第11回 ■ バンダイ 装着変身「仮面ライダーベルデ」&「仮面ライダーオーディン」
2005年6月5日 更新
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2005年四月度の装着変身は、仮面ライダー龍騎スペシャル版にのみ登場した「仮面ライダーベルデ」と、TVでは十人しか出なかったにも関わらず“十三人目のライダー”を自称する「仮面ライダーオーディン」、そして別ページで紹介している『仮面ライダー響鬼』から「仮面ライダー威吹鬼」の三体。
R&Mシリーズ発売&未発売ライダーの組み合わせも、これで五番目。
残りはたった三人になったわけですが、どうやら全部揃うのはまだまだ先になる様子です。
●バンダイ 装着変身「仮面ライダーベルデ」 定価2,100円(税込)
- ベルデ素体フィギュア
- ベルデ頭部(マスク)
- ベルデ肩アーマー×2
- ベルデ胸アーマー×1
- ベルデ前腕アーマー×2
- Vバックル(ベルデ用ベルト)
- バイオワインダー(ホールドベント装備)×1
- ウイングランサー×1
- 装着変身サイズ・アドベントカード×3
- アドベントカード用シール
(3枚分裏表・計6枚) - 取扱説明書
2005年4月19日、装着変身「仮面ライダーオーディン」と同時発売。
「仮面ライダー龍騎」系装着変身としては、9または10番目の商品。
TV媒体登場ライダーとしては、唯一、一回きりしか出てこないレアな存在。
そりゃまあ、スペシャル版限定なんだからしょうがないか。
●映像内のキャラクター
「仮面ライダーベルデ」は、2002年9月19日放送のスペシャル版にのみ登場したライダーで、本編にはまったく登場していない。
正確には、龍騎終盤期、番組前のジャンクションでチラリと姿を見せていた。
高見沢逸郎が変身し、カメレオン型のモンスター・バイオグリーザと契約している。
その契約のせいか元々なのか、外観はカメレオンがモチーフとなっており、他の龍騎ライダーよりも「鉄仮面風味」が薄い。
左太股側面部に、召喚機バイオバイザーを装備。
このバイザーのベントイン方式が大変変わっており、カードデッキから引き抜いたカードを、バイザーから引き伸ばしたワイヤー付端子?に止めて、手を離す。
すると、ワイヤーがバイザーに引き込まれて、ようやくベントインが完了。
要するに電気掃除機やアイロンなどのコードみたいなものなのだが(なんつー表現)、このわずらわしい事この上ない過程が、なかなかどうしていい感じ。
どうも、カードを端子にはめる動作は着ぐるみではやりづらいらしく、劇中のベルデは微妙にもたついている感じがするが、そこがまた愛らしい。
残念ながら、この個性溢れるバイオバイザーのワイヤーギミックは完全にオミットされており、しかも素体フィギュアの脚部と一体化している。
わずかに一部パーツ(カメレオンの舌にあたる部分)が伸ばせるようになっているが、ほとんど意味はない。
ベルデ発売報道時、どういう処理になるものかと期待したのだが、まさか一番単純な方法で来るとは…
とはいえ、ヘタに別パーツ化させてポロポロ落下するよりゃマシなのかも。
王蛇とはまた違ったタイプの悪役として登場したベルデは、かなり卑怯な戦術を得意とするライダーだ。
遠距離打撃を繰り出すヨーヨー型の武器バイオワインダーをメイン武器に、姿を見えなくするクリアーベントや、ライアのと異なり相手の姿までも写し取るコピーベントを駆使する。
自分に優位なポジションを維持した戦いを中心に、さらに相手を翻弄する術に長けているようだ。
ファイナルベントは、「デスバニッシュ」。
バイオグリーザの伸ばした舌で足首を縛り、振り子のように相手に掴みかかり、そのまま逆さまに掴み上げて超高度の脳天逆落としを炸裂させるというもの。
その姿勢から、各所で「キ○肉ドライバー」と呼ばれまくった。
この技ではライアとナイトが犠牲になっており、ライアに至っては、コピーベントでナイトに化けたベルデから腹部に攻撃を受け、さらにファイナルベントを決められるという悲惨極まりない結末だった(注:スペシャル版のみの展開。TV本編の展開とは異なる)。
なお、ナイトは技を受けた後もかろうじて生きており、逆にファイナルベントをやり返した。
これが致命傷でベルデ爆発、合掌。
高見沢逸郎は、高見沢コンツェルンと呼ばれる事業の頂点に立つ総帥で若くして巨万の富を得たが、その欲望は留まる事を知らず、ライダーの頂点にも立とうとする。
普段は丁寧な物腰で接してくるが、その本性はどす黒い。
王蛇こと浅倉威を「本能の衝動による悪行を行う存在」とするなら、高見沢は「極端な二面性で欲望を隠した悪役」という雰囲気。
彼が真司に対して述べた「人間はみんなライダーなんだ!」は、名言として特撮ファンの心に残った。
要は、己が欲望に向かっていく人間の姿をライダーに比喩したわけだが、実にいいセリフだったと思う。
まして、高見沢が言うと説得力があるんだよなあ、これが。
スペシャル版では、「ライダーバトルを止めさせるための協力」を要請してきた真司を突き放し、他のライダー達と一時的な協力態勢を作り上げて、龍騎達「反ライダーバトル派」のライダーを徹底的に攻め続けた。
死後も、その意向はオーディン達に受け継がれたらしい。
個人的には、浅倉よりも芝浦よりも、須藤刑事よりも立派な悪役だと思っている。
実は、龍騎ライダーの中では筆者最大のお気に入りだったりもする。
●概要
2004年6月から、毎月連続で出続けている「装着変身」シリーズの、第九期販売商品。
ここまで来ると、もう感無量(まだ終わっちゃいないけど)。
このベルデも、かつてはアクションフィギュアとしての商品化が絶望視されていただけに、商品化は大変嬉しいところ。
…とはしゃぎたいところだが、さすがにもうユーザー側は冷静になってしまったのか、インペラーの時と同様かなり冷めた雰囲気で迎えられたような感がある。
先に述べたバイオバイザーの話もすぐに広まり、様々な意見が出はしたものの、結局は受け入れられたようだ。
唯一疑問視されたのが、付属品の「ウイングランサー」だった。
これは、装着変身版仮面ライダーナイト付属のものと同じ。
コピーベントの再現のつもりなのかもしれないが、そもそもベルデのコピーベントは“変身”に近いものなので、本当はこれでは意味がない。
つまり、商品のボリュームアップのために、無理矢理導入されたパーツというだけの話なのだ。
だってそれ以外の装備が、あんなにちっちゃいバイオワインダーだけなんだもんね。
さすがに素体とアーマーとヨーヨーだけで2100円では、ユーザーは納得しないだろう…と考えたのだろう。
つか、ユーザーとしては、余計な物を付けずに素直に安くして欲しかったんだけど。
●セールスポイント
商品を見てみよう。
ベルデも、極端なプロポーション逸脱感はほとんどなく、大変無難にまとまっている。
肩アーマーの大きさや配置に多少違和感があるが(着ぐるみの肩アーマー接続位置は、もっと下の方)、プレイバリューを妨げるほどのものではない。
また、このサイズの割に軽快な可動を見せるというのも、なかなかのもの。
動きの制約にはほとんどなっていない。
特徴的な造形も良い雰囲気を出しているし、塗り分けもそこそこまとまっている。
今回の商品の選別は、マスクではなく「胸の赤い模様」に注目だ。
中には、これがきたなくはみ出しているものもあるという。
武器のバイオワインダーだが、なんとこれ、紐に相当する部分がテグスになっている。
そう、あの透明な“釣り糸”。
これが、バイオワインダーの円盤?部分に巻き取られ、コンパクトにまとめる事ができる。
芸が細かいなあ。
無論、テグスにはクセが付いてしまっていてクネクネなのだが、これはお湯を沸かしたやかんの注ぎ口から立ち上る蒸気をあてると、すぐに直せる。
クネクネしていた方が巻き取りやすいのだが、飾る主義の人でどーしても我慢ならないという人は、やかん蒸気殺法を試してみるといい。
手に持つ部分には、ワッカ状パーツが付いているが、これは素体の指にはめる事が可能で、一度持たせるとまず落とす事はない。
指と指の隙間に、無理矢理太いパーツをはめ込む形になるので多少心配ではあるが、とにかく保持力に関してはまったく問題がない。
筆者が購入したベルデは、なぜか右手首の指関節がユルユルで、振ると揺れるほどだったのだが、それでもしっかり保持する事が出来たくらいだ。
ヨーヨー部分の中央部にも、素体の親指が入るくらいの穴があるので、テグスを伸ばした状態で両手持ちさせる事も可能。
いつものように、やや対比が大きすぎる感じだが、それを補って余りある工夫が成されている。
こういうのは、とても嬉しい。
ウイングランサーも、一応見てみよう。
ベルデ付属版のものは、造形こそ装着ナイトのものと同じだが、僅かに塗装が異なっており、金色部分の発色が良くなっている。
また、心なしか刃部分が以前より柔らかくなっているような…気のせいかな。
こちらは、どちらかというとライアに持たせてやりたい。
ベルデが持っても正直あまり似合わないので、ここは他の商品とのプレイバリューで補完させたいところ。
装着変身ベルデのアドベントカードのミニチュアは、「ファイナルベント」「ホールドベント」「コピーベント」の三種類。
「コピーベント」は、ライアのものと同じなので、あまり意味を感じない。
せっかくクリアーベントがあるんだから、そっちにすればいいのに。
カード自体の成形色は、黒。
●問題点
ベルデも、致命的な問題点と呼べるところはあまりない。
ただし、細かな「気になる点」が存在する。
なぜか、マスクがやたらと外れやすいという問題がある。
ベルデは、マスクの回転に干渉する襟部分が存在しないデザインなのだが、それでも首を回転させるとポロポロと外れてしまう。
パーツをはめる際には、特に問題なく思えるのだが、首を回して初めて気が付くものなのだ。
原因はよくわからないが、やはりジョイント部分のかみ合わせの問題なのだろうか。
もう一つは、先でも少し触れた「肩アーマー」だ。
普通に見ている分には、違和感は多少感じる程度で済むのだが、じっくり観察すると、ずいぶんとおかしな処理をしている事に気付かされ、だんだん違和感が大きくなってくる。
ベルデも、555系ライダーのような「跳ね上げ式」の肩構造をしているのだが、そのため接続部分が妙に高くなり、肩だけがズレているように見える。
これは本来、装着変身の構造上仕方のないものではあるのだが、よくよく見ると、妙に肩アーマーが分厚い事がわかる。
これ、パーツの厚みをもう少し薄くすれば、(接続位置の問題はともかく)もうちょっとフィット感が出て来るんじゃないかなと思うが、どうだろうか?
まあ、ヘタにパーツを小さくされるよりは、よっぽどいいんだけど…
それ以外の問題といえば…やはり「バイオバイザー」だろうか。
素体との一体化はいいのだが、これのせいで脱着は不可能になってしまい、このシリーズの売りの一つだった「変身」感覚が、益々乏しくなった。
…え、今更何を言ってるのかって?
ま、まあ、そりゃあ…ずっと前から変身しているって感覚ないけどね。
様々な要因があるだろうから、素体と一体化というのは仕方ない処理だと理解はできるが、やはり残念なポイントだったと言わざるをえない。
太股のベルトはともかく、せめてバイザー自体だけでも取り外せれば…って、それはそれで違和感あるかあ。
これは問題点というわけではないが、装着変身ベルデを語る上で、どうしても外せない話題がある。
それは、いわゆる「中の人」。
そう、素体の顔である。
今更言うまでもないが、新生装着変身の素体の顔は、実際にライダーを演じた役者に似せる気まったくナシ状態だ。
ライダーごとに、なんとなく似ているタイプの素体顔を適応してはいるものの、基本的には二種類しか顔パーツがないため、やはり限界が生じている。
ところが、以前にも紹介した「装着変身 仮面ライダーデルタ」では、第三の顔“新生・七三分けヘッド”なるものが適応され、我々ファンの度肝を抜いた。
2005年5月現在、デルタと同形状のヘッドパーツを使用した素体は存在していないが、この度、ここにあらたなる“第四のヘッド”が登場した!
さあ、見ていただこう!!
これが、装着ベルデの中の人・七三ヘッドVer.3だっ!!
おーっ、四角い顔〜っ!!
「腹減ったなぁ」「オーッス!!」
今更、高見沢そっくりの顔にしろとはいわないけど、けど、けど、けどっ!!
なんでまた、こんなペヤング顔になっちゃったんでしょう。
いや、もちろん個人的には全然問題ないんだけど、なんか複雑な気分だなあ…
●総合評価
インペラーやガイ、ライアなどのように、これもR&M版が存在しないライダーのせいか、比較される物がなく、そのせいか特に目立った難点がないように感じられる。
前の項目で挙げたような問題点も、細かなものばかりだし、ユーザーの思い入れによって充分補えるものだと思う。
ただし、どうしても「これまでのシリーズと同価格帯で発売する必要性があったのか」という部分で、引っかかるような気がする。
装着変身・昭和ライダーシリーズは、一体1500円だったが、これに準拠するような規模で充分だったように思える。
それとも、安くしすぎると採算が取れないのかな?
これまで、装備数が少なくて2100円では高すぎると思われるライダーは数あったが、今回のような「明らかな水増し」と判るパターンはなかった。
まして、同時発売の「装着変身 仮面ライダーオーディン」は、豊富な装備品を持っているにも関わらず、同価格帯だ。
これじやあ、どうしても同シリーズ他商品と比較されてしまうだろう。
もし、ベルデにウイングランサーが付いていなければ、こんな事考えなかったかもしれないのに(損した気分にはなったかもしれないけど)。
でもやっぱり、「出ただけ良しとしなければ」とも思ってしまうんだよね。
●バンダイ 装着変身「仮面ライダーオーディン」 定価2,625円(税込)
- オーディン素体フィギュア
- オーディン頭部(マスク)
- オーディン肩アーマー×2
- オーディン前腕アーマー×2
- オーディン胸アーマー×1
- Vバックル(オーディン用ベルト)
- ゴルトバイザー(杖)
- ゴルトセイバー(ソードベント装備)×2
- 装着変身サイズ・アドベントカード×3
- アドベントカード用シール
(3枚分裏表・計6枚) - 取扱説明書
2005年4月19日、装着変身「仮面ライダーベルデ」と同時発売。
「仮面ライダー龍騎」系装着変身としては、9または10番目の商品。
TVでは27話から登場した謎のライダー。
結構重要な存在っぽく出てきた割には、実際は大した存在ではなく、一応最終回別バージョンとも云える劇場版では、まったく登場しなかった。
●映像内のキャラクター
2002年度放送「仮面ライダー龍騎」に登場した通算8番目の仮面ライダーだが、先の通り自ら「十三人目のライダー」を名乗る。
だが、結局TV本編では全部で十人しかライダーが登場しなかったため、途中からこのフレーズは出てこなくなってしまう。
とにかく、ライダーバトルで最後に戦う相手として“あらかじめ設定されている”存在のようで、事実最終回でも、ラスト・ライダーとなったナイトはオーディンへの挑戦権を取得、対決している。
本編内では、誰かが変身しているシーンは存在せず、常にライダーの姿のままで登場し、その際は金色の羽が舞い散る。
その能力はとてつもなく高く、すべてにおいて他のライダーを圧倒する。
超短距離テレポートを連続使用したり、突進してくるトラックをビンタ一発で払いのけたり、龍騎のドラグクローの一撃にビクともしなかったりする。
ベントインを行わなくても充分すぎるほど強いため、さぞや特殊な存在と思いきや、どうやら実際は神崎士郎の傀儡に過ぎなかったようで、設定によると、士郎が行きずりの人にカードデッキを手渡し、オーディンの素体としていたようだ。
事実、オーディンは35話にて、一度ナイトに倒されている。
にも関わらず、その後再び平気な顔をして登場した。
一時期は、神崎士郎自身が変身しているのでは、という憶測も流れ、個人的にはそれも面白いと思ったが、やはり傀儡で正解だったようにも思う。
オーディンには、謎の設定が多い。
契約モンスターは鳥型のゴルトフェニックスで、なんと最終回に初めてその姿を表した。
このゴルトフェニックスは、右翼・胴体&頭部・左翼がそれぞれ「サバイブカード」と呼ばれるもののモチーフになっており、左の翼にある珠状モールドと瞳が赤く、右は青い。
また背中には白い珠状モールドがあり、これもサバイブカードに符号している。
左翼のモチーフが描かれたカードは龍騎に渡り、彼をサバイブ体へと進化させ、右翼のカードはナイトをサバイブ化させた。
では、三枚目のサバイブカードはどうなったのか?
これは、劇中ではまったく登場していない(一回だけアイキャッチで登場した事はある)が、設定上オーディン自身が常に携帯しているようで、彼を常時サバイブ体としている。
(なお、一時期オーディンはサバイブか否かという論争があったが、現在は超全集の表記からサバイブとして扱われている)
やっぱり、サバイブでない状態のオーディンってのも見たいなあ。
ついでにブランク体も。
装備は、ソードベントでゴルトセイバーを二本、ガードベントでゴルトシールドを召喚。
設定では「炎と氷の力を持つ剣」とか「絶対の防御力を誇る盾」とか記されていたが、劇中ではほとんど活用されず、ゴルトシールドに至っては、龍騎サバイブとスチールベントで奪い合いをしたという程度の使われ方しかしていない。
むしろこれより特徴的なのが、全ライダー最大の大きさを誇る「ゴルトバイザー」だろう。
これは、先端部に翼を閉じたゴルトフェニックスの意匠が組み込まれた大型の杖で、杖部分と飾り部分の境の辺りに、ベントインのためのカードスロットが仕込まれている。
ベントインの際は翼が開き、その中には表面部分とはまったく違う複雑なモールドが組み込まれており、大変豪華な造りになっていた。
番組放送中に発売されたR&M版では、残念ながらこの翼開閉ギミックはオミットされていた。
オーディンを語る上で、忘れてはいけないのは「タイムベント」。
これは28話の総集編で使用された「時間を巻き戻す」能力のあるとんでもないカードなのだが、どうも現在は、これのせいで龍騎の作品世界に複数のパラレル展開が生まれた、という見解になっているようだ。
よく考えてみれば、絶対そんな事ありえない筈なのだが。
スペシャル版では、真司リンチ組のリーダーとして登場し、龍騎のカードデッキを片手で握りつぶすというすごい事をやってのけた。
無抵抗状態の真司(龍騎)のベルトからわざわざカードデッキを引き抜くくらいなら、そのままデッキごと踏み潰せばいいような気もするが、こういう回りくどい演出は、なかなか好きだ。
●概要
装着変身オーディンは、当然ながらR&M版と比較されまくった。
数を重ねるごとにR&Mとの共通項が少なくなっていく本シリーズだが、今回もフィギュア自体はすべて新造(だよね?)である事が、早いうちからわかっていた。
そこで、ファンが気にしたのが「肩アーマーの処理」である。
R&M版のレビューでも触れたが、以前はあの特徴的な肩アーマーが胴体と一体化していたため、腕の可動を妨げまくっていた。
それだけでなく、ライドシューターにも搭乗させられないときたもんだ。
R&Mより可動率が高まっている装着変身になって、ここがどういう風に改良されるのか、期待と不安が入り混じった。
で、完成品写真が雑誌などで発表された途端、ファンはびっくりした。
確かに、手は加えられた。
可動範囲は大きく改善され、腕は良く動くようになったらしい。
だが…どうして、肩アーマーが上にずり上がってしまったのだろうか?!
この部分に壮絶な違和感を覚えたファンは、試作品とほとんど変わらない状態で発売された装着変身版を見て、かつてあれだけ叩きまくったR&M版の再評価を始めてしまった。
あげくには「R&M用に、ゴルトバイザーだけ取ればいいや」などと言う人まで出る始末。
そんなに、オーディンの肩は酷かったのだろうか?
●セールスポイント
肩アーマーの件はちょっと長くなるので、後に回そう。
まずは、それ以外の部分を見て行きたい。
まずオーディン全体だが、R&M版に比べてかなりスタイルは良くなった。
というより、着ぐるみに近い印象になったと言った方が適切か。
R&M版は、どちらかというと「玩具的デフォルメ」の集大成で、それ単体で見た場合そこそこ良く思えるが、実際の映像と比較すると、やはり違和感があった。
縦長になり、より劇中のイメージに近くなったマスクや、モールドが細かくなった上半身アーマーは大変素晴らしく、材質が変わった事も手伝い、大変高級感溢れる造りとなった。
一部では、頭部が大きすぎるとか、縦に潰れすぎ…という意見もあるが、大きさはともかく縦幅はそんなでもない。
ただし、ゴーグル(のように見える目のスリット)の幅は劇中よりも狭くなっているため、確かに潰れて人相が変わっているようにも見える。
でも、R&M版よりは洗練された造形になっているのは、間違いない。
珍しく、腕アーマーにも触れてみたい。
オーディンの腕アーマーは、サバイブ化のせいか他のライダーのものと大きく形状が異なっている。
だが、今回装着変身化した事でこれが取り外せるようになり、より明確に、形状の違いが確認できるようになった。
なかなか面白い面取りをしているんだなと、個人的に感心。
次に、装備。
ゴルトセイバーは、一見R&M付属のものと同じに見えるが、細かな部分で相違点がある。
まず、エッジの部分にラメ塗装が入り、質感が向上。
また、グリップの部分の形状が僅かに異なっており、特にジベットスレッド部分は明確な違いが見て取れる。
装備用ジベットスレッドの形状が異なっているのは、過去発売された装着龍騎系ライダーすべてに当てはまるので、ひょっとしたら、改修ではなく金型の事情などがあるのかもしれない(詳しくないから断定はできないけどね)。
ちなみに装着版ゴルトセイバーは、R&M付属のゴルトフェニックスに装備可能。
本商品最大の目玉である、ゴルトバイザー。
こちらは完全に新造され、なんと開閉ギミックが盛り込まれた上、さらにミニチュアのアドベントカードをベントインさせる事までできるようになった!
その上、バイザーのカバーをスライドさせる事も可能で、劇中同様の動作が行える。
さすがに、カバー部分は劇中のプロップのように半透明ではないが、R&M版の「ゴムの塊」で泣いた人にとって、これはもう珠玉の逸品である。
棒部分をしっかり差し込まないと、カバーをスライドさせる度に抜けそうになるので、注意が必要だ。
ゴルトバイザー唯一の難点として、翼開閉時の内部モールドに塗装ミスがある。
バイザー内部に掘られた珠状のモールドは、先に述べたサバイブのカラーリングに対応しているため、 左翼側が赤・右翼側が青になっていなければならない。
しかし、なぜか本商品では、これが逆になっている。
ミラーワールドでの反転撮影用プロップを参考にでもしたの?
これはフォローできないなあ。
装着変身オーディンのアドベントカードのミニチュアは、「ファイナルベント」「ソードベント」「タイムベント」の三種類。
カード自体の成形色は、黒。
タイムベントのカードを差し込んで、「修正が必要になった」のポーズを取らせて飾るのもいいかも。
って、手の形変えて棒立ちさせるだけだけど。
●問題点
では「肩アーマー」の問題に触れよう。
結論から先に言うと、実はこの装着版の肩の処理は、そんなに間違ってはいない。
着ぐるみの写真を見てもらうとわかるが、実際のオーディンの肩アーマーは結構上の方についており、腕を正面に突き出しやすい構造になっている。
だから、R&M版のように、正面から見た時に肩関節部分が大きく隠れてしまうような構造は、間違いなのだ。
事実、R&M版はそのアレンジのせいで、可動を大きく制約されてしまっていたのだし。
では、見た目違和感があっても、装着版の方を良しとすべきなのか…というと、そういうわけでもない。
装着版の肩アーマー本当の問題点は、接続位置ではなく「上半身アーマーのサイズ」にある。
よく見ると、オーディンの上半身アーマーは、なぜか他の新生装着変身に比べてブカブカなのだ。
素体のボディとの間が、妙に空いている。
このため、上半身アーマーが本来の上半身より一回り以上大きくなってしまい、結果的に、ここに接続されている肩アーマーの位置がズレすぎてしまう。>
装着版の肩アーマーの位置は、R&M版より実物に近いというだけであって、決してベストの位置にあるわけではない。
また、ベルデ他のように素体の肩のボッチに付いているのではなく、上半身アーマー自体に接続されているのだ。
だから、上半身アーマー自体が位置ズレを起こすと、肩も連動してしまう。
また、普段はさほど気にならない蝶番部分が、本商品に限りやたらと気になる(腕に干渉する)のも、その証明になる。
アーマーの隙間をなんとか出来れば、もっとスタイリッシュになり、完成度も高まると思われるのだが。
ここで、R&Mのゴルトフェニックスを引っ張ってこよう。
装着版にない「ゴルトシールド」「ゴルトフェニックス自身」は、果たして装備できるのだろうか?
もう判りきってると思うけど、答えは「NO」。
今回も、ジベットスレッドの口径規格が違いすぎるため、ジョイントはできなくなっている。
このR&M版装備については、以前「装着変身 仮面ライダーゾルダ&インペラー」のページに追記させてもらっているので、そちらを参照していただきたい。
他の玩具サイトでは装備させている写真を掲載してはいるが、当コーナーでは「玩具のパーツ破損を招きかねない」強引なプレイバリューは認めない方針なので、以降は「確実に問題なく装備できる構成のものが出ない限り」装備不可能という見解で統一させていただく。
で、ナイトの時にも書いた通り、やはりゴルトフェニックスは装備不能。
当然、エターナルカオスも出来なくなってしまった。
注:この部分は「装着変身EX ミラーモンスター3」発売以前に書かれたものです。
それだけではなく、ゴルトシールドも装備できない。
お忘れの方もおられるかもしれないが、R&M版では、ゴルトシールドの正しい装着方法は「腕のジベットスレッドに無理矢理差し込む」というものだった。
装着版で装備不能というのは、これを再現しようとすると無理、という事だ。
なので、腕に直接くっつけようとしなければいい。
ここで登場するのが、(R&Mの時と同様)龍騎のドラグシールドのグリップパーツ。
これをどこかから引っ張ってきて、ゴルトシールド裏側に接続すれば、劇中と同じように手に持たせられるので、問題は解消する。
もちろん、このグリップはR&Mのものでも装着変身のものでもなんでもいいし、R&MリュウガのものでもOK。
龍騎との使いまわしが嫌ならば、バンダイにパーツ請求して購入するという手段もある。
ちなみに、首を内部に折りたたみさえしなければ、ゴルトシールドにグリップをつけたままフェニックス本体に合体させる事が出来る。
●総合評価
R&Mの時もそうだったが、装着変身オーディンは、かなり損な見方をされてしまった悲しい商品だと思う。
なんだか、目立つ部分だけをピックアップされ、さも全体の出来が悪いかのような印象を植え付けられたような気さえする。
もっとも、仮にそれが言いがかりだったとしても、第一印象が悪かった事は事実なので、あるいは、もう少し「玩具的デフォルメ」を加えてもよかつたのではないだろうか。
…なんて書いてて、具体的にどうすりゃ良かったか、なんて思いつきもしない筆者なんだけどね。
ただ、筆者は周りで言われているほど本商品の出来は悪いとは思わないし、むしろR&M版よりも数段上の完成度だと信じている。
もちろん、R&M版もいまだに大好きだけど。
また、他の装着変身のように「パーツが取れやすい」「マスクが外れやすい」といった問題点もないので、大変扱いやすくなっている部分も見逃せない。
こういう細かい部分は、本当に良く出来ているのだ。
これで、Vバックルの紋章周りのモールドまで再現されていたら、個人的に文句ナシだったんだけどなあ。
【買ってみて一言】
今回の二体は、正直あまり感心できる組み合わせではなかったと思う。
今までの組み合わせは、プレイバリューが多めのライダーとそうでないライダーのペアで、片方の不満分をもう一方が補っている感があった。
また、実際のプレイバリュー幅は少なくても、人気の高いライダーを持ってくる事でバランスを保っていた。
ただ武器を一種類、手にもたせるだけしかできなかった王蛇&ガイのペアなんてのもあったし。
しかし、今回のベルデとオーディンは、装備が少ないという事に加え、あまり思い入れを抱かれ難いライダーだ。
もちろん、それぞれのファンがまったく居ない、とは言わない(実際ここに居るし☆)。
でも、やっぱり他のライダーに比べれば、マイナーな部類に入る。
そのマイナー同士で組み合わされても、よほどの好事家でない限りは手放しで喜ばない。
だから、プレイバリューの不足を思い入れで補うのも難しい。
今回の二体の中で、もっとも目立つのが「ゴルトバイザー新造」だけというのは、どうだろうか。
実際は、もっと色々工夫されて完成度が高められているにも関わらず、それらが目立っていない。
そういう意味で、今回は大変残念だったという印象が強いのだ。
…が。
よくよく考えれば、同時期に「仮面ライダー威吹鬼」という、現行バリバリのライダーも発売されているのだった。
まさか、威吹鬼一体だけで他二体の補完が出来ると考えられていた?
ううむ、もしそうだったら、ちょっと嫌だなあ。
だって、装着威吹鬼だって、決してプレイバリューが大きいわけじゃなかったんだし。
どちらにしても、今回はちと地味すぎるラインナップだったかな、と。
そして、色々な要因が合わさり、完成度イメージが低く捉えられたかのような雰囲気があったという事で、締めとさせていただきたい。
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