第57回 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツ「仮面ライダーW サイクロントリガー&サイクロンメタル 」

2010年7月25日 更新

 今回は、S.H.フィギュアーツシリーズでは初の「1パッケージに2体同梱セット」となる「仮面ライダーW・サイクロンセット」と「同・ヒートセット」「同・ルナセット」のレビューです。
 同時に6体と大量レビューではありますが、各セットごとにページを分けていきたいと思います。
 基本仕様は「サイクロンジョーカー」他と同じなので、本商品独自の仕様を中心にまとめます。
 尚、本来の商品名は「フォーム名×フォーム名」で「○○○セット」ではないのですが、省略のため本レビューでは「〜セット」という表現を多用しますので、あらかじめご了承ください。

※初の2体セットとしては、これより前に「S.H.フィギュアーツ キュアミント&ルージュDXセット」が存在するが、こちらはそれぞれが独立パッケージで同梱仕様ではなかった。

■ S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーW サイクロントリガー&サイクロンメタル

 2010年4月28日発売。
 同時販売物は、「仮面ライダーWヒートジョーカー&ヒートトリガー」。
 この4日前に「仮面ライダーギルス」が発売済み。

 仮面ライダーW「サイクロンメタル」と「サイクロントリガー」の2体セット。
 全高はそれぞれ約14.5センチ(ツノ含まず)
 握り拳×4、武器持ち手A(シャフト用)×2、武器持ち手B(マグナム用)×2
 お前の罪手×2、平手(青)×1、二本指手(緑)×1…以上計12個付属
 ウィンディスタビライザー(マフラー)2種計3個付属。
 メタルシャフト長・短の計2種付属。
 トリガーマグナム計2種付属。
 3種類のメモリガジェット付属。
 台座などのオプションはなし。
 価格は税込5,775円。

 当初は絶望視されていた「W派生フォーム」が、まさかの商品化です。
 しかも限定ではなく、一般販売で!
 普通に考えたらとても売れそうに思えない商品の筈ですが、「仮面ライダーW」関連商品及びフィギュアーツの人気の後ろ盾があったせいか、実に嬉しい発売となりました。
 先の通り、本体や基本オプションの仕様は過去発売された3フォームと同様です。
 ただし独自の仕様として、「エフェクトパーツ」やオマケが付属しています。
 その結果、W系アーツ×2よりやや高めの価格になっていますが、手にすれば充分納得の構成内容です。
 詳しくは順を追ってご紹介します。

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■ 仮面ライダーWサイクロンメタル

 仮面ライダーW・サイクロンメタル。
 「風の記憶」サイクロンメモリと、「鋼の記憶」メタルメモリの力で生まれるフォーム。
 ウィンディスタビライザーとメタルシャフトを同時に装備するため、全フォーム中一番装飾が多いスタイルとなっています。
 設定では、素早さが向上するサイクロンの能力に対し(防御力向上の反面)鈍重化するメタルの能力が合わさるため、「サイクロンジョーカー(以下CJ)」のように特性を活かし切れない形態なのだとか。
 ただ、逆に言えばメタルの鈍重さをサイクロンで改善させる(ただしジョーカーには及ばない)という見方も可能なわけで、そういう意味ではとても趣き深いフォームといえるでしょう。

 前面・背面比較です。
 サイクロンメタルというと、対ナスカドーパント戦が印象的です。
 対パペティアドーパント戦やライアードーパント戦などでもかなり活躍していて登場頻度自体は割と多めなんですけど、なぜか記憶に残り辛い? ような気もします。

 大変綺麗な発色具合の緑と銀色が組み合わされていて、実にいいカラーバランスになっています。
 個人的には、配色は一番好き。
 ただし、サイクロンサイドの塗装は「ヒートメタル(以下HM)」でも説明したいつもの粗が含まれている危険が高いため、要チェックです。

 背中が一番豪華な仕様ですね。
 個体差かもしれませんが、メタルシャフトの差込についてはHMよりスムーズになっています。
 筆者手持ちのものは、シリコンスプレー等の補助が全く不要でした。
 ただし、だからといって折らないように注意は必要だと思います。

 ウィンディスタビライザーは、CJに付属した通常形態と同じ物が同梱。
 残念ながら、風になびいている形態はありません(画像はCJの物を着けた状態)。
 どうしてもそちらで飾りたいなら、CJから拝借するしかないかと。
 ちなみに、ジョイント口径はCJのものと微妙に違っているため、CJのマフラーをそのまま流用するときつくなり、逆にこちらのマフラーをCJに流用するとユルユルになります。
 前者の場合は、ボールジョイント部分が破損する危険もあるため、出来ればやらない方が賢明です。
 ……つーか、実際千切れたし。

 メタルシャフトを構える都合上、新規で「サイクロン用武器持ち手」が付属します。
 便宜上、シャフト持ち用の手首は今後「武器持ち手A」と記述します(マグナム保持用とは形状が異なるため)。
 HM同様、両手でガンガン振り回すポーズが楽しめます。

 メタル用の「お前の罪」手も付属。
 結局、これがないのはトリガー手だけとなってしまいました。

 マキシマムドライブ「メタルツイスター」。
 ただし、この技はサイクロンセット発表後かなり経ってから劇中に出たためか、残念ながらエフェクトはありません。
 もっとも、メタルツイスターのエフェクトは随分大掛かりだったから、パーツで再現しろって方が無茶かも?

 詳しくは後述しますが、メタルシャフトには付属のガジェットが接続出来ません。
 これはサイクロンセット付属のものだけではなく、HMやルナセット付属の物も同じです。
 というか、ガジェットを付けられるのはサイクロンセット内ではトリガーマグナムだけです。
 非常に残念ですが、どうしても接続させたいという人は簡単な改造(メタルシャフトに小さな四角い塊をくっつけるか、両面テープを貼るだけ)で対応可能なので、挑戦してみるのもいいかもしれません。
 HMとサイクロンセット、ルナセットを全部そろえたら、長いメタルシャフトだけで全3本にもなっちゃいますからね。
 一本くらい手を加えてもいいんじゃないかって思えたり。

 「WFC版仮面ライダーW」のサイクロンメタルと比較。
 そういやWFC版は、どうしてこんなに大きな輪っかが付いてたんだろう?

 サイクロンセットのエフェクトパーツは、「巨大なマフラー」。
 これはOP冒頭で夜景を眺めているCJをイメージしたもの。
 暴力的な長さと幅ですが、こういうハッタリは実にいいと思います。
 イメージ的にはCJ用ですしそちらにも当然流用可能ですが、まず先にサイクロンメタルに装着。

 続けて、サイクロントリガーにも着けてみました。
 ハッタリ効果が過剰なまでに増幅して、実に良いものです。

 こんだけ巨大なマフラーですから当然それなりに重さがありバランスを著しく崩すため、自立はかなり困難です。
 ただし決して不可能というわけではなく、やや前のめりにすればなんとか立てます(立ててしまう所が怖いですが…)

 それよりも不安視されるのは、接続部ではないかと。
 通常のマフラーは根元が小さなボールジョイントになっている上、素材が軟質なので同じ仕様では自重で千切れてしまうのでは、と思えてしまいますが、これについては接続方法変更で対処されています。

 今回は、従来通りのボールジョイントに加え襟部分に引っ掛ける「ツメ」があり、二箇所で接続させています。
 またマフラーの根元も本来ありえないくらい分厚くなっていて、折れたり曲がったりしないように工夫されています。
 ただし、このような接続方法なのでマフラーの向き・角度は変更出来ないという難点も生じてしまいました。
 個人的には、接続部から少し離れた位置にリボルバージョイントのようなクリック関節を仕込んで……なんて思ったりもしますが、そりゃ贅沢でしょうか。

 このため、CJを使ってのOP再現は若干難しくなっています。
 とはいえ、第1話のメモリブレイク発動直前ではこの角度でマフラーが大きくたなびいていましたから、「必殺技再現」といったイメージにも活用出来るかもしれません。
 8月に発売が予定されている「マシンハードボイルダー」に搭乗させる際、最も意味が出てくるかもしれません。
 「魂フィーチャーズ」で展示されていたCJ、かっこよかったですからね。

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■ 仮面ライダーWサイクロントリガー

 お次は、仮面ライダーWサイクロントリガー。
 「風の記憶」サイクロンメモリと「射撃手の記憶」トリガーメモリの力で変身するフォーム。
 サイクロン派生フォームはあまり目立った活躍の場がないという残念な面がありますが、このフォームは劇場版「ビギンズナイト」で、仮面ライダースカルと対峙し一旦は怯ませるという見せ場を作りました。
 その直後、スローモーションで殴る蹴るの暴行を受けるという、別な意味での見せ場もありましたが。

 前面・背面対比。
 鮮やかな緑と青の組み合わせは、本来ならすごくバランスが良い筈なのですが、Wの青は少し彩度が高めというか色味が強すぎる感があり、いささかアンバランスな色合いになっています。
 逆に言えば、それがサイクロントリガーの魅力ともいえます。
 違和感が武器になるのは、仮面ライダーの特権って感じです。

 「ルナトリガー(以下LT)」同様、トリガーマグナムが2種付属。
 いずれもLT付属品と同じものですが、マキシマムドライブモードのみ微妙に違っています。
 上面部に、LT付属物にはなかった“突起”があります。

 ここに、後述するメモリガジェットを接続可能。
 まずは、スタッグフォン。
 「トリガースタッグバースト」の再現ですね。

 続けてスパイダーショック。
 こうして見ると腕時計にしてはデカい…

 更に、バットショット。
 このバットショットのみ、とても芸コマな仕様になっていて思わず唸らされるのですが、詳しくはメモリガジェット解説の項で。

 せっかくガジェットを接続出来るようになっているのはいいんですが、なぜか通常形態のトリガーマグナムには接続出来ません。
 ちなみに、メタルシャフトにも接続不可能です。
 画像は、通常形態のトリガーマグナムにスパイダーショックをただ乗っけてみただけの状態。
 幸い、各ガジェットの接続面は平たいため、両面テープなどを貼り付ければ一時的な接続は可能です。

 サイクロンサイドの「武器持ち手B(トリガーマグナム保持用)」も当然付属。
 ところが、トリガーサイドの手首はLTと同じものしか同梱されておらず、他色手首全てにある「お前の罪を数えろ」用のがありません。
 あってもあまり多用されないとは思いますが、ちょっと残念です。

 マキシマムドライブ「トリガーエアロバスター」。
 ルナジョーカーのMD「ジョーカーストレンジ」同様、TV本編で使用するか微妙な必殺技。
 バレ画像のアングルで撮ってるだけで、実際の効果は不明。 

 WFC版サイクロントリガーと比較。

 サイクロントリガーも、設定上はサイクロンメタル同様ややアンバランスな性質のようで。
 なんでも、スピードを活かした接近戦が得意となるサイクロンに対し、接近戦に向かないトリガーが加わるため長所の潰し合いになるのだとか。
 これもまた、トリガーの遠距離攻撃にサイクロンの性質を組み合わせられるという長所も発生するということなんでしょうが、このような「最良ではなく、むしろ悪い」という欠点を持った存在というのは逆に魅力を引き立たせられるような気がしてしまいます。
 個人的には、クウガ・ペガサスフォームみたいな精密射撃系の能力を付加させるなど特殊性を強調すると面白いかも? とは思います(それがサイクロンメモリの能力として相応しいかどうかは別として…)。

 今回の注目点・メモリガジェット。
 スタッグフォンとスパイダーショック、バットショットの三点が付属します。

 まずは、携帯電話のスタッグフォン。
 あまり目立ちませんが、実はWの変身を高頻度でサポートしている最重要アイテムの一つ。
 クワガタ型のライブモードで再現されており、可動・変形などは出来ません(PVC製なので多少曲げられはしますが)。
 全長最大約19mm。
 底部に四角い穴が開いていますが、これを利用して武器に接続します。
 これは、他の2つも同様。

 次は、腕時計のスパイダーショック。
 第1話で翔太郎が緊急退避する際に使用したシーンが印象的です。
 あまりクモっぽく見えないですが、正面から見るといかにもクモっぽい? 顔が!
 細かい&可愛いぞ。
 全長最大約13mm。

 自動&自己判断撮影可能な超デジカメ・バットショット。
 とても小さいのですが、細かい所にまで彩色が施されていてなかなかいい出来です。
 正直、それっぽい形になっている程度だろうと高をくくっていたんですが、実物を見たらその高い再現度にびっくりさせられました。
 翼長最大約28mm。

 バットショットに驚かされた理由は塗装の細かさだけではなく、なんとこの大きさで「首の可動」まで再現されているからです。
 もっとも、可動というのは正しくなく、正確には「差し替えによる表現」ですが。
 武器に合体する時の「下を向いた頭」と、通常時の「正面を向いた頭」が交換可能。
 この大きさでここまでこだわるのは、なんか凄いです!

 ただ、差し替え頭部パーツはこんなに小さいものなので、なくさないように細心の注意を払う必要があります。
 具体的には、縦最大約5×横最大約5.5mmという極小サイズ。
 ブリスターボム(ブリスターの蓋を開けた瞬間に中身が飛び散るトラブル)を発生させてしまったら、まず見つからないでしょうね。

 ズームで撮ると実際のサイズが解りづらいでしょうから、サイクロントリガーの足下に並べ、ついでに手首パーツを対比として置いてみました。
 こんな小さなサイズなのに、丁寧に造型・彩色されているのは素直に感服物です。
 強い振動・地震等による落下・紛失には注意したいところです。

 サイクロンセットは、ヒートセットのような派手なエフェクトパーツこそないものの、大型マフラーやガジェットなどおいしいオマケが付属している上に全塗装の本体カラーがとても綺麗なので、大変高級感が溢れています。
 フォーム的にはややマニアックな組み合わせですが、好きな人にはたまらないと思いますし、何よりプレイバリューを大幅に拡張出来るという魅力は見逃せません。

 ただし、CJの時にも指摘された塗装面の問題は無視出来ないので、可能な限り現物を確認してから購入したいところではあります。
 とは言うものの、これとヒートセットは初期出荷数が極端に少なかったそうなので、そのような機会はそうそうなかっただろうとも考えられますが……

 このセットで、サイクロン系統のフォームはコンプリートとなります。

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【買ってみて一言】

 はっきり言って、これは「フィギュアーツのWを全部揃えるぞ」的な覚悟を決めた人達向けの商品だと思います。
 或いは、セットの中に自分の好きなフォームが含まれていた場合など。
 少なくとも、エフェクトパーツを入手するためだけに手を出すにはいささか価格が高すぎる上に入手が困難ですから、きついものがあるでしょう。
 別な言い方をすれば、Wのセットに手を出す事で、他フォーム購入の道に踏み出すきっかけになるのかも。
 まあ、必ずしも全種揃えたいと考える人ばかりが購入したわけではないと思いますが、どこかで一度はそんな覚悟を迫られていたかもしれません。

 ご存知の通り、2009年末から2010年初頭にかけて、「仮面ライダーW」の関連玩具商品はとんでもないバカ売れ状態となり、一時は、放送中の作品であるにも関わらず玩具が全く売られていない(どこも売り切れ)という異常事態を発生させました。
 このような玩具超大好評というバックボーンがあってこそ、今回のような派生フォームセットの販売が可能となったのでしょう。
 さもなければ、派生フォームセットの発売はあまりにリスキーでしょうし。
 基本3フォームの商品化が確定した時点では、ほとんどの人が「出るわけがない」と高をくくっていたわけですが、そう考えると実にありがたい展開となったものです。

 派生フォームセットは、単なるフィギュアーツ2体同梱に留まらず、大ボリュームのオマケを付加したというのは大正解だったといえるでしょう。
 これにより商品に対する関心は高まった筈ですし、注目度も上がったと思われます。
 特に、魂フィーチャーズで飾られていた「やりすぎなくらいエフェクトパーツを付けまくったW各フォームの展示」も、更なる関心を煽る要因になった気がします。
 残念ながら、あの展示物と同じものは付属しませんが、それでも“エフェクトパーツがあることでここまで大きく印象が変わる”というポイントは示されたわけで、とても大きな意味があったのでしょう。

 ただ残念なことに、SHFギルス以降フィギュアーツの出荷数はかなり絞られているようで、サイクロンセット・ヒートセットもかなりの入手困難に陥りました。
 幸いにも、さほど日を置かずに二次出荷が始まったようなので発売直後ほどの混乱はなかったようですが、それでもまだ基本3フォームに比べると少数比率です。
 フィギュアーツの出荷数制限は決して噂ではなく、数が全く確保できなくなったため予約を取りやめた店舗も出てくるほどでした。
 確かに、派生フォームセットは基本3フォームよりは売れないかも、という印象を抱きがちですが、最近は何がどれくらい売れるか全く見込みがつかない状況。
 実売される前から品物がない(予約出来ない)という事態に加え、発売当日もちょっと気を抜いたら即完売という展開は厳しすぎるでしょう。
 特に今回のセットは発売が平日(これまではだいたい第三〜第五土曜日だった)ということもあり、普段動ける人が動けなかったというケースも多く、涙を呑んだ人もおられました。
 筆者は、今回だけたまたまネット予約していたので難を逃れましたが、いつものように店頭購入を決意していたらまず入手できなかったでしょう。

 新作フィギュアーツがだんだん入手困難になっている、という点についてはまた別な機会に語るとして、ともあれ、8年以上も前のライダー(ギルスのこと)ならともかく、現行ライダーなのに数が絞られる、というのはファンの賛否が分かれそうなところです。

 ちなみに、サイクロンセットとヒートセットは2010年8月に早々に再販が確定しました。
 いつもなら初版の約半年後ってのが定番なんですが、今回は4ヶ月程度とかなりスパンが短い様子。
 実にありがたいことですね。

 →「SHF仮面ライダーWヒートジョーカー&ヒートトリガー」へ

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