第17回 ■ バンダイ 装着変身「オルタナティブ」&「仮面ライダータイガ」

2005年11月3日 更新

 2005年度10月分の装着変身は、ついに登場! 擬似ライダー「オルタナティブ」と「仮面ライダータイガ」。
 オルタナティブは、かつて発売が絶望視されていたアイテムだった事もあり、ここに来て装着シザース並の注目度を集める形となった。

 というわけで、今回はこの龍騎ライダー二体。
 さーて、これで残すところあと二体!!
 多くのファンが待ち望んだ「龍騎ライダー勢ぞろい」まで、あと一歩!

●バンダイ 装着変身「オルタナティブ」 定価2,100円(税込)

  • オルタナティブ素体フィギュア
  • オルタナティブ頭部(マスク)
  • スラッシュバイザー(右前腕)
  • オルタナティブ肩アーマー×2
  • オルタナティブ左前腕アーマー
  • オルタナティブ胸アーマー×1
  • オルタナティブ太腿アーマー×2
  • オルタナティブ脹脛(ふくらはぎ)アーマー×2
  • オルタナティブ・Vバックル×1
  • スラッシュダガー(ソードベント装備)×1
  • 装着変身サイズ・アドベントカード×3
  • オルタナティブ専用アドベントカードシール
    (3枚分裏表・計6枚)
  • 取扱説明書

 2005年10月22日、装着変身「仮面ライダータイガ」と同時発売。
 「仮面ライダー龍騎」系装着変身としては、11または12番目の商品。
 ベルデ&オーディン以来(ミラーモンスターを除けば)、実に半年ぶりのリリースとなった。
 長かったなあ…本当に長かった。

●映像内のキャラクター

 オルタナティブは、2002年度放送「仮面ライダー龍騎」に登場したキャラクターだが、仮面ライダーではない
 便宜上「擬似ライダー(劇中呼称はナシ)」と呼ばれ、神崎士郎の野望を阻止するために、清明院大学の教授・香川英行が作り出したシステムの一つ。
 その大元の設計思想は神崎が作り出したライダーシステムに準拠しており、香川は、たまたま神崎が落とした関連資料をチラ見して、この概要を把握、自ら再現した。

 オルタナティブシリーズは二体存在し、他にも香川教授自身が変身する「オルタナティブ・ゼロ」がある。
 ゼロは、額部分に「V」のマークが加わり、肩のパイプ状パーツの色が異なり、さらに脇腹から太腿側面にかけて、「PROTOTYPE-00」という文字入りの銀色ラインが入る。
 随分微妙な違いだが、これは撮影の都合上オルタナティブの着ぐるみを再利用してゼロとしているためだ。
 その理由から、仲村オルタナと香川ゼロの揃い踏みは、撮影上ありえないことになる。

 オルタナティブはライダーシステムを流用しているものの、かなり異なる特徴を持っている。

 たとえば、Vバックルにカードデッキを差し込む向き・カードを抜く方向・バイザーへのベントインのスタイルが、神崎ライダーと正反対になっている。
 つまり、右側からカードを引き抜く各ライダーに対して、オルタナティブは左側から引き抜き、右前腕部に装備したスラッシュバイザーを利用する。
 神崎ライダーのバイザーは、一部例外あれどだいたいが左側でベントインするスタイルなので、動作まで完全に逆転しているのは面白い。
 また、オルタナティブのアドベントカードは神崎ライダーと異なり、「カード側面部のバーコードをバイザーに読み取らせる」という形式になっていて、しかも使用直後には青い炎になって燃え尽きる。
 加えて、バイザーの発する声も女性のものになっている。
 バーコードカードのスラッシュによるパワー発動は、翌々年の「仮面ライダー剣」のラウズシステムに通じるものがあるが、オルタナティブが参考とされたかどうかは定かではない。

 オルタナティブは、ソードベント(スラッシュダガー召喚)とアクセルベント(加速攻撃)を使用し、優衣を守ろうとした龍騎を攻めた。
 一応ファイナルベントも持っているようだが、残念ながらそれは発動せずに終わっている。
 その概要は結局不明のままだったが、恐らくはゼロ同様「デッドエンド(サイコローダーに乗ってぐるぐるやーぐるぐるにゃー)」だったのではないかと考えられる。

 なお、オルタナティブ・ゼロには契約モンスター「サイコローグ」が存在するが、オルタナティブは自身の契約モンスターを登場させず仕舞だった。
 もっとも、設定上オルタナティブとゼロは、二人で一体のモンスターと契約しているらしいが。
 ありなのか、そういう契約も!
 そんな反則的な事もやってのけるとは、さすが香川教授の擬似ライダー!

 装着員・仲村創は、かつて清明院大学江島研究室に所属していた。
 その際、神崎士郎の実験により悲惨な目に遭わされており、しかもその根源に神崎優衣が居た事を知り、一人憤慨していた。
 後に香川教授と知り合ったようで、彼と共に「ミラーワールドを閉じる」ための活動を開始する。

 オルタナティブに変身し、神崎優衣の命を狙おうとしたのはいいが、龍騎に阻止されたり、ファイナルベントを使おうとしたところを、仲間である筈のタイガ(東條悟)に攻撃されたりと、なかなかの不幸っぷりを披露してくれたが、結局、タイガのファイナルベント・クリスタルブレイクによって倒されてしまう。
 死に際の「お前は間違っている」は、いかにも仲村らしい怨念のこもったセリフだが、なんと今回の商品化にあたり、パッケージ裏側のコピーにまで使用されている

 オルタナティブとゼロは、TV本編にしか登場しておらず、劇場版およびスペシャルには出ていない。

 個人的に、神崎以外の手によるライダーがしゃしゃり出てくるという展開はものすごくツボだったので、そういう見地からもオルタナティブは大変なお気に入りである。

●セールスポイント

 おまたせさま。
 では、そろそろ商品に触れてみよう。

 装着変身オルタナティブは、なんと素体すべてが完全新造になっている。
 あの頭部すらも流用ではなく、新規造形である。
 なんか、陰鬱なイメージ漂う仲村君にしては明朗な表情だが、これはこれで悪くない。
 できれば、他のライダーの顔に流用したい気もしなくはないが。

 素体胴体は、オルタナティブの特徴的なモールドと模様が施されていて、なんとなくサイケデリック。
 特に、ダークカラーとゴールドのコントラストがすごい。

 ダークブルー部分の彩度が、商品写真発表時よりもかなり控えめになっており、違和感がかなり薄まっている。
 胸部・腹部がえらくぺったんこになっているが、これは上半身装甲をまとった時のボリュームを計算してのことだろうか?
 オルタナティブは、元々スマートで装甲も厚めではないため、本来装着変身にはかなり向かないデザインだ。
 なので、上半身アーマーはかなり着膨れして見える筈なのだが、極力それを軽減させるため、素体自体をコンパクトにしたようだ。
 これのおかげで、(やや首が短めに見えはするものの)そんなに違和感のないスタイルにまとめ上げれている。

 アーマーは、これまでの龍騎ライダーとはかなり異なる特徴を持っている。
 脚部だけで四つもの装甲があるが、これは従来の装着ライダー型ではなく、2005年9月発売の装着変身「宇宙刑事ギャバン」の流れを汲むものだ。
 ギャバン同様、薄い板状のアーマーを貼り付けるように脚部に装着するわけだ。
 もっとも、貼り付けると言っても、実際は裏側に凸ジョイントがあるんだけど。
 脹脛側面部のアーマーはものすごく小さく、それだけだと装着パーツとは思えないほどだ。
 これくらいのパーツなら、普通は素体と一体化させてしまいそうなものだが、わざわざ別パーツにしている芸コマさを褒めておきたい。

 右前腕部のスラッシュバイザーは、装着時、内側にわざわざ隙間が出来るように大きめに作られており、カードパーツをスラッシュさせる事ができる(実際にそのポーズを取らせる事はできないが)。
 うーん、こういう細かい所の気配りは嬉しいなあ。
 肩アーマーは、555系の跳ね上げ式。

 マスクパーツは、これまでの中でも一二を争うくらい、完成度が高い。
 元々丸っこいデザインのせいか、やや縦に潰れる傾向のある装着変身マスクでも、違和感がない。
 また、特徴的な複眼?部分もいい感じの色合いで、劇中の「ゴーグルのように見えてゴーグルではない」雰囲気を巧く掴んでいる。

 スラッシュダガーは、パッケージ写真と異なり、トゲ部分に彩色はなく、成型色そのままになっている。
 多少やぼったさを感じる気もするが、造形自体は決して悪くないので、個人的にはこれはこれでありかと思う。
 もっともこのスラッシュダガーは、11月末発売予定の「装着変身EX ミラーモンスター2」のサイコローグにも付属するので、そちらを流用するのもありだろう。
 
 アドベントカードは、三枚付属で、成型色は黒。
 「ファイナルベント」「ホイールベント」「アクセルベント」のシール付属。
 きちんとバーコードまで判別できる印刷が、感激物。

●問題点

 造形的にはほとんど文句なしのオルタナティブだが、残念ながらパーツ構成にいくらかの問題が見える。

 まず、一部のパーツが異常に外れやすいという難点。
 どうやら、両太腿のアーマーがもっとも外れやすいようだ。
 これは、たった一つの凸パーツのみでアーマーが保持されているため、手や指にアーマー部分をぶつけてしまうと保持力が緩和されてしまいやすい。
 この問題は、先にも挙げた「装着変身ギャバン」でもあったもので、やはり同様に太腿部分がやたら外れる。
 これに対処するためには、何かしらの方法で保持力を上げるしかないが、ここで接着剤を使うか、両面テープを使うかは、ユーザーの考え方次第だろう。
 個人的には、失敗の可能性がある上に白い曇りが発生しかねない瞬間接着剤を用いるよりは、両面テープの切れ端を凹ジョイント内部に詰める事を勧めたい。
 強粘着のテープを使えば信じられないくらい保持力が高まるし、長期保管する際はテープを取り除けば本体も痛まない。

 ちなみに筆者の所有するものは、この他にバックルパーツも外れやすく、それどころかほとんど「ハマっている感覚がない」ほどにゆるい。
 ただ、知人の購入したものはしっかりハマるようなので、これは個体差なのだろう。

 もう一つ、所々の塗装がオミットされている事も、挙げておこう。
 各所のリベット状モールドは、塗装されている部分とされていない部分があり、統一感がない。
 左前腕部や脹脛のアーマーなどは、オミットされた部分だ。
 この辺は、気にする人は気にするという程度のものだろうが、確かに目には付く。
 どうしても気になって仕方がないという人は、自主的にペイントするのもありかもしれない。
 幸い、そんなに多い箇所ではないので、作業も難儀ではないだろうし。

 最後に、プレイバリューという問題。
 オルタナティブに付属する武器は、スラッシュダガーのみで、それ以外オプションに相当するものはない。
 これでは、やはり割高感が拭えないだろう。
 これは、オルタナティブだけの問題ではなく、過去にも王蛇やライアなどでも指摘されてきた事だが、よくよく考えると、オルタナティブは右前腕アーマーがそのままバイザーになっているため、ライア他と比較しても、パーツ数が一つ少ない事になるのだ。
 比べてみたら、なんと龍騎ライダー系装着変身の中では最低のオプション数だった。
 いや、オプションの数だけならガイも同数なのだが、メタルホーンはパーツ数も多くてそれなりのサイズがあるから、やはり単一パーツ構成のスラッシュダガーより有り難味があるわけやね。

 とはいえ…これは大元のデザインや設定に依存する問題だからなあ。
 反重力ダイザー砲みたいな捏造オリジナル武器とか付けられても困るし。
 あ、せめて、オルタナティブ・ゼロに化けられるV字シールを付属するとか…ダメか。

●オルタナティブ破損問題

 こちらは、2006年8月1日に追記したものです。

 「装着変身・仮面ライダーリュウガ」に続き、このオルタナティブにも破損問題が指摘された。
 詳しい検証は、こちらから。

●概要

「仮面ライダー龍騎」放送当時、オルタナティブ関連は、その概要から商品化に恵まれない存在だろうと考えられてきた。
 そりゃあ、そうだろう。
 「仮面ライダーアギト」におけるアナザーアギトのような重要ポストでもないし、そのデザインはとても商品化前提とは思えない(ほとんど同系色のみで統一されたカラーリングから、それが窺える)。
 まして、アナザーアギトのように途中から味方になったわけではなく、全体を通してみるとそれほど大きな活躍もしていない。
 確かに存在そのものには大きな意義があったが、旨味の方向性がかなり特殊だったのだ。

 ところが、2004年7月に発売されたRHEX(ソフビ)オルタナティブ・ゼロはかなりの高評価を得て、その約一年前に発売されたガシャポンHG仮面ライダー「その名はカイザ編」内のオルタナティブ&オルタナティブ・ゼロも、一時期は争奪戦になるほどの勢いを見せた。
 さらに、SICでもリュウガ&オルタナティブ・ゼロのセットが発売され、これもかなりの注目を集めた(再販出荷数の都合で、今でも余裕で見つかるほどダブついてしまったが)。
 こんな調子で、じわりじわりと商品が増えてきたオルタナティブシリーズ。
 よく見ると、ほとんどがゼロの商品ばかりなのだが、出ればそれなりに反応があるという事は、素人目で見ても明らかだった…ように思える。

 一方、2005年中期頃あらかためぼしいライダーが出揃った時点で、装着変身シリーズは「最後までライダーを出してくれるのだろうか?」という不安がファンの中に広がり始めた。
 これは、バンダイが歴代ライダーすべての玩具を同一カテゴリで出し切った事がないために抱かれた、「当然の不安」だった。
 事実、装着変身ではすでに一年以上も発売を熱望されている「仮面ライダー555アクセルフォームブラスターフォーム」「仮面ライダーオーガ」「仮面ライダー剣ジャックフォーム」「仮面ライダーギャレンジャックフォーム」などがあり、これらは、2005年10月現在判明している「2006年3月までの発売スケジュール」にすら載っていない。
 12月予定の「仮面ライダーファム」についても、一時期は発売が絶望視されたほどで、ぶっちゃけて言えば「欲しいとは思うけど信用はとても出来ない」という空気が、ファン内で蔓延していたわけだ。
 そんな雰囲気の中、オルタナティブが発売される確率は五分五分くらいに感じられ、すでに諦めている人すらも居た(筆者もその一人)。
※この後、ファイズ・アクセル&ブラスターフォーム、オーガは装着変身として商品化。
 それぞれのレビューは上記リンク参照。


 2005年夏頃発表されたラインナップの中に、オルタナティブが含まれていた事で、ファンは突然盛り上がり始めた。
 この発表は、オルタナティブだけでなくファム&サイコローグの商品化も告げていたため、決してオルタナティブ単体によるヒートアップではなかったが、「(一応)龍騎ライダーが揃う」という現実は、たまらなく嬉しいものになった。

 と同時に「装着変身オルタナティブ・ゼロはどうなるの?」という当然の疑問も囁かれ始めたが、こちらはその後2006年2月1日発売の徳間書店「ハイパーホビー3月号」及び同年4月3日発売の同社ムック「装着変身マニアックス」の誌上限定品として発売された。
 配送は9月末頃。
 この商品の詳しいレビューは、こちらからどうぞ。

 出ただけでも奇跡と言えるかもしれない、「装着変身オルタナティブ」。
 各方面の不安をよそに、大変完成度の高い商品となり、多くのファンは満足した模様。
 先に挙げたプレイバリューの少なさすらも、ほとんど問題として捉えられなかったように感じる。
 まあねえ、待ち望んだものがやっと出たんだもの。
 文句言う気も出ないのは、よくわかるなあ。
 筆者も、問題点指摘しながらも、あまり気にしてないし。
 とにかく、そんな風に「ユーザーを酔わせる魅力」があるアイテムなのではないかと考える。
 こういう事ができる商品って、意外に少ないのよね。

 とか呑気に書いてたら、これまで自然破損のエジキに…。
 装着変身リュウガと同様、このオルタナティブも、自然にパーツが破損する粗悪品が多く混じっているらしい
 詳しくは、先にも紹介した破損検証ページを。
 オルタナティブは、2006年8月現在再販が出ているが、こちらでも問題点の改善は確認されていない。
 初版はこの問題が起こる可能性が著しく高いため、とてもじゃないが購入は奨められない。
 ただし、2006年9月末からはこの破損問題を前提とした上で生産されたと思われる再販物が交換商品として準備されているため、あえて店頭の粗悪品を購入し、破損確認後すぐに交換に出すという手段は有効かと思われる。

▲ TOP ▲

●バンダイ 装着変身「仮面ライダータイガ」 定価2,100円(税込)

  • タイガ素体フィギュア
  • タイガ頭部(マスク)
  • タイガ肩アーマー×2
  • タイガ前腕アーマー×2
  • タイガ胸アーマー×1
  • Vバックル×1(タイガ用ベルト)
  • デストバイザー
  • デストクロー(ストライクベント装備)×2
  • 装着変身サイズ・アドベントカード×3
  • タイガ用アドベントカードシール
    (3枚分裏表・計6枚)
  • 取扱説明書

 2005年10月22日、装着変身「オルタナティブ」と同時発売。
 「仮面ライダー龍騎」系装着変身としては、11または12番目の商品。
 発売期間の短かったR&M版を入手し損ねた人にとっては、これも待ち望んだアイテムであった筈だ。

●映像内のキャラクター

 2002年度放送「仮面ライダー龍騎」9番目の仮面ライダー。
 35話からの登場で、ある程度レギュラーだったライダーとしては、ラスト。
 香川教授の教え子・東條悟が変身する。
 大型の斧の形をした召喚機デストバイザーを装備。

 その名の通り、虎がモチーフのデザイン…なのだが、これについては面白い話があるので、後に述べよう
 契約モンスターは、虎型のデストワイルダー
 「ストライクベント」で召喚するデストクロー(デストワイルダーの前腕部と同形状の武器)を主力武器として、不意打ち戦法を得意とする。
 その不意打ちっぷりは大変見事なもので、とにかく「王蛇やガイをも超越する卑怯者ライダー」という印象を、イヤになるくらい視聴者に叩きつけた。
 他にも、ファイナルベントすら中断させてしまう威力の“瞬間凍結”「フリーズベント」を持ち、あのジェノサイダーすらも手玉にとった事がある。
 ファイナルベントは、デストワイルダーに相手を引き摺らせた上、デストクローで受け取り、持ち上げて悶死させる「クリスタルブレイク」。
 画面に出た物の中では、もっとも「痛々しい場面」が長く持続するファイナルベントで、しかも、TV本編中では王蛇のベノクラッシュと並んで最も多くの犠牲者を出した技でもある。
(ベノクラッシュは本編中ガイとライアしか倒しておらず、インペラーには致命傷を与えていないので除外。吾郎ゾルダにはドゥームズデイという別技を決めているのでやはり除外)

 東條悟は、大変病的に描かれており、タイガの奇異性をこれ以上ないくらい活かしていた名(迷?)キャラだ。
 独自解釈の英雄願望に取り付かれており、とにかく、すべての行動はその一念に収束される。

 ミラーワールドを閉じる事を願っていた香川は、劇中で「多くを助けるために1つを犠牲にできる勇気を持つ者が、真の英雄なんです」などと述べていたが、東條はこの「犠牲にできる勇気」という部分だけを汲み取り、「自分にとって大切な物を失ってでも戦う」事を「たとえ自分自身の手で壊してしまっても構わない」と曲解してしまった。
 だから、彼にとっての友人はそのまま殺戮対象となってしまい、彼独自の解釈による「英雄願望」の足がかりとされてしまうのだ。
 同じ目的を持つ仲間の仲村を無意味に屠り、その死に涙しながらも「でも、もうやっちゃったし」とケロリと言ってのけたり、恩師の香川を不意打ちで倒したり、友達となった佐野(インペラー)に重傷を負わせたり…。
 だが、それは他者から見ると単なる暴走にしか見えず、本編での描かれ方も、大変異常性の高いダークな雰囲気にまとめられていた。
 なお、本編を見ていない人のために念を押しておくが、これは決して脚本の失敗により暴走キャラ化したというわけではなく、はじめからそのように描かれていた、という意味なので、お間違えのないよう。

 当初は香川を英雄たりえる存在として尊敬していたが、「守るべき家族(対象)を持つ」という、東條にとって“英雄らしくない一面”を見てしまった事から幻滅し、今度は自らが英雄となるべく、独自解釈による活動を開始した。
 やがて、香川の目的であった「ミラーワールドを閉じる」という野望も見失い、「仮面ライダーは英雄でなければならない」という独自解釈を振り回して戦い続ける事を決意するが、他のライダーとの戦闘で、それすらもままならないという現実を突きつけられる。
 挙句には、ライダーバトル以外で相手(変身前のライダー)を殺そうとしたりと暴走に次ぐ暴走を重ね、完全に無軌道化してしまう。

 しかしその最期は、助けた子供の代わりにトラックに撥ねられてしまうという、実に意外なものだった。
 その事故を記した新聞記事上で、東條はやっと“英雄”という冠を得る事ができた。

●セールスポイント

 装着タイガについては、語るべき部分が多くある。
 まず、以前に発売された「R&M版」と比較してみよう。

 装着タイガも、ナイトやゾルダ、オーディン同様基本的には新造形だ。
 R&M版との共通(または流用と思われる)部分はほとんどなく、印象もかなり違う。
 …龍騎だけだな、露骨な使いまわしパーツの集合体となったのは(リュウガは…まあ、その)。

 もっとも目立つ違いは、マスクパーツではないかと思われる。
 R&M版の方が引き締まっており、玩具的には良い感じでまとまっているが、実は装着版の方が劇中のイメージに近い。
 ゴーグル部分のスリットも細くなっているため、益々怖さが増している。
 また、R&M版ではオミットされていた、胸の模様部分の塗装もしっかり施されており、ほとんど隙がない。

 構造的にもっとも変わったのは、やはり「肩アーマー」だろう。
 R&M版は、上腕部肩付け根の回転軸部分と一体化している形状で、肩を回せばアーマーもそれに引っ付いて回っていた。
 対して装着版は、いわゆる跳ね上げ式なので、肩を回してもアーマーの位置は変わらない。
 しかも上半身アーマーに固定するタイプになっており、オルタナティブ等のような素体肩の突起にはめ込むものではない。
 その接続の都合上、肩アーマーを外さなくても上半身アーマーの着脱が可能というのも面白い。

 だが、実はこの接続方法も、劇中のタイガ着ぐるみの肩構造とは大きく異なっている。
 以前R&M版タイガのレビューでも触れたが、本当のタイガの肩アーマーは肩・鎖骨部全体・肩甲骨上半分・襟部分が一体化しており、しかも左右が繋がっているため、片方の肩を上げると、それにつられて肩全体が浮かぶ構造となっていた。
 これは、体格を膨らませてみせる効果があり、劇中のタイガはマッシブである、という印象を与える理由の一つとなっていた(もちろん、その他の場所にも厚みが加えられていたが)。
 つまり、R&M版とは完全に異なる造形だったわけだ。
 対して装着版タイガは、着ぐるみに忠実とは行かないまでも、可能な限り構造を近づけているように感じられる。
 さすがに鎖骨部分まで可動はしないが、いい感じにまとまっている。
 肩の構造とは関係ないが、上半身アーマーの厚みと蝶番付近の強度確保の影響で、上半身アーマーがかなり膨らんでいるのも嬉しい。
 これで、R&M版よりさらに劇中のものに雰囲気が近づいた。
 この膨らみ加減は狙ってやったものなのかどうかはわからないが、結果オーライではないかと筆者は考えている。

 デストバイザーを比べてみよう。
 デストバイザーは、今回やたらと巨大化してしまった。
 これは、カード挿入ギミックが組み込まれたためで、元になるカードのサイズから逆算的に大きくさせられたのではないかと思われる。
 柄の上半分を下にスライドさせるようにしてカードスロット部分を露出させ、そこに付属のカードパーツを差し込む。
 もちろん、そのままパーツを閉じる事も可能だ。

 写真を見ると判るが、R&M版とは同一スケールとは思えないほどサイズが違う。
 R&M版は、全体の長さに比べて刃周辺部分が小さかった印象があったが、今度は大きすぎ。
 丁度良いサイズのデストバイザーは、ついに手に入らなかったわけだ。

 次に、デストクロー。

 

 こちらも完全新規造形で、R&Mのものよりさらに劇中のイメージに近くなった。
 爪の幅がかなり広くなり、R&Mのフォークみたいな形状ではなくなった。  先端に向かって幅広になっており、より凶暴性が高まっている感じ。

 手の平のモールドなどは、R&M版以上に撮影用プロップに近づいている。

 表面部分の模様の幅や、全体のサイズもまったく違い、さらに、接続ポイントが大きく変更されている。
 R&M版は両腕のジベットスレッドでのみ固定される形式だったため、やたらと外れやすかったものだが、今回はそれに加えてグリップを握らせて固定できるようになった。
 なんとこのおかげで、クリスタルブレイク炸裂場面まで再現できるようになってしまった!
 以下にその証拠写真を掲載してみよう。

 この写真は合成ではなく、本当に片腕だけで持ち上げている。
 もちろん、被害者側の身体を一部をタイガに触れさせて、体勢を保持しているわけでもない。
 デストクローの爪だけに、全重量が乗っかっている状態だ。
 さすがにガッチリ固定できているわけではなく、絶妙なバランス調整が必要だが、こういうのも一応可能というわけだ。
 さらに、バランス調整を工夫すれば、こんな事まで出来てしまう。

 インペラーの片足立ちにも感動したが、今回はそれ以上。
 唯一R&M版に劣っているのが、デストクローの手首回転ギミックの省略。
 これは、(劇中でも回転していたかどうかは定かではないが…)接続の関係から、デストクローの装甲が肘に対して外側向きに固定されてしまう欠点を補い、ポージングの表情をより豊かにする素晴らしい工夫だったのだが、今回はオミットされてしまった。
 もっとも、グリップを増設したために腕の収まるスペースが侵食され、そのために回転ギミックを設けるゆとりもなくなってしまったわけだから、しょうがないんだけど。
 手首回転ギミックを残して、外れやすさは変わらない、という状況は嬉しくないしなあ。
 なので、この回転ギミック廃止は、必ずしも問題点とは言えないだろう。

 ボディのブルーラインは、メタリックブルーからごく普通の青色に変更された。
 また、全体の銀色も僅かに暗めになり、R&Mとはかなり違う印象を与えるようになった。
 個人的にはメタルブルーであって欲しかったが、こちらの方が劇中イメージに近い?

 なお、写真撮影して気付いたのだが、装着版タイガはR&M版より随分大きく見える。
 足首の構造の関係で、装着版はタイガに限らずR&Mより背は高くなっているのだが、今回はボディの膨らみも加わって、より大きく感じられる。
 もっとも、R&Mも全体的に細すぎたような気もするけど。

 素体の顔は、またまた新造形。
 でも…似てないにもほどがある!
 いやまあ、劇中の人物に似せるつもりがないのはわかるけどね。
 これ、どちらかといったら佐野じゃない?

 アドベントカードは、三枚付属で、成型色は黒。
 「ストライクアドベント」「フリーズベント」「ファイナルベント」のシール付属。

●問題点:

 装着版タイガは、素体やアーマー、またはその組み合わせにほとんど問題らしい部分が見られない。
 しかし、武器に問題が集中しまくっている。

 まず、デストバイザー。
 大きさについては先にも触れたが、なんと、タイガに持たせる際に様々な制約を与えてしまった。
 拡大化の影響から刃周辺が重くなりすぎてバランスが取り辛くなり、さらにメイングリップ部分(柄の下のほう)の細さが災いし、ヘタな位置を握らせるとバイザーが倒れてしまうのだ。
 具体的には、手の中で柄が斜めになってしまう事がある。
 これは、タイガ素体指関節の保持力の個体差によって、重大さが変化するようだ。
 筆者の持つタイガは、右手でグリップ下側を持たせると斜めになってしまうが、左手で持つと一応そうはならない。
 このように、もし指の力の弱い素体を掴まされてしまった人は、災難ではないだろうか。

 上の方の重さで全体が傾いてしまうという事は、グリップの中央かそれより上の方を掴ませたい。
 しかし、刃付近のグリップは異常に太すぎ、握れるどころか手の中にまったく収まらない!
 結局、バイザーを支えるためには、柄中央の黒い部分を握らせるしかないのだが、そうすると今度はスライドギミックが使えなくなってしまう。
 黒い部分は、カードをベントインさせる際に、上の柄の内部に納まってしまうためだ。
 ここを握っていると、バイザーにベントインさせるギミックは楽しめない。
 いったいどうしろというのだろうか…。

 これらは、すべてスライドギミックを設けた事が裏目に出た結果だ。
 スライドさせるためには、柄の構造を「のびるストロー」のようにしなければならず、内側に入る部分は細く、外側は厚くしなくてはならず、しかも玩具的強度は維持させねばならない。
 そのため、柄の上部分は太くなってしまい持たせられなくなり、下は細くなりすぎたのだ。
 もし、柄の上の太さを完全無視して太らせるだけ太らせ、下の軸の太さを丁度良いものにすれば、外観はまずくなるだろうがプレイバリューはもう少し広がっただろう。
 とにかくこのために、ベントインの瞬間を再現させる事は不可能になってしまったのはいただけない。

 デストクローにも、問題がある。
 手首問題は置いておくとして、どうしても見過ごせない部分に「材質の硬度」がある。
 装着版デストクローも、R&M版同様PVC製なのだが、なぜかやたらと柔らかいものになっていて、内側の凸ジョイントをジベットスレッドにはめるのが大変困難になってしまっている。
 グリップ部分はプラ製でしっかり安定しているからいいのだが、肘部分のロックが難しい&はめてもすぐに外れてしまうため、大変弱ってしまう。
 ひょっとしたら、材質の柔らかさが災いして、せっかくはまったジベットスレッドからじわりじわりと抜け出てくるのでは…張力のせいで。
 いや、さすがにそれは確認したわけじゃないんだけど…。
 個人的には、デストクローは全面プラ製にして強度を稼いで欲しかったなあ。
 柔らかいPVCのせいで、せっかくの塗装もなんだか野暮ったくなってしまっているし。
 加えて、爪も情けないくらいにやわやわになっている。

 結局、R&M版の硬度と装着版の接続方法が共存するものが、もっとも理想的だったということだろうか。

●総評:

 せっかく良い出来なのに、武器が足を引っ張っているせいか、今ひとつ満足感の足りない製品になってしまったように感じる。
 ボリューム的にはまったく問題なく、オルタナティブみたいな割高感はないのだが、不満度はかなり高い。
 しかも、ほんのちょっと変更すれば済むだけの些細な問題ばかり(に見える)のため、益々問題点が際立ってしまう。
 嗚呼、買って損したとは言わないが、なんかすっきりしない…

 ただし、タイガ自身は大変良い出来だし、過去の装着変身みたいにどこかのパーツが外れやすいという問題もない(個体差を除けば)。
 また、アーマー装着によって体型が変わって見えるという部分もしっかり再現しているので、これだけで武器の分のマイナス点は補えるだろう。

 いずれにせよ、R&M版を買い逃してしまい、三年も泣かされていたタイガファンにとっては、長年の溜飲を下げまくってくれるアイテムである事には変わりない。
 R&Mを買いそびれ、装着購入にも躊躇しているという人が居たら、とりあえず購入しておく事を勧めたい。
 武器問題でヘコまされたとしても、それはきっと貴方にとっては、ゼータクな悩みになるのだろうから。

 さて、オルタナティブの項でも触れた11月待つ発売の「装着変身EX ミラーモンスター2」には、リアルペイント版デストワイルダーが入っている。
 恐らく(というかほぼ間違いなく)こちらにもデストクローが付いてくるだろうが、そちらの出来はどうなのだろう?
 デストワイルダーの手首を収納する都合上、R&M版そのままの形状になるものと想像できるが、はてさて…

 もし、装着変身の改良版だったら、それだけで価値がある気がするなあ。
 デストバイザーだけは、もうどうしようもないけどね。

 さて、タイガ冒頭で触れた「モチーフの件」について話そう。
 以下は、「(旧)人生に玩具あり第9回」のR&Mタイガレビューに、後日追記した文を転載したものだ。

 
 「実は、タイガは元々“熊”のライダーの予定だったのではないか」 という説がある。

 一見「ハァ?!」と言いたくなる内容だが、冷静に考えてみると、あながち馬鹿にできない気もしてくる。
 まず、タイガやデストワイルダーの「虎と見るには無理のあるディテール」をピックアップしてみる。
 次に、それらを「もしこれが熊の意匠だとしたら」と発想を切り替え、見つめ直してみる。
 すると…なんだか真実味が出てこないだろうか?

  • デストワイルダーの長い爪(虎=爪、というイメージはほとんどない)
  • デストバイザー(金太郎の斧に引っ掛けているとしたら納得できる?!)
  • デストワイルダーの全体デザイン(虎というより熊に近いボディライン)

 もちろん、タイガのエラ付近にある「モフ毛をモチーフとしたらしきディテール」や、猫科動物をイメージさせるデストワイルダーの耳など、明らかに虎をベースとした部分もあるので完全な断定は出来ないが、一つの説としてとらえる分には、なかなか面白いものがあると思う。

 まあ、「斧使って熊を呼び出す」という方が、シャレが効いてていいかなって気がするけど。

▲ TOP ▲

●総括:

 2005年10月は、今回紹介した二体の他に、「装着変身 装甲響鬼」もあるが、こちらはまた別枠で紹介してみたい。
 この装甲響鬼も含め、10月度の製品は、全体的にクオリティが高かったと思う。
 タイガの武器やオルタナティブのアーマーなど問題もないわけではないが、それを補って余りある完成度と工夫、また「出る筈がないと思われていた物の商品化」と「長らく入手し辛かった製品の(実質的な)リメイク商品」という、二つの目玉が共存していたという意味は大きい。
 ひょっとしたら、今回は過去最大の悦びにまみれたラインナップだったのではないだろうか(オーバーかな)。

 なお、龍騎系ライダーは、この後12月に発売される「仮面ライダーファム&リュウガセット」をもって一応の終了となるらしい。
 サバイブ二種が出るとしたらその限りではないが、今の時点ではその見込みはかなり薄そうだ。
 まあねえ、龍騎サバイブは主役のくせに全然売れなかったらしいし、ナイトサバイブの方も、番組終了後にはダダ余りになっていたし、バンダイが渋るのも仕方ないかな。
 まして、あの二体にはバイク(変型するモンスター)が居ないと、存在意義がほとんどないし。
 でも、もし出すのだとしたら、せめてダークバイザーツバイはきちんと分離するようにして欲しいものだ。
 
 でも、ライダー勢揃い後、ミラーモンスターだけで龍騎ライダー系ラインナップを支えていくのは…どう考えてもきついような。
 でも、せめて第三弾にベノスネーカーを加えて、第一弾を買った人達がジェノサイダーを組めるようにはして欲しいものである。

 第二弾で打ち切られたら、泣くに泣けないよ、もう。
 すでに第一弾が叩き売りされてるような現状だから、継続が難しいのは容易に想像できるけど……

「人生に玩具あり 2式」トップページへ戻る