ゴセイジャーはなぜつまらない!?

鷹羽飛鳥

更新日:2011年1月1日

 某所から、「ゴセイジャーについての鷹羽的評価が聞きたい」とのリクエストを受けた。
 リクエストしてきた人は、ゴセイジャーがかなり嫌いな様子で、“きっと鷹羽も気に入ってないに違いない!”と考えて依頼してきたようだ。
 はてさて、ご期待に応えられるだろうか。

 クリスマス商戦も終わり、あと1か月程度で終わるというのに、どうにもこうにも『天装戦隊ゴセイジャー』はノレない。
 こんなにテンションが上がらないのは、『超力戦隊オーレンジャー』以来だ。
 戦隊シリーズなら、気に入らない作品でも大抵1つや2つは美点があるものなのだが。
 美点…鷹羽的に気に入るポイントと言った方が正確かもしれない。
 逆に言うと、美点が多い作品でも、欠点も山ほどあったりして総合評価が低い作品もあるのだが。
 『五星戦隊ダイレンジャー』なんかいい例だ。

 本来なら、番組終了後に、『スーパー戦隊の秘密基地』で書くべきところなのだが、書きかけの作品の分が書き上がるまで待っているといつになるか分からないので、せっかくのリクエストだし、気分屋の方に書いてみるとしよう。

 鷹羽は、『ゴセイジャー』は大きく4つの点で失敗していると思っている。

  1. キャラクターに魅力がない
  2. 敵側の力不足
  3. ヘッダーシステムの失敗
  4. スピード感に欠ける戦闘
 それらについて1つずつ考察してみよう。

1.キャラクターに魅力がない

 敵味方合わせても1人も魅力的なキャラがいない!
 これはどうしたことだろう。
 『獣拳戦隊ゲキレンジャー』は、スーツのデザインは最低(ベルトがないなんて信じられない!)だし、内容的にも相当スカスカだったが、アクションは素晴らしくハイレベルだったし、キャラ的にもメレ&理央の臨獣拳ペアはおいしかった。
 ここ数年はキャラ描写が薄い戦隊が多い気がするが、それでも1作品に1人や2人はマシなのがいる。
 『ゲキレン』にせよ『炎神戦隊ゴーオンジャー』にせよ、正義側のキャラクターは個性がほとんどないかの如きものだったが、せめてレッドだけはまだそれなりに手厚かった。
 『ゲキレン』の場合、ほかの4人のメンバーは空気だったが、ジャンだけは理央との因縁の対決的な部分もあったため、それなりにキャラが立っていた。
 拳魔マクが敵方の中心にいた夏から秋にかけて番組のテンションが落ちたのは、理央が過激気に対抗できず首領の座から転げ落ちたために“ライバル達が競い合う”という番組のコンセプトからはずれ、牽引力が大きく削がれた結果だ。
 『ゴーオン』にしても、有象無象の中で、走輔の頭1つ飛び抜けたバカっぷりは捨てがたかった。
 走輔バンキが名乗りポーズを取るシーンなんて、大笑いを通り越して、見てはいけない世界に足を踏み入れたかのような格好良さがある。

 だが、である。
 鷹羽は、敵味方合わせても『ゴセイジャー』のキャラに魅力を全く感じない。
 見た目の印象が軟らかすぎて迫力を感じないために画面が締まらないアラタ。
 「天真爛漫」というのは頭が空っぽって意味じゃないよと教えてやりたくなるエリ。
 目が虚ろで焦点が定まらないため、いつも誰かに操られているかのようなアグリ。
 中身がなくてお子様で全く成長しないモネ。
 落ち着いているんじゃなくて感情が一部欠落しているとしか見えないハイド。
 「人間じゃないから」では済まされない、彼らの内面描写の薄さと演技のまずさなどが相俟って、誰1人として感情移入できない。
 スカイック、ランディック、シーイック族という種族分けも失敗甚だしく、彼らの性格が個性ではなく種族の特性に堕してしまった。
 それは、例えば「やっぱA型だよな」「まったくがさつで、これだからO型は…」といった血液型による性格の傾向という半ば迷信めいたものを正面切ってやっているようなものだ。
 血液型占いを全否定するわけではないが、少なくとも世界中の人間の性格が4つに分けられるはずがない。
 それを、『ゴセイジャー』では、スカイック族だからこう、という言い方をする。
 そんなのは、個性でも何でもない。
 言ってしまえば、「あいつは吸血鬼だから、昼間出て来られないんだよね」というレベルなのだ。

 キャラが薄いのは5人だけではなく、画面の向こうから映りの悪い通信で話しかけてくるばかりで、地上に降りるための(5人を助ける戦力を送るための)努力をしているような気配がさっぱり感じられなかったデコレーションモアイ:マスターヘッドなどは、声だけだった方がむしろ個性が生まれたのではないかと思うほどだ。
 ゴセイナイトも、何のために戦うのか、どうして人間を守るのかについて葛藤があったはずなのだが、何だかよく分からないうちに「人間が好き」になってしまった。
 望との関わりで意識に変化が起こったと言いたいのだろうが、あれでは描写が薄すぎる。
 望がアラタ達と知り合ったことで変わっていったという部分も、描写が足りなくて説得力に乏しい。
 天知親子は、『ギンガマン』での青山親子に相当するキャラだが、天知博士がゴセイジャーの正体を知らないという設定にしたせいなのか、天知天文研究所を単なる住処とだけしてしまったせいなのか、本筋にロクに絡むことができず、影が薄い。
 或いは、演じる山田氏のスケジュールを考慮して出番を少な目にできるようにしたのかもしれないが、だったら山田氏を起用しなければいいだけの話だ。
 『仮面ライダーW』で、立ち位置が似ていて、なおかつ恐らく山田氏より多忙であろう刃野刑事役:なだぎ氏がキャラ立ちしていることを考えると、メイン5人の影が薄いアオリを受けたのかもしれない。

2.敵側の力不足

 キャラに魅力がないのは正義側だけではない。
 敵方も魅力に乏しい。
 例によって着ぐるみ幹部ばかりだというのもあるが、何よりまずいのは、短命な3つの組織が次々襲ってきたことだ。
 過去、敵組織が(ゲスト的なパターン以外で)複数登場したのは、『忍者戦隊カクレンジャー』と『轟轟戦隊ボウケンジャー』の2つだけ。
 だが、『カクレンジャー』では、初期組織の妖怪忍軍に組織性が薄かったことから明確な組織の交代はなかったので、実質的に複数の組織が登場するのは『ボウケンジャー』だけとなる。
 『ボウケンジャー』では、ゴードム文明、ジャリュウ一族、ダークシャドウ、クエスターと4つの組織が同時に存在し、そのいずれか或いは複数が同時に襲い掛かってきた。
 ちなみに、ゲスト的なパターンというのは、『鳥人戦隊ジェットマン』での三魔神のような数話限り登場の敵組織の場合だ。

 複数の組織が登場するというのは、一見豪華なようだが、その実、1つ1つの組織が弱い印象を与えるという弊害がある。
 『ゴセイジャー』では、ウォースター、幽魔獣、マトリンティス帝国と、3つの敵組織が次々と襲ってくるが、逆に言えば、登場から短期間で滅んでいる。
 ウォースターと幽魔獣はそれぞれ16話、マトリンティスに至っては、わずか12話で滅んでしまった。
 マトリンティスの場合、結局は首領:ロボゴーグと秘書:メタルAだけの組織で、名前こそ大仰だが単なる個人商店に過ぎなかった。
 三度目の正直でブレドラン(武レドラン、ブレドRUN)の反逆を許したこと(それも大したドラマもないまま)により、高慢親父の独り相撲に堕してしまったのも、弱小組織という印象を強めている。

 基本的に、トクサツでは、幹部が1クールごとに交代するという展開は珍しくない、というより割とメジャーだ。
 例えば『星獣戦隊ギンガマン』では、サンバッシュ、ブドー、イリエス、バットバスの4幹部がそれぞれの配下を率いて戦っては敗れていった。
 『ゴセイジャー』では、これを「軍団」でなく「組織」に置き換えたという形式なわけだ。
 4軍団だと1つ当たり12話程度だから、それより長いと言える。
 だが、『ギンガマン』では、年間通してバルバンという1つの組織があり、首領であるゼイハブがいたから、幹部が次々死んでも組織として弱く見えるということはなかった。
 それに対して、ウォースターの首領モンスドレイクの弱さと来たらどうだ。
 短命な組織だったくせに幹部がテレビ本編だけで3人も出ていたものだから、モンスドレイクは活躍する場がない。
 12話でのデレプタとの共同戦線は1話限りで失敗、その後15話で直接乗り込んできたはいいがそのまま死亡しており、ちょっと強い怪人、百歩譲って幹部程度でしかなかった。
 敵が弱く見えるということは、それに苦戦する正義側も弱く見えるわけで、相対的にゴセイジャーは弱い戦隊という印象になってしまう。

3.ヘッダーシステムの失敗

 『ゴセイジャー』の商品展開の中心は、大きく分けて2つ。
 ヘッダーと、ゴセイカード。
 ヘッダーは、巨大ロボの合体メカの先端部であるほか、ロボの強化用パーツであり、等身大での銃の強化用銃口となる。
 基本となるドラゴン、フェニックス、スネーク、タイガー、シャークの5つのヘッダーは、5人のマスク側頭部のデザインに対応しており、設定上は、これらが飛行機等の姿を写し取って合体メカとなり、1号ロボ:ゴセイグレートになる。
 ゴセイグレートには、全身数ヶ所にヘッダー接続用のジョイントがあり、スカイックブラザーヘッダーなど後発のヘッダーをゴセイグレートのヘッダーと交換するなどして接続して、スカイックゴセイグレートになるなどの強化をする。
 また、中盤以降、ミラクルゴセイヘッダーが登場し、ゴセイテンソードにセットすることでスーパーゴセイジャーにパワーアップするほか、ゴセイアルティメットのボディ正面に合体して腹部の顔を構成し、かつ、必殺技として敵に向かって発射されるなど様々な用途に使われている。

 だが、敢えて言えば、これが『ゴセイジャー』最大の失敗要因だろう。
 等身大で武器に合体し、巨大化後は巨大ロボのパーツとなるという設定は、玩具展開でゴセイグレートのパーツである各種ヘッダーをゴセイブラスターの銃口に合体させるというもので、『ゴーオンジャー』からの“合体ロボとなりきり玩具の連携”という流れに乗ったものだ。
 だが、これまでの2作品との決定的な違いは、
  1. 巨大ロボのパーツの一部でしかなく、本体構成に影響しない
  2. 3個一組のヘッダーは、等身大では1人で召喚すると持て余すため、3人以上揃った状態でないと使えない
  3. ゴセイグレートのパーツとなるメカはメインの5ヘッダーしか作り出さず、強化用のヘッダーはヘッダーだけで完結している
というものだ。
 ヘッダーは、その形状、大きさから、電子部品を内蔵できず、武器に内蔵することもできず、ロボと合体するにも可動部分に持っていけないというかなり使い勝手の悪い存在だ。
 結局、頭部や手首足首、胸部の飾りといったロボの外見的にも僅かな変化に留まり、ゴセイグレートは体中あちこちにジョイントを持ち、一切ヘッダーがなくても取り敢えず外見上困らない程度に存在できるという歩く帽子掛け状態になってしまった。
 さらに、ヘッダーだけでは何もできない。
 例えば、ばら売りの合体メカにエンジンソウルや秘伝ディスクが同梱されていたのと違い、スカイックブラザーセットといった具合にヘッダーだけで売るという方式なのだ。
 ガンパードや兜折神などを単品で買ってどうするんだという気もするが、それでも単体でメカになっている。
 また、バルカ・ガンパード・キャリゲーターら単品メカを揃えればガンバルオーに、兜・舵木・虎の単品折神を揃えればダイテンクウに、それぞれ合体できる。
 というより、そもそもガンバルオーやダイテンクウは、単品売りのメカを集めるタイプの合体メカだったのだが。
 対してヘッダーは、ブラザーセットをいくつ買ってもそれだけでは何もできない。

 その上、キャラとして見ても、ヘッダーに個性は皆無だ。
 一応自意識を持つゴセイジャーのパートナー的な存在のはずなのだが、“呼べば応える飛んでくる”便利な道具程度の印象しかない。
 これは、呼ばれるまで出てこない上に、言葉を話せるヘッダーがグランディオンヘッダー(ゴセイナイト)だけなため、意思の疎通が描写されないまま帰ってしまうからだ。
 『ゴーオン』の炎神達や、『アバレンジャー』の爆竜のように喋れる奴らは、それだけでまだある程度自己主張できたので、キャラ立ちについて論じられたが、ヘッダーではキャラであるかどうかから論じなければならないのだ。
 しかも、ヘッダーであるゴセイナイトまでヘッダーを使うのだから、もう何が何だか。
 バルカンヘッダーなんか、砲身以外の何者でもないと思うのだが、あれに愛着を持てる人っているんだろうか?
 こんなものが、売れるはずがない。

 ついでに言うと、商品化の関係で、ミラクルゴセイヘッダーの登場の描写がないがしろにされた面もある。
 『ゲキレンジャー』での過激気の覚醒と同様、どうしてみんな同時にパワーアップしたのか? という疑問が解消できないのだ。
 例えば『シンケンジャー』では、パワーアップアイテムのインロウマルが1個しかないため、スーパーシンケンジャーになれるのは一度に1人だけという制限があった。
 対して、ミラクルゴセイヘッダーによるスーパーゴセイジャー化では、ドラマがあるのはアラタだけで、ミラクルドラゴンヘッダーがアラタに懐いた途端に他の4体も他の4人に懐いてしまった。
 それ相応のドラマを伴わないパワーアップでは、印象も深くはなかろう。
 せいぜい“金ピカで格好いい”レベルの存在でしかない。
 同様に一度に全員パワーアップした『デカレンジャー』『マジレンジャー』では、“全員で試練に挑む”というドラマがあった。
 尺の関係や商品化の都合などもあり、多少やむを得ない面もあるにはあるが、それでもやはり唐突感は否めない。
 しかも、パワーアップアイテムであるゴセイテンソードは、内部でヘッダーを回転させるという訳の分からないギミックを搭載したせいで、安全措置のために透明なドームが必要になったりして、相当に不格好だ。
 ヘッダーという電子機器を内蔵できず、単体のギミックは口が開く程度という中途半端極まりないアイテムを活かそうとすれば回転させるくらいしかなかったのかもしれないが、これはつまらない。
 まして、このミラクルヘッダー最大のギミックは、ゴセイアルティメット合体時に5つ並んでおっさんの顔になるというもので、もはや何を考えているのか理解に苦しむレベルに達してしまっている。

4.スピード感に欠ける戦闘

 もう1つのガンが、ゴセイカードシステムだ。
 ゴセイジャーは、ゴセイカードをテンソウダーに挿入することで、変身、個人武器やヘッダーの召喚、風や石や水などを操るなどの天装術を使える。
 『マジレンジャー』で、勇気を示すと魔法の呪文が降臨したように、ゴセイジャーに何らかの変化があると、白紙状態だったカードに絵柄が表れ、使えるようになる。
 このシステムは、『仮面ライダーディケイド』でのカードシステムを踏襲したもので、『ディケイド』がガンバライドと連動していたのと同様、アミューズメントのゲーム筐体:ダイスオーと連動している。
 『ディケイド』がガンバライドとの連携で好評を博したのに気を良くしてのことだろう。
 『ディケイド』では、なりきり系であるDXディケイドライバーやライドブッカー、フィギュア系であるFFRシリーズに、それぞれ関連する能力を司るカードが付属していた。
 これらカードは、ガンバライドで使用できるほか、ガンバライドで1回遊ぶごとに手に入るカードがDXディケイドライバーでも使用できるといったプレイバリューを構築した。
 例えばディケイドライバー付属のアギトのカードは、ガンバライドではアギトを使用するためのカードだが、テレビ本編では、ディケイドがアギトに変身するためのカードとして使われる。
 ガンバライドと本編では効果が異なるが、少なくとも玩具と本編では本編中の使用方法と同じやり方で玩具での使用が可能だ。
 もちろん本編で使われた全てのカードが活かされているわけではなく、イリュージョンやクロックアップといったアタックライドのカードは玩具には付属せず、ガンバライドでも使えない。
 というより、分身や加速など能力付加系のカードは、そもそも商品として存在しない。
 これは、FFRシリーズのような他のライダーの変形玩具、ガンバライドのようなコンピュータ対戦型ゲーム用のアイテムとしては、“特定の姿での戦闘補助用能力”を司るカードに意味がないせいだろう。
 DXディケイドライバーならば本編中に使ったカード全て付属させても問題ないのだが、金額的な問題や商品展開の計画などから、やはり別商品に結びつかない能力のカードは付けられなかったと思われる。

 当然、『ゴセイジャー』は、ディケイドライバーの成功を受けての企画だから、同様の商品展開になることが期待される。
 だが、ライダーと戦隊との毛色の違いは、大きく影を落とした。
 『ゴセイジャー』では、変身・技・武器・巨大メカ召喚など、ノーマルのゴセイブラスターを撃つ以外ほとんど全ての戦闘行動にカードが必要になる。
 これだけならディケイドとさほど変わらないが、ライダーと戦隊の決定的な違いは、戦隊は“キャラや巨大メカが非常に多い”ということだ。
 基本のヘッダーだけでも5人それぞれが持っている上、巨大ロボ召喚、ロボ必殺技、個人武器召喚、天装術による技など、単純に考えてもライダーの5倍は必要になる。
 まして連動しているダイスオーで使えるのは、5人の変身カードと巨大ロボのカードくらいで、武器の召喚カードなどは不要だ。
 逆に、ダイスオーで使う他の戦隊ヒーローのカードは、本編と全くリンクしないときている。

 これだけでも、商品展開的には頭が痛いところだが、ゴセイカードには、更に大きなマイナスがある。
 これもまたライダーと戦隊の違いによる影響が大きいのだが、まずテンソウダーのかっこ悪さが目立つ。
 潰れたモアイのような外見もさることながら、カード挿入口を開いた時の「ガッチャ!」という声も情けなく、しかも挿入口がモロに口!
 更に困ったことに、両手を使わなければならない。
 ディケイドライバーは、片手で剣を持って戦いながら、もう片方の手でカードを装填する動作が行えるため、戦闘中に突如分身したり他のライダーの姿になったりといった使い方が秀逸だった。
 ところが、ゴセイジャーが戦闘中に天装術を使うには、まず左手でテンソウダーを構えて右手で開き、更に右手でバックルからカードを取り出して装填してテンソウダーを閉じるという動作が必要になる。
 オマケに、その度に「ガッチャ!」という情けない声が響き渡るのだ。
 戦闘の緊迫感などどこかに吹っ飛んでしまう。
 細かいことを言えば、バーコードを読み取る際のギミックにも問題がある。
 ディケイドライバーは、カード挿入時にまず「アタックライドォ」などと能力の種類を発声し、バックル回転時に更に「イリュージョン」などと能力の内容を発声する。
 対して、テンソウダーでは、挿入口を開いた時に「ガッチャ!」と統一の音声で、カードを挿入して挿入口を閉じた時に「エクスプロージョン! スカイックパワー!」などと発声する。
 この「ガッチャ!」という声は、商品のメインターゲットの年齢層が低めなせいもあってか非常に緊張感がなく、締まらない。
 せめて『龍騎』のバイザーのように「カシャッ」という機械音ならいいのだが、モロに声で擬音を表現するので、間抜けに聞こえてしまう。
 僅かな違いのようだが、この差は、演出上はかなり大きい。

 カードを使っている本人が画面に映っていない状態、例えば、別の誰かが戦っているところに助けに入るような場合を考えてみると分かりやすい。
 戦隊シリーズでは、他のメンバーのピンチに、(大抵はその回の主役が)突然割り込んで敵の攻撃をはじき返す、或いは敵を奇襲するといったパターンがよくある。
 ピンチの瞬間に助けが入るという、良くあるパターンだがカタルシスの得られる演出だ。
 だが、『ゴセイジャー』でこれをやろうとすると、ゴセイブラスターやキック以外はやりにくい。
 例えば、4人がピンチのところにレッドが突然割り込んで助けるとしよう。
 ここで、天装術でスカイックパワーを使おうとすると、まずどこからか「ガッチャ!」という世にも間抜けな声がして、その後「エクスプロージョン! スカイックパワー!」という声と共に竜巻が襲ってくるという流れになる。
 だが、「ガッチャ!」の時点で、視聴者は先の展開が分かってしまうし、何より緊張感が削がれる。
 実際のところ、テレビ本編では、「ガッチャ!」を省略しているようだが、それでは御都合主義的だ。
 この点、『ディケイド』だと、『アタックライド』はカード挿入音だから、タイムラグが少なく、『アタックライド…スラッシュ!』のように連続で流れることで緊迫感が持続するのだ。

 更に、イメージ統一とダイスオーのため、ヘッダーであるゴセイナイトまでもカードを使うことになった。
 それも、商品としてのレオンセルラーには金額設定上バーコード読取機能が付けられないのにもかかわらず、だ。
 結果、商品としてはカードがなくても音声が発動し、本編ではロボに合体した後、つまりゴセイナイトの手がない状態で、レオンセルラーにカードを挿入してボタン操作するという謎のシーンが入ることになってしまった。
 この辺は、年間の見通しのまずさと言えるだろう。

 クリスマス商戦を前に、『仮面ライダーオーズ』関連商品はほぼ品切れ状態なのに、『ゴセイジャー』関連商品はダダ余り状態という現実は、商品展開の失敗を如実に示している。
 『シンケンジャー』も相当売れ残っていたが、それでも基本アイテムであるショドウフォンやシンケンマル、シンケンオーは売れていたのに、『ゴセイジャー』ではテンソウダーさえ売れ残っている。
 また、『シンケンジャー』では、クリスマス商戦の頃は『W』関連がほぼ売り切れ状態になった後は客が流れてきた(要するにライダー商品がないから戦隊商品を買う客が多かった)のだが、『ゴセイジャー』にはそういう流れが見受けられなかった。
 もちろん、ベイブレードなど他のライバル商品もあるから、ライダーが駄目なら戦隊という短絡的な流れになるとは限 らないのだが、それにしても、という感がある。
 商品的な失敗だけでも痛いが、もし劇場版『ゴセイジャーVSシンケンジャー』の興行成績までコケたら、戦隊シリーズの先行きすら危なくなる。
 東京ドームシティGロッソでの閑古鳥ぶりも耳に入ってくる昨今の情勢からすると、杞憂とばかりも言えないような気がする。
 あっちは、『ゴセイジャー』の役者が出てさえもなかなか満席にならないとかで、とうとうテコ入れで同じシナリオのショーにシンケンジャーの出番を作ったとか何とか…。
 過去戦隊のレッドが数人出るのはかつては伝統だったが、過去戦隊のメンバー5人全員が出るってのは、ちょっと異常事態だ。
 しかも、劇場版との兼ね合いでそういう企画をしたというのなら別だが、途中テコ入れでシンケンジャーが登場するようにシナリオ修正したらしい。
 鷹羽はどっちも見ていないから、四の五の言うことはできないが、集客力をシンケンジャーに頼る変更だということは間違いなかろう。
 普通は、少なくとも役者人気で集客力出ちゃうもの。

 やっぱ一番の問題は、メイン5人に魅力がないことだよなぁ。
 役者的にも、シナリオ的にも。
 役者的な部分は、既に書いたとおりだが、そもそもゴセイジャー自身、未だに「星を護るは天使の使命」なんて名乗りを続けているものだから、地球を護っているのが使命だからなのか、自分の意志でなのか不明瞭になる、もっと言ってしまうと、護りたいのが地球なのか人間なのかさえ明確じゃないという問題を積み残しているんだから、どうしようもないんだよなぁ…。
 いや、言いたいことは分かるんだよ。
 人間は地球を滅ぼすほど愚かではないから、地球の管理は人間に任せる、だから人間を脅かす者と戦うことが地球を護ることに繋がるんだ、という理屈は分かる。
 けれど、だったらせめて、天使の使命だから地球を護るんだなどと言わないでほしい。
 「天罰を下す」なんて上から目線で地球の生物を殺さないでほしい。
 少なくとも幽魔獣は地球の生物だし、ロボゴーグも種族は多少違うけど地球人だ。
 ロボゴーグは、元々人類を滅ぼすつもりはなく、地球の管理を自分がしようという思想の持ち主だった。
 それなのにゴセイジャーは、人間の自由と尊厳を護るために地球人を殺したのだ。
 ロボゴーグが元々人間であることに気付きながら、そしてそのことを本人に突きつけながら、敢えてゴセイジャーは「天罰を下」し、ロボゴーグを殺したことを心底喜んでいた。
 マトリンティスは、高慢なおっさんが、自分の作った秘書ロボットと侵略ロボットを率いて世界征服を目指すという、『超電子バイオマン』の新帝国ギアのダウンサイジングバージョンでしかない。
 『バイオ』最終回では、最高傑作の巨大ロボに乗って戦い敗れたドクターマンが「地球を道連れに死んでやる」と爆弾のスイッチを入れるが、なぜか爆弾の停止スイッチが現れるというエンディングとなる
 この停止スイッチは、ドクターマンに僅かに残った人間らしい心が、息子:秀一の叫びに応えたのだという解釈が示されている。
 そのお陰で『バイオマン』は、ドクターマンを倒してめでたしめでたしではなく、地球が爆発しなくて良かったでもなく、「秀一君の心がドクターマンに届いた。ドクターマンは死ぬ前に人間の心を取り戻した」から良かった、という方向にシフトできた。
 『バイオ』と『ゴセイジャー』ではテーマが違うから全く同じ論点で語るわけには行かないが、それでも相手を人間とした以上、人間として扱わなければならない。
 だが、『ゴセイジャー』では、ロボゴーグが元々人間であるという(唐突な)真実は、“人間を蔑みながら、結局自分も人間でしかなかった”という、ブレドランの反乱を正当化するエクスキューズとしてしか意味をなさなかった。
 それなのに、ゴセイジャーは、「ボケ親父をぶっ殺してやったぞ、これで世界は安心だ!」とか本気で喜んでいる
 ロボゴーグが人間を脅かしたから「悪しき魂」として天罰を下したのだとしたら、ゴセイジャーは、戦争している国の指導者やテロ組織のリーダーにも“天罰を下す”必要があることになる。
 強力な爆弾を飲み込んで自爆テロをしようとした人間がいたら、空高く放り出して1人で爆死させ「犠牲者が出なくて良かった♪」と晴れ晴れと笑える恐ろしいヒーロー、それがゴセイジャーなのだ。
 これは、シナリオ的に非常に問題だ。

 まだ終わっていない番組に「失敗作」の烙印を押すのは早過ぎる感もあるが、ブレドランが元護星天使という話が出てしまうに至って、これはもう筋の通った最終回を迎えられないであろうことが確定したと言っていいだろう。
 ウォースター時代から、護星天使が護星天使見習いに負け続けていたということになるし、護星天使のくせに幽魔獣と行動を共にしていたという話も相当ムチャだ。
 しかも、実際にサイボーグに改造されているにもかかわらず、天装術カモミラージュでブラジラの姿になり、さもそれが本当の姿であるかのように振る舞うという描写には、薄ら寒いものがある。
 確かにブレドランは、登場した全ての組織に属しながら組織の目的とは異なる思惑で行動してきた。
 だから、複数の組織が次々と出ては消えていった『ゴセイジャー』の最後の敵に相応しいかも知れない。
 言ってみれば、敵組織が存在しなかった『デカレンジャー』におけるアブレラのような、年間の縦糸となる“敵方の顔”とでもいうべき存在だ。
 それは分かる。
 結局のところ、“姿を変えながら裏で糸を引いていた”という形にしたいのだろう。
 ウォースターが地球を侵略対象に選んだ理由は本編では語られていなかったはずだから、ブレドランが進言もしくは誘導していたのだと見ることもできるし、それは一見巧い手のように見える。
 だが、ウォースターと幽魔獣についてはともかく、マトリンティスについては、幽魔獣の活動をこっそり見ていて、滅ぶのを待って活動を開始したと明確になっている。
 ブレドランはメタルAが勝手な行動をする中で、瀕死体を回収され、改造され、記憶を取り戻したのであって、その過程にあった彼自身による能動的な動きは、メタルAに記憶を盗み出すよう頼んだことだけだった。
 事前にメタルAがロボゴーグの恐怖支配に疑問を感じていなければ、或いは、そもそも瀕死体を回収していなければ、ブレドランの復活はあり得ないわけで、そういう意味でも裏で糸を引いてどうこうということは言えないわけだ。
 まぁ、そんなことを言ったら、ブレドランは自分でエルレイの匣から膜インや筋グゴンを復活させておいて最後には封印しようとしていたりと、相当辻褄の合わない行動を取っているわけで、今更という感じではあるが。

 なんでも、主人公が天使見習い、本当の敵が元天使という展開は、前年に発売された『ドラゴンクエストIX』に倣っているという噂があるらしい。
 鷹羽はドラクエをやっていないので何とも言えないが、真似たかどうかはともかく、少なくともドラクエでは、もっと上手に伏線を張っていたであろうことは想像が付く。
 ブレドランがウォースター時代から何かを企んでいたのは分かるが、具体的なものは何も見えなかった。
 15話ではインデベーダーで特攻して果てたかに見せ、29話では膜イン達に裏切りを見破られてゴセイジャーに敗北と、視聴者側からすると単に負けて死んだとしか見えない状況だ(実際、29話では単に負けたのだが)。
 例えば、15話でブレドランが「ウォースターも終わりか。では、次の組織を…」とかやっていると、組織が壊滅した気がしないわけで、要するに、その都度敵組織が壊滅したとゴセイジャー(と視聴者)に思わせるためにブレドランにも死んだフリしてもらわなければならないというわけだ。
 そうして、死んだはずのブレドランがまた生きてた、とか、「え〜っ最後の敵なの?」とかいう今更感が増していく、と。

 その場限りな展開と描写に終始している『ゴセイジャー』の、いわばしわ寄せを一心に受けているのがブレドラン=ブラジラなのだ。
 恐らくは、1万年前に幽魔獣を封印した最強の護星天使のなれの果て、というオチなのだろうが、護星天使が勝利の後で闇に堕ちる理由や、その当時の記録が残っていない理由、幽魔獣が宿敵である護星天使と声が同じブラジラをあっさり仲間と信じた理由、右目がなくなっていたサイボーグのブレドRUNがカモミラージュの効果で両目のあるブラジラになれる理由などが納得のいく形で示されない限り、ご都合主義でいい加減なキャラでしかない。
 番組の矛盾の全てを背負い込まされてブラジラが死んで終わったら、戦隊シリーズ久しぶりの大コケってことになるなぁ。
 ものすごくそうなりそうな予感がするけど。

→ NEXT COLUM