第136回 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツ「ライドロン」

2015年11月26日 更新

 2015年9月24日、仮面ライダードライブ「トライドロン」配送開始。
 プレミアムバンダイ限定商品だったこれは、そのギミックや価格の凄さから、商品化発表直後から各所で話題になりました。
 ところがその後、今度は仮面ライダーBLACK RXの「ライドロン」が商品化で、しかもこちらは一般販売という情報が流れ、「本気かよバンダイ!」という声が多く挙がりました。

 

 全長約14センチのフィギュアーツが搭乗出来るサイズの、ライドロン……
 そりゃまあ、確かに夢見た商品ではありましたが、いざ実際に発売されてみると、これがそのなんというか……

 という訳で、今回はこの“光の車”ライドロンのレビューを行いたいと思います。

▲ TOP ▲

■ S.H.フィギュアーツ ライドロン:

 

 2015年11月21日発売。
 同時配送物は、下記参照。
 2015年11月のラインナップは、以下の通り。

  • 11/17(配送開始日)「仮面ライダードライブ タイプフォーミュラ」「仮面ライダーナックル クルミアームズ(仮面ライダー鎧武)」(すべて魂ウェブ限定)
  • 11/21「絢瀬絵里〜僕らは今のなかで〜(ラブライブ!)」「スーパーサイヤ人孫悟空 超戦士覚醒Ver.(ドラゴンボール)」
  • 11/24(配送開始日)「セーラープルート(美少女戦士セーラームーンS)」「カオスデュークモン(デジモンテイマーズ)」(すべて魂ウェブ限定)
  • 11/28「バトル・ドロイド(スターウォーズ エピソード1/ファントム・メナス)」「クローン・トルーパー フェイズ1(スターウォーズ エピソード2/クローンの攻撃)」

 ライドロン全長は約38センチ(前部突起から後部まで)、最大幅約18.2センチ、最大全高約15.3センチ(パイルエッジ最頂部まで。アンテナ含まず)。
 説明書以外の付属品はなし(アンテナパーツ別添のみ)。
 価格は19,440円(税込)。

 

 ライドロン。
 「仮面ライダーBLACK RX」第4話から登場。
 仮面ライダーシリーズ初の、主人公が駆る自動車型メカで、別名「重装騎マシン」「光の車」。
 クライシス人の科学者ワールド博士が、南光太郎に託した設計データを基に、光太郎自身の手で製作されたもの。
 不完全なデータによって製作された物に、かつてゴルゴムのクジラ怪人が仮面ライダーBLACKを死の淵から蘇らせた際に用いた、聖なる海の洞窟の「命のエキス」が加えられたことで起動、自らの意思を持ち会話も可能なスーパーマシンとなった。
 地上走行に加え、水上・水中・地中をも進行可能で、他にも地球と怪魔界を自由に行き来する能力も持つ。
 バリヤーやパイルエッジと呼ばれる鋸状の刃、グランチャーと呼ばれる岩盤をも砕く「顎」などを装備する。

 

 ライドロンのベース車両は、MAZDAサバンナRX-7 SA22C型。
 ただし、見た通りベース車が殆どわからないくらいに改造されており、ウィンドウは全面廃され、更にドアなどはヴァーチカルドア(スイングアップドア)に変更されている。
 撮影用車両は、ドーム型ウィンドウの前寄り三分の二くらいがクリアになっており、本商品のようなオールスモークではない。
 ただしウィンドウが湾曲している形状のせいか、視界は非常に悪かったという話もある。

 

 その形状の特異さに加え、仮面ライダーなのに車? という違和感からか、本車両を毛嫌いするファンも当時は多かった模様。
 しかし、当時の直撃世代からの支持は厚いようで、近年では映画「スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号」でも、オールCGとはいえ再登場を果たし、話題となっていた。

 

 さて、ライドロンです。
 「イタッシャーロボ」「トライドロン」に並ぶ、フィギュアーツ単独最大クラスの商品です。
 その圧倒的なサイズと、フィギュアーツRXが乗せられるという点ばかりが注目を集めそうな印象ですが、その造型なども素晴らしく、非常に満足度が高い商品だと思われます。
 ライドロンが大好きならば、という条件付きの評価ではありますが。

 

 本商品は、本体以外に部品がまったくないという、かなり思い切った構成となっています。
 正確には、アンテナパーツのみ別添えで、細いビニールに入れられた状態でブリスターに貼り付けられていますが、ライドロンに接続した状態のままでブリスターに収納することも可能です(アンテナ用のスペースが確保されています)。
 本体の赤部分は塗装ではなく、成形色。
 ただしコーティングはされているので、安っぽさは感じません。
 詳しくないのでよくわからないのですが、フィギュアーツ「トライドロン」の本体と同じポリカーボネート製なのかな? とも思ったり。

 その他、後輪が車体後部のスペクトラムスクリューと連動しているので、コロ走行させるとスクリューが回転します。
 左二つは時計と逆周り、右二つは時計回りに回転。
 ただしこのギミックのために、走らせるとモーター搭載車を無理に手で動かした時のような、あの唸るみたいな音がします(壊れるわけではないですが)。

 

 フロントビューとリアビュー。

 

 サイドビュー。
 一見長すぎに思えるホイールベースは、ほぼ劇中通り。
 今回、車体が大きいので撮影スペースがかなりギリギリになってしまいました。
 というか、実際はスペースはみ出しまくりなんですが、そう見えないように加工しています。

 

 前回レビューした「仮面ライダー旧2号&サイクロン号(改造Ver.)セット」との比較。
 改造サイクロンが全長約18センチくらいなので、おおよその大きさがわかるかなと。

 

 それではピンと来ないという人のために、もっと身近な物と比較。
 エビスビール(350ml缶)と単二乾電池、単三乾電池、「NEO-GEO X」などと共に。
 「NEO-GEO X」は、だいたいPSPと同じくらいの大きさなので、一般的な携帯ゲーム機と比べたらこんくらい、と漠然と捉えて頂ければ幸いです。
 たまたま手近にあったものを並べてみただけですが。 

 

 フロント部アップ。
 特徴的なフロントフェンダーの形状や、中央を走るパイルエッジのごつさは、しっかり再現されています。
 設定上ある筈のヘッドライト、一体何処に隠れてるんでしょう? 的なフェイスもバッチリです。
 (角の三角形部分なのかなあ?)

 

 パイルエッジの一段目裏側には、隠れるようにスイッチが設けられています。
 これを押すと……

 

 先端部から、大きなアゴ「グランチャー」が飛び出します。
 結構な勢いで飛び出しますが、指を挟まれても全然痛くないくらいソフトな衝撃。

 

 安全性を考慮されてなのか、グランチャーのピンチ力は限りなく皆無に近いです。
 そのため、劇中のように敵を挟んで走行みたいなシチュの再現は、かなり困難。
 あと、グランチャーの位置が低すぎて、たいがいの場合脚が接地しちゃうので、これまた難しいものです。

 このクワガタでしたよ怪人(仮)は、いずれレビューします。

 

 前輪部アップ。
 ホイールは、前後輪共にダイキャスト製。
 ちなみに、OPで見せていた潜行形態(前輪部にガードが降りている状態)は、さすがに再現出来ません。
 前輪は、後述するステアリングと連動していて、かなり軽めに動かせます。
 尚、タイヤは、マニアに嬉しいゴムタイヤ!!

 

 アンテナは、根本がボールジョイントになっていて、先の通り取り外し可能。
 何故ボールジョイントなのかというと、ドアを開けた時の干渉を避けるため、基部から回転できるようにです。
 ドーム型のウィンドウは、スモークのかかったクリアパーツで、中に何が載せられているのかおおまかにわかるくらいに透けます。

 

 ヴァーチカルドアは、スイッチ固定式ではなく、手動展開。
 ドア裏側にある長方形の小さなポッチ(ジョイント)で固定する方式ですが、開けるたびに「バキ!」と音がするので、正直あまり心臓によろしくありません。
 開ける時はそのまま跳ね上げますが、閉じる時はドアを一旦下げて、それから少し前方にスライドさせる必要があります。

 ドアは、全開にすると最頂部約24センチと、RXの身長の二倍弱くらいまで高くなります。

 

 運転席側の室内。
 ステアリングはダイキャスト製で、先の通り、回すと連動して前輪も動きます。
 ややハンドルが大きめに感じる以外は、撮影用車両にかなり近付けた造りになっていて、ちょっとした驚きを感じさせます。
 トライドロンの時も、室内の作り込みに非常に凝ってたみたいですが、その流れなのでしょうか。

 

 フィギュアーツRXを、搭乗可能。
 最初にある程度の搭乗姿勢を取らせておけば、問題なく座らせられます。
 ちょっと左脚が引っかかることもありますが、大丈夫。
 両腕は、前方向にスイングさせておきましょう。

 

 ステアリングの握りですが、RX付属の武器持ち手では、しっかり掴むことは出来ません(親指が他の指にくっ付いている構造のため)。
 そのため、少し指が曲がっている平手を使うしかないのですが、ぶっちゃけ今回はこれで正解だったと思います。
 実際に搭乗させてみるとわかるのですが、RXを乗せる時は、最後に手をステアリングに添えるように調整することになるため、もしガッシリ握るような構成だった場合、かなり面倒なことになると思われます(特に左手など)。
 また、搭乗後も結構姿勢がずれたりするので、ここは下手に固定させない方が賢明なんだろうなと感じます。

 

 RX搭乗後、ドアを閉じるとこんな外観になります。
 心配なツノの干渉ですが、RXをシートにしっかり深座りさせ、ヘッドレストに頭(というか首)を着ければ、問題なくドアを閉じられます。
 RXは胴体の伸縮ギミックがあるため、それにより頭の位置が上がり過ぎないように注意を払う必要もあります。
 ただ、それでもツノがギリギリウィンドウに接触するかしないかという感じで、余裕は殆どありません。

 

 試しに、RX以外の関連ライダーを搭乗させてみます。
 まずは、バイオライダー
 こちらは、搭乗前のポージングの際、脚が開きすぎてしまうので、てっきり無理かなと思っていたのですが、意外やすんなり乗せられました。
 ツノの干渉もRXよりは余裕があるようで、安心してドアを閉じられます。

 

 仮面ライダーBLACK(リニューアル版)を乗せてみたところ、恐らく一番無理がない状態で搭乗できたようです。
 ライディングポジション、ステアリングの握り、ツノの干渉、乗せやすさ、全てにおいてオールグリーンでした。
 あえて問題点を挙げるとすれば、「この組み合わせで乗せる気にはなかなかならない(?)」という程度のもので。

 

 BLACKがいけたならと、続けてシャドームーン(旧)も乗せてみました。
 絶対的にありえない組み合わせではありますが、まあそこはそれ。
 元々優秀な可動範囲を誇るためか、こちらも全く問題なく搭乗させられました。
 生憎、リニューアルバージョンは未購入なので試せていませんが、なんとなく大丈夫なんじゃね? という予感がします。

 

 逆に、最も搭乗させ辛かったのが、ロボライダー
 一応、ドアを閉じるところまではいけるのですが、どうやっても座高が高くなってしまい、ツノの干渉を嫌が上にも意識しないわけにはいかない状態です。
 パンツの形状、干渉を起こす太股の形状、深座りさせると伸びてしまう腰、前方スイング幅が微妙に足りない肩……この辺りが原因かなと。
 とにかく、ポピニカ「DXライドロン」の付属フィギュアのように、どうしてもRX以外の派生ライダーを乗せたい! というのであれば、ロボに関しては細心の注意を払って頂ければと思います。

 

 助手席側の内装。
 こちらも設定準拠で、メーターや各種センサーなど、カラフルな計器部分はシールで再現されています(助手席側ダッシュボード上の黄色い10連のランプは塗装))。
 画像では見えませんが、サイドブレーキ脇のコンソールボックスには、RXの紋章が掘られています。
 中央のモニタ(?)下部にある筈のキーボードがオミットされているのは、個人的にちょっと残念。
 その他、シフトレバーがニュートラル、さらにサイドブレーキが上がったまま固定と、明らかに停車状態のままで非可動なのは、個人的に非常に残念。
 ここは、走行中をイメージする配置にして欲しかった気がします。

 それにしても、助手席側にも操作を要するような機器端末があるけど、これは一体どういう用途だったのだろう?

 

 助手席側には当然ステアリングがないので、スペースはかなり広く、他の1/12くらいの可動フィギュアを乗せることが可能です。
 当然、フィギュアーツのみならず、他社製品も搭乗可能。
 ただ、先の通りスモークウインドウなので、あまりはっきりと搭乗者が確認できないのが残念。
 そこを逆手に取って、誰が乗っているのかな? 的なネタ画像に使えそうではあります。

 

 ライドロンは、その外観から想像も出来ないくらいの収容人数を誇ります。
 17話ラストでは、怪魔界にさらわれた佐原ひとみをはじめ、画面で確認出来る限りでは最低でも六人(子供二人含む)は搭乗していました。
 勿論、本当に全員撮影用車両に乗ったわけではなくて、編集されてはいましたが。
 それにちなんで、試しにどのくらいの数のフィギュアが乗せられるかを、実際に試してみました(かなり大雑把ですが)。
 結果、「S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーキバーラ」「figma渋谷凛(一般販売Ver.)」「figma高坂穂乃果」「figma雪風(艤装ごと!)」と、無理矢理5体詰め込めもとい、乗せられ? ました。
 「figma絢瀬絵里」は、主に尻のせいで(嘘)搭乗できず。
 これ、工夫次第ではあともう一体くらい行けそうな気がします(やる意味はともかく)。 

 

 スペクトラムスクリュー。
 先の通り、後輪の回転に連動します。
 テールランプ類が全くない一種異様な形状も、しっかり再現されています。
 黄色いヴァーチカルフィンも、いい感じ。

 

 シャーシ側。
 フロントアクスル(左右の前輪を繋いでいる可動部分)の後部は、ダイキャスト製。
 非常に細かく作りこまれていて、良く見ると非常に味わい深い造型なんですが、実はライドロンはシャーシ側に大きなスラスター「ホバーラスター」という部位が設定されてまして、今回それがオミット? というか無視されています。
 ただ、当然その部分がはっきり画面に出たことはないですし(だよね?)、撮影用車両にも当然なかった筈ですから、この場合は仕方ないと思います。
 むしろ、のっぺらぼうのペッタンコにせず、ここまでやってくれた事に感謝したいところです。

 

 最後に、改めて仮面ライダーBLACK RXとの比較を。
 「仮面ライダーBLACK/RX超全集」内のスチール写真をイメージ再現して撮ってみましたが、同誌の写真をみると、この構図の場合ライドロンのウインドウの高さは、RXのベルトの位置くらいまでしかありません。
 つまり、大雑把な解釈ですが実際のライドロンは、この画像のライドロンの2/3くらいの大きさしかなかったわけです。
 じゃあ何故こんなに巨大になったのかというと、それはもうフィギュアーツRXが搭乗できるサイズ、という観点から逆算した結果じゃないかなと思われます。

 

 実は数年前(もっと前かも?)、海外版RX「MASKED RIDER」の関連商品として、左ハンドルのライドロン「Magno」というものがありました(※上の画像は今回のライドロンです)。
 こちらには、旧フィギュアーツのRXが搭乗させられたらしいのですが、大きさは本商品のだいたい2/3くらい。
 つまり、劇中対比としてはそちらの方が実物に近いといえます(左側に乗せるわけですが)。
 ライダー搭乗可能という玩具的大前提ギミックを優先させたために、本体が大型化してしまったフィギュアーツ・ライドロン。
 非常に入手困難(一時期の相場は約5万円!)で微妙に仕様が異なるながらも、劇中対比に近い「Magno」。
 どちらを良しとするかは人それぞれですが、個人的には、圧倒的存在感と細かなこだわりを以って再現された今回のライドロンの方が好みですね。

 

 以上、S.H.フィギュアーツ「ライドロン」でした。

▲ TOP ▲

【買ってみて一言】

 デカイ! 重い! 高い!
 思わずニヤニヤしながらそんな事を考えてしまうような、ある意味特殊な商品です。
 RX関連商品は、何が一般販売で何がプレバン限定か、選択基準が今ひとつわからない感がありますが、今回のライドロンがその最たるものではないかと思われます。
 なんせ、仮にも現行番組だった「仮面ライダードライブ」のトライドロンが(仕様を考えると納得もしますが)限定でしたからね。
 よもや27年も前の番組の、しかも決してメジャーとは言いがたいマシンが一般販売なんて、想像も出来ないってなもんです。
 まあ、「仮面ライダーアビス」や「キバーラ」みたいに、バンダイは時々何故それを一般で? って売り方して来ますから、ありといえばアリなんですが。
 とにかく、色んな意味で驚き要素が多かったということです。

 

 ここまで述べて来た通り、大きさの迫力に圧されてしまいがちですが、非常に造型レベルも高く、必要なプレイバリューも(数少ないとはいえ)クリアしていて、かつあまり目立たない部位まで作りこまれているのは、さすがという感じです。
 1/12サイズというより、明らかに1/10以上というオーバースケールではありますが、少なくともバイク系のようにプレイバリューに悪影響が生じるものではないですし、その事をはなから理解の上で触れてみれば、不満は少ないのではないかと、筆者は考えます。
 ただ、どうしてもこのオーバースケールが気に食わないという人もいるでしょうから、決して(RXファン内で)万人向けとは言いがたい気はします。
 それに、単純に保管スペースの問題もありますし。
 この二ヶ月間くらいで、トライドロンや、figmaガルパン用の戦車「IV号戦車D型」など大型ビークルの発売が続きましたから、これらを全部買った人などはスペース確保がえらいことになったんじゃないかなと推測します。

 とにかく、まず商品仕様や対比などを見て、保管場所を考慮して、それでもイケる! と実感出来た人のみが購入を検討すべき商品……なのかなあ? と、個人的に考えます。
 良い物ではありますし、出来るだけ多くのファンの手に渡るといいなあとも思うのですが。
 日本の経済状況や建築事情は、いかんともし難いですからねぇ。

 次の大型ビークルは、果たして何が来るのでしょう?

 ――トライサイクロン?!

「人生に玩具あり 2式」トップページへ戻る