魔法戦隊マジレンジャー

平成17年2月13日〜18年2月12日 全49stage+劇場版+Vシネマ1本

主題歌

 『マジレンジャー』では、本編の一部であるアバン終了後、OPのタイトルコールの前に、

というナレーションが入っている。
 この文言は、最終回予告で5人が言っているほか、最終決戦において、魁ら8人の言葉として使われている。
 
 最初のバージョンのOPでは、紹介シーンでの麗が異様に無表情で怖かった。
 2番目のバージョン(マジシャイン登場後)では、芳香が“本気のポーズ”(キャラクターの項で説明)を取っていたりする。
 こういう“本編での変化がOPにフィードバックされる”というのはいいものだ。

 また、EDは、前作に引き続きメインキャラが踊るものになっているが、なんと変身後のマジレンジャーの姿でも踊っている。
 次のカットでマジマジンの姿で映ったとき、これも踊ったらどうしようかとドキッとしたものだ。
 とか思っていたら、なんと劇場版EDでは、マジキングとトラベリオンが踊っていた…。
 この辺の悪ノリは本編にも表れていて、8話『君こそヒロイン〜マジュナ・マジュナ〜』では、マジカルシスターズ(ピンクとブルー)が魔法のボンボンを手に、冥獣の前でED曲を歌い踊るというシーンがある。
 一応、魔法で相手の動きを操るという設定なのだが、この際、イメージシーンとして、ピンクとブルーがマスクを外した状態(演じる役者本人がスーツを着た状態)で踊っており、アイドルのイメージビデオ撮影のようなノリで撮っていたのだそうだ。
 
 『天空界の安らぎ』は、前作『デカレンジャー』でデカピンク:ウメコを演じた菊池美香氏が、『勇気はフェニックス』は、マジレッド:魁を演じた橋本淳氏がそれぞれ歌っている。
 
 EDでは、イントロの間に、マンドラなどによる“今回の呪文の解説”が入っているが、最終回では、メイン6人の初登場時と最終回での顔が映るだけで、台詞は入っていなかった。
 なお、最終回のEDがレギュラーの画面と曲そのままというのは、『チェンジマン』以来、実に21年ぶりとなっている。

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基本ストーリー

 ある日、インフェルシアの封印が解け、冥獣トロルが地上に現れた。
 そのとき、小津深雪(おづ・みゆき)は、マジマザーに変身して冥獣を倒す。
 そして、深雪は、5人の子供達に、インフェルシアと魔法使いの戦いについて教えた。
 兄弟の父は、かつてその身を犠牲にしてインフェルシアを封印した魔法使いだったのだ。
 深雪は魁を除く4人にマージフォンを与え、インフェルシアと戦うよう言い渡す。
 勇気と無謀の区別が付かない魁には、マージフォンを与えることがためらわれたのだった。
 だが、魁が、インフェルシアの魔導騎士ウルザードの前に絶体絶命となっていた4人を救おうとしたとき、天空聖者に勇気を認められ、その手にマージフォンが与えられた。
 そして、戦いの中、ウルザードが巨大化し、ウルケンタウロスとなって5人に襲いかかる。
 5人を助けるために駆けつけ、巨大化して戦ったマジマザーは、敗れてしまった。
 5人は母の遺志を継ぎ、力を合わせてインフェルシアと戦うことを誓った。

▼ 「真実の物語」は…

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メンバー

赤の魔法使いマジレッド:小津 魁(かい)

 三男で末っ子の17才、桐東学園2年生。
 兄弟のことは、順に「蒔人兄ちゃん」「芳香姉ちゃん」「ちい姉」「ちい兄」と呼ぶ。
 炎のエレメントの魔法使いで、天空聖者フレイジェルの力を受けて変身する。
 得意技は、「マジ・マジカ」の呪文で、自分の体を炎で包んで体当たりするレッドファイヤー。
 「ジルマ・マジーロ」の呪文で、物質を分解・再構成する練成術を得意とする。
 ゴーグルは鳥型で、翼が左右5本ずつに枝分かれしている。
 マジスティックをマジスティックソードに変えて戦う。
 サッカー部所属で、マネージャーの山崎由佳に告白したが、彼女がマジレッドに一目惚れしたためふられてしまい、その後は一進一退の恋模様となっていた……が、実は劇場版で正体がバレており、魁自身は知らないまま両想いになっていた。

黄色の魔法使いマジイエロー:小津 翼(つばさ)

 次男で第4子の19才、プータロー(どうやらプロボクサーのライセンスを持っているのではないかと思われる)。
 兄弟のことは、順に「アニキ」「ほう姉」「うら姉」と呼ぶ。
 面白いことに、「魁」だけは名前で呼ぶことをせず、「おい」とか「お前」「あいつ」などと呼ぶが、最終決戦の際に1回だけ名前で呼んでいる。
 雷のエレメントの魔法使いで、天空聖者ボルジェルの力を受けて変身する。
 得意技は、マジスティックをマジスティックボーガンに変えて敵に放電攻撃を掛けるイエローサンダー。
 「ジンガ・マジーロ」の呪文で、魔法薬の調合を得意とする。
 作った魔法薬には、「骨のある骨治し薬」「思いやりのある思い出し薬」「逞しき匠の技を託す薬」「嫌味のない癒し薬」「気付かず直す傷薬」など語呂合わせになった名前がつけられている。
 ゴーグルは鳥型で、稲妻型の翼が左右4本ずつに枝分かれしている。
 9才の頃からボクシングをやっており、高校時代にはインターハイに出ている。
 痩せているが力持ちで、米俵3俵(180kg)を一度に抱えてすたすた歩くことができる。
 もしかしたら、北斗神拳とか陸奥圓明流のような、怪しげな筋力発揮のワザを知っているのかもしれない。
 判断力や応用力に優れ、常に一歩引いてものを見ているため、一見クールで冷めた人間のようだが、実は情に厚いところがあり、いざ火が点くと、その暴走ぶりは兄弟一かもしれない。

青の魔法使いマジブルー:小津 麗(うらら)

 次女で第3子の20才。
 いわゆる家事手伝いだったが、2話以降は実質的に主婦的立場。
 兄弟のことは、順に「お兄ちゃん」「芳香ちゃん」「翼」「魁」と呼ぶ。
 水のエレメントの魔法使いで、天空聖者スプラジェルの力を受けて変身する。
 得意技は、魔力を水流に変えて敵に叩きつけるブルースプラッシュ。
 「マジ・ジジル」の呪文による水晶占いを得意とする。
 ゴーグルはひれ型で、先が左右3本ずつに枝分かれしている。
 家計を預かり、家事全般をこなす母親役。
 小さいころに、魁のいたずらで蛙を背中に入れられて以来、蛙が死ぬほど苦手。
 なのに、なぜか蛙と縁があるようで、冥獣人ニンジャ・キリカゲや冥府神トードなど、蛙使いとメインで戦う羽目になることが多かった。
 ライジェルの魔法で蛙になっていたヒカルを復活させる際のキス以来、ずっとヒカルが気になっていたようで、47話『君にかける魔法〜ルルド・ゴルディーロ〜』において告白、ヒカルと結婚した。
 なお、演じる甲斐麻美氏は本当に蛙が苦手だったそうだが、撮影を通じて克服したそうな。

桃色の魔法使いマジピンク:小津芳香(ほうか)

 長女で第2子の22才。
 職業は一応モデルで、それなりにオーディションにも顔を出しているが、あまり仕事はない。
 蒔人のことは「お兄ちゃん」、ほかの弟妹は名前にちゃん付けで呼ぶ。
 風のエレメントの魔法使いで、天空聖者ウインジェルの力を受けて変身する。
 得意技は、突風を叩きつけるピンクストーム。
 「変わりま〜す! マージ・マジーロ」の呪文で色々なもの(のれん、郵便ポスト、扇風機、ハチ、胡椒、ラジカセ等)に変身する変身魔法を得意とするが、なぜか何に変わってもピンク色になる。
 ただし、バンキュリアやティターンに変身した際には、さすがに全身ピンクにはならず、背面にピンクのリボンが付いている程度だった。
 この変身魔法で大砲に変化し、ほかの兄弟を打ち出す人間大砲も得意とする。
 ゴーグルは蝶型で、羽が左右2つずつに分かれている。
 大雑把でマイペース、若干非常識な面が目立つが、その分、常識や先入観にとらわれることなく物事の真実を見抜く目を持っており、特に対人関係においては雰囲気を和らげるなど潤滑剤の役を果たすタイプ。
 日常生活では、恋多き乙女で、家事にはうとく、リンゴもまともにむけず、食卓上の醤油差しなども人に取ってもらうものぐさぶり。
 …が、バンキュリアに血を吸われたことがきっかけで、“やるときはやる”人にバージョンアップ(自称)した。
 それに伴い、右手でピースサインを作り、それを横にして右目の脇に持ってくる“本気のポーズ”を取るようになった。
 前述のとおり、このポーズはその後OP映像にも使われているが、本編でもしょっちゅう取っており、39話『あべこべ姉弟〜マジュナ・ジルマ〜』40話『蛇女の庭〜マジーネ・ルルド〜』で魁と入れ替わった際、魁の姿のままでやっている。
 『魔女っ子メグちゃん』のOPでノンが取っているポーズの手の平前バージョン…と言っても、分かる人は少ないだろうなぁ。
 もしかしたら、アニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズのセーラームーン変身直後のポーズと言っても通じない時代かも…。
 なお、家事の方は、最終回では卵焼きが作れるほどになっている。

緑の魔法使いマジグリーン:小津蒔人(まきと)

 長男で第1子の24才。
 弟妹のことは全員名前で呼び捨て。
 無農薬有機栽培のアニキ農場を営んでおり、小津家の生計はその収穫物の売上で賄われている。
 大地のエレメントの魔法使いで、天空聖者グランジェルの力を受けて変身する。
 「ジルマ・マジカ」の呪文で植物を操るほか、植物と会話することもできる。
 得意技は、植物を操って敵の動きを封じるグリーングランド。
 ゴーグルは牛の顔型で、角が左右1本ずつ。
 マジスティックをマジスティックアックスに変えて戦う。
 かなり思い込みの激しいタイプで、思い込んだら一直線。
 海外留学して農業を学び、ブラジルに大アニキ農場を作るのが夢だが、長男としての責任感から、弟妹達が一人前になるまで家にいて面倒を見るつもり。
 野菜の納入先として営業していたカフェのオーナー:池田江里子と交際中。

白の魔法使いマジマザー:小津深雪

 15年前にインフェルシアを封印した天空聖者ブレイジェルの妻で、5人の母親。
 氷のエレメントの力を持ち、マージフォンでマジマザーに変身し、巨大化もできる。
 父の死の真相を隠し、魔法使いであることも隠したまま女手1つで5人を育て上げた。
 5人に、魔法の部屋とマンドラを遺して死亡。
 自分の死後、魔法の部屋を訪れた子供に遺言を伝えるための幻影を残していた。
 …が、実は死んでおらず、魂を光の粒子に変えられた状態でマルデヨーナ世界“魂の花園”を漂っており、時折5人に力を貸していた。
 その後、魂コレクターである冥府神トードによって茨の園に封じられたが、44話『母さんの匂い〜ジルマ・ジルマ・ゴンガ〜』で無事救出された。

助言者:マンドラ坊や

 深雪が残した助言者で、マンドラゴラ。
 植木鉢から生えている細長いカブに顔と手が付いているような外見。
 土の中には、二股に分かれた先端部がある。
 深雪のことは「お母様」、5人のことは「魁ちん」など名前に「ちん」付けで呼び、「〜でござりますです」というしゃべり方をする。
 土から抜かれると悲鳴を上げる習性があり、普通の人間ならそれを聞いただけで死んでしまい、魔法力を持つ5人でさえ気絶する。
 当初、スモーキーとは犬猿の仲で、毛虫を載せられ葉っぱを穴だらけにされて復讐を誓ったりもしたが、終盤には、一緒にトラベリオンの整備をやる(と言ってヒカルと麗を2人きりにする)など、かなり仲良くなった。
 記憶を失った芳香曰く「喋る鉢植え君」。
 声を演じたのは、『とっとこハム太郎』ちびくりちゃん役等の比嘉久美子氏。

門の鍵:天空聖者ルナジェル(リン)

 かつてブレイジェルと共にインフェルシアと戦った天空聖者の1人で、月影のエレメントの魔法を使う。
 普段は人間同様の姿をしているが、天空聖者としての本体も持っており、巨大化する際やマジトピアに帰還する際にその姿になった。
 ブレイジェルが冥府門を封印した際、門の外側から、自分の命と連動する封印の魔法を掛けた。
 本来ならば、その後、天空聖界マジトピアに帰還して封印の効力を絶対のものにするはずだったが、天空聖者ライジェルの裏切りに合い、記憶を消されて15年間彷徨っていた。
 5人が助けた際、腕輪に鈴が付いていたことから魁がリンと名付けたため、記憶を取り戻した後も5人は彼女をリンと呼ぶ。
 翼が作った魔法薬で記憶を取り戻し、ウルザードと戦うなどした後、マジトピアに帰還した。
 「いけない」が口癖…と5人には思われている。

天空勇者マジシャイン:天空聖者サンジェル(ヒカル先生)

 かつてブレイジェルと共にインフェルシアと戦った天空聖者の1人で、太陽のエレメントの魔法を使う。
 裏切り者ライジェルと戦い、ミイラにしたものの、自分自身は蛙の姿にされてしまい、ライジェルのミイラを洞窟に封印してマジランプで結界を張っていた。
 結界の崩壊と共に外界に出てきたが、元の姿に戻るには、青の魔法使いにキスしてもらうしかなく、テレパシーで必死に麗にメッセージを送っていた。
 復活後は、5人が魔法力を有効に使えるよう、魔法の先生として小津家に住み込むことになった。
 5人のことは名前で呼び捨て。
 蛙の姿のときに、芳香に「ヒカル」と名付けられたため、普段はその名前を名乗ることにしている。
 当然、本体であるサンジェルの姿のままでも戦え、エネルギーで全身を覆って体当たりするプロミネンスアタックなどの強力な技を使う。
 かなり生真面目な性格で、ライジェルとの決闘(デュエルボンド)の際も、ライジェルがルール違反をしてもなおルールに拘って戦った。
 魔法力を有効に使うことに拘るなど、少々理論優先で動く部分もあるが、スノウジェルの教えで魁の生徒として行動した際、“まず動いてみることで勝機が開けることもある”と知った。
 また、麗の好意に気付いていない朴念仁かと思ったら、単に不器用だっただけで、「僕の妻になってほしい」と非常にストレートな言葉で(みんなの見ている前で)プロポーズした。

魔法のランプの精:スモーキー

 マジシャインの飼い猫で、魔法のランプ:マジランプに封印されている。
 「な」を「にゃ」と発音する。
 遥か昔、マジトピアの火山で生まれた魔法猫で、大のいたずら好きだったが、消滅の呪いが掛かった宝箱を開けてしまい、そのときマジシャインがマジランプに封印することで助けた。
 そのため、マジランプのルールにより、一定数の願いを叶えないと実体を取り戻すことができず、ランプから3時間離れていると消滅してしまう身体となった。
 
 ライジェルを封印するための要として、マジランプごと15年間封印されていたが、魁が掘り出したために封印は無効になり、その後魁がランプを擦ったため出現した。
 負けるケンカはしない主義だが、5人の勇気に応え、共に戦い、いつかインフェルシアを倒すという願いを叶えることを約束するなど、男気もある。
 とはいえ、どちらかというと、主であるマジシャインに従って戦っているという形になっている。
 記憶を失った芳香曰く「猫ランプ君」。
 声を演じるのは、『ドラゴンボールZ』でトランクス、『ビーロボ カブタック』でカブタックを演じた草尾毅氏。

マジトピアの王:天空大聖者マジエル

 マジトピアに君臨する王。
 地上界は地上の人間の手で守られるべきという信念を持っているため、マージフォンによって魔法を授ける以上の干渉はしないことにしている。
 普段から巨大な姿をしているが、あれが本体なのかどうかは不明。
 演じたのは、『デンジマン』『サンバルカン』でヘドリアン女王、『マスクマン』でバラバの母ララバ、『ジュウレンジャー』で魔女バンドーラを演じた“日本一の魔女役者”曽我町子氏。
 実は、ここ25年くらいの東映トクサツでは、曽我氏が悪役以外を演じたのは今回だけだったりする。
 曽我氏は、本作終了後の2006年5月7日、膵臓癌で急逝。
 ゲーム『宇宙刑事魂』にオリジナルの悪役:暗黒銀河女王役で出演したのが最後の仕事となるが、テレビ・映画等の顔出し作品としては本作が遺作となっている。
 なお、このマジエル役は、当初は岡田眞澄氏にオファーがあったものの、氏が体調不良を理由に辞退したため曽我氏に白羽の矢が立ったとのことだ。
 その岡田氏も、実は癌で、2006年5月29日に逝去している。

マジトピアの最長老:天空聖者スノウジェル

 マジトピアを作った古の5色の魔法使いの弟子筋に当たる老聖者で、原始の魔法を使えるが、見た目は赤ん坊のよう。
 深雪に魔法を与えた張本人だが、“力はそれを持つ者を不幸にする”と考え、「嘆きの海」というマルデヨーナ世界に閉じこもっていた。
 魁達の指輪の「勇気」の光に希望を見出し、5人の中に眠っていたレジェンドパワーを引き出してくれた。
 「ゴール・ゴル・マジュール」の呪文で、戦闘形態に変身することができる。
 人間体があるかは不明。
 声の出演は、『機動戦士ガンダム』のララァ・スン、『聖闘士星矢』城戸沙織役の潘恵子氏。

天空聖者ブレイジェル→天空勇者ウルザード・ファイヤー:小津 勇(いさむ)

 蒔人ら5人の父で、かつてサンジェルらを従えてインフェルシアと戦った勇者。
 戦闘時には、天空聖者の本体に戻るが、その際は剣と盾を武器とする。
 冥府門を閉じ、ン・マを封印しようとしたが、ライジェルの計略により傷ついていた左肩から呪縛転生の呪いを掛けられ、魔導騎士ウルザードに変えられていた。
 魁の涙で自我を取り戻し、今度こそン・マを封印した後、その魂を身体に取り込んで結界に身を潜めていた。
 子供達のピンチを救おうと二極神との戦いに参戦したため、その所在を嗅ぎ付けられることとなり、冥府神ワイバーン、ティターン、ダゴンの襲撃を受けてン・マの魂を奪われ、重傷を負って地底深く落下していったが、深雪が魔法力を与えたことで復活した。
 ン・マに滅ぼされたマジトピアに赴くに当たり、地上の守りとして5人を残し、魁に「自分の勇気を見付けろ」と、フェイタル・ブレイドを授けていった。
 必殺技は「マージ・ゴル・マジカ」の呪文で発動するブレイジングストームで、ウルザード・ファイヤーになった後は、「マージ・ゴル・ジー・マジカ」でブレイジングストーム・スラッシュが必殺技となる。
 ブレイジェルやウルザード・ファイヤーの声、人間体である勇を演じたのは、ウルザードの声も演じている磯部勉氏。

魁の想い人:山崎由佳

 魁が所属するサッカー部のマネージャーで、魁の片思いの相手。
 元々は魁のことを好きだったのだが、芳香の余計なちょっかいやらインフェルシアの破壊活動に巻き込まれたりのせいで、「赤の魔法使い様」に夢中になってしまった。
 その後、「赤の魔法使い様」のマスコット騒ぎで魁に対する想いが再び強くなり、劇場版で2人が同一人物であることを知った。
 ただし、魁本人に対しては最後まで気付いていないふりを続けていた。
 魁との関係がどうなったのかは不明だが、エピローグ部分に登場しなかったところを見ると進展していないようだ。

 マジレンジャーは、マージフォンを通じて天空聖者から力を与えられて変身する戦士だ。
 その勇気を天空聖者に認められると、マージフォンと魔法衣、ローブ、ペンダントが与えられる。
 魔法衣は普段着として使用しており、胸部や腹部にそれぞれのエレメントのマークがついている。
 自宅の2階に異空間の隠し部屋があり、そこにマンドラがいたり、スカイホーキー(移動装備の項で説明)、マージフォンではキャッチできない隠された冥獣反応をキャッチできる教えテルミー、魔法110番や通信で使われる“不思議な鏡”メメの鏡、魔法の書物などがある。

 マジトピアには、

  • 遠い遠いその昔、5人の魔法使いがおりました。
  • 大地のようにゆるぎなく皆を支える寛容の色 緑の魔法使い
  • 風のように爽やかに夢を運ぶ希望の色 桃色の魔法使い
  • 水のように清らかに癒しを与える慈愛の色 青の魔法使い
  • 稲妻のように閃いて知恵を授ける英知の色 黄色の魔法使い
  • 炎のように元気よく心を燃やす情熱の色 赤の魔法使い
  • 先陣切って突っ走る勇猛果敢な赤い色
  • 青黄桃と続きでて最後に控えし緑色
  • 5人がそれぞれ勇気を持って役割果たせばできないことなど何もない

という歌が伝えられており、5人はそれぞれその属性を持っている。

 更に、
 冥府の神々破壊の限りを尽くすとも、地上の民、決して刃向かうこと許されず
という言い伝えもあり、冥府十神が出現した際には、ヒカルは地上の民である5人を戦わせずに自分1人で戦い抜こうと考えていた。

 なお、5人の名前は、

  • きと
  • うか
  • らら
  • ばさ
  • かい

となっており、名前の頭の1文字(魁だけ2文字)を並べると「魔法使い」、姓が「おづ」で、『オズの魔法使い』に引っかけている。

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変身システム

 携帯電話型の変身アイテム:マージフォンを魔法使用形態(ワンドモード)に変形させて「1・0・6」と入力し、「天空聖者よ、我(ら)に魔法の力を! 魔法変身、マージ・マジ・マジーロ!」と唱えつつ「ENTER」キーを押しながら掲げる。
 すると、天から「マージ・マジ・マジーロ!」の声(演:玄田哲章)が降ると共に魔法陣が発生してそれぞれのエレメントを司る天空聖者が降臨し、スーツが装着される。
 短縮版として「魔法変身、マージ・マジ・マジーロ!」「魔法変身!」だけの場合などもある。
 
 スーツは、ゴーグル部がそれぞれのエレメントマーク(巨大化形態のモチーフに合わせて鳥、ひれ、蝶、牛など)の形をしているが、牛の角が左右1本ずつであるのを筆頭に、蝶の羽が左右2枚ずつ、ひれが左右3つずつに枝分かれといった具合に、生まれた順番に合わせて数が増えていく。
 また、ゴーグルは金色で縁取られており、その上の部分には、イエローは稲妻、ブルーはミルククラウン(水滴が水面に落ちたときに生じる跳ね返りの模様)、ピンクは触覚と、それぞれのエレメントにちなんだ模様がついている。
 ただし、レッドとグリーンには特に模様がない。
 また、短いながらマントが付いているのが特徴で、『ダイナマン』でマフラーが廃されて以来初めて“なびく布”が生えているデザインとなった。
 変身後もマージフォンを使用できるが、スーツに収納場所はなく、どうやら出したり消したりしているようだ。

 5人は、30話『伝説の力〜マージ・マジ・マジ・マジーロ〜』で、古の魔法使いスノウジェルに潜在能力を解放してもらい、超魔法変身を身につけた。
 マージフォンに「1・0・0・6」と入力し、「超魔法変身、マージ・マジ・マジ・マジーロ!」と唱えて掲げると、レジェンドマジレンジャーに強化変身する。
 人間の姿から、一気に超魔法変身することも可能。
 44話では、フルバージョンで「天空聖者よ、我らに魔法の力を与えよ!超魔法変身、マージ・マジ・マジ・マジーロ!」と唱えている。
 
 レジェンドマジレンジャーは、マントがなくなり、胸部に装甲、前腕部にアームレット、脛部にアンクレットが付いた。
 また、マスクから突起状の飾りが生えているのも特徴。
 飾りは、それぞれのエレメントマークにちなんだものになっていて、側面部に張り出しているが、ブルーだけは、背びれをイメージさせる突起が頭頂部から生えている。
 増加装甲部は、それぞれ白と金色ベースになっている。
 また、胸部装甲には、金色のエレメントマーク模様が入っており、その中央にはパーソナルカラーの宝珠がはまっている。

左から、ウーザフォン、マージフォン、シルバーマージフォン

 マージフォンは、通信機としても使える。
 パネル部分はモニターにもなっており、いわゆるテレビ電話的にも使えるし、仲間同士の連絡だけでなく、通常の携帯電話に電話することも可能だ。
 また、冥獣の出現(冥獣反応)を感知する機能もあり、着信音と共にパネル部分が光って知らせる。
 そして、5人の勇気に応えて天空聖者から新たな呪文が送られると、着信音が鳴り、入力すべき数字のボタンが入力順に光る。

 マジシャインは、駅の改札鋏型の変身アイテム:グリップフォンの「M」マークのボタンを押した後、変身のマジチケットを改札し、穴の開いたマジチケットを左手で持って高く掲げて「天空変身! ゴール・ゴル・ゴルディーロ!」の呪文で変身する。
 この「改札」というのは、グリップフォン先端部にマジチケットを挟んでグリップを握り、穴を開けることだ。
 当然、サンジェルとしての本体があり、マジシャインのスーツは戦闘用の鎧として装着しているだけで、変身が解けても同じくらいの戦闘能力がある。
 そのため、敵の攻撃で変身が解けた瞬間にサンジェルの姿になりプロミネンスアタックで不意討ちするなどの応用技も使うことがある。
 変身の際は、一旦サンジェルの姿に戻り、マジシャインのスーツが装着されるという形になっている。
 グリップフォンにも、通信機能が付いている。

 また、46話『湖へ向かえ〜ゴール・ゴル・ゴル・ゴルディーロ〜』では、小津勇がどこからか出した赤いウーザフォンで、「超天空変身! ゴール・ゴル・ゴル・ゴルディーロ!」の呪文を使ってウルザード・ファイヤー(ウルザードの紫色部分が全部赤になった姿)に変身している。
 赤いウーザフォンに数字を入力するシーンは、変身も含めて全くない。

 恒例の変身アイテムとして、マージフォン、グリップフォン共に商品化されている。
 マージフォンは、1〜0までの各数字にそれぞれ

という音声が割り当てられており、数字を押した後にENTERキーを押すことによって、入力した順に音声を発し効果音が鳴るようになっている。
 発声するのは4つまでで、それ以上押しても最後の4つ分だけが発声される。
 各ボタンには効果音が割り当てられており、最後に押したボタンの効果音が鳴るが、「マージ・マジ・マジーロ」など特定の組み合わせの際には、専用の効果音が鳴る。
 特徴的なのは、変身後に使用する魔法に関しては、画面上ではマージフォンを使用しないで使うことも多いが、それらの呪文も全てマージフォンで発声可能ということだろう。
 できれば、本編中でも毎回マージフォンを使いながら魔法を使ってほしかった気もするが、それをやると戦闘シーンが鈍重になってしまうので、やむを得ないところか。
 ちなみに、この商品は、1話放送日には発売されており、そういった関係からか、魔神合体の呪文以降に登場する呪文には、特定の効果音は全く用意されていない。
 驚いたことに、最初から予定されていたであろうファイヤーカイザーの呪文にすら用意されていないのだ。
 開発期間の関係もあるのだろうが、少々寂しい気がする。
 
 また、マジシャインの呪文詠唱は、どういうわけかボタンの組み合わせによる呪文ではなく、呪文に応じたマジチケットの改札という方式が採用されており、商品のグリップフォンにもボタンはあるものの、呪文を発する機能はない。
 機関車から変形するトラベリオンの持ち主ということで切符を使う設定にしたのだろうことは分かるのだが、どうして魔法使いが機関車やら切符やら使うのかは、理解に苦しむところだ。
 恐らく『ハリー・ポッター』シリーズに登場するホグワーツ行き列車をモデルにしたためだろう。
 一方で、武器が魔法のランプでカーペットに乗るというアラビアンな設定も併せ持っており、ますます統一感に欠ける。
 

ゴールドグリップフォン

 後に、限定品として、ヒカルの声で呪文を発する機能のついた“ゴールドグリップフォン(トラベリオンとセットでトイザらス限定)”と、44話で深雪のマージフォンがパワーアップした“シルバーマージフォン”が発売されている。

シルバーマージフォン

 いずれも『テレビマガジン』の全プレDVDに登場する特別アイテムを商品化したもので、シルバーマージフォンがテレビ本編に登場したのは、販促効果も期待したサービスだろう。
 シルバーマージフォンは、中身は通常のものと全く同じだが、ノーマルのマージフォンで金色の部分が銀色、黒い部分(成形色部分)が白になっているほか、エレメントマークが氷になっていてパネル部分の模様が違うなど、細かい部分は変えられている。
 また、変身アイテムではなく敵方装備だが、後述するウーザフォンも発売されている。

 ただし、赤いウーザフォンは商品化されていない。

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名乗り

 「唸る大地のエレメント! 緑の魔法使い、マジグリーン!」

 「吹きゆく風のエレメント! 桃色の魔法使い、マジピンク!」

 「たゆたう水のエレメント! 青の魔法使い、マジブルー!」

 「走る雷のエレメント! 黄色の魔法使い、マジイエロー!」

 「燃える炎のエレメント! 赤の魔法使い、マジレッド!」

 5人「溢れる勇気を魔法に変える! 魔法戦隊! マジレンジャー!」

というのがフルバージョン。
 ただし、フルバージョンは11話と劇場版のみ。
 普段は、「〜のエレメント!」の部分が入るのはその回の主役くらいで、5人名乗りの際には省略される。
 
 30話では、

 「唸る大地のエレメント! 緑の魔法使い、レジェンドマジグリーン!」

 「吹きゆく風のエレメント! 桃色の魔法使い、レジェンドマジピンク!」

 「たゆたう水のエレメント! 青の魔法使い、レジェンドマジブルー!」

 「走る雷のエレメント! 黄色の魔法使い、レジェンドマジイエロー!」

 「燃える炎のエレメント! 赤の魔法使い、レジェンドマジレッド!」

 5人「溢れる勇気を魔法に変える! 魔法戦隊! マジレンジャー!」

というレジェンドバージョンも披露された。
 
 また、44話では、マジマザーも含めて

 「きらめく氷のエレメント! 白の魔法使い、マジマザー!」

 「赤の魔法使い、レジェンドマジレッド!」

 「黄色の魔法使い、レジェンドマジイエロー!」

 「青の魔法使い、レジェンドマジブルー!」

 「桃色の魔法使い、レジェンドマジピンク!」

 「緑の魔法使い、レジェンドマジグリーン!」

 マザー「溢れる勇気を」

 5人「魔法に変える!」

 6人「魔法戦隊! マジレンジャー!」

という特別バージョンがあった。
 ちなみに、1話でのマジマザーの名乗りは「マジマザー!」だけだったが、多分これは再登場させる予定がなかったせいだろう。

 また、マジシャインは

 「輝く太陽のエレメント! 天空勇者マジシャイン!」

と名乗り、ウルザード・ファイヤーは

 「猛る烈火のエレメント! 天空勇者ウルザード・ファイヤー!」

と名乗る。
 さらに、最終回では、ウルザード・ファイヤー、マジシャイン、マジマザー、マジグリーン〜マジレッドが順にフルで名乗った後、

 8人「勇気の絆が未来を開く! 我ら魔法家族! 魔法戦隊! マジレンジャー!」

と名乗る家族バージョンがあった。

 このほか、ルナジェルには

 「冴える月影のエレメント! 天空聖者ルナジェル!」

スノウジェルには

 「きらめく氷のエレメント! 天空聖者スノウジェル!」

という名乗りがある。

 なお、敵を倒したときには、等身大・ロボ戦共に、指を鳴らして「チェックメイト!」と言う。

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武器

 標準装備は、左腰のホルスターに入っているマジスティック
 棒の先端にそれぞれのエレメントマークが、スティック上部にM字型の飾りが付いていて、魔法の杖の役割を果たす。
 男性陣はそれぞれの専用形態に変形させるが、女性陣は特に変形させずに使う。
 グリーンは、この飾りを石突き側の端に移動・巨大化させてマジスティックアックスにし、イエローは飾りを石突き側の端に移動させた上、Mの字部分を反転させて開いてマジスティックボーガンに、レッドは飾りを中央付近に移動させて鍔に変え、石突き部分を伸ばして刀身にし、マジスティックソードとして使う。
 なお、マザーも同様にマジスティックを持っているが、石突き部分が伸びた状態になっており、かなり長い杖という印象になっている。
 こちらもブルー、ピンク同様、特段変形しない。

 また、「ジー・ジー・ジジル」の呪文で、拳にボクシンググローブ型の“奇跡の拳”マジパンチを装着することもできる。
 レッド、ピンク、イエローの3人が使用しているが、ボクシンググローブをイメージした武器のせいか、誰が使ってもマジパンチは赤い。
 拳の前面に「M」の字があるほか、両方の拳を胸の前で合わせると甲の部分で金色の「M」の字が出来上がり、パワーアップする。

 なお、同じ「ジー・ジー・ジジル」の呪文でも、ピンクとブルーが同時使用すると、敵の動きを操るためのマジカルボンボン(チアガールのボンボンのようなもの)が出現する。

 これらの武器・技は、エレメントパワーを一時的に増幅する「マジ・マジカ」の呪文で威力が上がり、「マジ・マジ・マジカ」「マジ・マジ・マジ・マジカ」の呪文で更に強力になる。

 また、グリーンは、「マジ・マージ」の呪文で、全身の筋肉を強化してスーツ自体がマッチョ体型になるマジマッスルになれる。
 レジェンドパワーを得た後は、「ゴル・マージ」の呪文で、上半身を大地の力で覆って岩のような外見に変えるというパワーアップを果たした。

 レジェンドマジレンジャーは、マジスティックとマージフォンがなくなり、代わりにダイヤルロッドを装備している。
 ダイヤルロッドは、太古のマージフォンとも言える存在。
 1〜5までの数字があり、1を回すと「マジボルト」の呪文と共に、各エレメントの攻撃技の強化版が使え、2を回すと「ジー・ゴル・マジボルト」の呪文と共に新必殺技レジェンドフィニッシュが使える。
 44話では、マザーの力も加えてレジェンドファミリーフィニッシュを使用した。

 そのほか、3「マージ・ゴル・マジュール」でレッドがマジファイヤーバードに、4「マージ・ジルマ・ゴル・ゴゴール」で他の4人がマジライオンに変身し、5「マージ・ジルマ・ゴル・ジンガジン」でマジレジェンドに合体する。

 また、イエローのダイヤルロッドは、「ゴー・マジカ」の呪文でダイヤルロッドボーガンに変形する。
 もっとも、杖の先端が弓状に開くだけで、グリップは付いておらず、ちょっとボーガンには見えない。

 マジシャインは固定武装を持たず、マジランプが変形するマジランプバスターを使用する。
 マジランプバスターは、マジランプの脇を擦って魔法力を注入すると、こすった回数だけビームを発射でき、しかも曲折して撃てるという特性を持つが、魔法力の制御が難しいため、魁が初めて練習した際には、暴発してばかりいた。
 また、マジランプの脇を7回擦って「ルーマ・ゴー・ゴジカ」の呪文を唱えて発射すると、光の魔法力を帯びたスモーキーが飛び出し、敵を引っ掻くなどの攻撃を加えるスモーキー・シャイニング・アタックが発動する。
 ブルーが「ジルマ・ジー・マジカ」の呪文を唱えて使用したこともあるが、その際は水のエレメントの力とスモーキーの力が複合されたブルー・シャイニング・アタックになった。
 
 このほか、サンジェルがメーミィとのデュエルボンドの際に使用した剣をマジシャインの姿で使用することもある。

 『マジレンジャー』では、通常装備であるマジスティックが個人武器に変形するという形式を取った。
 これは、『ギンガマン』の自在剣・機刃の“統一形状から複数の武器形態への変形”の性質を通常装備に持たせたものではあるが、機刃では5人全員が全ての型を使えるのに対し、マジスティックの変形は、各戦士1種類の固定となっている。
 具体的には、男性陣3名のスティックがそれぞれ斧、ボーガン、剣に変形するというものだが、これは、前作『デカレンジャー』での“通常装備=個人武器”という様式を1歩進めた形になっているためだろう。
 一般に、通常装備を個別化するために使われる手法として、“各戦士のマークを入れる”というのがある。
 これは、商品にシールを付属させることなどによって容易に差別化できるという利点があるが、マジスティックの場合、エレメントマークを付け替えるということで個別化を図っているわけだ。
 デザインや商品企画の段階から、オールインワンの商品にして、誰のファンが買っても満足できるようにしたのだろう。
 そして、これまでのものから一歩進めて、イエローのエレメントマークだけ、マークから稲妻模様の付いた突起が出ているという形にしている。
 実はこの突起は、マジスティックボーガンに変形した際のグリップになる部分であり、この差異によって、マジスティックボーガンに変形できるのはイエローのマジスティックだけとなっているのだ。
 このグリップは、設定上、イエローのマジスティックから生えている稲妻型の突起が変形したものということになっている。
 実際、この稲妻型の突起は、撮影用のプロップでも再現されており、イエローの正面向きのスナップでも、腰のマジスティック部分から横に張り出しているのが確認できる。
 商品による怪我防止の観点からか、グリップになった際には稲妻型のモールドがあるだけの滑らかな形にしたのだろう。
 稲妻型の突起が伸びてグリップになるというのは、雷のエレメントの戦士らしいし、逆に普段も単なる飾りとして違和感なく存在できる。
 非常に面白い発想だったと言える。
 
 マジパンチも商品化されているが、両手が使えなくなる形状のため、自分ですぐに取り外しできるよう、安全策として、右拳は、掌側が開いて中の手が出せるようになっている。
 また、メインスイッチを入れると「カーン!」というゴングの音が鳴るという笑える(拘った)機能も盛り込まれている。
 年間通してたった5回しか使われていない武器が商品化されたというのは、結構凄いことかもしれない。

 ちなみに、『マジレンジャー』では、基本メンバーに銃と剣(ロッド)両方を持っている者がいないという変わった武器構成になっている。
 マジスティックの基本形態は、魔法の杖と手斧的な使われ方しかしておらず、剣形状の武器はレッドが使うマジスティックソードだけだし、銃(飛び道具)はイエローのマジスティックボーガンだけだ。
 マジシャインにしても、後にデュエルボンドで使った剣をマジシャインの姿で使ったことはあるが、この剣が商品化されなかったことからも分かるように、基本的に武器はマジランプバスターだけだ。
 この武器構成は、非常に珍しい。
 『バトルフィーバー』〜『ゴーグルファイブ』といった初期の戦隊はともかくとして、『ダイナマン』以降では殺陣の一環として飛び道具を使うことが多くなっているため、最も一般的な飛び道具である銃は、必須武器となってきた。
 また、銃から剣への変形・合体ギミックは、作品ごとに工夫を凝らして発展してきた歴史があり、なりきり系玩具の中核を担うアイテムでもある。
 それ故、『ダイナマン』以降で、基本武装として銃を持っていない戦隊は、『ギンガマン』や『タイムレンジャー』、『ガオレンジャー』くらいしかない。
 逆に刃が付いているかどうかはともかく、剣形状の基本武装がないのはメガレンジャー5人(ドリルセイバーを剣と見るなら4人)とデカレッドだけだ。
 これは、『マジレンジャー』が“剣と魔法の世界”を意識したからではないかと思われる。
 怪人がトロルなどファンタジー系やゲーム系を意識していることもあって、マジレンジャー側の装備も剣、斧、ボーガンと、そういった作品に登場する武器になぞらえているのだろう。
 これは、銃を持たなくても、魔法の杖であるマジスティックからの放射という形で飛び道具が使える本作ならではの武器構成とも言える。
 ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズでも鉄砲系武器は登場しないし、やはり、剣と魔法の世界では、銃というのは、絵的につまらないものがあるのだろう。
 だからこそマジランプバスターは、魔法のランプから変形というプロセスを経るのだ。
 更に、基本武装が銃であるマジシャインが、当初接近戦用武器を持っていなかった(剣を持つようになったのは登場から1クールも後)ということが、5人との戦闘パターンの違いとなっている。

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移動装備

 5人それぞれにほうきが変形するスカイホーキーがある。
 普段はほうきの形をしているが、5人が手に取るとエアバイクのような乗り物に変形する。
 変身後にしか乗らないが、ほうき自体は最初から飛行能力を持っており、21話『魔法特急で行こう』では、5人の訓練の相手としてほうきが単独で逃げ回っている。
 なお、16話『門の鍵』において、レッドがリンをスカイホーキーに乗せて飛んでいるうちに、魁がほうきにリンを乗せている状態になっているが、着地した際にはレッドとスカイホーキーに戻っているので、イメージシーンだったものと思われる。
 
 また、マジシャインは、スカーペットという空飛ぶ絨毯に乗って空を飛ぶ。
 こちらは、変身前・後を問わず乗ることができ、他者を一緒に乗せることも可能。
 
 そして何と言っても特徴的なのが、魔法特急トラベリオン・エクスプレスだ。
 普段は機関車型の魔法特急形態で異空間に停車しており、マジシャインが持つチケットを改札すると、魔法で作り出した線路の上を走り、空間を超えてどこにでもやってくる。
 異世界(マルデヨーナ世界)にも行ける万能の乗物で、かなり便利に使われている。
 ただし、インフェルシアには行けない。
 前述のとおり、『ハリー・ポッター』シリーズに登場するホグワーツ行き列車をモデルにしたのだろう。

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ロボット等

 本作では、主に各戦士が魔法で自ら巨大化変身し、そこから更に魔法で合体するという形式を取っており、メカニカルなロボはトラベリオンだけだった。

マジマジン

DXマジマジン

 5人が「我ら魔神となれ!魔法大変身!マージ・マジ・マジカ!」と唱えると、巨大な魔神:マジタウロス(グリーン)、マジフェアリー(ピンク)、マジマーメイド(ブルー)、マジガルーダ(イエロー)、マジフェニックス(レッド)といったマジマジンになる。
 サイズがそれぞれかなり違うのが特徴で、最小のマジフェアリーは、最大のマジタウロスの3分の1くらいの大きさしかない。
 画面上でも、その点は合成等で再現されており、マジフェアリーはマジタウロスの右肩の上に立っていることが多い。
 マジフェアリーがボール状に変身して、それをマジタウロス、マジマーメイドがそれぞれ弾いてマジガルーダが一旦キャッチし、魔法力を注入して放り投げたところをマジフェニックスがキックするマジンシュートが必殺技。
 28話『永遠に…』では、マジガルーダが参戦していない分、トラベリオンが魔法力を注入して放り投げている。

マジドラゴン

DXマジドラゴン

 マジタウロス(胴体部・脚部)、マジフェアリー(頭部)、マジガルーダ(首・背面部・翼)、マジマーメイド(尻尾)の4体が「我ら伝説の竜となれ!魔竜合体!マージ・ジルマ・ジンガ!」と唱えると、合体して伝説の竜:マジドラゴンになる。
 口から、火球や、3方に分かれる火炎を吐く。
 背中にマジフェニックスが跨り、ドラゴンランサー(フェニックスソードにマーメイドスピアを合体させた形状:本編中で武器合体の旨の説明はない)を使って戦うほか、ドラゴンが口から吐いた火球をフェニックスが蹴るマジカルドラゴンシュートが必殺技。
 なお、この形態時には、4人の意識はほとんど消えた状態になっている。

マジキング

DXマジキング

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 マジマジン5体が「我ら魔神の王となれ!魔神合体!マージ・ジルマ・マジ・ジンガ!」と唱えると、合体してマジキングになる。
 マジタウロスがボディの基本となり、脛部前・側面にマジマーメイド、翼部としてマジガルーダが合体し、マジフェニックスとマジフェアリーが胸部に合体する。
 合体完了時には、「マジキング、ナンバー1」という言葉と共に、帽子のつばのような頭部を指で押し上げる。
 巨大な翼は、普段は折り畳んでおり、飛翔や大きな魔法を使う際に広げる。
 コクピットと言えるか微妙ではあるが、5人の意識は、チェス盤のような空間に、下半身が駒のようになったマジレンジャーの姿で存在し、盤の上を移動することも可能で、その時々に応じて、並び順が変わる。
 この状態では、新たな呪文はマジスティックに降臨する。
 必殺呪文を使う際には、「マジカル・クライマックス!」と叫んで、この駒のような下半身の上部に右手をかざし、その際、駒上面の魔法陣が輝く。
 
 武器は「ジー・マジ・ジジル」の呪文で出現するキングカリバーで、各マジマジンの武器を合体させた形状をしている(ドラゴンランサー同様、本編中で武器合体の旨の説明はない)。
 周囲の地面に魔法陣を描いて、大小様々なキングカリバーを多数出現させて敵に向けて飛ばすファントムイリュージョンが得意技で、必殺技はキングカリバー魔法斬り。
 「マージ・ジルマ・マジ・マジカ」の呪文で、空高く舞い上がり、5人の天空聖者が作った魔法陣をくぐって強化する天空魔法斬りのほか、「マージ・ジルマ・ジー・ジンガ」の呪文で、母深雪の氷のエレメントの魔法力を加えての魔法家族斬りといった強化技もある。

ウルカイザー

DXウルカイザー

▲ DXウルカイザー レビューは画像をクリック

 魔導騎士ウルザードが、マジキングに一度倒されることによって得た力で合体できるようになった闇の覇王。
 元々ウルザードは、「ウーザ・ウル・ウガロ」の呪文で巨大化し、「ウーザ・ドーザ・ザンガ」の呪文で魔導馬バリキオンと魔導合体してウルケンタウロスになることができた。
 ウルケンタウロスの武器は、バリキオンの頭部と尻尾が合体したバリランサー
 そして、「ウーザ・ドーザ・ウル・ザンガ」の呪文でバリキオンと魔神合体してウルカイザーになる。
 ウルカイザーの武器は、バリキオンのたてがみと尻尾が合体したバリジャベリン
 そして、必殺技は、「ウーザ・ドーザ・ウル・ウガロ」の呪文で発動するバリジャベリン暗黒魔導斬り
 
 後に、呪縛転生を破ったブレイジェルが、ン・マの魂を体内に封印したことでウルザードの姿となり、二極神に苦戦するマジレジェンドを救うために現れた。
 この際は、最初からウルケンタウロス形態で現れ、「ゴール・ルーマ・ゴル・ゴンガ」の呪文でウルカイザー形態に合体している。
 ただし、いずれも名乗っていないので、この名前でいいのかは不明。
 正義のウルカイザーは、天空魔槍斬りを使用した。

ファイヤーカイザー

DXファイヤーカイザー。レビューはDXウルカイザーを参照。

 ブランケンの呪いの矢が刺さったバリキオンを魁が救った縁で、マジフェニックスとバリキオンが友情合体した姿。
 バリキオンが展開したボディ中央部にマジフェニックスが合体して完成する。
 「ジルマ・マージ・マジ・ジンガ!」の呪文で合体し、合体後に「友情合体!ファイヤーカイザー!」と叫ぶ。
 ウルケンタウロスのものと同じ形状のバリランサーが武器で、バリランサーの両端から炎を吹き上げながら(撮影時は実際に燃やしている)、敵を攻撃する。
 必殺技は、後頭部の飾りを炎と変えて鏡獅子のように振り回すファイヤースピンブレード

魔法鉄神トラベリオン

 魔法特急トラベリオン・エクスプレスが「魔法変形!ゴー・ゴー・ゴルディーロ!」の呪文で変形開始し、「連結完了!魔法鉄神トラベリオン!」で完成する。
 操縦自体は誰でもできるようで、スモーキーやナイ&メアも操縦したことがある。
 武器は、頭部から発射するスチームバズーカと、両脛から発射するリモートトレイン。
 このリモートトレインは、小型の機関車のような形をしており、光のレールを発生させながら敵の周りを飛び回り、実体化したレールで敵を縛るためのもので、攻撃力はないようだ。
 また、両拳での高速連打:ピストンパンチや、スモーキー操縦の際のネコキックなど、肉弾技も使える。
 必殺技は、胸部の機関車先端部を開いて燃焼室(釜)に敵を吸い込んで焼き尽くすデストラクションファイヤー
 スモーキーが燃料であるマジコークス(魔力の石炭)を釜に放り込むシーンもあるため、なんだか説得力があるが、敵を燃料にして動いているような残酷な印象や、燃え残ったらどうするんだろう的な不安もある。
 実際のところ、冥府十神きっての堅牢を誇るドレイクさえも焼き尽くすほどの燃焼力があるが、さすがに冥府ガエルの卵を吸い続けた際には釜がいかれてしまっており、無限の燃焼力というわけではない。
 24話『先生として〜ゴル・ゴル・ゴジカ〜』以降、釜内のエネルギーを放射するデストラクションファイヤー逆噴射も使えるようになったが、この技は、トラベリオンの釜内を剥き出しにする危険な側面を持っており、33話『インフェルシアへ〜マージ・ゴル・マジカ〜』では、メーミィにその弱点を利用されて、開いた釜から全エネルギーを奪われている。

マジレジェンド

 太古の5色の魔法使いがその力を高めて姿を変えたという伝説の凄まじき魔神。
 レッドがダイヤルロッドの3「マージ・ゴル・マジュール」でマジファイヤーバードに、他の4人が4「マージ・ジルマ・ゴル・ゴゴール」でマジライオンに変身した後、「マージ・ジルマ・ゴル・ジンガジン!伝説合神!マジレジェンド!」の呪文でマジレジェンドに合体する。
 合体の際は、マジファイヤーバードが翼から発した炎で地面に火の輪を2つ作り、自らが3つ目の火の輪として待機する。
 そして、火の輪を2つくぐってきたマジライオンがマジファイヤーバードの火の輪をくぐる瞬間に触れ合って合体開始する。
 また、合体直後は、手首がマジライオンの爪のままであり、このままライオンクローとして敵を切り裂くなどの攻撃をすることが多い。
 マジファイヤーバード単体の攻撃としては、羽から炎の矢を放射することができ、マジライオンは爪で引っ掻くことができる。
 武器は、「ジー・ゴル・ジジル」の呪文でライオンの口部分に出現するスクリューカリバーで、必殺技は、翼部から発生させた炎をスクリューカリバーに集めて敵に叩きつけるファイヤートルネードと「マージ・ジルマ・ゴル・ゴジカ」の呪文で発動するスクリューカリバーメテオ斬り

セイントカイザー

 マジトピアにいる、地上界やインフェルシアに自由自在に行ける一角獣ユニゴルオンが、マジフェニックスと合体して完成する聖なる魔神。
 「マージ・マジ・ジルマ・ジンガ!」の呪文を唱え、「愛と炎が1つとなりて、聖なる魔神いざ現れん。天空合体!セイントカイザー!」と唱えながら合体する。
 この際、マジフェニックスはセイントマジフェニックスになるが、外見上は金色部分が増える以外に特に変化はない。
 必殺技は、空中高く舞い上がり、ホーンランサーを構えて急降下するユニゴルオン・フィニッシュ

 今回は、『アバレンジャー』から2作続いた“1号ロボに電気系ギミック”を廃し、1号ロボであるマジキングには、複雑な関節構成による組替合体システムを取り入れた。
 これは、『ウルトラマンネクサス』のクロムチェスターシリーズ同様、同時期に発売されていた『ムゲンバイン』シリーズの路線を狙ったものだ。
 この組替合体の最大の特徴は、パーツの取替によるバリエーションの豊富さであり、敵ロボとして発売されたウルカイザーのウルザードとマジフェニックスとが入替できるという点にあった。
 そして、そのプレイバリューを番組中で示すため、バリキオンとの友情合体によるファイヤーカイザーが存在する。
 さすがに、番組中では、マジキング側にウルザードが合体するという展開にはならなかったが、ファイヤーカイザーの存在は、作劇上でもかなりの盛り上げの種になっており、魁が何らかの理由から別行動を取り、4人が苦戦しているところに、バリキオンとマジフェニックスが駆けつけて友情合体するという展開は、要所要所で熱く描かれていた。
 
 更に、劇場版用に、バリキオンのマイナーチェンジデザインの味方キャラ:ユニゴルオンが用意され、セイントカイザーとして発売されている。
 マジキングを持っている人も持っていない人も困らないように、敢えて合体直前にマジフェニックスを変化させ、商品には変化後のセイントマジフェニックスが同梱されるという形にしたのは、気が利いていると言うべきなのだろう。
 セイントカイザーはテレビ本編にも登場し、ウルカイザーと戦うシーンもあった。

 とはいえ、組替ネタはさすがに苦しかったのか、マジシャインが持ってきた2台目ロボは、全く関係のないトラベリオンだった。
 ただ、少なくとも組替合体のテイストは残そうとしていたようで、トラベリオンの胸部パーツは、マジキングやウルカイザーの胸部に合体させることができる。
 もちろん、これは玩具用のギミックであり、本編ではそのような展開にはなっていない。
 また、ほぼ同型の車両4つがそのまま手足になるという無茶苦茶な変形パターンのため馬鹿みたいに太い手足になってしまった。

 そして、3台目ロボであるマジレジェンドでは、全く趣を変え、電動走行するマジライオンによる自動合体システムが取り入れられた。
 要するに、待機しているマジファイヤーバードの磁石パーツが、走行してきたマジライオン背面の磁石スイッチに近づくと、それによって変形が始まるという仕組みなのだが、システム上、2体合体が精一杯であり、3台目ロボの割に合体パーツが少なく変形も単純という特徴を持っている。
 この2体合体は、既にマジフェニックスとマジドラゴンといった具合に、魁と“他の4人組”という棲み分けができていたからこそとも言えるだろう。
 上で触れた“合体直後は手首がマジライオンのまま”というのも、そこまでは自動変形できない(電動ギミックはボディと脚部にしか内蔵されていない)ことを開き直って利用しているにすぎない。
 また、走行した末に磁石が近づくことで変形するシステムだから、スイッチ部分が少しでもずれると変形はしないし、逆に、別の磁石でスイッチを入れれば、実質マジライオンだけで変形できてしまう(合体後は、マジファイヤーバードは背中の飾りでしかない)という問題がある。
 しかも、電動ギミック内蔵の分、値段も5体の巨大ロボ中最高ときている。
 実は、この商品のキモは、マジレジェンドになった後、足首部分の穴に差し込んだスクリューカリバーを単体で回したり、マジレジェンドを電動歩行(タイヤ走行)させながら回したりといったギアの組み合わせの工夫にあるのだ。
 マジライオンは、走行用のギアから動力分離できる合体変形用のギアやスクリューカリバー回転用のギアを持っており、同じモーターを使用しながらそれらの切り換えが可能となっている。
 これは、電動ギミックとしては高度なのだが、残念ながら見た目が地味すぎた。
 何しろいじってみなければ分からないギミックだから、“興味を持たずに買わない”人が多かったのだ。
 いや、まあ、値段を考えると、そんなさりげない高度なギミックだけで買ってくれる人がどれくらいいるのかという根本的な問題もあるのだが。
 さらに困ったことに、スクリューカリバーの造形上の問題もあってか、スムーズに回転しないなどの問題もあったらしい。
 鷹羽自身はネット上で不満を読んだことはないが、折角買った人の中にも不満を持つ人がいたりして、口コミやネットで広まった結果販売不振に拍車が掛かった可能性もある。
 
 なお、番組序盤のプレゼントキャンペーンでは、金ピカのマジフェニックスと銀ピカのウルザードのセットがプレゼント賞品となったほか、番組終了後、大人向けリアル塗装バージョンのマジキングが発売されている。
 このマジキングは、塗装だけでなく、マジフェアリーを入れることができるマジンシュート用のボールが付属しており、同時期に発売された実物大の仮面ライダー変身ベルト同様に、拘りの大人向け商品として企画されたものと思われる。

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敵組織:地底冥府インフェルシア

首領:冥獣帝ン・マ→絶対神ン・マ

 地底冥府の最下層にいて、穴の中から目だけが見えるインフェルシアの王。
 天空聖者ブレイジェルによって封印されたため、牙や目など、身体の一部を部下に与えて武器とさせている。
 34話『勇気の絆〜ゴール・ゴル・ゴルド〜』で、ブレイジェルによって完全に封印された。
 しかし、インフェルシアには
  大いなる獣滅びる時、打ち鳴らされたる鐘、怒りと災厄の神々を呼び覚ます
という言い伝えがあり、ン・マの封印と共に冥府十神が復活することになっていた。
 同時に、冥府十神の目的はン・マを絶対神として転生させることにある。
 本来、冥府十神の1人の身体を依代として宿り、その冥府神の死と共に転生することになっており、ブレイジェルに魂を取り込まれたため転生できなくなっていたが、ダゴンらによってブレイジェルから解放された。
 46話『湖へ向かえ』で、宿主となったティターンの死と共に転生した。
 声を演じたのは、前作『デカレンジャー』でギョク・ロウを演じた浪川大輔氏

大幹部軍団:冥府十神

 二極神、三賢神、五武神からなるインフェルシアの神々。
 神々の谷に眠っており、冥獣帝の封印と同時に復活する。
 裁きの石板の啓示に従い、代表者1人を地上に送り、本人が決めたルールに従って神罰を下す作業を行う。

スレイプニル

 二極神の1人で、“インフェルシアの矛”と称される。
 ワイバーン曰く「一番頼りになる神様」。
 槍と剣が武器で、魔導馬二頭立ての戦車に乗っての高機動戦闘が得意。
 8番目の神罰執行神として戦ったが、レジェンドマジレンジャーのファイブファンタスティックエアリアルに敗れた。
 声を演じたのは、『ターボレンジャー』ズルテンの梅津秀行氏。

ドレイク

 二極神の1人で、“インフェルシアの盾”と称される。
 ワイバーン曰く「一番の乱暴者」。
 4番目に神罰執行神に選ばれ、極限まで高めた体内エネルギーで、一気に地上を滅ぼそうとした。
 龍神の鱗と呼ばれる強固な表皮を持っており、どんな攻撃にもダメージを受けない。
 また、竜形態に変身して空を飛ぶこともできる。
 首の後ろが唯一の弱点で、ここにファイヤートルネードを食らってひるんだところをデストラクションファイヤーで吸い込まれて敗れた。
 声を演じたのは、『カクレンジャー』のニンジャマン:矢尾一樹氏。

ダゴン

 三賢神の1人で、冥府十神の実質的リーダー。
 ワイバーン曰く「一番おっかない神様」。
 ン・マ転生という目的のためなら、闇の戒律を破ることも平気で、ブレイジェルをおびき出すために神罰執行神でないスレイプニルを地上に送り出すなどした。
 また、裏切者には容赦がなく、ン・マの依代となって死ぬことを拒んだティターンや、地上を滅ぼすことに反対したスフィンクスを粛正する非情な面もある。
 最期は、復活したスフィンクスの一撃を受けて死亡した。
 声を演じたのは、アニメ『ブラックジャック』のブラックジャック:大塚明夫氏。

スフィンクス

 三賢神の1人で、闇の戒律を最も重んじていた。
 ワイバーン曰く「一番賢い神様」。
 闇の戒律を軽んじるドレイクやゴーゴンに批判的で、ドレイクが勝手に出陣してマジシャイン(サンジェル)と戦った際には、ドレイクを諌めて追い返し、結果的にサンジェルを救っている。
 力の差から言って本来負けるはずがない冥府神が魔法使いに負けていることから、魔法使いの力の源“勇気”に興味を持ったものの、ン・マには逆らえず、7番目の神罰執行神として地上に現れた。
 だが、やはり地上を滅ぼすことには躊躇いを覚え、神罰執行の中止を申し出てダゴンに粛正される。
 その後、バンキュリアの不死の力を分け与えられて復活、ダゴンを倒してン・マを裏切ることとなった。
 声を演じたのは、『ブロードキャスター』ナレーションの寺瀬今日子氏。

ゴーゴン

 三賢神の1人で、ワイバーン曰く「一番ずるがしこい神様」。
 ン・マの転生には全く興味がなく、預言の書を見て、次に自分が神罰執行神に選ばれると知り、トードを利用して魁と芳香の精神を入れ替えて戦いやすくするなどした。
 3番目に神罰執行神に選ばれ、多数の蛇を放って、それに噛まれた者が全て石になるという神罰を下そうとした。
 声を演じたのは、『イノセンス』草薙素子の田中敦子氏。

イフリート

 五武神の1人で、ワイバーン曰く「身も心も一番熱い神様」。
 体内に超高温のマグマを持ち、胸部の目で睨んだものは、それがたとえ炎であっても蒸発させる。
 最初の神罰執行神で、ビルが燃え尽きると同時に、巨大な火球で世界を焼き尽くすという神罰を下そうとしたが、マジレンジャーに妨害されたため、鉄塔が燃え尽きるまでに6人を殺すというゲームを始めた。
 マジレジェンドのファイヤートルネードすら通じなかったが、鉄塔が燃え尽きてしまったためにゲームに負けた形となり、闇の戒律に従ってダゴンに粛正された。
 声を演じたのは、『デカレンジャー』ドギー・クルーガー役の稲田徹氏。

ティターン

 五武神の1人で、ワイバーン曰く「一番の力持ち」。
 五武神最強の戦闘力を持ち、ブレイジェルからン・マの魂を奪い返す際に活躍した。
 ただし、本人は至って穏やかな性格の持ち主で、バンキュリアに対して一番優しく接していたのは、実はティターンだったりする。
 6番目の神罰執行神で、強力な電撃球で地上を焼き払う神罰を下そうとしたが、芳香と心を通い合わせたことから執行を中止した。
 だが、ン・マ転生の依代に選ばれてしまったことから、「眠りの湖」の中でン・マの魂と共に永遠の眠りに就くことを決意する。
 蒔人、芳香の助けでワイバーンの追跡をかわして湖の手前まで辿り着いたものの、ダゴンに粛正された。
 冥府十神の中で唯一“光る目”を持っていない神である。
 声を演じたのは、『NARUTO』サンゴロウ役の小形満氏。

トード

 五武神の1人で、ワイバーン曰く「一番の食いしん坊」。
 体内に、他人の精神を入れ替える毒液などの様々な種類の毒を持っている。
 蛙の属性を持つため、蛇の属性のゴーゴンには逆らえない。
 5番目の神罰執行神で、上空で多数の冥府ガエルの卵を孵化させ、地上を埋め尽くすという神罰を執行しようとした。
 また、魂コレクターで、粒子化していた深雪の魂を捕らえて“茨の園”の形で所有しており、取り返されるくらいならぶち壊すという曲がったコレクター気質を見せた。
 最期は、レジェンドファミリーフィニッシュに散った。
 声を演じたのは、『ONE PIECE』いっぽんマツ役の平野正人氏。

サイクロプス

 五武神の1人で、ワイバーン曰く「一番の射撃の名手」。
 沈着冷静なスナイパーで、鏡の中の世界に潜み、あらゆる反射物を通して獲物を狙うことができる。
 2番目の神罰執行神として、全世界の人間を狙撃して消去するという神罰を下そうとしたが、途中からマジレンジャーとの“夕暮れまでに5人とも消す”というゲームの方を優先した。
 追い詰められて恐怖に怯える獲物を見るのが何より好きという困った性格の持ち主。
 激昂しても、顎を撫でると冷静に戻る。
 声を演じたのは、『機動戦士ガンダムSEED』アンドリュー・バルトフェルトの置鮎龍太郎氏。

ワイバーン

 五武神の1人で、冥府十神最速の攻撃を誇る。
 気さくで優しいように見えるが、実はプライドが高くて他人はどうでもいいタイプ。
 バンキュリアに対しても、普段は優しく接しているが、石板の啓示が降りる際には「話しかけるな!」と突き飛ばしたり、ウルザード・ファイヤーと戦おうとしているところにティターンを追えとのダゴンの命令を伝えたバンキュリアを「うるさい! ダゴンがなんだ!」と殴り飛ばしたりと、自分の都合次第でひどい扱いをしている。
 最期は、ウルザード・ファイヤーのブレイジングストーム・スラッシュを食らい、「嘘だ、こんなの信じない」と言い残して爆死した。
 声を演じたのは、『幽遊白書』の浦飯幽介や『鉄ワン探偵ロボタック』のロボタック:佐々木望氏。

大幹部:凱力大将ブランケン

 怪力自慢で、当初の地上侵攻作戦司令官だった。
 ハイゾビル3千体分の力を持っている。
 冥府門を開いて冥獣の大群を地上に送り込むべく、門の鍵を探すための地上破壊作戦を遂行した。
 元々ハイゾビルであり、力でのし上がってきたのだが、その間に体を機械化することでパワーアップを果たしているようで、半機械の怪物となっている。
 怒ったりフルパワーを発揮したりすると、頭部のシリンダー部から蒸気のようなものを噴出する。
 “ン・マの牙”である底皇剣ヘルファングが武器で、得意技はヘルファング暗黒斬り
 18話『力を合わせて』において、マジキングの魔法家族斬りに敗れたが、ヘルファングはウルザードに引き継がれ、新たなウルサーベルとなった。
 声を演じたのは、『勇者王ガオガイガー』の火麻参謀などの江川央生氏。

大幹部:魔導神官メーミィ

 マジシャインの攻撃でミイラにされた天空聖者ライジェルが、バンキュリアの手で回収され、ン・マの邪悪な力を吸収して復活した姿。
 ウルザード同様、自らの作り出す魔導陣で地上に出ることができるほか、封印されている冥獣人を復活させることもできる。
 ブランケンとは違い、ン・マの完全復活を優先させており、人間の苦しみのエネルギーを集めることでそれを果たそうとした。
 「メーザ・メル・メガロ」の呪文で巨大化できるが、そのサイズは最大でマジキングの数十倍にもなり、天空魔法斬りをも軽くあしらうほどの強さを誇る。
 身体が完全に復活していないため、長時間&激しい戦闘ができないのが弱点。
 ウルザードに対する私怨から、ン・マの代弁者の権力によってその魔法力を奪い、錬成して2個のウーザフォンを作ってナイとメアにそれぞれ与えた。
 34話『勇気の絆』において、サンジェルとのデュエルボンド(決闘)の末敗れて死んだ。
 声を演じたのは、アニメ『セーラームーン』のアルテミスの高戸靖広氏。

幹部:魔導騎士ウルザード

 正体不明の悪の魔法使いで、「全てはン・マ様のために」が口癖。
 ウルサーベルと、“ン・マの目”であるジャガンシールドが武器で、得意技は「ウル・ウガロ」の呪文で発動する暗黒魔導斬りと、ジャガンシールドの邪眼部分から狼型の破壊エネルギーを発射する「ドーザ・ウル・ザザード」の呪文。
 「ドーザ・ウル・ウガロ」の呪文で冥獣を巨大化させるほか、自身も「ウーザ・ウル・ウガロ」の呪文で巨大化する。
 「ウー・ウル・ザザレ」の呪文で魔導馬バリキオンを召還し、魔導合体してウルケンタウロスに、魔神合体してウルカイザーになるが、詳しくは上の「ロボット等」の項で述べたとおり。
 
 自身で作り出す魔導陣によって、冥府門を使うことなく地上へ行き来することができる。
 基本的に、冥獣達は、ウルザードの魔導陣を介さないと地上に出ることができないが、この魔導陣はハイゾビル20体換算の力しか通すことができないため、ブランケンのように力の大きな者は地上に出すことができない。
 18話『力を合わせて』で、レッドにウルサーベルを折られたが、ブランケンが遺したヘルファングを錬成して、新たなウルサーベルに作り替えた。
 一時期、メーミィの命令で魔法力を差し出したが、その後、レジェンドパワーを得たマジレンジャーに対抗するために取り戻した。
 
 実は、天空聖者ブレイジェルがン・マの呪縛転生によって洗脳された姿。

幹部:妖幻密使バンキュリア(ナイ・メア)

 クイーンバンパイア。
 封印の効かない特異体質で、ウルザードの魔導陣を介することなく地上に出ることができる上、マルデヨーナ世界へも自在に行き来できる。
 また、不死身で、倒されても復活し、しかもそのとき使用された武器は二度と効かなくなるという能力を持つ。
 実際、暁の結晶で一度は倒されたが、その夜にはもう復活し、結晶に対する耐性を持ってしまった。
 永遠の命を持つため、退屈を紛らわせるべく、自身の自我を2つに分けており、ナイメアという人間型の生物2体(少女態)に分離できるが、その際、能力も知能もそれぞれ半分ずつになる。
 また、主な人格はナイが持っており、メアはほとんどナイの言葉に相槌を打って語尾を繰り返すくらいしかできない。
 ナイはパンクファッション、メアはゴスロリ(ゴシックロリータ)ファッションに身を包んでいる。
 一時期、ウーザフォンを与えられたことで、ウルザードの魔法を使うことができたが、その後取り返されたので、最終回で持っていたウーザフォンがどういうものだったのかは不明。
 
 “地上と共に生きる”というスフィンクスの理念に賛同して、粛正されたスフィンクスに自らの不死の力の一部を与えて甦らせ、新たなインフェルシア建設のために尽力している。
 
 声を演じたのは『新・魔法のプリンセスミンキーモモ(新)』の(地上の)ママ役の渡辺美佐氏、ナイを演じたのはホラン千秋氏、メアを演じたのは北神朋美氏。
 北神氏は、本作放映中に『林檎アメ』という写真集を出しているが、タイトルは「メア」を逆さに「アメ」とし、ゴスロリファッションに身を包んだ写真も含まれているなど、メア役にちなんだものとなっている。

怪人:冥獣

 オーク、トロルなど、ファンタジー系モンスターの名前を持つ。
 中には、ゴーレムのような機械の冥獣である冥機や、冥菌獣モールドのような亜種もいる。
 また、同種の冥獣が複数いるというパターンもあるようだ。

怪人:冥獣人

 冥獣より知能が高く、言葉を話すことができ、戦闘能力も遥かに高い。
 特に最強の四底王と呼ばれる4人衆は、ブレイジェルをもかなり追い詰めたという。
 高度な分だけ封印の影響を強く受けており、メーミィと服従契約をし、その魔導陣によって封印を抜け出る形で出現する。
 グレムリンなど、やはりファンタジー系モンスターの名前を持つが、種族名の他に個体名を持つのが特徴。
 ニンジャやサムライといった、普通の西洋系モンスターと思っていると腰を抜かしそうな奴らもいる。

戦闘員長:冥府伍長ハイゾビル

 冥獣によって生み出される戦闘兵だが、それなりの知能を持ち、戦闘能力も一般のゾビルより高い。
 作戦の指揮を任されてゾビルや冥獣を従えることもあり、見事成功すれば出世もできる。
 ブランケンは、元々このハイゾビルであり、手柄を重ねて司令官にまでのしあがったのだ。

戦闘員:冥府兵ゾビル

 冥獣によって生み出される一般戦闘兵。
 大した知能は持っていないが、ハイゾビルの指示でコンビネーションを組んで戦うくらいはできる。

 怪人たる冥獣や冥獣人の名前もそうだが、幹部の名前も、ブランケン(フランケンシュタイン)、バンキュリア(バンパイア+ドラキュラ)、メーミィ(マミー)といった形で、モンスターの名前をもじって付けられている。
 バンキュリアの少女態“ナイとメア”にしても、悪夢(ナイトメア)というシャレだ。
 中でもシャレが利いているのがウルザードで、ウイザード(魔法使い)とウルフを引っかけているのだが、イニシャルがマジレンジャーの「M」とは逆さまの「W」なのだ。
 更に、ウルフということで狼男も引っかけている。
 つまり、初期3幹部はフランケンシュタイン、狼男、ドラキュラという最も有名なモンスター(怪物くんの召使い)のもじりというわけだ。
 冥府十神も世界各地の神様やモンスターの類の名前だ。

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巨大化

 冥獣の多くは、倒された後、ウルザードやメーミィ、ウーザフォン(バンキュリア)が作り出した魔導陣によって巨大化する。
 ただし、一部の冥獣は自力で巨大化する力を持っているし、最初から巨大な冥獣もいる。
 
 また、冥府十神は、本来が巨大な姿であり、マジレンジャーとの戦闘では、相手に合わせて小さくなっているに過ぎない。
 ある程度のダメージを食らうと、本来の大きさに戻る、つまり巨大になってしまうが、トードやワイバーン、スレイプニルのように、一撃必殺の攻撃を受けると等身大のままで死ぬ。

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真実の物語

 15年前、天空聖者ブレイジェルは、インフェルシアの地上界侵略を察知し、子供達や人間を守るため、天空大聖者マジエルの反対を押し切って、たった1人ででも戦うことを決意し、その志に賛同した天空聖者サンジェルやルナジェル、ライジェルと共にインフェルシアに乗り込んだ。
 そして、激烈な戦いの中、冥府門を内側から閉じ、ン・マを封印することに成功した。
 だが同時に、ブレイジェルは封印の直前、全霊を掛けたン・マの闇の力で、ン・マに対する絶対の忠誠心を植えつける呪縛転生の呪いを受けてしまい、全ての記憶を失い魔導騎士ウルザードとなってしまった。
 
 一方、門の鍵を自分自身の体に封印し、命に保護魔法を掛けたルナジェルは、裏切者ライジェルの攻撃を受けて記憶を失ってしまい、地上を彷徨うこととなった。
 サンジェルは、ライジェルをミイラにして洞窟に封印したものの、自分自身もライジェルの魔法で蛙にされてしまった。
 ブレイジェルの妻深雪は、5人の子供達に真実を隠し、父は冒険家で、南極探検中に死んだものと教えて育てた。
 
 その後、インフェルシアでは、バンキュリアのように封印の効果を受けず自由に動ける者もいたものの、大部分は封印によって眠りについていた。
 15年が経って、ようやくブランケンらの眠りが解け、ウルザードの魔導陣によってなんとかゾビルや冥獣を地上に送れるようになると、ン・マの直感に従い、門の鍵であるルナジェルがいると思われる場所に冥獣を送り込むことにした。
 もしそこにルナジェルがいれば、騒動に巻き込まれて怪我をして出血する可能性があり、そうすれば、バンキュリアがその匂いを追って見付けることができるのだ。
 そして、門の鍵を殺すことで、冥府門の封印を解ける。
 
 だが、そのための第1号として送り込んだ冥獣はマジマザーに倒され、更に5人のマジレンジャーが立ちはだかってきた。
 マジレンジャーと戦い始めたウルザードは、そのままウルケンタウロスとなってマジマザーと戦うが、戦いの中、一瞬ブレイジェルの自我を取り戻し、マジマザーを殺さずに封印した。
 マジマザーが殺されたと思い込んだマジレンジャーは、母の遺言に従ってインフェルシアと戦うことを誓う。

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中盤のパワーアップ

 四底王最強のズィーに敗れたマジレンジャーは、スノウジェルによって潜在能力レジェンドパワーを解放され、ズィーを倒した。
 だが、大きな潜在能力を一気に解放したことにより、5人は魔法力の制御が利かなくなり、天空聖者に生まれ変わる危機に陥ってしまう。
 ただ天空聖者になるだけならいいが、生まれ変わると、人間としての記憶を失ってしまうため、5人が兄弟であることも全て忘れてしまうのだ。
 だが、冥獣機ゴーレムに苦戦するトラベリオンを見て、それでも5人は世界を守るためにレジェンドパワーを使い、伝説の魔神:マジレジェンドになって戦う。
 勝利した5人が天空聖者に生まれ変わる寸前、その勇気に魔法が応えてサンジェルにパワー抑制の呪文が降臨した。
 サンジェルによってパワー抑制の魔法を掛けられた5人は、一定時間でレジェンドパワーが自動解除されるようになり、転生の心配なく戦えるようになった。
 
 一方、メーミィは、ウルカイザーと戦闘中のマジレジェンドに対し、強化した冥獣ハイモールドを使うが、卑怯な手段を嫌うウルザードは、ハイモールドを吸収してマジレジェンドを救ってしまった。
 次に、メーミィは、レジェンドパワーをン・マ復活のエネルギーとして利用することを考えた。
 メーミィは、封印されたままの冥獣人全てをマルデヨーナ世界に移動させた上、サンジェルとルナジェルを呼び出した。
 更に、自ら巨大化してトラベリオンと戦い、デストラクションファイヤー逆噴射のために開いた釜から、トラベリオンのエネルギーを全て吸い取ってしまう。
 そして、そのエネルギーを利用して、封印されたままの冥獣人を全て合体させた合体冥獣人キマイラを誕生させた。
 キマイラは、ウルザードとの戦闘でレジェンドパワーのタイムリミットを過ぎてしまったマジレンジャーを襲う。
 そして、ウルザードは、体勢を崩したマジレンジャーを魔導陣でインフェルシアへと連れ去った。
 変身も解けた魁達5人は、呪縛に掛かったままレジェンドパワーを奪われていく。
 自力で呪縛を解いた魁は反撃するが、ン・マの攻撃を食らいそうになる。
 だが、そのとき、吸収したハイモールドの影響で呪縛転生の呪いが解け掛かっていたため自我を取り戻したウルザードが防いだ。
 ウルザードはブレイジェルの姿に戻り、5人を連れてインフェルシアから脱出した。
 だが、完全に呪いが解けたわけではなかったブレイジェルは、再びウルザードに戻り、インフェルシアに引き戻されてしまった。
 魁は、救援に駆け付けたユニゴルオンと合体してセイントカイザーとなりキマイラを倒したが、そこにウルカイザーが現れ戦いを挑んできた。
 決着がつかないまま、等身大での戦闘に移行する2人。
 そして、「父さんの記憶が、敵として戦っただけなんて嫌だ!」という魁の涙が、再びブレイジェルの自我を取り戻した。
 魔法で呪縛を解いたブレイジェルは、復活しかけているン・マを再び封印するべく単身挑む。
 そして、「母さんは生きている」という謎の言葉を残して、ン・マと共に消えた。
 
 だが、ン・マの封印は、「怒りと災厄の神々」である冥府十神の復活をも意味していた。
 冥府十神は、地上の民に神罰を執行するべく活動を開始する。
 マジレンジャーは、更に強大な敵と戦うこととなったのだった。

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ラストへの流れ

 石板に選ばれた神罰執行神は既に3人も敗死しているのに、絶対神ン・マ転生の兆しがないことを不審に感じたダゴンは、ブレイジェルがン・マの魂を取り込んで姿を隠していることを知った。
 そこで、次なる神罰執行神であるドレイクの元へスレイプニルを増援に送り、ブレイジェル(ン・マの魂を取り込んでいるためウルザードの姿)をおびき出した。
 戦い自体はドレイクの敗北に終わったものの、バンキュリアに命じてブレイジェルに発信器代わりの鱗をつけたダゴンは、再び姿を消したブレイジェルの居場所を見つけることに成功し、ティターン、ワイバーンと共にブレイジェルの元に向かう。
 そして、ン・マの魂を取り戻し、ブレイジェルを冥府の奥底に叩き落とした。
 
 一方、深雪の囚われた茨の園の持ち主がトードであることを知ったマジレンジャーは、なんとか深雪を奪還することに成功した。
 
 復活した深雪は、夫の危機を感じ取り、精神体となってブレイジェルを探しだし、自らの魔法力を大量に与えることで復活させることに成功した。
 そのころ、芳香と蒔人は、命の尊さに目覚めたティターンに宿ったン・マの魂の転生を阻むべく、マルデヨーナ世界“永遠の樹海”にある眠りの湖に向かっていた。
 ティターンがその湖に沈めば、永遠に眠り続けることになり、ン・マも転生できなくなるからだ。
 芳香がティターンに化けて追っ手のワイバーンを引きつけ、本物のティターンは湖に向かう。
 
 一方、スフィンクスは、“闇の戒律を破ってまでもブレイジェルからン・マの魂を取り戻す”というダゴンの行動に疑問を持ち始める。
 また、魔法使い(マジレンジャー)が、本来なら圧倒的な力の差があるはずの冥府神を次々と倒しているという現実に不思議なものを感じ始めてもいた。
 そして、ティターンが裏切るに至って、人間には特別な何かがあるのではないかとの考えから、芳香らがティターンと共に逃げた後に残っていた魁ら4人を捕らえて尋問する。
 スフィンクスは、“なぜ勝てるのか?”という質問に対する魁達の“勇気の力は無限だから”という答えに一応の満足を覚え、4人を芳香達の元に送り届ける。
 
 6人揃ったマジレンジャーだが、6人でかかってもワイバーンには歯が立たなかった。
 そして、駆けつけたブレイジェル(ウルザード・ファイヤー)がワイバーンを倒したものの、ダゴンによってティターンは殺され、絶対神ン・マは転生してしまった。
 そして、ヒカルは、自分がン・マによって殺される予知映像を見てしまう。
 
 転生したン・マは、3日ほどで秘密の力が目覚めるという。
 自分の死を悟ったヒカルは、5人に死ぬところを見せまいとマジトピアに戻ることにし、周囲の気遣いで麗と1日デートすることになった。
 そして、麗から愛を告白されるが、自分の死を知っているために、それに応えることができなかった。
 そんなヒカルを深雪が諭す。
 死など怖くはない、怖いのは愛する人の愛情を失うことなのだと。
 ようやくふっ切れたヒカルは麗にプロポーズし、2人の結婚式が行われた。
 だが、そこに、ルナジェルによって、マジトピアがン・マに壊滅させられたとの報告が入った。
 ン・マの前には、マジエルも敗れてしまったという。
 地上の守りを5人と深雪に託し、ブレイジェルとサンジェルはマジトピアに向かう。
 「俺はもう父さんと互角だ」と一緒にマジトピアに行くことを申し出た魁だったが、ブレイジェルとの力試しに敗れる。
 落ち込む魁に、ブレイジェルは地上を守るよう諭し、勇気の究極を引き出す“フェイタル・ブレイド”の構えを教え、「自分だけの勇気を見付けろ」と言い残して去っていった。
 
 その頃、魁達から“勇気は無限”と聞いていたスフィンクスは、自分達にはない力「勇気」を持つ地上を消滅させることに疑問を抱き、神罰の中止を申し出るが、裏切者としてダゴンに粛正されてしまう。
 
 地上に残った魁達5人は、新たに神罰執行神としてやってきたスレイプニルを倒したものの、深雪をダゴンに連れ去られてしまった。
 更に、ブレイジェルとサンジェルを倒したン・マが地上に出現する。
 ン・マの秘密の力とは、全てを食らい尽くす能力であり、その前にはブレイジェルとサンジェルの力も及ばなかったのだ。
 ン・マは、時間さえも食らい、荒野となった未来の地球に5人を連れ去った。
 
 ン・マに魔法力を食われ、変身すら維持できなくなった5人。
 だが、蒔人達4人に励まされた魁は、フェイタル・ブレイドで「自分の勇気は、未来を自分でつかみ取る力だ」と気づく。
 そして、ン・マに一撃を与え、食われた時間を吐き出させて元の世界に戻ることができた。
 
 魁達は、身体を粒子化させて脱出していたマジエルや、バンキュリアの不死の力を分け与えられて甦ったスフィンクスの助力でン・マを追いつめる。
 そして、同じくバンキュリアの力で甦ったブレイジェルとサンジェルも加わり、魔法家族8人が揃った。
 8人は、究極の魔法「マージ・マジ・マジェンド」で、魔法力そのものをン・マにぶつける。
 その無限に放出される魔法力を食らい続けていたン・マは、魔法力を吸収しきれなくなって、満ち足りたまま滅んでいった。
 こうして、マジトピアに新たな魔法使いの伝説が生まれた。

 それから1年後。
 インフェルシアは、スフィンクスを筆頭に、新たな秩序の下で再建が進んでいた。
 そして、魁はそこで親善大使として忙しく立ち働いている。
 15年ぶりに両親が揃った小津家では、蒔人、芳香、ボクシングを再開した翼が暮らし、麗はサンジェル(ヒカル)と共にマジトピアで暮らしていた。
 そして、最後の戦いからちょうど1年目の記念日に、小津家に家族全員が集まった。

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Vシネマ 魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー

 VシネマでのVSシリーズ第11弾。
 アリエナイザー・エージェントXとなっていた冥獣人デーモンのバボンを相手にした魔法のアイテム「天空の花」争奪戦。
 恒例の両作品の悪の共闘という部分は、バボンがエージェント・アブレラの弟子という形で繋げている。
 舞台は『マジレンジャー』メーミィ編時期であり、冒頭で「10月5日」とはっきりと謳われていること、マジレジェンドとウーザフォンが登場していることなどから、31話『凄まじき魔神〜マージ・ジルマ・ゴル・ジンガジン〜』と32話『父の言葉〜マージ・ジルマ・ゴル・ゴジカ〜』の間のエピソードと断定できる。
 ここはマジレジェンドが登場した直後であり、同時にナイ&メアがウーザフォンをウルザードに取り返される直前だからであり、つまりメーミィ編最終決戦の直前ということになる。
 この時期は、『マジレンジャー』終了後に発売される都合上、レジェンド化させないわけにはいかず、かといって冥府十神編にすると、デカレンジャー側最強の戦士デカマスターをもてあましてしまうために選ばれたのだろう。
 ウルザードが敵として登場することで、デカマスターとの対決場面を剣豪同士の対決として演出でき、メインの敵バボンらに対してデカレンジャー・マジレンジャーが6人ずつという構成で戦わせることができた。
 これは、苦肉の策なのだ。
 
 ただし、それでもやはりあちこちに綻びが出てしまっているのは否めない。
 『デカレンジャー』のように、番組放送時期だけの存在でない戦隊は、VSシリーズでは非常に使いづらい。
 一般的な“番組開始頃に結成され、番組終了とともに解散する”戦隊でないと、次の戦隊と併存してしまうからだ。
 どういうことかというと、宇宙警察地球署は十数年前から地球に存在していたし、バンがファイヤースクワッドに異動して地球を去った後も地球で活動を続けているため、過去の戦士達ではなく、今現在も悪(犯罪者)と戦い続けている存在だということが明確なのだ。
 そのため、『マジレンジャー』本編では巨大な冥獣が街を破壊しても出動しないくせに今回の事件に限り首を突っ込んでくることが妙に鼻につく。
 たしかに、映画『グレートマジンガー対ゲッターロボ』の昔から、こういった娯楽番外編はそういう展開(テレビではグレートがどんなピンチでもゲッターは助けに来ないのに、映画では共闘する)になるのが常道だ。
 だが、『デカレンジャー』の場合、最終回においてバンがファイヤースクワッド用の赤いSPライセンスを使用するシーンがあるため、そもそも作中にデカレッドのスーツが登場すること自体、何らかの言い訳が必要になってしまう。
 本作では、その辺を“地球に来たから、以前の装備にした”と説明し、地球署時代のSPライセンスを使用しているが、たまたまアリエナイザーを追って地球に来ただけで、地球署に出向しているわけでもないのだから、それもまた意味不明な行動だ。
 SPライセンスは身分証を兼ねているから、ファイヤースクワッド用のSPライセンスを受け取った時点で地球署時代のライセンスは返還しているはずなのに、どうして地球に来るなり持っていたのか?
 その上、ファイヤースクワッドはチームで活動する部署だったはずなのに、単独行動してしまっているのはどうしてなのだろう。
 第一、地球におけるデカレッドの変身システムは地球署の中に用意されていなければ使えないわけで、異動してしまった(本来二度と装着しないはずの)バンが使用可能な状態のままでいるとは思えないのだが。
 『マジレンジャー』側では、バボンがアブレラの生前、つまりインフェルシアの封印が解ける以前にインフェルシアを飛び出したという矛盾がある。
 また、前記のとおりウーザフォンが存在している、つまりウルザードは魔法を使えないはずなのに、ウルザードが呪文技である暗黒魔導斬りを(呪文は唱えなかったが)使っているという矛盾もある。
 このほか、魔力のない者は入れない“魔法の部屋”にデカレンジャー連中が入っていたりと、細かい突っ込みどころは満載だ。
 鷹羽的には、かなり頭の痛い作品だった。
 
 一方で、センちゃんとウメコが付き合っていて結婚を意識し始めていたり、バンとマリー(『デカレンジャー』劇場版ヒロイン)が結婚秒読みだったりと、巧く『デカレンジャー』の後日談を交えているのは好印象だ。
 これは、“家族の幸せ”をキーワードにしているためで、ほかにも異星人の親子を守れずエージェントXに殺されたバンの悔しさ、親に対するジャスミンのわだかまりなどを上手に絡めている。
 
 総じて、鷹羽が拒否反応を示した部分は本編中の情報と齟齬する描写が原因になっているので、番外編と割り切ってその辺を飲み下せる人なら問題なく楽しめるだろう。
 バンが今更デカレッドに変身することに違和感を覚えない人には、かなりオススメな作品と言える。

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傾向と対策

 シリーズ27作目(『ゴレンジャー』からは29作目)となった『マジレンジャー』は、前作『デカレンジャー』が刑事物としてやや大人向けの内容にしたせいで商品展開的に苦戦したことを受け、メインターゲットを子供とし、明快な作品として作られた。
 映画『ハリー・ポッター』シリーズの影響もあって、5人は黒いローブに身を包み、魔法の部屋には、違う場所や微妙に違う自分などを写す鏡、表情が変わる肖像画などがある。
 また、ほうきが変形するスカイホーキーに跨って飛ぶなど、魔法を意識しつつヒーロー物としての体裁を保っている。
 タイトルからして「マジック」と「マジ(真剣)」を掛けた『マジレンジャー』ながら「MAGIRANGER」と、普通に読んだら「マギ」となってしまうスペルになっているのも、「MAGIC」の方が重要視されていることの表れだ。
 
 また、変身後のマジレンジャー達のことを、インフェルシアの連中は基本的に「5色の魔法使い」と呼んでおり、「マジレンジャー」と呼ぶことは少ない。
 1人ずつの場合も「赤の魔法使い」などと呼び、「マジレッド」とは呼ばない。
 さすがに一般人があの姿を見て「魔法使いだ!」と言うのには無理を感じるが、インフェルシア側からの呼称が「魔法使い」で統一されているのは好感が持てる。
 
 上の変身の項でも書いたが、スーツにマントが付いているのも、魔法使いのケープを意識してのことと思われる。
 マスクのデザインラインは、ゴーグルの形をマジマジンのデザインモチーフから持ってきたストレートなものであり、大抵の人は、第一印象として『ファイブマン』や『オーレンジャー』のような間抜けなデザインだと感じるだろう。
 ボディデザインにしても、女性陣は脚部が白いものの、ほとんど全身パーソナルカラー1色で、胸から足にかけてとブーツの上端部に、黒と金のラインが入っているだけで、背面には模様は全くなく、実にシンプルなものだ。
 別パーツになっている肩当て部分とマントがなければ、相当にのっぺりした印象だろう。
 だが、動いてみると、マントがアクションの際のアクセントをつける形になっていて、このデザインがマントありきで作られたものであることに気付かされる。
 また、このスーツデザインに限らないのだが、ほとんどが「M」をデザインに取り入れているという徹底ぶりで、各マジマジンの胸部には、それぞれパーソナルカラーの「M」マークがあるし、マジキングの頭部や胸部にも「M」がある。
 マジスティックの飾り部分にも、石突きの部分にも、スティック中央にも「M」が付いている。
 マジシャインも身体各所に「M」があるし、レジェンドマジレンジャーもそうだ。
 ご丁寧に、ファイヤーカイザーの胸用に、バリキオンの尻尾の付け根部分には、「M」を作るための模様が入っている。
 これに対応して、ウルザードもまた身体各所に「W」が描かれている。

 作品としてのスタンスは若干コメディ的であり、当初は「魔法が勇気に応えた」といった台詞に違和感がつきまとったのだが、そういう番組なんだと割り切ってしまうと、非常にノレる。
 鷹羽の場合、そのきっかけとなったのが、3話『魔竜に乗れ!』での蒔人の「兄ちゃんは、畑だ〜〜〜!」であり、世間的にも、あのときの蒔人のノリが番組の色として定着したのではないかと思われる。

 肝腎の魔法は、番組独自のシステムになっている。
 「魔法降臨」というのがどんなシステムなのか、少し考察してみよう。
 一般的なイメージでは、「魔法」というのは、魔力を持つ者が呪文を唱えることで何らかの効果を発生させるものであり、「魔法使い」というのはそういった魔法を身に付けた人間のことだろう。
 細かいことを言えば、魔法を身に付けるための方法は、精霊や悪魔等と契約するとか、『ハリー・ポッター』のように学んで身に付けるなどということになる。
 「魔法降臨」システムは、“一定の勇気を示すことによって天空聖者から呪文を与えられる”というものであり、『ドラゴンクエスト』シリーズなど一般的なビデオゲーム系RPGにおける“レベルアップによる新呪文獲得”に近い部分を持っている。
 そういったRPGでは、魔法を使えるキャラクターがレベルアップすると、そのレベルに応じて一定の新呪文を覚える。
 “どういうシステムで新呪文を覚えるのか”については明らかにされていないのがほとんどのようだが、一般に、転職等によってキャラクターのクラスが変われば覚える呪文の種類も変わることからすると、少なくとも“それまで全く知らなかったものが突然身に付く”ことは間違いない。
 『マジレンジャー』では、それを“マージフォンに新しい魔法が降臨する”という形で視覚化しているわけだ。
 マージフォンを与えられた途端に、変身「マージ・マジ・マジーロ」や武器攻撃呪文イエローサンダーの「ジー・ジジル」、グリーングランドやブルースプラッシュなどのエレメント攻撃呪文「マジ・マジカ」などが使えたのは、最初からマージフォンと共に降臨していた呪文であると考えられる。
 つまり、レベル1から使える呪文というわけだ。
 ただし、「魔法降臨」システムがゲーム系の新呪文獲得と大きく違うのは、降臨するのが魔法そのものであり、呪文ではないところだ。

 どこが違うのか。

 ゲーム系では、一度覚えた呪文を使えるかどうかは、その呪文に必要なMPが残っているかどうかにかかっており、MPさえあれば使えるのが一般的だ。
 だが、『マジレンジャー』ではそうではないのだ。
 「魔法降臨」システムの場合、呪文は魔法力と直結しており、ある呪文を使うには、それ専用の魔法力が必要になっている。
 つまり、呪文を知っているだけでは、その効果は得られないのだ。
 具体例として、6話『闇の覇王〜ウーザ・ドーザ・ウル・ザンガ〜』で魔神合体の魔法力を奪われるという描写があった。
 その直後、マジフェニックスが「マージ・ジルマ・マジ・ジンガ」の呪文を唱えたにもかかわらず魔神合体できなかったし、ウルカイザーも「お前達は二度と魔神合体できない」と言っている。
 しかも、9話『炎の友情合体〜ジルマ・マージ・マジ・ジンガ〜』では、ウルザードによって魔神合体の魔法力を与えられたトロルが、マジキングのような行動・攻撃をしてきており、マジレンジャーはそのトロルから魔法力を奪い返すことによって再び魔神合体できるようになった。
 このことから、「魔法降臨」システムにおける“呪文”には、それぞれ対応する魔法力が存在していて、それを得た者は全てその恩恵に与ることができ、失った者は取り戻さない限り永遠に使えなくなることが分かる。
 一方で、術者のレベルが上がれば、各呪文ごとの魔法力も総合的に上がり、それぞれの呪文の効力も上がることになる。
 4話『魔人の王様〜マージ・ジルマ・マジ・ジンガ〜』で、石化した麗を元に戻そうとした魁の錬成魔法が、魔法力のレベルが低いために効かないという描写があったが、これは「ジルマ・マジーロ」という呪文そのものの石化解除能力が低いというのではなく、あくまで魁の魔法力が弱いから効果がないということだった。
 つまり、魁がレベルアップして「ジルマ・マジーロ」の魔法力が上がれば、石化は解けたというわけだ。
 同じ呪文でも、魔法力の大小によって効果の大きさも変わるのだ。
 逆に言うと、「魔法力が上がる」=各呪文ごとの魔法力が総合的に上がったために合計MPが増えた状態を指すということになる。

マージフォン

こういった設定は、商品である『魔法ケータイ マージフォン』と絡んだものと思われる。
 「変身」の項で書いたとおり、『魔法ケータイ マージフォン』には、1〜0の各数字に一言ずつの呪文単語を当てはめ、その組み合わせを発声させるというギミックが仕込まれている。
 後述するが、これら呪文単語にはそれぞれ意味があるので、理屈から組み合わせて呪文を作ることは可能だし、“君だけの呪文を作ろう”というキャッチコピーからも、おもちゃ側のプレイバリューとして予定されていたことが分かる。
 もちろん、本編中のマージフォンも、ボタンを押して呪文単語を組み合わせるという発想自体は共通しているわけで、もし、“魔法を学問的に学ぶ”ことによって、未だ降臨していない呪文を作ることができるとしたら、魔法が勇気に応えるより先に、呪文を勝手に使えることになってしまう。
 つまり、6話での魔法力奪取とそれに伴うマジキング合体不能は、降臨していない=彼ら自身の内に備わっていない魔法(呪文)については、ボタンを押しても発動しないのだということを示したシーンだったのだ。
 ただし、5人のうちの誰かに降臨した呪文は、エレメント属性の制約がない限り、基本的に他の4人にも降臨したのと同じ扱いになるようだ。
 「基本的に」と書いたのは、4話『魔竜に乗れ〜マージ・ジルマ・ジンガ〜』では、グリーンに降臨した魔竜合体の呪文が、一拍おいてピンク、ブルー、イエローにも降臨したという例外があるからだ。
 これは、レッドだけが使えないというちょっと特殊な呪文だったので、分かりやすくするためにイレギュラーな演出にしたのだろう。
 以下の考察は、全てこの「魔法降臨」システムの特徴を前提として行う。

 さて、先にも述べたとおり、5人の魔法は、マージフォンの1〜0の番号に応じた呪文の組み合わせからなっているわけだが、作劇上のお約束として、ほぼ毎回新たな呪文を出さなければならないため、脚本家は苦労したらしい。
 23話『禁断の魔法〜ロージ・マネージ・マジ・ママルジ〜』で登場する“時を巻き戻す禁断呪文”の「ロージ・マネージ・マジ・ママルジ」にしても、「ジルマ・マジ・マジーネ・マジーロ」を逆に並べて、「マ」で始まるように切り方を変えているだけであり、この呪文の単語達を大事にしていたことが分かる。
 
 そして、この呪文単語の意味だが、おおまかに

といった効果と思われる。
 例を挙げると、ピンクの変身呪文は「マージ・マジーロ」であり、“自分を変化させる”という意味になる。
 イエローサンダーの「ジー・ジジル」は、“エレメントパワーの出現(召還)”ということで、マジスティックをマジスティックボーガンに変形させて雷を召喚するというワザにマッチしている。
 また、「マージ・マジーロ」に魔法力強化の「マジ」を加えた「マージ・マジ・マジーロ」は、“自分を変化させて強くする”ということで、単なる形状変化の呪文の上級呪文と言えるだろう。
 同じように、マジドラゴン合体の「マージ・ジルマ・ジンガ」は“自分と他者が融合”、マジキング合体の「マージ・ジルマ・マジ・ジンガ」は“自分と他者が魔法力を高めつつ融合”となる。
 番組中では、これらの法則性に従って呪文を組み合わせた上で、それぞれの呪文の効果を作劇で生かしていかなければならないのだから、その苦労が偲ばれる。
 しかも、組み合わせは4個以内と決まっているのだ。
 そのため、ロボ合体の呪文など、マジキングの「マージ・ジルマ・マジ・ジンガ」に対し、

という具合に、一部の順番を入れ替えただけで、ややこしいったらない。
 
 また、組み合わせの限界なのか、同じ呪文で複数の効果を発揮するものもある。
 マジマザーが使った「ジルマ・マジュナ」は、1話では冥獣トロルを凍結・破砕し、2話ではレッドとイエローを安全な場所にテレポートさせた。
 この呪文は、意味としては“他者を消滅させる”であり、どちらの場合も、“他者をその場から消す”という意味合いでは一致するものの、一方は死亡、一方は移動と、その効果は大きく異なる。
 これが同じ呪文でも術者の意志によって効果が変えられるのか、呪文は同じだが、その源となる魔法力は異なるのかは説明されていない。
 鷹羽は、これについては、後者だと思っている。
 なにしろ、降臨した呪文は、使ってみるまでどういう効果か分からないからだ。
 効果が分からない呪文をとりあえず唱えるなら、そこに“効果を変えるための意志”が介在する余地はない。
 その好例が「武器」の項で触れた「ジー・ジー・ジジル」だろう。
 「ジー・ジー・ジジル」は、8話『君こそヒロイン〜マジュナ・マジュナ〜』ではボンボン、14話『燃えろパンチ〜ジー・ジー・ジジル〜』や15話『花嫁の兄〜ジルマ・マジ・マジュナ〜』ではマジパンチと、効果が違っている。
 また、ピンクは8話でボンボン、15話でマジパンチを使っているから、エレメントの属性による違いでもない。
 しかも、「ジー・ジー・ジジル」の呪文は、8話ではピンクとブルーに、15話では翼(イエロー)に降臨している。
 その上、18話『力をあわせて〜マージ・ジルマ・ジー・ジンガ〜』では、降臨を受けていないレッドも使用しているので、1人ずつ降臨しないと使えない呪文とも言えない。
 何よりも、翼は、8話でピンクとブルーがボンボンを出しているのを見ているわけだから、呪文の降臨を受けたときに「なんでボンボンの呪文が!?」と思わなければおかしいのに、とりあえず使っている。
 ここで“別の武器が出るはずだ”と確信していたと思えるような演出でもなかったのだから、新たに降臨した呪文は、新しい効果を生む呪文であると認識していたと考えるべきだろう。
 そう考えると、「ジルマ・マジュナ」にしても、同じスペルの呪文が二度降臨していたと考えてもおかしくはないだろう。
 もっとも、8、15話は横手氏、14、18話は荒川稔久氏と脚本家が違うので、真実は脚本家同士のすりあわせがうまくいっていなかったということなのかもしれないが。

 そして、これが結構大きな問題なのだが、似たような呪文が次々と増えるため、二度と使われない呪文というのもいくつか出てしまっている。
 これはある程度仕方のないことなのだが、例えばマジキングの技で最強クラスの威力を持つ「魔法家族斬り」は二度と使われなかったし、マジレジェンドの「スクリューカリバーメテオ斬り」も、1回しか使われなかった。
 本来、一度降臨した呪文は、基本的にいつでも使えるものとして扱われているはずなのだ。
 こういった呪文の使い捨ては、特に大きな呪文で起きているようにも感じられるので、例えば“いつでも使えるわけではない”といった部分を出しておければ良かったのではないかと思える。
 特に難しい話ではなく、ある程度のテンションがないと使えないレベルの魔法だということを、どこかで語るなり、“使おうとしたけど使えなかった”という描写を1回入れてくれればいいのだ。
 “魔法力が足りないと通じない”というのは4話『魔人の王様〜マージ・ジルマ・マジ・ジンガ〜』で、石化した麗を元に戻そうとした時に、“強い想いがないと通じない”とかというのは、8話『炎の友情合体〜ジルマ・マージ・マジ・ジンガ〜』で、バリキオンに刺さった毒矢を抜いた時に、それぞれ見せてくれている。
 だが、あれはあくまで他者の魔力に対抗するために強い力が必要なのであって、技の発動というのとは、意味が違う。
 そういう部分を見せてくれていれば、“なんで使わないの?”などという野暮な疑問は持たないで済んだのだ。

 ところがその一方で、呪文はよく考えて作られている面も大きい。
 天空聖者系統の呪文は、「マ」→「ゴ」、「ジ」→「ル」という具合にちょっと変えているだけで、方向性自体は5人のものと同じような作りになっている。
 ちょっと見てみると、5人の変身は「マージ・マジ・マジーロ」、シャインの変身は「ゴール・ゴル・ゴルディーロ」と、「ディ」が増えているだけだ。
 マジグリーンのマッスルボディ呪文「マジ・マージ」も、レジェンド化による強化で「ゴル・マージ」となっている。
 マジキングがキングカリバーを出現させるのは「ジー・マジ・ジジル」、マジレジェンドがスクリューカリバーを出現させるのは「ジー・ゴル・ジジル」と、ちゃんと上級呪文になっていく。
 
 また、ウルザードの呪文にしても、ウーザフォンのボタン配置を見るとほぼマジレンジャー側の呪文と同様の組み合わせになっているのが分かる。
 また、ブレイジェルとしての記憶を取り戻した後である42話『対決!二極神』で、ウルカイザーに合体した際の呪文は「ゴール・ルーマ・ゴル・ゴンガ」と、「ウーザ・ドーザ・ウル・ザンガ」に酷似しているし、ウルザード・ファイヤーの変身は「ゴール・ゴル・ゴル・ゴルディーロ」と、超魔法変身同様、中間の「ゴル」が1回増えている。
 この辺は、かなり考えていたのだろうと思われる。
 
 とはいえ、この魔法のシステムは、番組的に大きな枷になっていたことは否めない。
 
 前述した呪文の使い捨てもそうだが、作劇上の都合から、23話では、書物を読むだけで禁断の呪文を使えるようになっている。
 これは、要するに呪文を勉強すれば使えるようになるということで、呪文降臨のシステムそのものの根幹を否定するような演出だったのだ。
 もちろん、「マジュナ・マジュナ」のように、使えることを知らないだけで、元々使える呪文というのもある。
 33話『インフェルシアへ〜マージ・ゴル・マジカ〜』で、魁がブレイジングストームの呪文をいきなり使えたのは、父と同じ火系のエレメントの魔法使いであるため、潜在能力として秘めていたと考えられる。
 同様に、30話『伝説の力〜マージ・マジ・マジ・マジーロ〜』で潜在能力を解放してもらったことで、超魔法変身の呪文「マージ・マジ・マジ・マジーロ」を使えたことも説明できる。
 だが、いくらなんでも元々禁断の呪文を使えるということはないだろう。
 しかも、ヒカルは呪文を使わせないように本を鎖で縛っているわけで、“本さえ読めば使えるようになる”と思っていることが明白だ。
 このように、なまじ独自のシステムを採っているために、普通ならちっとも不思議でない行動が演出のアラになってしまうという危険性を内包させてしまったのだ。
 また、14話のように、魁が勇気を示したのに翼に呪文が降臨したり、レジェンドパワー抑制の呪文が“勇気を示していない”ヒカルに降臨したりといった矛盾も生じている。
 もし、呪文降臨の全てを司る天空聖者(例えばマジエル)の胸先三寸でどのような呪文を誰に降臨させるかを決められるのだとしたら、そもそも“勇気を示す”という行為そのものが無意味ということになってしまうのだ。
 
 こういった呪文降臨システムの問題が表面化したのは、特にマジシャイン登場以降だ。
 マジシャインの変身アイテムのグリップフォンは、トラベリオン・エクスプレスに合わせて“改札用のはさみ”となっている。
 これは、企画開発した人間の正気を疑いたくなるような代物だった。
 第一に、天空聖者のくせに、カードとアイテムを使わないと、変身やトラベリオン・エクスプレス召還はまだしも記憶喚起の呪文さえ使えないのだ。
 しかも、メカであるトラベリオンの必殺技が呪文降臨によって増える。
 天空聖者って何? という気にさせられる。
 商品としてのグリップフォンのギミックも問題だ。
 なにしろ、「M」のボタンを押して変身待機音がなるのと、付属のカードに穴を開けるギミックこそ画面どおりだが、あとは「パリーン!」だの「カンカンカンカン!」だの「ニャー!」だの音がするだけで、肝心の呪文が出てこない。
 その上、穴が開いたカードは要するにキズモノであり、遊ぶたびに新しいカードを用意する必要がある。
 そのせいか、商品には、「観賞用」と銘打ったきれいなカードが3種1枚ずつと、穴開け用の2色刷のカードが12枚入っている。
 たった12枚。
 真面目に使えば、12回遊んで終了。
 何カ所も穴を空けて遊ぶにしても、1枚20回も使ったらもう穴だらけになってしまう。
 買い足し用として、カードダスとの商品連携を狙ったのだろうが、これは穿ちすぎだった。
 第一、カードダスでは、マジシャインの呪文と関係ないカードの方が多いだろう。
 もう1つおまけに、今時の子供は、切符にはさみを入れるタイプの改札なんか見たことないんじゃないだろうか。
 以前、漫画『キン肉マンII世』でやっていたネタだが、今は人手による改札と言えば、切符にスタンプを押すのが一般的で、はさみで切符に傷を付けるなどという光景は、むしろ違和感すらあるのではないかと思う。
 切符に穴が開くのは、自動改札くらいだろう。
 後にトラベリオンとセットでトイザらス限定発売されたゴールドグリップフォンではヒカルの声が出るようになったところをみると、やはりそういう要請はあったのではないだろうか。
 
 もっとも、このゴールドグリップフォンにしても、音声があまり明瞭でないせいか、ヒカルの声に聞こえないという問題点がある。
 しかも、「M」ボタンを押すだけで「ゴール・ゴル・ゴルディーロ」と言ってしまう機能があるせいで、わざわざ「106」と入力する意味に乏しい。
 もちろん、番号の組み合わせによって、ほかの「ゴー・ゴー・ゴルディーロ」などが発声されるわけだから、無意味ということはないのだが。
 まぁ、考えてみれば、本編では、ヒカルは変身時の「M」ボタン以外は、グリップのボタンを押す動作をまるでやっていないのだから、どっちにしても本編中のギミックは再現されていないわけだ。

ウーザフォン

 逆に、ギミック的にはよかったのに、本編中での活躍が少なかったせいでコケたのがウーザフォンだ。
 一見マージフォンのリペイントのように見えるが、ボディ表面部の「M」のレリーフが「W」に変更されていたり、ボタン部分のマーキングが変わっていたりと、細かいところは新造されており、声も呪文もウルザードのものを使っているし、さりげに着信音も違うなど、完全に別物になっている。
 また、本編でも、バンキュリア(ナイ&メア)が結構便利に使っていた。
 特に、初登場の26話『信じろよ!』では、バンキュリアが、倒された冥獣を右手のウーザフォンで復活させ、左手のウーザフォンで巨大化させるなど、2つあることを巧く利用している。
 商品的にも、実はマージフォンより優れている。
 というのも、メイン商品であるマージフォンは、番組開始ころには既に生産体制に入っているわけで、今後、どういった呪文が登場するか分からない状態で音声が録音されているからだ。
 システム上、各ボタンに対応する細切れの呪文を連続再生する形になるわけだが、本編中では、呪文の何番目に発音されるかで、微妙にイントネーションが変わる。
 同じ「マジ」でも、「マージ・マジ・マジーロ」の時と、「マジ・マジ・マジ・マジカ」の時ではそれぞれ違うのだが、商品ではそういった違いについては再現できない。
 だから、変身・合体など、最初から予定されていた呪文について不自然にならないように録音された「マジ」は、別の呪文の時には違和感を与えるものになってしまう。
 実際、前述の「マジ・マジ・マジ・マジカ」は、イントネーションや空白のせいで、「マジ? マジ? マジ? マジカ!?」と聞こえてしまう。
 また、特定の呪文については特殊な効果音が鳴るようになっているが、魔法変身、魔法大変身、魔竜合体、魔神合体、武器変形など、序盤4話くらいで登場した呪文しかなく、ファイヤーカイザー合体の「ジルマ・マージ・マジ・ジンガ」(9話初登場)では、合体音は鳴ってくれない。
 
 その点ウーザフォンは、ウルザードの呪文がある程度出揃った時期に制作されたため、かなりの数の呪文について違和感が生じないように録音できた。
 それでもイントネーションは完全ではないが、マージフォンの呪文と聞き比べると、段違いに自然な呪文が詠唱されることに気付く。
 更に、バリキオン召還の際の「ヒヒーン!」や、攻撃呪文「ドーザ・ウル・ザザード」の「ワオーン!」など、効果音もバラエティに富んでいる。
 
 だが、根本的に“どうしてウルザードの呪文がケータイで詠唱できるのか”という部分がネックとなってしまった。
 メーミィが、反抗的なウルザードに対する意地悪として、“ウルザードから取り上げた魔法力で作った”という実に自然な設定が、逆に災いしたのだ。
 魔導騎士が魔法を使えなくなれば、それは単なる剣士であり、実質戦闘能力は半減以下だ。
 言うまでもなく、この当時、ウルザードは5人にとって“母の仇”という扱いなわけで、戦闘能力を激減させたまま放置して、まるっきり5人と戦わせないというわけにはいかないから、さっさと魔法力を返してやらなければならなかったのだ。
 しかも、システム上、巨大化やバリキオン召還、合体、魔導斬りなど、ウルザード本人に作用する遊んで楽しそうな呪文は、バンキュリアは使えない。
 逆に言うと、画面で使えるのは、攻撃呪文「ドーザ・ウル・ザザード」や冥獣復活・巨大化の呪文くらいだった。
 そのため、ウーザフォンは登場からわずか7話で姿を消すことになり、画面上で活躍の場を与えられたのはたったの4回と、妙に影の薄いアイテムとして、大量に売れ残ることになった。
 最終回ラストで、ナイ&メアが使っていたのがどういう経緯で作られたものかは分からないが、あの時期にあの程度画面に出たからといって、販促効果は得られなかったことだろう。
 まぁ、そんなものを大量に作るメーカーも悪いと言えなくもないのだが、“ウルザード版マージフォン”という発想自体は個人的にとても気に入っていたので、実に残念だった。
 
 なお、28話『永遠に…〜ジルマ・マジ・マジ・マジーネ〜』30話『伝説の力〜マージ・マジ・マジ・マジーロ〜』では、魔導陣なしには地上に出てこられず、しかも魔法力を失っているウルザードが自力で地上に出てくるという矛盾が生じている。
 これを無理なく解釈するには、ウルザードはメーミィに魔法力を差し出す時、あらかじめある程度の魔法力を残しておいたとするしかない。
 ン・マの名の下に要求されたのに、どうして中途半端なことをしたのかという疑問もありうるが、一応それは説明できる。
 この作品世界では、前述のように、一定の呪文専用の魔法力というものがある。
 ウルザード自身が地上に出入りするための魔導陣を作る呪文は冥獣用の魔導陣とは別の専用のものだから、敢えてそれを差し出す必要はないと考え、やがて自分が魔法力を返してもらった時のために再錬成する力ともども残していたとしても、あながちン・マに逆らったということにはならないだろうからだ。
 だが、やはり全ての魔法力を差し出していないというのは、何となく潔さに欠けているような気がして残念だ。

 さて、マジシャインの登場により、問題が生まれ始めた魔法降臨のシステムだが、いよいよ深刻化したのは、レジェンド化に伴って登場したダイヤルロッドに呪文が降臨するようになったところからだ。
 ダイヤルロッドには、1〜5のダイヤルがあり、ダイヤル式電話機のように回すことでスイッチが入り、発声する。
 そして、システム上、1〜5のダイヤルの組み合わせによる呪文発声はできなかったようで、1つのダイヤルにつき1つずつの、合計5種類しか発声できないことになってしまった。
 もったいないことに、“マジレジェンドへの合体”という本編では、ダイヤルロッドを使用しない呪文を番号5に割り当てて無駄にしている。
 せめてスクリューカリバーによる必殺技ファイヤートルネード用の呪文を5に割り当てればよかったと思うのだが。
 しかも、ダイヤルロッドは要するにであり、一見して武器と思えるような形状ではないから、ごっこ遊びをする子供にとっても、あまり欲しくなるようなものではなかったようだ。
 
 その上、やはりというか、せっかく5人がパワーアップしたからには、降臨する呪文もパワーアップすることになり、天空聖者的な「ゴ」という音が入って、マージフォンでは再現できなくなってしまった。
 かといって、ダイヤルロッドの音声5つは、既に使い切っている。
 こうして、再現不能な新しい呪文が次々降臨する中、玩具で再現不能なダイヤルロッドボーガンまで登場し、ますます商品展開と乖離することになってしまった。
 しかも、44話『母さんの匂い〜ジルマ・ジルマ・ゴンガ〜』では、演出の都合上、素顔の5人が魔法を使う形にしたためダイヤルロッドが使えず、マージフォンで「ジルマ・ジルマ・ゴンガ」という呪文を使っている。
 これは当然、玩具のマージフォンでは再現不可能であり、画面をよく見ると、呪文が降臨した際、通常は入力するボタンが順番に光るところなのに、全ての数字が光っている。
 クリスマス商戦前に限定発売されたシルバーマージフォンも、音声等は通常のものと全く同じであり、本編登場も1月8日と遅いため、宣伝効果は薄かったようだ。
 
 年末年始の商戦が終わったのを受けて、年明け後の本編は、商品化されなかった赤いウーザフォン(当然、ボタンを押すシーンは全く存在しない)が登場したり、呪文が降臨しないまま新しい呪文を使用したりといったことも当たり前のように行われるようになった。

 とはいえ、これは重箱の隅突きに類するもので、そこまで細かいことを言わなければ、非常にまとまった番組だったと言える。
 
 この理由としては、

  1. 初期設定の徹底
  2. 明確に性格付けられた正義側キャラクターの牽引力を生かした作劇
  3. 共感できる宿敵との一騎打ち

といったファクターが挙げられる。

 まず1についてだが、本作の場合は、“家族の絆”と“勇気”の2つがそれに当たり、これは最終回まで貫かれた。
 スーパー戦隊シリーズにおいて、番組当初の方向性が最後まで貫かれた作品は、結構少ない。
 1年という長丁場で、軌道修正を重ねながらよりよい作劇を模索するためだ。
 例えば『ダイレンジャー』は、「気力」という神秘の力と、独自の拳法を使うことを前面に押し出した作品であり、当初は敵であるゴーマ怪人が操る拳法との戦いも描かれていた。
 ダイレンジャーのスーツデザインも拳法着をイメージしているのだが、ゴーマ怪人側の拳法に変化を付けにくかったのか、さっさと拳法対決は忘れられ、気力と妖力の戦いだけがクローズアップされるようになった。
 以後、拳法は、リュウレンジャー:亮と魔拳士ジンのライバル関係でだけ描かれる形になっていく。
 また、『ライブマン』も、“正義の青春VS野望の青春”というテーマだったが、途中でライバルの1人であるオブラーが抜け、宇宙人(実はロボット)幹部ギルドス、ブッチーが加わったことで、“かつての友”の対立関係は、レッドファルコン:勇介とDr.ケンプにだけ生かされる形になっている。
 細かいことを言えば、『バイオマン』での“バイオ対反バイオ”抗争の乱入、『ダイナマン』で「夢」が語られなくなったことなど、メインテーマがぼけてしまうことは多い。
 全ての作品がそうだとは言わないが、“6人目の戦士”や“敵の新幹部”が登場するにつけ、どうしても路線が微妙に変わってしまうのだ。
 その点、『マジレンジャー』は、“毎回新呪文が登場する”ことをウリにしていたこともあり、“溢れる勇気が魔法に変わる”作劇が年間通して変わらなかった。
 これは「勇気」というものを曖昧に描いたことが奏功している。
 単なる勇気では単調になってしまうところを、「魁を信じた勇気」などと表現することで、「勇気」という言葉を前向きな心の強さ全般を表すものにして、毎回そういう強さを身に付けて成長する形にしたわけだ。
 
 2の“正義側キャラクターの牽引力による作劇”というのは、この「勇気」なしには語れない。
 ヒーロー物の場合、敵側の悪事を描く都合上、被害者が必要になる。
 通常は、この被害者(或いはその身内)がヒーロー側の誰かと絡むことで話が進む。
 例えば、子供の訴えで計画が露見するなり、重要なアイテムを持っている人が襲われているのを助けるといった形だ。
 特に、メイン視聴者が低年齢層であるスーパー戦隊シリーズでは、ここで子供が絡むことが多い。
 子供のゲストキャラには、低年齢視聴者が感情移入しやすいからだ。
 ところが一方で、そういう作劇は単調になりやすく、大きなお友達には嫌われることが多い。
 その点、『マジレンジャー』は、ゲストが物語に絡むことが異様に少ない。
 基本的に、インフェルシアの作戦が不特定多数を一気に襲うものばかりで、○○の秘宝や新発明を狙わず、しかも魔法110番という自動通報システムと冥獣反応キャッチシステムにより、ゲストを絡ませることなく事件を察知できるからだ。
 魔法110番第1号として助けを求めてきた少女は、被害者として描かれてはいるが、5人と顔を合わせない。
 ただ、コカトリスに石化されていた父が助かって帰宅する姿を、5人が陰から見ているだけだ。
 5人に直接絡む被害者の中での最年少ゲストは、23話『禁断の魔法』に登場する幸太だ。
 年齢は本編中には出てこないが、役者本人が中3なのだから、少なくとも設定上も中学生以上だろう。
 小学生以下の名前付きゲスト(orレギュラー)が主人公達に絡まない作品は、シリーズ唯一のはずだ。
 これは、マジレンジャーの5人が、家族の絆に支えられて苦難を乗り越え、勇気を示すという作劇フォーマットによる。
 苦難に立ち向かうその回の主人公を、他の兄弟達が取り囲んでいく図式の中では、ゲストを絡める時間的余裕はないのだ。
 その分、兄弟のキャラクターは立っており、「寛容の色」などの明確な役割を割り当てているにもかかわらず、前作『デカレンジャー』と違って“役割に沿った個性”に陥らなかった。
 冷静な翼が魁とはくだらない諍いをしたりするような自分がメインでないときの個性発揮が多かったせいだろう。
 これもまた、兄弟同士でのやりとりを主軸に物語が組み立てられているが故だ。
 作劇的には、インフェルシアの作戦はそのテーマから逆算して作られていくわけで、兄弟の絆を強調するために他者が絡みにくくなってしまうのだ。
 16話『門の鍵〜ウザーラ・ウガロ』でリンが登場するまで、インフェルシアの作戦が妙にとりとめなく、“何のためにこんなことをしているのか”分からなかったのは、そういう事情があってのことだ。
 鷹羽は、「ン・マの勘で門の鍵が云々」という説明は、それを誤魔化すための方便だったと考えている。
 
 もう1つ、魔法使いの正体は秘密という設定により、変身前後でゲストと絡ませられないという事情もある。
 これは、5話『恋をしようよ〜マージ・マジーロ〜』での山崎さんと魁のラブコメのために導入された設定と思われる。
 なにしろ、3話では、麗が何の必然性もなく子供の前で変身を解いているくらいだ。
 一旦出してしまった設定だから、その後それを巧く生かしたということなのだろう。
 ちなみに山崎さんは、元々この5話だけの登場予定だったのが、セミレギュラーに昇格し、劇場版ヒロインにまで昇りつめたというキャラだ。
 
 一般に、子供ゲストを絡めない作品の場合は、主人公の成長を描く形にして、主人公への感情移入を強くするわけだが、『マジレンジャー』は正に“勇気を次々と手に入れていく成長物語”だったわけで、感情移入の対象はマジレンジャー5人ということになる。
 1話と最終話を並べてみると、「魁が“本当の勇気”を知ってから“自分だけの勇気”を手にするまでの物語」だったと要約でき、相当に狙って作っていることが窺われる。
 この点、登場当初レベルの違う強さだったマジシャインが、5人とは別行動を取ることが多かったこともプラスに作用している。
 成長物語である以上、ある程度成長しきってしまっているマジシャインが加わればバランスを崩すのが普通だが、あくまで先生として一歩引き、5人が試練を乗り越えるまでの間、1人でその場を受け持つなどの裏方に徹したため、終盤に至るまで、増加メンバーにありがちな弱体化がなかった。
 中盤で、5人がレジェンドパワーを身に付けたことで力は追い抜かれた感もあるが、それでもメーミィを決闘の末倒したりと、ある程度のアドバンテージを維持し続けたのは、驚異と言っていいだろう。
 一部では、かなり弱体化したと言われていたらしいが、彼が実力的に負けたのは“あのブレイジェルさえ追い詰めた”ズィーが初めてで、後は、翼のことが気になって身が入らなかったウルザード戦や、レジェンド5人組さえ敵わない神様連中相手の場合だけだ。

 そして、3つめの“共感できる宿敵との一騎打ち”だが、これは言わずと知れたウルザードとレッドのライバル関係だ。
 レッドとウルザードは、共に剣を主武器としており、ヒーロー物としては久々になる“剣同士の丁々発止”を見せてくれた。
 最近のヒーロー物では、敵味方双方が剣を持っての一騎打ちというのは滅多に見られなかった。
 これは、ウルザードのデザインによる部分も大きいだろう。
 ウルザードのスーツは、割と動きやすいメタルヒーロー的なものだったので、剣を振り回すのが絵になった。
 また、マジレッドの装備に銃がないため、必然的に肉弾戦が主流になるという面もあった。
 ウルザードが、接近戦ではジャガンシールドからの魔法攻撃をほとんど使わず、むしろシールドそのもので突きとばす使い方をしていたことも、敢えて肉弾戦を描こうとするスタッフの考えの現れだったのではないかと思う。
 なにしろ、普通、盾で突かれて火花を飛ばすような演出はしない。
 また、飛び道具をほとんど使わない敵に対して接近戦で迎え撃つというのも、妙にフェアなウルザードらしさとして巧く生きていた。

 もちろん、マイナス面を探せば、結構アラが多い。
 特に大きいのが、ウルザード(=ブレイジェル)関連の設定・展開だ。
 ウルザードは、何しろ母の仇にして悪の魔法使いながら正々堂々と戦う誇り高き戦士で、死んだはずの父という設定てんこ盛りのキャラクターだ。
 そういったこともあって、ウルザード絡みの描写には矛盾が多い。
 その最たるものがン・マの封印だ。
 34話で、ブレイジェルは、15年前に果たせなかったン・マの完全なる封印に成功した。
 ところが、それは冥府十神という遙かに強力な敵を呼び覚まし、地上界を危機に陥らせる結果となってしまった。
 しかも、それは不測の事態などではなく、マジトピアに伝わる言い伝えのとおりだったのだ。
 その上、冥府十神の移動は冥府門に依存しないから、門ごと封印しても意味がない。
 神々の谷で一気に全員を相手にして勝てる自信があるというなら別だが、画面描写を見る限り、勝ち目はなさそうだ。
 まぁ、冥府十神が揃いも揃って巨大だということを知らなかったとしても、彼らが出てくる危険を考えたら、門の前で待ち構えて、門から出てくる冥獣と冥獣人の軍団を相手に戦って全滅させる方が遙かに分がいいと思うのだが。
 その上で、あえて不完全な封印によってン・マの肉体的活動だけを封じておけば、地上界も安泰だったのではなかろうか。
 実は、この辺りの設定は、36話『神罰執行』で、ヒカルが5人に「人間は冥府十神と戦ってはいけない」という伝説を語るためだけに必要だったと思われる。
 これが、例えば“古代のインフェルシアの神々”という扱いで、既に滅びていたはずの存在だったならば、突然の復活に戸惑うだろうし、ブレイジェルもまさかン・マを封印することで復活するとは思わなかったということになるだろう。
 ただ、こうすると、かつて何らかの力で滅ぼされたことになるわけで、“戦ってはいけない”禁忌が弱くなってしまう。
 決して“戦ってはいけない”理由がなくなるわけではないのだが、“強大な敵”という印象を薄めてしまうので、避けたとみるべきだろう。
 
 その後も、ン・マの魂を取り込んだことでウルザードの姿になったのはいいが、超天空変身すると、なぜか赤いウルザード(ウルザード・ファイヤー)になるなど、“アクションしやすい着ぐるみ”“おなじみの姿”を使い続けようという行動にも違和感はある。
 個人的には、とても好きだが。

 また、35話『神々の谷』で明かされた母の生存にも、かなりの無茶がある。
 一応、18話で魔法家族斬りの後、魔法の部屋に深雪が現れたときには、マンドラには見えなかった(あらかじめ残した幻影の類ではない)という描写があったわけで、それ自体は結構うまい手だと思う。
 だが、2話『勇気を出して』を見る限りでは、マジマザーが巨大化した後の攻撃はウルケンタウロスに当たっているようには見えないし、マジマザーが巨大化した時点では、ウルケンタウロスは「魔法は力だ」とか言っている。
 その上、マジマザーは自分の夫の声であることに気付いていない。
 声といえば、サンジェル、ルナジェルといった弟子達も揃って師匠の声に気付いていない間抜けぶりなのだが、よりにもよって妻が気付かないというのはどうしたものか。
 ウルザードの正体隠蔽という演出上の都合なのは分かるが、後から見るとものすごく間抜けに感じてしまう。
 気がついていたのはメーミィだけのようだ。
 マジシャインとウルザードを戦わせようとした際の言葉や、ウルザードに対する態度などから考えると、恐らくン・マに教えられていたのだろう。
 それはともかくとして、そもそも、35話自体、一種の総集編のような構成なのだから、そこで“実はあのとき…”という出し遅れの証文みたいなことをやられても困ってしまう。
 母の生存は、父が母を殺したという大問題を打ち消すためには必要なことだったわけだが、ウルザードが父であるということは、当初から予定されていたはずなのだから、2話の段階で巧く描写しておいてほしかったところだ。
 第一、呪文で魔法家族斬りができるということは、その呪文を使えば、いつでも深雪が降臨できるのではないかとさえ思えるからタチが悪い。
 この辺は、前述した呪文の使い捨てとも絡んでいる。
 
 ついでに言うと、“闇の魔法使いは、勇気以外の何かを魔法力の源にしている”という話は、結局忘れ去られてしまった。
 メーミィもそうだが、闇に堕ちた魔法使いに過ぎないように見える。
 これは、なんとなく『スターウォーズ』の“フォースの暗黒面”を彷彿させる。
 「いずれお前の炎を闇の色に染めてやる」というウルザードの言葉からは、まるでダース・ベイダーがルークを暗黒面に誘っているかのようなイメージが感じられるのだ。
 折しも『エピソード3』が公開された年であり、“謎の敵の正体が父”という設定からすれば、そういう方向性でシナリオを書いたとしてもおかしくはない。
 まぁ、ウルザード自身は、赤の魔法使いが自分の息子だと感じてはいないようだが、ウルザードの正体隠蔽のこともあるので、そういう展開には持っていけなかったのだろう。
 また、深雪が殺されていなかったということを考え併せると、何らかの理由から闇に堕ちた父の方がしっくり来るが、それだと結局は“裏切者”であることに変わりないので、“呪いを掛けられていた”ということに落ち着いたようにも感じられる。
 そして、そう考えると、“闇の魔法使いは、勇気以外の何かを魔法力の源にしている”という話が忘れられてしまったことも納得できるのだ。
 メーミィのように自分の意思で闇に堕ちた者ならともかく、呪いによって闇の魔法使いにされているなら、その魔法力の源が何か語ることには意味がない。
 そして、ウルザードについて触れられない以上、メーミィについてだけあれこれ言ってみても仕方ないから、“勇気以外の何か”の説明はスルーするしかなかったのではないだろうか。
 そもそも、ウルザードの細かい設定は、当初考えられていなかったようにも見える。
 ン・マの封印と同時にインフェルシアが封印された形になっているのだから、ブレイジェルがウルザードになるとほぼ同時にインフェルシアの全ての住民が封印されたことになる。
 もちろんウルザード自身が封印されなかったという可能性もないではないが、それにしては自分も地上に出てこないというのはおかしい。
 しかも、封印前のインフェルシアにはウルザードはいなかったわけで、地上侵攻作戦が始まる時に、バンキュリアがウルザードを元々知っていたかのような態度を取っているのも妙だ。
 つまり、1話の段階では、父がウルザードになった経緯の詳しい設定はなく、正体判明をどういう形でやるかも決めていなかったということなのだろう。
 このことが尾を引いて、バリキオンがどういう存在で、最後にどうなったのかも、うやむやにせざるを得なかったのだろう。
 なにしろ、ブレイジェルは自分の馬を連れて攻め入ってはいなかったわけだから、バリキオンは元々の愛馬というわけではない。
 いつ、どのようにして知り合ったのかという部分を説明できないから、これもまた放置するしかないのだ。
 つまり、“闇の魔法使いとは何か”という部分は、ウルザードの正体隠蔽がもたらした消化不良だったということだ。

 こういう“話の都合による演出・設定描写をした後で、それと齟齬する設定を出す”ということは何度か行われている。
 例えばスモーキーは、サンジェルの所有物であるマジランプに束縛されているわけだが、26話『信じろよ!〜ジルマ・ジー・マジカ〜』で、立派な魔法猫になるために誰かの願いを叶えることを続けなければならないという設定が語られている。
 実際、初登場時には、何か代償を得ることで相手の願いを1つ叶えるという、いわゆる“魔法のランプの精”らしいことを言っている。
 ところが、願いを叶える対象はマジランプをこすった者なのに、通常マジランプはサンジェルが持っている。
 そんなものを、一体誰がこすってスモーキーを呼び出せるのかという疑問が湧く。
 こうして考えると、26話での「願いを叶える」云々は、初登場である19話『魔法のランプ』と辻褄を合わせるためにだけ付け足したようにしか思えないのだ。
 また、最終回で願いのことを覚えていたのは偉いが、結局そのことによってスモーキーがランプから離れられる日が近づいたとかいうことはなく、“そのネタ忘れてないよ”と言っているに過ぎない。
 
 同様に、5人が24話『先生として〜ゴル・ゴル・ゴジカ〜』でヒカルに与えられた指輪も、その後設定が変わっている。
 当初ヒカルは、「我が家に伝わる指輪」と言っているが、翌25話『盗まれた勇気〜ジルマ・マジ・マジーロ〜』では、「いにしえの5色の魔法使いがしていた指輪」だと言い変えている。
 一応、5色の魔法使いの指輪が、ヒカルの家に代々伝わっていたという解釈もできるが、もしそんな大切なものだとしたら、最初からそう言って渡すだろう。
 24話で指輪を渡したとき、ヒカルは死を覚悟していたのであり、大切なことをちゃんと説明しないでおくとは思えないのだ。
 第一、指輪には、マジシャインと同じ「S」のマークも入っている。
 まして、ヒカルと麗の結婚式では、その指輪を交換しているのだ。
 この矛盾は、24話の脚本が荒川氏、25話が横手氏というところから来ているのだろう。
 
 スーパー戦隊という“ある程度アバウトで、コメディ風味の入る作品群”の方向性から言えば、あまり目くじらを立てるべきところではないかもしれないが、やはり気にはなる。

 さて、前作『デカレンジャー』から登場した“物語中盤の強化二段変身”は、今回はレジェンドパワーという形で表現され、それに伴って、レジェンド化しないと変身・合体できない最強ロボ:マジレジェンドを登場させた。
 これにより、『デカレンジャー』におけるデカウイングロボの“スワットモードでなくても操縦できるのに、どうして専用なのか”という問題点を乗り越えた。
 しかも、レジェンドパワーを使いすぎると人間でなくなるから強制解除されるというリミッターを設けることで、どうしてわざわざ弱い姿(ノーマル)に変身するのかという問題点もクリアした。
 だが、やはり武器も含めて一切合切変わってしまうパワーアップというのはどこかに歪みをもたらすようで、今回も上記のとおり問題点を続出させた。
 
 さらにタチの悪いことに、さほど大きなパワーアップに感じられない。
 そこに一枚噛んでいるのが、中盤以降の強敵:冥府十神だ。
 初対峙のときといい、一番手イフリートといい、マジレジェンドの攻撃すらやすやすと跳ね返すほどの強さを見せつける。
 マジレジェンドに倒されたサイクロプスとゴーゴンにしても、マジレジェンド単体では勝てず、かなり卑怯なタイミングで乱入してくるトラベリオンのお陰でようやく勝てたという形だ。
 伝説の5色の魔法使いが力を高めた末に変じたというマジレジェンドと、イコールではないかもしれないが同じ姿を持つ彼らですら、あれほど力の差を見せつけられてしまうのだ。
 この苦戦続きは、本来ものすごく強いはずのマジレジェンドが、毎回苦戦を強いられてしまうという点で、かなり問題のある描写だ。
 超強力な敵が集団で現れたという大ピンチを描きたかったのは分かるし、実際それはとても成功している。
 シリーズでも、これほどやばそうな集団が登場したことはなかった。
 だが、それを描写するために、伝説の魔神を弱く描写してしまったというのは、まずかったのではないだろうか。
 正確に言うなら、マジレジェンドが弱く見えるのは構わないのだが、ならばトラベリオンも一緒に弱くならなければならないということだ。
 そうでなければ、トラベリオンとマジキングのコンビでも勝てないゴーレムを倒すために、記憶を失うリスクを承知でマジレジェンドになった5人の覚悟が無意味になってしまう。
 それなのに、最強の二極神の片割れであるドレイクは、トラベリオンに倒されている。
 これでは、伝説の凄まじき魔神とトラベリオンが同等クラスに見えてしまうではないか。
 それでなくとも、マジレジェンドは、登場2回目で、既にハイモールドのカビにやられていたりするわけで、もう少し気を遣わなければならなかったのではないだろうか。
 商品展開として、元々魅力に乏しいマジレジェンドだけに、劇中でのこの有様は、ますます商品の魅力に影を落としたのではないかと思われる。
 かといって、冥府十神を弱く描写しろというわけではない。
 トラベリオンと同等レベルで苦戦するということは、マジレジェンドがそんなに強くないかのような印象を受けてしまうという、要は、トラベリオンとのバランスの問題なのだ。
 強いマジレジェンドでも勝てないという部分をもっと強調した方が良かったのではないかということだ。

 なお、『メガレンジャー』以来の伝統であるクリスマス商戦前の総力戦とその後のおちゃらけ総集編は、8年ぶりに回避された。
 もっとも、41話『先生の先生〜ゴール・ゴル・マジュール〜』(12/11放送)、42話『対決!二極神〜ゴール・ルーマ・ゴル・ゴンガ〜』(12/18放送)において、マジキング、トラベリオン、マジレジェンドはもとより、ウルカイザーまで登場させているわけで、総力戦の方はしっかり行われている。
 多分、ブレイジェルがウルザードの姿で登場したのも、既に敵として登場させることはできず、さりとておもちゃが売れ残っているウルカイザーを無理なく登場させるための方便だろう。
 そして、続く43話『茨の園〜マジ・マジ・ゴジカ〜』では、トードによる双六が描かれたが、従来のようなはっきりとしたおちゃらけにはなっておらず、総集編ですらない。
 これは、放送日が幸いしたのだろう。
 43話の放送は12/25(日)で、次の日曜は1/1となり、絶対に放送は休みだから、前後編にすると2週間も間が開いてしまうという点は例年どおりだ。
 だが、その一方で、12/25は、微妙ではあるがクリスマス商戦もまだ終わってはいない。
 だからこそ、総集編でお茶を濁すのではなく、「お母さんが次回助かりそう」という予感と、冒頭でのマジキング&トラベリオン対トードという戦闘シーンを入れたりしているのだろう。
 もし最後の日曜日が12/31(=年内最後が12/24)なら、商戦天王山の12/24に『対決!二極神』が入っただろうし、最後が12/27だったなら、クリスマス商戦は完全に終息した時期で、今更盛り上げようとしなかったかもしれない。
 鷹羽は、今回悪しき伝統が崩れてくれたのは、このような微妙な日数関係からの奇跡だったと思っている。
 2006年の『轟轟戦隊ボウケンジャー』は、正に12/24が年内最後の放送となり、おちゃらけ総集編にはならずに済んだ。
 その分、39話『プロメテウスの石』でやってしまったわけだが…。

 さて、商品展開の話は上で触れたが、商品として、ちょっと変わった方向性が加わったのも本作の特徴だ。
 すっかり伝統になったアパレル関係の商品展開だが、今回は、大人用と子供用のマジジャケット(5人の普段着)が出ている。
 これもおなじみキャラデコ(ケーキ)も健在で、今年は春先にレッドとマジキング、クリスマスにレジェンドマジレッドと電飾付きのマジレジェンドが飾られたものが発売された。
 
 また、前作『デカレンジャー』のライディングデカレンジャーロボに引き続き、トラベリオン・エクスプレスがタイヨーからラジコンとして発売された。
 といっても、ライディングデカレンジャーロボのように新造の型を起こしたものではなく、何かの子供向けラジコンの型を流用したと思われ、カーゴトレインは付いておらず、機関車と炭水車だけになっている。
 ただ、5人とマジシャインのデフォルメ人形が付いていたり、コントローラーがグリップフォン型になっていたりと、一応作中の雰囲気を醸し出そうと努力しているようだ。
 ゲームの方は、今回は同時期放映の『仮面ライダー響鬼』と足並みを揃えて、専用ゲーム機が発売されている。
 これは、5色の魔法陣マークが付いたマット型コントローラーを使用しており、曲に合わせてステップを踏むとか、魔法陣3つをグーチョキパーに分けてじゃんけんゲームをしたりといったもので、売れ行きのほどは定かでないが、トイザらスの試供品はいつも子供が遊んでいたので、結構良かったのではないだろうか。
 
 食玩系もかなり充実していて、合体ロボのミニプラシリーズでは、マジドラゴンにもマジキングにも合体できるマジマジン、がんがん手足が動くトラベリオンやマジレジェンド、2種類だけとはいえ呪文を発することのできるマージフォンとウーザフォンなどかなり色々出ていた。
 特に、『マジレンジャーコレクション』というデフォルメフィギュアでは、マジレンジャー5人分だけでなく、マジマジンやマジキング、マジドラゴンまでラインナップされていた。
 もっとも、第2弾で登場したレジェンドマジレンジャーはダイヤルロッドではなくマジスティック(男性陣はマジスティックソード等個人武器形態)を持っているなど、“バンダイ製なのに設定を知らないかのような”作りになっている。
 ガシャポンでも、マジキング、ウルカイザー、ファイヤーカイザー、セイントカイザー、マジレジェンド、トラベリオンと、巨大ロボ系が全て合体ギミック付きで発売されている。
 プライズ系でも合体可能なマジキングが発売されるなど、結構すごい状況だった。
 
 そして、今回初めて加わったのが、一般向け装飾品だ。
 作中で5人が付けているネックレスは、クリスタル製品で有名なスワロフスキー製であり、同型のものが、東映ヒーロークラブネットの会員限定ではなく、一般に通販されていた。
 単なる色違いでなく、それぞれデザインが違う辺りに、ちょっとした拘りを感じる。
 とはいえ、やはりキャラクター商品にカテゴライズされるせいか、同等のスワロフスキー製品に比べて割高(約1万3000円)になっている。
 実は、ペンダントトップになっているのは、「ストラス」というシャンデリア用の飾りであり、それ単体では数百円で買え、しかもチェーンはシルバーに金メッキと、パーツ自体の値段は大したことはない。
 これが、ペンダントトップとチェーンを繋ぐ金具部分に「M」のレリーフがあるだけで数千円は値段が上がっている。
 また、24話『先生として』でヒカル先生から貰った指輪も通販されていたが、こちらは石部分も含めてスワロフスキー製ではない。

 伝統のサブタイトルの拘りだが、今回は、毎回呪文が入っているだけで、隠し言葉などの法則性はない。
 また、この呪文も、初登場の呪文ばかりではなく、14話のように、既に使用済みの呪文を使っていることもある。
 
 また、恒例の主役キャラによるアイキャッチは、やはりその回の主役が映るというもので、CM明けのアイキャッチは、その回の主役のパーソナルカラーの画面がマントの映像になり、カメラが引いてマントを翻すマジレンジャーが映るという流れになっている。
 メインの5人がほとんどだが、24話『先生として』や36話『神罰執行〜マージ・ゴル・ゴジカ〜』、41話『先生の先生』では、マジシャインのバージョンも流れている。

 前作で途切れた悪側幹部としての女優の顔出しレギュラー出演は、一応復活を遂げてはいるが、若いグラビアアイドル系のホラン千秋氏と北神氏であり、また、衣装もパンクにゴスロリと肌の露出が少なく、以前の“セクシー系”という印象はなくなっている。

 さて、色々欠点も述べてきたが、基本的に『マジレンジャー』は見ていて燃える番組であり、1話1話を見ている分には、あまりアラが目立たない。
 悪く言えばベタな展開が多いが、“展開が予測できる=つまらない”ではないということを思い知らせてくれた。
 例えば17話、ブランケンに苦戦するマジマジン4体のところにバリキオンにまたがったマジフェニックスが駆けつけた辺りから、ファイヤーカイザー→マジキングのコンボが待っていることは誰の目にも明らかだ。
 だが、OPのイントロが流れる中マジキングに合体すると、否が応にも気分が高揚する。
 この回だけでなく、“ここから決戦だ、盛り上がるぞ!”という部分には、ほぼ例外なくOPがイントロから流れる。
 『茨の園』での深雪を交えた親子変身、最終回での家族変身など、もうイントロが聞こえてくるだけで燃え上がる。
 冷静に考えれば、いくらマージフォンがシルバーマージフォンになったからといって、レジェンドパワーを持たないマジマザーが加わったくらいでレジェンドフィニッシュの威力がさほど上がるはずがない。
 また、最終決戦の展開にしても、何でも吸収する敵に対して吸収しきれないほどのエネルギーをぶつけて自滅させるというのはお約束の展開だ。
 ところが、『マジレンジャー』では、これらの“当然読める展開”“蛇足程度の助力”に対しても、こちらが「よし、来た!」と盛り上がれる。
 最終回Aパートで、魔法力を吸い尽くされた5人は、ノーマル変身すら維持できなくなり、顔だけが元に戻ってしまう。
 そして、父が魁に希望を託したことを悟った蒔人達4人は、文字どおり盾となって魁を守りながら励ます。
 このとき、これまで魁を名前で呼んだことのない翼が名前で呼んでいる。
 それに励まされ、父の言葉を思い出して奮い立った魁は、死力を振り絞ってフェイタルブレイドの構えを取り、ゴーグル部分だけないマスクが装着される。
 これは、魁の顔がマスクの中から覗くという効果があると共に、“魔法力が勇気によって回復していっている”という描写でもある。
 過去のシリーズにおいて、マスクが砕けて素顔が覗くという演出は数回あったが、消えたマスクを自力で復活させていくという描写はなかった。
 これは、魔法力を奪われたことで解けた変身を、わき上がる勇気で回復させるものであり、“溢れる勇気を魔法に変える”というテーマの具現化だ。
 
 最終決戦での“究極の魔法”にしても、勇気そのものを魔法力に変えて放射しているわけで、2話で深雪の幻影が言った“あなた達の武器は勇気”という言葉そのものだ。
 物語当初から言い続けてきた言葉、そして毎回降臨する呪文の源でもあった「勇気」をそのまま最後の切り札にしているわけで、こんな説得力のあるパワー源はない。
 毎回のように「勇気」を連呼してきたことが、ここで正に“無限の勇気”として開花したわけだ。
 こういった“ベタでありながら燃える”演出は、定石は有効だからこその定石なのだということを雄弁に物語っていると言えるだろう。
 
 付け加えておくと、全体の流れというのは、きちんと計算されている。
 8人揃っての変身が最終回だけなのには、ちゃんと理由がある。
 「我ら魔法家族!」という名乗りにあるとおり、あの8人は家族だ。
 47話『君にかける魔法』で、ヒカルと麗が結婚したからだ。
 そうでないと、43話『茨の園』の名乗りで仲間に入れてもらえなかったように、マジシャインだけ家族からはみ出してしまう。
 最終決戦への幕間としてだけデート&結婚式を挟んだのではなく、この伏線でもあったわけだ。
 前述の“マジドラゴンを活躍させるためのレッド別行動”なども、こういった演出の計算の上に成り立っている。
 メンバーの1人が別行動していて合体できないというのは、28話『永遠に…〜ジルマ・マジ・マジ・マジーネ〜』での翼の逃避行や、18話『力をあわせて〜マージ・ジルマ・ジー・ジンガ〜』でのルナジェルを巡ってのレッドとウルザードの一騎打ちなどとして何度か行われている。
 これらは、本来的にはマジマジンを合体させないまま活躍させるための方便として、“1人足りない”状況を生むのが目的と言えるが、単にそれに留まってはいない。
 28話ではトラベリオンを加えてのマジンシュートという珍しい組み合わせにしてマジマジンとトラベリオンを万遍なく活躍させているし、18話では4人のピンチに駆け付けるバリキオン&マジフェニックス→ファイヤーカイザー→マジキングのコンボといった具合に、無茶苦茶燃える展開に仕上げている。
 クリスマス商戦用のウルカイザーの登場を、ウルザードをおびき出すための罠として機能させたり、二極神の揃い踏みや戦車対ウルケンタウロスの“馬対決”といった演出に昇華させることで、無理矢理感を減らす工夫を怠らない。
 こういった細やかな心遣いの部分が、『マジレンジャー』の良さだと思う。

 細かい消化不良なども多少あったにせよ、鷹羽的には、ここ数年のスーパー戦隊で最も上手くまとまった作品だったと感じている。
 味方のキャラ立ちのみならず敵方のキャラも立っていたことが、このまとまりを支えていたと言えるだろう。
 散々不死身をウリにしていたバンキュリアは、後半は戦力としては完全におみそになっていたが、何しろ不死身だけに、ラストをどうするかが問題になる。
 いかにマジレンジャー側がパワーアップしたとしても、不死身を謳っている者があっさり殺されるわけにはいかないからだ。
 てっきりほうほうの体で逃げ延びて来年のVシネマにでも出るかと思っていたら、なんと仲間になってしまった。
 その経緯も、冥府十神の仲間割れと巧く絡め、人間側に立ったスフィンクスに賛同して付いていく形で、無理なく“マジレンジャー=これまでの敵”と融和させた。
 戦闘能力では後れを取るものの、不死身の力を使ってスフィンクスやブレイジェルらを救うといったそこそこ納得できる形での助力と活躍があり、付け足しではない存在価値をアピールしている。
 いささか唐突感は拭えないが、それでも、かつて血を吸われた(=本来最も恨みを持っているであろう)芳香が「ありがとう、ナイ、メア」と抱きつき、「そうさせたのは、あんた達だよ」とメアが答えるなど、これまでの因縁を解消する演出も忘れない。
 こういったキャラクターとしての筋を通した展開が、物語の根底を支えてくれたのだ。

 “敵組織が首領の絶対意思とそれに従う有象無象であること”を嫌う鷹羽的な好みの問題を差し引いても、敵キャラが自分の意思で行動しているという描写がこの作品のテンションを支えたことは間違いないだろう。
 ストーリーに凝って武器や巨大戦の描写をおろそかにすることもなく、子供向けを狙いすぎてストーリーが破綻することもなく、非常にバランスを取っていた作品だった。

 まだまだスーパー戦隊シリーズは可能性を秘めていると、確信させてくれた作品だった。

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