第47回 ■ バンダイ WFCダブルフォームチェンジシリーズ「仮面ライダーW」1

2009年12月26日 更新

 2009年9月から放送開始された「仮面ライダーW」
 2009年クリスマス直後の現在、恐ろしい勢いで関連商品が売れまくっていますが、今回はその中の一つ「ダブルフォームチェンジシリーズ(以下WFC)」をレビューしてみます。

 「仮面ライダーW」は、シリーズ初の“二人の主人公が変身”する仮面ライダーが活躍する作品です。
 私立探偵・左翔太郎とその相棒・フィリップが、「ガイアメモリ」と呼ばれる計6つのUSBメモリ型アイテムと「ダブルドライバー」という変身用ギアを使い変身。
 翔太郎がダブルドライバーのバックル部分を腹部に当てると、フィリップの腹部にも同じものが出現。
 スターターメモリである「サイクロン」のガイアメモリをフィリップがダブルドライバーの右スロットに差し込むと、これが翔太郎のダブルドライバー右スロットに転送され、更に翔太郎が左スロットにもう一つのスターター「ジョーカー」のガイアメモリを差し込む事で、変身が完了します。
 基本的には翔太郎の身体がメインとなり、そこにフィリップの精神体が入り込み「二人で一人の存在」を構成しますが(ただしファングフォームではこれが逆になる)、右半身はフィリップの意思で(翔太郎の意思を無視して)動かす事も可能。

 以降、仮面ライダーWは各種ガイアメモリを交換することで、合計9種類ものフォームを使い分けられます。
 身体性能を強化するガイアメモリ「ジョーカー」「メタル」「トリガー」の三種を翔太郎が、属性付加能力を司るガイアメモリ「サイクロン」「ヒート」「ルナ」の三種をフィリップが管理し、各フォームの名称は「フィリップ側」+「翔太郎側」の順番で呼称されます。

 WFCは、この9種類のフォームを再現するため、なんと左右半身を分離させて組み替えるという大胆な構造になっています。
 いわば考え方は「仮面ライダークウガ」等の装着変身シリーズに近いもので、着せ替えと組み替えの差はあれど、一番単純な方式で複数のフォームに変化させられるようにしようというコンセプトです。

●WFC01「仮面ライダーW」サイクロンジョーカー

 2009年11月28日発売。
 後述の「ヒートメタル」「ルナトリガー」と同時発売。
 全高約14.5センチ(ツノ含まず)、ウィンディスタビライザー(マフラー)付き。
 価格は税込2,310円。

 風の力「サイクロンメモリ(緑)」と切り札の力「ジョーカーメモリ(黒)」による、仮面ライダーWの基本形態。
 格闘戦向けのフォームだが、風を発生させて相手を怯ませたり攻撃を防いだりする事も可能。
 ある意味でものすごく汎用性が高い特殊能力持ち。
 初登場は、実は「仮面ライダーW」ではなく「劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」
 必殺技は、ライダーキックタイプの「ジョーカー・エクストリーム」。
 ただし技のスタイルが非常に独特で、詳しくは後述。

 まずは、WFCの基本仕様について。
 S.H.フィギュアーツのような高年齢層向け玩具ではないため、ぶっちゃけ各部ディテールや関節可動についてはかなりチープな造りです。
 肘・膝は二重関節ではなく、約90度くらいしか曲がりません。
 肩のスイングや股関節の自由度なども、期待するだけ野暮という感じです。

 ただし、それでも動く部分は結構動くもので、両足は前後方向にここまで広げられます。
 実際には、後方にはあまり曲がっていないのですが、そんなに不都合はなさそうです。
 あと、こんな格好ですけど支えナシで自立してます。

 更に、なぜか横方向にも開く開く。
 その上、足首の自由度が高くその上保持力もなかなかなもので、こんな姿勢でも充分自立可能です。
 足首が大きめで接地面積が大きく、足首も多少アンバランスなポージングであっても支え切れるだけの保持力があるため、相当頼り甲斐があります。
 自立性の高さについては、「新生装着変身」>「WFC」>「S.H.フィギュアーツ」>「旧世代装着変身」の順でしょうか。
 ただし、足首の前後左右方向への傾斜具合については、他にはさすがに大きく劣ります。

 ちなみに、無理な方向に力がかかると足が根元から外れる仕組みになっています(簡単に再接続可能です)。

 肩の構造は単純化されており、肩アーマーが別パーツなんて凝ったものにはなっていません。
 肩ブロックがそのままアーマーになっています。
 その代わり、両腕は水平まで余裕で上がります。

 WFC仮面ライダーW全3種は、左右半身それぞれ同一の金型で作成されています。
 ただし、胸・手首・足首のモールドのように「各フォームごとで異なる部分」については、そこだけ別パーツ化することで対応させています。 

 仮面ライダーWは「仮面ライダーゼクロス」以来のマフラー付きライダーですが、本商品では右半身の首後ろのジョイントにマフラーパーツを差し込む構造になっています。
 また、左半身の肩裏辺りにも凹ジョイントがあります。
 これは、ヒートメタル等でメタルシャフトを固定するためのもの。
 金型流用のため、必要ない筈の形態にまでジョイントが残っています。

 そのため、このように劇中ではありえない姿にする事も可能です。
 当然、ジョーカーにメタルシャフトを背負わせたり、ルナにマフラーを着けるのもOK。

 手首はFFRシリーズや装着変身同様の指可動手首で、親指のみ固定、あとは指二本ずつくっついてます。
 差し替え用のものはありません。
 しかし作りがかなり大雑把なものになっていて、残念ながら握り拳も開き手もイマイチ中途半端になってしまいます。
 写真は、それぞれ可能な限り握りこんだ手(左)と開いた手(右)の状態。
 握りこむと、人差し指と中指が飛び出てしまって、正直拳にはとても見えません。

 これで武器を持つ時に利点があるのなら良いのですが、生憎それについても……
 この点については、「ヒートメタル」「ルナトリガー」で再度触れます。

 WFC最大の特徴にして売りである左右分割。
 ツノからベルトまで、綺麗に真っ二つ。
 分割の際にボディから取り外す必要があるものはないので、そのまんまブチッと引っ張れます。
 なんでブチッ、かというと、ジョイントの構造上の都合です。
 やってみるとわかりますが、「パキッ」とか「カチッ」とかではなく、「ブチッ」なんですよね。
 この感触、結構クセになります。

 分割部分内側。
 まずはサイクロン(右半身)。
 こういった構造のため、腰の可動はまったくありません。
 首部分がかなり特殊な造りになっていますが、これについては後述。
 腹部周辺にある凸ジョイントが、左右を繋ぐための重要部分にして、先の「ブチッ」の音源。

 今度は、ジョーカー(左半身)側。
 首部分は、右半身と完全な対象構造になっています。

 左右ボディを固定するのは腹部周辺のジョイントのみではなく、Wの中心線(銀色のライン)沿いに薄いガイド状のジョイントがあり、これが噛み合うことでズレを抑えています。
 サイクロン(右半身)からは腹部のジョイントが伸び、ジョーカー(左半身)からはガイド状ジョイントが伸びていて、それぞれに各々の「受け」があるわけです。
 言うまでもなく、これらは他のフォームでも同様の構造です。

 今度は、首可動の構造について。
 これは、首を下方向一杯まで曲げた状態です。
 かなり顎を引けます。

 続けて、上方向一杯まで上げた状態。
 こうして見るとあまり上がっていない印象がありますが、実際にはそれなりです。
 ただし、飛行ポーズを取るウルトラマンほど上げる事まではさすがに不可能。
 そこまで上げる必要はないのですが、念のため。

 撮影角度を変更して、今度は右方向一杯まで動かしたもの。
 赤い矢印が指している丸い部分に注目してください。
 ここが、頭部の横方向可動を司っている部分です。
※画像は、可動時の変化を判りやすくするため、若干影を強調しています。

 続けて、首を左向きに一杯まで動かした状態。
 首パーツ上部が囲んでいる丸いパーツが左右にずれることで、首が横方向に可動する理屈です。
 筒状ジョイントとボールジョイントの融合みたいな理屈でしょうか。
※画像は、可動時の変化を判りやすくするため、若干影を強調しています。

 こんな構造のため、首の上下方向可動幅が広い代わりに、頭部の横方向可動は著しく狭くなるという欠点が生じてしまいました。
 画像は、左右半身を合体させた状態で、それぞれの方向に限界まで動かしてみたものです。
 右向き・左向きについては、顎と喉の銀ラインのズレに注目してご参照ください。

 構造上やむを得ないとはいえ、この可動制約のためポージングの際は表情付けが大変困難です。
 「さぁ、お前の罪を数えろ!」のポーズは、それっぽいものには出来る程度で事実上は再現不可と考えていいでしょう。
 もっとも、本商品はS.H.フィギュアーツ等とはコンセプトが根本的に異なるものですから、あちらと同じようなグレードを求めるわけにはいかないでしょう。
 とりあえず、今後の購入を考えている方は、こういった「どうしようもない特徴」が存在するという事を予め理解しておく必要があると思われます。

 基本構造については、だいたいこんな感じ。
 続けて、サイクロンジョーカーを細かく見ていきましょう。

 まず頭部。
 複眼はメタリックレッド塗装でクリアではありません。
 ツノは当然軟質素材。
 造形については、側面部のウロコ状モールドの凹凸がやや強調されすぎな感もありますが、概ね良いバランスです。
 少なくとも、現時点のS.H.フィギュアーツの改修試作品画像を見る限りでは、こちらの方が本編のイメージに近いです。

 分割機構の都合なのか、中心線がやや窪み過ぎています。
 左右のサイクロン(ジョーカー)ラングとの段差が若干気になります。
 ダブルドライバーも、設定とは違い左右分割式。
 最初はどうしてここまで分割する必要があるのかなと疑問だったのですが、よくよく考えると左右のメモリの色も変えなきゃならないんですよね。
 塗装はかなり簡略化されていますが、造形はなかなか細かいです。
 ガイアメモリの色分けもわかりやすくなっています。

 右腰には、マキシマムスロットもしっかり装備。
 残念ながらガイアメモリは取り外しできないので、ここも単なる飾りになっています。
 プレイバリューには全然支障はないですけどね。

 ウィンディスタビライザーはPVC製で、少々小さすぎという印象。
 もう少しだけ長くて幅広いと良かったのですが。
 ここは自作・改造派の人大活躍のポイントでしょうか?

 写真ではチープトイで良く使われるプラ色丸出しの成型色っぽく思えますが、実はほんのりラメが入ったものが使用されています。
 「装着変身・仮面ライダー王蛇」のマスクパーツや、「超合金魂ガンバスター」のプラパーツのような材質です。
 そのため、個体によっては模様が渦状になっている部位があるかもしれません。 

 「ジョーカー! マキシマムドライブ!!」
 サイクロンジョーカーの決め技にして、本作の異質さを最も色濃く表現するメモリブレイク(ドーパントのガイアメモリ摘出・破壊技)。
 魂STAGE等の台座を利用すれば、簡単に再現可能です。
 というか、これをやるのも分割機構の目的の一つなんでしょうけど。

 「ジョーカーエクストリーム!!」
 誰もが驚いた“本当に左右に割れちゃう”ライダーキック。
 インパクトはあるものの、大変かっこ悪いと話題の必殺技です。
 写真の通り、気味悪いほど完璧に再現可能。

 こういう時に、悪役はとっても便利です。

 パッケージによりますと、WFCシリーズは前番組「仮面ライダーディケイド」の商品「FFRシリーズ」との関連を強調しています。
 なんだか、マグネモ11の「バラタック」に対する「バリアントアンカー」みたいな雰囲気ですが。
 しかし、実際に並べてみるとWFCの方が背が高く、まるで門矢と小野寺の如き身長差が発生してしまいます。
 なぜか写真はサイクロントリガー。

 とりあえず、「FFR仮面ライダーブレイド」をブレイドブレードにしてルナメタルに装備させてみました。
 この状態だとやっぱり自立は厳しいので、ちょっぴり工夫が必要かも?
 身長差はともかく玩具仕様はかなり似た雰囲気なので、飾り方次第では悪くないかもしれません。
 キバアローみたいに支えがある物や、アギトトルネイダーのような搭乗型のFFRは、組み合わせたら面白いかもしれません。

 S.H.フィギュアーツ「仮面ライダーディケイド・コンプリートフォーム」と、ヒートジョーカーの比較。
 実は、身長はこちらの方に近いです。
 しかし、さすがにパーツやディテールの細かさが段違いなので、違和感はどうしても拭えませんね。

 ちょっぴり映画ネタバレ。
 Wに「ちょっとくすぐったいぞ」。

 WFCシリーズは、単品だと単なる「可動率の低いアクションフィギュア」に過ぎないので、ぶっちゃけあまり面白くありません。
 しかし、別商品を購入するほど面白みが増してきます。
 一つより二つ、二つより三つという感じで。

 というわけで、次は「ヒィィトォ!」「メタルゥ!!」

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