第2回 ■ バンダイ 装着変身「仮面ライダーサイガ」&「デルタ」

2004年12月31日 更新

 2003年4月にて更新終了を告知しておきながら、「気分屋な記聞」にていけしゃあしゃあと16回も連載を続けてしまった「玩具あり」。
 その後紆余曲折ありまして、やっぱり連載を再開する事にしました!
 
 相変わらず、旬の玩具を取り扱ったりはせず、あくまで筆者のお気に入りだけを不定期でピックアップしていく形を貫かせていただきますが、よろしくお願いします。
 今回は復活記念という事で、珍しく二本用意してみました。
 というわけで、こちらは二つ目。

 今回取り扱うのは…

バンダイ装着変身「仮面ライダーサイガ&仮面ライダーデルタ」

 今度は、「仮面ライダーファイズ」の登場ライダー。
 G4、リュウガに続く、劇場版オンリーライダーとしては三体目の商品化。
 さて、その出来映えはいかに…?

●バンダイ 装着変身「仮面ライダーサイガ」 定価2500円

  • サイガ素体フィギュア
  • サイガ頭部(マスク)
  • サイガ肩アーマー×2
  • サイガ胸アーマー×1
  • サイガドライバー(サイガ用ベルト)
  • サイガフォン(携帯型)
  • サイガフォン(ブラスター形態)
  • トンファーエッジ×2
  • フライングアタッカー
  • 取扱説明書

 2004年12月11日、装着変身「仮面ライダーデルタ」と同時発売。
 「仮面ライダーファイズ」系装着変身としては、3または4番目の商品。
 なぜか、これだけ説明書がビニールに入っていない。
 フライングアタッカーがあるせいか、今のところこれだけ価格が高めに設定されている。
 それについて、各所で非難囂々なんだけど…フライングアタッカーと500円、そんなに不釣り合いか?
 筆者は適価だと思うんだけどなあ(わりかし本気)。

●映像内のキャラクター

 2003年8月16日公開「仮面ライダー555・パラダイスロスト」に登場した、劇場版のみの仮面ライダー。
 オルフェノクにほぼ征服されつつある世界において、その中核に位置するスマートブレイン社が開発した「帝王のベルト」。
 その一つ「天のベルト」サイガドライバーを使い、レオという青年オルフェノクが変身した仮面ライダーが、サイガ(315とも表記される)である。
 555や913とはかなり異なるコンセプトと性能を持っているようで、フォトンブラッドの出力も555の二倍に設定されている。
 オートバジンやサイドバッシャーのようなビークルモジュールは持たないが、専用ユニット「フライングアタッカー」を装備する事で、自在に空を飛ぶ。
 また、このフライングアタッカーを変形させた「フォトンブラッド砲(ブースターライフルモード)」や、操縦グリップ部分を引き抜いて使用する「トンファーエッジ」を武器として使用する事も可能。
 また映像化はされていないが、パンチ技「スカイインパクト」や、超高度からの飛翔キック技「コバルトスマッシュ」という技も持っている。
 その戦闘能力はかなりのもので、幾度も人間解放軍やファイズを翻弄する。
 全身が白く、また日本語を話さない(役者が外人)という珍しい仮面ライダーとして注目を受け、さらに「一つ目」を連想させる独特のマスクも相まって、これまでにない斬新な「悪のライダー像」を打ち立てる事に成功した。
 また、全身を駆け巡るフォトンストリームが袈裟懸け状に配置されているのも特徴で、ファイズ登場ライダーの中では珍しく、正面が左右非対称デザインとなっている。
 正確にはほとんどの555系ライダーが左右非対称なのだが、サイガほど明確ではないのだ。
 また、サイガの能力は使用していないが、レオ自身は草加雅人(913に変身)を殺害している。
 最終的には、スマートブレイン社の巨大ドーム内の対555戦において、エクシード・チャージしたファイズエッジの一撃をベルトに食らい、崩壊してしまった。

 なお、オルフェノク・レオの変身体は劇中には登場していないが、当初はライオンオルフェノク(劇中では別の存在になっている)の予定だったというのは有名な話。
 レオを演じたのは、アメリカ出身の香港人俳優ピーター・ホー(何 潤東)。

●概要

 2004年6月から、毎月連続で出続けている「装着変身」シリーズの、第六期販売商品。
 クリスマス商戦の関係か、この12月販売分のみ、やや早い時期に売り出されたようだ。

 仮面ライダーサイガは、あまりフィギュア化に恵まれていなかったキャラクターで、今回の装着変身が初めての本格的なフィギュア化になる。
 当然、その期待度はかなり高く、商品化がアナウンスされた直後は各所で話題になっていた。
 この後に紹介する「仮面ライダーデルタ」の方は、あまり大きな期待の声は聞こえていなかったように記憶しているが(個人的な印象なんで間違っていたら失礼)、とにかく、この12月発売分装着変身の主役は、間違いなくサイガの方だった。
 G4の時もそうだったが、やはり、劇場版限定ライダーの商品化は、無条件で嬉しいもの。
 まして、完成度の高まった新生装着変身で出るのだから、当然期待感は強まるだろう。
 ネット上ではじめて画像が公開された時は、装着555の素体の上に新造形部分の装甲が着いているものだった。
 しかも無彩色だった事もあり、完成品の予想は付き難かった。
 とはいえ、フライングアタッカーも付属するという事で、期待感が損なわれる事はなかった。

 そう、この時点では…。
 だが実際に発売された後、この装着サイガは、酷評の嵐に晒される事になる。

●セールスポイント

 装着サイガは、全体の完成度が高く、またプレイバリューも豊富で大変お買い得感が強いアイテムだ。
 ここでツッコミを入れたい人、ちょっと待ってね。

 まず、何よりもフライングアタッカーとの関連プレイバリューが楽しい。
 サイガの基本姿勢ともいえる「肘を直角に曲げて操縦桿を握り、直立する」スタイルが、実に様になっている。
 また、この状態からライフルモードへの移行や、トンファーを引き抜く事も可能だ。
 実際にこれをやると、トンファーの材質の柔軟性に助けられている事に気付かされるが。

 さらに、トンファーを構えて様々なカッコイイポーズが付けられるのも嬉しい。
 これは、間違いなく新生装着変身の素体のおかげだ。
 足首の可動範囲の拡張と、肩アーマーが腕の可動に干渉しないという特徴が、最大限に活かせる。
 右手側のトンファーを良く見ると、ご丁寧にミッションメモリーのモールドが刻まれている。
 サイガフォンを変形させたフォンブラスターを構える姿もなかなか決まっており、色々なところに細かな感動が詰まっている。

 残念ながら装着サイガも、装着555同様に首が短く見えてしまうという難点がある。
 ややマスクが大きすぎるような気がするが、素人考えで、もう少しだけ全体を小さく作れれば、結果的に首の長さも確保できるような気もする。
 しかし、装着カイザ同様胸アーマーに襟パーツがあるため、これのおかげで首の短かさが幾分か緩和されるような気もする。

 これはサイガに限った話ではないのだが、装着変身のマスクは…多分、これが限度のサイズなんじゃないかなと推測する。
 もちろん、物理的にはもっと小さく出来たのだろうけど、玩具の強度を考えた場合、パーツ自体にある程度以上の厚みが必要になってくるのだろう。
 そう考えると、「理想通りのサイズだが壊れやすい」「やや理想から外れるが壊れにくい」の二択問題になり、後者が選択されるのは仕方のない事だろう。
 個人的にはその方がありがたいので、ここは我慢してかかる事にしようと思う。
 もっとも、マスクのサイズがあまり気にならない装着変身もあるので、やっぱりこの辺は工夫次第なのかも…難しいなあ。

 装着サイガもパーツ各部で色が違い、これが問題点として指摘されている。
 確かにそうだし、後に詳しく触れる事にするが、ひとまずここでは「素体ボディカラーと胸アーマーについては、ほとんど問題なし」と唱えておきたい。
 もちろん、それは万人に対して言い張れる事ではないが、そこはそれ、実際に装甲部分とスーツ部分とでは材質が違うのだから、玩具上でも質感を統一する必要はないという割り切りだって出来るのではないか。
 そんな風に、筆者は考えてしまう。

 ちょっと脱線するが、昔「セーラームーンの衣装の一部は、装甲か衣服か」という議論があった。
 つまり、セーラー戦士各位の襟下からアンダーバストの辺りにかけてを覆う部分と、ウエスト下部からプリーツスカートの上部をぐるりと取り囲んでいるチューブ状のパーツは、布として判断していいものなのだろうか、という疑問から発生した話題だ。
 もっと細かく言えば、肩と肘部分のジャバラ状パーツに対しても、同様の指摘が出た。
 アニメを見ている限りでは、質感が把握できないのでハッキリわからないが、セーラームーン系コスプレイヤーの間ではそれぞれの解釈が存在したようで、「装甲っぽく作る人」もいれば「布地のままで作る人」もいた。
 結局、細かな再現性よりも実際に着て動く際のメリットを考慮して、「装甲派」も布地を使って妥協していた部分があったようだが。
 またコスプレイヤー以外でも、絵描き系の人の中でこの辺にこだわっていた人は多かった。
 だが、どちらにしても遠目には「白一色」である事は変わりなく、質感が明確に判別できるわけではないので、結局どちらでもいいじゃん、という雰囲気で話が落ち着いた感もあったのだ。
 実写版セーラームーンでは一応胸部は(軟質系の)装甲という雰囲気でまとめているようで、質感がはっきり異なっている。

 閑話休題。

 こんな風に、装着サイガの彩色差も、パーツごとの質感という事で理解すれば、そんなに気にはならないように思える。
 仮に、素体と同様の質感が胸アーマーに施されていた場合、逆にチープに見えるのではないかという懸念もある。
 まあ、こればっかりは「実際に見てみないと」断定は出来ないけどね。
 ちなみにこの胸アーマー、裏側まで丁寧に艶消しホワイトが塗装されている。
 特に意味はないんだけど、ちょっと感動した。

●問題点

 プレイバリューに恵まれた装着サイガは、反面、再現性の問題を多く指摘された。
 リアルな造形と塗装を求めるタイプのユーザーにとって、これはどうしても我慢できない部分だったらしい。

 よく見かけた問題点指摘の内容は…
 「フォトンストリームの色が違う」「ゴーグル部分の塗装はみ出しが多い」「ゴーグル部分の塗装がやぼったい」「ゴーグル下部の銀色の縁取り塗装がオミットされている(パッケージではしっかり塗装されているのに)」「艶有りと艶消し塗装が混在している」など、もう言われ放題。
 正直、個人的に気になったのは「ゴーグル下部の銀色の縁取り」だけだったが、だからと言って「そんな細かい事いちいち気にするなよ」などと言い切るつもりはない。

 全身を走る青いフォトンストリームは、劇中だと濃い青紫といった印象で、この商品ほど明るいブルーではない。
 ここが、一番目に付く問題箇所かもしれない。
 しかも、色が違うだけでなく、フォトンストリームのモールドのエッジ部分(段差の角)まで充分に塗装が施されていないように思える。
 そのため、肩口などをよく見ると、塗りがはみ出しまくっているように見えて悲しくなる。

 また、クラッシャー部やゴーグル周辺の銀色部分に墨入れがされていない事もあり、これまたかなりチープな印象を与えている。
 でも、なぜかパッケージでは、ゴーグル周辺にはきっちり墨入れが施されていたりする。
 とにかく、パッケージの写真と実物にかなりの違いがあるため、実物を手にするとかなり違う印象を受けてしまうのは間違いないようだ。
 かと思うと、パッケージのフライングアタッカーに一杯付いているネジ穴が、商品にはまったくなかったりと、良い部分もあったりする。
 うーむ、複雑な心境。

 先に、胸アーマーと素体ボディのカラーリングの差は特に問題なしと書いたが、マスクパーツと肩アーマーだけは、正直首を傾げる。
 表面に光沢のない、かといって完全な艶消しでもない、中途半端な色合いの素材が使用されているためだ。
 せっかく、ボディは良い感じで手が入れられているのに、肩と頭だけがチープトイっぽく見えてしまうので、なんかちぐはぐな印象を受ける。
 これは、装着ライアの「胸と肩の色合いが違う」というのに、とてもよく似た問題だ。
 幸い、見た目の印象に反して硬度はしっかりある材質のようなので遊ぶ分にはいいんだけど、こればっかりは、今後なんとかしてほしい。
 結構目立つ部分だからね。

 一見、特に大きな指摘のないフライングアタッカーにも、気になる部分がいくつかある。
 まず、操縦桿とブースター本体の回転が、おかしな連動をしてしまう事。
 これは実際にいじってみると分かるのだが、うまく操縦桿が前方向に倒れなかったりして、ストレスを感じてしまう。
 これは、両方の操縦桿の基部が、内部でつながっているために発生する問題だ。
 どうも、内部でつながっている操縦桿の「軸」に引っ張られて、本体や接続部まで動いてしまうのがまずいらしい。
 以前ガシャポンで発売された「仮面ライダーアクションポーズ」版のサイガは、左右の操縦桿が別なパーツになっていた事もあり、それぞれフレキシブルに動かす事ができた。
 普通なら、このようなタイプの可動が求められるのではないだろうか。
 別に、無理矢理中心軸を設ける必要性を感じないのだが。

 ブースターライフルモードに変形させた場合、もう一つの疑問点が浮上する。
 なんと、左右の銃身が並行にならないのだ!
 これは、かなり参った。
 パーツの一つひとつを見ると、こうなってしまうのも仕方ないかなという気もするのだが、もう少しなんとか出来なかったものか。
 よく見ると、通常時でも銃身がハの字になってるし。

 よく言われる「フライングブースターを装着すると腰が回せなくなる」というのは、筆者はさほど問題とは思っていない。
 というか、固定軸をベルトの裏側一つだけにしたら、フライングアタッカーの安定性なんか皆無になってしまう事だろうから。
 それに、飛行姿勢で腰を大きく回すのって、なんか違和感ない?
 それより、あの外れ易さはなんとかならないものか。
 操縦桿を前に倒そうとしたり、ブースターライフルモードに変形させようとすると、しょっちゅう外れるのは辛い。
 もうちょっとだけ、口径がきつければ…あるいは。

●総合評価

 装着サイガは、ネット上で情報をたどると、必ずと言って良いほど酷評にたどり着く。
 中には納得できる意見もあるが、ひどいのになると「新生装着変身中、最低の完成度」というものまである。
 だが、正直、これらの酷評を素直に受け入れてしまうのはどうかと思う。

 ここではっきりさせておきたいが、装着サイガは、玩具としてはかなりのプレイバリューを誇る優秀な商品だ。
 確かに、塗装面について難点は多々あるし、プレイバリューについても100%の納得を得るものではないだろうが、問題のいくつかはすぐに慣れて気にならなくなってしまうレベルのものだし、いつまでも気になって仕方がないというほど致命的なものでは決してない。
 何よりも、フライングアタッカーやトンファーエッジを絡めたプレイバリューの大きさは、群を抜いている。
 本来なら、白基調のボディは膨らんで見える傾向があるため、スマートさが損なわれやすい。
 しかし、なぜか装着サイガにはそれがなく、大変シャープな印象を与える。
 これは、透明感のあるホワイトを、素体のボディカラーに使用しているからではないだろうか。
 さらに、ブルーのラインが適度な引き締めになっている感もある。
 つまり、本来ならマイナスになるような要素が、プラスに作用しているという事だ。

 結局のところ、この装着サイガを良しとするか悪しとするかは、その人が玩具に求めるポテンシャルの違いに寄る所が大きいという事だ。
 プレイバリューやギミック優先で、多少の不具合なら目を瞑れる人なら良し、あくまでリアリティを追求し、ディスプレイ的な楽しみ方をする人には悪しなのか。
 そういう境界線が必要以上に色濃く出てきてしまった事が、この装着サイガの哀れな部分なのかもしれない。

 ただ、ここまで述べてきた事をすべて流して考えたとして、もう一つ気になる見方がある。
 それは、555系玩具に対する誹謗的意見によるダメ出しだ。
 皮肉な事に、この新生装着変身は、番組カテゴリによって肯定的・否定的な見解が交錯している。
 龍騎が好きな人は、555やブレイド系が好きになれないとか、その逆のパターンはよくある事。
 また、現行番組を無意識に至上のものとして判断する人も、少なからず居る。

 ただ、そういう人達のごく一部が、無根拠に「この商品はダメすぎる」と唱えているケースも多々ある事を、ご記憶いただきたい。
 つまり、そういった意見まで鵜呑みにするのは、危険だという事だ。
 できる事なら、商品を手に取って直接見て、良いか悪いかをその場で判断するべきだと思う。
 逆に言えば、それが困難な通信販売などを利用する場合、多少のリスクは覚悟する必要もある。
 ここまでに記してきた問題点のいくつかは紛れもない事実だから、いわゆる「ハズレ」を掴まされる危険があるし。

 こういった事は、これに限らず全てのものに言える事なのだが、装着サイガは、その判断基準をより求められる稀有な商品だったのかもしれない。

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●バンダイ 装着変身「仮面ライダーデルタ」 定価2100円

  • デルタ素体フィギュア
  • デルタ頭部(マスク)
  • デルタ肩アーマー×2
  • デルタ胸アーマー×1
  • デルタドライバー(デルタ用ベルト)
  • デルタフォン(グリップ型)
  • デルタムーバー
  • デルタムーバー固定用ホルスター
  • デルタムーバー・ミッションメモリー装着形態(ポインターモード)
  • デルタギアボックス
  • 取扱説明書

 2004年12月11日、装着変身「仮面ライダーサイガ」と同時発売。
 「仮面ライダーファイズ」系装着変身としては、3または4番目の商品。

●映像内のキャラクター

 番組をまったく知らない人に「仮面ライダーデルタって、どんな奴か」を説明するのは、とても困難だろう。
 なにせ、展開によって敵だったり味方だったりと位置付けが複雑な上、デルタギアを装着した人数だけでも、パッと思いつくだけで軽く9人以上はいたりするからだ。
 複数の人の手に渡った「ひとつの戦闘ユニット」に特化していたと解釈する事もできる。

 最終的に、元・流星塾生の三原修二の元に落ち着いたが、とにかく装着者によって性質が完全に異なるため、デルタのイメージを一言で言い表す事は難しい。
 ただ一言云えるのは、「少ない装備ながらも、かなり高い攻撃力を持っているライダー」という事だ。
 フォトンストリームが、各所に三本ずつ配されている事からもそれがよくわかる。
 なお、劇場版には未登場のため、サイガと対峙した場面はまったく存在しない。

 デルタドライバーは、913、555に先んじて製作されたベルトという設定で、人間・オルフェノク問わず誰でも装着する事が可能である代わりに、何かしらの条件を満たせていない者の精神を蝕み、攻撃的な性格へと変貌させてしまうという困った副作用を持っている。
 その条件は、ついに明確にされる事はなかったが、どうやら通常時の精神状態や元々の性格によって、結果が左右されるらしい。
 また、一度でもデルタに変身した事のある人間は、手から衝撃光を発する能力を付加される。
 ただし、これが恒久的なものなのか、人間だけでなくオルフェノクにも付加されるのかは、明確にされていない(というか途中で忘れられたっぽい)。

 変身のスタイルは、555や913とかなり異なっている。
 装着者は、グリップ型のデルタフォンを耳元に構えて、「変身!」と発声。
 音声入力を受け付けたデルタフォンを、右腰のデルタムーバーに差し込む事で変身実行・スーツが装着される。
 ファイズフォン他のように、ボタンによる入力でないのが画期的で、ジェットスライガーを召喚する場合は、「スリー、エイト、ツー、ワン」と声に出す必要がある(本編では、これを盗み聞きした巧555にコードを流用され、ジェットスライガー同士の対決に発展した)。
 
 基本武器は、デルタフォンと合体したデルタムーバー(デジカム型)。
 これを銃として使用する場合は「ファイヤ」と音声入力して、モードを切り替える。
 銃撃をメインに戦うが、肉弾戦能力もかなり高い。
 設定上、弾切れになった場合「チャージ」の音声入力で再チャージが可能(本編では未使用・ベルト玩具で再現)。
 必殺技「ルシファーズハンマー」は、ミッションメモリーを装着したデルタムーバーに「チェック」と音声入力、相手に向かって円錐型のフィールドを形成する光弾を撃ちこみ、そこにキックで突入・貫通して破壊する。
 
 三大主役ライダーの中では最強のパワーを秘めていながら、最終固定装着者・三原のせいでせっかくの強さはほとんど発揮されず、終盤に近づくほど没個性になっていくという悲劇に見舞われたライダーだった。
 適性がある=強い、とは限らないという事を証明した、とも言えるかも。

●概要

 2004年6月から、毎月連続で出続けている「装着変身」シリーズの、第六期販売商品。
 デルタは、過去にS-RHFとしても発売されているが、その設定上大変プレイバリューに乏しく、イマイチ遊びがいのないアイテムだった。
 また、S-RHFの関節可動率の問題もあり、ポージングもあまり良く決まらなかった。
 それ単体だとあまり喜ばれないアイテムだが、RCジェットスライガーS-RHFの555913らと組み合わせる事で存在が引き立つという、まるで付け合わせのような存在だったのだ。
 その割には、番組終盤にわずかにプレミアが付くなどの影響があったので、実質的にコレクターアイテム的な部分が強かったに違いない。

 で、新生装着変身としての発売が決まった頃、その反応は…確かに驚きと喜びの声はあったものの、「遊べなさそうだな」という不安の声も多々あったように感じられる。
 そりゃ、まあね。
 555や913と違って、オプションやツールがすごく少ないし。
 かといって、装着変身で555や913が出た以上、デルタも出てもらわないと格好がつかないという部分も間違いなくあるわけで。
 「こうなったら、素体の頭を沢山付けて“しょっちゅう変わる装着者”を再現できるようにすればいいのでは?」などという、建設的なんだか消極的なんだか、よくわからない意見まで飛び出していた。
 筆者も、実はさりげなく同感だったぞぉ。

 で、実際に発売された装着デルタ。
 その出来はほぼ予想通りだったせいか、「やっぱりな」的な意見が多かったようだ。
 サイガほど問題を指摘されたわけではなく、かといって、他の装着変身のようにもてはやされたわけでもない。

 ただ一点を除いて、装着デルタに関する話題は、あっというまに終息またはループに至ったようだ。

 だが、その一点が、すごいインパクトがあった。
 まずは、その「一点」をじっくりと見ていただきたい。

 正座して、真正面からじっと三分間くらい、なるべく瞬きを控えて見つめ続けていただきたい。

 筆者は、これがあっただけ装着デルタはS-RHFよりマシだったと真剣に思っている。

●セールスポイント

 とりあえず、今回はS-RHFといちいち比較しても仕方ないと判断したので、全体を大雑把になぞるだけにしてみよう。

 装着デルタは、結構手堅い造りでまとまっている。
 艶消しブラックと透明感のあるホワイトで統一されたボディは、なかなかの迫力だし、新生装着素体の可動率のおかげで、ポーズもガンガン決まる。
 また、デルタムーバーもS-RHFほど違和感のある構え方にならないので、スタイルが崩れる事もない。
 恐らく、塗装のはみ出しなども、そんなに多くはないのではなかろうか?
 断言は出来ないけど、筆者が店頭でいくつか確認した範囲では、極端な問題のある品は見かけなかった。

 さらに嬉しいのが、ゴーグル部の塗装がメタリックオレンジになった事。
 元々、デルタのゴーグルはオレンジ系配色なのだが、S-RHFでは「限りなく黄色に近いオレンジ」に塗装されており、壮絶な違和感があった。
 装着デルタは、マスクの曲面構成のおかげでグラデーション効果が発生し、劇中に大変近いイメージを得るに至った。
 さらに、元々が丸顔なため、555や913よりも形状に違和感がない。
 全体的に、かなり良い表情を出していると思われる。

 一番嬉しいのは、やはり「デルタムーバー」と「デルタフォン」が分離・合体可能という事だろう。
 S-RHFの時は、これらが完全に一体化していたため、なんとなく悲しかった。

 もちろん、商品コンセプトから考えてデルタフォンを分離させる必然性はまったくないんだけど、でも、それを求めてしまうのは人情だろう。
 今回、それが叶ったというだけで、素直に喜びたいところ。
 もちろん、エクシード・チャージ後のポインターモード版も付属している。
 そういえば、パッケージではデルタが構えているのはすべてポインターモードのため、所々使い方を間違えている場面があったりする。
 銃全体をつり下げるホルスターパーツは、S-RHF同様、一枚板形状になっている。

 555や913同様、ギアボックスが付属するというのも喜ぶべきポイントだ。
 残念ながら、全パーツを無理矢理収納する事は今回は不可能だが、それでも、三つのギアボックスが揃えられるというのは感動的だろう。
 このギアボックス類、それぞれ細かい部分が本編と異なっているのだが、元々オマケ要素的な雰囲気もあるアイテムなのだから、ここにまで精密さを求めるのはどうかと思う。
 まあ、あくまで個人的な意見だけどね。

 ともあれ、これで「三つのギアボックスを前にしてニヤニヤする草加君」を再現できるわけだ。

 …あまり嬉しくないなあ、それ。

●問題点

 先に述べておくが、「遊べない」「プレイバリューがない」というのは、装着デルタの場合欠点とはなりえない。
 これは、仮面ライダーデルタというキャラクターの設定上の問題であり、この商品固有の問題とは言えないからだ。
 なので、その辺を取っ払って考えると、意外に装着デルタには欠点がないように思えてくる。

 否、デルタフォンを本編のように耳元で構えられないという問題がある!
 手に持たせたデルタフォンを、腰のデルタムーバーに接続しづらいのも問題だろう!

 そんな声が聞こえてきそうだが、実は、これも装着デルタの欠点ではない。
 これは、装着変身の素体自体の可動率の問題なので、泣く泣く諦めるしかない部分なのだ。
 だから、ここを指摘するとなると、新生装着変身そのものの問題提示に繋がる。

 こうやって書くと「なんだ、じゃあ装着デルタは大変理想的な商品って事じゃないか」とも思えてくるのだが、そのままスムーズに繋がらないのが難しいところだ。
 なんというか、はっきり目立つ問題はないものの、微妙な不満点が積み重なって素直に褒められない、という部分が出てくるからだ。

 その一例が、先に写真を提示した「素体の顔」だろう。

 なんと、装着デルタの顔は「たっくんタイプ(555・龍騎・ブレイド他)」とも「草加タイプ(913・ナイト・レンゲル他)」とも違う、第三のバージョンなのだ。
 その髪型から「新・七三ヘッド」とも呼ばれている。

 かつて、装着変身がアギトシリーズを展開させていた頃、いわゆる昭和ライダー系が発売されていた事があった。
 Xとライダーマン、スカイライダー以降を除き、一号や二号のバリエーション違いも含めて多数商品化されたが、なんと、そのすべての素体の顔が「七三分けの髪型の没個性表情ヘッド」だったのだ。
 香港限定の「ショッカーライダー六人衆」などは、わざわざそのヘッドに、初期ショッカー戦闘員のようなペインティングを施してあった。
 これは、G3からG3マイルドまでの警察ライダー四体をそろえると、氷川誠が四人並んでしまうという事態よりも怖い。
 今回のデルタでは、あの「怪奇七三分け男」の恐怖が、再び脳内で蘇るかのようだったのだ。

 以下は筆者の分析だが、恐らく、これは555や913と並べられた時の事を考慮しての対応だったのではないかと考える。
 つまり、たっくんタイプと草加タイプの二種類だけで貫いた場合、やばりデルタを含めて三体飾った場合に違和感が出るのを懸念したのではないかと。
 そう考えれば、確かに555系主役ライダーはそれぞれの個性を主張できる。
 はたして素体の状態で飾る人がどれくらいいるのかわからないが、もし、本当にそういう配慮だったのだとしたら、それはそれで喜びたいところだ。
 七三にしなくてもいいような気もするけど。

●総合評価

 何はともあれ、筆者はこの商品が発売された事そのものを、素直に讃えたい。
 装備の関係で、他の装着変身と同価格帯である事に疑問が唱えられても、またほとんど遊べなかったとしても、やっぱり555系を集める人にとってデルタは重要なのだ。
 そこにきちんと応えてくれた、バンダイの気概を買いたい。
 悪い言い方をすれば、サイガよりもこちらの方が求められていた筈だ。
(サイガは、最悪商品化を諦めるという納得の仕方もあったわけで)

 さて、この装着デルタをRCジェットスライガーに乗せたらどうなるか…? という期待は同然の如く出てくるだろう。
 だが、残念ながら今回は、住宅事情の絡みでそれを実験する事がかなわなかった。
 ただ、やっぱりオーバースケールにあえぐ形になってしまうようだ。
 うーむ、試してみたかったな。

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■総括

 さて、主役格が揃ったという事で、当然次に555系で求められるのは「仮面ライダーオウガ」「ライオトルーパー」「555アクセルフォーム」「555ブラスターフォーム」になっていくだろう。
 それぞれに不安要素があるが、果たして「オウガ」の商品化は叶うのか? と、ファンは考えている。
 ただ、オウガは全身をコート状のもので包んでいる関係で、普通に考えたら装着変身にはもっとも向かない形状なのだ。
 仮に、コート部分を軟質樹脂で製作したとしても、それに合わせて素体の形状を変化させなければいけないし、なにより「癒着」が怖い。
 また、軟質樹脂や布を使用しても、結局その張力に関節が負けてしまい、せっかく取ったポーズが乱される恐れもある。
 ポピニカ魂のサイクロンが叩かれまくったのは、この理屈で一号ライダーのポージングが固定出来なかったためだ。
 とはいえ、サイガを出してしまった以上、ユーザーの熱望が止まる事はないだろう。
 バンダイが、どういうアイデアでオウガを作ってくれるのか…そこに期待したい。
 いや、その前に、商品化決定して欲しいけど。

 でも実は、オウガよりも「すべての形態に完全変形可能なブラスターフォーム」を出して欲しいんだけどね、筆者は。
 もう、S-RHFみたいに、ブラッディキャノンを背中にしまえない、飛行体勢も取れないってのは勘弁。

 

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