第120回 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツ「バイオライダー」
2014年12月17日 更新
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「仮面ライダー世界に駆ける」ついに再現!!
南光太郎が変身する、四つの姿の仮面ライダーが、ついに集結!
黒い騎士・仮面ライダーBLACK。
太陽の子・仮面ライダーBLACK RX。
悲しみの王子・RXロボライダー。
そして、怒りの王子・RXバイオライダー!!
というわけで、今回は最後の一体「バイオライダー」をレビューします。
今年の8〜9月発売商品は、筆者の個人的事情で当時レビューする時間が取れなかったので、今回と次回の「真骨彫・仮面ライダー響鬼」と併せて、取り漏らしレビューとなります。
■ S.H.フィギュアーツ バイオライダー
2014年9月20日発売。
2014年9月のラインナップは、以下の通り。
- 9/19配送 「仮面ライダーブラーボ ドリアンアームズ(仮面ライダー鎧武)」「仮面ライダーブレイド ジャックフォーム(仮面ライダー剣)「シャドーチェイサー(仮面ライダー剣)」」「ワイルドタイガーStyle2(タイガー&バニー)」「バーナビー・ブルックスJr. Style2(タイガー&バニー)」(すべて魂ウェブ限定)
- 9/20 「アイアンマン マーク42」「アイアンパトリオット(IRONMAN3)」「仮面ライダー鎧武カチドキアームズ」
- 9/25配送「キュアサニー(スマイルプリキュア!)」「仮面ライダー鎧武ジンバーレモンアームズ」「キカイダー(人造人間キカイダー)」「人造人間17号(ドラゴンボール)」(すべて魂ウェブ限定)
- 9/27 「アカレンジャー(秘密戦隊ゴレンジャー)」「マイケルジャクソン」
全高は約14.3センチ。
合計6種12個の手首付き。
バイオブレード一点付属。
専用台座などはなし。
価格は税込3,888円。
バイオライダー。
「仮面ライダーBLACK RX」第17話「バイオライダー!」で初登場。
ロボライダーと同じくRXの別形態の一つで、怒りの感情で変身した別名「怒りの王子」。
高速移動や身軽さなど、ロボライダーとほぼ正反対の特性を持つ。
専用武器はバイオブレードで、これを用いた「スパークカッター」が必殺技。
バイオライダーへの変身と共にアクロバッターも変形し、「マックジャバー」という専用バイクとなる。
南光太郎は、マリバロンに誘拐され、新たなガロニア姫にされようとしている佐原ひとみを追っていたが、霞のジョーと佐原シゲルと共に、クライシスに捕らわれの身となってしまった。
奇跡の谷と呼ばれる場所で拘束された三人は、ガロニア姫と化したひとみ自らの手で処刑されそうになる。
しかし、ひとみであった頃の記憶が残存するガロニア姫が躊躇ったため、三人は九死に一生を得た。
ひとみをより完全なガロニア姫にするため儀式を行おうとするマリバロンだが、その隙を突いたジョーの機転で、三人は脱出に成功する。
更にガロニア姫を追い、RXに変身した光太郎だったが、怪魔ロボット・トリプロン1〜3号らに捕まったジョーとシゲルを人質にされたため、再び捕らわれの身となってしまった。
マリバロンは、地下1000メートルの穴にRXを落とすが、そこはRXの能力を計算されて設計された専用処刑場だった。
左右から迫るトゲ付きの壁はRXに電撃を浴びせて動きを封じ、ロボライダーになっても、強力な磁力は身体を吸いつけてしまう。
絶体絶命のピンチに陥ったRXは、処刑場内に落ちる水滴を見て、脱出路といえるのはこのくらいのものかと絶望する。
その時、怒りの咆哮を上げたRXの身体に、不思議なことが起こった。
突如、青いライダーの姿に変化したRXは、全身を液状化させて水の滴る細い穴を辿り、地上に脱出。
今まさにジョーとシゲルが殺されるという場に駆けつけ、チャップやトリプロン達を翻弄する。
液状化を解いて姿を現した青いRXに、マリバロンは問う。
「貴様、何者?!」
「俺は怒りの王子! RX! バイオ! ライダー!!」
バイオライダーには非常に特殊かつ独特の能力が多数備わっており、RXを凌ぐスピードを活かした攻撃能力や、専用武器バイオブレードを用いた光線攻撃の防御&反射攻撃、全身を軟体化させて飛行&物理攻撃を無効化、光線攻撃の無効化(身体を通り抜ける)、相手の体内に入り込み内部から攻撃、人間の細胞に融合可能、毒を体内に取り入れて指先から免疫抗体を作り出す等、枚挙に暇がない。
「仮面ライダーBLACK RXは事実上最強である」というファンの唱える説があるが、その大半はこのバイオライダーの性能によるところが大きい。
BLACKとRXのリニューアル、ロボライダーの発売決定と続いたことから、バイオライダーのフィギュアーツ化も時間の問題だろうと、ファンは予想していましたが、実際その通りで、実にスムーズに商品化に繋がりました。
バイオライダーの情報初出は、ロボライダーと同様海外のイベント展示で、そこではロボイザーやマックジャバーも共に飾られていました。
これも、ファンの予想を強く裏付けるものでしたが、商品化決定の情報は、2014年5月21日頃に「フィギュア王」の早売り情報リークという形で、ネット上に広まりました。
ですがその直後、魂WEBなどでも公式に公開されたため、この日が正式なお披露目日だったと云えるでしょう。
ただ、最初に試作品が公開された際は、「目の形状が変」「太股上部の皺がしつこすぎる」など、やや批判的な意見も多々見受けられました。
で、実商品はどうだったかというと……詳しくは後述。
それでは、商品を見て行きます。
まずは、定番の前後比較。
ロボライダー同様、やや太めで中に人が入っている感じが良く出たフォルムです。
適度なマッシブ感もあって、細すぎるという印象は皆無です。
顔アップ。
残念ながら、劇中の印象とは全然違ってしまいました。
複眼の形状がサングラス型の垂れ目になっておらず、上辺が丸みを帯びすぎていている上、複眼の盛り上がり具合も不足しています。
なんでこんなに似てない造形になってしまったのか、不思議でしょうがないくらいです。
斜めから。
この角度から見ると、垂れ目度は充分な気がしますが、やはり目の形状の違いが気になります。
とにかく、複眼上辺の形状把握違いが、特に惜しかったということでしょうか。
さらに、首の長さもなんか変……
今回は首パーツが太くなり、そのため細いという印象が解消されています。
ただし、バイオライダーはロボライダーとは違って、首は細めで長い印象なので、この造形は特徴を捉えているとは言い難いです。
(劇中のスーツは首の上側が細く、根元は太いラインになっています)
フィギュアーツ・ロボライダーは、プロポーションそのものにはさほど問題はなかったのに、首が細かっただけで「細身!」というイメージが付いてしまいましたが、むしろそちらをこういう首パーツにすれば良かったのではないかとすら思えます。
首の可動範囲は、このような感じです。
ぶっちゃけ、顎上げも顎引きも、殆ど出来ないに等しいレベル。
首の根元の関節を併用することで、ようやく顎引きが出来るかなーという程度で、ロボライダーの異常なほどの可動範囲とは比較にもなりません。
バイオライダーは、顎引きのあるポーズが非常に多いので、これでは再現が困難になります。
というか、首をこんなに寸詰まりにしないで、劇中イメージの沿ってもうちょっとだけ伸ばしていれば、顎を引く余裕も出来たんじゃないでしょうか。
ボディ各所には、撮影用スーツを意識したような質感が再現されていて、本当に「撮影用スーツの小型モデル」のように見える瞬間もあったり。
上腕部のプロテクターには、スーツのたわみで発生した皺が再現されています。
こういうところは、芸が細かいなあ。
肩及び、肘の可動はこのような感じ。
肩関節は上下にスイングも可能です。
とにかく腕に関しては、相当良く動かせます。
肩は引き出し式で、かなり大きく可動範囲を確保出来るようになっています。
これのおかげで、大胆なポージングが決まります。
特に、液状化直前や名乗りの始めの方のポージングの際に活きて来ます。
肩アーマーは、胴体側の方(正しくは、引き出し肩パーツの上部)に接続されているので、腕の回転に連動しません。
また接続部がボールジョイントのため、肩アーマー自体がその場で回転する構造になっています。
これはとても重要な機構で、バイオライダーの劇中スーツは腕を前に出すと、それに連動して肩アーマーも向きを変える構造なのですが、それをかなり忠実に再現出来るようになっているわけです。
本来、胴体接続型の肩アーマーは、腕を前に出すと浮き上がり、肩や上腕の筋肉の盛り上がり部分に乗っかるような形になりますが、この構造はそれも防げるわけです。
この辺の工夫は、素直に絶賛したいと思います。
今回も、ロボライダー同様の引き出し式腰関節があります。
最大まで引き伸ばすと、これくらい背丈が変わります。
ただし引き出し過ぎると、前屈させた際に中身が見えちゃいます。
引き出し式にも関わらず、思ったより前屈出来ないのは、ロボライダーと同様です。
これが、バイオライダーには結構きつい。
「サンライザー(バイオタイプ)」及び、下半身。
これが、先に触れた問題の「皺」です。
確かにちょっと煩い気もしますが、それよりも皺のモールドがあまり細かくなく、RXのパンツみたいに何となくぞんざいな感じにされている所に、違和感を覚えます。
バイオライダーは、名乗りやら見得切りなどで結構大股を開くことが多いのですが、残念なことに、今回の股関節可動範囲はあまり広いとは言い難いです。
タイプとしては、RXのようにパンツ部分の一部が脚部根元と一体化している形状なんですが、横方向の展開がややきつい感じになります。
その原因は、太股パーツの上部にあります。
バイオライダーの太股の付け根部分は、ボールジョイント接続部がかなり下付きになっている(というか上にパーツが伸びすぎ)のため、これがパンツ内部で引っかかるのです。
このため、つっかい棒状態が発生し、横方向への可動範囲を狭めているわけです。
前後には、このくらい脚を開けます。
一見かなり自由度が高そうに見えますが、これは引き出し股関節を目一杯引き出し、その上で限界まで曲げている状態でして、決してスムーズに行える展開ではありません。
むしろ、人によってはここまで開けることに気付かれていない方も、おられるかもしれません。
それくらい、バイオライダーの股関節可動範囲には、独特の癖があります。
こういった特性のため、膝立ちさせると身体が傾くようになってしまいます。
一応、腰関節の捻りで上体だけ垂直には出来るのですが。
胴長に見えちゃって、決めポーズがイマイチ決まらないんだよなあ……
こんな感じで、バイオライダーは造形的にも可動範囲的にも難の多い商品なんですが、更に致命的な問題が。
なんと、あの特徴的な手「指をカギ爪状に曲げた手首」が、一切付属していません。
代わりに付いているのは、普通の開き手と、開き手の薬指・小指だけが折れ曲がった手首のみ。
このため、名乗りポーズも、攻撃合間に取る構えも、スパークカッター後の決めポーズも、締りが悪くなってしまいます。
バイオライダーの構え時の手首は、人差し指の第二関節が手の甲より上がるくらい、大きく指を曲げてかつ開いたものです。
所謂、野獣の爪を模したような構えといえば、通じるでしょうか。
つまり、本商品の付属手首では、表情が大人しすぎるわけです。
ましてバイオライダーは、名乗り時に指の形を変える動作があるくらいなのに……何故ハブったのか、本当に意味不明です。
その上、大して代わり映えしない開き手を付けるとか、いったいどういう意図なのかと。
せっかく手首の数が多いのに、これではガッカリです。
顔の造形といい、首の形状といい、ろくに映像資料を確認していないのではないかとすら思わされます。
まだあります、問題点。
今回付属するバイオブレードは、刀身がクリア&グラデ塗装という、所謂光っている状態を表現したものとなっています。
ところがバイオブレードに関しては、光っている状態より無灯火?状態の方が、露出も使用頻度も高いのです。
RXの時は、リボルケインを二種、しかも刀身を差し替えで色んな状態を再現出来るようにしてあったのに、何故今回はこういう所で手を抜くのか。
適当過ぎるにも程があります。
それでもめげず、とりあえず色々動かしてみます。
「俺は怒りの王子!」
まずは、名乗りポーズ。
バイオライダーは細かなバージョン違いが多すぎるので、初登場時のもので。
「アール!」
「エックス!」
「バイオッ!!」
この顎上げが好き。
「ライダーッ!!」
クワッ!
やっぱり、最初の名乗りが一番サマになるなあ。
クワッ!
「バイオブレード!」
ああ、この手首だと再現出来ない……
この取り出し方、あまりやってくれませんでしたね。
この場面では、刀身は光っているので、これで正解です。
バイオライダーって、姿が変わっても躍動時のポーズがちゃんとRXを踏襲しているところがイカスんですよね。
必殺技「スパークカッター」。
ロボライダー同様、技名呼称がないので、知らない人も多い?
下から上に切り上げるというのが、独自性あって好きです。
斬られ役は、たまたま取り出しやすい位置にあった「仮面ライダーアビス」。
バイオライダーのバイクはマックジャバーですが、実はほんの少しだけアクロバッターにも乗っています。
というこじつけで、アクロバッター(リニューアル版)に乗せてみました。
股関節の可動範囲やら、脚の太さやら、バイク自体の大きさやら諸問題が重なり、えらいみっともない姿勢になっちまいました。
今回は、付属の手首でなんとかグリップを掴めました。
といっても、手首を横に捻った武器持ち手のみですが。
マックジャバーには、ちゃんとグリップ保持用手首付いてくるのかなあ?
改めて、BLACK、RX、ロボライダーと揃い踏み。
本来ありえない光景ではあるんですが、一度とはいえ映像化している分イメージが確固たるものになって、感動の度合いが変わります。
出来に文句はあれど、これによる感動と迫力は、また別な話。
それにしても、これをフィギュアで再現できる日が、本当に来るなんて……
以上、バイオライダーでした。
【買ってみて一言】
正直なところ、今回は完成度・再現度共に、あまり高いとは言えません。
といいますか、作りこまれた部分と妙な手抜き感を覚える部分が、ムラっ気たっぷりで混じり合っているような、何とも表現し難い感覚が残ります。
顔、手首、可動範囲、武器と不満点が多く、お世辞にも褒められた出来ではなく、同時期の他フィギュアーツと比較しても(ロボライダーはともかく)、粗がかなり目立っています。
確かに、バイオライダーの可動フィギュア化なんて、今世紀中はもうありえないような気もするので貴重といえば貴重なんですが、だからこそ決定版……とはいわなくても、もう少し満足感の得られる商品にまとめて欲しかった、という思いが拭えません。
特に、バイオライダーの特徴的なポイントばかり、まるで狙ったかのように外しているのは頂けません。
以前のフィギュアーツで良く云われていた「もっと本編情報をしっかり取り入れろ」「マスクやスーツの形状をもっとしっかり把握しろよ」といった意見が、また再び脳裏に浮かぶようです。
とにかく、今回は「煮詰め」が圧倒的に足りず、やっつけ仕事で作ったんじゃないかと思えるほど、筆者の評価は低いです。
まあ、ぶっちゃけロボライダーと殆ど変わらない構造(というか素体)のため、本来であればロボライダーの方も同じくらい低評価になって然るべきなんですが、あちらはあまり大きな動きをしないから、難点も目立たずまだ良かったのです。
思い切り動きまくるバイオライダーだからこそ、欠点が目立ったというところでしょうか。
と、ネガティブなことばかり書いてもしょうがないので。
それでもやはり、RX系ライダーがこの時代に勢揃いしたというのは、間違いなく快挙です。
出来が云々といっても、それは他のフィギュアーツと比較した際の話でもありますし、可動フィギュア全体からすれば、ある程度以上の水準を維持していることには変わりありません。
それに、スーツの質感の再現や皺の表現、特に肩アーマーの工夫などは秀逸で(一部好き嫌いは分かれますが)、その他小物類の作りも凝っています。
バイオブレードも、これ自体は大変良く出来ていて、刀身だけでなくグリップ周辺も良く作り込まれていることが判ります。
マスクのツノ周辺のモールドや、ツノ内側の黒線なども、綺麗に処理されていますね。
あと、これは最後に言っておきたいのですが、実際に弄っていると、上記の問題点がだんだんに気にならなくなります。
散々言っといて今更なんだと思われるかもしれませんが、細かなポイントの難は度外視出来なくても、総合的なスタイルのまとまりは悪くないので、実際にポージングをさせた時の説得力は、なかなかのものになります。
確かに、一部思うようにいかない可動部もありますし、多少は妥協を要する箇所もありますが、時には「これはこれで魅力的」と思わされる時もあって、愛着は充分持てるのではないかと思います。
実際、撮影の時にポージングしている時は、BLACK系4大ライダー中一番楽しかった気がします。
バイオライダーに思い入れがある方で、パッと見で許容範囲内だとお感じになられた場合は、手に取られる価値は充分あるんじゃないでしょうか。
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