第19回 ■ バンダイ 装着変身EX2「ミラーモンスターズ02」

2005年11月20日? 更新

 龍騎系装着変身のペアアイテムとも言える新シリーズ「装着変身EX ミラーモンスターズ」の第二弾です。
 今回は、仮面ライダータイガの契約モンスター・デストワイルダーと、なんと商品化絶望視されていた幻のサイコローグ!!
 てなわけで、今回はこちらを紹介していきます。

「装着変身EX ミラーモンスターズ02」
デストワイルダーと、サイコローグの二体セット。
発売日は2005年11月17日。
定価4,200円(税込)。

「ミラーモンスター」とは、基本的には「仮面ライダー龍騎」本編内に登場した敵キャラクターですが、
ライダーが契約を行う事で、その能力の一部を受け取り、強くなる事が出来ます。
その代わり、ライダーは別なモンスターを倒し、その際発生するエネルギー球? を契約モンスターに
与えねばならないという義務が付加され、これが破られた時は契約モンスターに捕食されてしまいます。
また、契約証明でもあるカードデッキが破損した場合も同様。
以前発売されたR&Mシリーズでは、モンスターの身体の一部を取り外し、それをライダーに
装備させるというプレイバリューがありましたが、モンスターが付属しない装着変身では、
このギミックを楽しむ事ができませんでした。

そこで、この「装着変身EX ミラーモンスター」シリーズが出てきたわけです。
複数種のモンスターを同梱、R&M版の再販リペイント物と、新造形の物を組み合わせた
販売形態で、今回紹介するものは、その第二弾。
ちなみに第一弾は、ギガゼール(仮面ライダーインペラー)・メタルゲラス(ガイ)・エビルダイバー(ライア)
の三種類でした。

●サイコローグ

 サイコローグ。
 オルタナティブオルタナティブ・ゼロの共同契約モンスター。
 一応コオロギ型のモンスターという事らしいが、とてもそうには見えない姿を持つ。
 どういう経緯でこやつを契約モンスターにしたのかは謎だが、頭部から肩にかけて、妙な機械が埋め込まれているように見える事から、捕獲後無理矢理改造を
 加えて手なずけている…とか?!
 いやいや、元々こういう形の可能性もあるわけですが。
 初めて見た時、筆者はふとそんな風に思ったわけです。
 実際の詳細設定は知りません。

 で、初立体化のサイコローグ。
 はっきり言って、劇中の着ぐるみとはまったく似ていません。
 しかし、だからと言ってこの造形がダメかというと、そんな事はないです。
 劇中のものは、人が中に入る都合上どうしても身体が華奢&頭がデカくなってしまうわけで、今から考えるとかなり迫力不足でした。
 だから、玩具造形とは完全に切り離して考えるべきではないかと思います。
 着ぐるみをそのまま立体化しても、面白みに欠けますからね。

 今回は三面図を掲載。
 しっかりした肩幅と胴体を得て、かなり力強いフォルムになっています。
 また、装着変身と並べても違和感のないように調整されているスタイルがいい味出してますね。
 個人的好き嫌いは別として、このサイコローグの造形に難色を示す人は、あまりいないんじゃないでしょうか?
 細かい部分を別として、全体印象として、という意味ですが。

 なお、頭部のコードは弾性があるため、首の可動の妨げにはなりません。

 サイコローグの全パーツ構成(注:商品全部のパーツ構成ではありません)。
 スラッシュダガー二本以外のものは、基本的にすべて「サイコローダー」形態時に使用する付属パーツ…いわば「余剰」です。
 本当は、タイヤは余剰とはいえないのですが…
 これについては、後ほど詳しく触れましょう。

 腕は、写真の通り装着変身の素体と同様に可動します。
 聞くところによると、EX1のギガゼールには、上腕のロール軸がなかったとか。
 今回は、後に触れる変形ギミックの都合で、ここが回ってくれないと困ってしまうわけです。

 あと、首はボールジョイントで接続されています。
 一応上に向ける事もできますし、人体構造的には問題ない範囲の可動範囲なのですが。
 サイコローグは、それだけだとダメなんだよね。

 なお、胴体の方は腰が回転、脚部はごく普通の可動です。
 膝は二重関節ですが、回転軸は設定されていません。

 今回でもっともまずい点は、肩にありました。
 肩アーマーは横方向に倒れる構造になっており、腕を横に広げる際には角度を変えられるようになっています。
 ところが、従来の位置にすると襟部分に干渉してしまい、上の写真のような醜い傷を発生させてしまうことになります。
 このダメージは案外シャレになりません。
 写真の傷は、開封後わずか数分で発生しました。
 襟をへこませたくない人は、設定に反する角度になりますが、肩アーマーを横方向に倒しておく事を勧めます。
 なお、サイコローダー時には干渉しなくなるので、本来の位置でもかまいません。

 サイコローグ付属のスラッシュダガー。
 この玩具買って初めて知ったのですが、これって腕部分のパーツを模しているのね。
 写真のように、サイコローグに持たせる事が可能ですが、やっぱりここはオルタナティブに持たせたいところ。

 装着変身オルタナティブ付属のスラッシュダガーと比較。
 サイズだけでなく、色々の所の造形が違っている事にも注目。
 全体的には、サイコローグの物の方が豪華ですが、その割に柄が短くなっていたりします。
 多分これは、サイコローダー時の影響を考慮した処理なのではないかと。

 本来余剰パーツになる、サイコローダーのタイヤパーツは、組み合わせる事で玩具オリジナルのシールドになります。
 エンジン部分から伸びているアームに、前輪を挟んで固定するわけです。
 写真には移っていませんが、反対側にはグリップが付いており、一応、サイコローグや装着変身オルタナティブの手に
持たせる事ができます。

 …が、実はこれ、あんまり喜べません。
 タイヤが重すぎて、保持し切れないのです。
 ましてやグリップが変な角度で固定されていますし。
 車輪に対して、斜め45度上方に傾いているのです。
 これでは、どういうポジションで構えるべきなのか、まったくわかりません。
 結果、タイヤの一部を設置させるか、ある程度以上低い位置でしか構えられなくなるため、全然うまく飾れません。
 それどころか、持たせるとバランス崩して倒れるし…

 こういう「余剰パーツを余剰とさせない工夫」は買いたいですし、なんとなく昔の玩具テイストが感じられていいんですが、もうちょっとだけ考慮が欲しかったかな、と。
 せめてグリップ部分が回転する構造だったら、もう少し汎用性が広がる筈なんですけどね。
 というわけで、筆者は「やっぱり余剰パーツの域を出ていない」としか思えないわけです。

 逆に、予想外で嬉しかったのが、このオリジナル「ストライクベント」?!
 サイコローグの肩アーマーを取り外し、手に持たせてナックルにする事が出来るわけです。
 これは、ものすごくイイ!!
 写真では、オルタナティブに持たせていますが、とにかく良い感じ。
 こういう「嬉しい不意打ち」は大歓迎です!
 って事は、この玩具で、オルタナティブは一気に「ソードベント」「ガードベント」「ストライクベント」「ファイナルベント」と、四つもの攻撃手段を得てしまった事になるのでしょうか。
 凄いなあ。

今回最大の売り部分を見てみましょう。
サイコローグは、付属パーツを装備させる事で、なんとバイク形態「サイコローダー」に変形する事が出来ます!

まず、両腕の上腕を回転させ、ネジ穴部分を前方に向けます。
すると、肘が内側に向くようになりますが、さらに手首も回転させて、手の甲がバイク時の前方を向くように調整します。

 両手に「前輪パーツ」を持たせます。
 サイコローグの指の保持力が試される瞬間。
 続けて、エンジンブロックと後輪のセットパーツを、股間部の穴に差し込み固定します。
 この時点で、首を上に一杯に向けておくべきかと。

 本体を横たえ、タイヤを設地させます。
 背中の穴に、ハンドルパーツを接続します。
 続けて、伸ばした両足の側面部に、スラッシュダガーを接続。

 サイコローダー完成!

 番組での「CG超丸出しお笑い変形」を見た時は、これが商品化したとしたら、それは世界最後の日になるだろうと確信しておりました。

 世界の破滅は、どうやらもうすぐそこのようです。

 後方から撮影。

 この際、エンジン周りのスカスカ感と、前輪保持のスカポンさは度外視しましょう。

 正面と背面の写真。
 残念ながら、サイコローグの頭部はこれ以上正面を向かせる事ができません。
 まあ、いったん首を引っこ抜いて、角度を整えて両面テープ固定すれば、なんとかなるかもしれないけど…試してません。

 オルタナティブと揃い踏み。
 言うまでもないのですが、サイコローダーは劇中の物とは素敵なくらい形状が異なっています。
 言われなくてもなんとやらではありますが、それはそれとして、カウル部分の形状はやっぱり全然違います。

 特定世代の人は、人型からバイク型に変形する物をみると身体に怒りの電流ほとばしるわけです。
 怒りって言っても、別に怒ってるわけじゃないですが。

 玩具的アレンジが多分に加わっているとはいえ、見事に変形してくれたサイコローグなのですが…
 実は、オルタナティブを乗せると、色々と無理した分のしわ寄せが見えてきます。

 まず、ライディングポジションが壊滅的にダメダメです。
 サイコローグの胴体幅と、オルタナティブの脚部可動範囲が合っておらず、その結果、オルタナティブの胴体が浮き上がってしまうようになります。
 また、ハンドルの位置も関係して、とてもバイクに乗っているようには見えず…

 どれくらい浮いているか、背面から写真撮影。

 ただし、オルタナティブの太股部の回転ロール軸を調整すれば、もう少しだけうまく座らせる事ができるようです。
 もっとも、その場合搭乗させる事そのものの難易度が高まりますが。

 片足保持の姿勢で、ライディングポーズ。
 一見すごくかっこいいですが、これも角度限定の良さにすぎず、どうしても無理が隠せません。
 確かに、バイク形態にするには無理のあるものを、強引に変形させているわけですからこういう結果はある意味想定内なのですが…

 とにかく、この「うまく乗せられない」という部分を、どれほどのマイナス要素として受け止めるか、また許容するかで、本商品の評価は大きく変化することでしょう。

 ただし、最近の玩具にしては、ずいぶん前衛的な挑戦をしたな、と思わされる事は事実です。
 そういう部分は、大いに評価したいものですね。

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●デストワイルダー

 仮面ライダータイガの契約モンスター・デストワイルダー(左)。
 こちらは、R&M版と完全同一の物なので、どうしてもサイコローグと比べると見劣りしてしまう感じです。
 装着変身EXのものは、リアルカラーにリペイントされているという事なのですが…

 デストワイルダー、前面と背面。
 リアルカラーというより、煤けている、と表現した方がぴったりな感じです。
 実際、着ぐるみとは全然違う色合いだし。
 (着ぐるみの方は綺麗すぎるんだけどね、逆に)

 側面部から見ると、今回のリペイントの解釈の凄さがわかります。

 肩のこれ、なんでしょう?
 まるで、何年も掃除していない排気口のような煤け具合。
 本当はこの部分、ブルーのラインが走る綺麗なパーツな筈なんですけど。
 脚部付近はなんとなく許せる感もあるかもしれませんが、腕部もすごいぞ…

 R&Mと同じという事は、当然「中の拳」も健在。
 ただし、今回は指の隙間に砂でも詰まったかのような、なんともいえない塗装が施されています。
 デストクローの保持力は、相変わらず問題なし。

もちろん、デストクローの手首は回転可能。

 R&M版との比較写真。
 どれだけ煤けてしまったか、一目瞭然ですな。
 個人的には、以前より重みを増した感があってすべてが嫌というわけではないのですが、やっぱり必然性を感じないウェザリングには戸惑ってしまうなあ。

 側面部比較。
 R&M版も、肩のブルーライン塗装がオミットされていたんだっけ。

 いやあ、デストワイルダーの肩が、本当に排気口みたいな描かれ方してれば、これはこれでアリだったかもしれないんだけどね。

 デストワイルダーのデストクローを、装着変身タイガに装備。
 ジベットスレッドの口径の変化か、或いは軸受けの長さが変わったせいか、R&M時よりもしっかり保持できるみたいです。
 指伸ばし保持(R&Mレビュー参照)も、一応必要ないみたいです。

  …が、このあまりにも合わなさすぎる色はどーにかならんかと。

  こっちのデストクローは装備するなって事ですかそうですか…

 三番煎じ。

 って、やってみたら出来ちゃいました「クリスタルブレイク」。
 ただし、当然装着変身用のデストクローでやるより、難易度高いです!
 この写真も、前回は楽だったのに今回は異常に手間取りました。

 なお、装着変身タイガレビュー時、一部で 「関節強化すれば出来て当然だろ」と言われましたが、これ、まったく強化処置してないっす。
 それどころか、この無茶の影響で股関節はかなりプラプラになり始めてます。
 それでも、バランス調整すれば一応可能ということで。

  最後に、それぞれのパートナーを交えて揃い踏み。

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【買ってみて一言】

 正直、大変微妙な商品だと思います。
 商品初紹介時から売りになっていた「サイコローグ変形」は確かに満たされていたのですが、その代償として「玩具として普通に求められるもの」のいくつかが失われていました。
 その最たるものが、オルタナティブ搭乗時のポジションの悪さ。
 おそらく、サイコローダー変形そのものの不具合は覚悟していた人も多かったでしょうが、「まともに乗れない」という事まで予測していた人は意外に少ないのではないのでしょうか?
 観察眼の鋭い人は、かなり早い時期から見抜いていたようですが…。

 ただし、だからといってオルタナティブ搭乗をメインに考えた場合、それはサイコローグの胴体形状に大きな影響が出てくるわけで、結果的にスタイル全体を崩してしまう危険が出てくるわけで。
 要するに、サイコローグにしても、サイコローダーにしてもオルタナティブ搭乗にしても、大変ギリギリのバランスで構築されているのではないかと思います。
 結局のところ、サイコローダーが許せるか、許せないかで大きく評価が変わってしまうため、一概に良いとも悪いとも言い切れないという所ですか。

 サイコローダー関連ギミックを度外視すれば、サイコローグは大変良い出来のアイテムだと思います。
 前回の新造形・ギガゼールと比較しても、その完成度とプレイバリューの差は歴然。
 サイコローグの基準で一つ前の「ミラーモンスターズ01」を買ってしまったら…はてさてどういう思いにとらわれることやら。
 
 で、デストワイルダーですが…
 やはりというか、R&Mを持っている人には余計以外の何者でもないアイテムであり、完全に「R&M未所持者向け」に特化しているものと思われます。
 しかも、その状態はハッキリ言って「劣化」に近いものかと。
 今回の商品で良いと思われる部分はすべてR&M版に備わっており、逆に、R&M版の魅力はこちらにはあまりありません。
 というより、本当に必要だったか大変疑問な「ウェザリング」のせいで、失われたと言っていいでしょう。
 どうして、素直にR&M版の復刻にしなかったのか、筆者は理解できません。
 各エッジ部分などが多少煤けている程度のウェザリングだったら良かったかもしれませんが、これではあまりにも…

 そして、本商品最後の問題として「果たして価格に見合った商品であったかどうか」というのがあります。

 筆者は、正直なところ「かなり割高」と感じました。
 4,200円分の満足感は、とてもじゃないですが得られません。
 いくらサイコローグが立体化し、バイクになると言っても、だからと言ってデストワイルダーとセットで4,200円というのは、あまりに暴利すぎなのではないかと。
 理想はサイコローグ単体販売、或いは別の新造形モンスターとのセットなわけですが、それが出来ない理由も一応理解は出来ます。
 しかし、デストワイルダーを差し引いて考えたとしても、果たしてこれは適価だったのかどうか…
 R&M版タイガは、デストワイルダーとセットで3,000円でした。
 すると、単純計算すればデストワイルダーの実質的価格はせいぜい1500円〜2000円の範囲内だったと予測されます。
 それを今回の商品に当てはめると、サイコローグは2000円〜2500円(税は計算しない)に相当すると見ていいでしょう。

 って事は、装着変身と同じか、ヘタしたらそれより高いの?
 それだと、なんかすごく納得いかないぞ?!
 ほとんどプラ製だから重量感もないし。

 筆者個人としては、1,500円ではさすがに安すぎると思いますが、せいぜい最大で2,000円程度ではないかと思います。
 それ以上の金額を支払うには、「キャラクター的希少性」を考慮しても、まだ何かが足りない気がします。
 単純に合金パーツを使えとはいいませんが…

 でもまあ、それはそれとして、「思い入れ」は充分に持てるアイテムかもしれません。
 値段の割合もプレイバリューの問題も無視できて、サイコローグだから良いとする人には、これはかけがえのないアイテムになるでしょう。
 また、二昔ほど前の玩具を彷彿とさせる「無茶変形」は、かつて味わえた「玩具独自の魅力」を思い起こさせるのに充分です。
 現在は、映像作品との比較による完成度・ギミック追求が主体となっていますが、昔は人間がロケットパンチとばしたり、ゴジラの腹の中から戦闘機や戦車が発進したりと、「映像なんか関係あるかバッキャロー」的感覚に満ちたアイデアが山ほど盛り込まれており、映像との比較をしなくても遊べました。
 今回のサイコローダーは、そんな雰囲気を正統継承した、素敵な存在なのではないでしょうか。
 だから、いくら劇中と形が違っても、ライディングポジションが変わっても、そのままイコール欠点と言い切れない何かが残るわけです。
 そういう意味では、こんな時代に良く出てくれたな、と思わされる良玩具だったと筆者は思います。

 さて、このミラーモンスターシリーズ、第一弾はものすごいズッコケ具合だったようです。
 某有名玩具店では、2が出るより先に1,000円未満でたたき売りされていたそうで、その玩具的評価もかなり低かったとか。
 2ではかなり盛り返した感もありますが、はてさて、この先続けていけるのでしょうか。

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