『仮面ライダー龍騎』
スペシャル 13 RIDERS
2002/9/19 放映


(Story)
  これは、もう1つの龍騎の物語
  もう1つの始まりの物語だ
  この物語には、2つの結末を用意してある
  戦いを続けるのか、それとも戦いに終止符を打つのか、それを決めるのはあなた達だ
  あなた達1人1人がこの物語のラストを決定する

 
 
 最近起きている連続行方不明事件の取材に出掛けた真司は、鏡の中から生えてきた紐状のものに絡み取られ、鏡の中に引きずり込まれてしまった。
 そこでモンスター:ミスパイダーに襲われた真司は、突如現れた龍騎に救われる。
 だが、龍騎は、そこにあった光り輝く鏡(コアミラー)から出現した新たなモンスター:レスパイダーとミスパイダーの攻撃により深手を負い、ミスパイダーを倒したものの、変身が解けてしまった。
 龍騎=榊原耕一は、分解を始めた真司にカードデッキを渡し、真司は龍騎に変身してレスパイダーを倒した。
 そして、榊原はコアミラーを指さしながら、真司にメモを渡して
  お前はライダーの戦いに巻き込まれるな
と言い残して分解消滅してしまった。
 現実世界に戻った真司は、秋山蓮(ナイト)と神崎優衣にデッキを渡すよう迫られる。
 『ライダーになった者は、己の望みを叶えることができる代わりに最後の1人になるまで戦わなければならない』という掟と、榊原がミラーワールドを閉じようとしていたことを知らされた真司は、デッキを持ったまま、メモにある人物を訪ねて歩くことにした。
 
 最初に訪れたのは、脱獄したものの再び拘置所に捕らわれた浅倉威(王蛇)のところだった。
 「ライダーになった奴はみんな俺の獲物だ」と言う浅倉にたじろぐ真司の前に北岡秀一が現れ、浅倉の荷物の中からかすめ取った王蛇のデッキを見せて、「こいつはもう終わったんだ」と言う。
 だが、真司のヘルメットから現れたベノスネイカーによってデッキを奪い返し拘束衣をはぎ取った浅倉は、真司から奪ったミネラルウォーターを床に撒いて変身し、脱獄してしまった。
 北岡にも戦いをやめるつもりはないと言われてしまった真司は、優衣から、ミラーワールドにはモンスターを生み出すコアミラーがあり、榊原はそれを壊してミラーワールドを閉じようとしていたことを聞かされる。
 コアミラーはモンスターに守られているため、1人では難しいことを知った真司は、仲間になってくれるライダーを捜すことにした。
 だが、蓮に「無理だな。お前はライダー達が背負っているものを知らない」と言われてしまう。
  
 翌日、真司は高見沢逸郎(ベルデ)を訪ねる。
 だが、高見沢は
  今の世の中はライダー同士の戦いと同じだ
  生きるってことは他人を蹴落とすことなんだ
  人間はみんなライダーなんだ

と言って真司を叩き出してしまった。
 
 次に真司は手塚海之(ライア)を訪ねる。
 手塚は、蓮からの共闘の申し込みを断っているところだった。
 手塚は、蓮と同じく恵里に新たな命を与えるためにライダーになったが、他人を犠牲にすることに疑問を感じ始めていた。
 真司は、蓮が自らのためにライダーになったのではないことを知って安心する。
 そこにミスパイダーが現れたため、3人はそれぞれ変身してミラーワールドへ向かう。
 同じくモンスターを感知した高見沢も変身し、ミスパイダー、レスパイダーと戦っていたライアを引き離して倒してしまった。
 真司は、手塚の死を目の当たりにしながら平然としている蓮をなじるが、蓮は
  ライダーになったときから、俺と奴は敵同士になった
とうそぶく。
 真司は、その後、芝浦淳(ガイ)を訪ねるが、やはり相手にされなかった。
 
 翌日、真司は須藤雅史(シザース)に呼び出され、協力を申し入れられた。
 同じころ、蓮のところにも北岡、高見沢、芝浦が現れて真司を倒すために協力するよう要求する。
 手塚のこともあり高見沢に反発する蓮だったが、『真司と同じく甘い』と言われて協力することになった。
 モンスター:ソロスパイダーの気配に気付いた真司と須藤は、変身して戦う。
 サバイブ化してソロスパイダーを倒した龍騎にベルデ達が襲い掛かり、シザースまでもが襲い掛かってくる。
 結局シザースは乱入した王蛇に倒され、王蛇はそのままゾルダと戦い始める。 そして、ベルデは、倒れ伏した龍騎にトドメを刺す役目をナイトに振る。
 ベルデは、トドメを刺せないナイトを「お前も落ちこぼれだ」と倒そうとするが、龍騎が身体を張ってベルデを止め、時間切れになったベルデらは帰っていった。
 
 龍騎にとどめを刺せなかったことを自己嫌悪する蓮に、真司は「見直した」と励まし、
  俺達は仲間だ
  ライダー同士の戦いなんてホント馬鹿げてるよ
  終わりにすんだよ、俺とお前で

と言うが、蓮は
  俺には、どうしても助けなければならない人がいる
  そのために、ライダーの戦いに勝利する必要があるんだ

と迷う。
 芝浦に発見され、再び追い詰められていく2人。
 蓮は、変身を止めようとする真司を制して
  俺は戦う
  自分の弱さにも負けはしない

と変身してしまった。
 やむを得ず変身して後を追う龍騎だが、王蛇、タイガ、インペラー、ファム、リュウガ、オーディンも加わって、一方的に追い込まれていく。
 そんな中、龍騎はコアミラーを見付けるが、ライダー達に阻まれて近付くこともできない。
 そして、ベルデが龍騎を狙って放ったファイナルベントを、龍騎を庇ったナイトが食らってしまう。
 必死に立ち上がったナイトは、ファイナルベント“飛翔斬”でベルデを倒したものの、変身が解けて倒れてしまった。
 龍騎もまた、デッキをオーディンに砕かれて変身が解けてしまった。
 突然出現したソロスパイダー、ミスパイダー、レスパイダーがライダー達に襲い掛かっている間に蓮に駆け寄り、抱き起こす。
 蓮は、真司にナイトのデッキを渡して
  仲間…なんじゃないのか?
  城戸、戦ってくれ、俺の代わりに
  恵里を頼む

と言う。
 出現したディスパイダーにガイが食われて1人減ったものの、残るライダー7人が真司に迫る。
 真司はナイトサバイブに二段変身して、ファイナルベント“疾風断”を発動してライダー達を蹴散らし、コアミラーに向かう。
 だが、ナイトサバイブの心には
  あのミラーを壊せば全てが終わる
  だがいいのか、それで?

と迷いが生まれていた。
 ディスパイダーを撃破してコアミラーの直前まで行ったナイトサバイブは、ダークレイダーから降りてライダー達の方に踏み出す。
 そして、ライダー達に囲まれたナイトサバイブは
  俺は戦う。蓮の代わりに
  蓮、お前にも答えは分からなかったんだろう?
  お前は答えを見付けるために戦っていたんだ
  俺も戦う。お前が探していた答えを見付けるために

と剣を抜いてライダー達に向かっていく。
 
 
  この結末は、あなた達の意思によって決定した
  だが、本当にこれで良かったのか?
  答えは、もう1つの龍騎の物語が教えてくれるだろう




(傾向と対策)
 番外編。
 もう、それ以上何も言えないすんごい内容。
 冒頭で士郎が「もう1つの物語」と言っているとおり、各ライダーの基本設定にまで変更された部分がある。
 手塚が「確かに昔、俺は恵里を愛した」などと言い出したときには、どうしようかと思ってしまった。
 ただし、一応、手塚の反戦闘派という部分が残っていたりと、性格的な面はテレビの設定に準拠してはいるようだ。
 榊原耕一が龍騎として戦っていたという新設定もなかなか凄いものがあるが、さっさと限界を悟って真司にデッキを譲っちゃうってのもなんだかなぁ。
 演じていた和田圭市氏が『五星戦隊ダイレンジャー』のリュウレンジャー・亮だったことは知っている人も多いだろう。
 龍星王といい、つくづく赤い龍に縁のある人だ。
 昇竜突破でドラグレッダーが炎を吐いたときに、龍星王の大火炎を思い出して膝を叩いた人も多かったのでは?
 演出も狙ってやってるんだろうけど。
 モンスターに襲われた真司が、自分を救ってくれた人の遺志を継いでライダーになるというのは悪くない展開だと思うし、アナザーストーリーとしてはまずまずの導入部だと思う。
 で、彼が真司に渡したメモはライダーの住所録だったわけだが、上から浅倉、高見沢、手塚、北岡、芝浦、須藤、蓮の順で並んでいる。
 真ん中より下は真司の指などで隠れていたが、「穂」という名前と、「敏幸」、「修治」という名前が載っていたようだ。
 「穂」は美穂でいい(劇場版では名字は仮名だったが、美穂というのは本名のはずだ)として、後の2人はタイガとインペラーかな?
 位置関係からすると、12人全員の名前が書けるはずなのに10人分しか名前がないのは、やはりオーディンとリュウガの正体は不明ということなのだろう。
 
 今回のスペシャルの1つの柱は“13人のライダーが全員出演するということ”であり、パラレルワールドにしたこと自体は、むしろ当然だと思う。
 既に死んだライダーも含めて13人を1つの画面に登場させるには、仕切直すしかないからだ。
 だが、結局13人が1つの場所に集まることはなかった。  
 今回主役のベルデの噛ませ犬として、ライアが早々に死んでしまったからだ。
 その後、シザースも王蛇に倒され、結局画面上では最大11人しかライダーが揃っていない。
 ともあれ、ライアのお陰で、ベルデは一見間抜けなカメレオン顔が悪役顔に見えるだけの悪辣さを持つことが出来た。
 また、姿を誰かに似せるコピーベント、姿を消すクリアーベント、モンスター:バイオグリーザの舌をつかった道連れバンジージャンプからサンダーデスドライバーするファイナルベント“デスパニッシュ”と、カードによる性格付けも巧い。
 姿を消しているときに使ったヨーヨーモドキの武器は、やはり左腿につけたバイオバイザーなんだろうか。
 ほかの武器を召還しているような音はなかったようだし、ちょうど舌が伸びるような感じで紐付きクリップもあったようだし。
 (注:東映MAXという本によると、あれはホールドベントカードを使用したヨーヨー型の武器:バイオワインダーだそうな。カードを使う音くらいけちらないで流してほしいものだ)
 
 細かいネタを見ると結構笑える部分もある。
 その筆頭が、真司と須藤との会見のシーンだ。
 「俺が奢りますから」と言っておきながら、モンスターを感じた途端にさっさと行ってしまう真司と、一旦戻って伝票を持っていく須藤。
 結局須藤の奢りになってしまったわけだが、真司の性格などを考えると、この展開は納得できるものがあるし、笑える。
 さりげにリュウガのバイザーがくぐもった音で「ファイナルベント」とやっていたり、ライダー達がディスパイダーに苦戦しているとき、なぜかオーディンの姿がなかったりと、結構気を使っている部分もあるようだ。
 また、単なるモンスターに食われた初のライダーという栄誉に輝いたガイ=芝浦も、嫌な奴モード全開で、全国54万1,147人の芝浦ファンは、一斉に喝采を送ったことだろう。
 
 だが、全体像はとんでもない駄作だ。
 そもそも、1時間番組で13人のライダーを登場させて収拾をつけようという発想に無理がありすぎたのだ。
 本来物語の中心にいるはずの優衣は、Bパート序盤以降全く姿を見せないし、士郎はストーリーテラーよろしく番組前後のおしゃべりタイムにしか出てこない。
 また、どこぞの地下駐車場のような場所に鎮座ましましているコアミラーを壊すとミラーワールドが閉じてライダー同士の戦いが終わるという妙な設定
 こうなると、“ミラーワールドとは”という根幹からテレビ本編とは遊離してしまっていることは明らかで、アニパロ的な同人作品を見ている気分になる。
 浅倉が、真司のヘルメットからベノスネイカーを呼んで脱出し、水たまりを作って変身するという展開自体は悪くなかったが、そもそも浅倉があんな格好で登場したこと自体、この脱出劇を見せたいが故に過ぎないのではないかという気がする。
 また、高見沢というキャラクターそのものは悪くないし、レギュラー枠の方で登場すればかなり魅力的な敵役になっただろうが、番組自体の時間が短く、死に様がショボかったこともあって、なんとなく尻窄みになってしまった。
 どちらかというと、ライダーを13人揃えることよりも、高見沢をメインの敵に据えての1時間スペシャルの方が良かったのではないかとすら思えるが、考えてみれば、トドメを刺せない蓮の悩みという、テレビでは既に描かれてしまった内容を持ち出すシナリオ展開は今の本編内容とズレているわけだから、やはり考慮する価値に乏しい。
 結局、流れとして本編と分断される以上、完全にリンクした物語にはできないのだから、ストーリーを度外視して13人揃えるというイベント性を重視するか、ストーリーを持たせる代わりに13人揃えないか、どちらかをはっきり選ぶべきだったのではないだろうか。
 また、龍騎・ナイトとほかのライダー達の戦いでは、カードをほとんど使っていない。
 龍騎が起死回生で使ったファイナルベントを、ガイがコンファインベントで帳消しにするなどの見せ方が欲しい。
 ナイトにしたって、ナスティベントやトリックベントなど、ああいう状況下で使い勝手のいいカードを持っているというのに。
 今回のスペシャルは、『龍騎』を知らない人にはさっぱり意味が分からず、普段見ている人は設定の違いに戸惑うという、誰を対象にしているのか分からない内容になってしまったのが痛かった。
 
 なお、今回の脚本は、劇場版と同じく井上氏だったわけだが、善し悪しは別として、氏のミラーワールド観がよく現れていると思う。
 劇場版で随所に見られるそれと同じものが見え隠れしているのだ。
 “鏡のないところにデッキを向けて変身する真司”もその1つだが、何よりも、冒頭でレスパイダーが出現したときの“モンスターの絵の描かれた紙がコアミラーに写った瞬間、コアミラーに映った紙は落下せず、ミラーの前の紙だけが落下する”という描写は、劇場版での“真司が鏡の前からいなくなっても、鏡に写った真司がそこに残る”という部分を彷彿とさせた。
 コアミラーが破壊された場合、どういう描写になったのかも非常に興味深い。
 
 今回のスペシャルのもう1つの特徴が“地上波初のマルチエンディング”というシステムだ。
 番組冒頭での士郎の言葉どおり、電話やインターネット、iモードによるリアルタイムの投票によって“戦いをつづける”“戦いをとめる”か選ぶことができるというシステムは、『龍騎』を普段から見ている視聴者に対しては、放送前からかなり大きな求心力を発揮したはずだ。
 確かに社会人にとって午後7時という時間は、テレビの前にいるのは難しい時間帯ではあるが、iモードによる投票なら、仕事の合間にトイレから投票ということもできるわけで、あらかじめテレビ朝日の龍騎サイトを登録してさえおけば、さほど苦労することなく1票を投じることができたはずだ。
 また、「リアルタイム」という言葉の魔力は強く、普段から『龍騎』を見ている人は、のっぴきならない事情がないなら、ほぼ確実にテレビの前に陣取っていただろう。
 生で見るということは、視聴率が上がるということを意味する。
 ホンの数分のラストシーンの違いだけで視聴率に差が出るとすれば、これはテレビ業界にはかなりおいしいネタとなるだろう。
 
 だが、果たして成功したのかは疑問だ。
 1つには、エンディングを分けたことの実質的な意味の問題がある。
 OP前の士郎の語りで、「戦いを続けるのか」と言っているとき、バックにライダー達に囲まれたナイトサバイブと剣を抜いて突っ込むナイトサバイブという場面が写されていたことに気付いていた人は多いと思う。
 これと同様に、「戦いに終止符を打つのか」と言っているときのバックには、
  龍騎のデッキを握った手
  雑踏の中で頭を抱える真司
  鏡の中で腕を組んでいるオーディン

が映し出されている。
 つまり、これらは後で思い返してみれば、それぞれのエンディングの一部だったわけだ。
 「戦いを続けるのか」の映像が、あのとおり一番重要なシーンだったことを考えると、「戦いに終止符を打つのか」の画像も相当重要なシーンだったはずだ。
 そして、どちらとも言えない冒頭のシーンで、既に蓮の死(本当に死んだかはともかく)とナイトに変身する真司が描かれていた以上、真司が蓮のデッキを引き継いでナイトサバイブになるということは、共通の部分だったと考えられる。
 つまり、ディスパイダーを疾風断で倒した後の展開だけが違うということになる。
 番組予告の映像の中に真司がナイトに変身するらしき場面が流れていたことからしても、真司がナイトサバイブになるという展開自体は共通だったと見ていいだろう。
 そして、OPの画像の中に、コアミラーらしきものに突っ込むダークレイダーが写っていたことからすると、ディスパイダーを貫いた後、そのままコアミラーに突っ込んでいくのが“戦いをとめる”流れだったはずだ。
 『ミラーワールドが閉じる』という初めて聞く言葉の意味がどういうものであったかは分からないが、とにかくそうしてあの場を終わらせた真司の前にオーディンが現れて何事かを告げ、それによって真司が思い悩むというのが、このラストの流れだろう。
 そして、重要なのが“龍騎のデッキが存在している”ことだ。
 “全てが振り出しに戻る”が、このラストの正体だと鷹羽は踏んでいる。
 
 こう考える理由は、どちらのエンディングを選んでもろくな終わり方をしないはずだという鷹羽の読みによる。
 ラストシーン後の士郎のセリフは、当然、どちらを選んでも共通のものとして作られているはずだ。
 ならば、「だが、本当にこれで良かったのか?」という言葉もまたどちらのラストシーンを選んでも投げかけられるはず。
 つまり、どちらを選んでも後味の悪いエンディングになるよう作られていること推測される。
 そういうわけで、鷹羽は、“戦いをとめる”のラストは、
  疾風断でディスパイダーを倒したナイトサバイブは、そのままダークレイダーでコアミラーに突っ込んで砕き、ミラーワールドが消滅して現実世界に戻るが、そのとき何かが起こり、なぜか真司が龍騎のデッキを手にした時点に戻って、鏡の中からオーディンが「戦いは終わらない」と呼び掛ける
というような流れになるのではないかと推測している。
 “戦いを続ける”エンドの時間を考えれば、与えられる時間は約1分に過ぎないから、これくらいの内容でないと収まりきらないのだ。
 ちなみに、「何かが起こり」は、オーディンによるタイムベントのような具体的なものではなく、本当に何が起こったか視聴者にも分からないような中途半端な謎になっているのではないかと思っている。
 つまり、本当の意味では戦いは終わらないということだ。
 
 これはあくまで鷹羽の推論に過ぎないが、いずれにしても、戦いを続けようと止めようと爽快なエンディングにはならないという点で、大きく的を外すことはないだろう。
 そもそも、既に完成しているラストシーンのどちらを選ぶかというレベルのことで、「この結末は、あなた達の意思によって決定した」などと責任転嫁されても困る。
 分かりやすくいうと、家に帰った小学生が、これからすることをくじ引きで選ぶ際に、片方は「宿題」、片方は「お使い」と書いてあるようなものだ。
 どっちを選んでも「遊びに行く」という選択肢はないのに、「あんたが選んだくじの結果だから従いなさい」と言われても、ちょっと納得できないだろう。
 
 テレビ朝日の公式HPによると、このアンケートの結果は
  戦いをつづける: 319583票
  戦いをとめる : 229564票

だった。
 ちなみに、九拾八式工房の掲示板でちょっとアンケートを取っており、折角だから数えてみたところ、“戦いをつづける”を選んだ人が6人、“戦いをとめる”が8人となっていた。
 そして、“続ける”の理由として、「そうしないとナイトサバイブに変身する真司が見られないと思ったから」というのを挙げた人がいる。
 つまり、真司がナイトに変身する姿を見たいがためだけにそっちに投票したということだ。
 そういう人は、全国に相当数いるものと思う。
 別に、それが悪いとか言うのではなく、どちらを選んでも真司がナイトに変身すると分かってさえいれば、結果が変わっていたかもしれないと言いたいのだ。
 その意味で、結構あざとい選択肢だったと言えよう。
 第一、ラスト1分間しか変わらないと分かっていれば、こんなに投票があったかどうか。
 今回だけで見れば成功しているかもしれないが、もう1度同じことをやったときに同じだけの反応が得られるかどうか、疑問が残る。
 せめて最終パート全部入れ替えるくらいのことはやってほしかった。
 なお、蛇足だが、鷹羽は“戦いをとめる”を選択した。
 それは、“戦いをやめるというエンディングはこのスペシャルでしか見られない”だろうと思ったからだが、結局そっちになっても、あまりいいモノは見られなかったようだ。
 
 このスペシャルの2つ目の問題点は、投票形式だ。
 今回の投票に使用できたのは、NTT一般回線による投票と、テレビ朝日の『龍騎』公式サイトからのインターネット・iモードによる投票の3つだった。
 これは、非常に有効なようで、実は意外な落とし穴がある。
 例えば、鷹羽の友人に、インターネットはドリームキャストで、電話はマイラインをNTT以外でやっている人がいるが、その人のところからはどうやっても投票できなかったそうだ。
 なんでも、回線が違うためにNTTのデータ送信は使えず、ドリキャスからは公式ホームページの投票ウインドウに入れなかったという。
 ちなみに鷹羽はauのケータイを使っているが、auからの投票もできなかった。
 現在、DoCoMoのシェアがどれくらいか分からないが、ほかの機種では投票できないというのはちょっと間口が狭いのではなかろうか。
 ez-webなどにも対応した窓口が欲しいものだ。
 そして、それ以上に問題なのが“子供に投票ができるのか?”ということだ。
 肝心要のメインターゲットであるべき子供に、果たしてインターネットでの投票や電話での投票ができるのだろうか?
 アイキャッチなどで電話番号は出ているが、それを瞬時に読み取り記憶するのは、大人の読解速度をもってしてもかなり難しかったろう。
 まして、リアルタイムという“視聴者プレゼントの秘密兵器”一時停止が使えない状況だ。
 
 また、内容的にも子供の目というものを考慮していないようだ。
 龍騎とナイトを「弱い奴」と呼び、9人がかりでよってたかって殴る蹴るするライダー達。
 最後の1人になることの目的意識が明確に出ているのが蓮と手塚、北岡だけであるために浮き彫りにされるライダーになる奴らの非常識さといやらしさ。
 「生きるってことは他人を蹴落とすことなんだ」と言ってのける高見沢の精神や、よってたかって龍騎やナイトをリンチするライダー達の姿には、不快感すら催させる。
 
 果たして、普段『龍騎』を見ていない人で、このスペシャルを見て「1度見てみようかな」と思った人はいるのだろうか?
 公式HPでアンケートを取ってくれないだろうか?
 

 今回の見所は“右前の服を着ている真司”だろう。
 知っていると思うが、ミラーワールド内での撮影は、左右逆版になっている。
 そのため、ライダーの衣装は、変身シーン用の通常版のほかに、ミラーワールド撮影用に逆版用ベルト、バイザーのものが用意されている。
 今回、真司はミラーワールドに引き込まれているわけだから、左右反転しないままにミラーワールドにいる。
 つまり、ミラーワールドシーンの撮影では、真司自身が左右逆版バージョンになっていなければならないわけだ
 これは、劇場版で、現実世界に現れたリュウガ真司の服がわざわざ逆版バージョンになっていたのと対をなす描写となる。
 実際、真司はミラーワールドでも左手に腕時計をしているわけで、要するに撮影時には右手に腕時計を上下逆にしてはめていたものと思われる。

 ところが、真司のシャツは逆版バージョンを用意していなかったようで、ミラーワールドにいる真司の服は右前になってしまっているのだ。
 榊原みたいに、Tシャツ系にしておけば誤魔化せたものを…。



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