第105回 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツ「仮面ライダーシザース」

2013年10月25日 更新

 

「卑怯もラッキョウも、大好物だぜぇ!!」

 今となっては信じがたい事ですが。
 かつて、主人公ですらない、たった2話限りのゲストライダーが、異常な大人気を得た時期がありました。
 最初は恐らくネタ的な意味でもてはやしていただけなんでしょうが、その人気の白熱ぶりは本編退場後もどんどん上昇し、ついには「いままでこんなに人気を博したライダーが居ただろうか?」と各方面で云われるほどにまでなりました。
 その人気の度合いはファンの間だけの認知に留まらず、製作側やスポンサー・バンダイにまで届き、ガレージキットや「装着変身」シリーズで発売される程に至りました。
 今となってはもう遠い昔の話ですが、上に記したことが決して過言ではないというほど、仮面ライダーシザースの人気は凄まじかったのです。
 というわけで、その大人気ライダーが、ようやくフィギュアーツ化されました。
 今回は、悪徳刑事が変身する「初の完全悪役ライダー」のレビューを行います!

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■ S.H.フィギュアーツ仮面ライダーシザース

 

 2013年4月25日〜7月7日まで、「魂ウェブ」上にて受注受付。
 2013年9月21日配送開始(22日頃到着)。
 同時配送物は、下記参照。
 2013年9月のラインナップは、以下の通り。

 全高は約14.3センチ(頭頂部まで)。
 合計6種8個の手首付き。
 シザースピンチ付属。
 シェルディフェンス付属。
 シザースバイザー付属。
 破損カードデッキ付属。
 アドベントカード4点付属。
 専用台座付属。
 価格は税込3,465円。

 

 仮面ライダーシザース。
 「仮面ライダー龍騎」第5〜6話、2002年9月19日放送の「TVSP 仮面ライダー龍騎スペシャル 13RIDERS」版に登場。
 本作に登場した三人目のライダーで、大森署の須藤刑事が変身する。
 蟹型のミラーモンスター・ボルキャンサーと契約している。
 手甲型のシザースバイザーを使い、ストライクベント・ガードベントを駆使して戦う。
 ですます口調で話す、割と強い戦力を持つライダーで、日常的に人間を襲わせてボルキャンサーも強化している上、真司を巧みに騙して油断させて不意討ちするという汚い戦法を併用するため、最初期のゲストライダーにしてはかなりやっかいな相手である。
 ファイナルベントは、自らの身体をボルキャンサーにバレーボールのように打上げさせ、そのまま回転して突っ込んでいくという「シザースアタック」。
 全くのオリジナルデザインのライダーでありながら、最後まで完璧な悪のライダーとして描かれたのは、このシザースが全シリーズ中初である。

 

 アンティークショップ『TIN'S COLLECTION』に絡む行方不明事件を調査していた桃井令子が事件に巻き込まれたため、城戸真司が引き継いだが、彼はその際にボルキャンサーの存在を察知。
 龍騎に変身してボルキャンサーを倒そうとする真司の前に、新しいライダー・シザースが登場、彼に襲い掛かって来た。
 仮面ライダーナイト(秋山蓮)の乱入で窮地を逃れた龍騎こと真司は、ショップの店長がシザースとなって暗躍している可能性を考えるが、実は店長は既に殺されており、その死体は店の壁の中に埋め込まれていた。
 シザース(の正体)は自ら真司と連絡を取り、言葉巧みに騙して様々な情報を引き出した上に、彼を亡き者にするため行動を開始。
 シザースの正体は、アンティークショップ店長行方不明事件を担当していた、須藤刑事だった。
 須藤は、ボルキャンサーを駆使して自分に都合の悪い存在を消し続けている極悪人で、ショップ店長の死体を遺棄している最中に、神埼士郎にライダーの勧誘を受けていたのだ。
 本来ライダー同士の闘いを望まない真司だったが、須藤だけは許せないと戦闘を決意。
 しかし、割って入った蓮が須藤と闘うことになり、両者はミラーワールドで対決。
 ファイナルベント同士の激突の末、偶然にもカードデッキを破損してしまったシザースは変身が解けてしまい、契約が失われたボルキャンサーに捕まってそのまま食い殺されてしまった……

 

 TVSP版では、城戸真司に協力を申し出、仲間を装いながら不意討ちを狙うという、妙にセコいキャラに変貌。
 あげくに、途中乱入してきた仮面ライダー王蛇のファイナルベントを食らい、爆散して果てるという惨めなオチを迎えた。

 その6年と半年後、今度は「仮面ライダーディケイド」龍騎の世界編に登場。
 裁判バトルには高頻度で参戦しているらしく、雑誌のインタビューを受けるほどの有名人だったりと妙に良い待遇を受けていたが、やはりここでもナイトにやられてしまった。  それでも、勝率6.8%という“シザースにしては”高い戦歴を誇っていたようで、それなりの実力者ではあった模様。
 ちなみに、メイン以外の登場ライダーでこのようにピックアップされた者は、他にいなかった。

 

 さて、シザースです。
 新・装着変身での龍騎シリーズでは、驚きのトップバッターを飾りましたが、今回はさすがにWEB限定品となりました。
 確かに、九年くらい前ならともかく、今は一般販売は厳しいんじゃないかと思えますから、この判断は正解だったのかもしれません。
 とはいえ、フィギュアーツ龍騎シリーズで14番目の商品化というのは、いささか遅すぎなんじゃないかな? とは思います。
 でも、待った甲斐あって非常に良い出来に仕上がっているので、満足度はとても高い逸品になっていると思われます。

 

 それでは、前後比較。
 非常に無駄なくまとまっていて、大きな違和感も特に感じません。
 結構複雑な後頭部の造形や、背中の処理などもばっちりです。
 あと、上半身と腹部の段差があまり気にならないラインになっているのも、ポイント高いですね。

 

 頭部アップ。
 今回唯一の問題点で、ぶっちゃけ顔はあまり似てません。
 と書くと「はぁ?!」と思われる方も多いかと思いますが、マジです。
 どうやら造形担当者はグラサン風の部位を目だと誤解してしまったようで、その位置に目が相当するように造っています。
 そのため、実際のマスクよりも鼻下が長くなって、顔全体が上にずれた感じになってしまいました。
 実は、本当のシザースの目はグラサンのように見える所ではなく、その上にある逆「ヘ」の字型の部分なんです。
 劇中のマスクを見てもらえれば判りますが、グラサン風の部位が本来の目の位置よりやや下寄りに配置されています(そのためグラサン部分を目と解釈して見た場合、撮影用マスクは若干違和感を覚える)。
 非常に惜しい解釈ミスなんですけど、これはこれで良くまとまった造形なんで、そんなに強烈な違和感は覚えずに済んでいるのが幸いです。
 たとえ実物に似てなくても、こういうアレンジと解釈すれば、個人的には結果オーライですね。

 

 斜め横。
 ツノの付け根部分の塗装がオミットされているのが、ちょっぴり残念。
 ちょびヒゲ生やした怪しいグラサンの詐欺師、という感じの顔つきが、実に良く再現されています。
 そういうデザインの意図は、多分なかったとは思いますが……

 

 今回の肩アーマーは、上腕部を上から挟むように装着されています。
 その上、アーマー自体が横方向にスライドできるようになっているため、肩部分の稼動範囲が若干拡張されるようになっています。
 それでも、腕が上がるのはこれが限界。
 これ以上上げようとすると、肩アーマーが外れて飛んでいきます。

 

 Vバックル。
 蟹さんのデッキも、勿論丁寧な造り。

 

 今回のボーナスパーツ。
 なんと、ナイトの攻撃で破損したバージョンが入っています。
 割れ目や裂け目の再現だけじゃなく、デッキ全体の形状もガタガタになってます。
 Vバックルには、若干はめ辛い感じ。
 よくまぁ、ここまでやるなと素直に感心。

 

 足の裏。
 つま先の裏には、蟹の紋章がしっかりと。
 今回は、限定品のせいかつま先もダイキャスト製です。

 

 シザースバイザー。
 設定通り、今回も手首のみのホールド。
 ただし、装着変身の時のように、グリップ部分に回転防止用の軸が設けられたりはしていません。
 グリップ力だけで、正位置をキープできます。

 

 シザースバイザーを横から見た状態。
 非常にシンプルな構造と造形。

 

 当然ながら、ハサミ部分を展開してカード挿入も再現可能。
 ちなみに、今回はバイザー本体とハサミ部分に隙間が空いてるので、カードを入れっ放しにしているとそこからポロリと落下します。
 紛失に注意ですね。

 

 次は、各武装について。
 まず、シザースの右手首と前腕のジベットスレッドを取り外します。

 

 その上にスポッと差し込んで、ストライクベント「シザースピンチ」。
 装着変身みたいな横からの被せ方式ではないので、びんぼっちゃま状態にはなりません。

 

 横から見ると、実はこんなに巨大です。
 これなら、打撃専用武器としても充分活用できるでしょうね。
 ハサミ部分は、銀色の方だけ可動。

 

 側面?部。
 こっちにもジベットスレッドが付いてます。
 刃は意外に薄めの印象。

 

 アングルによっては小振りにも見えたりする不思議なシザースピンチ。
 ハサミ部分の根元が曲がっているデザインなので、ちょっと腕の角度調整が難しい感じですが、戦闘シーン再現のポージングには欠かせないかも?

 

 シザースは劇中準拠だと絡める相手が少ないので、TVSP版と解釈して色んなライダーと絡めるか、オリジナルな組合せで飾って楽しむのもいいかもですね。
 そんなこんなで、適当ストライクベント対決とか。

 

 続いて、左前腕のジベットスレッドを外します。

 

 ガードベント「シェルディフェンス」。
 シザースバイザーと一体化する大型の盾です。
 思ったより大きくて、守備力高そうです。

 

 裏表。
 シザース本体の色と同じ塗装なので、装備後の一体感はかなりあります。
 意外に複雑な形状再現もしっかり。
 裏面にまで塗装が施されています。
 裏面中央部にあるのは、接続用のジベットスレッド(のジョイント)。

 

 シェルディフェンス装着状態を横から。
 ジベットスレッドの他、シザースバイザーの側面を上から抱えるように固定する三点支持。
 バイザーへの接続が若干癖ありですけど、完全にはまった後の固定力はなかなかです。

 

 劇中では絶対に行えないフル装備状態。
 なんせ、ガードベントやるとシザースバイザーが蓋されちゃうし、ストライクベントやるとカード取り出して入れられないし……
 でも、だからこそ意味がある遊び!

 

 シザースといえば、ナイトとの対決。
 玩具同士なら、本編の展開なんか気にせず一方的にいたぶり放題。
 しかし、この対決の組合せをやるのに2年近くもかかっちゃいましたねぇ。

 

 装着変身EX「ミラーモンスターズ04」のボルキャンサーと共に。
 もう七年も前の商品で、成形色丸出しなんでアンバランスかなと思ったんですが、パッと見の色が似ているせいか、あんまり違和感を覚えませんでした。
 とはいえ、やはり欲しいですね、新造形版。

 

 そして、ファイナルベント。

 

 ボルキャンサーがあれば、ファイナルベントも完全再現!
 ……って、二度目だなこのネタ。

 

 本当のファイナルベント「シザースアタック」。
 恐らく多くの人が呆然としただろう、身体を張った回転アタック。
 背中の突起はそのためにあったのね! と強く納得する瞬間でした。
 全くいいとこなかったけどな!

 

 今回付属するカードは、4種類。
 左から、アドベント(ボルキャンサー召還)、ストライクベント(シザースピンチ)、ガードベント(シェルディフェンス)、ファイナルベント。
 右端は、カードの裏側。

 

 そういえば、今回は交換用手首が殆ど右手のみで、左手はバイザーを掴む手首1つだけです。
 一応それでも支障はない筈なんですが、なんとなく偏りを感じてしまいます。
 どうでもいいけど、シザースってこういう装備でどうやってライドシューター乗ってたんだろう?
 背中の突起のせいで背もたれに背中付けられないし、バイザーのせいで左グリップ握れないし……
 ライアもだけど、バイザー専用荷物入れでもあったのかしら?

 

 今回は、シザースの紋章をプリントした魂STAGEが付属します。
 ちょっとオレンジきつめ。

 

 シザースを飾ったところ。
 これまでのパターンから考えると、ライダーに台座が付くということは、相方のミラモンが出ない可能性大……?!

 

 以上、仮面ライダーシザースでした。

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【買ってみて一言】

 

 基本的に造形はバッチリ、可動についても充分(というか過去のシリーズで納得済み)、装着変身の不満点も改善され、殆ど文句のつけようのない出来になっています。
 あえて難点を挙げるなら、解釈ミスのせいで顔が似ていない点ですが、それも致命的な問題というほど違和感があるわけではないので、これはこれでいいんじゃないかとすら思えます。

 とにかく、龍騎系フィギュアーツに馴染んでいる人には、ダントツでオススメ出来ます。
 もしまだ手に入れられる機会に恵まれたのなら、この個性的なライダーを是非手に取って頂きたいものです。
 TVSP版をモチーフに飾るのなら、王蛇とも絡められそうで、いい感じですしね。

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