第24回 ■ バンダイ 装着変身「仮面ライダーカブト」
2006年5月1日 更新
2006年度新ライダー「仮面ライダーカブト」の装着変身シリーズは、アギト以降随分と久しぶりだった「換装ギミック型」。
一つの素体に二つの姿!
ああ、なんか懐かしいなあ、こういうの。
なんだか世間では、これが結構評判悪いみたいだけど。
てな訳で、遅くなりましたがカブトです。
なお、同時発売だった「牙狼〜GARO」の装着変身は、このコーナーでは取り扱いませんので、予めご了承ください。
え、なんでかって?
うん、単に作品が嫌いなだけ。
商品の出来が良いのはわかるけど、さすがにレビューのために欲しくない玩具を買う気まではないもので…ごめんなさい。
●バンダイ 装着変身「仮面ライダーカブト」 定価3,150円(税込)
- カブト素体フィギュア
- カプト無可動素体(展示用)
- カブト・マスクドフォーム頭部(マスク)
- カブト・マスクドフォーム肩アーマー×2
- カブト・マスクドフォーム左上腕アーマー
- カブト・マスクドフォーム左前腕アーマー
- カブト・マスクドフォーム右上腕アーマー
- カブト・マスクドフォーム右前腕アーマー
- カブト・マスクドフォーム胸アーマー×1
- カブト・マスクドフォーム用拳×2
- カブト・ライダーフォーム頭部(マスク)
- カブト・ライダーフォーム肩アーマー×2
- カブト・ライダーフォーム左上腕アーマー
- カブト・ライダーフォーム左前腕アーマー
- カブト・ライダーフォーム右上腕アーマー
- カブト・ライダーフォーム右前腕アーマー
- カブト・ライダーフォーム胸アーマー×1
- カブト・ライダーフォーム用拳×2
- カブト太腿アーマー×2
- カブト脹脛アーマー×2
- カブトゼクター・マスクドフォーム用×1
- カブトゼクター・ライダーフォーム用×1
- カブトクナイガン・クナイモード×1
- カブトクナイガン・グリップ部×1
- カブトクナイガン用ホルスターパーツ
- 専用台座×2
- シール×1
- 取扱説明書
2006年3月25日、装着変身「牙狼〜GARO(注:別作品のキャラクター)」と同時発売。
仮面ライダークウガ(2000年)、仮面ライダーアギト(2001年)に並ぶ換装型装着変身で、新生版になってからは初の試みとなる。
本編のギミックとは異なるが、「マスクドフォーム」と「ライダーフォーム」の両方を再現可能。
●映像内のキャラクター
これを書いてる時点で、まだ1クールしか放送してないからなあ…
まだここを書く必要はないかもしんないけど、番組を見ていない人もおられると思うので、念のため。
2006年度作品にして、仮面ライダーシリーズ35周年記念として製作された「仮面ライダーカブト」の主人公。
今回は、最初から“最強”という売り文句を掲げているため、すこぶる強い。
絶対の自信と、それを裏付ける強さを併せ持つ、洗練されたヒーロー。
7年前、渋谷に隕石が落下したのと同時に出現し始めた「ワーム」は、人間を襲って擬態し、摩り替わって人間社会に広がっていくという、とんでもない能力を持っている。
しかも、擬態したワームを見分ける事は不可能。※
さらにワームは、蛹形態と成虫形態の二つの姿を持ち、成虫になると戦闘能力が高まるだけでなく、“クロックアップ”と呼ばれる超高速化まで可能となり、もはや人間の力では太刀打ちできなくなっていた。
対ワームを目的とした極秘組織ZECTは、ゼクトルーパーと呼ばれる特殊装備兵団を用いてこれに対処していたが、まったくと言って良いほど成果を上げられず、逆に被害を増やしていくばかり。
そのためZECT内では、新たに「マスクドライダーシステム」と呼ばれる、クロックアップへの対策能力を持つ新装備の開発が進められた。
完成したマスクドライダーシステムは、「ベルト」を装備した資格者(変身する元の人の意)が、「カブトゼクター」と呼ばれる小型メカをバックルに接続する事で発動し、「仮面ライダーカブト」を生み出す。
だがこのカブトゼクター、どうしたわけか資格者を「自分で選ぶ」性質があり、たとえベルトを装備していても資格なしと判断したら、その者の下へは絶対に行こうとしない(たとえどんな緊急時であろうとも、という徹底ぶり)。
ZECTのメンバー見習いである加賀美新(かがみ・あらた)がそのシステムを使おうとしたその時、突然姿を現した男・天道総司が、カブトゼクターを手に取ってしまう。
しかも、彼の腰には、唯一無二の筈のベルトが装備されている。
すぐ傍に居る加賀美の腰にも、同じベルトがあるのに…。
仮面ライダーカブト・マスクドフォームに変身した天道は、マスクドフォームのまま、超加速するワームを頭脳プレイで撃破。
手馴れた戦いぶりを見せるが、「ZECTのメンバーでない者がライダーになる事は許されない」という意志の下、天道はZECTと対立する事になる。
天道は、それでもまったく臆する事なくベルトを使い、次々にワームを撃破していく。
まだ明確になっていない筈の「キャストオフシステム」すらも熟知し、「ライダーフォーム」という格闘戦形態になる事をも知っている天道。
ワームの超加速能力に対抗するシステムとは、ライダー自体がクロックアップするというものだった。
だが天道は、その秘密をまるで最初から知っていたかのように使いこなす。
「振り向き様、居合い斬りのように蹴り抜く」という、まったく新しいスタイルの「ライダーキック」を必殺技として、天道=カブトは、ワーム・ZECTとの三つ巴の戦いを繰り広げていく。
※後に、擬態したワームを識別できるスコープのようなものが突如劇中に出現したため、この基本設定は崩壊した。
(無論、一部のファンからは手痛い指摘を受ける事になったが)
「天の道を往き 総てを司る」
…というエラソな能書きをたれるカブト資格者・天道総司は、「自分が世界の中心に立っている(と思うようにしている)」という、究極の自己中心的人物。
だが、妹をはじめとする他人への気遣いやさりげない優しさを持ち合わせ、また自身を隠そうとはしないというアンバランスさもあり、それが独特の魅力に繋がっている。
唯一例外的に、いまだ劇中に登場しない“おばあちゃん”なる存在を神聖視しているようで、何かあると「おばあちゃんは言っていた。交差点でタクシーを停めるのはいけない事だと」という感じで、教訓めいた台詞を述べる。
よくまあそんなに沢山覚えていること、と思わず笑ってしまうが、それなりに説得力のある事を教えられているようで、天道の人格形成には役立っている格言として機能しているようだ。
基本的な性格は沈着冷静で、しかもかなり度を越している。
こいつは果たして熱くなる事があるのだろうか、というほどの冷静さを維持しており、それがカブト時でも良い味として機能している。
特に、今までにない、囁くような「ライダー……キック」という掛け声は必聴。
天道は、設定にもはっきり書かれているほどの“ニート”であり、まったく職に着いていないが、あらゆる能力に秀でている天才型で、特に料理に対するこだわりはすごい。
妹・樹花(じゅか)の食事やおやつを精魂込めて作ったり、時には料理対決を行ったりする。
しかし、ビストロ・ラ・サルでバイトしているディスコミュニケーションタイプの少女・日下部ひよりの作る「鯖味噌煮」には敵わないようで、その味を盗もうとしたりと、妙に可愛らしい一面も持つ。
また、「天の道を〜」といういつもの口上を邪魔されて黙ってしまったり、ババ抜きに勝つためだけにクロックアップを使ったりと、コミカルな表情も稀に見せる。
本来ならば主人公的な性質になるであろう加賀美を翻弄する姿勢からか、一部では大変嫌われているようだが、基本的には、周りを一方的に振り回すタイプの自己中キャラではない。
確かに、対ワーム作戦のため強引極まりない行動を取る一面もあり、一時は警察すらも混乱させた事があるが、それらはすべて確実な成果に結びついていた。
ZECTに身柄を拘束された際も、尋問担当の岬祐月を翻弄する大胆さも見せる。
これらの行動は、天道嫌いの人には醜悪な一面として映ってしまう事も多いようだが、とにかく変わった味わいを持つ主人公に仕上がっている事には違いない。
彼がなぜ、昔から(最近開発されたばかりの筈の)ベルトを持ち、カブトゼクターを使いこなす事が出来るのかは、4月現在まだ劇中で語られていない。
とにかく、色々な意味で「変わっている」主人公だ。
なお天道は、加賀美が乗ってきたカブトエクステンダーを戦闘中に強奪。
その後、さも当然という態度でずっと乗り続けている。
自己中の鑑とは、彼のためにある言葉だろう。
蛇足だが、天道の「鯖味噌」に対するこだわりは尋常ではなく、一部では、カブト関連玩具以上の販促効果を発揮しているのでは、という説もある。
●概要
ここしばらく、装着変身レビューでは概要表記を記してなかったが、今回は久しぶりに書いてみたい。
「装着変身・仮面ライダーカブト」は、先に記した通り、マスクドフォームとライダーフォームのパーツを換装させる事で姿を変えられる、コンパチ仕様のアイテムだ。
そしてこれは、2004年度に発売された「仮面ライダー龍騎」以降の新生装着変身としては初の試みで、そのためか、旧型装着変身を知らないファンからは、様々な点が疑問視された。
- 価格が高い(2,100円から3,150円へUP)
- なぜ換装させる必要があるのかわからない(それぞれ別に出せばいいのでは?)
これが、主に挙げられた疑問点だ。
しかし、これらはいずれも、単にファンの認識の差から生じた些細なもので、問題でもなんでもない。
まず1だが、実は装着カブトは、高いどころかまだ割安な方だ。
こう書くと「ハア?!」と言い出す人が出そうだが、これは本当の話。
「仮面ライダーアギト」の「装着変身・仮面ライダーG3(当サイトでは未レビュー)」は、G3本体と武器4つが付属するだけで、なんと定価3,129円(税込)という価格だった。
言うまでもないが、この商品には換装ギミックなどまったくない。
「アギト3フォームセット」「G3セット」が3,129円で同額。
「ギルス」のみ、なぜか2,310円(税込)と安かったが、これはマスクと両前腕パーツしか差し替えパーツがなかったためだろうか?
その後の「G3-Xセット」と「アギト・バーニング&シャイニングフォームセット」も定価3,129円。
しかもこれらは、クウガの時にあった換装用アーマーを飾っておくための非可動素体がまったく入っていない。
なんと、使用していないアーマーは放り出しておくしかないのだ。
換装ギミックのないG3シリーズや、換装すべきパーツが少ないギルスはまだいいとしても、アギト各種にこれがないのは結構大きな問題で、当時ユーザーは、使用していないアーマーの収納方法に工夫を凝らしていた。
さらに、装着変身アギト3フォームセットは、入れる必要のない無駄パーツがいくつか含まれており(同形状の肩パーツが全部で4つも入っている)、微妙な割高感(というか底上げ感?)を覚えさせた。
このように、番組終了後に発売された、香港版逆輸入の「G4」「G3マイルド」「エクシードギルス」を別とすると、以前は3,000円台のものはごく普通に出ていた事がわかる。
また、現在の装着変身は、換装ギミックなしのもので一体2,100円というのが平均だ。
中には、ゾルダやサイガのような例外もあるが。
新生装着変身の中には、2,100円で武器が一つしか付いていないライアやガイ、王蛇などもあり、また無理矢理パーツを水増しされたベルデなどもある。
デルタなどは武器らしい武器すらない(デルタドライバーはあまりにも小さすぎて、他の製品付属の武器とは格差がありすぎる)。
そう考えていくと、可動素体は一体しかないものの、二体分の装甲が付いて3,150円なら、充分過ぎるほど適価だろう。
確かに、カブトシリーズのライダー(現時点で製品化が確定しているのは4人)総てがこの価格帯で出るというのは、厳しいかもしれない。
しかし、ここまでの装着変身シリーズと比較してみても、決して悪い買い物ではない筈だ。
装着カブトは、「キャストオフライダーシリーズ(以下COR) 仮面ライダーカブト」とほぼ同時に商品情報が公開され、当初は「今年はアクションフィギュアカテゴリが二つ!」と、大きな反響を生んだ。
しかし、肝心のキャストオフギミックはCORにのみ導入され、しかも専用バイク「DXカブトエクステンダー」はCOR対応という事で、だんだん装着変身の存在意義が見失われ始めてきた。
装着変身版よりも一ヶ月半以上早く発売されたCORは、可動部こそ少ないものの、劇中のキャストオフを大迫力で再現できるという事で、ファンの絶賛を浴びた。
そして対比的に、益々装着変身の注目度は低下していった。
ところが、CORM DXカブトエクステンダーのテレビCMが放送され始めた頃から、「カブトエクステンダーは改造次第で装着変身も乗せられるのではないか」という案が囁かれるようになった。
CMでCORカブトを搭乗させたカブトエクステンダーは、対比的に妙に小さく見えたからだ。
その流れから、CORと比べて小さいという事は、装着変身にはピッタリなサイズなんじゃないか? と考えるのは、自然な流れだろう。
バイクに乗せられる可能性が高まったという事は、それだけで注目度は上がる。
この辺りで、装着変身版はようやく注目度を回復してきたようだ。
実際に装着変身版が発売されると、細かな難点指摘はあったものの、そこそこ好評を博した。
この頃、ほぼ同時期にCOR「仮面ライダーザビー」も発売された事もあり、同シリーズのギミックに対する不満の声(あまりにも動かなさ過ぎる等)が大きくなり始め、その分、スタイル重視で動きまくりの装着変身版は、さらに少しずつ評価を高め始めた。
決定打になったのは、(リンク先でも触れているが)本来COR用だったカブトエクステンダーが、実質的には装着変身向けサイズだったのが確定した事。
逆にCORを乗せると、(CM映像の通り)バランスがプップクプーになった。
この「ひょっとして、はじめから装着用にと、狙ってたんじゃないか」とすら勘ぐりたくなるほどのジャストフィットぶりは、装着カブトのプレイバリューを一気に倍増させ、理想的な相乗効果を発揮。
これを書いている現在、一部のファンの間では、改造処理でCOR搭乗・固定用ジョイントを取り除いたカブトエクステンダーに、装着カブトを乗せて楽しむ事が、半ばデフォルトと化しつつあるようだ。
クウガ・ライジングセット以降、人型のディスプレイ台が付属したものはないので、これは物凄く懐かしい。
このディスプレイ用の素体、クウガの時と違って可動素体と同じような塗装が施されている。
また、肩アーマー接続部分などは、可動素体よりもゆるやかな造りになっており、アーマーの着脱をしやすくしている。
その他、各アーマーの保持力も充分で、しかも手首も換装可能なので、とても使い勝手が良い。
なんか世間では、このディスプレイ用素体の首が長くてバランスが狂う、などと文句を言う人が居るようだが、これは元々ハンガーみたいなものなんだから、そういう所に文句付けるのは筋違いだろう。
可動素体についても見てみよう。
装着カブト用の素体は、装着響鬼系以上にスタイルと可動幅が改善され、現状全シリーズ最強の逸品に仕上がっている。
過去の装着用素体すべての利点を持ち、さらに過去にない可動幅を確保しているため、もう動きがすごい事になっている。
腰は左右方向の回転だけでなく、響鬼系の前後スイングも加わり、バイク搭乗時に有効な「反り」が可能になった。
しかも、その可動幅も響鬼系以上。
さらに、両肩の前後スイングも可能。
この辺りはささやかだが、ポーズを付ける時に真価を発揮してくれる。
今回あらたに加えられた機構として、「肘の二重関節」「股関節の可動幅さらに拡大」というものがある。
この肘二重関節の威力は絶大で、なぜ今まで採用されなかったのかと悔しくなるくらい、ポージングの幅を広げまくっている。
肩に得物を担ぐポーズや、「いやぁごめんごめん、待ったぁ?」というポーズも簡単に付けられる。
また、顔の前に手や武器をそえるポーズもビシッと決まるようになり、すごく楽しめる。
また、肘に可動制約の大きいマスクドフォームも、この二重関節のおかげで、「さらにもう少し」の曲げが可能になり、大変重宝する(アーマーのかみ合いに気をつけないとダメだが)。
股関節の可動幅拡大も、想像以上の効果を発揮している。
歴代の平成ライダーのほとんどを演じられたスーツアクター・高岩氏は、脚を横に大きく開いて立つというポーズが大変さまになる(龍騎のファイナルベントなどがその一例)。
で、これに近い動きが装着変身である程度再現出来る様になったのだから、この意味は果てしなく大きい。
さすがに、氏と同じくらい開かせるのは難しいが、雰囲気再現くらいはそこそこ可能だ。
また、先にも触れた「CORM DXカブトエクステンダー」に乗せる際、最大の効果を発揮する。
実は、カブト以外の新生装着変身をカブトエクステンダーに乗せると、どんなに工夫しても尻が大きく浮いてしまい、ライディングポーズが決まらないのだ。
特に、股関節可動幅の狭い龍騎などは最悪で、見ていて悲しくなる。
バイクに乗せる際、腰の反りだけでなく、脚のロール可動でタンク部分を挟むのも重要になるのだが、それ以前に「挟むべき位置まで」脚を移動させなくてはならない。
ところが、カブトエクステンダーはシートの幅が大きすぎるので、脚の位置がそこまで至らない。
カブトの股関節可動幅はこれにきっちり対応し、尻をしっかりシートに置いた状態で、膝でタンクを挟めるようになっている。
装着変身は、もっともバイクに乗せるのが困難なフィギュアと言われており、特にオンロードタイプは鬼門だと思われていた。
しかし、これであっさりと問題をクリアしてしまった。
正確には、まだ微妙に尻が浮いている感があるが、充分許容範囲だろう。
足首も、しっかりフットペダルの位置に行くので、初めて搭乗させると感動する事必至だろう。
(※ただし、搭乗時にはシートのジョイントパーツを取り外す作業が必要)
残念なことに、足首のスイング幅だけは、他の素体に若干劣ってしまっている。
龍騎系や555系ほど足首を前方向に曲げられないため、フットペダルの位置に足首を置いても、ペダルをキックしているような角度には出来ないのだ。
まあ、細かい事ではあるし、それでも充分な可動幅だから度外視できるレベルの問題だが。
基本的なプレイバリューは、マスクドフォーム装甲とライダーフォーム装甲の換装で、付属のカブトクナイガンを持たせて様々なポージングが取れるという物。
フォームチェンジ時は、脚部側面部のアーマーを除きすべて交換しなければならないため(手首含む)、慣れてない人にはうざったいかもしれないが、そのおかげで充分な可動が確保出来ているので、決してマイナスポイントではない。
マスクドフォームの各装甲は、「下にまた別な装甲がある」という雰囲気を感じさせるため、全体的に厚ぼったく作られている。
背中側にぷっくりと膨らんだ胴体アーマーや、むくんだような手首は、なかなか良い質感だ。
肩アーマーも過剰なほど分厚いので、少なくとも「中にライダーフォームがないから薄っぺら」という事にはなっていない。
ここは、とっても嬉しい点だ。
マスクドフォームは、本編には出てこないカブトクナイガン用ホルスターが付属する。
いつもどこかから突然出現するカブトクナイガンだが、これできっちり装備できるようになったのはありがたい。
腰から下げるとややオーバースケール気味だが、手に持たせるとそんな違和感はないので、これはこれでいいだろう。
その構造から肘関節の動きに制約が付くものの、現状マスクドフォームのフィギュアとしては、格段によく動く。
カブトホーンの昇降ギミックから解放されているため、頭部もぐりんぐりん回る。
多少首周りが寂しい感があるが、これは装着変身のいつもの事だから、とりあえず指摘は避けておこう。
ただ、顔の造形(というかモールドの明確さ)に難があり、装甲の重複感に乏しいため、今ひとつ印象がパッとしないのはきついかもしれない。
マスクドフォームは、ゴーグル?周辺部がライダーフォームのものと共通なので、その周囲の装甲より一段引っ込んだ形状になっている。
だが装着変身版では、それがなくのっぺりしてしまっている。
装甲の隙間の再現までは求めないにしても、せめてもう少し、ゴーグル周辺が引っ込んでいるような形状になっていてくれれば、と思う。
また、モダンで立派なオヒゲ……にしか見えない塗装も、賛否分かれるところ。
このマスクドフォーム、リペイント技術のある人なら、パイプ部分に手を加えたりするだけでかなり印象が好転するようなので、試してみるのもいいかもしれない。
次に、ライダーフォーム。
大変すっきりとまとまったスタイルで、劇中の細いボディラインがしっかり再現されている。
残念ながら、ローテートからのカブトホーン昇降は再現されていないが(個人的には、無意味でもいいからこれだけは欲しかった!)、満足度は高いと思われる。
やや顔の形状が劇中のマスクと違う気がするが、目立つほどのものでもないし、マスクドフォームの差異よりは遥かにマシだ。
ゴーグル部分はブルーメタリック塗装で、とても良い雰囲気。
マスクドフォームのアーマーを取り去った腕には、板状の別装甲を接続させる。
脚部側面の装甲も着脱可能だが、これはマスクドフォームの時から付けっぱなしのままでいい。
素体の可動幅を活かし、ライダーキックの蹴り抜け姿勢を再現する事も可能。
ただし、さすがに劇中ほど脚は上がらない(それでも装着変身としては脅威なんだが)。
恐ろしい事に、脚を最大限に上げた状態でも、自然に片足立ちが出来てしまう。
以前、装着変身・仮面ライダーインペラーでも片足立ちが可能だと述べたが、今回はあれ以上にスムーズに立たせられる。
というか、多少接地面が傾いていても対応してしまうため、インペラーの時など比較にならない。
これは足首関節の保持力の強さも関係しているが、本当にすごい事だと思う。
文章にするとあまり良点が多く述べられないが、装着カブトの良さは「見ればわかる、手に取ればわかる」というもので、四の五の言う必要はないのかもしれない。
とにかく、13センチ前後のサイズから繰り出される、多彩なアクションを楽しんでいただきたい。
●問題点
だが、無視できない問題点も多数見受けられる。
まず素体だが、これだけ可動幅が広がったにも関わらず、なぜか首だけが、逆に可動幅を狭めてしまった。
なんと装着カブトは、首を下に向けられない。
俯かせる事が、まったく出来ないのだ。
これは、些細な事のようだが実際は深刻な問題だ。
「俯く」という動作は、様々な動きの中で“表情”を司る大切なもので、キックの時もパンチの時も、微妙な俯き加減が大きなウェイトを占める。
それが100%封じられているというのは、あまりにも痛い。
これでは、肝心のライダーキックも決まらないではないか。
あれも、微妙に顎を引いているからこそかっこいいのに!
これは、素体の襟部分のモールドが、喉元まで迫っているのが原因だ。
ここを大きく削れば首の可動幅は広がるのだが、実は思っていたほど大きな効果が得られない。
この部分のパーツが妙に分厚い上、首のボールジョイントを押さえている十字状の部分がさらに厚みを加えていて、始末に負えない。
なんとか丁寧に削れば、ちょっとだけ俯かせる事ができるようにはなるが、自信のない人は絶対に手をつけない方がいいだろう。
なお、首を上に向ける事については、特に問題はない。
カブトクナイガンにも、大きな問題がある。
なんと、ガンモードとアックスモードが、まともに保持できないのだ。
これはグリップ軸の太さが足りないのか、それとも手首の保持力不足(関節の強さではなく、手の中の空間密度)なのか断定はできないが、とにかくしっかり握るのが大変困難だ。
ガンモードは微妙に角度が狂う程度なので、まだ我慢はできる。
問題はアックスモードで、マスクドフォームの手首ではくるくる回転してしまい、刃部分がしっかり正面を向いてくれない。
ライダーフォームの手首だと、クナイモード時ならばしっかり持てるのだが、これは厳しい。
手首の保持力に対して、カブトクナイガンの重心が上の方に行ってしまうので、それが回転を生んでしまうのだろうか。
もう一つ、ガンモード→クナイモードに移行させる所にも難点がある。
クナイモードは、ガンモードから銃身部分を引き抜いて使用するのだが、刃部分はPVC製&塗装処理されている。
という事は、アレがあるのだ。
「癒着」が。
実際、筆者のものは、購入後二週間程度で引き抜くのが困難になった。
商品梱包時には、クナイモードは独立しているのでパーツに癒着する事はない。
しかし、これをガンモードの状態にさせ、長期間飾っておくのは、大変危険だ。
PVCに塗装したパーツは、皮膜が他部分にくっつく速度が異常に早い。
ヘタすると、無理に引き抜いたら刃部分がもげたとか、塗装がべりっと剥げたとか、とんでもない事態になりかねない。
安全基準の関係で、ここをプラパーツにできなかった事は理解できるけど…黄色い成型色のPVCそのままにすればいいのに…。
アーマー部分にも、いくつか無視できない点がある。
まずマスクドフォームだが、両腕の格子状のアーマーは上腕・前腕の干渉がかなり激しく、ヘタに腕を曲げられない。
格子状の部分が重なり合ってしまうためで、ヘタに無理をかけると折れるか傷が付くかもしれない。
少なくとも、塗装面への影響は深刻だろう。
まして、肘の二重関節のせいで無理が利く為、益々破損の可能性が高まる。
ここは気をつけないとかなりやばい。
その上、かみ合った前腕アーマーが、肘を戻した時に上腕パーツを引き剥がしてしまう事がある。
これは、上腕のパーツ保持力の問題ではない。
前腕パーツが、無理矢理引っ張ってしまうのだ。
これも、パーツ形状の問題。
パーツそれぞれのディテールは良く出来ているだけに、それが問題を起こしているというのは厳しい。
いわばデザインが影響を及ぼした結果とも言えるが、今後発売されるカブト系装着変身では、改善される事を祈りたい。
脚部アーマーを、わざわざ取り外し式にする意味があるのか、という意見もある。
カブトの両脚側面部の全4パーツのアーマーは、両フォーム共通のパーツで、しかもパーツというよりはモールドに近いものだ。
これまでの装着変身からすると、塗装処理か何かで済まされそうな感じなのだが、なぜか今回は丁寧に別パーツ化されている。
それだけならいいのだが、これはポージング時に外れやすいだけでなく、細かいためなくしやすいという問題もある。
気が付いたら、太腿のアーマー一つがなくなっていた、なんて事になりかねない。
これは、恐らく同様の処理がされている腕アーマー(マスクド→ライダーの換装の関係で、銀のライン部分を別パーツ化せざるをえなかった)に合わせた結果だと思われるか、ちょっと気を回しすぎたのではないかな、と思わされる。
ただでさえアーマーの換装をめんどくさいと感じる人達にとって、これは負担以外の何物でもないのだから。
そして、あらゆるプレイバリューを阻害する最大の難点。
カブトゼクターの、絶望的なまでの脱落しやすさ。
これはあまりにも酷すぎる。
カブトゼクターは、各フォーム用形態のものが二種類用意されているが、いずれも接続部の凸ジヨイントが浅く、しかも向きを間違わないように変型五角形(横長長方形の右上角を斜めに切ったような形状)になっている。
そのせいか、ジョイントそのものに充分な摩擦が働かないようで、個体によっては前屈みになっただけで落下する。
この保持力のなさは、過去最凶かもしれない。
しかも、カブトはゼクターも換装する必要があるため、うかつに接着する事もできない。
もはや瞬間接着剤でジョイントを太らせるか、強粘着両面テープ以外対策がないようだが、両面テープを使うにしても結構コツが要るので、ただ切れ端を詰め込むだけというわけにはいかない(ヘタするとゼクターの方にくっついて出てきてしまうため)。
さらに、ゼクターの飛び出した角が指に引っかかり、せっかく保持力を高めたのにまた外れ易くなってしまうという難点まで付いてくる。
これは…なんとも困ったものである。
角についてはデザインの問題なのでやむをえないが、この外れやすさは充分欠陥レベルの酷さなので、再版する事があれば、是非とも改善していただきたいところだ。
もし、お手持ちの物のゼクターは滅多に外れない、というのなら、それは大変貴重な個体なので、是非とも大事にしていただきたい。
●カブトゼクター脱落対策
あまりにも酷いカブトゼクターの脱落っぷりだが、これをある程度緩和できる恐らく最良の方法と思われる方法がある。
それは、「装着変身・仮面ライダーガタック」の可動素体下半身とカブトのそれを交換するというもの。
カブト素体とガタック素体は、顔の色と肩の構造以外ほぼ共通なので(正しくは、ベルト周辺の塗装も若干異なる)、移植しても大きな違和感は生まれない。
ガタック素体のゼクター保持力はかなり高めのため、完全とはいかないがカブトゼクターはかなり保持力が高まる。
ただし素体をそれぞれ一度分解しなければならないので、くれぐれもネジ頭をバカにしないように気を付けて。
中には結構固く締まっているものもあるから。
ちなみに、非可動素体も同様の交換で改善できるが、こちらは分解の必要はなく、ただ両腕を引っ張って抜いて差し替えればいい。
というか、非可動素体はネジを全部外してもベルト部分で前後パーツが接着されているため、そもそも分解ができないのだ。
なお、カブトゼクター保持力強化に「瞬間接着剤使用」「両面テープ使用」「ビニールの切れ端を挟む」という方法もあるにはあるが、ゼクター接続部のジョイント構造のせいで、これらはかなり失敗要素が高いようだ(事実筆者は、両方試したがあまり満足の出来る結果を得られなかった)。
凹ジョイントの深さが足りないため、軸を太らせてもすぐに外れてしまうようだ。
なので、もしどうしても満足できないようなら、一度この方法をおためしアレ。
「でも、これ用にガタックをもう一つ買うのもなあ」という声も聞こえそうだが、たまにamasonで58%オフ(送料込みで1700円以下)で売られたりする事があるので、財布が許すようならチェックしてみる価値があるかもしれない。
或いは放送終了後の安売りを待つ、とか…?
以前、8/31頃に装着変身カブトの再販が発売され、それによりゼクター保持力が改善されるのでは、という期待がもたれたが、残念ながらこの時期の再販は結局なかったようだ。
そのため、筆者はあえて差し替えに踏み切ってみた次第。
筆者同様、装着変身カブトは気に入ってるんだけど、この一点だけがどうしても許せないという人は、一考してみる価値があるのでは?
●総合評価
出来が良く、大変遊べるアイテムなのは間違いない。
ただ、難点が無視出来ないほど大きくしかも深刻なので、これから購入するという人は予め覚悟を決めておく必要があるだろう。
それさえユーザーが許容できれば問題は解消だが、果たしてそんな処理が求められる商品が「完成度が高い」といえるのかどうか。
筆者としては、正直疑問だ。
難点そのものは数が少なく、良い点の方が圧倒的に多い。
しかし、よりによって目立つポイントにばかり難点が集中している。
これは、判断が実に難しい。
結局は、購入者が商品を気に入るか否かが重要なわけだが。
あえて無理矢理、筆者が点数付けさせてもらえるなら、良点を最大限考慮したとして、100点中80点というところだろうか。
だけど、もっと低い点数をつける人や、多く付ける人も居るだろう。
もっとも、CORM DXカブトエクステンダーがそのマイナス分を補って余りある要素である事は、絶対に間違いない。
一応、装着変身カブトに対する別な見解も記しておこう。
先にも少し触れたが、装着変身カブトは、一部ではかなりの酷評を受けている。
これは、価格や換装ギミックの事ではない。
ここで述べてきた事以外に、「プレイバリューがない」とか「全体的に出来が悪い」という評価もあるのだ。
これらは、今回のレビュー内容と著しく矛盾する見解だ。
しかし、これはこれで確かに納得させられる意見でもある。
仮面ライダーカブトは、デフォルトで二つの姿に変わるという特徴を持ってはいるが、逆に言えば、それ以外玩具にフィードバックできそうな独自性を持っていない。
カブトクナイガンがあるにはあるが、今やライダーが武器を持っているのは普通の事だし、カブトクナイガン自体に大きな目玉要素が含まれているわけでもない。
本編内最大の特徴「クロックアップ」は、玩具で再現できるわけではないし、使用中に外観が変わるわけでもない。
という事は、装着変身や各種アクションフィギュアに慣れれば慣れるほど、装着カブトに「大きな魅力」が感じ難くなる危険もある。
事実、筆者も購入前は似たような懸念を抱いていた。
言うまでもない事だが、別に装着カブトが「装着シリーズ中もっとも遊べないアイテム」であると言いたいわけではない。
それどころか、カブトより遊べない装着変身なんか山ほどある。
だが、商品購入時に、わざわざ過去のシリーズのプレイバリューを思い出して比較検討する人も、ほとんどいないだろう。
だから、もし「ただ換装させるだけじゃなあ」という気持ちを抱いてしまった人は、現物を手に取る前に気分が萎えてしまう事もありうる。
これだけシリーズのラインナップが増えれば、そういう見解が生まれても不思議ではない。
「出来が悪い」と判断する意見はどうだろう。
確かに、装着変身カブトは本編の撮影用スーツ・マスクと比較すると、違和感がある。
だから、単純比較で装着変身のバランスの悪さを見咎める人は居てもおかしくない。
しかし、元々装着変身は、リアルなプロポーションを再現する商品ではない。
アクションフィギュアという前提があり、そこに、プロポーションが付加されているのであって、それぞれの要素の優先度が違う。
玩具の安全基準に基づく耐久性確保のため、マスクは分厚くなり、その結果素体の頭部は小さくなり、胸アーマーは少し大きくなる。
肩アーマーは、容易に割れたりしないように分厚くなり、その結果、素体の肩の位置が若干下がる。
上腕と前腕に、それなりの大きさのアーマーを取り付けるため、どうしても腕が長めになる。
その他、様々な条件を満たした上で、製品化しなければならないという大前提がある事を忘れてはいけない。
その上で、出来る限りプロポーションを良くまとめようとする工夫が成されているわけだから、多少の差異は容認出来る範疇ではないだろうか。
塗装によるイメージの変化とか、そういう部分は確かに問題だと思うけど。
よく、玩具で「ここがこうだったら、もっと良かったのに」という意見があるし、筆者もそのように書く事がある。
しかし、冷静になって考えてみれば、「なぜそのような処理にせざるを得なかったのか」という視点で考える必要もあるのではないだろうか?
例えば、COR仮面ライダーカブトにあった「無意味な前腕回転ロール軸」も、同一構造のCOR仮面ライダーザビーが出て、「ライダースティング時の角度調整」を前提として作られたものと解釈すれば、疑問は氷解し、無意味どころか有意義さが見えてくる。
このように、見方を変えれば納得できる場合もあるのだ。
今回の装着変身カブトと、それを巡る意見を眺めて、ふとそんな事を考えさせられた。