していたが、ある日、ゴーマがダイに戦いを仕掛けた。
戦いは長きにわたり、双方ともに疲弊しダオス文明は崩壊した。
そして現代。
亮は、強力な気力を秘めているために道士嘉挧(どうし・かく)にスカウトされ、復活したゴーマと戦うダイレンジャーの1人となった。
ダイレンジャーは気伝獣:龍星王やほかの4体の気伝獣と共にゴーマと戦う。
メンバー
リュウレンジャー:亮(りょう)
炎の気力を持つ天火星(てんかせい)の戦士で、気伝獣・龍星王を操り、得意技は天火星稲妻炎上破(いなずまえんじょうは)。
天性のセンスで赤龍拳を使い、個人武器は双竜剣。
普段は中華料理店のコックをやっている。
両親は既に亡く、妹洋子とも別居している。
だが、幼いころに死んだと聞かされていた父は、実は6千年前にダイを裏切ってゴーマについた先代の龍星王の戦士:鉄面臂・張遼(てつめんぴ・ちょうりょう)だった。
父は、最期に息子を救うためゴーマを裏切って殺される。
嘉挧の背信を知ったとき、「俺の親父も裏切り者だった。道士まで裏切り者だなんて思いたくねぇ!」と言っており、そのことはかなりトラウマになっているようだ。
シシレンジャー:大五(だいご)
霧(幻)の気力を持つ天幻星(てんげんせい)の戦士で、気伝獣・星獅子(せいじし)を操り、得意技は幻を作り出して敵を攻撃する天幻星霧隠れ。
幻総武線、幻戦闘機などを作り出して敵を攻撃させる技だが、戦闘機はともかく、総武線や山手線が走り抜けて敵をはね飛ばすという豪快と言うより無茶さ加減が売りで、特に幻シャダム中佐は大笑い間違いなし。
主に拳技を使う獅子拳の使い手で、個人武器は獅子棍。
普段はペットショップの店員をしているが、ほかの店員を見た覚えがない。
5人の中で一番真面目で使命感に溢れているが、その反面、愛する者のためには見境なくなる面もあり、聖なる孔雀の涙を手に入れるために嘉挧を攻撃したこともある。
非常に真面目な分、あまり目立たず損をしていた感があったが、12話『豆腐で酔ったァ!』での酔っぱらい姿以降、時々妙に砕けたところを見せるようになり、生真面目と変人の両極端な側面を持つ。
鷹羽的には、15話『3バカサッカー』 で、亮の手作り餃子を食べたときの「美味い、美味いよ亮!」という恍惚の顔が忘れられない。
テンマレンジャー:将児(しょうじ)
重力を操る気力を持つ天重星(てんじゅうせい)の戦士で、気伝獣・星天馬を操り、個人武器は天馬ヌンチャク。
得意技は重力場の塊を敵に叩きつける天重星重力逆転破だが、滅多に決まることはなく、跳ね返されることが多かった。
むしろ、キック技が得意で、天馬回転蹴りや天馬スーパー回転蹴りなどを得意としていた。
普段はボクシングジムに通うプロボクサーの卵だが、どこから生活資金が出ているのかなどは不明。
よく考えてみると、ボクサーなのにキック主体の天馬拳を得意にするのも謎だ。
元不良で、今のジムの会長に叩きのめされて更生した過去があり、24話『3バカ超野球!』では、「俺が信じてやらなきゃ誰が信じてやるんだよ!」とゴーマの落ちこぼれ3人組を信用して裏切られた。
それでも懲りずに40話『さらば!3バカ』では神風大将と一騎打ちをするなど、情の深い男。
当たり前のようだが、結局世界チャンピオンにはなれなかった。
そーいや、『さらば!3バカ』 で着ていた特攻服は、確か羽村氏の自前だって言ってたような…。
キリンレンジャー:知(かず)
時間を操る気力を持つ天時星(てんじせい)の戦士で、気伝獣・星麒麟を操り、個人武器は麒麟九節鞭(くせつべん)。
得意技は、自分の周囲だけ時間を遡らせる天時星時間返し。
これは、敵の攻撃を受けた瞬間に発動させ、敵が攻撃してくる前まで遡ってから先手を打つというかなり卑怯な技で、「やられる前にやり返す」という決めぜりふが憎い。
酔拳の流れを組む麒麟拳の使い手だが、自分の気力をしみこませた酒を相手に呑ませる急性二日酔い頭痛拳など、妙に卑怯な印象のある技が多い。
普段は美容師として働いており、二枚目のシティボーイを気取っているが、実は地方出身で、5年前に上京してきたばかりのころ腹を空かせていたときにラーメンを奢ってくれたおばあさんの恩を忘れず、毎月屋台を手伝うなど義理堅い面も持っている。
そのことを仲間に内緒にしているあたりに見栄っ張りでかっこつけな性格が表れている。
そのせいか純朴な亀夫になつかれてしまったが、結構馬は合っていたようだ。
演じる土屋圭輔氏は豆腐が嫌いだったが、知は豆腐好きという設定で、12話『豆腐で酔ったァ』の撮影のために散々食べさせられているうちに食べられるようになったそうだ。
なお、25話『ぞろぞろ裏戦隊』でコピー知を演じた土屋大輔氏(このときは、声の吹き替えは圭輔氏)は、圭輔氏の双子の兄で、翌年の『カクレンジャー』で双子の兄弟:太郎と次郎を演じた後、『重甲ビーファイター』のブルービート:甲斐拓也を演じている。
その際、圭輔氏が拓也のクローンであるブラックビートの人間体を演じたというのは、妙な因縁だ。
ホウオウレンジャー:リン
風を操る気力を持つ天風星(てんぷうせい)の戦士で、気伝獣・星鳳凰を操る。
ジャンプからの攻撃を得意とする鳳凰拳の使い手で、個人武器は槍鳳凰。
得意技は天風星一文字竜巻で、ダイ族直系の血を引くため5人の中で最も強い気力を持つ。
中国からの留学生であり、普段は大学に通っている。
老道士虞翻の血縁のため、嘉挧と以前から面識があり、嘉挧を「おじさま」と呼ぶ。
33話『アイドル初体験』でゴーマ怪人メディア魔術師と恋に落ちたが、メディア魔術師はガラに殺されてしまった。
その際、ガラが巨大化させたメディア魔術師を一刀のもとに斬り捨てたことが物議を醸したが、あれはメディア魔術師の死体を操り人形として利用したガラへの怒りがさせたことだろう。
当初は押し掛け居候のコウを追い出そうとしていたが、コウの寂しさを知って同居するようになった。
コウの母の死後、その遺志を受けてコウを見守っている。
頭目:道士 嘉挧(かく)
ゴーマの復活に備えて東京駅地下にアジトを作り、行方不明だった龍星王を見付け出し、強い気力を持つ5人を集めてダイレンジャーを組織した男。
亮達に数々の助言をし、転身した5人が束になっても敵わないほどの強さを持つ。
その正体は、ゴーマ王家の血を引くゴーマ参謀長だった。
6千年前の戦いでは、当初からゴーマの侵攻に異を唱えており、それが容れられなかったためにダイ族側についていた。
故に気力・妖力とも使いこなすことができる。
亮が張遼の息子であることを知った上でスカウトしていた。
一見クールで物静かだが、33話『アイドル初体験』では、リンの写真集が出ていると飛び込んできた将児に向かって、「では、これはやはり…」と、既に買ってあった写真集を取り出すというお茶目ぶりを見せている。
キバレンジャー(ホワイト):コウ
白虎真剣の呼び掛けに応じてダイレンジャー第6の戦士となった9才の小学生。
音を操る気力を持つ吼新星(こうしんせい)の戦士であり、得意技は吼新星乱れ山彦。
当初はダイレンジャーにも正体を秘密にしていたため、転身後に他人と話す際は、白虎真剣が代わりに喋っていた。
気伝獣・ウォンタイガーの誕生に立ち会い、ちゃっかり手に入れてしまった。
実は、シャダムとダイ族の女性との間に生まれた子であり、成長するに従ってゴーマの血が目覚めることになる。
そのため、4才のときに母から妖力封じの焼き印を施されており、今でも虎型の焼き印の後が右腕に残っている。
だが、その封印の効果も10才の誕生日(12/24)までしか保たず、それまでに母の指輪と白虎真剣による再封印が必要だった。
封印が解ける直前は、妖力の暴走によって意識不明となり、転身したまま暴れ回っていた。
結局、阿古丸が兄だということを知らないまま、母と阿古丸は死んでしまった。
なお、変身時にはスーツが膨張する形でコウのときより二周りくらい大きくなるのだが、変身後のキバレンジャーを演じていた渡辺実氏の身長が非常に低いこともあって、それでもほかの5人よりかなり小さく、“子供が変身している”ということに説得力を持たせていた。
ふと気付いたのだが、演じていた酒井寿氏は既に20代だったりする。
時の流れは早いものだ…。
協力者:老道士虞翻(ぐほん)
嘉挧の師匠格の老道士であり、オーラチェンジャーなどダイレンジャーの装備全てを開発した科学者でもある。
首をひねってコキコキ音を立てるのが癖。
キバレンジャーの出現を予測して、リンの部屋にキバチェンジャーを隠し、大岩に白虎真剣を刺してきた。
白虎真剣自体が彼の作であるかどうかは不明。
リンの祖母の弟という触れ込みだが、嘉挧との関係を見る限り6千年前の戦いからの生き残りと思われる。
するってーと、奥さんの小喬(20才)との年齢差は6千才以上…もの凄い年齢差の夫婦だ。
演じるは、『チェンジマン』で星王バズー(声除く)や『超人機メタルダー』でネロス帝国戦闘ロボット軍団長バルスキー(声)を演じた桑原たけし。
ダイレンジャーは、道士嘉挧が個人的に組織した集団であり、嘉挧が用意した東京駅地下のアジトに時折集まり、普段は正業に就きながら、事件が起きると戦いに赴く戦士だ。
嘉挧によって組織されただけに、戦う理由も戦い方も、そのための装備も全て嘉挧に依存しており、彼らの依存心の強さは、嘉挧が解散を命じた後の混乱ぶりに如実に表れている。
4話『俺たち甘いぜ!!』での知のセリフからすると、若干の戦闘訓練も受けたらしいが、大五達3人が集められたのも、割と最近のことと思われる。
変身システム
今作から、作品毎に「変身」を意味する新しい言葉を使うようになっており、ここでは「転身」という言葉を用いている。
ダイレンジャーの5人は、左手のオーラスプレッダーと右手のオーラギャザーからなるオーラチェンジャープレスで転身する。
オーラスプレッダーは変身後のマスクをイメージしたようなデザイン(5人とも同じ形なので、あくまでイメージだが)で、土台のパーツも黒いのだが、ゴーグル部に当たる部分が黒色半透明になっている。
「気力! 転身!」の掛け声と共にオーラギャザーのバーを引っぱり出し、「オーラ!」で構えて「チェンジャー!」の声と共にバーの先端のリング部をオーラスプレッダーに差し入れるとスーツが装着される。
5人揃っての転身の場合、亮から順に「気!」「力!」「転!」「身!」「了!」とバーを取り出すパターンもある。
15話『3バカサッカー』で怒りに燃えた亮が「気力…!」と呟くと共に勝手にバーが伸びるなど、何度か勝手にバーが伸びるシーンがあったが、元々気力には念動力的な使い方もあるので、気力で動かしたものと思われる。
キバレンジャーの変身ブレス:キバチェンジャーは、5人とは色違いの、土台が白いオーラスプレッダーと、装飾の先にリング部がついたキーホルダー:キバエンブレムからなっている。
「気力転身! キバチェンジャー!」の掛け声と共にキバエンブレムをオーラスプレッダーに差し入れると、スーツの基本部分が装着され、ムクムクと身体が膨れ上がり、マスクが装着されて装甲部:キバテクターが装着されて転身が完了する。
この転身のシーン、バーをオーラスプレッダーに入れた瞬間に、リング部にダイレンジャーの胸のマークが重なって、それがクルクルと回りながら画面一杯になり、それが消えると転身が終了しているのだが、この演出にはわけがある。
オーラスプレッダーには、リング部を受け入れるためのスリットがあるのだが、これがリングよりわずかに大きいだけなのだ。
そのため、前を向いたままリングをスリットに入れるのは非常に難しい。
とあるイベントで役者が明かしたところによると、実際、撮影でスリットに入ったことは一度もなかったという(リハでは入ることもあったそうだ)。
それを誤魔化すための演出なのだ。
オモチャの方でも、『子供が真似できない』といった苦情があったそうで、キバチェンジャーでの様式変更は、そういうクレームへの対応の1つだったらしい。
ダイレンジャーのスーツは、拳法着をイメージしたボディと、それぞれの聖獣(気伝獣のデザイン元という意味で)をモチーフとしたマスクからなっている。
このマスクのデザインが特徴的で、ゴーグル部分を挟んで聖獣の顔をそれぞれ象っており、正面から見るとあまりモデルに似ていないように感じる。
また、ボディの色分けも、胴体部がノースリーブ状に白くなっており、初めて後楽園の下敷きで見たときは、鷹羽は頭を抱えたものだった。
それが、新番組予告で動いているのを見た瞬間、それまでの悪印象が音を立てて崩れ去り、一気に気に入ってしまったのだ。
やはり戦隊のスーツは動いてなんぼだと思い知らされた瞬間だった。
また、正面からではつまらないマスクも、斜め前から見ると実に見事に聖獣を象っていることが分かる。
これもまた動いて初めて良さの分かるデザインだったのだ。
一方、キバレンジャーは、ほかの5人が自分のカラーと白で構成されているため、そのままでは全身白になるところを、手袋とブーツの白抜き部分を金色にし、胴体部に黒と金の装甲を付けることで変化を持たせている。
名乗り
「リュウレンジャー、天火星、亮!」
「シシレンジャー、天幻星、大五!」
「テンマレンジャー、天重星、将児!」
「キリンレンジャー、天時星、知!」
「ホウオウレンジャー、天風星、リン!」
(その回の主役)「天に輝く! 五つ星!」
「五星戦隊! ダイレンジャー!!」
というのが通常パターン。
『ダイレンジャー』の名乗りは、『マスクマン』に匹敵する複雑な動きでありながら、途中ではっきりとキメが入ることによってアクセントが入り、全体的な流れが出来上がっている。
「リュウレンジャー」「天火星」「亮」と都合3回キメの入るスピーディーな名乗りポーズは、流麗な動きといい、カット割りや合成でごまかさない正攻法な見せ方(1話でのホウオウレンジャーだけ、途中のカットで左右の手が入れ替わっているというミスがあるが)といい、スーパー戦隊シリーズ最高の美しさだと思う。
子供には絶対に真似できない複雑さの故か、翌年の『カクレンジャー』以降はシンプルな名乗りに変わってしまったのが残念だ。
当初は、キリンレンジャーが酔拳を意識したゆっくりしたポーズだったのが、徐々に早くなるなど、それぞれにマイナーチェンジもあった。
また、14話ラストの次回予告では、
「次回は特別、サッカー戦隊だ!」
という亮のナレーションが入ったのだが、翌15話『3バカサッカー』では、本当に「天に輝く5つ星!」の後、
「今日は特別!」
「サッカー戦隊! 東京気力ボンバーズ!!」
という名乗りになっていた。
ちなみに、「サッカー戦隊!」の部分はいつもの「五星戦隊!」のままだが、「東京気力ボンバーズ!!」のポーズはスタンディングスタートのような姿勢になっている。
同様に、24話『3バカ超野球』でも
「今日も特別!」
「野球戦隊! ダイレンジャーズ!!」
となり、最後が左打席1本足打法の構えになっている。
そして、48話『壮絶!! 道士死す』では、なんと、転身できなくなった5人が素顔のままで名乗りポーズを取るというシーンがあり、その完成度の高さからファンの間では語りぐさになっている。
なお、この本人名乗り(本編中では『揃い踏み』と表現)もいつものポーズとは若干バージョンが違っている。
当時、鷹羽は全員分の名乗りポーズをバージョン違いも込みで覚え、イベントなどで披露して遊んでいたが、かなりウケの取れる芸だったところを見ると、やはり同人系人気も高かったのだろう。
6人目の戦士であるキバレンジャーは、正体を隠していたこともあって、名乗りの中にコウの名前が入らず、白虎真剣の声で
「吼新星、キバレンジャー!」
と名乗るだけで、5人と一緒に名乗ることもなかった。
ポーズでは途中のキメが3回あるのに、言葉上のアクセントが2つしかないため、若干の違和感があるのは否めない。
武器
メイン5人の基本装備は、左腰のホルスターに入っている長剣:スターソードと、右腰のホルスターの短剣:スターカッター、そしてどこから取り出すのか分からないダイレンロッドと大輪剣で、いずれも虞翻が作った装備だ。
刀身を縮めた状態で、スターソードの柄にスターカッターをはめ込むと、銃:ダイバスターになる。
ダイバスターは、スターソードが銃本体となり、スターカッターがグリップと引き金になる。
その際、スターソードの鍔元のツノが起き上がるというアクションがあり、これは、前作『ジュウレンジャー』での、銃の変形アクションが格好良かったのを受けてのものと思われる。
このダイバスターは、ダイレンジャーの気力を弾丸に変えて発射するという武器であり、撃てば撃つほど本人が弱っていくという非常に難儀な弱点を持っている。
46話『英雄まるはだか』では、キリンレンジャーが5発撃っただけで弾が出なくなるという描写もあった。
そのせいか、あまり使われなかったようだ。
ただし、銃口から気力のエネルギーでできたロープを発射することができ、ダイレンジャーが気伝獣に飛び乗るときには、これを使っている。
ウインチのような効果もあるらしい。
ダイレンロッドは、5人共通の赤い棍であり、戦闘時の主力武器となっている。
先端に5人それぞれの剣先(ヤイバー)を付けることができる。
ヤイバーを付けることにより、ダイレンロッドは棍から長柄の武器に変わり、突く・叩くから、刺す・斬るなどの使い方ができるようになる。
これらは、中国拳法系で使われる長物と呼ばれる武器であり、映画『少林寺』シリーズなどでおなじみの形だ。
ヤイバーの種類は、リュウレンジャーから順に、戟(げき)、叉(さ)、矛(ぼう)、鉋(ほう)、錐(すい)となっており、戟はいわゆるナギナタの刃のような形、叉は二股のツノ上の突起で、矛は槍の穂先で、鉋は沙悟浄の武器の三日月型でない方の先端、錐は円盤を2つ垂直に合わせた形をしている。
ヤイバーを付けて意味があるのは、ロッドアローなどの打突武器としての利用のときだけなので、本編中ではあまり使っていないのが残念だ。
なお、このダイレンロッドは、本当に変形ギミックが仕込まれているわけではないが、各人の個人武器に変形するという設定がある。
赤龍剣、獅子棍、天馬ヌンチャク、麒麟九節鞭、槍鳳凰になるわけだが、獅子棍はただの棍であり、同じく棍であるダイレンロッドを変形させる意味があるのか理解に苦しむ。
槍鳳凰は、ホウオウレンジャーのヤイバーが先端の尖ったものでない分だけマシだが、やはり単なる槍だったりする。
だが、こんなに単純な武装のくせに、ダイレンジャーのアクションは無茶苦茶綺麗に決まる。
これは、拳法系の武器だから、拳法系のアクションに似合うということなのだと思う。
もう1つ、共通の武装として、大輪剣がある。
これもまた虞翻が作ったもので、円形の刃の中にグリップが付いているものだ。
虞翻はこれを包丁代わりに野菜を切っていたが、気力を込めて大輪剣を飛ばす大輪剣気力シュートは、必殺技としても使えるだけの威力を持つ。
また、大輪剣にも、ヤイバーを付けることができる。
あまり見た覚えがないが、最終決戦時、キリンレンジャーが使用している。
なお、初期必殺技は、武器を使用せず、5人それぞれが気力を両手に集めて作った気功弾を同時に放つ気力ボンバーだった。
気功弾自体は、1人でも使用することができるが、1人分だとさほどのダメージを与えられないところを見ると、5人の気力が相互干渉して破壊力を増しているのだろう。
更なる戦力アップのために虞翻が作ったのがスーパー気力バズーカだ。
本体組立後、コウと亀夫も含めて全ての天宝来来の玉の力を注ぐことで完成した。
5人のスターカッターをそれぞれ差し込んでグリップにして気力を流し込み、1挺のスターソードを合体させた後、5人の天宝来来の玉を巨大化させてセットする。
発射された5つの玉は、 1つの巨大なエネルギー弾となって敵を粉砕する。
かなり大がかりな武器になっている分、ダイレンジャーの攻撃技の中では最強の威力を持つ。
…ただし、46話『英雄まるはだか』では、嘉挧にマトモに命中したにもかかわらず、大したダメージを与えるに至っていない。
一方、キバレンジャーの武器である白虎真剣は、出自がはっきりしない。
コウの母が存在を知っていた以上、随分昔から(下手をすると6千年前から)存在しているのかもしれない。
意思と気力を持ち、自力で飛行移動できる剣だが、使いこなすには素質がいるらしい。
ウォンタイガーの操縦桿になったり、キバレンジャーの転身の際に力を貸していたりと、裏方的な存在だった。
コウからは「白虎」と呼ばれている。
コウの妖力封じの儀式では、母の指輪を白虎真剣がくわえて、空中の気力エネルギーを集め、気力に満ちた白虎真剣でコウに触れるという、重要な役割を担っていた。
言葉に合わせて口を動かせるマペットが使いにくい関係上、白虎真剣が喋っているときにはどうしても大写しにしなければならず、存在感の割には画面上での扱いは悪かった。
いっそのこと、女性人気の高い声優を起用していれば、その声優のファンが買ってくれたかもしれない。
鷹羽は、 キバレンジャーの声というと白虎真剣の声を連想する。
『ダイレンジャー』では、 『ジュウレンジャー』のハウリングキャノンのような個人武器の合体による必殺技を廃し、銃自体のパワーアップという方向性も捨てた。
これは、前者は5人分の武器を買わないと完成しないのが受けなかったこと、後者はサンダースリンガーの売れ行き不振によるものと思われる。
そして、剣から銃への変形システムを一歩進めて、剣を2本合体させると銃になるという方向に持っていった。
これにより、全員が2刀を持つことになり、拳法系の戦闘を旨とするダイレンジャーのアクションなればこそといった使い方が見られる。
シリーズ中、この『ダイレンジャー』が、初めて全員が2刀を使えるようになった作品で、両腰に剣を下げているからできる芸当だが、その反面、銃を携帯することができないという短所を持っており、『ダイレンジャー』では抜き打ちというガンアクションの重要なポイントを利用できなくなってしまった。
剣を合体させて銃を作るのに、どうしても一拍掛かるからだ。
確かに、スターソードとスターカッターを合体させてツノが起き上がるギミックは映像的に格好いいのだが、いかんせんオモチャではツノのギミックは再現できなかった。
そのため、どうにもダイバスターの印象が薄くなってしまった。
そして、一方のダイレンロッドだが、こちらは以前からある“伸びる棒”オモチャ(古いところではスタージンガーのアストロボー、新しいところではクウガのドラゴンロッド)のギミックを使用していて、特に新発想ではない。
ただし、 スーパー戦隊シリーズで5人が棒を持ったのも『ダイレンジャー』が最初であり、武器的な統一を徹底しようとしたことが見て取れる。
これに5種のヤイバーを付けることで、無理なく5人分の武器が一緒に販売できるようになった。
武器として使えてシルエットが違う5つの剣先を揃えるのは、それなりの苦労があったものと思われる。
大輪剣がヤイバーを流用できるようにできているのは、ヤイバーという“シルエットが変わる”アイテムを利用しない手はないからだろう。
そして、必殺武器を持たなかったダイレンジャーも、バズーカ系のトドメ用武器を持つようになる。
スーパー気力バズーカは、“銃に付ける強化アイテム”という側面と“バズーカ型の新必殺武器”という側面の2つを持っている。
それがつまり、スーパー気力バズーカの上に、意味もなくスターソードがセットされる理由だ。
銃と銃を合体させて新兵器を作るのではなく、銃をバズーカのパーツにしたというわけだ。
オモチャでは、実際にセットするのは1対のソードとカッターだけにしている。
そして、箔を付けるために天宝来来の玉を弾丸にするという設定にしたため、砲口の大きさの都合上、天宝来来の玉の大きさでは絵にならず、理由もなくソフトボールサイズに巨大化する羽目になってしまった。
さて、白虎真剣は、前作での獣奏剣の2匹目のドジョウを狙ったもので、喋る剣という面白い発想をしたのはいいが、あいにくオモチャの方では再現できる音声が「吼新星乱れ山彦!」と「気伝招来!」の二言だけだったのと、白虎真剣自体のサイズがちょっと大きすぎて子供が扱いにくかったこと、番組中でアイテムとしての活躍が乏しかったこと、そして使っているのがコウだったためにキャラ萌えなお姉さま達が買ってくれなかったことなどから、ヒットするには至らなかった。
結局、音声ギミックを仕込むのはやっぱりバンダイの苦手分野だったということだろうか。
以後このシリーズでは“喋るアイテム”は登場しなくなり、次作『カクレンジャー』での秘剣カクレマルは、“音の出る剣”としてのギミックを継承することになる。
移動装備
5人それぞれに馬型のヘッドを持ったバイクレッドキバー1号〜ピンクキバー5号までのバイクが与えられている。
普段は東京駅地下のアジトに置いてあり、必要なときはそこから秘密のルートを通って出動する。
1話『転身だァァッ』では、勝手にエンジンが掛かって亮を驚かせているが、多分嘉挧が気力で動かしたものと思われ、勝手に出動したりはしないようだ。
5人の転身とは関係なく、変形機構等はないため、素顔でもこのマシーンに乗ったりするが、40話『さらば!3バカ』では、将児の転身と同時に普通のバイクから変形していた。
あれは明らかにミスである。
EDでは、これが5台並んで走っているシーンが流れているので印象が深いが、本編での登場は少ない。
ロボット
『ダイレンジャー』も、前作『ジュウレンジャー』に続き、ロボットでなく、半機械生命体のような気伝獣が登場する。
「気伝招来!」の掛け声で、どこからともなく5体の気伝獣がやってくる。
1体で呼ぶときは「気伝招来! 龍星王!」などと叫ぶ。
自然界がそのバランスを守るために生み出す超生命体らしく、 ウォンタイガー誕生の際には、ダイレンジャー5人の気力と天宝来来の玉の力が必要だった。
気伝獣を操るには大量の気力が必要となり、1人の人間にはとても出せるものではない。
そのため、気伝獣が誕生する際には、同時に天宝来来の玉という強力な気力を放出する玉も生成される。
この玉を持つことで気伝獣を自在に操ることができるようになるのだ。
物語当初、嘉挧は、天宝来来の玉を発見できないまま龍星王を操ろうとしていた。
そのため、亮の気力で足りない部分を嘉挧の気力によって補い、気伝武人に変形したときには、さらに大五達4人の気力も加えて戦っていたのだが、ちょっとしたダメージを受けただけで龍星王はコントロールを離れて飛び去ってしまっている。
その後、他の4体の気伝獣の発見に伴い、5つの天宝来来の玉が発見され、さらに6千年前は張遼の離反で不可能だった大連王への合体も可能になった。
龍星王
龍の形をした気伝獣で、頭部に載せたリュウレンジャーの気力を増幅して大火炎を放つ。
また、「龍星王、武人変化!」 の掛け声で、人型の気伝武人に変形し、その際はリュウレンジャーを内部に入れ、リュウレンジャーの動きをトレースして戦う。
上記のとおり、天宝来来の玉が見付かるまでは、 武人変化と共に、シシレンジャー達4人も乗り込んでいた。
気伝武人形態での武器は飛龍棍で、手首ごと回転させたまま敵に突っ込んで打ち砕く飛龍棍大風車斬りが必殺技。
ひょろ長い東洋風の龍 が、人型に変形するというかなり変わったギミックを持っており、胴体部の中心が胸部になり、そこを中心に折れ曲がって首側が左半身、尻尾側が右半身になり、更に龍の頭部が武人の頭部と胸の飾りに変形、尻尾が腰部の飾りになる。
確かに龍は頭と尻尾を外すとほぼ前後対称だが、それを左右半身にするというコロンブスの卵的な発想が素晴らしい。
龍の前後の足が、それぞれ左右合体して左右の腕になるというアイデアも秀逸。
天空気殿
星獅子(正面)、星天馬(右側)、星麒麟(左側)、星鳳凰(後部)の4体が「四星合体!天空気殿」の掛け声で合体する飛行形態。
単独での攻撃能力はほぼゼロのようで、龍星王を乗せて飛ぶためだけの形態と言える。
ちなみに、これらの4気伝獣も、それぞれ単独でダイレンジャーの気力を増幅した技を使うことができ、星獅子は大蜃気楼、星天馬は大重力、星鳳凰は大旋風といった具合に4人の気力技の強化版なのだが、どういうわけか星麒麟の大時間だけは、時間返しと全く関係ない、というよりそもそも時間を操って攻撃していないのだが…。
大連王
龍星王(本体)、星獅子(上半身装甲)、星天馬(右脚装甲)、星麒麟(左脚装甲)、星鳳凰(腰部装甲)が「五星合体!大連王」で合体する巨大気伝武人。
中国風の鎧武者といった出で立ちで、武器は、飛龍棍の先端に星鳳凰の尾翼を合体させたダイジャベリンと、左腰に下げた大王剣。
必殺技「大王剣疾風怒濤」の際には、バックに水墨画を背負っている。
ウォンタイガー
どんどん強くなっていく妖力の気配に対抗するため、大自然が新たに生みだした白虎型の気伝獣。
日本の五丈平にダイレンジャーの5人が集まり、5つの天宝来来の玉の力を結集させて生みだしたが、その直後、キバレンジャーが現れてほとんど横取りのように入手してしまった。
得意技は、音波で山を崩す大咆哮。
龍星王同様、「ウォンタイガー、武人変化!」の掛け声で気伝武人ウォンタイガーに変形する。
気伝武人形態での武器は、虎型のときの尻尾部分が分離した黄金剣。
また、コクピット背面にあるパネルを使って胸の気伝宝珠を「日月火水木金土」の7つの文字の好きな1つに変化させることができ、文字に応じた武器として使うことができる虎の子大秘術という技を得意としている。
ただし、虎の子大秘術は「火」の火炎玉しか使われなかったような…。
牙大王
ウォンタイガー(本体膝から上)、星獅子(上半身背面、肩部装甲)、星天馬(右脚部)、星麒麟(左脚部)、星鳳凰(右腕装着武器)が「新星合体!牙大王」で合体する巨大気伝武人。
そのパーツのほとんどが大連王と同じでありながら、全く異なったフォルムを持っている。
星鳳凰は尻尾を刀身とする飛翔剣という武器になっているが、必殺技「飛翔剣木っ端微塵」では、星鳳凰の姿で敵に向かって火の鳥アタックをかける。
この合体時には、リュウレンジャーは乗り込まず、キバレンジャーが乗っている。
同じコクピットに乗っている4人が、キバレンジャーが喋っていないことに気付かなかったのかは謎だ。
ダイムゲン
6千年前の戦いの際、ダイ族に味方して戦ったが、途中で戦いを嫌い姿を消した超気伝獣。
「超武人変化!」の掛け声で超気伝武人ダイムゲンに変形する。
その内部に龍星王やウォンタイガーを格納して回復させたりすることもできる。
重甲気殿
「七星合体! 重甲気殿」の掛け声と共に、超気伝獣ダイムゲンの中に気伝獣ウォンタイガーを収納し、その上に天空気殿と気伝武人龍星王を載せた最大合体形態。
上空から敵めがけて落下して押し潰す大圧殺が必殺技。
龍星王が飛龍棍を 回すと共に上昇し、飛龍棍が止まると落下してくるのが不思議だった。
いくらなんでも、まさかアレがプロペラだって言うつもりじゃなかろうし。
『ダイレンジャー』では、前作『ジュウレンジャー』での組み替え合体を受け継いで、メインパーツである龍星王に装甲を付けていく形になった。
これにより、非人型から人型への単体変形ロボが復活することになり、6人目のロボが同じく単体変形のウォンタイガーであることとあいまって、どちらの合体パターンをとっても、人型巨大ロボが2体並ぶという絵になる展開を生んだ。
さらに、 あまりメカの合体:天空気殿に龍星王を乗せることで、これまでのシリーズでは活躍の場がなかったメカの第2合体形態(ダイノタンカーやファイブトレーラーなど)に役目を与えることができたというのは大きい。
この大連王は、5体セット売りだけでなく、龍星王単体と天空気殿セットの2つに分けての販売もされており、龍星王だけでも売り物になるという方向性を示している。
1台目のロボのパーツの1つが単体で売られたのは、これが初めてだった。
ちなみに、大連王のセット売りでは龍星王と天空気殿セットの内箱が一緒に収納されており、何のことはない、2箱をまとめて入れる外箱がついただけのことだ。
なお、この気伝獣達には、それぞれ単色のダイレンジャー(リュウレンジャーなら赤一色成形)の人形が付属しており、気伝獣の上にそれぞれ立たせることができる上、大連王合体時には、胸部の円形部分の中に入れることができるというギミックがあった。
これは、テレビでの合体シーンで、大連王の胸のコックピットにダイレンジャーが並ぶシーンの再現であり、大連王合体の際、胸にいるダイレンジャーがどう考えてもスケールが合わないのは、このギミックのためと思われる。
龍星王は、 東洋風の龍が人型に変形するという特殊なギミックを見事に再現し、龍形態・武人形態共にプロポーション抜群の傑作アイテムだ。
だが、もう一方の天空気殿は、底板パーツの上に星獅子、星天馬、星麒麟を並べ、後ろのバーに星鳳凰を繋げるだけの合体であり、星鳳凰以外はしっかり固定されないため、“天空気殿を振り回して遊ぶ”ことはできない。
また、龍星王を乗せるにしても、やはり固定できない上、龍星王が変形ギミックの都合上、手首が回転しないので、天空気殿の上に乗った龍星王が飛龍棍を振り回すシーンも再現できないというちょっと中途半端なレベルになっている。
この意味で、正しく“龍星王とオマケ4体組”になってしまった。
結局トドメを刺すのは龍星王なのだが、第2形態のままでもトドメを刺せるのはシリーズ初のパターンだった。
一方で、2台目ロボに電飾装備という流れの影響を受けたことで、ウォンタイガーはパッとしなかった。
全身7箇所に赤い半透明のカバーを付け、それらを虎の口にはめ込んで光らせることで、カバー内側に浮き彫りされた「日」などの文字が見えるという電飾アイデアは、カバーが取れやすいなどの欠点となり、鷹羽は、買ったにもかかわらず面倒がって付けないでいたくらい。
また、その電飾のネタである虎の子大秘術が本編で巧く使われていないことも相まって、印象はあまり良くない。
別名「ラーメン大王」とも言われる牙大王は、必殺技が結局星鳳凰そのものだったことからイマイチだったが、下半身が同じなのにあれだけイメージを変えたことと、キバレンジャーが乗り込んでの操縦だったことの2点は評価したい。
背中に悲しくくっついている星獅子のパーツ(大連王の胸)が哀愁を誘う。
素直に余らせておくわけにはいかなかったんだろうなぁ…。アレがない方が牙大王としてはすっきりするんだけど。
なお、箱積み合体の帝王である重甲気殿だが、ダイムゲン自体が、龍星王やウォンタイガーを収納できるだけの単なる箱に過ぎないため、プレイバリューに欠ける。
しかも、重甲気殿になっても、上に天空気殿が載っているだけで固定もきかないときているから始末に負えない。
何より、 合体時にウォンタイガーが見えないのはつまらない。
次作『忍者戦隊カクレンジャー』に超大型ロボが登場しないことからも、受けなかっただろうことがよく分かる。
ただ、箱と割り切ればそれなりに使えるようで、元締・後藤夕貴は当時、このオモチャを手紙入れの箱にしていた。
敵組織 ゴーマ一族
首領:ゴーマ15世
6千年前の戦いのころからゴーマを統べていた王。
世界のどこかにあるゴーマ宮の玉座におり、強大な妖力を秘めた大地動転の玉を持ち、額の第3の目を飛ばして世界中の事物を見聞きすることができる。
どこか子供っぽいところがあり、気に入っていた阿古丸を地獄の穴から釣り上げて甦らせたりもした。
大神龍の攻撃に恐れをなして嘉挧と休戦協定を結ぶなど、小心な面も持つ。
本人も知らなかったが、実は6千年前の戦いで死んでおり、現在の彼はシャダムが作った泥人形にゴーマ15世の魂を封じたものであり、シャダムがゴーマ16世となることが決まったために用済みとなり、身体を崩されて死んだ。
大幹部:田豊(でんぽう)将軍
ゴーマ15世を補佐する元老院メンバーの1人。
元老院の中でも高位らしい。
阿古丸の後見人でもある。
王位継承戦の検分役のはずだったが、シャダムがゴーマ15世に何かしているのを目撃してしまったため、反逆者の汚名を着せられてシャダムに殺された。
大幹部:大僧正リジュ(ノコギリ大僧正)
田豊将軍と同じく元老院メンバーの1人。
ダイレンジャーごときに手を焼くシャダム達に業を煮やし、懐刀である鉄面臂張遼(てつめんび・ちょうりょう)を率いてやってきた。
本人もかなりの戦闘能力を持っており、戦闘時にはノコギリ大僧正に変身する。
結局、張遼の裏切りによって深手を負い、巨大化戦の末、大連王最初の犠牲者となった。
演じるは、大月“怪しい外人演らせたら日本一!”ウルフ。
懐刀:鉄面臂張遼(てつめんび・ちょうりょう)
6千年前、龍星王を操る戦士でありながら寝返った男。
現在はリジュの懐刀となっている。
気力と妖力を自在に使いこなし、ダイレンジャー5人を物ともせず、シャダム達を軽くいなし、嘉挧とも互角に戦うほどの力の持ち主。
だが、亮の叫びの前に父としての心が勝ってしまい、リジュに切りつけた後殺された。
24年ほど前に突然地上に現れ、亮と洋子が生まれた後、再びゴーマに戻っていたのだが、どういう事情でそうしたのかは不明。
幹部:シャダム中佐(ゴーマ16世)
王家の血を引き、地上侵攻を任された指揮官。
阿古丸とコウの父だが、どういうつもりでダイ族との間に子供を作ったのかは分からない。
阿古丸には愛を感じていないようで、ゴーマから追放したり、その後自らの手で致命傷を負わせたりと、冷血漢振りを発揮している。
嘉挧がゴーマに戻ること、ダイレンジャー解散を条件として、コウの妖力を封じるために必要な白虎真剣を返した。
ゴーマに戻った嘉挧との間で次期王ゴーマ16世の座を巡って争い、ザイドスに気力の塔、妖力の塔を破壊させて嘉挧の力を削いで倒し、その座を勝ち取った。
実は、6千年前から、ゴーマ15世やガラ、ザイドスを泥人形として復活させるなどゴーマに君臨する準備を進めていた野心家だが、自身もまた何者かが作った泥人形だった。
幹部:ガラ中佐
6千年前、ゴーマ側についたダイ族。
元々クジャクの幼なじみであり、彼女を庇って顔に傷を負ったことからひねくれてゴーマ側につくことになり、鏡化粧師を使ってクジャクを封印していた。
今回の戦いでは、シャダムの側近と言うより相棒といった雰囲気で前線に立っているが、彼女もまたシャダムが作った泥人形だった。
実は、6千年前の戦いで死んでおり、本物の彼女は天国でクジャクと再会していた。
幹部:ザイドス少佐
シャダムらと共に前線で指揮を執る武闘派幹部。
自身の出世のためにシャダムに協力しているため、的場陣に黒水晶の力を与えたり、半端者を3人組にして投入したりと、積極的にあの手この手で仕掛けてくる。
特に、休戦になって直接ゴーマから手を出せなくなった後は、陣に飢狼鬼を植えつけたり、3バカの個人的な挑戦としてけしかけるなど、何とかしてダイレンジャーを倒そうとしていた。
大圧殺を受けても死なないほどの不死身ぶりだったが、彼もまた泥人形だった。
「俺の出世はどうなるんだ〜」という言葉を残して崩れ去った。
幹部:阿古丸
シャダムとコウの母の間に生まれた双子の1人(長男)であり、ゴーマ15世のお気に入りの遊び相手。
母なくして育ち、父の愛も知らないため、どこか歪んだ性格をしており、幸せな親子というものが許せないらしい。
なぜかコウに対して異様なまでの執着を見せる。
一度死んだが、ゴーマ15世によって甦り、ゴーマの血に目覚め掛けているコウをゴーマに引き込もうとする。
途中、ゴーマとダイレンジャーの間に休戦協定が結ばれたにもかかわらず、シャダムへの対抗意識などから作戦を続け、裏切り者として追放された。
コウの母のことは知っていたのに、それが自分の母だということまでは知らず、その死の間際にようやく母との対面を果たした。
演じていた柴田翔平氏は、『ダイレンジャー』劇場版と同時上映の『仮面ライダーZO』に望月宏役で出演している。
怪人:ゴーマ怪人
「紐男爵」のように、○○△△という名称で、△△の部分には肩書きが入る。
一般的な所謂「怪人」ではなく、大幹部クラスである元老院のメンバーのリジュにすら怪人体があったように、ゴーマ族の戦闘形態というべき形態。
なので、当然の如く知能は高い。
王位継承戦での嘉挧の甲冑やシャダムの戦闘形態も怪人体であろうと思われる。
口紅歌姫というたった1人の例外を除き、全員に「第3の目」もしくは「1つ目」がある。
これを巧く演出に絡めたのが16話『ゴロゴロ子供石』に登場したハニワ腹話術師だ。
彼は、腹話術の人形が本体というベタなネタを使いながら、“人形の方に第3の目がある”という決定的な部分が最初から明らかだったため、この法則に気付いていた視聴者は、「いつダイレンジャーがそこに気付くか」という方に興味を持つことができた。
もちろん、法則に気付いていなくても楽しめる内容ではあったのだが。
なお、口紅歌姫の口元がコットポトロに似ているのが、彼女に第3の目がないことと関係があるかどうかは不明。
戦闘員:コットポトロ
「コットポトロ!」と呼ばれるとどこからともなく現れる下級戦闘員。
目がなく、燕尾服のような襟元模様の黒ずくめ姿。
スペード型の剣や、マシンガンなどの武器を持ち、集団で襲い掛かる。
人間に化けたりもするところを見ると、意外とゴーマの庶民なのかもしれない。
ゴーマ一族は、妖力という特殊な超能力を使いこなす民族で、6千年前にダイ族との間での戦争で壊滅的な打撃を受けたため、自らをどこかに封じていた。
その本拠地は、ピラミッドを逆さにしたような逆四角錐の空中宮殿で、その内部にゴーマ族が住んでいる。
中国奥地に本拠があるという説が超全集系の本に書いてあるが、東京駅地下からコウと亀夫が歩いて行けたところを見ると、案外日本国内にあるのかもしれない。
妖力という力を使うことが特徴と言える種族だが、訓練次第ではガラや張遼のようにダイ族が妖力を使ったり、逆に嘉挧のようにゴーマ族が気力を使ったりすることもできることから、単に人種的な違いなのかもしれない。
その文化は、皇帝であるゴーマ○世を中心に、貴族的な元老院が補佐し、その下に前線司令官であるシャダム達のクラスの幹部がおり、そのまた下に怪人(一般兵士)クラス、コットポトロがいるという形になっている。
皇帝は天空の間に鎮座し、面会するには、自分の顔を隠す面をつけ、伸縮する柱に乗って天空の間まで登っていかなければならないなど、厳然とした身分制がある反面、王族の血を引いていなければ皇帝にはなれず、また、王族の血を引いていても元老院構成員になれるとは限らないという職階制もあるなど、かなり現実的な組織と言える。
結局のところ、地上侵攻を命じたのはゴーマ15世であり、シャダムはそれを利用して皇帝の座をせしめようと考えただけに過ぎないというのが、救いのないところだ。
巨大化
怪人全員が携帯している巨大化爆弾を炸裂させると、ある程度の時間巨大化していられる。
効き目が切れると元の大きさに戻るらしい。
死んだばかりなら死体も蘇るらしいが、理性を失うようだ。
基本的に、自分が爆弾を使うので、使う前に死んでしまうと巨大化しない。
ライバル・仲間達
的場 陣(魔拳士ジン)
豹牙流拳法の使い手で、世界最強の拳士たるべく名のある拳法家を倒していた道場破り。
コインをトスし、落ちてくるまでに相手を倒すというやり方で実力を誇示する男。
師匠に殺されかかり、逆に殺してしまった過去を持つ。
その過去を乗り越えるために非情さを追い求め、恋人だった師匠の娘をも手に掛けている。
一度は亮を倒すが、亮の新必殺技:天火星最終奥義・流星閃光に破れたところをザイドスに拾われ、黒水晶の力を与えられて魔拳士ジンとなった。
以来、亮とは因縁のライバルとして何度となく死闘を繰り広げる。
「魔性降臨!」と叫んで変身する。
魔拳士ジンは、相手の恐怖心で死に至らしめる新奥義クモの舞を会得し、亮を追いつめるが、亮は日本舞踊の極意「平常心」でこれをうち破る。
そんな2人の戦いの中、ザイドス配下の大砲軍曹の雷撃拳が亮を襲い、「亮を倒すのは俺だ」と庇ったジンが吹き飛ばされた。
その後、陣は、ザイドスに餓狼鬼の細胞を植えつけられてゴーマと休戦中のダイレンジャーと戦い、手傷を負ったまま陣の姿に戻ったところを亮に介抱され、傷が癒えるまで亮と同居することになる。
亮の優しさに、頑なな陣の心も徐々に和んでいく。
余談だが、このとき、亮があまりに甲斐甲斐しく陣の世話をしていたので、やおい系のお姉さま方の格好のネタにされていた。
陣は、亮に「俺が人間の心をなくしたら、お前の手で殺してくれ。弱点は…ここ(胸)だ」と餓狼鬼の弱点を教えた。
そして、餓狼鬼となった陣に対し、リュウレンジャーが弱点を攻めたため、もくろみが外れたザイドスは餓狼鬼と陣を分離させる。
ほかの4人が餓狼鬼と戦う中、陣は亮と共闘してザイドス配下のコットポトロをなぎ倒していく。
4人に合流して餓狼鬼と戦う亮、ザイドスに立ち向かう陣。
ザイドスに破れ傷だらけの陣は、「拳士として」亮に最後の戦いを挑む。
顔前で拳を止めた亮に、「甘いな。覚えておけ。拳士は、時には非情になることも必要だ」と言い、引き留める亮に「嫌だ。お前といたら、俺は俺でなくなってしまう。俺は俺のままでいたい。亮…世話ばかりかけちまったなぁ。ありがとう」と言って別れ、ザイドスと決着を着けるべく戦いを挑む。
いつものようにコインをトスし、身を躍らせた陣にコットポトロの銃弾が降り注ぐ。
後には、拾う者のないコインだけが残った…。
なお、47話『すっゲェ〜真実』で亮の前に現れた幻の陣は、「私情を捨て、平常心で臨んでこそ真実が見えてくる。嘉挧がいたからお前がいたのではない。嘉挧がいて、そしてお前もいた。そういうことだ」と励ましている。
これを受けて、亮は「道士がいなくても俺達はいるんだ。ダイレンジャーは解散なんかしねぇんだ!」と仲間に語りかけている。
演じたのは、『フラッシュマン』のレー・ワンダ、『ジェットマン』の帝王トランザを演じた広瀬匠氏。
クジャク
孔雀明王の化身と言われるほどの技と美貌の持ち主。
だが、6千年前の戦いの最中、ガラの策略にはまり、自分の美しさに溺れて鏡化粧師に封印されてしまっていた。
実はガラはダイ族であり、元々クジャクの親友だったが、クジャクを庇って顔に傷を負ったことからひねくれてゴーマに寝返ったという因縁があった。
シシレンジャーの活躍で封印は解けたものの、現代の汚れた大気に身体を冒されたクジャクは、徐々に弱っていく。
身体を治すためには、あらゆる病原体を消し去る『聖なる孔雀の涙』が必要だった。
だが、ようやく見付け出した聖なる孔雀の涙は、人類の免疫力をも失わせてしまうという副作用を持っているため、クジャクは自分が生きながらえることは諦めてガラの顔の傷を治して逝ってしまった。
演じたのは、『ターボレンジャー』のはぐれ暴魔キリカを演じた森下雅子氏。
3バカ(ゴーマ3ちゃんズ)
ゴーマの中でも半人前以下として扱われている落ちこぼれ怪人達。
- 風を切り裂く赤い弾丸 神風大将(声:檜山修之)
- 手と手のしわを合わせて拝め 墓石社長(声:神山 卓)
- 全国どこでもフリーでスパイ 電話先生(声:高坂真琴)
の3人で、3人一組ならなんとかなるだろうというザイドスの考えでチームを組み、『3バカサッカー!』『3バカ超野球』『さらば!3バカ』と、3回にわたって挑戦してきた。
神風大将は、最後のチャンスとして、ザイドスに与えられた爆弾を使って将児にバイクレースを挑む。
2人のバイクに付けた爆弾は、バイクが止まったり倒れたりすると爆発し、それを外すには、3つのチェックポイントから解除用の鍵を手に入れるしかない。
最後のチェックポイントはゴールで、ここには鍵が1つしかなく、つまり先にゴールした1人しか助からないのだ。
だが、一進一退の激戦を繰り広げる2人を見ながら、ザイドスは歯がみしていた。
ザイドスは最初から神風大将が勝つとは思っておらず、ゴール地点に爆弾を仕掛けていたのだ。
バイクに付けた爆弾はダミーで、先にゴールした将児が爆死するという作戦だった。
そのことを知った電話先生から、わざと負けるよう連絡を受けた神風大将は、サシの勝負に命を懸けてくれた将児の心意気に答えるため、テンマレンジャーを殴り飛ばして自分がゴールする。
バイクが転倒したのに爆発しないことに驚いた将児の前で、ゴールした神風大将と、それを止めようとした墓石社長、電話先生が爆散した。
かつての自分と同じ半端者が見せた意地に涙する将児…。
将児は、怒りの大圧殺でザイドスを押しつぶすが、しぶといザイドスはペラペラに薄くなったまま逃げていった。
数日後、将児のアパートに、3人が寄せ書きした旗が届き、別れの電話がかかってきた。
3人は、どこかで生きている…。
亀夫(超気伝獣ダイムゲン)
気が弱く、亀を見るのが好きな冴えない男。
その正体は超気伝獣ダイムゲンだった。
6千年前の戦いでダイ族の側に立って戦ったものの、戦いを嫌って途中で姿を消した後、人間の姿となって記憶すら失って生きてきたのだ。
知の優しさに触れ、そのピンチに記憶を取り戻した亀夫は、再び戦いに赴く。
演じていた役者がなぜか途中で変わっており、変更後は『ジェットマン』イエローオウル:大石雷太を演じた成瀬富久氏。
コウの母
シャダムとの間に阿古丸とコウの2人の子供をもうけたが、ゴーマでは双子の弟は殺す決まりがあったため、コウを殺したくない一心で阿古丸を残しコウと共に家を出て、1人でコウを育ててきたダイ族の女性。
なんと、名前は最後まで出なかった。
やがてコウも妖力に目覚めてしまうことを知って、妖力封じの焼き印を押し、その後、我が子と知らぬまま阿古丸によって捕らえられていたが、ダイレンジャーに救出され、コウの出生の秘密を語る。
コウの妖力を封じる儀式を終えた直後、落盤に押しつぶされてしまい、ようやく我が子として阿古丸と触れ合い、共に永遠の眠りに就いた。
その夜、リンは、見かけた仲睦まじい母子の姿に、母と一緒に微笑むコウと阿古丸の姿を重ねるのだった。
演じるは『ジェットマン』小田切長官を演じた三輝みきこ氏。
第3勢力
大神龍
宇宙の意志を代弁し、争い合う人間のいる星を発見するとやってきて、戦いが終わるか星が滅ぶかするまで攻撃し続ける喧嘩両成敗の権化。
不思議なことに休戦協定が結ばれるとそれを感知して「平和」と受け止めるらしい。
飛行モードである昇龍形態から、直立モードである龍神形態に変形する。
口から、半径数キロを廃墟にするほどのプラズマ衝撃波を発したり、人間を催眠状態にする光を放ったりする。
とにかく巨大で、ダイムゲンでも足首くらいの大きさでしかない。
パチンコ大名人を一踏みで倒し、ダイムゲンですら潰してしまう、この番組最強のキャラであり、誰も大神龍に傷1つ付けられなかった。
ゴーマを潰したのは、実はダイレンジャーではなくこいつである。
なお、この大神龍もロボット系オモチャの1つとして発売されていた。
昇龍形態から龍神形態に変形するというギミックはあったものの、ほかにギミックがないため置物以上の意味はなく、しかも確かに番組最強キャラではあったが味方ではないので遊びにくく、何より本編中でのバカみたいな大きさが再現されていない(されたらそれも困るが)ため、「どーやって遊べっちゅーねん!」なシロモノだった。
いや、本気で企画者の考えが聞きたい。
真実の物語
6千年前、ダイとゴーマの間で争いが起きた。
ゴーマの参謀長嘉挧は、ダイへの侵攻に反対するが容れられず、やむを得ずダイの側につき、同様に、ガラは、クジャクとの因縁からゴーマにつくなど、一族の壁を超えた乱戦となりつつあった。
そんな中、5体の気伝獣の中心となる龍星王を操る戦士:張遼が強さを求めてゴーマに寝返ったことから戦局は混乱し、ダイは劣勢となる。
張遼の裏切りにより、龍星王は行方不明、残る4気伝獣と5つの天宝来来の玉も散逸してしまった。
超気伝獣ダイムゲンの助力もあり、なんとか戦線を支え続けたダイだったが、かなりの痛手を受けてしまう。
そんな中、何者かに泥人形として復活させられたシャダムは、自分が泥人形だと知らないままゴーマを手中に収めることを企み、戦死したザイドス、ガラ、そしてゴーマ15世をも密かに泥人形として復活させた。
そして、ゴーマは自ら封印する形で眠りに就き、疲弊したダイもまた歴史から姿を消して、ダオス文明は消滅した。
そして、今から20年ほど前、張遼が現世に現れて日本人の女と結婚し、亮と洋子が生まれ、亮が5才くらいのとき、再び張遼は失踪し、ゴーマへと戻っていた。
また、10年ほど前には、シャダムが現世に現れてダイの女との間に阿古丸、コウの2人の子供を作り、阿古丸だけ連れてゴーマへと戻った。
それらの動きを察知した嘉挧は、近いうちにゴーマが復活すると考え、それに対抗するための戦力を作り始める。
まず、張遼の離反によって行方知れずとなっていた龍星王を見付け出し、自らの気力で遠隔操作できるよう鍛練を積み、前線で戦う者のために虞翻にオーラチェンジャーを開発してもらうなどし、既に目星をつけていた亮とリン以外にも、強い気力を秘めた大五、将児、知を見付け出した。
そして、遂にゴーマが復活したことから、亮とリンを加えて5人揃えたのだ。
ラストへの流れ
争いをする者は善悪問わず根絶やしにするという大神龍の出現によって、ダイレンジャーとゴーマは休戦することになった。
だが、ザイドスは餓狼鬼や3バカをけしかけてきており、いつまた大神龍が襲ってくるか分からない状況だ。
そんな中、コウがゴーマの血に目覚めはじめて暴走し、阿古丸が絡むことで実質休戦協定が破られた状況になった。
そのため嘉挧は、コウ救出のための助力をゴーマ側に依頼し、その交換条件として自分がゴーマに戻ることにした。
嘉挧は、どのみち大神龍がいる以上、力でゴーマを押さえることは不可能であり、自らがゴーマの次期皇帝となることで、内側からゴーマを押さえようと考えたのだ。
シャダムとの王位決定戦を控え、自らの力を強化するための気力の塔・妖力の塔をうち立てた嘉挧は、亮達が絡んでダイ対ゴーマになるのを懸念して彼らを遠ざけ、腹心の子竜中尉に塔の設置を命じるが、事情を知らないダイレンジャーは、警官を蹴散らして歩く子竜中尉と戦い、倒してしまう。
怒った嘉挧は、彼らからオーラチェンジャーと天宝来来の玉を取り上げ、ダイレンジャーを解散してしまった。
嘉挧という求心力を失い、一旦はバラバラになった5人だが、陣、クジャク、3バカ、亀夫、コウの母の幻に励まされて再び集結、シャダムを勝たせるために2つの塔を破壊して嘉挧の力を削ごうとするザイドスから真実を知らされた。
転身できないまま必死に戦うダイレンジャーだったが、遂に妖力の塔を破壊されてしまう。
ショックを受ける5人の前に、陣達の幻が再び現れる。
5人が決意も新たに立ち上がったとき、嘉挧に奪われていたオーラチェンジャーと天宝来来の玉 が飛来した。
転身し、巨大化したザイドスと戦うダイレンジャー達。
だが、その隙にガラが気力の塔を破壊してしまう。
それは嘉挧の敗北=死を意味していた。
怒りの大圧殺で倒されたザイドスは、なぜか泥となって崩れ去る。
ダイレンジャー基地の秘密通路に気付き、キバー号でゴーマ宮に攻め込んだ亮達は、嘉挧の最期に立ち会うことになった。
こうして休戦が三度破られたため、大神龍が飛来してゴーマ宮を破壊し始めた。
ゴーマ宮に攻め込んだダイレンジャーとキバレンジャーの前で、ゴーマ15世が、ガラが、泥人形となって崩れていく。
全てはシャダムがゴーマで実権を握るためにしていたことだった。
大地動転の玉を振るって攻撃してくるゴーマ16世(シャダム)に対抗するため、ダイレンジャーが天宝来来の玉の力を振るうと、どちらの玉も天空に消えてしまい、ゴーマ皇帝としての力の象徴である大地動転の玉を失ったゴーマ16世
はシャダムの姿に戻った。
亮は、大神龍の猛攻により崩壊し始めたゴーマ宮から仲間達を脱出させて、1人でシャダムと対決する。
その亮の前に嘉挧の幻が現れ、「気力と妖力は表裏一体であり、どちらか片方だけが消えることはなく、永遠に戦い続ける運命なのだ」と語りかける。
シャダムを倒した亮は、シャダムもまた泥人形だったことを知る。
ゴーマ宮にいたゴーマ族は全滅したものの、シャダムを泥人形として復活させた黒幕がいるはずだと考えた5人は、ひとまずダイレンジャー解散を待って様子を見ていたが、その後ゴーマの動きはなく、結局解散してそれぞれの道を進むことになった。
そして50年後。
年をとった亮達は、ダイレンジャー50周年の同窓会を開いていた。
そのとき、突然地響きと共に紐男爵のような姿の巨大怪人が現れて街を破壊するが、亮達は既に年老いて、戦う力は残っていなかった。
だが、そのとき、彼らの孫が転身し、大連王とともに紐男爵もどきと戦い始める。
その光景を見ながら、亮はかつて嘉挧の幻が言っていた「永遠に戦い続ける運命」の意味を噛みしめていた。
大王剣疾風怒濤が紐男爵もどきを倒し、新たな戦いの火蓋が切られた。
傾向と対策
この『ダイレンジャー』は、シリーズ中最も評価が難しい作品だ。
良い部分と悪い部分がはっきりしていて、しかもどちらも飛び抜けている。
良い点としては、何と言ってもシリーズ屈指のノリの良さが挙げられる。
拳法を主体としたメリハリの利いたアクションといい、役者各人の役柄への没入、息もつかせずたたみかけてくる怒濤のストーリー展開など、どれをとってもその勢いはシリーズ屈指のものだ。
その反面、悪い点として、シリーズでも1、2を争うほど筋の通らない物語になってしまった。
これは、最後の敵を倒していない、というより最後の敵が誰なのかさえ分からないまま、“戦いは永遠に続く”という終わり方をしてしまったことが大きい。
こんな中途半端な終わり方をしたのは、シリーズ中この『ダイレンジャー』と次作『忍者戦隊カクレンジャー』くらいなものだ。
そして、“終わらない戦い”が、ファンにそれなりに人気のある孫達の変身、通称「マゴレンジャー」を生んでいるのだから、マイナス部分が直接マイナスとしてだけ作用していないのだ。
この長所と短所が露骨に表裏一体になっているところが、この作品の特徴だ。
この『ダイレンジャー』は、スーパー戦隊シリーズ15作目の記念作品(当時は『バトルフィーバー』から数えていた)であり、その勢いもあって新機軸をいくつか打ち出していた。
その1つとして、 メインストーリーには年間通しての縦糸を置かない代わりに主役5人にそれぞれメインで絡むバイプレーヤーを与え、各メンバーの個人話をそのバイプレーヤーとの物語に充て、断続的に半年以上の長期にわたって作り続けることで縦糸にするというちょっと変わった作劇が取り入れられている。
上記のとおり、亮には的場陣とのライバル関係、大五にはクジャクとの恋愛、将児には3バカとの因縁(当初は亮と絡んだのだが)、知には亀夫との友情、リンにはコウの母を介しての家族愛といった具合に、年間を通してのテーマを持たせ、それぞれが主役になる個人話のほとんどをそのネタで賄っている。
そして、亮と陣には井上敏樹、大五とクジャクには藤井邦夫、将児と3バカには荒川稔久、知と亀夫、リンとコウの母にはメインライターの杉村升という具合に、そのストーリー専門の脚本家を置くことで、それら縦糸となる話が破綻しないようにするなど、心を砕いているところも見逃せない。
これによって、散発的なゲスト話が少なく、セミレギュラーと主役達の関係を掘り下げる中で主人公達のキャラクターが浮き彫りになるという効果を生んだ。
また、当然のことながら、年末を控えてそれぞれの物語が収束に向かっていくわけで、大神龍の出現による停戦という特殊状況の中で、陣に植えつけられた餓狼鬼の細胞や、ゴーマを追放された3バカによる個人的な挑戦、タイムリミット間近なクジャクの寿命とコウの血の目覚めなどが原因となって事件が続き、それがまた大神龍の襲来を呼ぶという悪循環を生み出していることが納得でき、しかも秋口という展開が盛り上げにくい時期に、主役達の物語がそれぞれクライマックスを迎えるという効果も生んでいる。
一方で、このシステムによって、メインストーリーから個人話が遊離するという弊害も生じている。
どういうことかというと、個人話の脚本家がストーリー全体の流れや細かい設定を把握しないままシナリオを書いているために、全体の流れと齟齬するような物語が結構生まれてしまうのだ。
こういう部分が顕著に現れているのが『さらば!3バカ』だ。
将児の乗っていた普通のバイクがキバー号に変形したり、コウがいないのに七星合体していたり、また、大圧殺を食らったザイドスが生きていたり(後述するが、『壮絶!道士死す』では大圧殺を食らった後、泥人形になって死んでいる)と、妙な展開が目白押しだ。
これらは、いずれもメインストーリーの展開を知らないままシナリオが練られたという時間的な都合によるものだろう。
1つ1つの展開は、このシナリオだけでなら説明が付くものばかりだ。
キバー号の変形は、多分、あまりにも将児の出番ばかりになるから転身させる必要性があり、しかもテンマレンジャーを普通のバイクに乗せるのはちょっと…という都合によるものだろう。
普通なら、ここで将児をキバー号に乗せるのだが、将児と神風の男の意地のぶつけ合いという展開上、それでは絵的につまらない。
だから、敢えてこんな中途半端なことをしたのだと思われる。
そして、ここからが“メインストーリーの展開を知らない”と考える部分だ。
3バカを殺された(と思った)将児の怒りをザイドスにぶつけなければ話が落ちないが、ここでレギュラー悪役を殺してしまうわけにはいかないから、ザイドスにはそれなりのダメージを受けた上で逃げてもらわなければならない。
となると、あからさまに斬られてしまう疾風怒濤では、ザイドスが逃げていくと変だし、かといってよけられたのでは、怒りをぶつけたことにならない。
そこで、大圧殺でペラペラになったザイドスが情けない姿で逃げていくという展開にしたのだろう。
だが、このころ、コウは妖力に目覚め始め、意識不明のままどこかを彷徨っている。
つまり、ウォンタイガーを呼び出すことのできるキバレンジャーがいないのに合体してしまったという致命的なミスを犯してしまったのだ。
作った側も、その辺は十分承知していながら手の施しようがなかったらしく、苦肉の策として、ダイムゲンが「僕も戦うがね!」と登場した直後に七星合体させ、ウォンタイガーが画面に極力映らないようにしている。
もちろんキバレンジャーは画面に出ない。
ここら辺がすりあわせの限界だったのだろう。
ほかにも、クジャクとの絡みでのガラの傷の話(泥人形のくせに傷が治ったり)とか、泥人形のシャダムが子供を作っていたりといった具合に、「なんでやねん」な展開も多いのだ。
この“1つ1つは面白いし盛り上がるのに、年間通して見ると筋が通らない”というのがこの番組の特徴であることは疑いようがない。
“ノリの良さ≒支離滅裂”という図式が成り立ってしまったわけだが、不思議と悪く言う人が少ないのは、多分細かい問題点を見えなくするくらいにノリが良すぎたせいだろう。
鷹羽は、この欠点の数々を承知の上で、それでも『ダイレンジャー』が好きだ。
サブタイトルの妙味も特徴の1つで、1話の『転身だァァッ』に始まり、最終話『行くぞォォッ』に至るまで、妙なタイトルが目白押しだ。
8話『おやじぃぃッ!!』や18話『秘密の白虎ちゃん』(本当は「秘」を○で囲んだものを「秘密」と読ませている)、26話『嫌な嫌な嫌な奴』、44話『感動!!君も泣け』など、実に半分以上がふざけたタイトルになっている。
サブタイトルをシャレにしてしまったのは、ある意味根性の座ったバカとも言え、この作品が頭を空っぽにして見るべきものなんだと言わんばかりだった。
また、『ダイレンジャー』では、その後のリーディングケースとなる新しい演出がいくつか生み出された。
その1つがアイキャッチの使い分けだ。
これまでシリーズでは、Aパート用のアイキャッチとBパート用のアイキャッチの2つを使っていた。
シリーズ途中で新しい絵(新メカなど)に変わることもあったが、アイキャッチがロゴだけだった『ファイブマン』を除いては、毎回同じ絵が使用されていたわけだ。
それが『ダイレンジャー』では、6つのパターンを用意して、話によって使い分けている。
つまり、リュウレンジャーからホウオウレンジャーまでの5人が、1人ずつダイレンロッドを振り回した後ポーズを決めるという5種類と、キバレンジャーが白虎真剣を振り回してポーズを決めるものの合計6種類だ。
これらは、その回の主役の物をAパートBパート共に使うというパターンが多く、これによって、その回の主役が誰であるかが如実に表れるようになった。
場合によっては、AパートとBパートで違うということもあったが、これもまたその回のメインとサブメインを使うなどのように、主張がはっきりしていた。
この方式は、その後も『カクレンジャー』や『メガレンジャー』などでも使われている。
次に、OP映像の一部にその回での映像を使用するという手法を取り入れたことだ。
タイトルロゴをバックに「五星戦隊ダイレンジャー!」という声が響いた後、イントロと共にその回のクライマックスシーンの映像が流れ、イントロが終わるころに夕日をバックにして龍星王が写ってそこからレギュラーの映像に変わる。
そして、主役5人組の映像が終わったころに、再びその回の映像が流れ、メカの合体シーンなどのレギュラー映像に戻るのだ。
そして、OPが終わると、もう1度タイトルロゴが写る。
OPのラストにタイトルロゴが出るのも『ダイレンジャー』が初めてであり、これは次作『カクレンジャー』にも継承された。
また、細かいところでは巨大ロボにも新しい風が入っている。
ロボットの名前が漢字になったのは前作からだが、合体前のメカの名前も初期5体の名前は全部漢字で、合体した大連王は中国風甲冑、腰に下げた日本刀型の大王剣を使い、必殺技は「疾風怒濤」ときたもんだ。
また、1台目の巨大ロボの合体パーツの1つが人型に変形するのも今回が初めてで、装甲を着けて巨大ロボになるというコンセプト上、気伝武人龍星王はスリムなデザインで、それに見合った軽快な動きを見せ、大連王の重厚な動きと好対照をなしていた。
この点、気伝武人ウォンタイガーの重ったるさは残念だったが、さすがに同じようなタイプを並べるわけにはいかなかったということだろうか。
そう言えば、ダイムゲンも漢字に直せばきっと「大無限」だろうに、ウォンタイガーだけは漢字に直しようがない。
本当か嘘か分からないが、実は 「牙大王」というのは、ウォンタイガーを当て字読みした「王(ウォン)大牙」を逆に並べたものだという説がある。
この漢字が多用されているところも特徴の1つで、シリーズ初めて“名前がアルファベット化されていない”戦隊だ。
通常は、メカとかのどこかに「ZYURANGER」とか書いてあるもんなんだが。
さて、結構有名な話だが、『ダイレンジャー』の企画時名称は『中華戦隊チャイナマン』だった。
拳法系のデザイン・アクションなどからも分かるように、多分に中国を意識しているのは分かると思うが、当初は拳法vs拳法&気力vs妖力という対比で行くつもりだったようだ。
実際、1話『転身だァァッ』では、紐男爵の紐拳vs赤龍拳という対決が出ているし、その後も数回にわたってゴーマ側の拳法vsダイレンジャーの拳法という展開があったわけだが、やがて拳法という部分は亮と陣の部分にのみ残り、あとは気力vs妖力の対決が主流になっていった。
これは微妙な路線変更の結果であり、恐らくゴーマとダイの明確な違いを、気力と妖力に求めたせいではないかと考える。
最終回は、これを受けて「気力と妖力は表裏一体…」という永遠に続く戦いの理由としていった。
そのせいか、序盤にはよく見られた「シシレンジャーvsハニワ腹話術師」のような字幕は後期には見られなくなっている。
もう1つ、この作品を異色作に仕上げた部分がある。
それは、“変身ヒーロー物なのに1人も変身しない話がある”ということだ。
『英雄まるはだか』のラストで嘉挧にオーラチェンジャーを奪われた亮達は、続く『すっゲェ〜真実』では転身不能のままザイドスと戦う。
OP、EDを除くと、転身した姿が写ったのは、冒頭の回想シーンで嘉挧の攻撃で吹き飛ぶ姿が2秒ほどだけだ。
『名乗り』のコーナーで書いたとおり、この話では、亮達が転身しないまま名乗りを切っており、一切転身しない。
誰か1人が変身しないとか、5人が揃わないというなら、『ジェットマン』でも見られたが、誰1人変身しないというのは、番組としてのアイデンティティすら揺るがしかねない冒険と言える。
また、これまでのシリーズでも、最終回ころには、変身前を演じた役者がスーツを着るのが恒例になっており、『ジェットマン』のラスト前では、役者がスーツを着ての名乗りシーンが入っているが、変身していない状態での名乗りというのは前例がない。
しかもその動きがかなり高レベルであるという点から、亮達5人を演じた役者達の頑張りも特筆すべきだろう。
実際、亮を演じた和田氏は、アクションでもかなりのレベルに達しており、陣との戦いなどではそれが発揮されている。
劇場版の予告を見ると、亮と知の役者が逆になっており、当初和田氏が知を演じる予定だったことが分かるが、彼が亮役になったのは、拳法をメインテーマとし続けたリュウレンジャー亮を描く上では大正解だったと言えよう。
ちなみに、49話『最終決戦だァッ』でゴーマ宮の中にいるダイレンジャー&キバレンジャーは、和田氏らがスーツを着ているので、酒井氏(コウ)が着込んでいるキバレンジャーがいつもより更に小さい。
ところで、メイン脚本の杉村升氏は、前作『ジュウレンジャー』でもそうだったが、ノリを優先して支離滅裂な脚本を書くことの多い人だ。
この『ダイレンジャー』の場合、ノリが際立って良かったために、1つ1つの話の中では破綻に気付きにくいのだが、そこはそれ、突っつけばボロが出る出る…。
例えば、シャダム・ガラ・ザイドスが3人がかりで敵わない張遼と互角に戦える嘉挧が、マトモに戦ってシャダムに負けるわけがないのであって、気力・妖力の塔などいらなかったりするわけだが、物語の展開上、塔を守る・壊すといった対立が必要になるのだから、「それは言わないで」ということにならざるをえない。
そして、この番組の物知りキャラが道士嘉挧だったため、全てのシワが彼に集中してしまった。
それは、言い方を変えれば、嘉挧がこの番組の矛盾のほとんどを背負ったということでもある。
だが、物語としてみる以上、それは免罪符にはなり得ない。
ともかく、シナリオ展開の都合による部分が多いのは分かるが、冷静に見ると、嘉挧の行動には問題点がありすぎるのだ。
どういうことかというと、嘉挧は大神龍の存在以外は大体何でも知っていたにもかかわらず、ギリギリまでそれを語らずに、亮達5人をキリキリ舞させるのがほとんどだ。
聖なる孔雀の涙の件にしても、もっと早く「使うな」と言っていれば、ああまで必死にクジャクが探し回らずに済んでいたはずだ。
必死に探したことがクジャクの命を縮めたというのも一面の真実ではあるのだ。
嘉挧には、こういった無意味な秘密主義が多く、それらを結集すると、彼がとんでもない悪党であることが分かる。
そんなわけで、鷹羽は、実は道士嘉挧が嫌いだったりする。
ちょっと意地悪に嘉挧の行動を解説してみよう。
嘉挧は、6千年前、ゴーマの幹部でありながら、自分の意見が容れられなかったためにゴーマを裏切ってダイについた。
それ自体はよくある話なのだが、このとき、子竜中尉などのように嘉挧を慕う反戦派達は置いてけぼりにしている。
結果、子竜達は嘉挧がゴーマに戻る日を首を長くして待っていたわけだが、ゴーマ15世の指針に反する主義を貫く彼らがかなりの辛酸を舐めたであろうことは想像に難くない。
そして現代に至り、嘉挧は、事情を知らない亮達を集めて命懸けの戦いを強要する。
5人のうち、宿命的に戦わなければならなかったのは、せいぜい亮とリンくらいだから、体を張る必要もない大五達を「力があるから」引きずり込んだことは誉められたものではない。
しかも、嘉挧の方が転身した5人全員よりも強いのだ。
最初から自分1人で戦った方が良かったとも言える。
巨大化さえされなければ、嘉挧に勝てる者はそうはいないのだし、ゴーマ宮に自由に出入りできる嘉挧ならば、ゴーマ内部の反戦派を束ねて政治的に戦った方が平穏だったろう。
まぁ、大神龍が来なければ、ゴーマ16世の座を賭けた戦いもなかったかもしれないから、ダイレンジャーを組織したまでは許そう。
また、亮達を率いてゴーマ宮に攻め込まなかったのは、ゴーマ怪人がうようよいるゴーマ宮に突っ込んでも勝ち目がないからということで許せる。
だが、いざゴーマに戻るに際し、秘密主義が過ぎて自らの破滅を招いたり、亮達に死ぬほどの苦労をさせたりと、参謀長が聞いて呆れる頭の弱さだ。
子竜に気力・妖力の塔を立てさせるに当たり、「何があっても人類・ダイレンジャーと事を構えるな」と厳命しなかったことは許されることではないだろう。
まして「ダイレンジャーが邪魔したらどうしましょう?」という子竜の問いに、「構わないから力ずくで叩きのめせ」などとバカな命令を下しているのだから、もうどうしようもない。
警官隊を蹴散らして(死人が出ているはずだ)歩く怪人がいれば亮達が戦うだろうこと、亮達の力なら子竜を倒せるだろうことを読めなかったというのか。
それで子竜が死んだことを怒ってオーラチェンジャーや天宝来来の玉を奪うなど、筋違いもいいところだ。
特に、コウや亀夫の天宝来来の玉は、嘉挧が与えたものではないのだし、亀夫にとっては自分の体の一部のようなものなのに、それを奪うなど盗人猛々しいというものだ。
また、自分が敗死した場合、亮達の手に戻るような仕掛けをしていたわけでもない。
あれがなければ、ゴーマに対抗できる者はいなくなるというのに、だ。
あれらが亮達の手に戻ったのは、奇跡に過ぎない。
しかも、嘉挧は、シャダムとの戦いの中、シャダムの剣を奪っており、その気ならシャダムを殺せたのに、殺すことなく剣を捨てて肉弾戦に持ち込んでいる。
まして、そのとき捨てた剣は、シャダムに拾われて嘉挧にトドメを刺す際に使われているのだから、シャダムを殺すチャンスを棒に振ってまで何をしたかったものやら、理解に苦しむ。
戦いを有利に運ぶために、卑怯臭いドーピング用の気力・妖力の塔を建てておいて、トドメを刺すのを躊躇うというのは、どういう心境なのだろう?
まさか、折角立てた塔を使わないと勿体ないということなのか?
他人の命を危険に曝したという自覚があるか、甚だ疑問だ。
このとき、ガラは、なかなか塔を壊せないザイドスを支援するために出掛け、気力の塔を破壊している。
だが、ガラがやるべきだったのは、嘉挧の控え室にあるオーラチェンジャーや天宝来来の玉をぶちこわすことだったのではなかろうか。
バランス上、天宝来来の玉は破壊できない物質だったとしても、オーラチェンジャーは人の手によって作られた物だから、破壊は十分可能だったろう。
そうすれば、気力の塔はザイドスによって無事破壊され、その後の憂いとなるダイレンジャーもいなくなったろう。
嘉挧がやっていたことが、亮達の命を危険に曝すだけの愚挙だったということが分かってもらえただろうか。
まったく誰だよ〜、こんなバカに参謀長を名乗らせてたのは。
あ、バカで思い出した。
先にも述べたとおり、シリーズ15作目である今回は、『ターボレンジャー』以来4年ぶりに劇場用新作が作られている。
『東映スーパーヒーローフェア』 と銘打たれ、『特捜ロボ ジャンパーソン』、『仮面ライダーZO』と同時上映されたのだが、『ダイレンジャー』のパートでは、「ダイレンジャー体操」なる体操のコーナーがあった。
ダイレンジャー達がOP曲に合わせてヒョコヒョコ踊るもので、“右脚を曲げて左脚だけで立って、両手の人差し指だけ立てて頭上に挙げ、右側を指さしながらピョンピョン撥ねる”というようなポーズがあったりと、言っちゃあなんだが、かなり情けないシロモノだった。
ちなみに、振り付けがラッキィ池田という辺りでどんなに情けないか想像が付くだろうか。
この男は、大体この当時だったと思うが、まだ日本にいて大活躍中だった野茂に「背中を見せたらバット振っちゃう〜♪」などと卑わいな踊りをさせようとした恐るべき振り付け師だったりする。
まったく誰だよ〜、こんな奴に振り付け考えさせた奴は〜。
お陰で、劇場で引きつけ起こしそうになったじゃんかさ〜。
ところで、後楽園遊園地では、『ジュウレンジャー』での大人気に気を良くして、『ダイレンジャー』でも秋公演を本人ショーにしている。
前年はブライだけだったが、今回は5人全員を揃えてのことであり、力の入れ加減が分かる。
これが影響して、本人の生写真を撮るのが目的で最前列にばかでかいレンズのカメラを構えるお兄ちゃんお姉ちゃんが増えてしまった。
ちなみに、最終公演である『スーパーヒーロー大集合』では、本来5人は出ないはずだったが、最終日の最終公演には、予定外ながら、なんと5人がサービス出演している。
これを見に行った人(実は鷹羽も見に行っていた)は、ラッキーだったわけだが、これは視聴者層の変化を垣間見せるものだ。
つまり、ミーハー系のキャラ萌えファンの台頭だ。
この流れは、続く『カクレンジャー』で野外劇場側からの対応の変化や、主人公側の役者選定の方向性に影響を及ぼし始めるのだが、それらについては『カクレンジャー』で述べることにしよう。
少なくともこの時点では、和田氏らは、役柄が好きでやっているようだから。
なお、亮と将児は、『カクレンジャー』や『オーレンジャー』の最終公演にも特別出演している。
番組が終わって2年経っても、まだ役に愛着があるというのは、非常に素晴らしいと思う。
役者・視聴者共に持っているキャラクターへの思い入れ、それこそが『ダイレンジャー』という番組の本質だったのかもしれない。
誤解を招かないように言っておくが、鷹羽は『ダイレンジャー』がシリーズでも五指に入るほど好きだ。