第64回 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツEX「ハードボイルダー」
2010年12月5日 更新
発売されてから随分時間が経ってしまいましたが、今回はフィギュアーツ初のオリジナルバイクについてレビューしたいと思います。
ついでなので、リペ商品の「スカルボイルダー」もまとめて行います。
魂WEB限定品・12月配送の「マシンハードボイルダー用ユニット各種」のレビューはこちら。
■ S.H.フィギュアーツ マシンハードボイルダー
2010年8月28日発売。
同時販売物は、シリーズ中にはなし(ただし以下参照)。
2010年8月の販売(配送)ラインナップは、以下の通り。
- 8/25 「仮面ライダーWサイクロンジョーカーエクストリーム」
- 8/26(配送開始日) 「ミルキィローズ(Yes!プリキュア5GoGo!)」「SHF仕様ギルスレイダー」「FFRブレイドブレード」(全て魂WEB限定)
全長は約19センチ(前輪〜テールまで)
手首などの付属品はなし
後輪安定用の台座付属。
価格は税込4,200円。
蛇足だが、本商品の発売日は「仮面ライダーW」最終回の一日前にあたる。
マシンハードボイルダー。
初登場は、仮面ライダーディケイド劇場版「オールライダー対大ショッカー」。
「仮面ライダーW」本編では、第一話から登場。
主人公・左翔太郎が変身前後を問わず乗っているバイクで、時折フィリップが運転することもある。
劇中では特に説明がないが、設定上は「ビギンズナイト」後に「ミュージアム」の施設を脱出する際にリボルギャリーごと強奪したものとされており、一応シュラウド製ではないことになっている。
見た目は黒と緑のツートーンカラー&カウル部分にでっかなツノが付いただけの普通のバイクに見えるが、車体後部を換装する事で飛行・水上&水中航行、更に超高速走行を可能とするスーパーマシン。
その他、前輪部にはマシンガンが装備されている。
「仮面ライダークウガ」のトライ&ビートチェイサー、「仮面ライダー剣」のブルースペイダー他などのように、搭乗者の変身による外観・性能変化が起こらないタイプ。
普段は鳴海探偵事務所の地下に隠されているリボルギャリーと連携する事が可能で、三種類のユニット換装は同機の内部にて行われる。
飛行用の「タービュラーユニット」、水上戦用の「スプラッシャーユニット」、高速走行用の「スタートダッシュユニット」がリボルギャリーに搭載されているが、この他、仮面ライダーアクセルが変形したバイクモードとの互換性があり、アクセルがよく使用している「ガンナーA(アクセルガンナーに合体可能)」を換装し、戦闘を行ったこともある。
「仮面ライダー響鬼」以降、全体的に減少傾向にあったライダーバイクの登場頻度を向上させた一台でもあり、劇中での認知度も高く、また印象的な活躍シーンも数多く存在する。
特に、劇場版「AtoZ 運命のガイアメモリ」では、ワイヤーアクションを用いて“フルカウルバイクではまずやらないような”派手なアクションシーンを連発披露し、ファンを魅了・歓喜させた。
さて、固茹で卵器です。
2010年2月に行われた「魂フィーチャーズ」にて参考展示品としてお目見えして以来、フィギュアーツファンから多くの注目を集めたアイテムです。
当時、フィギュアーツ用バイクはまだ旧商品リデコの「マシントルネイダー」くらいしかなく、その後もバイク商品化が続くか不明瞭だったため、製品化するかどうか見通しが全く利かない状態でした。
最悪、参考展示のみで終わってしまう可能性も見込まれていたわけですが、約半年後にようやく手元に届くことになりました。
そういう意味では、待ちに待った待望のアイテムと云えるわけですが、果たしてファンの期待に応えるだけのグレードはあったのでしょうか?
マシンハードボイルダーの商品情報がネット上に流れたのは、4月22日の午後です。
この日、他にも「仮面ライダーファイズ」「SHFギルスレイダー」の商品化情報があり、更に「仮面ライダークウガ・アルティメットフォーム」の新しい写真が公開され、製品完成度を巡る議論が加熱しておりました。
これとほぼ同時期に各所で予約が始まりましたが、同規模規格の他社バイク玩具の約二倍という価格にも関わらず、どこも瞬殺状態。
8月半ば辺りに一時的に落ち着くまで、約四ヶ月近くも「予約開始→即終了」というコンボが様々な所で頻発しました。
それだけ、人気と注目度、そして需要が高かったという事なのでしょう。
ところが、発売日の二日ほど前にフラゲした人達の発言から、製品仕様に関する多くの問題指摘が巻き起こり、発売日以降はしばらく否定的な意見がよく見受けられました。
あれだけ長い間待ち続け、瞬殺を連発したにも関わらず呟かれる問題とは?
実は、発売以前の情報では知りえなかった仕様上の問題点・疑問点が、相当多かったのです。
というわけで、まず最初にこれについて触れていきましょう。
一番最初に指摘されたのは「手首問題」でした。
なんと、ハードボイルダーにはハンドルを握るための手首が一切付属していません。
このため、一番搭乗頻度が高かったサイクロンジョーカーがまともに乗せられないという酷い有様となりました。
幸いにも、同月発売の「サイクロンジョーカーエクストリーム(以下CJX)」に付属する、プリズムビッカー保持用手首が流用出来る為、こちらを持っている人なら対応可能でしたが、逆に言えばわざわざ別商品を買い足さないとならなかったわけで、大変不親切といわざるをえません。
Wの他フォームは、「サイクロンサイクロン」を除き一通り搭乗させる事が可能ですが、どの商品に流用可能な手首があるかを把握していないとならない問題もありました。
さすがに全フォーム用の手首をつけろというのはムチャですが、せめてCJ用くらいはつけるべきだったのではないでしょうか。
説明書には、CJに平手を使用するべしといった旨の表記があります。
CMとHJも同様ですが、こちらは実際には握り手があるので対応可能です。
ちなみにこの「そりゃないだろ的処置」は、「サイクロン号(仮面ライダー THE FIRST)」にて更に炸裂する事になります(後述)。
ご存知の通り、フィギュアーツは手首パーツの数や種類について問題が多く、これによりプレイバリューが大きく阻害されるケースが見られました。
「仮面ライダーアギト」「仮面ライダーザビー」等は今でも語り草ですが、その後発売されたバイク玩具では、ハンドルを握るための手首が同梱され、最低限のプレイバリューは確保されていました。
また、同梱されていない場合も搭乗するライダーに武器持ち手があるので、充分まかなえたのです。
「マシントルネイダー」「バトルホッパー」には、それぞれアギト用・仮面ライダーBLACK用の武器持ち手が付属し、ファンも納得していました。
そこまでやっていながら今回からこんな仕様では、納得しろという方が無理というものではないでしょうか。
参考までに、W各フォームの武器持ち手が何に付属するかをまとめてみました。
一番外側に置かれているものが、それぞれの武器持ち手です。
以下、「S」はメタルシャフト保持用または同形状、「M」はトリガーマグナム保持用または同形状を示します。
右・武器持ち手:
- 緑…サイクロンセット(S/M)、サイクロンジョーカーエクストリーム(S)
- 赤…ヒートメタル(S)、ヒートセット(S/M)
- 黄…ルナトリガー(M)、ルナセット(M)※
- 白…ファングジョーカー(S)
- 黒…スカル(M)
数が多いので画像2分割。
本文と合ってなくてごめんなさい。
左・武器持ち手:
- 黒…ヒートセット(S)、サイクロンジョーカーエクストリーム(S)、ファングジョーカー(S)、スカル(M)
- 銀…ヒートメタル(S)、ルナセット(M)
- 青…ルナトリガー(M)、サイクロンセット(M)、ヒートセット(M)
上記の一覧をより解りやすくまとめると、以下のようになります。
単品対応可と記しているのは、それが含まれている商品一つで持ち手が左右揃うという意味です。
- サイクロンジョーカー…単品対応不可/CJXが最低限必要
- サイクロンメタル…単品対応可
- サイクロントリガー…単品対応可
- ヒートジョーカー…単品対応可
- ヒートメタル…単品対応可
- ヒートトリガー…単品対応可
- ルナジョーカー…単品対応不可/CJXかヒートセット、FJのいずれかが最低限必要
- ルナメタル…単品対応可
- ルナトリガー…単品対応可
- ファングジョーカー…単品対応可
- CJX…単品対応可
- ジョーカー…単品対応不可/スカルが最低限必要(黒右手不足のため)※
- サイクロンサイクロン…対応不可(緑左手が存在しないため)
- ジョーカージョーカー…単品対応不可/スカルが最低限必要(黒右手不足のため)
- スカル…単品対応可
※ジョーカーの手首はつや消し処理のため、厳密には対応不可。
スカルの手首はつや有りのため、あくまで代用にしかならない。
フィギュアーツのW系は、黒の持ち手が不足気味という特徴がありますが、基本フォーム中ではサイクロンジョーカーとルナジョーカーだけが割を食わされています。
この二体を乗せるためには、最低でもCJX一体分の代金を支払う必要があります。
まあ、部品通販という手段もありますが。
ジョーカーをはじめとする両方黒のフォームは、限定品(しかもプレ値)のスカルに頼るしかないというのが残念です。
W系フィギュアーツを適度に集めていた人は対応可能なので、致命的な問題とは言えませんが、中には予算や環境の都合で厳選購入していた人もいたわけで、そういう人達には今回の仕様は厳しかったと思われます。
取り扱い説明書を見ると、サイクロンジョーカーなどは平手でハンドルを掴ませるように指示されていますが、当然こんなもので安定する筈がなく、しかも他フォームでは握り手使用を推奨しているため、あまりにも不自然です。
わざわざ手首を新造する必要があるため同梱をオミットした、というならまだわからなくもないですが、既に他商品で使用されているパーツなのですから、省く理由が見当たりません。
次に、本体です。
先にハッキリ言ってしまうと、今回の造りはかなりアレです。
ぶっちゃければ、これまでのフィギュアーツ系バイクの中では間違いなく最低。
手抜きにも程があります。
まず造形面から見てみましょう。
ハードボイルダーの車体後部(主にグリーンの部分)の構造は、ほぼ完全にオリジナルで原典再現を放棄しています。
立体化にあたりデフォルメした結果、というならともかく、この違いは明らかに「何か別世界の映像を見ながら作ったのでは」と疑いたくなるほどです。
具体的には、後輪周辺のモールド、カットパターン、パーツ配置がすべてデタラメ。
その上それぞれのモールドの作り込みが甘く、ここだけ見ているとまるでチープトイを見ているかのようです。
特に、この部分のカッティングが泣けるほど別物。
実車のフットステップ後部周辺は、実際は一体化しておらず、大きくカットされ上下に分断しています。
つまり一枚板ではなく、左右それぞれ二枚の板を繋いでいるような形状なのです。
ところが、本商品はこれを無理矢理繋げてデザインラインをぶち壊しにしています。
スマートなフロント部に対して、妙に荒削りな機械剥き出しのリア部のコントラストがハードボイルダーの魅力なんですが、この特徴が大きく削がれてしまいました。
ちなみに、「魂フィーチャーズ」で展示されていた参考出品例では、この部分がきっちり処理されていました。
後述する更なる問題点は、既にこの時点でも見て取れますが、これはちょっとあんまりかと。
次に、テール部分。
これはもはや、ふざけるなと言いたくなるほどの酷い有様。
ブレーキランプ部分は豪快に無視、ウインカーランプの再現放棄、ナンバープレートは適当処理(しかもウインカーと一体パーツ)という、正気を疑うような構造。
ナンバープレートの印刷は仕方ないにしても、こんなやっつけ処理はスタイル重視を唄うフィギュアーツでやって良い事なのか、担当者のモラリズムを疑います。
ハードボイルダーのテールランプは、本来この部分にあります。
劇中でも、この格子状パーツの奥でよく赤いランプが点灯していたため、印象深く覚えている方も多いと思われます。
しかし、商品ではこれを上から押し曲げて潰したようになっています。
もしかして、担当者はここにテールランプがあると知らなかったのでは? とすら思えます。
ただ、この部分は「魂フィーチャーズ」の時から施されていたもので、しかも当時はナンバープレートすらなかったものですから、これでも一応改善した結果なんですよね……
車体は、フロント部は塗装、リア部は成型色。
一応少しだけメタリックな素材を使用しているようで、単なる緑一色にはなってないのですが、リア部の第一印象は「安っぽい」以外の何物でもありません。
前後ホイール部分が合金パーツのため、見た目の軽さに反してそこそこ重量感があります。
大きな問題はリア部に集中していますが、フロント部にも当然あります。
なんと、ヘッドライトが単なるクリアパーツ一枚はめ込んだだけで、裏打ちが全くありません。
この時点で、WEB上で公開されていた商品写真との違和感が絶大になっています。
覗き込むと、フロントシャフトが丸見えという情けなさ。
これは余りに悲しい処理です。
ちなみに、同スケールのバイク玩具(ハードボイルダーの元車であるCBR1000RR)のライト反射板を取り外し移植または複製することで、いい感じの改造が行えるようです。
その他、細かなモールドの甘さ(マシンガンの銃口に穴が開いてない等)が色々目立ちますが、目立つ問題点は以上です。
これらは、発売当時ネット各所でも騒がれており、様々な改修案が囁かれました。
とにかく、造形的・構造的に不充分かつ手抜きが目立ちすぎ、4,200円もする製品としては「出来損ない」と言わざるを得ません。
少し厳しい物言いのようにも感じますが、本当にそれほどまでに酷いのです。
フィギュアーツ初のオリジナルバイクがこの有様だったため、今後どうなるか不安視する声も見られますが……
次に、手首を除く搭乗に関する問題。
尚、これはハードボイルダーというより、搭乗させる側の問題です。
結論から先に言うと、W系フィギュアーツはどれも完全には搭乗させられません。
これは、W系の関節可動範囲が狭すぎるために発生する難点です。
単品で飾る分には我慢の利く可動範囲でしたが、バイクに乗せるとなると不充分ということ。
特に肩、胴体、股関節の可動範囲が影響を及ぼしています。
写真は、サイクロンジョーカーを普通に乗せてみた状態。
手首はCJXに交換しているため、グリップの固定は充分です。
にも関わらず、こんな酷いことになります。
先の写真では、両脚をフットステップに乗せているのですが、右足首をかなり後ろに配置しなくてはならないため、足の可動範囲の限界を超えてしまい、結果的に尻が浮いてしまうのです。
次に、尻をサドルにきっちり乗せた状態。
写真では若干隙間が見えますが、実際にはかなり理想的なライディングポジションになっています。
こちらは、尻をサドルから離さない前提で、後から四肢の配置を調整したものです。
普通なら、まず腕・足の位置を整えてから尻を乗せようとすると思うのですが、これを逆にするわけです。
真横から見ると、かなりいい感じに乗っています。
こうすると、一見ちゃんと乗せられるようにも見えますが、実は細かなところでインチキをしています。
先で尻が浮く理由に右フットステップを挙げましたが、この乗り方ではあえてステップに乗せていません。
本来のライディングポジションから逸脱する姿勢ではありますが、ここを妥協することで尻浮きが抑えられ、かなり良い雰囲気になります。
無論、これは本来のライディングポジションとしてはおかしいものなので、納得のいかない向きも多いかと思われますので、あくまで妥協出来る人向けの提案です。
しかし、足でインチキしても、正しいポジションを再現しようとすると、Wの肩が左のようになってしまいます。
これは、上体の屈折範囲が狭すぎるため腕の付け根の位置が調整出来ないことから発生する問題です。
これを回避するためには、上腕の回転ロールを活かします。
上腕の回転ロールを調整し、左右の肘が外側を向くようにして、更に手首のボールジョイントの角度を整えます。
こうすると、状態を若干下げる事が出来るようになり、右のように肩の位置をキープ可能になります。
解りやすく例えると「OPでアクロバッターに乗るRXみたいなイメージ」といったところでしょうか。
当然、これも本来のライディングポジションに反するものですが、それでもかなりマシになります。
もう一つ、Wの股関節を限界まで引き出してからガニ股に調整します。
W単独で再現すると、こんな奇妙な格好に。
これらの調整は、バイクにまたがらせる前にしておく必要があります。
足の付け根から少し極端と思えるくらい膝を外側に向け、尚且つ足首は正面を向くようにします。
人間にはいささか困難な格好ですが、こうする事で太股裏のサドル部干渉がいくらか緩和します。
以上のインチキ調整を行えば、W系フィギュアーツでもそこそこ見られる体勢に出来ます。
しかし、やはり完璧とはいかないため、どこかで妥協が必要になるでしょう。
恐らくですが、W系を開発している時点ではハードボイルダーの商品化予定がなかったため、このような結果になったのではないかと推測されます。
実際にどうだったかはわかりませんが、こればかりはやむを得ないのかなあとも思います。
以上、問題点指摘は終了。
ここからは良い所探し。
だぶーるをさがーせー。
色々難点はあるものの、やはりWが乗せられるバイクが発売したというのは、それだけで大きな意味を持ちます。
Wの玩具展開では、「仮面ライダーオーズ」における「DXトライドベンダー」のような代用商品が存在しなかったため、それだけで嬉しいというファンも多かったと思います。
造形面の問題も、ボーイズトイ事業部他で製作されたハードボイルダー各種と比較すれば上等なレベルですし。
若干対比的に大型過ぎる感もありますが、逆にそれが存在感を放ってるという見方もあります。
ハードボイルダーのカラーリングは、単純ではありますがライダーとの同調感が半端でなく、感じられる一体感は凄いものがあります。
これまでも、ライダーとバイクの色合いが同じ組み合わせはありましたが、これはその中でもトップクラスではないでしょうか。
後輪を固定し、転倒を防止する専用スタンドが付属。
これは地味にありがたいものがあります。
黒成型色ということで後輪が隠れてしまい、見た目がイマイチという難点もありはしますが、実用本位なアイデアだと思います。
ちなみに、これは「サイクロン号」でクリアパーツ化し、より見栄えがよくなりました(当然ハードボイルダーにも流用可能)。
左側にはスタンドも設置されています。
いささか安定感に乏しく、状況によってはこれを使用しても倒れてしまいますが、やはりバイクはこちらで立てたいというのが人情でしょう。
若干太めに感じますが、なかなか重宝する部位です。
ナスカドーパントを攻撃した前輪部のマシンガンも、しっかり再現。
先の通り銃口は埋まっていますが、それなりに存在感を放っています。
これは劇中でももっと多用して欲しかったものです。
前輪は、左右に曲げることが出来ます。
「SHFギルスレイダー」のように、ハンドルは固定なのに前輪だけ向きが変えられる、といったせこいものではなく、きちんと連動します。
それにも関わらず、前輪は取り外し可能。
これは、後述するハードボイルダーの換装ギミックに関連する機構です。
本商品最大のポイントは、車体後部の分離。
これは、魂ウェブ12月分の配送商品「タービュラーユニット」「スタートダッシュユニット」との換装を行うための、最も重要な機構です。
固定力はばっちりで、うっかり外れてしまうことはありません。
ジョイント部を見てみると、上部・下部でガッシリ固定される構造になっているのがわかります。
「魂フェス」で展示されていたタービュラーユニットの試作品は、随分頼りないジョイント構造に思えたものですが、これなら安心出来そうです。
この後にご紹介する「スカルボイルダー」との換装も、当然可能。
どんな意味があるのかは不明ですが。
蛇足ですが、「サイクロンセット」に付属した大型マフラーを使用するとどうなるか。
こんなになってしまいました。
別レビューページでも触れていますが、大型マフラーの根元は角度変更不可能なので、どうしてもこの位置で固定せざるを得ません。
とてもじゃないですが、疾走感なんかあったもんじゃないですね。
「魂フィーチャーズ」では、CJがバイクにまたがり背を伸ばした状態でディスプレイされていましたが、つまりはあれ以外格好が付かなかったんですね。
2010年10月9日に発売されたフィギュアーツ・オリジナルバイク第三弾(原型としては二番手)「サイクロン号(仮面ライダー
THE FIRST)」と共に。
どちらもフルカウルタイプで、元車が同じせいか併走ポーズが割と似合う気がします。
以上、マシンハードボイルダーでした。
本レビューはここまでですが、この後発売される各ユニットが届くことによって、更なる真価を発揮することでしょう。
それはまた、別の機会に。
ちょっとだけ脱線して、「S.H.フィギュアーツ・サイクロン号(仮面ライダー THE FIRST)」についての話を。
サイクロンは、FIRST1号の握り手が付属しない(当然FIRST1号にも付属せず)ためまともに搭乗させられず、しかも余計な予備ハンドルが付属するという謎仕様だったので、多くのファンから大変な不評を買いました。
しかし、物としては決して悪くなく、むしろハードボイルダーより高水準の出来です。
フィギュアーツ担当者の思考とコスト重視の姿勢に大きな疑問を差し挟むきっかけとなる、ある意味貴重な商品でした。
中には、どうしてもFIRST1号を搭乗させたくて手首を改造した人達もおりましたが、これによりFIRST1号はWよりも自然な姿勢でバイクに搭乗出来ることが判明。
評価を上げ下げしたりで、大変ややこしいことになってしまいました。
ちなみに、バイクの正しいライディングポジションとして四本指をクラッチとブレーキレバーにかけておくというものがあり、それに準拠するなら平手で乗せる方が正しい、という意見も見られましたが、実はFIRST1号は劇中でもグリップをしっかり握って運転していたりするので、必ずしも正しいとは言えません。
それに、レバーに指をかける形も、平手とは全く違いますからね。
まして、実際はどうであれそれではフィギュアの固定が利きませんから、結局、代用手首ではなんの足しにもならんわけです。
【買ってみて一言】
個人的な感覚では、「最高の期待を以って最低の評価を下されたフィギュアーツ商品」だと感じます。
これが最低の商品というのではなく、前評判との落差が最も大きいという意味です。
なまじ試作品やWEB画像のグレードが高かったため、ユーザーの期待が膨らみ過ぎたため温度差が生じたのかもしれませんが、それはさておいても商品仕様の疑問点が難色を示される最大の要因となったのは疑いようがありません。
ハードボイルダーに限った話ではありませんが、フィギュアーツは発売まで具体的な仕様が不明瞭なままというケースがとても多く、今回もそのせいでマイナス評価が発生した様子です。
造形的な難点は画像で見ればある程度解りはしますが、ライトの処理や手首同梱の有無などはわからないわけで(手首はWEB情報でも同梱の記述はありませんでしたが、公式の情報更新が遅い&間違いが多いため信用性に乏しい)、そういうバックボーンが「仮面ライダークウガ・アルティメットフォーム」の身長差問題のような“発売されたらこれかよ”的ブーイングを生み出してしまった可能性も否定出来ません。
確かに、出してくれただけでも嬉しい商品ではあるのですが、ユーザーの多くは「出てくれた以上ある程度は満足のいくものにして欲しい」という欲求も持っているわけで、それは決して「出てくれればそれでいい」という気持ちで塗りつぶせません。
これがメーカー側に伝わっていないのか、或いは軽視されてしまったのか、ともあれ本商品は「最も多く乗ったフォームの手首がないがしろにされる」「造りが粗雑かつ手抜き」という、無視し難い難点にまみれたものになってしまいました。
それが、実に惜しいわけです。
しかも、いずれもほんのちょっと気を遣ってもらえればいいという程度のものに過ぎず、決して無茶を要求しているわけではなかったのです。
にも関わらず、このような結果になってしまったのには、何か理由があるのでしょうか?
フィギュアーツは、2010年2月の「魂フィーチャーズ」以来、やたらとコスト問題がどうのという発言がスタッフより囁かれるようになりました。
並行して「手首の同梱は担当のテンションにより変化する」という、開発者としての気質を疑うような公式発言もあり(こちらは現在「★魂ROBOT日記」上から削除されている)、とてもユーザーの満足度を高める意思があるようには思えないという空気を生んでいました。
無論、高い完成度をもって好評を博した物もあるため、すべてがダメという事ではないのですが、このような問題発言があったせいか、仕様に疑問点の多い商品は、どうしても「コストダウンを図るという名目の手抜きが行われたのではないか」といった視点で見られがちとなりました。
ここで述べてきたハードボイルダーの疑問点は、確かにほとんどがコストダウン目的に関連しそうなものばかりです。
金型の単純化を図るための造形、パーツ数・塗装工程を軽減するための構造、手首のオミット……
それは理解できなくもないのですが、しかし4,200円という高額設定を行っている以上は、それに見合った商品にしてもらわないと困るというのが、ユーザーの率直な意見でしょう。
他社の同スケールバイクが、これの半額以下で購入出来、しかもそちらの方がしっかりした出来だというのも、この見解を助長している要因の一つです。
バンダイは「バイク玩具=売れない商品」という認識を以前から持っているようで、今回もそれを見越して単価を高く設定した可能性が否めませんが、それとユーザーが感じる不満が関連性を帯びることは永久にありえません。
それなら、スカルボイルダーや各ユニットのように、最初から受注生産にすべきだったのではないでしょうか?
基本的にはとてもいい物であり、最高の企画なのです。
だからこそ、足りてない部分が惜しすぎる。
フィギュアーツオリジナルバイク第一弾なのだから、もう少し気合を入れて欲しかったものだ、と筆者は結論付けたいと思います。
――が、その後に発売されたスカルボイルダーは……