主題歌
- オープニングテーマ:特捜戦隊デカレンジャー(最終回のみOPなし)
- エンディングテーマ:MIDNIGHT デカレンジャー
girls in trouble DEKARANGER(17、24、27、31、39話)
The Movie Version DEKARANGER(劇場版)
特捜戦隊デカレンジャー(最終回のみ)
『デカレンジャー』OPには、タイトルロゴ画面の際に、
S.P.D、スペシャルポリス・デカレンジャー
燃えるハートでクールに戦う5人の刑事達
彼らの任務は、地球に侵入した宇宙の犯罪者と戦い、人々の平和と安全を守ることである
というナレーションが入っている。
ナレーターがテレビアニメ『機動警察パトレイバー』の第2期OPナレーションを務めた古川登志夫氏のせいか、妙に『パトレイバー』っぽく感じるのは鷹羽だけだろうか。
OPでのキャラクター紹介画面では、6人全員が走っているが、これは、スタッフの「刑事物なら走らなきゃ」という意見によるものらしい。
なお、最終回では、OPはなく、タイトルコールだけがなされているが、その際、「燃えるハートでクールに戦う6人の刑事達」と変えられたナレーションが流れ、素顔の6人が武器を振るうシーンが挿入されている。
ED『ミッドナイトデカレンジャー』を歌うのは、戦隊の始祖である『秘密戦隊ゴレンジャー』のOP、EDを歌っていたささきいさお氏で、スーパー戦隊シリーズには初登場となっている。
冒頭の1フレーズの後、毎回約1分間のスポットがあり、その回で登場したキャラクターの説明や、その話の後日談的なミニミニドラマなどが挿入されていた。
また、メイン5人が踊っているカットが多く、同年の『仮面ライダー剣』のOPでも主役達が踊っていたため、それと比較されたりもした。
個人的には、『剣』OPには頭を抱えたが、こちらはかなり好意的に受け止めている。
EDに登場するエイリアンのバンドユニットには、ロケットシップ・ベイビーズという名前が用意されており、劇場版では、地球でエイリアンが集う店の歌手という設定で登場した。
もちろん、メインヴォーカル役の声優として、ささき氏が特別出演している。
また、レギュラーEDを2種類用意しているのもこの番組の特徴で、イエローやピンクがメインで活躍するエピソードでは、イエロー:ジャスミン役の木下あゆ美氏とピンク:ウメコ役の菊地美香氏がメインヴォーカルを務める『girls in trouble DEKARANGER』がED曲として使われている。
こちらの場合でも、スポットは挿入されている。
また、『ハリケンジャー』以来恒例となっている劇場版用お遊びEDとしては、『girls in trouble DEKARANGER』の替え歌をメインキャストが歌って踊るという構成になっていた。
基本ストーリー
地球には、宇宙警察の分署:地球署があり、エイリアン犯罪者:アリエナイザーによる犯罪の捜査を専門とするS.P.D(スペシャルポリス・デカレンジャー)が駐留している。
地球に何か大きな危険が迫っていると感じていた地球署の署長:ドギー・クルーガーは、スペシャルポリス養成学校を卒業して実地研修中だった赤座伴番(あかざ・ばんばん)を赴任させ、デカレンジャーを正規の5人構成とすると共に、各巨大メカに合体機能を持たせるよう改造を命じるなど、戦力強化に当たっていた。
そして、ドギーの予感は当たり、地球でアリエナイザー犯罪が頻発するようになっていった。
それら犯罪の陰には、何があるのか…。
メンバー
デカレッド:赤座伴番(あかざ・ばんばん)
通称:バン。
左胸の数字は1で、額の飾り窓は1つ。
2梃拳銃の使い手で、銃を使った格闘技:ジュウクンドー(本作品の創作)を得意とする。
オーバーアクションからの射撃を得意とするため、無駄な動きも多い。
ホージーのことを「相棒」と呼ぶ。
研修生時代、アリエナイザー:ドン・モヤイダに轢き殺された少年に「宇宙一のスペシャルポリスになる」ことを誓った。
考えなしに突っ走るタイプだが、勘がいいというか、咄嗟のひらめきに優れており、突っ走った結果がマイナスになることは少ない。
また、惚れっぽく、気が多いタイプでもある。
デカブルー:戸増宝児(とます・ほうじ)
通称:ホージー。
左胸の数字は2で、額の飾り窓は2つ。
経験年数のせいか、デカレンジャー5人の中では最高位で、署長であるドギーの留守中には署長代理を務める。
両親は亡く、妹の美和と2人家族。
養成学校首席卒業の逸材であり、射撃が得意で百発百中の腕前を誇るが、これはたゆまぬ努力の賜。
配属以来、一度もミスをしたことがないのが自慢だったが、3話『パーフェクト・ブルー』で初のミスを犯し、ひどく落ち込んだ。
バンの思いつき的な捜査とは対立することが多く、「相棒」と言われて「相棒って言うな!」と返すのが日常コミュニケーションだが、実はバンを高く評価している。
最終回で、初めて本人に向かって「相棒」と呼び掛けた。
バンへの対抗心もあって、特凶の試験を受けて合格したが、その際、犯人が恋人の弟と知りながらデリートした事情もあって、合格を辞退した。
デカグリーン:江成仙一(えなり・せんいち)
通称:セン(ちゃん)。
左胸の数字は3で、額の飾り窓は3つ。
逆立ちすることで独特の推理能力を発揮し、数々の難事件を解き明かした。
「これは、センのシンキングポーズである。これをすると、何かがひらめくのだ」というナレーションと共に、逆立ちして考える姿が印象的。
物静かで穏やかな性格だが、人を無意味に傷つける行為に対しては怒りを露わにする。
幼いころ、古井戸に落ちて出られなくなったことがあり、その際に助けてくれたお巡りさんに憧れて警官志望となった。
女性に慕われる気性の持ち主らしい。
デカイエロー:礼紋 茉莉花(れいもん・まりか)
通称:ジャスミン。
左胸の数字は4で、額の飾り窓は4つ。
サイコメトリーとテレパシー能力を持つエスパーであり、制御の利かないその能力に悩み続けてきたが、ドギーと出会ったことで精神的に救われ、その能力を生かすためにスペシャルポリスになった。
他人の身体や物に触れたり、事件のあった空間に身を置くことで、思考や残留思念を読み取ることができる。
その際、「ジャスミンはエスパーである。物体を通じて、それに触れていた人の思いを読み取ることが出来るのだ」というナレーションが流れる。
普段は、手袋をすることで能力を抑えている。
「明日はホームランだ!」とか「ドーンといってみよう!」など、古いバラエティ番組などの台詞を使いたがる癖があるが、どうやら誰もついていけないらしい。
論理的な思考のため、どちらかというと型にはまりがちであり、型に囚われないウメコの奔放さに憧れている。
デカピンク:胡堂小梅(こどう・こうめ)
通称:ウメコ。
左胸の数字は5で、額の飾り窓は5つ。
デカレンジャー5人の中で4番目の配属のため、ホージーをさん付けで呼ぶが、自分では5人のリーダーのつもり。
変装と早変わりの名人で、男に変装することすらできるが、それ以外の能力としては、刑事として適性があるとは言い難く、射撃は3発に1発当たれば調子がいいというほど腕が悪い上、捜査中も的はずれな行動を取りやすい。
ただし、真摯で一途な性格の持ち主で、時に驚くような行動力を見せることがある。
46話『プロポーズ・パニック』で、失恋直後にセンの優しさに触れ、恋をしたようだ。
大の風呂好きで、仕事が終わると、デカベースの職員用風呂を占領していることが多いが、テツ登場後は、風呂場の奪い合いになることも。
署長:ドギー・クルーガー(デカマスター)
地球署署長で、通称:ボス。
アヌビス星人で、犬のような顔をしている。
宇宙警察ではその名を知られた敏腕刑事で、かつては「地獄の番犬」と呼ばれたほど。
銀河一刀流の免許皆伝でもある。
デカマスターに変身して前線に赴くこともあり、デカレンジャー5人が束になっても敵わなかったほどの強さを持つ。
左胸の数字は100で、ボディカラーはメタルブルーと黒。
声は『劇場版機動戦士ガンダム』のワッケイン指令役の稲田徹氏。
メカニック担当:白鳥スワン(しらとり・すわん)
チーニョ星人だが、外観は地球人とあまり変わらず、耳の上にもう1つ耳がある程度の違いしかない。
ドギーとは長い付き合いで、「ドゥギー」と呼ぶ。
お互いにそれなりの好意を抱き合っているらしい。
ドギーの予感に従い、デカレンジャーロボの合体機構や、デカバイクロボとの合体機構を開発したり、デカベースを変形可能に改造したりと、1人でもの凄い作業をこなす。
その上、薬物や金属の組成を調べたり、白骨から複顔したりと、鑑識課のような仕事もこなす万能科学者。
また、デカスワンに変身でき、かなりの戦闘能力を発揮するが、本人はEDスポットで「4年に一度しか変身しない」と言っている。
変身慣れしていないせいか、最終決戦時、イーガロイドを前に変身しようとして阻止された。
胸の数字は万で、ボディカラーは白とオレンジ。
演じたのは、お父さん世代にとっては懐かしいアイドル:石野真子氏。
ロボット警察犬:マーフィーK9
宇宙警察開発の警察犬ロボで、音や匂いを感知する機能に優れている。
高機動力を生かした攻撃が得意だが、あまり戦闘能力は高くない。
ドギーの勘でウメコのパートナーとなり、彼女がひたむきに自分を信じてくれたことで信頼関係が出来上がった。
わがままで気まぐれだが、スワンとウメコにだけはよくなついている。
デカブレイク:姶良鉄幹(あいら・てっかん)
通称:テツ。
胸の数字はVIで、額の飾り窓が6つ、ボディカラーは白と紺で縁取りは金。
通称「金バッジ」または「特凶」と呼ばれる宇宙警察本部直属の特別凶悪指定犯罪対策捜査官で、特別凶悪指定犯罪者であるヘルズ3兄弟を逮捕またはデリートするために地球に派遣された。
(注:公式には「特キョウ」ですが、どう考えても字面の印象でカタカナにされているので、本文中では、敢えて「特凶」と漢字で記述しています)
幼少の頃、スペキオン星人ジェニオに両親を殺され、宇宙警察で保護されて以来、訓練を積んで特凶となった。
そのせいか、スワンに対して母性への憧れを抱いているようだ。
当初、バン達の精神論的なやり方を否定していたが、自分がピンチの際に、その精神論でピンチを打破した5人を見て、気合いと根性を学ぶべく地球署に残っている。
口癖は「ナンセンス」だが、文法上全く意味が通らない使い方が多い。
本人曰く「射撃はちょっと(苦手)」とのことだが、実はバンより命中率が高い。
デカブライト:リサ・ティーゲル
テツの上司である特別凶悪指定犯罪対策第1班班長で、胸の数字は7、ボディカラーは銀と紺。
特別凶悪指定犯罪者コラチェクを追って地球にやってきた。
金バッジの誇りを忘れたかのようなテツに憤り連れ帰ろうとしたが、テツが目指す“気持ちで戦う”という方向性に理解を示し、1人で帰っていった。
先代デカレッド:ギョク・ロウ
レオン星人で、ライオンのような顔をしている。
通称名は不明だが、ホージー達が揃って「ギョクさん」と呼んでいるので、そのままギョクと呼ばれていたと思われる。
“熱い心でクールに戦う”ことをホージー達に教えた張本人でもある。
番組中では「初代デカレッド候補」と言われており、まだホージー、セン、ジャスミンしかいなかったころの地球署で、バンと同じ赤い制服を着用していたが、デカスーツは配備されておらず、実際には変身していない。
大変優れた刑事だったが、アリエナイザー:テリーXに捕まったホージーとジャスミンを助けた際、足に重症を負い、一線を退いた。
その後、連絡が取れなくなっていたが、実は、特凶とは別種の特別捜査班の立ち上げ作業に携わっており、そのため外部との連絡を絶っていたのだった。
再び現れたテリーXに我を忘れたホージーとジャスミンのフォローのため、ヌマ・O長官を締め上げて自分を探し出したバンの行動力を認め、その新組織:ファイヤー・スクワッドに抜擢した。
デカレンジャーは、アリエナイザー犯罪に対応するため、宇宙警察地球署であるデカベースに勤務する刑事だ。
「了解」の意味で「ロジャー!」という言葉を使う。
スペシャルポリスは、養成学校を卒業し、実地訓練の後でそれぞれの星に赴任するのが基本らしい。
こういった宇宙警察の出先機関は宇宙各所にあるが、それぞれの星の規模やアリエナイザー犯罪の発生頻度などによって、装備に差が付けられるようだ。
当初、地球署に4人しか配属していなかったり、ギョク・ロウがいたころにスーツが配備されていなかったりするのはそのためだ。
つまり、デカレンジャーは宇宙中に何組も存在するのであり、地球にいるのはその中の地球担当ということになる。
変身前は、黒地にパーソナルカラーの模様が入った制服を着ている。
模様は、左半身に☆マークの向かって左側半分と、腕章的なもの。
これに対して特凶は、特別凶悪指定犯罪者を追って星から星へ渡り歩き、各星の署長クラスにさえ口出しさせずに単独で捜査活動できるほどの強大な権力を与えられている。
最初から特凶を目指して育成されるエリートが多いようだが、一般のスペシャルポリスも特凶の資格試験を受けられる。
特凶は、通常のスペシャルポリスの階級章(ノーマルバッジ)が銀色であるのに対して金色の階級章を身につけるため、「金バッジ」とも呼ばれる。
なお、テツの制服には、模様の☆マーク下側に「Z」型のラインが入っているが、リサの制服には入っていない。
このほか、一般のスペシャルポリスの中でも、特別訓練をクリアしたデカレンジャーには、スワットモードというデカスーツの強化装備が与えられる。
スワットモードでは、ゴーグル部に特殊スコープがセットされていて、情報をその場にいない者も含め全員で共有できるほか、増加装甲もあり、基本戦闘能力そのものがアップする。
なお、6人の名前は、姓が推理小説作家の名前のもじり、名前とあだ名がお茶の種類となっている。
- あかざ・ばんばん、バン…………アガサ・クリスティ+番茶
- とます・ほうじ、ホージー………トマス・ハリス+ほうじ茶
- えなり・せんいち、セン…………エラリー・クイーン+煎茶
- れいもん・まりか、ジャスミン……
レイモンド・チャンドラー+茉莉花茶(ジャスミン茶) - こどう・こうめ、ウメコ…………野村胡堂+梅昆布茶
- あいら・てっかん、テツ…………アイラ・レヴィン+鉄観音茶
また、直接のメンバーではないが、ギョク・ロウも玉露から来ている。
変身システム
「チェンジスタンバイ!」「ロジャー!」で、警察手帳・通信機などを兼ねたSPライセンスを変身モードにし、「エマージェンシー! デカレンジャー!」と叫んでスイッチを押すと、SPライセンスが開くと共にデカベースから形状記憶宇宙金属デカメタルが放射され、各人の体に装着される。
その際のナレーションは
コールを受けたデカベースから、形状記憶金属デカメタルが微粒子状に分解され送信される。 そして、彼等の身体の表面で定着されデカスーツとなるのだ
というもの。
まず体に装着され、「フェイス・オン!」でマスクが装着される。
変身解除の際に、そのデカメタルがどうなるのかは語られていないが、まさか特殊金属をそこらに捨てるわけにもいかないだろうから、やはり一旦デカベースに返すのだろう。
各スーツに武装以外の性能的な差異はないようで、色や数字は判別用のものでしかないらしい。
5人のデカスーツの特徴として、マスク耳部にあるパトライトと、上半身左側に白で縁取って黒で数字を抜き書きし、そのまま左側を黒にした左右非対称なデザインが挙げられる。
そのため、S.P.Dのマークは、空いている右胸に付いている。
黒が入るのは上半身のみ。
また、過去のスーパー戦隊では、一般に手袋の長さは肘のちょっと下までくるような長さになっているのに対し、手首までの短いものであることも特徴だ。
SPライセンスはベルトの後部に挿入されており、バックル部には特殊手錠:ディーワッパーが装備されている。
スワットモード会得後は、SPライセンスを高く掲げて「スワットモード・オン!」と叫ぶと、デカベースからデカメタルが放射されてスーツが変形すると共に、スワットモード専用武器:ディーリボルバーが転送されてくる。
スーツは、右胸に「SPライセンス、セット」することで起動する。
ここにもナレーションが挿入されており、
コールを受けたデカベースから放射されたスワットアーマーとディーリボルバーを装着し、デカレンジャーはスワットモードになるのだ
となっている。
スーツ形状の大きな変更点としては、マスク耳部のパトライトがせり出してアンテナとマイクが出ることと、胸部に防弾ジャケット風の、脚部に脛当て風の増加装甲が付くことだ。
この増加装甲の左胸にもそれぞれの数字が付いており、右胸にはSPライセンス挿入用のポケットが付いている。
また、「エマージェンシー! スワットモード・オン!」と叫ぶことで、一気にスワットモードになることもできる。
デカマスターの変身も5人のノーマルモード同様で、マスターライセンスを変身モードにして「エマージェンシー! デカマスター!」と叫ぶことで変身する。
変身システム自体は同じであるため、ナレーションは
コールを受けたデカベースから、形状記憶宇宙金属デカメタルが転送される。そして、超微粒子状に変換されたデカメタルが、ボスの全身を包み、変身完了するのだ
と、5人とほとんど同じ。
デカスワンも「エマージェンシー! デカスワン!」で変身する。
特に説明はなかったが、恐らく同じシステムだろう。
デカマスターのマスクは、犬風の耳があるデザインで、ボディもほぼ左右対称で胸にアーマーがあり、マークが右肩にあるなどメインの6人とは違うライン。
ドギーの犬顔よりも小さなマスクであり、鼻・口がどうやって収納されているのかは謎とされている。
この点は、EDでのスポットでバンから「鼻はどうしてるんですか?」と突っ込まれたドギーが、「それは聞くな」と誤魔化している。
数字については、胸全体に「100」となっており「1」の縦線が下半身まで伸びている。
対して、デカブレイクは、「エマージェンシー! デカブレイク!」と叫んで左腕に付けたブレスロットルの変身スイッチを押すと、ブレスロットルに内蔵されたデカメタルが放出される。
デカメタルのブレスロットルへの内蔵というシステムは、各署に所属しない特凶の行動様式に合わせたものと思われる。
こちらも、変身解除時にデカメタルがどうなるかは語られていないが、デカブライトが変身を解いた際、光がブレスロットルへと収束していったように見えること、1回の出動で数回の変身を行う場合もあることなどから考えて、ブレスロットルに片付けるものと思われる。
こちらのナレーションは、デカメタルの出所が違うため、
テツがスロットルのチェンジモードにアクセスすると、内部に蓄積された形状記憶宇宙金属デカメタルが放射され、テツの身体に吸着してデカスーツとなるのだ
となっている。
ちなみに、デカブレイクのスーツの質量は、デカメタルに分解されても変わらないわけだから、左手首にその重量がもろに掛かっているわけだ。
それで平気な顔をして動き回っているのだから、やはり特凶は大したものだ。
当然、デカブライトも同じで、「エマージェンシー! デカブライト!」で変身する。
デカブライトのブレスロットルは、班長用のもので、デカブレイクでは紺色の部分が金色になっている。
ブレイクのデカスーツは、胸全体に金色で「VI」と入っており、「I」から左腕側だけが紺色で、下半身にも紺色が入っている。
デカブレイクの手袋は、過去のスーパー戦隊くらいの長さのものになっている。
また、左拳にブレスロットルからのパワーを受けるためのポイントが設けられており、手袋も左右で別物になっている。
掌側にもパワーポイントがあるという、面白いデザインだ。
デカブライトは手袋とブレスロットル以外は左右対称となっている。
そのため、胸には「7」が左右対称に2つ並んでいて「M」のように見える。
デカスワンのスーツは、普段スワンが着用しているスーツにマスク、手袋、ブーツ、胸部装甲が追加されるもののようだ。
SPライセンス、マスターライセンスには、PHONE(通信)モード、CHANGE(変身)モード、JUDGE(ジャッジメント)モードの3つがあり、通信モードでは、各種データの転送・分析ができる。
本物の警察手帳(今は縦開きの身分証になっている)と同様、開いてマークを見せて身分証明として使う。
また、SPライセンスは、色々な塗装パターンがあり、5人が使う白黒地に白文字のほか、スワンの白地にオレンジ文字、レスリー星のマリーが使っていた白地に赤文字、ファイヤー・スクワッド用の赤地に黒文字などがある。
これら身分証明を兼ねた変身アイテムの最大の特徴は、ジャッジメントモードの存在にある。
追い詰めたアリエナイザーに対し、SPライセンス等を掲げ、「□□星人◇◇、△△の罪でジャッジメント!」とその名前と罪状を言うと、宇宙最高裁判所から判決が下され、SPライセンス等に○か×で表示される。
その際のナレーションは
アリエナイザーに対しては、スペシャルポリスの要請により、遥か宇宙の彼方にある宇宙最高裁判所から判決が下される
というもの。
表示が「○」の場合は通常の逮捕手続が行われるが、「×」だった場合にはデリート、つまりその場で死刑が執行されることになり、デカレンジャーは「デリート許可!」と宣言して必殺武器による抹殺を行う。
このデリートは、細胞片1つ残さずに消去するものらしい。
なお、宇宙最高裁判所からの判決は、申請から1分間で下される。
シリーズ恒例として、SPライセンス、マスターライセンス、ブレスロットルといった変身アイテムはそれぞれ商品化されている。
いずれも、変身音と通信音、ジャッジメントの音が鳴るもので、ブレスロットルには、スロットルレバーを回すと必殺技モードの音がする機能がある。
名乗り
レッド「1つ、非道な悪事を憎み」
ブルー「2つ、不思議な事件を追って」
グリーン「3つ、未来の科学で捜査」
イエロー「4つ、よからぬ宇宙の悪を」
ピンク「5つ、一気にスピード退治」
5人「S.P.D」
「デカレッド!」
「デカブルー!」
「デカグリーン!」
「デカイエロー!」
「デカピンク!」
5人「特捜戦隊!」
(耳部のパトライトが光り、サイレンが鳴る)
5人「デカレンジャー!」
というのがフルバージョン。
決めポーズの際には、SPライセンスを正面に掲げる。
さらに、スワットモード時の名乗りの場合は、「デカピンク!」の後が
5人「S.P.Dスワットモード!」
となる。
このほか、デカマスターは
「百鬼夜行をぶった斬る! 地獄の番犬、デカマスター!」
デカブレイクは
「無法の悪を迎え撃ち、恐怖の闇をぶち破る! 夜明けの刑事、デカブレイク!」
という名乗りになっていて、44話『モータル・キャンペーン』では、5人のスワットモード名乗りの後、マスター、ブレイクが続けて名乗るというロングバージョンになっている。
なお、最終回では、ピンクの後にブレイクの名乗りも入った6人バージョンの名乗りをしているが、その際、ピンクの「5つ〜」の後に
ブレイク「6つ、無敵がなんかイイ!」
と入っている。
このほか、1回ずつではあるが、
デカブライトの
「なみいる悪を白日の下にさらけ出す 光の刑事、デカブライト!」
デカスワンの
「真白き癒しのエトワール デカスワン!」
という名乗りもあった。
これら名乗りは、それぞれ胸の数字の語呂合わせからなっている。
武器
『デカレンジャー』は、シリーズ初めての統一された標準装備を持たない戦隊だ。
レッドは右腰にディーマグナム01、左腰にディーマグナム02を装備し、ブルーとグリーンは左腰にディーロッド、右腰にディーナックル、イエローとピンクは左腰にディースティック、右腰にディーナックルを装備と、3タイプの装備パターンがある。
かつて、増加メンバーならともかく、メインの5人が持っている基本武器が違っていたことはなかった。
これら装備はそれぞれ合体が可能で、ディーマグナム01・02を合体させるとハイブリッドマグナムに、伸ばした状態のディーロッドとディーナックルを合体させるとディースナイパーに、縮めた状態のディーロッドとディーナックルを合体させるとディーブラスターに、ディースティックとディーナックルを合体させるとディーショットになる。
このように、完全に同じ武器を使うのは、イエロー、ピンクの2人だけで、あとの3人は銃の形状が異なっている。
また、標準装備が統一されていない代わりに、それぞれの専用武器は与えられていない。
通常時の最強武装としてディーバズーカがあり、マーフィーにキーボーンを与えると、前足が砲門になって変形する。
これを5人で構え「ストライク・アウト!」で発射する。
スワットモード時は、専用武器ディーリボルバーを持つ。
この場合、敵を殴るときにもディーリボルバーを使うことが多く、通常時との戦闘パターンの違いになっている。
SPライセンスをディーリボルバー上部にセットすると、破壊力アップのマキシマムモードになる。
また、ディーリボルバーは、デカウイングロボのコクピット内では、コントローラーモードとなり、デカウイングキャノン発射の際のトリガー役を果たす。
デカマスターは、左腰にディーソード・ベガという日本刀型の武器を装備している。
鍔元に狼の顔が付いていて、その口から刀身が生えているという形状で、普段は口の部分が鎖で封印されている。
一見錆び刀のように見えるが、封印を解くと狼の口が開いて刀身が輝きを取り戻す。
刀身にエネルギーを集めて敵を斬るベガ・クラッシュが必殺技だが、どちらかというと刀の能力ではなくデカマスターの技量と思われる。
鍔元からエネルギー弾を発射することも可能。
この武器に合わせて、デカマスターのアクションは時代劇風のメリハリの利いた重い殺陣になっている。
なお、ディーソード・ベガは、銀河一刀流の師範の息子ビスケスが持っていたソード・アルタイルとそっくりであることから、もしかしたら宇宙警察の開発した武器ではなく、元々ドギーが持っていたものを装備として採用したものかもしれない。
ベガ、アルタイルとくれば、もう1振、ソード・デネブがありそうなものだが…。
また、デカブレイクは、手持ち武器は持っておらず、正拳アクセルブローという技を使う。
これは、ブレスロットルのレバーを捻ることで、光速拳ライトニングフィスト、電撃拳エレクトロフィスト、強力拳パワーフィスト、竜巻拳トルネードフィストなど左手に色々な力を宿して振るうもの。
必殺技は、超光速拳スーパーライトニングフィスト、光速拳ライトニングアッパーなど。
デカレンジャーは、等身大戦闘、巨大戦闘を問わず、敵をデリートした後には、「ゴッチュー!」と声を上げる。
また、その後、レッドなどから「メガロポリスは日本晴れ!」という言葉が入ることも多い。
なお、デカレンジャーは、刑事という関係もあって、変身前から銃を持っている。
SPシューターという小型ビーム銃が標準装備で、テツも含めて全員持っているのだが、これによって、変身しなくてもある程度の戦闘能力が保証されている。
最終回は、この銃なしには存在できないだろう。
『デカレンジャー』では、レッドが2梃拳銃で、しかも棒状の武器を持っていないという変わった武器構成になっている。
これは、上でも書いたとおり、個人武器を通常装備的なスタンスにしたものと思われる。
逆に言うと、玩具展開的には、基本武装をレッド用単体売りと、その他4人用セット売りに分けたのだ。
これにより、普通なら通常装備の銃でやるべき電飾系機能をディーマグナムに持たせ、ほかの4人の武器の“剣がほかのパーツと合体して銃になる”という通常装備的な流れを共存させた。
ちなみに、ハイブリッドマグナムは、横から見ると赤いパトカーに見える。
変身後の武器の名称が全て「ディー」、つまりDEKAの頭文字から始まるのも拘りだ。
また、レッドが棒状の武器を持っていないことによって、アクション的にもレッドだけ2梃拳銃を振り回しての格闘というちょっと風変わりなものになっている。
ジュウクンドーという独自の格闘術も、棒状武器を使わないアクションをそれらしく見せるためのエクスキューズだろう。
そして、この番組のもう1つの特徴がスワットモードの存在だ。
これは、『ファイブマン』のファイブテクター、『ギンガマン』の超装光以来のレギュラー使用の強化武装だが、頭部の形状の変化や武装の完全変更を伴ったのは初めてのことだった。
これにより、強くなっていく敵に対する強化策という面が強調されることになったが、反面、全員がディーリボルバーを振り回しての戦闘となり、しかもSWATを意識したアクションのせいか、5人の動きが画一的になるため、イエロー、ピンクのアクションが固くなっていて違和感があったり、レッドの特徴である2梃拳銃アクションがなくなったりと、マイナス面も大きかった。
なお、ディーリボルバーは、ピストン運動する上下2門の銃口を持つ大型銃で、上部にSPライセンスをセットできることなどから、『特救指令ソルブレイン』に登場する後期必殺武器:パイルトルネードのシステムをかなり流用した商品と思われる。
移動装備
バン&ジャスミン用のパトカー:マシンドーベルマン、ホージーが乗る白バイ:マシンハスキー、セン&ウメコ用のパトカー:マシンブルがあるほか、テツが乗る一輪バイク:マシンボクサーがある。
マシンブルには、走行中に一定時間操作されないと自動操縦モードに切り替わる機能がある。
これは、運転者が怪我などで意識不明になった場合の安全策と思われる。
画面上では出ていないが、当然、この機能はマシンドーベルマンにも登載されているはずだ。
マシンボクサーは、実物大のプロップはあるものの、一輪という関係上、自走は不可能で、走行シーンは全てCGとなっている。
このCGの合成にはかなり苦労したのだそうで、48話での走行シーンは担当者が相当力を入れたという。
ロボット・メカニック
デカレンジャーロボ
パトストライカー(レッド搭乗:頭部・胴体部・大腿部)、パトジャイラー(ブルー搭乗:左脚部)、パトレーラー(グリーン搭乗:右脚部)、パトアーマー(イエロー搭乗:右腕部)、パトシグナー(ピンク搭乗:左腕部)が「特捜合体!」して完成する巨大ロボ。
合体機構は、ドギーの指示によりスワンが独自の改造を施したもので、ほかの星にも同型のマシンはあるはずだが、それらは合体できない。
パトストライカーから伸びたアームがパトアーマー、パトシグナーを掴んで持ち上げて合体、更にパトジャイラーとパトレーラーが脚部に変形して合体し、全身に配されたパトライトが一斉に点灯する。
運動性が非常に高く、横飛びしながら銃を撃ったりすることもできる。
ロボとして使用する前提で装備されている武器を合体前から使えるのが特徴で、パトストライカーは、アームでジャッジメントソードを掴んで後輪部分に接続し、そのまま走って敵を斬ることができるし、パトレーラーもシグナルキャノンを砲門として利用でき、パトジャイラーは、ジャイロワッパーを飛ばして怪重機等にはめ、デカベースに転送することもできる。
また、パトジャイラー用の武装であるガトリング砲は、合体後にも使用可能。
右足に格納されている信号機型の銃:シグナルキャノンと、同じく右足に格納されている刀身にパトアーマーの投光器を柄として接続するジャッジメントソードが武器。
シグナルキャノンの黄色の銃口は、「keep out」と書かれた黄色いロープを発射することができ、怪重機等の動きを封じることができる。
また、左手のパトシグナーから、ジャッジメントの表示板を出し、怪重機に乗っているアリエナイザーに対して判決を見せることができる。
必殺技は、パトエネルギーを全開にしてシグナルキャノンを発射するジャスティスフラッシャーと、ジャッジメントソードを振るうフライング・クラッシュ。
一見アバウトに合体しているようだが、実は非常にデリケートなシステムであり、出撃するごとにスワン直々の調整を受けないと不調を来す。
また、当初は5人乗っていないと合体できず、ピンクの代わりにマスターがパトシグナーに搭乗したこともあるが、その後、5人揃わなくても合体可能になったようだ。
このほか、デカバイクに跨りライディングデカレンジャーロボとなって移動能力をアップするが、コントロールはデカレンジャーロボ側とデカバイク側のどちらからでも可能なようだ。
また、劇場版では、レスリー星に配備されていたブラストバギー(ブレイク操縦)を「特捜武装!」してデカレンジャーロボ・フルブラストカスタムになっている。
これは、ブラストバギーが左肩のシールドと胸の増加装甲になると共に、大型銃ブラストランチャーとして使う武装合体で、攻撃力が大幅にアップする。
また、砲撃モードでは、シールド上にブラストランチャーをマウントして地面に置き、ブラストランチャー・フルブラストという超強力な砲撃が可能になる。
デカベースロボ
地球署の建物であるデカベースが「超巨大起動! デカベースロボ」で変形する超大型ロボで、主にデカマスターが操縦する。
デカレンジャーロボ同様、スワンの設計・改造による。
変形時には、通常時と比べて垂直に起き上がる形になるため、内部で就業中の職員は、退避区域に移動しなければならない。
武器は、膝からのニーブレスビームと、指からのフィンガーミサイル、エネルギーを胸部装甲に集中させて発射する熱線ボルカニックバスター。
ボルカニックバスターは、惑星破壊規模のミサイルを、地球上から発射して地球に影響のない距離で破壊できるほどの長射程を誇る。
このほか、「特捜起動! デカベースクローラー」で、移動モードであるデカベースクローラーにも変形可能。
デカベースの敷地地下には、格納庫などがあるが、デカベースクローラーでの移動時には、地下への入口には蓋がされている。
デカバイクロボ
デカブレイク専用の移動・戦闘メカ:デカバイクが「特捜変形!」する巨大ロボ。
武器は両手首に仕込まれたナイフ型のスリーブソード。
デカレンジャーロボ以上の高機動性がウリで、超高速戦闘を得意とする。
必殺技は、足をバイク形状に戻し、這うように走行しながら接近、敵に飛びかかってスクリュー回転しながらスリーブソードで斬りまくるソードトルネード。
デカブレイク以外の者も操縦可能であり、また、ブレスロットルを通してのオートコントロールでもある程度の活動が可能。
デカバイク時は、重力圏離脱から恒星間航行までこなし、地上ではタイヤによる高速走行を行う。
なお、発進時にはデカベースを飛び越えてくるが、普段どこに格納されているのか、発進口がどこなのかは不明。
少なくともメンテナンスや改造を行っている以上、デカベースもしくは地下エリアにドックがあるものと思われる。
スーパーデカレンジャーロボ
スワンの改造で、デカレンジャーロボとデカバイクに合体機構が盛り込まれたことにより、「超特捜合体!」で完成する巨大ロボ。
ライディングデカレンジャーロボ状態から変形する。
パトストライカーを中心に、デカバイクロボが頭部・胸部・背部・脚部を、パトジャイラーが左腕部、パトシグナーが左肩、パトレーラーが右腕部、パトアーマーが右肩をそれぞれ構成する。
巨体のくせに、合体前の各ロボ以上の高速機動が可能。
必殺技は、背部のブースターを全開にして突進し、左右の拳で連打を放つガトリングパンチ。
こちらも、デカレンジャーロボ同様、非常にタイトな整備・調整を必要とする。
デカウイングロボ
デカレンジャーがスワットモードを会得したことにより、新たに配備されたスワットモード対応ロボ。
パトウイング1(レッド搭乗:頭部・胴体部・大腿部)、パトウイング2(ブルー搭乗:腕部・翼部)、パトウイング3(グリーン搭乗:両脛部)、パトウイング4(イエロー搭乗:右足首)、パトウイング5(ピンク搭乗:左足首)が「特捜合体!」して完成する。
空中での高い機動性と、怪重機を持ち上げたまま重力圏離脱するほどの推力を持つ。
武器は2挺拳銃:パトマグナム。
必殺技は、宇宙空間に放り出した怪重機に対し、デカウイングキャノンに変形して放つファイナル・バスター。
この際、コントローラーモードにしたディーリボルバーがトリガーとなる。
また、ファイナル・バスターはパトエネルギーの消費が激しく、1回の出動で1発しか射てない。
このほか、他のロボからパトエネルギーの供給を受けることで、更に強力なアルティメット・バスターを発射でき、全ロボによるオールスター・アルティメット・バスターと、デカバイクロボとのツインロボ・アルティメット・バスターが使われている。
文献によっては「スワットモード専用」と書かれているが、本編中では「対応」としか言っておらず、実際、49話『デビルズ・デカベース』、50話『フォーエバー・デカレンジャー』では、デカブレイク1人が操縦して戦闘している。
また、43話『メテオ・カタストロフ』では、レッドとブルーの2人だけでファイナル・バスターを使用している。
ただし、ブレイクが乗っている際にはファイナル・バスターを使用しておらず、49話では、わざわざアルティメット・バスター使用後にロボを乗り換えている。
一応、過激な運動性能によるG対応のため、スワットモードの装甲が必要だという説明をしている本もあるが、Gを装甲で吸収するのは無理がある。
これらのことから考えると、このロボがスワットモード対応なのは、ファイナル・バスターの発射の際、コントローラーモードにしたディーリボルバーが必要なためではないかと思われる。
『デカレンジャー』では、巨大ロボの武装変換システムを廃し、『タイムレンジャー』以来4年ぶりに、1号ロボ、2号ロボ(超合体用パーツ)、3号ロボという構成に戻った。
3号ロボがメイン5人の乗る5台合体ロボなのは、『ゴーゴーファイブ』以来5年ぶりとなる。
そして、前作『アバレンジャー』での反省からか、プロポーションを損なう電動システムは入れず、代わりに電飾システムが採用されている。
もっとも、電飾システムもまたかなりのスペースを取っているため、プロポーションは崩さなかったものの、スーパー合体の際にパトストライカーをどう処理することもできないという欠点は残った。
そして、胴体部を構成するパトストライカーに、振動センサーと連動した「ガシーン!」という音声とパトランプの点灯システムを内蔵させ、脚部の2台には、合体により差し込まれたパトストライカーのパーツの点灯が透けて見えるようにパトライトを配している。
これによって、玩具を合体させるたびに音と光が入ることになり、本編での合体完了後のパトライト点灯の再現となった。
また、警察のロボットということで、白と黒を基調にパトランプをつけることにしたが、それだとパトレイバーっぽくなってしまうので、戦隊らしく各メカにキャラクターカラーを配したそうだ。
なお、戦隊ロボがバイクに乗るというのは初めての試みであり、商品では、膝関節は曲がらないものの、組み替えによりライディングデカレンジャーロボの再現ができる。
ライディングデカレンジャーロボは、タイヨーからバイクのラジコンという形で商品化されているが、これはスーパー戦隊としては初めての商品化パターンだった。
また、デカベースロボは、『オーレンジャー』のキングピラミッダー以来実に9年ぶりの要塞ロボであり、空母ロボを含めても『ゴーゴーファイブ』のゴーライナー以来5年ぶりとなる。
そういえば、着ぐるみが用意された要塞ロボは初めてだ。
なんでも、当初はデカバイクロボと単独で合体させるなど、玩具展開での連携も考えていたが立ち消えになったらしい。
同じように立ち消えになったネタとして、パトストライカーが単体で人型ロボに変形するという企画もあったそうで、アームが内蔵されているのはその名残だとか。
そして、ロボと銃の二つの合体パターンを持つデカウイングロボだが、要するに腕を構成するパトウイング2がグリップと引き金に変形するわけだ。
『宇宙刑事シャイダー』のバビロスの合体ロボ版だと思えばいい。
当然、このグリップは玩具を銃として遊ぶためのものであり、本編中でこのグリップを握る者は存在しない。
ただし、43話では、デカベースロボ、デカレンジャーロボ、デカバイクロボの3体がデカウイングキャノンを支え、それぞれのパトエネルギーを注入してオールスター・アルティメット・バスターを発射するということをやっている。
これは、玩具のCMで寄り集まっているイメージの再現なのだろうが、本編では、ファイナル・バスターを既に発射済であるため、ほかからエネルギーを供給しなければ2発目を撃てないという状況を上手く利用していたと言える。
なお、このデカウイングロボは、活躍場面のほとんどがCGなどを使ったバンクで、着ぐるみを使ってのアクションシーンは少な目となっているが、その分、着ぐるみの視界を気にしなくていいのか、常に目が光っているという変わり種になっている。
敵組織:なし
怪人:アリエナイザー
要するに異星人犯罪者の総称。
その特殊能力を使用して、特殊な犯罪を行う。
当然、色々な星に出没するが、デカレンジャーが戦うのは、地球に来て犯罪を犯した(犯そうとした)者だけである。
大抵は地球に来る前に色々な星で悪事を重ねており、宇宙警察のクライムファイルと呼ばれる犯罪者情報に登録されている。
ネーミングは、その外見、性質等に引っかけてのシャレが多く、天秤型のバラン・スー、スケコ星人マシュー(すけこまし)、ダイナモ星人テリーX(バッテリー)などとなっている。
武器商人:エージェント・アブレラ
レイン星人で、無数のコウモリのような影に分離して移動することができる。
アリエナイザーに様々なアイテムや巨大メカを売ったりレンタルしたりする武器商人だが、彼もまたアリエナイザーである。
当然、各アリエナイザーとは商人と顧客という関係であり、上下関係はないが、客に向かって横柄な口をきくという良くない癖がある。
地球でばかり活動しているように見えるが、実はかなり広域で商売しており、ブラックマーケットでは相当な大手らしい。
実際、30話『ギャル・ハザード』では、他星を破壊するため、スロープ星人ファラウェイを利用するという、地球外での商売の模様が描かれている。
商売のために星間戦争を引き起こしたりもしており、過去に銀河を1つ消滅させたこともあるという。
デカレンジャーに何度も商売の邪魔をされ、地球での累積損失が百億ボーンを超えたため、遂に自ら挑戦状を叩きつけるに至った。
声の出演は、『アンパンマン』のバイキンマンで有名な中尾隆聖氏。
戦闘員:ドロイド
アブレラが扱う商品のメカ人間で、アーナロイド、バーツロイド、イーガロイドの3種類があり、この順番で知能・戦闘能力・値段が高くなっていく。
アーナロイドで一般の作品の戦闘員クラス、バーツロイドは怪重機を操縦する程度の知能を持ち、イーガロイドは、番組初期のデカレンジャー5人を相手にほぼ互角に戦えるほどの戦闘能力がある。
アーナロイドは顔面にいくつか穴が開いているデザイン、バーツロイドは顔に×状の飾りがあり、イーガロイドは頭にイガイガが付いているという、見たまんまなネーミングになっている。
なお、イーガロイドは、ゲド星人ウニーガをモデルに作られている。
『デカレンジャー』には、特定の組織が登場しない。
そのため、番組内で敵方に統一感を保つために設定されたのがエージェント・アブレラだ。
アリエナイザー達は、この商人からドロイドや特殊なメカや怪重機を買ったり借りたりして各種犯罪行為を行うわけだ。
実際、アブレラが絡んでいないと考えられる犯罪は、1年通して5話『バディ・マーフィー』、27話『ファンキー・プリズナー』、37話『ハードボイルド・ライセンス』、45話『アクシデンタル・プレゼント』だけとなっている。
なお、「アリエナイザー」という名称は、「ALIEN」に「IZER」を付けた造語で、ついでに「アリエナイ」に引っかけて“不可能犯罪を行う者”という意味を持たせたらしい。
デカレンジャーの名乗りにある「不思議な事件を追って」というのは、それを指している。
もっとも、話が進むにつれて、不可能犯罪でないものが多くなっていったようにも思える。
東映の『デカレンジャー』公式サイトにあるジャッジメントリストのコーナーでは、毎回登場するアリエナイザーの説明で、必ず「〜はアリエナイ。」と書いていた。
巨大化
アリエナイザーには、最初から巨大な者もいるし、体質により、何らかの刺激を受けることで巨大化する者などもいるが、ほとんどは等身大である。
本作中では、怪重機と呼ばれる巨大ロボが巨大怪人の代わりとなっている。
怪重機は、アブレラが扱う商品のカテゴリーの1つで数機種存在し、恐らくそれぞれ値段も違うと思われる。
また、怪重機と操縦士役のバーツロイドがセットで販売されることも多い。
ただし、アブレラは、理性を失わせた上に巨大化させる薬も扱っており、無理矢理巨大化させられて暴れたジューザ星人ブライディのような者もいる。
ラストへの流れ
地球で誕生した生物兵器ブラウゴール(弟)を育成するため巨大な隕石を呼び寄せるというアブレラの作戦は、地球署の活躍によって阻止された。
大儲けを邪魔されたアブレラは、ボクデン星人ビスケスを雇って、地球署のスペシャルポリスを襲い階級章を奪うという“宇宙警察なんて怖くないキャンペーン”をはったが、これも失敗してしまう。
そんな中、バンは、かつて地球署のレッドだったギョク・ロウに評価され、新設の特殊部隊:ファイヤー・スクワッドの一員として抜擢されることとなった。
意地を掛けて地球署の面子を叩き潰すことにしたアブレラは、顧客であるクラーン星人ジェリフィスを利用し、スーパーデカレンジャーロボが出撃した隙を狙ってデカベース乗っ取りを企てた。
アブレラは、それまでデカベースに侵入したことのある契約相手(アリエナイザー)から入手していた情報などを元に、戦車アブトレーラーを使って外壁を突破し、大量のドロイドと、脱獄の見返りとして傭兵にしたアリエナイザー:ゲド星人ウニーガ、ドラグ星人ガニメデ、ジャーゴ星人スキーラ、ギモ星人アンゴールを率いて侵入する。
ハイパーマッスルギアを装着したアリエナイザー4人と互角以上の戦いを続けたデカマスターだったが、人質に取られたスワンを脱出させるために深手を負い、敗れてしまう。
ジェリフィスを倒し、デカベースに舞い戻った6人の前に、アブトレーラーが変形した怪重機アブトレックスが立ちはだかり、デカレンジャーロボは破壊されてしまった。
アブレラはデカベースロボで、都市破壊に向かう。
ジャスミンが警視庁へ通報したため人的被害こそ防げたものの、街は壊滅し、更に数か所が次々と破壊されていった。
そして、このことを知った宇宙警察本部では、デカベースロボを破壊することを決定し、各星の主力部隊を地球に派遣した。
一方、スワンの機転により、デカベースが占拠される前に地下格納庫に移されていたデカウイングロボを入手した6人は、ヌマ・O長官の手を出すなとの命令に背き、デカベースロボへと向かう。
ツインロボ・アルティメット・バスターでアンゴールの乗るアブトレックスを破壊し、デカウイングロボの操縦をデカブレイクと交代したデカレンジャーは、スワットモードでデカルームに突入するが、デカベースの全てのコントロールを掌中に収めていたアブレラは、5人の変身を強制解除させてしまう。
また、地球近くには、自動迎撃装置による罠が展開されており、何も知らない宇宙警察の主力部隊はこのままでは全滅してしまうという。
アブレラにより通信も不能にされた5人は、マーフィーの援護で危機を脱し、一旦分散して行動することになった。
そして、攻撃を受けて変身が解けてしまったテツも、5人を信じ、デカベースロボの都市破壊を防ぐためデカウイングロボで牽制を続ける。
そんな中、ジャスミンは、落ちていたディーソード・ベガからドギーの残留思念を読み取り、鉄工所にあるマーフィーの犬小屋の隠しスイッチにより、デカベースの全機能を鉄工所に移すシステムがあることを知った。
ジャスミンは、合流したセンのアイデアで、基地内の灯りの明滅によるS.P.Dシグナル(モールス信号に似た暗号)でバン達3人にそのことを伝えた後、追ってきたスキーラを2人で足止めすることにした。
そして、信号で情報を知ったバン達3人は、それぞれ鉄工所を目指す。
ウメコがガニメデを、ホージーがウニーガを足止めしたお陰で、バンは包囲網を突破できた。
イーガロイドの妨害をかいくぐって鉄工所のシステムを起動したバンにより、デカベースロボは停止、変身・通信も回復し、宇宙警察主力部隊は罠にはまる前に進行を停止することができた。
そして、変身を果たした4人は反撃を開始し、傭兵達をデカベースの外に叩き出す。
バンもまたアブレラと対峙し、変身してアブレラごと外に飛び出した。
合流したブレイクがウニーガを、ブルーとグリーンがガニメデを、イエローとピンクがスキーラを倒し、ついに5人はアブレラを追い詰めた。
そして、「私が死んでも悪は滅びない」とうそぶくアブレラに、レッドは「人々の心に正義の炎が燃えている限り、悪が栄えることはないんだ!」ときっぱり言い放つ。
こうして、アブレラはディーバズーカでデリートされ、死んだと思われていたドギーも無事生還し、事件は解決した。
その後。
ファイヤー・スクワッドに転任したバンに代わり、一般のスペシャルポリスになったテツが地球署に正式に配属され、新たな5人のデカレンジャーが地球を守ることになった。
そして、バンは、ファイヤー・スクワッドの一員として、宇宙のどこかで今日も犯罪と戦っている。
Vシネマ 特捜戦隊デカレンジャーVSアバレンジャー
VSシリーズ第10弾。
死者を復活させる能力を持つトリノイド0号サウナギンナンが封印されている宝玉をヤツデンワニが隠し持っていたという設定で、デズモゾーリャ復活を企むアリエナイザー:ギンジフ星人カザックの活躍を描いた娯楽作。
死者を復活ということで、仲代壬琴=アバレキラー復活に繋がるのが上手い。
例によって時系列無視の番外編となっており、数年前にはあったはずの地球署の面々がデズモゾーリャ関連の騒ぎをまるで知らなかったり、1年の間に「恐竜や」が巨大外食産業に成長していて、しかも社長がヤツデンワニだったりと、“細かいことは言わないで”といった開き直りが見える。
その一方で、プロの戦隊VSアマの戦隊という比較を持ってきて、デカレンのプロ意識を強調し、アバレンについては、「俺はプロの父親なんです!」という凌駕の台詞で“アマチュア戦隊だけど生活のプロフェッショナル”と位置づけ、幸人が整体の技能で復活ジェニオの弱点を見付けたり、らんるが自作のアイテムでブレスやSPライセンスに付着した粘液を除去して変身機能を回復させたりといった『デカレンジャー』ではあり得ないタイプの見せ場も作っている。
こういった娯楽作の場合、細かいことを言うのは野暮だと承知しているが、それでもやはり仲の悪いレッド2人だけで出動させるために、幸人がボスの整体に燃え、らんるがメカフェチ全開で鉄工所から出ないなどという状況を作ったあざとさは鼻につく。
また、いくら娘のためとはいえ、デズモゾーリャ復活に必要なアイテムを守る戦いの最中に、電話をかけに戦線離脱するアバレッドには頭痛を感じた。
また、ジェニオら復活怪人達が口もきかずにカザックの配下に収まっていたり、カザックが何の疑問も持たずに復活したデズモゾーリャが自分の部下になると信じていたりするところを見ると、どうやら復活した者は復活させた者に従うという不文律があるようなのだが、復活したアバレキラーはバリバリでいつものとおり(しかもスーツの暴走は忘れられている)なので、その辺の違和感も多少あった。
そういえば、ミコトに残っていたリジェの力(キス)でアナザーアースにやってきたアスカに、どうやって帰るんだろうと首を傾げたり、ブラキオが何の説明もなくやってきたりしたことで一瞬意識が飛んだことは秘密だ。
なお、キラーアバレンオーが登場しているが、アンキロベイルスが登場していないので、今回は6体合体バージョンになっている。
とはいえ、頭を空っぽにして見る分には、懐かしい面々があの頃以上に妙なノリで暴れ回る姿が楽しい。
アバレキラーがすっかりおいしいところを独り占めしているので、キラーファンなら絶対見た方がいいだろう。
個人的に、最も許せなかったのは、「人間、見ているだけでいいのか」というトップゲイラーの台詞。
名前で呼ぶようになったんじゃなかったのかよぉ…。
傾向と対策
シリーズ26作目(『ゴレンジャー』からは28作目)となった『デカレンジャー』は、シリーズで唯一敵組織が登場しない作品だ。
これまでにも、『カクレンジャー』初期では、敵方である妖怪が組織だっていなかったが、それでも2クールには貴公子ジュニアが敵方の顔として登場していたし、後半は大魔王率いる軍団が前面に出てきており、年間通して組織が存在しなかったのは初めてなのだ。
また、刑事物という形式を取った都合上、敵方は、結局のところ単なる異星人犯罪者でしかなく、出身星や能力がそれぞれ違うこともあってデザイン的にも非常にとりとめないものとなっている。
これらをある程度まとめ上げるために設定されたのが、エージェント・アブレラだ。
武器商人として毎回の敵に怪重機やドロイドを売りつけることで、敵方の代表として視聴者に認識させると共に、戦闘員的存在であるアーナロイドが画面に毎回のように登場して、敵方に統一感を与える。
また、登場する怪重機の販売元をレギュラーの武器商人にすることによって、“量産品だから同じタイプがいくらでもある”という自然な状況を作り上げ、無理なく等身大怪人と巨大怪人を別物にすることに成功した。
通常、等身大怪人と巨大怪人を別物扱いにすると、毎回着ぐるみが2体必要になるため制作費が嵩み、1年持たなくなる。
実際、過去にそれをした『ゴーグルV』では、巨大ロボ:コングは、等身大怪人に毎回同じ下半身を付けたものになってしまって使い回し感が発生し、『バイオマン』では、等身大怪人をレギュラー化させたため、等身大で敵を倒せず弱さを感じさせてしまうという弊害が発生している。
この点、『デカレンジャー』のやり方は自然であり、一歩進めると、等身大怪人さえ出さずにイーガロイドを登場させ、怪重機とバーツロイドを登場させるだけといった制作費軽減策を無理なく行えるということになる。
実際、それで制作費をかなり浮かせているものと思われる。
さらに後半になると、首から下を覆う怪人用強化服マッスルギアが登場し、首から上だけ着ぐるみで、下は服という安上がりな怪人を出せるようにもなっている。
また、劇場版用に、それまで本編に1体ずつしか登場していなかったイーガロイドの着ぐるみをもう2体制作しており、それらは劇場版撮影終了後、本編にも登場している。
逆説的だが、使い回しがしやすいように組織を作らなかったということもあるかもしれない。
というのは、1つの組織の中で同じような巨大ロボをしょっちゅう出していると、何だか組織がしみったれているように見えてしまうからだ。
『ハリケンジャー』では、サーガインの愛機メガタガメが何度も登場しているが、これとて、幹部が常に4人以上いるお陰でサーガインの出番が少なく、なおかつサーガインが改良を加えながら登場しているということが目に見えたからしみったれずに済んだのだ。
幹部2〜3人の組織でこれをやったら、相当けちくさく見える。
その点、組織に属していなければ、売る側が同じということで納得しやすくなる。
また、犯罪者が組織に属しているとなれば、大掛かりなシンジケートなり宇宙マフィアなりといった形になるが、同じような犯罪ばかりするわけにはいかないし、特定の犯罪を目的とする犯罪者揃いにしても、“なんでそんな奴ばっかり揃ってるんだ?”という疑問を抱かずにはいられないだろう。
刑事物として、怪人を“犯罪者”という扱いにすると決めた時点で、それぞれ単独という形は決まってしまったのかもしれない。
あいにく鷹羽は刑事物には詳しくないのだが、詳しい人間に言わせると、『デカレンジャー』は世間で言われているほど刑事物っぽくはないのだそうだ。
1つには、制服警官のような“身内の被害者”的な立場の存在がいないことなどがあるという。
考えてみれば、S.P.Dはアリエナイザー犯罪に特化した組織だし、地球署自体がそういう組織であることは間違いなかろう。
なにしろ、普通の犯罪なら、日本の警察がいるのだから。
もっともそうなると、逆にデカベース内の一般職員が何をしているのか非常に疑問なのだが。
整備などはスワンでなきゃ駄目なわけだし、細かい点検でもやっているのだろうか?
ともあれ、“刑事物っぽいかどうか”については、前記のとおり詳しくないのであまり言えないが、確かに“刑事物”という漠然としたイメージだけで作られていると言われたら納得する。
何でもスタッフは『デカレンジャー』を作るに当たって『太陽にほえろ』をかなり意識したらしい。
OPのキャラ紹介画面で、“刑事なら走らなきゃ!”と6人を走らせているのもそのせいだそうだ。
恐らく、全体的にそういったイメージだけで構成していったのだろう。
まぁ、戦隊物のフォーマットと持ち時間では、犯罪者の動機や関係者の状況描写、戦闘の全てをこなすのは無理だろうし、さらりと表面を撫でる程度でいくしかないのかもしれない。
ただし、そういった刑事物云々とは別に、『デカレンジャー』には妙な拘りがある。
元々、「デカ」というのは、明治時代に刑事が制服では目立つため角袖の着物を着ていたことから、「デソクカ」と逆に読んで縮めた“刑事を意味するスラング”だ。
今ではそんな経緯を知っている人はそう多くないだろうが、敢えてスラングをタイトルにし、ロゴに犬を配した上、署長を犬顔の宇宙人にするという妙な拘りには、「警察の犬」というよくある侮蔑語を意識していることが窺われる。
これまでにも、『勇者特急マイトガイン』『ASTRO-BOY鉄腕アトム』で、犬型のパトカーというのが出ているが、これらは脇役でしかない。
主役であるヒーローに「警察の犬」を当てはめているということには、開き直ってシャレにするにも凄すぎるという妙な感慨が湧く。
ご丁寧に、必殺武器ディーバズーカは、犬型ロボット:マーフィーに骨(キーボーン)をくわえさせて完成するし、6人が乗る白バイやパトカーの名前も犬の種類を使っている。
拘りと言えば、サブタイトルにも拘りがあり、「ファイヤーボール・ニューカマー」などのように、英語(和製英語含む)で「・」が1つ付いたものと統一されている。
また、アイキャッチは、Aパートではロゴの犬のマークが「アオーン」と鳴き、Bパートでは、その回の主役が画面に向かって発砲して弾痕が浮き上がるという形式になっている。
この際、デカブレイクはパンチで突き破っているし、レッドはちゃんと2梃拳銃だ。
デカマスターのときは、ディーソード・ベガを振るってぶった斬っている。
主役級が2人の場合は、左右に分割して2人が映るし、49話では6人同時に映っている。
また、前年に続いて『仮面ライダー』枠と合わせての『SUPER HERO TIME』になっていることが多く、『仮面ライダー剣』の後でデカレンジャーのキャラの変身シーンなどが挿入されていた。
そして、『ハリケンジャー』以来恒例の、次回予告終了後のスポンサー紹介画面に次回映像が流れるのも健在で、特に最終回放映後には、デカレッドが、次作『魔法戦隊マジレンジャー』のマジレッドと肩を組むというサービスカットもあった。
さて、キャラクターの描写などを見てみよう。
デカレンジャーが所属する宇宙警察地球署は、大規模組織でありながら一般職員の影は極めて薄く、ほとんどデカルームとスワンの鉄工所、メディカルルームだけが地球署の施設のような感じになっている。
その分、デカレンジャー各人には、それなりに強い個性が与えられている。
バン以外の各人に、エリートで射撃の名手、推理力抜群、エスパー、変装名人、スーパーエリートといった特別な能力を与えているのはその一環だ。
もっとも、ウメコとテツについては、その技能よりは、能天気で風呂好き、「ナンセンス」という口癖でキャラを立てているような形になってはいるが。
バンについては、能力ではなく、1話のサブタイトルにあるとおり、「火の玉野郎」という一直線な性格が特徴として前面に出されている。
前述のとおり、バンのジュウクンドーは、剣を持たないレッドのアクションに意味を持たせるのが目的で、バンの能力として設定されたのではないと思われる。
この6人に、場を引き締める上役たるドギーが加わることで、小さいながらも組織としての体裁をきっちりと保ち、ビジネスライクではないのに情に流されすぎないプロ集団が出来上がっていた。
実のところ、スーパー戦隊では『ゴーゴーファイブ』の巽モンド博士以降、きちんとした司令官がいない状態が続いていた。
正確には巽博士も、父としての威厳に欠ける(というか、子供達にバカにされている)面があり、“きちんとした”司令官とは言えないかもしれない。
ただ、その後の作品は、メンバーのみだったり、司令官がハムスターだったりと、統率力に欠けるので、博士はかなりマシな方だ。
そういう意味で、ドギーはきちんとした司令官であり、6人の心を掌握していたし、的確な指示を出していた。
メンバー間の無駄な衝突がなかったのは、ドギーのお陰と言える。
また、一応宇宙警察本部のヌマ・O長官なども時々顔を出しており、組織が宇宙規模のものだということを多少アピールしていた。
このように、組織としては、そこそこしっかりしたものだったと言えるだろう。
こういった刑事物テイストと、犯罪者単位のエピソードのお陰で、物語全体を揺るがすような大きな矛盾が出ることもなく、1話完結型の作劇が1年間続いたわけだ。
そして、敵が組織ではなく“犯罪”という抽象的なものである以上、戦いに終わりはなく、“戦いは続く”で終わる唯一のスーパー戦隊ともなった。
正確には、『ダイレンジャー』も50年後に戦いが再開されるし、『ガオレンジャー』でも、オルグがいつの日かまた出現する予感を残しているが、メインのメンバーが引き続き戦いを続けるという展開はほかにない。
これは、ヒーロー物として考えれば、あまりいいエンディングとは言い難いが、刑事物としては当たり前のことでもある。
最終回直前に至るまで一般の犯罪者ばかり相手にしていたことは、この作品を考える上でマイナス要因の1つとも言われているが、刑事とヒーローという天秤の上でバランスを取るに当たっての選択肢の1つではあっただろう。
このお陰か、番組は落ち着いたバランスの取れたものになり、高年齢層に支持された。
同時期の『仮面ライダー剣』の年間構成が滅茶苦茶で不評を買っただけに、その反動もあったのだろう。
一方で、変身前の5人が来ている服(S.P.D隊員服)の子供用が発売されたり、焼肉チェーン店の「牛角」でデカレンジャーメニューが用意されてCMが流れたり、『仮面ライダー龍騎』以降おなじみのキャラデコなるキャラクター人形付きのクリスマスケーキが発売されるなど、子供向けのラインナップも揃っていたが、玩具の売上はあまり芳しくなかったらしい。
このように、特に大きなお友達に好評を博した本作だが、もちろん、アラがなかったというわけではない。
細かく見ていくと、結構おかしな描写や展開、説明不足な点が目立つのもこの作品の特徴だ。
中でも一番大きな問題点がジャッジメントシステムだろう。
これは、上記のとおり、トドメを刺す直前に、宇宙最高裁判所にジャッジメントを申請して判決を仰ぎ、その判決の結果がデリート許可=死刑である場合にだけ、その場で抹殺することができるという制度だ。
スーパー戦隊シリーズでは、以前『タイムレンジャー』で圧縮冷凍という、殺さずに捕らえるだけの方法が登場している。
この方式を踏襲しなかった理由については分からないが、やはり倒した(殺した)方が視覚的な説得力があるため、その場で死刑ということが可能になるようにしたことと、SPライセンスといった商品展開上の要請があるだろう。
また、巨大戦を巨大化ではなくロボットによる戦闘にしたため、ロボだけ破壊して搭乗員を殺さないという作劇が難しかったということもあるのかもしれない。
ただ、刑事が犯人の生き死にを勝手に決めるわけにはいかないので、裁判所に許可を求めるというワンクッションを置いたと思われる。
このため、ジャッジメントが「○」、つまりデリート不許可の場合には、単に逮捕するに留めることになる。
とはいえ、基本的にデリートが許可されるため、ジャッジメントそのものがワンパターン化してしまった感が強い。
これは、やはり怪人は倒すものというヒーロー物の基本がどうしても出てきてしまうことによるのだろう。
『火曜サスペンス劇場』などのせいか、刑事ドラマでは手錠を掛けられた犯人が車に乗るシーンで事件の場面が終わることが多い印象があるが、巨大ロボとの戦闘などをやらなければならないスーパー戦隊シリーズでは、等身大の怪人を捕まえて終わるという展開はやりづらかったのだろう。
また、商品展開の絡みもあって、ジャッジメントには「○」と「×」しかない。
「×」が出て「許可!」と言われるのもなんとなく腑に落ちない部分があるが、これは逆にすると「○=殺していい」となってしまうため、なんだかデカレンジャーが「殺したい、殺させろ」と裁判所をせっついているような印象を受けることを懸念してのものだろう。
それでなくても、嬉々として「デリート許可!」「ゴッチュー!」と言う6人の姿に疑問の声が上がったのだから、「○」でデリート許可ならば、なおのことだったはずだ。
そこで、「×」=生かしてはおけない、「○」=生きていていい、という意味になるわけだ。
ともかく、以前にも気分屋な記聞で書いたが、「○」が出たのはたったの2回と圧倒的に少なく、また、本来ジャッジメント申請して「○」を出すべき相手に申請そのものをしないため、「○」が有名無実化してしまったのも大きなマイナスポイントだった。
これも以前に書いたが、死刑が「×」はいいとして、「○」には有罪(死刑以外の刑罰)と無罪両方の意味があるため、「○」を出しにくかったのだろう。
商品展開上、「○(無罪)」「△(懲役刑)」というような三択にできなかったのが悔やまれるところだ。
ともあれ、敵を追い詰めたところでのジャッジメント申請は、戦いの流れを寸断するばかりでなく、追い詰めた相手をいたぶっているかのような印象さえ与えてしまうもので、中盤ころには、既にこの番組一番の問題点とも言われていたようだ。
しかも、場合によっては、「既にデリート許可が下りている!」などと言って流れを切らないようにする配慮もあるため、逆に“どういうときにあらかじめデリート許可が下りているのか”が分かりにくくなってしまった。
なにしろ、大抵のアリエナイザーは、地球に来るまでにデリートされそうな罪を重ねているのだ。
“ジャッジメント申請は本人確認のためではないか”という説もあるが、許可があらかじめ下りているときは、本人確認すらしていない。
そして、これがこのシステムのもう1つの欠点なのだ。
通常のヒーロー物においては、敵組織は悪であるという前提があり、その組織から派遣される怪人は、何もしないうちに既に悪の手先というレッテルを貼られている。
このため、敵の作戦を未然に防ぐことはヒーローに課せられた重要な役割であり、まだ何も悪いことをしていない怪人を殺しても違和感がなく、むしろ賞賛される。
ところが、『デカレンジャー』の怪人は、何もしなければ単なるエイリアンでしかない。
地球には平和に暮らす普通のエイリアンがいくらでもいるし、そもそも地球署の署長だってエイリアンだ。
地球人でこそないが、犯罪を犯さないエイリアンはやはり「人間」なのだ。
悪事を行わないうちに殺すわけにはいかないし、デリート許可が下りるほどの悪事を地球でやられたら、未然に防げない、或いは最小限の犠牲で防げなかったデカレンジャーが無能に見えてしまう。
実際、地球でも多少の被害は出ているが、数十人単位の犠牲者が出るだけで、無能な気がしてくる。
このため、毎回のようにデリートされるアリエナイザーは、地球ではほとんど悪事を働かず、地球に来る前に既にデリート許可が下りそうなほど悪事を重ねてきた奴ばかりなのだ。
こうなると、ジャッジメントが無駄でしかないように思えてくる。
特に、特別凶悪指定犯罪者など、指定された時点でデリート許可が下りていそうなものだ。
もちろん、デリート許可するのは裁判所で、凶悪犯罪者と指定するのは警察だが、それにしたって指定する際にあらかじめ許可申請しておけばいいだけのことだろう。
また、何をするとデリート許可が出るかという基準がまるで分からない。
たとえば、2年前にジェニオを“デリートできなかった”理由として、鏡世界に幽閉された人達を解放したいというのがあり、事実、胸の鏡を壊すことで解放できたわけだが、これにより、ジェニオの罪は誘拐と幽閉に落ちてしまった。
被害者数こそ1万人と多いし、テツの両親が殺されたということもあるのでなんとなく誤魔化されてしまったが、テツの両親にしても、出会い頭の事故だったし、被害としては少々迫力不足だ。
また、ギャン・ジャバのように、1人も殺していないのにデリートされた奴もいる。
ギャン・ジャバの罪状は、ヤーコ(とバン)に対する殺人未遂のほかは、金庫破り(=窃盗)しかない。
それも、ヤーコの能力を考えれば、極めて平和裡に金を盗んでいたはずだ。
日本の法律で考えた場合、確かに殺人未遂には死刑もあるが、窃盗には懲役刑しかない。
実際、同じようなことをしつつ、金庫周辺を破壊(器物損壊)していたニワンデ達は懲役刑だった。
つまり、ギャン・ジャバは、この最後の殺人未遂以外ではデリートされる可能性のある罪は犯していないということになる。
刑事のくせに証拠もない容疑者を2人も殺したチョウ・サンの方がよほど悪質なのに、デリートどころかジャッジメントの申請もせずに懲役刑にしてしまった。
極めつけは、49話に登場する傭兵軍団だ。
彼らは、いずれも懲役刑の最中で、脱獄を条件に雇われたアリエナイザーだ。
それなのにドギーは、「お前達は全員デリート許可が下りている」などと言っている。
デリート許可が下りないから懲役刑だったんだろうに、どうして今頃デリート許可が下りているのか?
脱獄したことで罪が一段重くなって死刑相当になった可能性もあるが、それならそれで、一言くらい説明が必要だろう。
劇場版での“デリート許可後の戦闘”、37話『ハードボイルド・ライセンス』での“信号機での示唆”など、上手い演出もあるにはあったが、それはシステムの欠点を上手に回避しただけであって、このシステムがあって良かったということではない。
結局、ジャッジメントというシステムが本編にプラスに働いたことは全くなく、その意味では完全に失敗したと言えるだろう。
もう1つの欠点が、デカブレイクの描写だ。
彼の立場の微妙さが、この作品のパワーバランスを崩している元凶の1つとなっているのは間違いない。
まず、彼がほかの5人を「先輩」と呼んで下っ端的立場に甘んじていることがそもそもおかしいのだ。
テツの本来の立場を思い出してほしい。
彼は、特に凶悪であると指定された強力なアリエナイザーを専門に扱う超エリートだ。
ヌマ・O長官が「地球署は捜査の全てを鉄幹に引き継げ」と命じていたり、リサが「この事件は特凶扱いですから手出し無用です」とドギーに言っていることから、特凶は、指定犯罪者捜査に関する限り、署長にすら口を出させないほどの強権を持っていると考えられる。
確かに、地元警察が個別に動いたばかりに凶悪なアリエナイザーに逃げられたりすると困るから、地元警察の動きをコントロールする権限があるのは当然だろう。
それまで地球署では、養成学校首席卒業のホージーがエリートとして名を馳せていたが、テツは次元が違うのだ。
刑事物で言うならキャリア(普通の警察官よりレベルの高い試験で採用された幹部候補生で、一般の警察官とは違うルートで出世する)のような存在と言える。
だから、本来ならば、意識するしないはともかく、テツのエリート的言動と5人との軋轢が重なりながら、やがて仲間として溶け込んでいくという過程が必要だったはずだ。
例えば、射撃が苦手と言いながら、ホージー以外の4人より腕前が上であるというような無意識の嫌味さといったものをもっと出して、無邪気にエリート風を吹かす嫌な奴にしなければならなかったのではないか。
第一、確かにテツは最年少だが、既に2年前にジェニオを逮捕したりと経験・実績を重ねており、刑事としてかなりベテランであることも語られている。
任官から1年も経たないバンなどよりよほど経験豊かなのだから、むしろ年上でありながら判断が甘い(とテツが感じる)5人に向かって「いい年してそんなことも分からないんですか」的な発言をするというのもありだ。
初登場時のデカブレイクは、デカマスターさえ苦戦したボンゴブリンを、巨大戦とはいえ軽くいなせるほどの戦闘能力の持ち主として描かれており、等身大戦闘でも、1対1ならブリッツも倒せたのではないかというほどの強さを見せている。
確かに、単独での捜査という行動様式と、相手にするのが特に凶悪なアリエナイザーであることを考えれば、1人で通常のデカレンジャー5人と同等以上の戦闘能力を持っていなければ意味がない。
ところが、その後、地球署に居着いてしまったデカブレイクは、普通のアリエナイザーにさえ翻弄され続け、33話『スワットモード・オン』では、指定犯相手とはいえ、真っ先に捕らわれて人質にされるというていたらくだ。
それこそ『特救指令ソルブレイン』のナイトファイヤー:香川竜馬のように、特別な事件のときだけ顔を出すという形式にすれば、メイン5人の強さを見せつつ、それより更に強いブレイクを見せることができ、このような弱体化は防げたはずだ。
なぜこうなったのかと言えば、制作側の諸般の事情から、登場からしばらくは画面への登場を多くする必要があったせいだろう。
新キャラとして視聴者に浸透させなければならないこと、商品展開の都合上、デカバイク及びスーパーデカレンジャーロボを登場させなければならないこと、劇場版撮影で忙しいレギュラー5人の撮影スケジュール調整などの要請から、既存メンバー1人とテツがペアを組んで捜査に当たるという展開が数話続いた。
ここで毎回揉めていては、さすがにテツが単なる嫌な奴になってしまうし、1人ずつで比べられるとブレイクの強さが際立って、本来の主役である既存メンバーの影が薄くなるから、相対的にブレイクを弱くせざるを得なくなる。
同時に、テツが既存メンバーの行動にいちいち感心するというクッションが入ってしまい、ベテランらしさは雲散霧消してしまった。
これにより、実力者でありながら捜査方針の違うテツが、5人の捜査方針を「ナンセンス」と言ってバカにするとかいった軋轢が生まれる素地がなくなってしまったことは大変惜しまれる。
これほど大きなものではないが、『デカレンジャー』には、ほかにも細かい問題点が散在している。
まっ先に上がるのが、1話で地球を覆っていたシールドシステムだろう。
味方であるパトストライカーの大気圏突入すら阻んだこのシステムがあるからこそ、ドン・モヤイダは死体のふりをしてまでデカベースに潜り込み、システムを停止させて怪重機を地球に持ち込んだのだ。
ところが、いつの間にかすっかり忘れ去られ、怪重機もデカウイングロボも出入りし放題だ。
こういった小道具だけでなく、毎回のように繰り返されるものでも、時々変なことが起きているのだ。
それらの共通点は、“設定を省みず、その場のノリで動いてしまう”という部分だろう。
例えば、デカスーツ装着のシステムだ。
これは、コールを受けたデカベースの変身システムが、形状記憶宇宙金属デカメタルを放射して装着させるというもので、放射元が地上にある以外は『宇宙刑事ギャバン』の「蒸着」と同じシステムと言っていい。
32話『ディシプリン・マーチ』では、スワットモードを会得するための特別訓練を受けることになった5人が、惑星カダで変身するシーンがある。
いくらなんでも地球からメタルが送られてくるというのには無理があるから、その星の訓練所なりに訓練用の変身システムが設置されていて、そこからメタルの放射を受けたと考える方が合理的だろう。
だが、それについては全く説明がない。
難しいことではなく、いつもの変身ナレーションで「デカベースから」の部分を「訓練所から」と言い換えれば済むことなのに、それさえなかった。
また、翌33話『スワットモード・オン』では、ブンターから「お前達のSPライセンスにスワットモードを転送しておいた」という台詞が出ていながら、更に翌週の34話『セレブ・ゲーム』では、スワットモードになる際に「デカベースから〜」とナレーションされている。
鷹羽としては、この流れについては、SPライセンスにスワットモード変身用のプログラムなどが転送されたと理解しているが、あくまで状況からの推測に過ぎない。
事実、このサイトの管理人:後藤夕貴は、33話時点で“スワットモード変形用のデカメタルだけがSPライセンスに内蔵されたのではないか”と考えており、内蔵できるわけはないと思っていた鷹羽と議論になった。
結局、内蔵されていないという結論が番組内で提示されたわけだが、では「転送したのは何か?」と言えば、答は提示されていない。
ちょっと脚本で気を遣えば済むというのに、どうしてもう少し何とかできないのだろうか。
また、36話『マザー・ユニバース』でスーパーデカレンジャーロボが大破したわずか5週間後の41話『トリック・ルーム』において、デカバイクロボが何事もなかったかのように復活しているが、あの2台は地球署にとって重要な戦力であり、修復作業ができるのはスワンだけというかなりやばい代物だ。
残骸が映っていれば、どの程度壊れたかも分かるし、修理可能かどうかも分かるが、単に大爆発して終わっているから、ほとんどバラバラというか瓦礫と化しているだろう。
新たなマシンは簡単に手に入るにしても、スワンの手による改造なしには合体はできないわけだから、何日掛かるにせよ、スワンの負担はかなりのものになる。
デカバイクロボだけなら、新規で取り寄せたものをとりあえず使い、後で合体機構を入れるということもあり得るから、登場すること自体は悪くない。
ただ、途中の話で、修理(改造)中の場面なり、スワンが「修理が大変」とぼやくなりのシーンを入れていれば深みが出るものを、何の説明もないままに復活させたので、視聴者に違和感を抱かせることになってしまうのだ。
これもまた、スワンが変形システムを入れたという設定でさえなければ、直ちに新しいロボを取り寄せることができたわけだ。
せめてデカレンジャーロボだけでも、正式装備扱いにできなかったのだろうか?
『デカレンジャー』は、そういうわずかな手間で大きな説得力を生み出すチャンスを無駄にしてしまうことが多い。
これは、勢い重視で全体的な整合性をないがしろにする傾向と言える。
そういった悪癖が最も如実に出たのが、48話からの最終3部作だ。
ここでは、それまで前後編以上の連続物が1度しかなく、各話の繋がりも薄かった『デカレンジャー』で、武器商人であるアブレラが遂に正面切って宇宙警察に挑戦するという展開になる。
この3部作は、一見すると非常に燃えるシチュエーションだ。
スーパーデカレンジャーロボの留守中にアブレラ一味がデカベースへ強行突入し、スワンを人質にしてデカマスターを倒し、メインコントロールを奪うという作戦で、デカベースの外壁の材質や内部構造などの情報をこれまで内部に侵入した者達から入手していたなど、物語の流れを上手く汲んだ作りになっている。
更に、デカベースロボをエサに宇宙警察の主力部隊をおびき寄せて叩き潰そうという壮大な計画にもなっており、地球のピンチが宇宙のピンチに直結している。
また、5人に全てを任せたテツは、街を守るために外で奮闘しており、唯一自力で変身・星間通信が可能なのに、5人のピンチも罠の存在も知らないという具合に、上手に蚊帳の外に置かれている。
その上で、変身・通信不能の5人が、それぞれの得意能力を生かして情報を共有し、体を張って仲間を先に進ませていくなど、「離れていても心は1つ」という5人の信頼関係が見事に描かれ、非常にキャラクターを生かした作劇になっている。
ここでは、
- ジャスミンの超能力によるコントロールシステムの発見
- センによる伝達手段の閃き
- 伝達後、センに「あいつをくい止めるぞ」と言われたジャスミンの「賛成の反対の反対!」という台詞
- ウメコの風呂と、「早変わりもだ〜い得意だって知らなかった?」という3話の台詞の変形パターン
- 「リーダーのあたしが〜」というウメコの勘違い発言
- 石を射ってエレベータースイッチを入れるホージー
- ホージーの「任せたぞ、相棒!」に、バンがニヤリと笑って「相棒って言うな!」と答えるいつもと逆のやりとり
- まずガラスを撃って弱くしておき、イーガロイドにはじき飛ばされた勢いを使ってガラスを破り鉄工所に飛び込むバンの咄嗟の計算
といった具合に、ウメコは少々お茶目が過ぎるものの、これまでの描写を盛り込んでおり、実に上手い。
特に、“体を張って仲間を進ませる”という王道展開ながら、センとジャスミンはその場にいないという変化球だ。
2人は、仲間に情報が伝わったかどうか確認できないままあいつらなら分かってくれるという信頼に基づき、少しでも仲間の負担を減らすため、敢えて逃げずに戦い敵を足止めしているのだ。
仲間の方でもそのことは分かっていて、鉄工所に向かうバンは、「俺がきっちりアンカー務めさせてもらうぜ!」と叫んでいる。
だからこその「離れていても、俺達の心は1つだ」となるわけだ。
これは燃える。
ところが、この話、よく考えてみると妙なところが目白押しなのだ。
この作戦自体は、数話掛けてアブレラに「大計画」と言わせてネタを振っているので唐突感はなかった。
だが、作戦の描写には、かなり唐突なものが多い。
スタッフ側では、やはり最終決戦にふさわしい巨大な悪との対決にしたかったらしく、突然、これまで正体が謎に包まれていたアブレラが、商売のために星間戦争を誘発し、銀河1つ消滅させた大悪人だという話を持ってきた上、地球近辺に惑星規模の迎撃システムを備えていると大風呂敷を広げてしまった。
これは余計だった。
確かに、デカベースロボほどの戦力を持っている署は地球くらいしかないだろうから、これを叩こうとしたら、かなりの戦力を必要とするだろう。
だが、逆に言えば、主力部隊は、そのビームをものともしないだけの戦力を揃えて来るわけで、ちょっとした罠くらいなら軽々突破するだろうし、そもそもデカベースを占拠するほど狡猾な敵と承知の上で来るのだから、罠に掛かるほど間抜けではなかろう。
つまり、バンの報告などなくても、全滅する心配はないのだ。
というか、そんな心配をしなければならないような連中が宇宙警察の実力者では困る。
また、宇宙の凶悪犯罪者はアブレラだけではないから、主力部隊といっても、各星の戦力の大半を集めたというほどではあるまい。
これを一網打尽にしたところで、犯罪天国ができるとは思えない。
もう1つ、アブレラがこれほどの重大犯罪者なら、特別凶悪指定犯罪者になっていてもおかしくない。
それが、最近初めてデカレンジャーの前に姿を見せたというならともかく、かなり以前に見せているわけで、クライムリストに載っていないことも確認されている。
クライムリストには、出身星や正体、顔さえ不明なアリエナイザーが何人も載っているのに、だ。
じゃあ、面が割れていなかったのは宇宙警察が無能だったってことだろうに、「奴はそんなに大きな悪だったのか!」などと驚かれても困る。
どうして地球を食い物にしようとする悪徳商人レベルの話では駄目だったのだろう?
また、デカベースに突入したデカレンジャー5人が、アブレラによって変身を強制解除されるというピンチも、無理矢理ピンチに陥れるための方便でしかない。
というのは、デカスーツは定着した形状記憶金属であり、一旦定着したスーツは、それなりのダメージを負うか、本人が解除しない限り、装着され続けなければおかしい。
それが、デカベースからの操作で強制解除できるということは、必要性があるから特別に解除システムを設けてあるということだ。
スーツの強制解除だけでなく通信回線の切断まで可能な緊急システムがあるのだ。
そんなものが必要となるのは、装着者が操られるなどして反乱を起こした場合と、部外者に装着されてしまった場合くらいだろう。
そして、そういったシステムがあるなら、当の装着者本人が知らされないということは考えにくい。
本気で反乱を企てるような奴か、記憶を利用して操られる場合でなければ、システムの存在を知らせないことに意味がないからだ。
その可能性も含めて責任者以外に知らせていないのならば、逆に、まるっきり部外者のアブレラがシステムの存在及び使用方法を知っているはずがない。
つまり、変身を強制解除されてピンチに陥ったということは、
- デカレンジャーは、変身解除システムの存在を知っていながら、さっさと壊さなかった
- アブレラは、デカレンジャーも知らない機密情報を、ちょっとデカベースに入ったことがあるだけのアリエナイザーから入手していた
- アブレラは、占拠して数時間で、自力でそれらシステムを解析し、使い方を覚えた
という3つのパターンしかありえない。
どれを取っても無理がある。
これは、アブレラがデカベースを占拠した時点で、スーツ転送システムを停止し、なおかつ通信回路をカットしておけば済んだ話だ。
もっと言えば、強力な電波妨害でエマージェンシーコールも通信も不可能にするだけでいい。
では、どうしてそんな簡単なことをしなかったのか。
答えは、そうするとデカベース内部で、変身・通信不能の5人が奮闘するという展開にできないからだ。
本部との連絡を予め断ってしまえば、主力部隊の話が6人に伝わらず、部隊全滅というピンチが描けない。
また、当初から変身不能になっていれば、変身システムをデカベースに依存しないブレイクが1人で突入するのが筋になる。
番組ではこうならないよう、死んだ&ロボもないと思って放置していた6人がデカウイングロボとデカバイクロボでやってきて、しかもアブトレックスまで倒してしまったという形にした。
これは上手いやり方で、ここで、侵入した5人が一旦ダメージを受けて変身を解除された形にして、その後変身不能&通信不能にしていれば、この問題点は防げた。
ただ、そうすると一旦負けて撤退という形にならざるを得ず、5人が弱く見えてしまう。
だから、5人が弱いせいではなく、敵がシステムを掌握してしまったためのピンチという形にしたのだろう。
気持ちは分かるが、却っておかしな展開になってしまったのは残念だ。
ほかにも、この最終回には、ちょっとばかりもったいない部分が多かった。
まず、デカベースロボの中で5人が普通に移動しているという点。
周知のとおり、デカベース内の床は変形により垂直になっており、当然、普段の壁が床の位置に来る。
だからこそ、変形時には一般職員を避難エリアに移動させるのだ。
窓も階段も90度回転しているから、最終回の最初にいたあの場所はどう考えてもおかしいし、階段を使って逃げられるというのもおかしい。
もちろん、変形後にデカレンジャーがデカベースロボのコクピットに移動するための手段はあるはずだから、いくつか移動用通路が確保されてはいるだろう。
だが、その程度の通路で、5人バラバラに、しかも追っ手を避けながら逃げられるほどルートがあるものだろうか。
説明すると面倒だし、わざとスルーしているのかもしれないが、気が付いてしまうと、やはり気になってしまう。
特に、こういう緊迫した状況を描く場合、少なくとも窓を見せるのはまずかろう。
それさえなければ、つまり外壁際でない通路であれば、変形に伴って天地が狂わないように調整されているエリアだと考えることもできるのだが。
次に、前回ばったり倒れたボスがいけしゃあしゃあとスワンの肩を借りて歩いてきたことだ。
せめて、重傷で入院するなり、メディカルルームのベッドに運ばれるなりしてくれれば、「頑丈な人だねぇ」で済んだのだが…。
さらに、テツがノーマルバッジになって正式に地球署に配属されたこと。
間違いだとは言わないが、金バッジの誇りを完全に捨て去ったというのは、ちょっと困る。
しかも、いくら使い慣れたスーツだからといっても、金バッジ専用のはずのブレスロットルを付けたままというのはまずかろう。
バンもテツも地球を離れ、全くの新人が3代目レッドとして配属されて、誰かが教育係になるという形でも十分いけるはずだ。
これは、48話で、テツが「先輩の後は俺が継ぎますよ」的なことを言ったことを受けての展開なわけだが、本来、特凶の彼が地球に留まり続けるだけでも異例と言えるのに、わざわざ降格するというのはどういうものだろうか。
その上、被害規模が大きすぎる。
デカベースロボによる破壊については、警視庁による避難誘導があったことから、恐らく一般市民もアブレラというアリエナイザーの大規模犯罪だったのだと理解してはいるだろう。
だが、装備を奪われて悪用され、あれだけの被害を出したのだ。
まぁ、かなり暴力的に奪われたという事情もあるから、世論もそんなに厳しくないだろうが、少なくとも責任がある以上、「宇宙一のチームになった」とか言って喜ぶのはまずいだろう。
せめて、破壊された街が1つで、2つ目の街が決戦の場だったなら、物的被害もいつも並、人的被害もほぼゼロということで、諸手を挙げて歓迎してもいい…と思ったら、デカベース内の一般職員には相当な死者が出ているはずだ。
アブレラの配下に直接やられていなくても、いきなりの変形のために避難区域に入れなかった人は、下手をすると長い廊下の端から端まで落下して墜落死という凄いことになっているかもしれない。
これで喜んでいるというのは、不謹慎すぎる。
なお、アブレラは、地球での累計損失が100億ボーンを超えたと言っているが、見ていた限り、代金後払いでやっていたアリエナイザーも、ドロイドをレンタルしていたアリエナイザーもあまりいなかったようだから、実質的な損失はそれほどなかったのではないかと思われる。
現金前払いであれば、後は契約相手が死のうが捕まろうが関係ない。
そのせいで悪い噂が立って客が減ったとも思えない。
少なくとも、地球にはしょっちゅう客が来ていたのだから。
だとすると、損失というのは、ブラウゴール育成での大儲けしそこねたことなどの儲けられるはずだったのに儲け損なった損失のことだろう。
そんな皮算用で逆恨みするというのもおかしな話だ。
デカベースが空になったのを見計らって攻めるということは、これまでいくらでもできた。
それをしなかったのは、アブレラにとって、自ら手を下すリスクを犯してまでする必要がなかったからだ。
それを、突然“儲け損なった損失”でやる気を出されるというのも困る。
この辺も説明不足の感が否めない。
それと、アブレラをあそこまで大悪人にした以上、「私が死んでも…」系の捨て台詞は非常にみっともない。
いずれにせよ、戦う相手が犯罪者である以上、デカレンジャーの敵がなくならないのは自明だし、今後も戦い続ける必要はあるのだ。
やはり、アブレラは単なる悪徳商人にしておいて、地球を食い物にしようとしていた悪は倒したが、宇宙から悪人がいなくなったわけではない。彼らの戦いはこれからも続くで締めた方が良かったように思える。
とまあ、このように『デカレンジャー』は、かなりいい線行っているのに、細かいところで深みが足りないという残念な作品だ。
残念と言えば、各キャラクターについて掘り下げがあまりなかったのも、かなり残念な部類に入る。
意外に思うかもしれないが、キャラクターについての描写は、あまり深くはない。
例えばジャスミンだが、“エスパー”と“妙な言葉を使う”以外の特徴をどれほど挙げられるだろう?
また、エスパーであることにしても、さほど膨らませたとは言えまい。
確かに、制御できないテレパシーで悩んだ過去は語られたが、それはスペシャルポリスになる前のことであって、その後、仲間とどのように折り合いを付けているのか、それが元でケンカになったりしないのか、全く語られていない。
手袋1つで能力をカットできるなら、高校時代からそれほど困らなかっただろうし、今でも多少の暴走はあって然るべきだ。
漫画『エスパー魔美』で、魔美の友人で彼女が超能力者だという秘密を知っている高畑が、ヌードモデル云々の話をしていて魔美の裸を想像し、しかもそのとき魔美がうっかり心を読んでしまうという展開があった。
このとき、魔美自身は全く気にしていなかったが、読まれた側の高畑は焦り、つい魔美を傷つけるようなことを言ってしまう。
ある程度気心が知れた仲でも、無防備な心を読まれるというのは、嫌なことのはずだ。
ジャスミンの場合、仲間達がうっかり心を読まれても笑って許せる人格者揃いなのか、裏表がないから心を読んでしまっても傷つかないのか、ほかの点で信頼しているから、多少心を読んだ・読まれたくらいでは動じないのか、それともジャスミン自身がすれてしまって動じなくなっただけなのか、まるで分からない。
番組中での彼女は、“便利な能力の持ち主”でしかなかった。
また、能力・口癖に関係のない部分での彼女の描写は、それこそ“ウメコの性格に憧れている”くらいしかなかった。
ジャスミンだけではない。
ほかのキャラクターも同様だ。
極論すれば、「正義は勝つんだ〜〜!」というバンの叫びは、バンの役割はそう叫ぶことだから叫んでいるに過ぎないのだ。
「宇宙一のスペシャルポリスになる」ということについては、確かにその背景が語られたし、非常に納得できる。
だが、バンが「正義は勝つ」と信じるに至った理由は、語られただろうか?
ホージーが努力家であることは、26話『クール・パッション』で語られた以外にも、3話『パーフェクト・ブルー』や11話『プライド・スナイパー』での射撃訓練のシーンから、なんとなく納得できる。
これに対し、バンが「正義は勝つ」と考えるようになった過去は語られておらず、“そういう設定のキャラだから”そうなのだとしか言えない。
普通なら、そういった過去話も、作品のどこかで語られるべきなのだが、そういった話はなかった。
確かに、しょっちゅう叫んでいたお陰で、バンがそういうキャラであることは伝わってくるのだが、やはりキャラクターの深みを増す上で、裏打ちは必要だろう。
ほかにも、1話完結型の作劇が裏目に出て薄っぺらくなってしまったものは沢山ある。
ホージーの妹の美和にしても、最終決戦のころにはすっかり忘れ去られてしまっている。
どこかの話の中で出てきた伏線以外の小ネタを、その後また別の話で使うということが、再生怪人編的な『アリエナイザー・リターンズ』や総集編『アクシデンタル・プレゼント』を別にしていくつあっただろうか。
ギョク・ロウが教えた“熱い心でクールに戦う”という話にしても、47話でいきなり出すのではなく、せめて4〜5話前にちょっと触れておいて、ギョクとはその後連絡が取れないという思い出話をしていたら、47話で因縁のテリーXが出てきたときの視聴者の思い入れはもっと大きかったろう。
また、そうすれば、バンは盗み聞きしなくても、暴走し始めたホージー達を見て直ちに動けたはずで、情報の統合力と行動力が一体になっているという描写にすらなる。
そう考えると、この作品では枠にはまった個性を、各話の中で発揮していただけだったように感じられる。
これらは、スタッフが、それぞれに持たせた設定を個性と勘違いしてしまったことが原因だと思われる。
最初から各人に特別な設定(特技)を持たせた都合もあり、各人の主役話はそれを生かした作劇が多い。
その結果、特技に依存したキャラ描写になってしまい、そのほかの意外な面を強調するような展開には持っていけず、逆に特技の裏側を描写することもなく最後まで行ってしまったように思える。
劇場版、最終回ともに、センの逆立ちとジャスミンの超能力描写をしていることも、彼らのウリがそれであるという制作者側の認識を示している。
特に、最終回のあの緊迫した状況下で、いきなり風呂に入っているウメコと、地球人型でないくせにそれに気を取られるガニメデには、かなり違和感があった。
浴槽をどこから持ってきたかは目を瞑るとしても、風呂が一番足止めに使える特技なのかと思うと涙が出る。
シャレをやるような和やかな場面ではないはずだ。
せっかく変装の名人というネタがあるのだから、アブレラなりほかのアリエナイザーに化けて「見付けたぞ。あっちだ!」とガニメデをどこかに誘導し、そこで「宇宙警察地球署の胡堂小梅ちゃんは、変装がだ〜い得意だって知らなかった?」と変装を解いて足止めする方がよほど自然だろう。
変装と言うより扮装だが、まぁそれくらいなら変装名人として納得できる範囲だ。
さて。
本作は、敵組織不在ということもあって、1年間淡々と物語が続いた。
武器商人が「エージェント・アブレラ」である以上、本来ならば、アブレラはエージェント(代理人)であり、その背後に大きな武器密売組織なりが控えていそうなものだったのだが、遂に組織性は描かれることはなかった。
あろうことか、アブレラ自身も組織のトップという位置づけではなく、個人で怪重機を作り、薬品を作り、それらを売って歩く個人商人としての扱いにしかならなかった。
最終決戦ですら、アブレラの周囲に傭兵以外の宇宙人はいなかったことから、確かに大規模だが、メカ人間を使っているだけの個人営業だったということは明らかだ。
この悲しいまでの零細企業化が、刑事物テイストの個人犯罪に拘った結果なのか、予算との絡みによるものなのかは分からないが、本来なら、背後に組織があって、最終的には組織が前面に出ての決戦になるべきだったのだろうと思う。
もし、最初からアブレラを経営者にするつもりだったのなら、一緒にセクシー系の秘書キャラでも出していそうなものだ。
今回、『カーレンジャー』以来伝統のセクシー系顔出しレギュラー幹部がいなかったのは、アブレラを組織の当座の顔として前面に出し、いずれもっと上の存在と交代させるつもりだったからだと思う。
具体的に動き回るのを1人に抑えるためにセクシー系を出さなかったのだろうが、もし、最初からアブレラを最後の敵にしたかったのなら、もっと大物に見えるよう、誰か部下が必要だったろう。
そして、普通ならそれがセクシー系の秘書という存在になると思う。
それがない埋め合わせとして、ウメコの入浴シーンが用意されたのかもしれない。
恐らく、アブレラは幹部クラスのつもりで出したが、キャラがある程度浸透してしまったので、今更上役と交代させて消すのは惜しいということになったのではないだろうか。
また逆に、せっかく組織をなくしたのに、毎回のようにアブレラがしゃしゃり出てきたのはある意味マイナスだったように思う。
アブレラと繋がりのない犯罪者がもっと出てきてもよさそうなものだ。
実際にアブレラが画面に出なくても、怪重機の着ぐるみを使い回しにすれば、裏にアブレラがいることになってしまう。
これは使い回しの弊害なのだが、完全にアブレラと関わりのないアリエナイザーは、怪重機が登場しないエピソードにしか登場できないのだ。
おまけに、組織性を極力抑えた結果なのだろうが、宇宙マフィア組織のようなものをバックにしたアリエナイザーが何話か掛けて出てくるということもなく、本当に単発話ばかりだ。
悪いとは言わないが、連続物以外で、同じバックを持つアリエナイザーが登場したことはないのだ。
これは、一部のファンから、エピソードの単調化と指摘されている。
また、あくまで刑事物として淡々と描くなら、最終決戦も大風呂敷を広げずに、アブレラとの決着とバンの転勤を核にして作劇するべきだったのではないだろうか。
最終決戦を大々的にやったからには、やはりスタッフにラストを盛り上げようという気構え自体はあったのだと思われる。
ならば、バックの組織は諦めるとしても、せめて年明けくらいには、アブレラがもっと前面に出て、金で雇った殺し屋などを使って、意地になっての地球署攻撃を繰り返し、最後に捨て石を使ってスーパーデカレンジャーロボをおびき出しデカベースに突入という形にするべきだったのではないだろうか。
商品展開の都合もあって、秋からラストに向けて長い時間掛けて盛り上げることの多いスーパー戦隊シリーズにあって、年間の起伏がここまで小さい作品は珍しい。
しかも、上記のとおり、狙ってのものとは考えにくく、敵組織がない故になんとなく流されているうちにラストになってしまったかのような感が否めない。
組織がないことのメリットが、予算面だけだというのなら、物語として意味がない。
刑事物テイストの1話完結方式で、悪側のレギュラーキャラに依存しない作劇をしていたなら、組織をなくしたことに納得できるが、これでは、物語としては弊害の方が多いということになってしまわないだろうか。
もう1歩踏み込めれば、もっともっといい作品になれたと思うのに、どうしてその1歩ができなかったのか…。
それも、さほど難しくない僅かの気配りで済む部分が多かったのが、非常に惜しい。
あとちょっとで「優」が取れるのに届かない…そんな良作だったと鷹羽は思う。