第1回 ■ バンダイ ポピニカ「DXトライゴウラム&ビートゴウラム」
2001年9月14日 更新
2010年12月5日 画像再撮影
ここでは、近年発売されたキャラクター玩具の中で、特に話題性の高いものを扱って色々分析してみたいと思います。
どういった分析を行っていくのかは、以下の本文を読んでいただくとして…
まずは、ささやかな暇つぶしになれれば幸いです。
『仮面ライダークウガ』
平成12年1月から翌1月まで、途中特番休止を交えて全49話(内2本総集編。+スペシャル1本)を放映した特撮ヒーロー番組。
これまでのヒーロー番組の常識を色々な意味で打ち破り、新たな試みに多く挑戦し、これまでになかった新時代の映像感覚を生み出しました。
しかし、シリーズ的に「仮面ライダー」というタイトルを背負っていたために様々な偏見にも晒され、また“反暴力”という珍奇なテーマを掲げ始めたためか、多方面で実に様々な意見が生まれました。
これらについては、昨年6月から今年2月まで当サイトで連載されていた「習慣鷹羽・仮面ライダークウガのお部屋(更新終了)」に詳しいですが、とにかく良くも悪くも多くの波紋を作り出した作品だったという事です。
で、人気作品ですから関連商品の売り上げにも結構面白い兆候がみられました。
特に2000年度の「クウガ」、2001年度の「ガオレンジャー」「アギト」関連には語るべきポイントが多く、紐解くと面白い側面が見えてきたりします。
そんな中、当コーナー第一回は【DXポピニカ トライゴウラム&ビートゴウラム】について色々書き立ててみたいと思います。
では、本文!
1.DXホピニカ トライゴウラム 定価 ¥3980
セット内容:
- バトルゴウラム
- トライチェイサー2000
- ゴウラム固定用ディスプレイスタンド
(2パーツ構成・簡易組立)
- 飛行用グリップ
- シール
- 取扱説明書
「仮面ライダークウガ」にて、事実上4話から33話冒頭まで活躍していたメインマシン“トライチェイサー2000(以下トライチェイサー)”と、リント族の遺産(?)にしてクウガの忠実な下僕である飛行メカ(!?)・ゴウラムのセット。
商品に記述されているバトルゴウラムは設定&玩具上だけの名称で、本編では一切呼称されていない。
素体のトライチェイサーだけで全長約17センチ(高さスタンド含め約11センチ)、トライゴウラム時には最大約28センチ程のサイズになるという、“ポピニカ”レーベルのものでも有数の巨大アイテム。
これは、関連別商品の「超合金 装着変身仮面ライダークウガ」を搭乗させる目的があったためのサイズである。
「大きい=粗雑」という玩具全体のイメージを打ち破り、非常に高い完成度を誇り、かつ価格も非常にリーズナブルであった。
もちろん細かい問題点は色々あっただろうが、筆者個人はあまりこの商品の悪い噂を聞いた事がない。
そのカラーリングの素晴らしさと造型レベルの高さから、ディスプレイモデルとしても充分に楽しめる。
実はトライゴウラム登場よりもかなり前(トライチェイサーが出るよりも早く)、“クウガが乗るもう一台のバイクが早くも登場する”という事前情報が流れた事があった。
もちろんこれはビートチェイサー2000の事ではなくトライゴウラムを指すものだったのだが、これはファンの想像を色々とかき立てる材料となった。
一番最初に連想されたのは、アクション目的のトライチェイサーに対してロードバイク型のものが登場されるだろうというもの。
これは、「仮面ライダースーパー1」のブルーバージョンとVジェットの存在が参考になった事は言うまでもない。
で、おおかたの人達はこういうパターンで考えていたらしいのだが、実際は“合体によって姿を変える”というものだったのだ。
これには、虚を突かれた。
こういう側面もあってか、トライゴウラムはその注目度と人気を高めていった感がある。
●概要
実は、筆者の周囲では「トライゴウラム」の前評判はあまり良くなかったように感じられる。
これは今からすれば非常に陳腐なものなのだが、これまでの様々な商品を見てきた人達からすると、
- 人形を搭乗させるタイプ
- 手のひらよりも大きい乗り物系
これらはいずれも「モールドが大雑把」「ギミックがチープ」「材質がプラ中心のためか、サイズの割に充実感がない」という印象が強く、かなり二の次に考えられていた傾向があった。
本商品よりも前に発売された「ポピニカ・トライチェイサー(全長12センチ)」や「装着変身・クウガ」の完成度がなまじ高かった事を知っていたため、偏見の眼はさらに強まっていたといっても過言ではない。
これらの不安を拭うには、商品写真だけでは不充分であった事も付け加えておきたい。
なぜなら、それだけ過去に「騙された」商品との出会いが多かったという事なのだ。
特に、「装着変身」を手に取った事のない人の不安度は高かったと思う。
「聖闘士聖衣大系」や、「特捜エクシードラフト」などの素体人形の可動率の悪さを知っていれば、バイクなんかにまともに乗れない事は想像に難くないからである。
また、トライチェイサーがゴウラムと合体する事で、バイクそのものの形状が大きく変化するという設定がある事から、完成度に疑問を抱いた人もいた。
オフロードバイク「バンペーラ(スペインのガスガス社製)」が元車であるトライチェイサーが、オンロードバイクしかも大型車種の「V-MAX(YAMAHA製)」が元車のトライゴウラムに変わるわけだから、この疑問は当然である。
排気量・サイズだけでなく、タイヤの形状やシャフト位置まで違うのだ。車高だって全然違うし、何より本体のボリューム感が桁違いだ。
実際に手にしてみたら、オフロードバイクのプラデラにペタッと装甲がくっついた程度のものになるのでは、という懸念を抱くのも納得出来るというものだ。
ちなみにトライゴウラム及びビートゴウラムの装甲がサドルシート部で途切れているのには理由がある。
元車のV-MAXは、燃料タンクがシートの下にあるという構造になっているため。燃料交換のためにはいちいち降りなければならないのだ。
装甲があると、なにかとうっとうしくなるのだろう。
現実にこれらを手に取れた人達は、そのスタイルの自然さ・違和感の少なさに驚愕した事だろう。
このインパクトは、「バイクの大きさが装着変身の対比と合っていない」なんて諸問題を無視するのに充分だったのではないか。
その上で定価\3980と、結構リーズナブルに感じられる設定。
そうなれば当然、大人気商品となる。
トライゴウラム発売当時は、「装着変身1・仮面ライダークウガ“マイティーフォーム”セット」は極端な品薄で入手が極めて困難だった。
すでに「装着変身」を持っていた人達は待ってましたとばかりに飛び付き、まだ未購入の人の中にも、先行購入に走った人が多くいたようだ。
【ギミック・性能】
「DXポピニカ トライゴウラム」には、あまりにも誉めるべき箇所が多すぎる。
まず真っ先に挙げたいのが、“合体に際しての形状変化”だ。
基本体となる「トライチェイサー」は、先の通りオフロードバイクだ(下図参照)。
これに巨大なクワガタが合体すると、なぜか巨大なオンロードバイクになってしまう…というのが本編内での設定だった。
ゴウラム自体に、合体した基本体の形状を変化させてしまう能力があるというから、これについては問題ないだろう。
注目点は、おもちゃでの再現である。
トライチェイサーの前輪部を前にスライドさせ、後輪のサスペンション(!)を押し縮めた状態でロックをかける。
これにより、トライチェイサーの車高はあっさりと低くなってしまう。さらに後部のアンテナを縮め、ここにゴウラムを合体させるという方式だ。
さすがにタイヤの太さや形状までは変化させられないが、たったこれだけでバイクのフォルムが完全に変化してしまうという妙!
そこに、ゴウラムの装甲という“トライチェイサーの特徴的な部分を覆い隠す”ものが被さるのだ。
結果、まったく違う形状のバイクが完成するという図式。
なんと、あれほど重大な問題をものすごく単純に乗り切ってしまった。
元々対比が大きかったトライチェイサーは、トライゴウラム化する事によりさらに巨大化し、装着変身とのサイズの落差が激しくなる。
そのため、テレビで実際に登場した撮影用トライゴウラムを観ると、逆にやたらと小さく感じてしまうという弊害もあった。
しかし、なぜか筆者はこの無闇なサイズがこたえられない。
とんでもなく戦闘的なスタイルとなったトライゴウラムは、よく見るとトライチェイサーともゴウラム素体とも異なるシルエットに変化しているのだ。
これだけ単純な仕掛けで、こんなにも見た目を変化させてしまう…本商品の最大の注目点であるのは疑いようがない。
「トライゴウラムが自立出来ない」事を最大の問題点として指摘する旨もあるかもしれないが、実はこれはキッチリ解決されている。
トライゴウラムは、素体であるトライチェイサーの車高が低下するため本来のスタンドが使用できなくなり、両輪を設置した状態で自立させられないという意味なのだが、実はゴウラムの前足の位置を調整し、これを設置させる事で見事に自立させられる。
もちろん本編内とは違ったスタイルになってしまうが、出来ないよりは良いのでははないかと個人的に考える。
ま、これは個人の許容範囲にもよるけれど。
むしろ飛行時の「装着変身」ぶら下がり位置のズレよりは、はるかにマシではないかと…(後述)
●トライチェイサー2000
個別に見てみよう。
本体に大胆に亜鉛合金を使用し、また(簡略化はされているものの)緻密なモールドが丁寧に刻み込まれたスタイルは、おそらくこの時点での仮面ライダー系バイクの中ではベスト1の完成度だったと思われる。
ヘッドライトの形状再現のオミットがかなり減点対象だが(ライト部は、凹凸のない面への青い塗装のみで再現)、それを補って余りあるものがある。
サイドウインカー部・ハンドル・後部アンテナ部は軟質素材を使用している。
これにより、合体時ゴウラムと接触しても互いを傷つけなくて済む(もちろん安全基準PL法対策が優先だろーが)。
ただし、残念なのはこの時点ではまだ「トライアクセラー」が再現されていない事だろうか。
ただ逆を返すと、アクセラー分離を考慮されていないため、ハンドルグリップの形状はビートチェイサーよりもシャープで自然な造型になってもいる。
どっちを良しとするかは、ユーザー次第という事だろうか。
変形合体の都合上、ハンドル及び前輪部は一切回転しない。
もしも回転してくれたのなら、さそや様になるディスプレイが出来ただろう。もっとも、後に“ハンドルのみ固定、前輪だけ回転するDXマシントルネイダー”という商品が出たが…。
合体用の変形機構も素晴らしい。
前輪部は、ちょっと前にタイヤをズラせば完了する手軽さで、後輪はクランクカバー(エンジンの丸いパーツ)がロックボタンとなっており、サスペンションを押し縮めながらここを押せば固定されるというものになっている。
近年、玩具はこういうギミック作動ボタンの隠し方が巧妙になってきているが、これもなかなかのものである。
サスペンション自体フレキシブルに動作し、なかなかの感触。サスペンションフェチにはたまらないお色気である。
ちなみにこれを単体で飾る時、後輪を合体時の状態で固定し、スタンドを立ててから半立ち状態の装着クウガを乗せると、まるでジャンプ直前のウイリー状態のようになってなかなか良い感じになる。個人的に結構オススメ(当然ビートでも可)。
扱い上の問題点として意外と塗装が剥げやすいという問題がある。
これはトライゴウラム前半分が合体する時、特別なロック機構や一時的な変形機能がないため、ヘッド部分側面にパーツが直接干渉してしまう結果発生するトラブルだ。
これは、ユーザーの扱い方の荒さによって発生するものなのだが、確かに発生しやすい問題ではある。
合体接合部をよく確認すると、トライゴウラム前半部は前輪シャフト上半分辺りを内部のツメ状パーツで挟み込むような形状となっていて、チェイサー本体とはまったく接触していない。
しかしそこにツメをはめ込むためには、多少力を入れてパーツを押し付ける必要がある。干渉による擦り傷は多分ここで発生するのだ。
この合体は、ゴウラム本体がプラスチック製…つまり柔軟性の高い材質で出来ているから可能な合体だ。
もしもトライゴウラムのヘッド部分が合金製だったなら、絶対こういう合体は出来ない。
個人的には、シャフトを挟み込む際に一旦ライト部(ゴウラムの第三・四番目の眼みたいな部分)が横にスライド機構があったらさらに嬉しかった所だが、そんな事したらさらにコストがかかってしまった事だろう。
この「力任せの合体」があるため、他人が所有しているトライゴウラムをいじらせてもらう際には、細心の注意が必要になってしまった。
ともあれ、全体的に漂っている高級感はポイントが高い。
ボディ側面部の細かいエアダクト&インテーク部分(幅2ミリ弱!)にまで丁寧に艶消しブラックが塗装され、何よりウリである“リント文字「戦士」のマーク”の塗装が良い。
この細かさで、一切の乱れがない。確かガンプラ等で良く使用されるナントカいう塗装法だったと記憶しているが、この辺ちょっとおぼろ。
とにかく、あらゆる部分に妙な気合いが入っている。
これ単体でも、充分ディスプレイモデルとして飾れるレベルのディテールを持っているという事だ。
現在でも、これの入手を目指している人が多いというのも、頷けてしまう。
●バトルゴウラム(ノーマルバージョン)
トライゴウラム時の前側面部分を支える軸と、羽の外郭部分を支える軸パーツの4カ所以外、一切亜鉛合金パーツを使用していない。
ただしプラ製である事を各所で活かした造型となっており、なかなかにポイントが高い。
表面を覆う細かな凹凸のモールドと、金属装甲風の部分のノッペリした形状のミスマッチが楽しく、またアマダム周辺にメッキパーツを施す事で華麗なアクセントとなっている。
前足部分がちょっと動かしづらく感じる事がある(購入直後くらい)が、これについては後に触れよう。
頭部表面にはリント文字「来たれ 甲虫の姿を型どりし 馬の鎧となる 僕よ」がプリントされているが、足部分の「戦士と僕 手と手を繋げ さすれば大いなる飛翔あらん」と、腹下部辺りの「心清き 戦士の 泉 涸れ果てし 時 我 崩れさらん(最終回登場)」までは、さすがに再現されていない。
驚かされるのは、前半パーツと後半パーツを繋いでいるジョイントだ。
これは、バンダイやタカラの合体系商品によくある「凹凸状ツメ型ジョイント」なのだが、実は凸部分がメッキパーツなのだ。
そうなると当然、何度か合体分離を繰り返していればそのうちメッキが剥がれてくるだろうと想像してしまう。
しかし、実はなかなかそうはならない。
なんかしらないけど、ここのメッキの決着が異常に強いため、なかなか剥離しないのだ。
現に筆者のものは、購入から一年以上経過しもう数知れず分離合体が繰り返されているが、まったく剥離する様子がない。
もちろん完全ではないのだろうが、かなり耐久性があると認識していいだろう。
ゴウラムは、単独飛行形態と合体形態とでその表情がガラリと変わるところが最大の魅力ではないだろうか?
クワガタの顔面を構成しているパーツは、変形後左右に折れ曲がってトライゴウラムのフェンダー(?)部分になるが、その下にもう一つの顔…トライゴウラムのプロントマスクが隠されている(正確には、隠されているというより積み重なっているだけだが)。
この簡単かつ大胆な変形は、なかなかのインパクトがある。
テレビではCG合成によりギミックを把握しずらい変形を披露していたが、おもちゃのギミックで衝撃を受けた人って結構いたのではないだろうか?
フレキシブルに可動する翼状の外郭部、後ろ足のツメ収納と、まだまだ見るべきところは多い。
またこれ単体でも遊べるようにと、TV本編でやっていたように“クウガをぶら下げる”事が出来るようになっている。
ただし、これだけには不満がある。
本編では、ゴウラムは前足を自身の腹下側に折り込んでいて、クウガはそれにつかまって飛翔していた。
ところが玩具では、後ろ足の付け根付近の腹下側にジョイントを設け、そこに専用の「グリップ」を接続、これを「装着変身」の人形に握らせるというスタイルになった。
…すでにこの時点で、クウガのマウント(?)位置が大きく違うのですが…
実際、前足部分を持たせるという事はかなり難しく(重量を支えるため、関節強度をべらぽうに固くしなくてはならない)、また形状が大きく変化してしまうだろう事は想像出来る。
しかし、だからと言って本来まったく捕まるものがない筈の部分からぶら下げさせてどうするのか。
人によっては気にならないポイントだろうが、筆者はふとそんな事を考えてしまった。
また「グリップ」パーツもかなり小さいものなので、小さい子供などすぐになくしてしまいそうに感じる。
さらにはこのジョイント部分はディスプレイ台に固定するポイントとトライチェイサーへの合体ポイントを兼ねているため、なくさないように常に付けっぱなしにしておく事も不可能。
ましてや「グリップ」を「装着変身」に掴ませたとしても、自重を支えられないほど指関節の強度がないものだからすぐに外れてしまう。
些細な事だが、もう少しなんとかならなかったものだろうか…
もっとも、仮にぶら下げるのに支障がなかったとしても、そのままの姿勢で飾る事は難しいのだが(吊すしかないし)…
「グリップ」をつけるなら、せめて前足の付け根よりやや内側寄りの部分に専用ジョイントを設けていただきたかった。
これなら付けっぱなしにしてもOKだし、合体時にもトライチェイサー本体に干渉しない筈だし。
まあ、言うほど気にはならないんだけど。
ちなみに、長い間トライゴウラム状態で保管しているとトライチェイサーのアンテナ部がしなってしまい、なかなか元に戻らなくなるというまいっちんぐ状態に陥る。
●ディスプレイ台
台座と支柱の2パーツ構成の、ゴウラム固定用台。
台座には「戦士」を表すリント文字がかたどられていて、なかなかかっこいい。
そのままでは自身を支えられないゴウラムを飾るには、必須である。
その際、やっぱ羽は広げておきたいもの。斜め上を向いているスタイルになるしね。
付属のシールは、この台座にのみ使用する。
●グリップ
「装着変身」用ジョイント。
『バトルゴウラム』の項を参照。
●世間的評判
先行商品の「装着変身」の人気にあおられる形となり、大ヒットを飛ばしたのは先述の通り。
先ほど「筆者の周りでの評価は悪かった」と書いたが、雑誌紹介や宣伝により期待感を抱いていた人達も決して少なくなかった事は付け加えておかなくてはならない。
やはり単純に「装着変身」を乗せて遊べる、というシチュエーションは魅力的だったという事だろう。
後にこの別バージョン『ブラックヘッド』(後述)が発売されたりと、それなりの展開を行い、流通ルートにメインで乗っていた間は常に高い評価を得ていたとまとめても構わないと思われる。
しかし、その撤退劇は結構悲惨だった。
否、正確には後任の質が良くなかったというべきか…
33話「連携」にて事実上の退陣となった「トライチェイサー」に変わって、同話から本格登場となった「ビートチェイサー2000(以下ビートチェイサー)」だが、これの商品展開に大きな問題があった。
これらについては、後の『DXビートゴウラム』にてまとめて細かく触れよう。
2.DXホピニカ トライゴウラム“限定ブラックヘッドバージョン” 定価 ¥3980
セット内容:
- バトルゴウラム
- トライチェイサー2000(ブラックヘッド塗バージョン)
- ゴウラム固定用ディスプレイスタンド
(2パーツ構成・簡易組立)
- 飛行用グリップ
- シール
- 取扱説明書
マトリクス機能という特殊な設定により、そのボディカラーを変化させられるトライチェイサー…そのバージョン違いを再現した商品。
ブラックヘッドとは、主人公・五代雄介が変身前に搭乗しているカラーバージョンの事。
変身後はゴールドヘッドと呼び、量産型またはそれと同色の場合はポリスヘッドと呼称される。
ただこの商品、厳密にはブラックヘッドとは少々呼称し難いものがある。
かなり細かい事ではあるが、後部アンテナの色をはじめとして所々に撮影用のものとの違いが見受けられる。
どちらかというと、単純に「ブラック(またはガンメタル)バージョン」と解釈すべきなのかもしれない。
とはいえ、これがブラックヘッドを再現した商品である事には間違いないのだが。
商品内容は、トライチェイサーのカラーリング以外まったく変更がない。
正確には、パッケージに『限定版 トライチェイサー2000ブラックヘッドバージョン』と記されたシールが貼られているという違いがある。
(さらに、トライチェイサーの名称部分にもシールが上貼りされてたりする)
【前評判】
「もし出たら面白いな」と噂されていたら、本当に出てしまったという限定。
すでに「DXトライゴウラム」を持っている人には、まったく同型のゴウラムをもう一つ掴まされるという事に懸念を抱いた人も多かったらしい。
2000年9月頃の発売で、この直後くらいに「DXビートゴウラム」が発売されている。
その事からも、かなり時期を限定して行った販売である事が伺える。
限定版という事で、一部のコレクターの間ではかなり殺気立つ傾向があったらしいが、比較的入手は容易だった印象がある。
個人経営店ではどうだったか詳細は不明だが、大型店舗ではそれなりの数をきちんと販売していた。
しかし、テレビでビートチェイサーが本格的に活躍し始めた頃には、ひっそりと姿を消していた。
これまでにもバンダイ製品では、“限定版”と銘打っていながらいつまでもダラダラ売り続けているという傾向が見られたため(特に超合金魂ブラックバージョン)、今回もかなり楽観視されていた傾向があったようだが、その油断によって入手タイミングを逃してしまった人達はかなり慌ててしまったらしい。
ただ、ブラックヘッドが市場から姿を消したのは、単純に“限定期間を終えたから”という理由とは思えない風潮もあった。
詳しくは後述するが、ほぼ時期を同じくして「DXトライゴウラム」も姿を消し始めたのだ。
【ギミック・性能】
もちろん「DXトライゴウラム」と違いはない。
…これだけで終わるのも寂しいので、ちょっと関連話を。
本編内では五代雄介が乗り回していたブラックヘッドだが、おもちゃで出た以上これを合体させたバージョンのトライゴウラムも作れる筈だ。
で、本編を見てみると、たった一回だけ24話「強化」にてこれを実践している。
多分これが、ほぼ唯一と言って良い「ブラックヘッドバージョン」の商品宣伝ではなかったか、と考える。
それ以降はどのような急な事態であっても、ブラックヘッドはゴウラムと合体していない。
かつて鷹羽飛鳥氏も「習慣鷹羽〜仮面ライダークウガのお部屋」内で語っていたように、筆者もこれは商品宣伝的な意味合いを含めた演出にしか思えない。
●世間的評判
この商品については、後に「ビートチェイサー・ブルーライン」の項でも触れる“ヤフーオークション”の事が印象深い。
やはり限定だったためか、ネットオークション上での出品が相次ぎ、様々な状況を作り出していたようだ。
なんかいきなり2万円くらいの価格を提示していたのを見た記憶がある。
商品販売後の世間的評判については、筆者はあまり目立ったものを拾った事がない。
意外と世間的な評判は平坦なものだったという事だろうか? どうもピンとこないが…
次はいよいよ問題児。
3.DXホピニカ ビートゴウラム 定価 ¥7980
セット内容:
- バトルゴウラム・エンシェントバージョン
- ビートチェイサー2000/トライアクセラー
- 五代雄介人形
- 通信用携帯電話
- ライジングビートアーマー×3
- シールド用アタッチメントパーツ
- ゴウラム固定用ディスプレイスタンド
(2パーツ構成・簡易組立) - 飛行用グリップ
- シール
- 取扱説明書
トライチェイサーの後を継いで登場した、いわば“未確認生命体第4号専用機”。
商品は、クウガ変身後のボディカラー(マトリクス機能)“レッドライン”の再現で、これに変身前の姿の五代雄介が乗っている、という不自然なスタイルになっている。
その他色々あるけれど、基本的な仕様は「DXトライゴウラム」と大差ない。
それなのに、価格がほぼ2倍に上がっている事に驚かされる。
はたして、どうしてこんな価格設定になってしまったのだろうか?
●概要
ビートチェイサーの商品化は当然皆が注目していた訳だが、同時にいくつかの不安要素が見込まれており、その答えがどうなるのか…それを知りたがっていた人達が多かったのではないかと推測する。
まず、基本ギミックがトライチェイサーと同一であるビートがどういう形式で販売されるかという事。
特に「DXトライゴウラム」と全く同一の商品内容にしてしまっては、またまたゴウラムが余る事になる(ブラックヘッドも買った人にとっては3つ目になる)訳だから、それだけで購入意欲はかなり減退してしまう可能性がある。
しかし、だからといってトライになかった全く新しい「売り」を今から組み込むのは不可能に近い。
ファンが注目したのは、まさしくこのボイントだったのだ。
しかし、実際に発表された商品内容は驚愕のものだった。
不安はモロに的中し、その上ゴウラムは余りパーツにされる事を懸念してか「エンシェントバージョン」なる別カラーリングにされてしまった。
そして、なぜか赤外線通信システムなどという不可思議な機能を搭載され、一条刑事の携帯電話を模した玩具まで組み込まれた。
さらには「ライジングビートゴウラム」なるとんでもないシロモノにするための増加装甲まで付属し、その上これを「装着変身」用のシールドにするためのアタッチメントまで混入されている。
もはや、無理矢理商品内容を豪華にした事は明白だ。
その上で、価格は7980円までグレードアップ。
当然、初売り時にはほとんど売れないという事態を引き起こした。
もちろん全体的に見ても、トライとは比較にならなかった事は言うまでもない。
これがそれなりに売れるようになったのは、番組終了前後の安売りが始まってからの事だ。
「仮面ライダークウガ」の商品展開は後半大きな失敗をしてしまった事で有名なのだが、その際プロデューサー側の意向が、スポンサーのそれとかみ合わなかったために発生した摩擦によるものであるという見解が生まれた。
しかし「装着変身6 アルテイメットフォーム」はまだしも、この商品までプロデューサー側の責任として捉えるのはどうかと個人的に考える。
誰がどう考えても無茶な商品。
しかも、それだけでなく本編内に活かす事すら困難な商品。
こんなものが売れる筈がない。
当然というか、その後これは極端な品余り状態を起こし、1000円程度で叩き売りされまくっていたという報告を各所から聞く事になるのである。
【ギミック・性能】
評判の良くないビートゴウラムだが、実は商品そのもののグレードは結構高い。
トライチェイサーのギミックを踏襲しているため基本スタイルは完全同一だが、ゴウラム合体前に後部マフラーを倒したり、フロントノーズ側面部のパトライトを開いてやる必要がある。さらに、後輪サスペンション固定のスイッチがエンジンではなくサイドステップバーに変更されている。
ステップバーを右から左側に押し込むのだが、合体時はこれによりステップ左右の長さが大きく代わってしまう事になる。
ギミックには関係ないが、トライチェイサーでは一切再現されていなかったコンソールパネル部分もしっかり再現されている所はポイント高い。
また右側のハンドルが外れるようになっているのも嬉しい。
これは「トライアクセラー(起動用スティックであり、一応“警棒”という設定がある)」の再現であり、トライチェイサーにはなかったものだ。
ちなみにビートチェイサーのアクセラーは「ビートアクセラー」という呼称ではなく、「トライアクセラー」である事に注目したい。
五代がトライチェイサーに使用していたものと完全同一のものかどうかは不明だが、すくなくとも設定上はそういう名称らしい。
これは、商品パッケージ裏の解説でも確認する事が出来る。
エンシェント・ゴウラムについては、完全に同一の型を使用したものなので説明は割愛。
ビートゴウラム合体時に接続する「ライジングビートアーマー」や、本商品もう一つのウリである「赤外線通信システム」については、個別説明にて。
●ビートチェイサー2000
元々がゴウラムとの合体を前提に設計されている機体であるためか、合体を受け入れるためのギミックが強化された商品である。
先にも触れた「パトライト開閉」「マフラー移動」などはその代表で、非常によく出来ている。
ただしパトライトを開き忘れてゴウラムを合体させると、結構悲惨な目に遭うので注意が必要。
トライアクセラーのハマりが悪く、良く抜け落ちるという意見を以前聞いた事があるが、実はより深く押し込む事でカチッと固定されるようになっているため、なかなか抜け落ちる事はないのだ。
本体が亜鉛合金製からプラ製に変更されたため、質感がなくなってしまったという問題点はあるものの、これ単体ではほとんど問題らしい問題はない。
ディテールやモールドについては個人的な主観によって色々な評価があるだろうから深くは触れないが、多分そんなに徹底した文句を付ける人はいないのではないかと推察する。
ちなみに、一見トライチェイサーと完全同一の金型を使用しているようにみえるビートチェイサーの各基本パーツだが、よく見るとかなり異なる部分がある。
例えば、前輪シャフト部分はトライとは別物。ビートは中抜きパーツに変えられている。さらによくよくみてみると、部分的にディテールも異なっている。
これはおそらく、原型に手を加えた結果による物ではないだろうか?
またタイヤの太さも異なり、ビートの方が若干太めのものに変更されている。
さらには、後輪サス部分一式もプラから合金製パーツに改められている。多分金型は同一のものではないかと思われるが、筆者はこちらの方が好みである。
本体も、マフラー設置の基部が大きく異なっていたり、サイドラインの輪郭を表現するモールドの彫り込みラインが完全に別物で、さらにエアーダクトと思われる側面の穴部が左右一つずつ消失している。
しかし、一番大きな違いは“赤外線通信システム”の搭載により形状変化を余儀なくされた、ボディ中央部分付近だろう。
ボタン電池を入れるための蓋と化したサドル部分はネジ固定による別パーツ構成となっているし、以前サスペンションの固定スイッチとなっていた部分は、音を出すためスピーカーが内側に配された。その関連で、サイドステップがあらたな固定スイッチと化したという顛末。
ついでに言えばフロントフェンダーも短くされ、短縮された部分に音声ギミックのスイッチを配している。
胴体の左側に設置されたボタンは、赤外線通信システムの一環として本体から音声を出すためのもの。
ここを押すと五代雄介の声で「変身!」と叫び、その後ベルトが回転する音・変身完了音が続けて鳴り響く。
これが意外と大音量で、なかなかいい感じ。
音に合わせて五代人形と「装着変身」を入れ替えて遊ぶ人とかもいるかもしれない。
この音声は、付属携帯電話での遠隔操作で再生出来ないものとなっている。携帯の電池は別売りなので、電池の購入を忘れた人向けにせめてと組み込まれたギミックのようにも感じられる(実際はわからないけど)。
なお、メインスイッチを入れっぱなしにしていると適当な間隔で警告音が鳴り、切り忘れを防止するという気の利いた性能もある。
比較的良い部分の多いビートチェイサーだが、致命的な問題点がたった一つだけ存在する。
それは「装着変身」をまともに搭乗させられないという事だ。
「装着変身」の人形を座らせ両脚をステップに乗せようとする際、後部マフラー先端が人形の足首裏部に干渉してうまく固定出来ない。
そのため、やむなく本来の座位置よりも少し前にズラさなくてはならず、かっこわるくなってしまう。
いわゆる“深座り”ができないという事だ。
完全にパーツ形状が災いした例であり、トライチェイサーでは考えられなかった問題だ。
●バトルゴウラム・エンシェントバージョン
この商品で一番非難が集中したのがコレ。
いや、この際色変え別バージョンで割り切れたとしても、「だからってこの配色はないだろう!」と思わず怒鳴りたくなるくらいにヒドイ配色センスに閉口させられる。
この商品を持っていない人は、「エンシェント=ゴウラムのブラックバージョン」的な考え方をしている場合もあるらしいが、実際は全然違う。
まず、ボディの黒い部分はすべて“ドス黒く濁った濃紫色”になり、金色部分は“煤けた銅色”といった感じのものとなった。
またアマダム周辺や後ろ足ツメのメッキはすべて廃され、元・金色部分と同様の配色とされた。
足や角本体部分の色はすべてガンメタル風の配色になり(これだけはそんなに悪くないかも)…まあ、全体をてっとり早く言いまとめてしまうなら
ゴウラムゾンビ!
という表現がピッタリのような気がする。
明らかに、というか、絶対ビートチェイサーとの合体後の配色バランスを計算していたとは考えられない。
そのため、本商品を購入した人の中でもエンシェントは使用せず、トライ付属のゴウラムを合体させる人が多かったらしい。
とにかく、「かっこわるい」の一言では済まないほどにむごい状態だ。
で、これは本編にも一応登場はしたのだが、ビートチェイサーなどと合体した場面はついに登場しなかった。
ライジングビートゴウラム自体、第42話「戦場」でゴ・バベル・ダを倒す直前に総合16秒間だけの登場だったから。
しかもそのうち4秒は、五代の報告のシーンだった。
エンシェントは、43話「現実」にて科警研内で色が変わった事を軽く紹介された程度の扱い(登場約27秒!)。
制作スタッフの間でも持て余されていただろう事は想像に難くない。
悪趣味な人にでもなければエンシェント合体ビートゴウラムはお奨め出来ない。
ここに「ライジングビートアーマー」が加わった時のかっこわるさは、さらにとんでもないレベルに達するのだ。
●五代雄介人形
「装着変身」人形よりも一回り大きいサイズで作られた、ライディングスタイル固定のフィギュア。
実はバイクとの対比が一番ピッタリなもので、トライチェイサー・ブラックヘッドなどを飾る際には重宝する。
首と肩しか可動しないため、ポーズはほとんど調整できない(する必要はないけど)。
顔は全然似ていないが、ヘルメットを装着した状態を模しているため、さほど気にならないと思われる。シールドが欲しかったけど。
よく見ると、やや猫背気味にまたがっているというオダギリジョー氏の体型を忠実に再現してあり、なかなか微笑ましい。
材質はPVC製。
●通信用携帯電話
「赤外線通信システム」の要を司るアイテム。
わざわざ単四電池2本を別購入しなくてはならないのだが、使った人はどれくらいいるというのだろうか?
あまりに不条理な定価跳ね上げに納得出来ない人達ほぼすべてが、これの導入が要因だと推察した事から、評判はすこぶる悪い。
いや、実際かなり反映されてはいるだろうけど。
おそらく「携帯電話=子供のあこがれ」という図式に基づいて企画され、さらに“一部の特殊なファン層”の受けを狙った機能を搭載したと邪推される。
実際のコンセプトはともかく、ほとんどビートゴウラムを使った遊びに導入する事が出来ない、余剰アイテムと化している。
実動ボタンは3つで、携帯電話のメニューボタンや送りボタンに相当するメインの位置のものが使用できる。
左から、ビートチェイサーへのメッセージ転送ボタン、メッセージセレクトボタン、五代からの通信セレクトボタンとなっている。
転送ボタンをビートチェイサーに向けて押すと、ビートから一条刑事の声で
- 「五代、聞こえるか?」
- 「五代雄介、聞こえるか? 五代!」
- 「五代雄介、未確認生命体が現れた。ただちに急行してくれ」
- 「五代、ただちに急行してくれ」
- 「五代雄介、未確認生命体がそっちに向かっている。気を付けろ!」
- 「五代雄介、気を付けろ! おそらく奴の狙いは君だ!」
- 「五代、未確認生命体がそっちに向かっている。おそらく奴の狙いは君だ!」
の、いずれかのメッセージがランダムで再生される。
すると、ある一定の時間を置いてコール音が携帯から鳴り、ボタンを押すと五代の声で
- 「一条さん、オレです。とにかく奴らを追います!」
- 「一条さん、大丈夫です。何とかなります」
- 「一条さん、なんか事件ですか?」
- 「一条さん、何とかなります!」
- 「一条さん、大丈夫です!」
- 「オレです。大丈夫です!」
- 「すいません、聞いてませんでした」
のいずれかのメッセージが再生される。
当然、組み合わせによっては会話が全然成り立っていない場合もある。
携帯単体でも五代の声を再生できるが、どうやら通信を成り立たせる事ではじめて再生されるメッセージもあるようだ(詳細は未確認)。
ちなみにこの赤外線通信システムは、携帯側から特定の信号を発信し、それを受けたビートチェイサー側がメッセージをランダム再生するという部分にしか使用されていない。
携帯への返答メッセージは、適当な時間を置いて携帯側が再生するだけのものに過ぎない。
ビートチェイサーのスイッチをオフにした状態で転送ボタンを押しても五代からの返答が返ってくる事や、携帯側で一条のメッセージを一切再生できない事でそれは証明できる。
つまり、全然大したことのない性能という事だ。
こんな程度の機能を売りとして宣伝され、あげくに価格があんなにつり上がったのかと思うと本当に口惜しい。
その他、五代による
「見ててください、俺の! 変身!!」(携帯再生のみ)
「オリエンタルな味と香りの店・ポレポレです」(携帯再生のみ)
などがあるが、最高傑作は、メッセージセレクトボタンを3回押してから転送ボタンを押す事によってビート側から再生される一条のメッセージだろう。
「五代雄介、よくやってくれた。夕陽が綺麗だ」
これだけは必聴の価値があるかもしれない。
●ライジングビートアーマー
本編にたった一度だけ登場した、ビートゴウラムのパワーアップ装甲。
3つのパーツで構成され、マフラー部(ゴウラムの後ろ足)に2つとフロントノーズ部に1つ接続され、いずれも柔らかいPVC材質である事を利用して「ぐにゃっ」とひんまげて装着する(フロント部はスライドしてツメにはめ込む方式)。
考えてみれば、テレビ本編のものを再現するためには別の商品が必要になってしまうという本末転倒な状況を起こしており、パッケージ裏の「劇中に登場するライジングビートゴウラムも完全再現」という文章もなんか白々しく感じられてしまう(その真下にはノーマルゴウラムと合体したビートチェイサー&アーマーの写真があるのも意味深?)。
フロント部には「雷」を示すリント文字をアレンジしたマークがプリントされており、マフラー部には「雷の 力を 加えて 邪悪を 鎮めよ」という意味のリント文字が示されている。
このアーマーのうちフロント部は、別の「アタッチメント」を接続する事で、玩具オリジナルギミックの“シールド”化させる事が出来る。
もちろん、蛇足的な意味しか持たないのはいうまでもない。
個人的には、ライジングタイタン辺りにこれを持たせて飾ると結構良い感じを受けるのだが、パッケージ裏ではライジングマイティに構えさせているため、なんかピンとこない。
このグリップのはまりの悪さはすさまじく(その分外れにくいが)、結構手こずる。
アーマーそのものは非常に細かいモールドが施されていて、なかなか出来がいい。
●ゴウラム固定用ディスプレイスタンド
基本的パーツ構成と、唯一シールを貼る部分だという事は、トライゴウラムのものと共通している。
しかし台座の模様が「戦士」から「雷」に変更されている。
意外に芸コマかも。
●世間的評判
先の通り、非常に悪い前評判とそれをあおるような商品内容によって、各方面に凄まじい迷惑を掛けてしまった問題商品となった。
トイザラスなどで、見上げんばかりに山積みされた「DXビートゴウラム」のパッケージを見て驚いた人も多いのではないだろうか。
事実、個人店でははりきって仕入れたにも関わらず全然動かなかったため、泣かされたというエピソードもある。
「仮面ライダークウガ」の商品展開全体を語る上で、必ず出てくるのが「装着変身」初期シリーズや「DXトライゴウラム」の好評ぶりと、本商品と「装着変身アルティメットフォーム」の販売不振ぶりの話。
この辺の事情を知らない人達も多いと思うので、ちょっとだけ説明しておこう。
「仮面ライダークウガ」は、エピソード後半に至ってかなりの盛り上がりを見せ、これまでの多くの謎や戦いの結果を知りたがる人達の注目を一身に集めていた。
ただ同時に、新しいアイテムを番組内に登場させるのが、かなり困難な状況になっていたのも事実だ。
31話まで、だいたい2話間隔で常に新しいアイテム(または設定の紹介)を行ってきた本編も、ビートチェイサー登場の33話以降、突然その性格を変えてしまう。
物語の収束にその力を注ぎ始めたという事だろうか、そういったものを新規で登場させ、かつきちんと活躍する場面を設けるほどのゆとりがなくなっていたように感じられる。
ところがスポンサー“バンダイ”にとっては、それで納得する訳にはいかない。
番組終了までにはあと2つの要となるアイテム「ビートチェイサー」と「アルティメットフォーム」がある訳で、これらはクリスマス商戦を中心とした大切な時期に切り込むための重要アイテムでもあった。
事実、この年の10月には児童誌上でアルティメットフォームが発表され、早くも10/8放映の35話にて、ゴ・ジャラジ・ダを倒したクウガの見る幻影としてその姿を見せた。
それから先、ビートチェイサーもビートゴウラムも目立った活躍はなく、アルティメットはおろかエンシェントゴウラムすらもいっこうに画面に登場する気配がない。
そのまま約2ヶ月(間に6話!)の間、新アイテム的展開は完全な沈黙を続け、時期は12月に食い込んでしまう。
12/3放映の42話で、やっとライジングビートアーマーを纏ったビートゴウラムが登場するが、結局活躍はこれっきりで、その時間も秒単位にすぎない。
アルティメットについてはもっととんでもない事情があったようだが、これについてはまた別の機会に触れてみたい。
とにかく、ほとんど“登場したとはいえない”レベルの登場になってしまったという事だ。
当然、これで商品が売れるわけがない。
これの前に発売された「装着変身5 ライジングフォームセット」も、売り上げがかなり伸び悩んでいた。
旧フォームで戦うクウガが、トドメを刺す場面などほんの数十秒ずつの登場しかしなかった上に、デザインもほとんど以前と共通(シルエットは完全同一)であるためか、独自の宣伝性に乏しく、4つのフォームすべてのセット+αで4500円という破格の値段設定だったにも関わらず、大失敗の展開となってしまった。
やはり、決定的に前の商品との区別が付かない上に充分な活躍によるアピールができなかった事が、大きな要因となっているのは疑いようがない。
すでに前商品で失敗の兆候が見えていたのに、「DXビートゴウラム」は二の轍を踏んでしまったのだ。
もっとも、時期的に商品内容を一から検討し直す事は不可能に近かった事だろうが。
それとも、販売側はこの商品内容に何か決定的な勝算を見込んでいたのだろうか…?
番組終了時期が誰にも見えてきた1月頃、クウガ関連の商品はこぞって叩き売りの対象とされた。
主に対象となったのは「装着変身5 ライジングフォームセット」「装着変身6 アルティメットフォーム」「サウンドバトルセット」「ライジングパワーセット」「DXビートゴウラム」等であり、これに購買層が限定される「京本コレクション」が加わる。
最後の一つはともかくとして、いずれも“本編中目立った活躍がない”ものばかりだという事に気付くだろう。
事実、「装着変身1〜4」「DXトライゴウラム」「ソニックウェーブDX変身ベルト」等が、そこら中で叩き売りされていたという話は聞いた事がない(安売りそのものはあったけど…)。
「ビートチェイサーの単体売りをした方が良かったんじゃないだろうか?」という意見を良く聞くが、メーカーにとってそれは結果論に過ぎず、事前にはかなり危険視されていた意見だった筈だ。
クリスマス商戦を狙った商品は、全体的に高額になる傾向があるという。
これは、やはり消費者が多くの金を落としていく可能性が上がるからだ。
過去にも、番組終盤が近づく頃に妙に高額な商品が出た事は数知れずあった(「ガオレンジャー」にしても、この時期に合計金額1万円を超える“ガオイカロス”等が発売される)訳だが、バンダイがビートをこれに当てた可能性は否定出来ない。
それなりの価格設定がまずありきで、そこから商品内容を構築した、という見方はうがちすぎだろうか?
本商品のむやみやたらな商品内容を見ると、そんな印象すら抱いてしまうのだ…
いずれにしても、メーカーにとってもかなり“賭け”の要素が大きいものだったろう。確証はもちろんないんだけど。
ビートチェイサーの単体売りを考慮した場合、メーカーにとっては大きなリスクが無視出来なくなる。
すでに発売されている「DXトライゴウラム」を持っている人達にとっては良くても、それを購入していない人にとっては迷惑この上ない訳だ。
最悪の場合、トライゴウラムの購入をも強制するようなスタイルになりかねない。
だがしかし、後継機ビートチェイサー発売によって先代機トライチェイサーの商品数を調整、あるいは撤収させなくてはならない。
つまり単体売りしてしまうと、ゴウラムが品薄になってしまうのだ。
これを避けるため、またもゴウラムを付けなくてはならない。
しかし今度は、トライゴウラムを購入した人達が買ってくれないという弊害も生じる。
とすれば、セット内容はほぼ同一なのだがそれ以外に売りになるものを含ませれば良い。
そして、無駄に余る可能性のあるゴウラムも別バージョンにすれば、問題はクリア出来る。
追加要素は、それなりのギミックと児童人気に基づくものを加える必要がある。
一条刑事の携帯電話との通信会話機能は、価格設定をより高く設定出来る題材にぴったりのものだ。しかも本編でしょっちゅう利用されているシチュエーションの再現。
さらに五代の変身前人形を付け、簡単な増加パーツで再現出来る「ライジングビートゴウラム」なる新設定を付加すれば、充分新商品としてアピール出来るだろう。
そして、価格もより高く設定出来るに違いない。
…さしあたって、こんな発想だったのではなかろうか。
もちろんこれは筆者の勝手な予測であり、裏付けは全くない意見なのだが…
本商品の評価が決定的に下落した最大の要因(ダメ押し)は、“ビートゴウラムのデビューと入れ替わりで「DXトライゴウラム」がごっそり姿を消した”事だった。
つまり「装着変身」と関連させた遊びをするためには、もはやビートゴウラムを購入するしか選択肢が残されていなかったのだ。
どんなにトライチェイサーが好きでも、ノーマルのゴウラムが欲しくても知ったこっちゃない状態。
メーカー側の事情を察すれば理解は出来るが、あまりに消費者のニーズを無視しすぎた展開だった。
結果、トライの人気と需要はさらに高まり、いまだに追い求める人が多い。反面ビートは下落に加速がかかる一方。
メーカー側の思惑にここまで反した事態が展開するも、実に珍しい。
4.「仮面ライダーワールド特別限定商品」ビートチェイサー2000“ブルーライン” 会場定価 ¥2500
セット内容:
- ビートチェイサー2000“ブルーラインバージョン”
- トライアクセラー
- 五代雄介人形“別彩色版”
イベント限定商品で、なぜかDXともポピニカとも付かない商品。
もちろん「DXビートゴウラム」のものと同一の型を利用したもので、五代雄介が変身前に搭乗しているバージョンのビートチェイサーを再現している。
すでにシール(コンソール部分)が貼り付けられており、さらには説明書すらない。
赤外線通信システムも搭載されていないので、いくらか軽いような感覚がある。
ちなみに通信システムは、本来のビートチェイサーからの移植が可能で、ドライバー1本で簡単に行えるらしい(筆者はやっていないが)。
商品そのものは、グレーの成形色に銀ラメ状の塗装を施され、赤いラインの代わりにブルーの鮮やかな塗装が施されている。
成形色むき出しだった旧ビートチェイサーに対して、独特の高級感を与える作りになっていて、なかなかいい感じ。
ただこれを見ると、あらためて旧ビートチェイサーのボディカラー全体が塗装ではなかった理由(おそらくトライの時に起こり得た“パーツ干渉による塗装剥離”を避けるため)を思い知らされる。
●概要
この商品が初めて発売されたのは、「仮面ライダーワールド」スタート地点の大阪会場だ。
開催前からメデイア上・ネット上でこの告知が行われ、ファンはこの限定品を入手しようとかなり盛り上がっており、一部では“これは大阪会場でしか発売されない”という情報も流れたため、高値を覚悟でヤフーオークションから落札したり、わざわざ大阪まで出向いた人達が多く出た。
しかし現実には、これは大阪会場でも結構な数が余ってしまっており、当然別会場でも発売される事が決定していた。
ネットオークションでの平均的な相場は1万円前後で取引されており、筆者は2万円台のものも確認した事がある(落札されたのかは知らないが)。
【ギミック・性能】
「DXビートゴウラム」付属のビートチェイサーと完全同一形状で、「赤外線通信システム」以外はすべて同様のギミックを搭載している。
●ビートチェイサー2000・ブルーライン
先の通り、なかなかの高級感が漂う作りになっている。
ゴウラムとの合体は、劇中でもEPISODE39「強魔」で一度だけ行われており、再現時には是非ともペガサスフォームかライジングペガサスフォームを絡ませたいところ。
▲ 諸事情でここだけフィギュアーツ・クウガを利用
レッドラインのヘッド部に印刷されているクウガマークは黒だったんだけど、こちらのヘッドパーツのカラーリングはブルーメタリックになっている。
これではカラー変更前からマークが目立っちゃうじゃないの!
●五代雄介人形・別彩色版
上着の色が、薄茶から黒に変更されただけのもの。それ以外は「DXビートゴウラム」付属のものと変わりない。
●世間的評判
日本のネットオークションの中枢とも言えるヤフーでは、2001年3月初頭から“本人確認”なる特殊な再登録を行う事を決定。
それまでみたいに、いつでも誰でも参加できるという形式ではなくなってしまうため、今のうちにとばかりに色々な限定版が出品されまくり、ろくな価格もつかない状態で落札されるケースも多発した。
ブルーラインもこのパターンに陥り、(定価よりは高かったものの)かつての最高平均価格時の半分以下にまでレートが落下した。
どうやら大阪会場では、一人1台しか購入できない条件になっていたらしいが、並び直しや後日再入場によっていくらでも購入する事が出来たという。
東京会場で販売されてからは、かつての盛り上がりもなりを潜め、現在ではかなり落ち着いてきた感がある。
ものがイベント限定版なので、一般的・世間的な評判はあまり耳にしない。
というよりも、ほとんど先の通りネット上でのやりとりくらいしか注目すべき所がない。
すでに「仮面ライダークウガ」の放映が終了していたという事もあってか、ファン層以外からは特別な注目を受けるほどではなかっただろう事も伺える。
実際、本編でクウガの乗るバイクが変身に応じて色が変わっているという事を意識していた一般視聴者層はそういなかったのではないかと思われる(カラー変更の決定的な場面を見逃していたら、という意味も含まれているが)。だから、ブルーラインと言われてもピンと来ず、せっかくイベントに向かった家族層のおみやげになる事は少なかった可能性がある。
以上の事から、“はじめから高年齢ファン層をターゲットにしていた商品”とくくっても支障はないだろうと思われる。
● 筆者注(2010年12月追記)
「嗚呼、人生に玩具あり」の画像は約9年前の(正しくは当時にしても)性能の低いデジカメで撮影した上、ナローバンド環境前提で作成されたため、大変画像が粗くまた小さくなっていました。
そのため、このページと「百獣戦隊ガオレンジャー・パワーアニマル」レビューページの画像は、リニューアルに併せてすべて新規撮影したものに差し替えさせていただきました。
出来れば「装着変身クウガ」や「仮面ライダー龍騎R&Mシリーズ」も全て差し替えてしまいたいところですが、経年劣化や紛失または処分などの問題があり、叶えられない状況です。
特に「R&Mシリーズ」の劣化は著しく、一度は再撮影を試みたものの、とても使用に耐えうる状態ではないと判断しました。
もし、今後何かしらの形で再撮影が可能になった場合は積極的に行いたいと思いますが、現状はこれでご容赦ください。
よろしくお願いします。