干支、兄弟、え〜と…
鷹羽飛鳥
更新日:2003年12月25日
  いきなり余談ですが、新潟には「乙(きのと)」という地名があります。
 また、珍しい人名として、「甲(きのえ)」という名字もあります。
 どうしてそう読むのかというと、実はこれ、十干の読み方なんですね。

 よく「甲乙付けがたい」なんて言い方をしますが、この場合の甲と乙も、“十干の第1、第2”という意味合いだったりします。
 要するに「1、2を争う」というわけです。

 十干の読みは、それぞれ

 きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと

という具合に、「○○のえ」「○○のと」と2つで一組になっています。


 ところで、「干支」という文字、読み方が変だと思いませんか?
 「干」も「支」も、「え」だの「と」だのという読み方は本来ありません。
 いわゆる当て字で、本来「えと」は「兄弟」だったりします。
 「兄(え)」と「弟(おと)」が合わさって、「えと」という音になったんだそうですが、じゃあ、「兄」と「弟」って何なの? というと、「陽」と「陰」だったりします。

 古代中国では、万物が隠と陽とで一対になっているという考えがありまして、これは『北斗の拳』などで有名ですね。
 この説は、正確には「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ」といって、簡単に言うと、万物は「木火土金水(もく・か・ど・ごん・すい)」の五行がそれぞれ「陽」と「隠」の気を持つことで成り立っているという考え方です。
 つまり、「木の兄(きのえ)」、「木の弟(きのと)」というわけです。
 「かのえ」は、「かねのえ」が縮んだのでしょうね。
 鷹羽は、五行のことを知って、はじめて「乙」を「きのと」と読むことが納得できました。


 『ウルトラマンガイア』11話『龍の都』で東京の地下から出現した怪獣:ミズノエノリュウは、まさしく“壬の龍”、つまり水の属性で高位の龍であり、位置的な関係から、東京の守護神であると考えられます。
 ガイアが勝てなかったのも、多分そのせいでしょう。
 最終回辺りで、ミズノエノリュウがボロボロになりながら根元的破滅将来体の手先達と戦っていますが、もし死んでいたら、恐らく東京は地盤沈下なり大地震なり起こして滅んでいたはずです。
 これは、五行についての簡単な知識があれば理解できることですが、ミズノエノリュウの生死が東京の運命を左右するということは『ガイア』ラストのピンチに一役買っているファクターであり、前回「知っていると役に立つ」と書いたのは、そういう意味です。

 ちなみに、五行の並び方にも意味がありまして、それぞれ1つ後ろの気を助け(相生)、2つ後ろの気を冒す(相克)という法則があります。
 「地水火風」の4元素ほどメジャーではありませんが、五行も結構使われるネタではあります。
 意外と、陰陽を看板に掲げていない作品にも多く使われていますし、時として誤った使い方をされている場合もありますので、知っていると突っ込みのネタにもなります。


 次回は、そんなネタを1つ2つ触れてみましょう。
 


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