第50回 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツ「仮面ライダーW サイクロンジョーカー」

2010年2月27日 更新

 発売日にレビューだ!
 さあ、話題が過熱しているうちにやってしまいましょ。

■ S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーW サイクロンジョーカー

 2010年2月27日発売。
 同時販売物は、シリーズ中にはなし。  
 全高約14.5センチ(ツノ含まず)、全4種の手首付き。
 ウィンディスタビライザー(マフラー)2種付属。
 台座などのオプションはなし。
 価格は税込2,625円。

 発売前から大変な話題だったフィギュアーツ・仮面ライダーW。
 これを書いている現在、各所で順調に在庫がさばけている様子です。
 瞬殺はなくても、ひょっとしたら意外に早くなくなるかもしれません。
 「仮面ライダーディケイド」シリーズに続く“本編放送中に発売されたフィギュアーツ”です。
 ただし、放映期間中としては2010年現在最も早く出たことになります(ディケイドは1月放送・8月発売)。

 以前発売された「ダブルフォームチェンジシリーズ(WFC)」とはコンセプトが異なり、ギミック排除の完全なスタイルモデルになっています。
 分割ギミックがない分、大変良好なプロポーションと可動が両立しています。
 仮面ライダーW自体の詳細は、上記リンク先を参照のこと。

 まずは前面・背面対比。
 サンプル画像では細身に感じられましたが、実際は意外にマッシブです。
 首が長めとか、足が細すぎといったフィギュアーツ特有の体型的な問題点はほとんど見られません。

 全身の可動については可もなく不可もなく。
 ライジングアルティメットのような、部分的に感じるストレスのようなものはありません。
 その辺は、大変良く出来ています。

 「さぁ――」

 「お前の罪を――」

 「数えろ」

 Wの代表的な決めポーズに必須の指差し用手首は両方付属。
 ただし残念なことに、形が実際のと違っていて親指が立っていません。
 そのため、若干違和感が生じます。
 なんでもこの手首は、原型担当者が本編を見て初めて存在に気付いて慌てて追加したものらしいです。
 以前は手首数が少ないと散々叩かれていたフィギュアーツですが、今回この判断は実にGJとしか。
 ないよりあった方が絶対に良いものね。

 こちらは、変身(フォームチェンジ)用の二本指揃え手首。
 親指が立っているので、間違ってこっちで「お前の罪を〜」ポーズを取らせてしまう人も多いとか。
 気になる右側手首ですが、PVC製ではあるもののすべてメタリックグリーンに塗装されており、本体との色味の差はまったく感じられません。
 手首は、この他普通の開き手が付属します。

 「俺の名はダブル。
  街の涙を拭う、二色のハンカチさっ(シュッ)」


 今回手首の交換がかなりやり難いので、細心の注意が求められます。
 というのも、今回の手首はボールジョイント受けの口径が少し小さめで、差し込む際にはかなりのコツと力が要ります。
 そのため、ボールジョイントに近い手首周辺を掴んでグッとやりたいところですが、そこにはリング状のパーツがあるため難しいのです。
 手首のリングパーツはプラ製で取り外しが可能な構造のため、ヘタに力を入れすぎて掴むと割れてしまいそうで怖いです。
 こうなると前腕の中央辺りを掴むことになるのですが、そうすると今度はボールジョイントがずれて逃げて……
 とにかく、取り扱いには注意して慣れていくしかなさそうです。

 可動とかバランスとか、細かい所を見ていきます。
 まず足首は合金製で適度な硬さがあるため、自立性は比較的高め。
 上手く調整すれば片足立ちも可能ではあります。

 けどさすがにシンバルキックまでは再現不可能なのね。
 いやこれで充分だけど。

 股関節は、「SHFアナザーアギト」タイプの引き出し式。
 これのおかげで、足は前方に90度強くらい出せます。

 今回とても秀逸なのが、この膝です。
 素立ちだと太股・膝頭・脛のラインが綺麗な面イチになっていますが……

 こんな風に、黒い膝関節が隠されていています。
 当然左足も同様の構造で実に上手く処理されています。

 膝はだいたいこれくらいまで曲げられます。
 今までもあったごく普通の構造ではあるのですが、Wの場合は外装と膝装甲が繋がっているだけでとても新鮮な感覚を覚えます。
 膝関節の色については、この後の肘の件とまとめて。

 次に腕とか。
 Wの肘(や膝)の関節は、ボディカラーに関係なく黒で統一されています。
 これはサイクロンジョーカーだけに限らず、「ヒートメタル」と「ルナトリガー」、そして「サイクロンセット」「ヒートセット」「ルナセット」も同じです。
 「魂フィーチャーズ」によると、これはコストダウンを計ったための結果だそうです。
 Wは塗装面で見た目の印象以上にコストがかかっており、そのため要約が必要となる部分として関節の成形色(或いは塗装)がオミットされたとの事です。
 このため、試作品では右肘の関節はグリーンになっています。
 この関節の色問題については、発売前までファン間で賛否を巡る議論炸裂でした。
 それはともかく、二重関節の肘は上腕側があまり曲がらず、実質的に一重(っていうのか?)関節っぽくなってしまいました。
 これは、この商品より一週間前に配送された「SHF仮面ライダークウガ・ライジングアルティメットフォーム」でより顕著です。

 肩の構造はこんな感じ。
 今回、腕は横方向にほぼ水平まで上がります(実際は水平以上)。
 肩アーマーはオリジナルより大きめに感じますが、思ったより可動の邪魔にはなりません。

 右半身・肩内側関節はしっかり着色されています。
 よほど乱暴に扱わない限り、ここの塗装が剥げたりはしないと思われます。
 肘関節も、パーツが重なってる部分以外はほとんど干渉がないため塗装しても行けそうに思えますが、ま、それがコストなんでしょうね。

 ウィンディスタビライザーは根元がボールジョイントになっていて、取り外しが可能。
 短く垂れ下がってるものと、長くたなびいている物の2種が付属しています。
 根元のボールジョイントは小さく結構きつくハマるため、破損が心配っぽいですが、実際は強く引っこ抜いてもそこそこ大丈夫です。
 よく見たら根元しっかりしてるし。

 長いマフラーはこんなもの。
 さすがにOPみたいなデタラメな(褒め言葉)長さではありませんが、なかなかの迫力を感じさせるナイスパーツ。
 ちなみにデタラメ版は、後に発売された「サイクロンセット」に付属します。
 わかってるなぁ。

 それにしても、BLACK以降タブー化した感のあったマフラー、平成ライダーでもバッチリ似合いますね。
 かっこつけフォームことサイクロンジョーカーのステイタスアイテムといえましょう。
 足下の台座は手近にあった金塊。

 ダブルドライバーは、細かくモールドが設けられ塗り分けもしっかりされているのですが、なぜかガイアメモリ部分だけは塗装がオミットされています。
 ウインドウ部分のCとJマークはともかく、サイクロンメモリ本体が黒いままなので違和感がかなり強くなってしまっています。
 これも塗装コストのせいなのか、と考えるのが普通なんでしょうけど、その割にはゲート部分の銀と金、またバックル中央下部のウインドウ(DXダブルドライバーでガイアメモリのLEDが点灯する部分)までしっかり塗り分けされていたのして、かなりアンバランスな処置が目立ちます。
 技術のある人はちょっと塗装してもいいかもしれません。

 ダブルドライバーは、なぜかバックル部が取り外し可能。
 リペを考えてる人にはありがたい仕様かも。
 ちなみに、Wはベルト全体が独立パーツで、本体と一体式ではなく浮いてます。
 ベルトを浮かせると、上半身が360度回転するというお茶目な構造です。

 マキシマムスロットは黒成形色マンマ。
 かなり分厚くて腰横から飛び出てるように見えてしまいます。
 この写真だとそこまではわかんないけど。
 言うまでもなく、穴などは抜いてなくて単なる塊です。

 フィギュアーツWには、他にない独特の特徴があります。
 それは、首にも銀色のラインがあるため頭の向きを変える際にこっちも動かさないと、違和感が出てしまうわけです。
 もっとも、実際の着ぐるみはそんなに大きくラインがずれるわけではないので、さほど神経質になることもないかも?

 首も一緒に動かしてみたら、違和感はかなり緩和しますね。
 でも、この写真はちょっと動かしすぎたか?
 今までは黒一色の首がほとんどでしたから、たとえモールドがあっても無視出来ましたからねぇ。

 さて、そろそろ今回最大の問題点に触れてみましょう。
 フィギュアーツWの顔及び頭部ですが、癖の強い造型のためかなり好き嫌いが分かれる出来になってしまいました。
 この写真は真正面で、こうして見る分にはさほど違和感はなさげですが……
 相変わらずツノは長すぎだけどね。

 右斜めの角度から。
 顔が下付きなのがよくわかると思います。
 (右眼の銀ブチは単なる個体差。すなわちエラーですな)

 そして、最も違和感が強まる横顔。
 これはさすがに酷すぎます。
 まず、ツノの取り付け角度が全く異なっています。
 更に、眼が小さ過ぎて幅がなく、頭部側面のモールドもオリジナルとかなり異なるパターンになっています。
 まあモールトはいいとして、ツノと顔については擁護のしようがありません。
 ツノは、実際にはこんなに分厚くなく垂直でもありませんし、額部分の傾斜に沿って後方に倒れるように接続されています。
 また、中に人が入っている前提で見ると、目線位置がツノと眼の境界辺りになってしまい(実物は複眼の中央辺り)明らかにおかしいことがわかります。

 さらに斜め上から見ると、ツノから上(額に相当する部分)の面積が広く、ツノ全体がおかしいバランスになっているのがわかります。
 俗に言う「脳勃起」状態。
 劇中のマスクと完全に同じにする必要はないとは思いますが、このアレンジはかなりきついものがあるでしょう。
 個人的には、「SHF仮面ライダーBLACK」と同じくらいの酷さに思えます。

 本当なら劇中のマスク写真と比較したいところですが転載はできないので、代わりに「WFC仮面ライダーWサイクロンジョーカー」と比較してみます。
 こちらはこちらで目がデカ過ぎとかツノが更に分厚いとか問題はありますが……

 このように、横から見た場合の造型はフィギュアーツより遙かに忠実な作りです。
 ツノの角度も正しいですし。
 ツノの厚みは、安全基準に基づくものである事は明白なので無視するとして、これを見るとフィギュアーツもその気になればツノの角度は充分修正出来たとしか思えません。
 塗装面や成形色のコスト問題はともかく、WFCで出来ている事がフィギュアーツで出来ない、という事はまず普通は考えられないでしょう。

 Wをはじめとする最近のライダー系フィギュアーツは、「SHF仮面ライダードレイク」のように顔が妙に下にずれてたり、また頭も含めて造型バランスがおかしくなっている事が多いですが、こうして見ると、これらは「ロボ系の頭部の作り」とすごく似ている感があります。
 昨今のロボ顔は、ご存じのように頭全体に対して前寄り&下付きになりがちなんですが、フィギュアーツWはモロにその性質を受け継いでいるように見えます。
 また、(Wでは改善されていますが)頭が異様に小さく身体特に肩が大きく四肢が長めというのも、ロボ造型の特徴です。
 こうなると、もはや原型担当の悪いクセが表出した結果こうなったとしか思えなかったり。

 「SHF仮面ライダーディケイド」でもそうでしたが、首から下が造形的に文句なしな分、ここで思いっきりマイナスになっている点が惜しくて仕方ありません。

 と厳しい事も書きはしましたが、角度美人っぷりを活かして飾るといい感じに違和感が薄れます。
 とはいえ、この違和感を受け容れられる人も居るので「フィギュアーツWはこういう仕様なんだ」と割り切れれば、そんなに致命的な問題とは感じられなくなるかもしれません。
 まして、これと同じ造形物が少なくともあと8つは出るわけですから……フルコンプしたい人は受け容れない訳にはいきませんね。

 「WFC仮面ライダーWサイクロンジョーカー」と比較。
 さすがにこうして見るとプロポーションの差は歴然。

 「SHF仮面ライダーディケイド」との比較。
 WFCはディケイドとだいたい同じくらいでしたが、今回はWの方が若干背が高いです。
 しかし、ディケイドもフィギュアーツの中ではかなりごつい方ですが、Wと比べるとまだ細めに見えますね。
 これはちょっと意外。
 やっぱり太股の張りのせいかな?

 そういえば、ディケイドの激情態&修正ヘッド付の発売が正式決定しましたね。

「さぁ、お前の罪を数えろ」
「……あぁん?! 何訳わかんねー事言ってんだてめぇ?!」

 FFRシリーズ「デンオウモモタロス」との比較。
 背が高いー。

 構造上左右分割は不可能なので、「ジョーカーエクストリーム」はここまでしか再現できません。
 綺麗に両脚が揃えられるのはありがたいものです。
 この姿勢で、マフラーを派手にたなびかせて飾るのもいいかもしれません。

 「魂フィーチャーズ」会場限定販売の「魂STAGEウインドグリーン」を使ってディスプレイした例。
 他の2色が赤と黄色だから、やっぱりこういうシチュを狙ってたんでしょうねぇあのラインナップは。
 「SHF仮面ライダークウガ・ライジングマイティ」のせいでライトニングイエローだけとっとと完売してしまったのは計算外の事態か?!

 このように、顔を横に向けて頭が緑一色、身体はアンシンメトリカルな二色ってバランスになると、面白い意味で違和感炸裂ですなぁ。
 さすがは半分こ怪人。

 こちらは2月28日追加。
 24話で披露した「アクセル・バイクフォーム搭乗W」を、「WFC仮面ライダーアクセル」を使って再現。
 ……さすがに劇中みたいにはいきませんでした。

 横からみたらこんな感じです。
 サイズ差についてはアクセルのレビューで散々書いたので、詳しくは上のリンク先をご参照ください。
 フィギュアーツWは、四肢の可動についてほぼ文句なしですが上体のスイングに難があり、前屈はほぼ不可能(後方に反るのは可)。
 ライディングスタイルでは、その問題点がはっきり出ています。
 背中を丸められれば、もっとマシな体勢になったかもしれませんね。
 って、それ以前にサイズが合わない物同士の組み合わせなんだから、こだわっても仕方ない点ではありますけどね。

 WFC「仮面ライダーアクセル」との対比。
 アクセルの方が若干背が低いですが、三倍ツノのせいでそんなに違和感を覚えないかも?

 色玩「サウンドガイアメモリ(ジョーカー)」を持たせてみたら、こんな対比に。
 改造して本物のUSBメモリになってるから、実物とは差異がありますけどね。

【買ってみて一言】

 大変良く出来ていますし、色や各部パーツのバランスにも注意が払われておりお値段以上の高級感溢れるとてもいい商品ではあるのですが、先に述べた「関節成形色または彩色」や「頭部や顔の造型」問題があまりにも大きく、損をしている感が拭えません。
 まして頭部については、一度試作品を(ユーザーの不評を踏まえた上で)作り直したとアナウンスされていながらこの出来なので、もはや根本的な造型技術面の問題なんだなと諦めるしかないようです。
 少なくとも、マスクの三面写真や図をしっかり見て構造把握していればこうはならない筈なので、この辺りに何か伝達上の問題があったのかもしれません(例えば正面画だけを資料に作成せざるを得なかったとか?)
 関節問題に関しては、「魂フィーチャーズ」でもコスト削減を巡る開発側の苦労話がプレートに掲載されており大変興味深かったのですが、これならもう少し価格を上げてもいいから、きっちり仕上げて欲しかったなという意見が出るのも理解は出来ます。
 筆者個人は、関節の黒は実物を弄ったら意外にすんなり納得出来たのでさほど問題視していないのですが、気になる人はとことん気になるようです。
 このように、かなり人を選ぶ出来になってしまったのが、本商品の大変に惜しい所だと思われます。

 ただし、これらの問題点を一旦許容出来てしまえば、かなり嬉しいアイテムと化すのは間違いありません。
 事実弄っていて大変楽しいですし、WFCのようなギミックがなくても、全然不満を覚えないのですから。
 また、どんなポージングでもビシバシ決まるので、すごく飾り映えするという嬉しい魅力に溢れています。
 このポージングの旨味については、他のフィギュアーツでもどれだけ並ぶものがあるのか疑問というほどで、適当な格好をさせてもそれなりに、劇中再現を試みると想像以上に映えるようになります。
 これは、単純な造型や可動だけの問題ではなく、全体の高級感や身体のバランスの良さも組み合わされて演出される魅力だと筆者は思います。
 これは、先に挙げた欠点を補って余りあるレベルかもしれません。
 この調子で全10フォームが揃ったら、さぞ壮観な光景になるだろうと今から楽しみです。

 結論として、「実物を見るまたは手にしてみて違和感を覚えないまたは許せそうだと感じたならゲット推奨、そうでない場合は熟考の上で判断を」といったところです。
 ただ出来れば、見るだけじゃなくて弄ってみて良さを体感して欲しいかもと思います。
 「魂フィーチャーズ」の試遊コーナーに行った人には、こんな事今更言うまでもないんですけどね(笑)。
 悪い部分が大きいので集中的に書き立てはしましたが、筆者は割と買って良かったと思っていますし、楽しんでいます。
 何より「アクションポーズが思いのまま!」の手頃サイズWが出たのが、何より嬉しいわけで。

 「フィギュアーツ仮面ライダーW」は、この後三月下旬に「ヒートメタル」「ルナトリガー」が発売、四月には「サイクロンメタル」「サイクロントリガー」がセットになった『サイクロンセット』、「ヒートジョーカー」「ヒートトリガー」がセットになった『ヒートセット』、五月には「ファングジョーカー」、七月には「ルナジョーカー」と「ルナメタル」がセットになった『ルナセット』の発売が決定しています。

 「アクションポーズが思いのまま!」

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