轟轟戦隊ボウケンジャー

平成18年2月19日〜19年2月12日 全49quest + 劇場版 + Vシネマ1本

主題歌

 『ボウケンジャー』では、本編の一部であるアバン終了後、OPのタイトルコールの前に、
  命がけの冒険に、今日も旅立つ者がいる
  密かに眠る危険な秘宝を守り抜くために、あらゆる困難を乗り越え進む冒険者達
というナレーションが入り、その後、そのナレーションに応えるように「轟轟戦隊ボウケンジャー!」というタイトルコールが入る。
 
 OPのキャラクター紹介は、まず冒険者のイラストが映り、その冒険者の姿がボウケンジャー個々人に変化するといったもの。
 シルバーが加わった後にも、それぞれの紹介画面の絵は変わらず、単に少し短くなっただけだった。
 
 また、複数の敵組織が登場するという番組の特性上、敵組織紹介画面も各組織ごとに分かれているのだが、番組終盤になって組織が1つまた1つと消えていく中、OPからも滅んだ組織は消え、ヤイバがいなくなったダークシャドウでは、シズカがトレードマークの「ぺぺぺのぺー(あかんべえ)」をしている。

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基本ストーリー

 サージェス財団配下のボウケンジャーは、現代の科学水準を超えた危険な力を持つ秘宝:「プレシャス」を見付け出し保護することを任務としていた。
 ある日、ゴードム文明の遺跡発掘で、テスト入隊したブラック:真墨とイエロー:菜月を実地試験として先行させたところ、ブラックが遺跡のトラップを発動させてしまった。
 後を追ったレッド・ピンク・ブルーの3人が合流し、プレシャス「ゴードムの心臓」を発見するが、真墨が裏切って横取りしてしまう。
 実は、真墨はトレジャーハンターとしてレッド:明石を超えるため、入隊したふりをして宝を横取りするチャンスを狙っていたのだった。
 だが、真墨もまた、トラップの発動によって封印から復活した大神官ガジャにゴードムの心臓を奪われ、マグマの中に落ちそうになる。
 危ないところを明石に助けられた真墨は、いつか明石を超える日まで、ボウケンブラックとして活動することを誓う。
 5人は、ガジャが蘇えらせた巨神ゴードムをダイボウケンで倒すが、そこに別のネガティブシンジケート:ジャリュウ一族が現れた…。

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メンバー

ボウケンレッド:明石 暁(あかし・さとる)

 ボウケンジャーのチーフにして、かつて「不滅の牙」と呼ばれた凄腕のトレジャーハンター。
 個人武器はボウケンボーで、ボウケンジャベリンに変形させフルパワーで敵に突っ込むレッドゾーンクラッシュが必殺技。
 子供のころから香川慈門の冒険小説を愛読しており、その影響で冒険家を目指すようになった。
 パートナーだった柾木とキョウコを事故で失った過去を持つため、仲間を犠牲にすることをひどく嫌う。
 自他共に認める冒険馬鹿で、自分がワクワクするためなら仲間を悲しませたり不安に陥れたり生命の危機に晒しても(何とかなると予測すれば)気にしない。
 一方で、恋愛関係には極めて疎く、さくらの気持ちには全く気付いていない。
 「人には誰でも自分だけの宝がある」が信条で、仲間をスカウトする際はそれを口説き文句にしているが、自分は宝探しの類に対するワクワクが止められず、そのために冒険している。
 「ちょっとした冒険だな」が口癖。
 意外に縁起担ぎだったりもする。
 父親は、恐竜絶滅の理由を求めて探検を繰り返している学者で、冒険それ自体が目的化している明石とはケンカばかりしている。
 父:明石虹一を演じたのは、1970年代から香港クンフー映画に多数出演し、“和製ドラゴン”と呼ばれた倉田保昭氏。

ボウケンブラック:伊能真墨(いのう・ますみ)

 菜月とペアを組んで名を馳せていたトレジャーハンターで、4人目として新たにボウケンジャーにスカウトされたばかり。
 不滅の牙(明石)に対抗意識を燃やしていたため、ボウケンジャーになるつもりなどなく、最初からゴードムの心臓を横取りし、明石に一泡吹かせるつもりでミッションに参加していた。
 個人武器はラジアルハンマーで、必殺技はラジアルハンマーライトニングアタック
 駆け出しのころに闇のヤイバに殺されかけたことがあるため、宿敵としているが、ヤイバからは“心に大きな闇を隠している男”として目を付けられている。
 確かに、盗掘先で裸で倒れている記憶喪失の女性(菜月)を発見し、“可愛かったから”パートナーとして教育してペアを組んでいたという、とてつもなく危険な思考回路の持ち主なので、その心の闇は計り知れないだろう。
 一方で、赤ん坊レベルの知能だった菜月を一人前のトレジャーハンターに育て上げたのだから、教育者としての技能は相当なものだと思われる。
 明石とさくらが宇宙探検のために抜けた後、新チーフになった。
 グリーンピースが食べられない。
 彼が見付けた自分だけの宝は、ボウケンジャーという自分の居場所。

ボウケンブルー:最上蒼太(もがみ・そうた)

 ボウケンジャー3人目として参加した元産業スパイ。
 情報解析や情報収集が得意。
 個人武器はブローナックルで、必殺技はナックルキャノン
 スパイ時代は、スリルを楽しむために結果的に国を滅ぼすような活動さえしていたが、人を裏切り仲間をも信用できない仕事に嫌気が差してボウケンジャーに加わった。
 そのため、自分達を駒としてしか見ないサージェスには、時折不信感を露わにする。
 基本的に女の子好きで、常に軽口を叩いているが、根は純粋で熱い。
 精神的に余裕がある時は、女の子に軽口を叩く性癖を持っており、ネガティブシンジケートの中で唯一女性である風のシズカをよく構っている。
 彼が見付けた自分だけの宝は、心から信じ合える仲間。

ボウケンイエロー:間宮菜月(まみや・なつき)

 2年前、真墨が盗掘先の遺跡で発見した記憶喪失の少女。
 その際、左手のブレスレット以外何も身に付けていなかった(元々産着しか着ていなかったので、全くの裸だった)ことから身元が分からず、手掛かりを探すため、真墨のパートナーとなるべくトレジャーハンターとしての知識を叩き込まれた。
 時として、予知能力や凄まじい腕力を発揮する。
 その正体は、レムリア文明が滅びる時に冷凍睡眠についた姫君:リリーナだった。
 冷凍睡眠の中で、5千年に1歳ずつ年を取っており、今の年齢(約22歳)になったのだ。
 そのせいなのか、真墨の教育のせいなのか、非常に純粋で単純な子供っぽい性格をしている。
 当初は自分の記憶や家族を追い求めていたが、正体を知ってからはボウケンジャーの仲間を家族としている。
 個人武器はバケットスクーパーで、必殺技はスクーパーファントム
 彼女が見付けた自分だけの宝は、間宮菜月としての思い出。
 なお、彼女の父親役を演じたのは、『ダイレンジャー』キリンレンジャー天時星・知を演じた土屋圭輔氏、母親役を演じたのは『メガレンジャー』メガイエロー城ヶ崎千里を演じた、たなかえり(メガレンジャー当時は田中恵里)氏。

ボウケンピンク:西堀さくら(にしほり・さくら)

 ボウケンジャー2人目としてスカウトされた元自衛隊特殊部隊員。
 常に冷静で的確な状況判断ができ、戦闘に関する限りは明石以上の判断力を持つ…といわれるが、クエスターとの最終決戦の頃の行動を見る限り、素人以下の判断力しかなかったようだ。
 周りに影響されて能力が低下したのかもしれない。
 実家が西堀財閥と呼ばれる大金持ちであり、そういうところのお嬢様と見られるのを嫌い、自分の力だけで何かを掴むため自衛隊に入ったが、明石の「一緒に自分だけの宝を探そう」と口説かれてスカウトに応じた。
 個人武器はハイドロシューターで、必殺技はシューターハリケーン
 甘い物が好きで、休日に1人で甘味屋に行くのがストレス解消法。
 不器用で、自分の内面をさらけ出すのが怖いためにポーカーフェイスが巧くなってしまい、本音を表情に出せない性質だったが、これも仲間の影響か、思っていることがすぐ顔に出るようになった。
 明石にぞっこんなことは、明石以外の全員が知っている。
 彼女が見付けた自分だけの宝は、心からの笑顔。

メカニック:牧野森夫

 サージェス所属のメカニックマンで、ゴーゴービークルの製造・整備・修理や新兵器の開発を担当している。
 基本的にプレシャスに興味はない(仕事として扱っている)らしいが、アトランティス文明には強い憧憬を抱いているため、アトランティスの宝と思われた“ヴリル”は、主に個人的興味から自らの手で解析しようとした。
 普段は工房に籠もっているが、実は変装の達人であり、体型までも変えることができる。
 最終回でさくらに変装した際、見破った者はいなかったほど(ただし、よく見ると普段の動き方の癖や口癖がのぞいているので、決して完璧ではない)。

指令:ミスターボイス

 ボウケンジャーの待機場所であるサロンの3分割画面にCGで現れ、ボウケンジャーに指令を下したりプレシャスの情報を与えたりする管理職。
 逆さ円錐型のボディに目鼻があり、その脇にマッチ棒のような手が浮いているというデザイン(さくら曰く「とんがり野郎」)で、6人を「レッド君」「ピンクちゃん」などと呼ぶ。
 ほのぼの口調で喋るが、実は言っている内容はえげつないことも多く、6人の気持ちや他者との約束などよりサージェス側の損得が優先されている。
 ただし、ミスターボイスはあくまでもボウケンジャーへの連絡係という立場で、サージェス上層部からの命令を伝えているだけ。
 正体は、まだ10代らしき少女であり、ボイスチェンジャーを使って声を変えている。
 声を演じたのは、『ターボレンジャー』ナレーションなどの田中信夫氏。

ボウケンシルバー:高丘映士

 代々アシュを狩ることを使命としてきた高丘家の最後の1人で、父の仇であるアシュ:ガイを追っていたが、ガイがクエスターになり、高丘流のアシュ魂滅の技が効かなくなったためにボウケンシルバーとなった。
 個人武器はサガスナイパーで、必殺技はサガスラッシュ
 実は、人間である父:漢人(からと)とアシュである母:ケイの間に生まれた混血児で、自分の中のアシュの血に対する嫌悪と憎悪が高じるとアシュに変化するため、アシュの力を封じる力を持つ錫杖を手放せない…が、両親の間に確かに愛があったことを納得したことで克服した。
 明石の「(冒険が)好きだからこそ、どんなに辛くてもやめるわけにはいかない」という言葉により、アシュを滅ぼすという“高丘家の使命”から解放され、冒険者の仲間入りをした。
 彼が見付けた自分だけの宝は、冒険を楽しむ心。
 なお、彼の父親役を演じたのは、『宇宙刑事シャリバン』伊賀電を演じた渡洋史氏、母親役を演じたのは『メガレンジャー』メガピンク今村みくを演じた東山麻美氏。

レムリア文明の遺産:ズバーン

 レムリア文明が、他の文明を侵略するために使役する幻獣を制御するため、その天敵として作り出した機械生命体。
 聖剣形態と格闘戦形態を持ち、聖剣形態の時は刀身にエネルギーを集めて他者に振るってもらうことで攻撃し、格闘戦形態の時は足先に破壊エネルギーを集中して攻撃する。
 「ズ」「バ」「ン」という音声しか発声できないため、「ズバーン」と言う時のイントネーションで意思を表現している。
 また、3つの音の組み合わせは自由であり、「ズンズン」「ズバズバズバズバズバズバズババーン」などと言うことはできる。
 エネルギー源は人間の“喜びの感情”で、戦闘などで力を消耗してもすぐに補給できる。
 また、ダメージを受けても剣形態で暫く放っておくと自己修復する。
 レムリア文明の崩壊に際し、幻獣の卵を見張る形で、剣形態のまま封印されていた。
 ズバーンを私利私欲のために利用する意思のない者=正しい魂を持つ者を主として選ぶよう設定されており、意に添わぬ者が剣を握ろうとすると電撃を発して拒否する。
 邪心のない明石を主と認め、以後明石のために力を振るうようになる。
 とはいえ、レムリアの姫である菜月の影響を強く受けるようで、菜月がレイ達に操られていた際は、ボウケンジャーの敵に回り、菜月の剣として戦ったりもしている。
 普段は明石のズボンのポケットに入っていることが多い。
 明石が宇宙に行くに際し、レムリア人である菜月に受け継がれた。
 声を演じたのは、TVアニメ版『聖闘士星矢』フェニックス一輝などの堀秀行氏。

 1話のアバンタイトルでは、
 いつの時代も、未知の世界を求めて旅立つ者がいる。人は彼らを冒険者と呼んだ。サージェス財団は、世界各地で失われ掛けている貴重な宝を集める民間団体だ。宝とは、古代文明の遺物、沈没船や秘境に遺された財宝、そして絶滅寸前の動物まで様々である。中でも、現代の科学水準を超えた危険な力を持つ秘宝をプレシャスと呼ぶ。サージェスは、プレシャスを見付け出し守り抜く秘密チームを組織した。
というナレーションが流れている。

 ナレーションを聞いていると偉そうなことを言っているが、要するに、ボウケンジャーは、サージェスに雇われた盗掘者集団であり、サージェスから支給されたパラレルスーツその他のアイテムを駆使して、サージェスが示したプレシャスを入手することを任務としている。
 普段は、サージェスミュージアムの奥にある秘密のサロンに待機しているが、交代で非番があり、常に全員が待機しているとは限らない。
 住居もサージェスから与えられているようで、正に至れり尽くせりの環境と言える。

 なお、5人の名前は、歴史上の人物の姓に変身後の色にまつわる名前という、ちょっと凝った付け方になっている。

  • 明石 暁  明石元二郎 + 暁(「あかつき」とも読む)
  • 伊能真墨  伊能忠敬  + 墨
  • 最上蒼太  最上徳内  + 蒼
  • 間宮菜月  間宮林蔵  + 菜の花・月(いずれも黄色)
  • 西堀さくら 西堀栄三郎 + 桜色
  • 高丘映士  高丘親王  + Ag(銀の元素記号)

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変身システム

 「レディ!」の掛け声で、携帯電話型の変身アイテム:アクセルラーの変身ボタンを押し、「ボウケンジャー、スタートアップ!」の掛け声と共に、何かにこすってゴーゴータービンを回すことでパラレルスーツが装着される。
 パラレルスーツは、各々のゴーゴービークルのパラレルエンジンからのエネルギー供給を受けてパワーを発揮する。
 本来の自分用ビークル以外にも、その時乗っているビークルなどからもエネルギー供給を受けることができる。
 エネルギー供給は、ビークルから離れていても結界内に隔離されても受けられるが、同質かつ大量のエネルギーをぶつけられると絶たれてしまい、スーツがただの重い鎧と化す。
 そのため、クエスター初登場時には、クエスターに内蔵されたゴードムエンジンのエネルギー余波を受けて供給が絶たれ、戦闘不能に陥った。
 また、変身後もアクセルラーがスーツの機能を制御しているらしく、アクセルラーを破壊されると変身が解除される。
 
 『ターボレンジャー』『カーレンジャー』系統の乗り物モチーフ戦隊であり、マスク部分のサーチライト部などが、それぞれのデフォルトのビークルを模したデザインになっている。
 このサーチライト部は、本編中で、ライトとして使用されているほか、ボウケンアームズの転送にも使用される。
 ブルーのように、どう見ても車とは思えないメカにばかり乗っている者もいるが、ハンドル、アクセル、ブレーキで操縦していたり、戦隊マークがタコメーター(+コンパス)デザインになっていたりと、車を意識しているのは疑いようがない。
 
 基本的にスーツは5人共通のデザイン(ただし女性メンバーはスカートあり)で、ベルトの背面にアクセルラーが収納されている。
 
 アクセルラーは、変身前・後を問わず使用でき、携帯電話・テレビ電話・情報転送端末としての通信機能の他、ハザードレベルを算出するプレシャス反応検知モード、ボウケンチップに隠された文字等を浮かび上がらせるボウケンライトなどの機能があり、ゴーゴービークルの発進命令や合体指令もこれで行う。
 また、変身の際にタービンを回す方法は様々で、基本は左腕に這わせて回すのだが、敵の剣を受け流しつつ回すとか、走りながら壁に沿わせて回すとかとかしている。

 前々作『デカレンジャー』、前作『マジレンジャー』のような二段変身はしないが、増加装甲であるアクセルテクターを装備して防御力を上げることができる。
 元々はデュアルクラッシャーの発射衝撃を和らげるために開発されたものだが、その高い衝撃吸収力のため、防具としても使用される。
 恐ろしく強固なプレシャス“火竜のウロコ”を収納・一体化しているため、異様に頑丈であり、遂に一度も破壊されなかった。
 火竜のウロコが1つしかないため量産できなかったが、誰でも召喚・装着でき、本編中でシルバー以外の全員が装着したことがある(ED後のオマケ映像やVシネマでは、シルバーも装着している)。
 破壊も複製もできないのに分解電送はできるという、サージェスのよく分からない科学技術の真髄が垣間見える装備である。

 ボウケンシルバーは、「レディ!」の掛け声で、左手首のゴーゴーチェンジャーブレスのカバーを開いて変身スイッチを入れ、「ゴーゴーチェンジャー、スタートアップ!」の掛け声と共にボタンを押す。
 
 元々サージェスレスキューとして活動する前提で開発されたスーツであるため、デザインがほかの5人と違っており、両肩に赤い緊急灯が付いているのが特徴。
 
 ゴーゴーチェンジャーもほぼアクセルラーと同様の機能を持っているが、開発目的が違うため、プレシャス反応検知機能やボウケンライトは付いていない。

 恒例の変身アイテムとして、アクセルラー、ゴーゴーチェンジャー共に商品化されている。
 アクセルラーは、1〜0までの各数字にそれぞれ

というビークルナンバーに従ったビークル名が割り当てられており、「Go!」のボタンを押すと「発進シフト!」という音声が発せられ、その後に数字を押してタービンを回すと数字に対応するビークル名と「ゴー! ゴー!」という音声が出る。
 「Go!」→「1、2、3」→タービンなら、「発進シフトオン! ダンプ、フォーミュラ、ジャイロ、ゴー! ゴー!」となる。
 このモードでは、押した数字に応じたビークル名を並べるだけになっている。
 同様に、ロボットマークのボタンを押してから数字を押してタービンを回すと、「合体シフト!」の音声の後、ビークル名を連呼することになるが、このモードでは、特定のビークル名を並べた場合だけ合体モードの音声が出るようになっている。
 「ロボ」→「1、2、3、4、5」→タービンなら、「合体シフトオン! ダンプ、フォーミュラ、ジャイロ、ドーザー、マリン、ボウケンフォーメーション!」といった具合だ。
 合体パターンは、トレーラーフォーメーション(1〜3:本編未発声)、ボウケンフォーメーション(1〜5)、スーパーフォーメーション(1〜9)、アルティメットフォーメーション(1〜10)、ボウケンフォーメーション2(6〜10)の5種類になっている。
 
 また、「ロボ」→「6」→タービンで、「ドリル、パワーオン!」など轟轟武装の音声も出る。
 「ロボ」→「1、2、3、4、5、6、9」→タービンなら、「合体シフトオン! ダンプ、フォーミュラ、ジャイロ、ドーザー、マリン、ボウケンフォーメーション! ドリル、クレーン、パワーオン!」となる。
 ところが、「6、7,8、10」と入力した場合「ドリル、ショベル、ミキサー、ジェット、パワーオン!」と、どこに何を合体させるんだ状態になっててしまう。
 一応、アルティメットダイボウケンは玩具オリジナルとして、ジェットを武器として使用するバスターフォーメーションなるものがあるようだが、ドリル・ショベル・ミキサーという両手と片足にしかならないメカと一緒ではまともな形にはなりようがないはずだ。
 これは、6〜10のボタンのうち4つまでを押したときには「パワーオン」というシステムになっているせいだろう。
 手足の数くらい対応させればよかったのに…。

 アクセルラーを劇中同様左上腕に装備するための布製のホルダーが別売りされていたが、変身アイテム固定用に別売りアイテムが発売されたのはスーパー戦隊初のことだった。
 これは、前々年放送の『ふたりはプリキュア』、前年放送の『ふたりはプリキュアMAX HEART』でのハートフルコミューンなどのためのポシェットの売上が良かったことが影響していると思われる。
 
 ゴーゴーチェンジャーは、左手首に付ける変身ブレスで、ボタンの代わりにブレスのカバーを外してジョグダイヤルを回すことで入力するようになっている。
 ジョグダイヤルを回すとカチカチとスイッチが切り替わって1〜13までの入力ができるようになっており、シルバー用のビークル以外にもそれ以前の10機のビークル全ての発進を行えるようになっている。
 「発進」→「11、12、13」→ボタンで、「発進シフトオン! ファイヤー、エイダー、ポリス、ゴー! ゴー!」となり、「ロボ」→「11、12、13」→ボタンで、「合体シフトオン! ファイヤー、エイダー、ポリス、サイレンフォーメーション!」となる。
 
 当然の如く、アクセルラー、ゴーゴーチェンジャーともに、発売後に登場したゴーゴーボイジャー用の発進・合体の音声は内蔵されていない。
 そのため、ゴーゴーボイジャーは、画面上はアクセルラーの発進ボタンを押しているが、アクセルラーからの発声は特にないまま発進・合体することになった。

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名乗り

 「熱き冒険者! ボウケンレッド!」

 「疾き(はやき)冒険者! ボウケンブラック!」

 「高き冒険者! ボウケンブルー!」

 「強き冒険者! ボウケンイエロー!」

 「深き冒険者! ボウケンピンク!」

 (シルバー参入後)「眩き(まばゆき)冒険者! ボウケンシルバー!」

 (その回の主役)「果てなき冒険スピリッツ!」

 全員「轟轟戦隊! ボウケンジャー!」

というのがフルバージョン。
 最終回では、変身しないまま6人で名乗っている。
 
 時折、ズバーンも「ズバーン!」と名乗ることがある。
 
 また、35話『神の頭』では、明石に変装していた関係で前線に出ていた牧野が、5人の後に「メカニック、牧野!」と名乗っている。

 なお、27話『風水占いの罠』では、シルバーから逆順に名乗っている。
 この時は、レッドが開運麦わら帽をかぶってハッピー法被(はっぴ)を羽織り、首に幸運を呼ぶスカーフ、右手首に厄除けブレスレット、腰にラッキーふさふさ尻尾を付けており、「熱き冒険者! ボウケンレッド!」の段階でリュウオーンらに笑われ、「轟轟戦隊! ボウケンジャー!」と名乗った際の背後の爆発が法被に引火して騒ぐという爆笑ネタを披露している。

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武器

 純粋には武器ではないが、変身前から使える多機能ツールとして、スコープショットを5人全員が持っている。
 これは、望遠鏡、赤外線スコープとして使うほか、アタッチメントを取り付けることで、崖を登るためのアンカーショットやパラシュート、ナイフなどとしても使える万能アイテムだ。
 ショットアンカー装着時にはビームを発射することもでき、変身前の攻撃アイテムとして利用していた。
 
 標準装備は、ベルトの右脇にセットされている銃:サバイバスター
 グリップを握ったまま銃身部を真っ直ぐに起こすと、銃口の下を軸に、銃身部に格納されていた刀身が起き上がり、蛇腹状に短縮されていたグリップが伸長して、ソードモードになる。
 また、本体左脇にスコープショットを取り付けることでスナイパーモードになり、より強力なビームを発射できるようになる。
 この状態で5人が同時発射すると、初期必殺技クライマックスショットになる。
 
 個人武器はボウケンアームズと呼ばれるもので、レッドがボウケンボー、ブラックがラジアルハンマー、ブルーがジャイロナックル、イエローがバケットスクーパー、ピンクがハイドロシューターと、それぞれの基本のビークルの意匠の一部を模した形状になっている。
 レッドのボウケンボーは、普段はUFOキャッチャーのようなマジックアームが付いたスティックだが、ロッド部を操作するとアームの基幹部から刃を出して槍形状に変形する。
 この槍はボウケンジャベリンと呼ばれる。
 
 7話『火竜のウロコ』で新登場した必殺武器がデュアルクラッシャーだ。
 グリップ部の上に180度横回転する銃身部が載っており、ミキサーヘッドドリルヘッドの2つの銃口を持つ銃になっている。
 ミキサーヘッドは瞬間硬化型の特殊コンクリートを射出し、ドリルヘッドは貫通力の高いビームを発射する。
 ミキサーヘッドで敵の動きを止め、ドリルヘッドで破砕するのが正式な用法だが、いきなりドリルヘッドでの攻撃が主だった。
 また、ドリルヘッド時の発射の衝撃はアクセルスーツでも抑えきれないため、アクセルテクターを装着した上、他のメンバーに身体を支えてもらって発射する。
 ただし、最終回では、変身不能の状況下で、真墨が構え、それを明石以外の4人で支えるという無茶な発射をしている。

 このほか、ズバーンの剣モードをレッドが使用する。
 その際の必殺技は、刃にエネルギーを集中させて斬るゴールデンクラッシュ

 『ボウケンジャー』では、2年ぶりに個人武器と5人共通の通常装備という組み合わせを復活させた。
 サバイバスターは、銃から剣に変形するという非常にスタンダードな武器だが、玩具では、銃身変形と刃の転出を連動させるというギミックを盛り込んでおり、これによって“画面どおりの変形”というこれまでできなかった新機軸となっている。
 これは、例えば『アバレンジャー』のアバレイザーの商品で、グリップを起こすのと刀身を起こすのがそれぞれ別のボタン操作だったために手間を食ったことと好対照だ。
 デュアルクラッシャーは、銃身部が反転して2つの銃口を持たせた銃というちょっと変わった武器であり、片方が破壊系、片方が拘束系というロボットアニメによくあるパターンだ。
 『超電磁ロボ コン・バトラーV』での超電磁竜巻から超電磁スピンのような燃える必殺攻撃にもできただろうに、ミキサーヘッドの出番が少なかったのは惜しかった。
 ちなみに、グリップ下部に突出しているエネルギータンクかポンプのようなデザイン部分は、玩具での電池収納部である。

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移動装備

 等身大での移動装備は持っていない。

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ロボット・メカニック

 本作のロボは、ゴーゴービークルが数台合体して巨大ロボとなる轟轟合体と、更に腕を交換する轟轟武装の組み合わせで構成されている。

 

▲ ゴーゴービークル1〜5。画像はブラックバージョン。

 ゴーゴービークルは、アクセルラーやゴーゴーチェンジャーで呼び出す。
 ビークルナンバー1〜10については、アクセルラーの発進ボタンと各ビークルナンバーのボタンを押し、ゴーゴータービンを回すことで、「発進シフトオン! ダンプ(ビークル名)、ゴー! ゴー!」の声がアクセルラーから発せられ、ゴーゴーダンプ、ゴーゴーフォーミュラ、ゴーゴージャイロ、ゴーゴードーザー、ゴーゴーマリンの各ビークルが発進する。
 5人がビークルに搭乗している場合、ボディを半分に折り畳んだフォーミュラの上にジャイロが合体し、その後ろにダンプが接続してトレーラー型になって、荷台部にドーザーとマリンが載ったゴーゴートレーラーとして現地に走ることもできる。
 1話のアバンで登場するのみで、合体するシーンは存在していない。

 

▲ ゴーゴートレーラー。画像はブラックバージョン。

 ゴーゴートレーラーは、地上を走ることのできないマリンを運ぶ役割を果たしている。
 …のだが、2話以降は、マリンが、市街地だろうと山奥だろうと、どんな場所にも自力で水路を伝ってやってくるようになったため出番はOPのみとなっている。
 ちなみに、2話ではゴーゴービークル5機が自走してアメリカ大陸に渡っているが、マリンとジャイロはともかく、他の3機がどうやって海を渡ったのかは描写されていない。
 
 ビークルナンバー11〜13については、ゴーゴーチェンジャーの発進ボタンを押し、ダイヤルを回してボタンを押すことで、「発進シフトオン! ファイヤー、レスキュー、ポリス、ゴー! ゴー!」の声が発せられ、それぞれ発進する。
 ビークルナンバー14〜18については、アクセルラーの発進ボタンを押して「ボイジャー、アンドック!」と音声入力することで、ゴーゴーボイジャー形態で発進する。
 各合体メカの出力は、合体したビークルのエンジン出力の合算であり、多くのメカが合体すればするほど出力が上がる。
 また、操縦自体は同じ方式のため、誰でも全てのロボを単独で操縦可能。
 ただし、出力調整や機体各部の制御など分担作業となるので、全員で操縦しないと性能をフルに発揮することはできない。
 
 これらビークルは、ボウケンジャーがコクピットにボウケンドライバーをセットしアクセルラーを接続することで操縦可能となる。
 ボウケンドライバーがない状態では、コクピットはシートとテーブルがあるだけで、全く操縦できない。
 事実、11話『孤島の決戦』では、ジャリュウ一族が捕獲したダイボウケンを操縦しようとしたが、ボウケンジャーが全員ボウケンドライバーを外して脱出していたため操縦できなかった。
 ボウケンドライバーは、アタッシュケース型にしてボウケンジャーが持ち歩くほか、基地から射出されることもある。
 
 ゴーゴービークルは、17世紀の天才:レオン・ジョルダーナが遺した図面を基にサージェスが開発したパラレルエンジンによって稼動する。
 エンジンは都合4回改良されている。
 当初は、1〜5に搭載されていたものと6〜10に搭載された新型で出力が違っていたが、後に1〜5も新型を搭載し、更に11〜13に搭載されたネオパラレルエンジンを1〜10にも搭載した。
 最終回では、プレシャスを搭載しなくても操縦者の精神エネルギーでエンジンが稼動するよう最終リミッターを外されている。

ダイボウケン

 

▲画像はブラックバージョン。

 「轟轟合体!」の掛け声と共に、アクセルラーの合体ボタンと1〜5のボタンを押し、タービンを回すことで、「合体シフトオン! ダンプ、フォーミュラ、ジャイロ、ドーザー、マリン、ボウケンフォーメーション!」の声がアクセルラーから発せられ、合体する。
 合体後、「ダイボウケン、合体完了! ファーストギア・イン!」と叫ぶ。
 ダンプ(レッド搭乗)が頭部・胴体部・脚部を構成し、フォーミュラ(ブラック搭乗)がボディ前面の装甲に、ジャイロ(ブルー搭乗)が背面の飾りとヘルメットになり、ドーザー(イエロー搭乗)が右腕、マリン(ピンク搭乗)が左腕になる。
 なお、ヘルメットになるジャイロのパーツは、メットランダーという分離行動可能な部分という設定があるが、本編では使用されていない。
 武器は、スコップ型のゴースコッパーとツルハシ型のゴーピッカーで、地面を掘って敵に土を掛けるなどの攻撃をする。
 また、ピッカーの先端にスコッパーを合体させることで轟轟剣となり、必殺技アドベンチャードライブを放つ。

 

▲ ゴーゴービークル6〜9。画像はブラックバージョン。

 また、「轟轟武装!」の掛け声と共に、アクセルラーの合体ボタンと6〜9のボタンを押し、タービンを回すことで、「ドリル、パワーオン!」などの声が発せられ、両腕をそれらビークルと換装する。
 換装されて外れたドーザーとマリンは、ダイボウケンの脛部に合体するため、武装時の出力はビークル6〜7台分になる。
 右腕になるのはドリル、左腕になるのはミキサー、ショベル、クレーン。
 轟轟武装すると、それぞれダイボウケンドリルダイボウケンドリル&ミキサーなどという具合に、「ダイボウケン」の後ろに腕になったビークルの名前が付く。
 ダイボウケンドリル、ダイボウケンミキサー、ダイボウケンドリル&ミキサー、ダイボウケンドリル&クレーンが登場した。
 また、サイレンビルダーの両腕であるレスキュー、ポリスとの轟轟武装も可能だが、本編中では特に呼称していない。

スーパーダイボウケン

 

▲画像はブラックバージョン。

 「超轟轟合体!」の掛け声と共に、アクセルラーの合体ボタンと1〜9のボタンを押し、タービンを回すことで、「合体シフトオン! ダンプ、フォーミュラ、ジャイロ、ドーザー、マリン、ドリル、ショベル、ミキサー、クレーン、スーパーフォーメーション!」の声がアクセルラーから発せられ、合体する。
 合体後、「スーパーダイボウケン、合体完了! ファーストギア・イン!」と叫ぶ。
 ダイボウケンからドーザーとマリンが外れて両足脛部に合体、ボディの前後が反転し、右腕にドリル、左腕にショベルが合体し、クレーンのフック部がヘッドギアとなる。
 必殺技はショベルで殴ってドリルで貫くダブルアームクラッシュ

アルティメットダイボウケン

 

▲画像はブラックバージョン。

▲ゴーゴージェット。画像はブラックバージョン。

 「究極轟轟合体!」の掛け声と共に、アクセルラーの合体ボタンと1〜10のボタンを押し、タービンを回すことで、「合体シフトオン! ダンプ、フォーミュラ、ジャイロ、ドーザー、マリン、ドリル、ショベル、ミキサー、クレーン、ジェット、アルティメットフォーメーション!」の声がアクセルラーから発せられ、合体する。
 スーパーダイボウケンのヘッドギアがクレーンに戻り、ジャイロが腰部前面に合体、ジェットが胸部装甲と背面翼部とヘッドギアとして合体する。
 合体後、「アルティメットダイボウケン、合体完了! ファーストギア・イン!」と叫ぶ。
 ボウケンジャーのロボの中で唯一飛行可能。
 必殺技は、「オーバートップギア・イン!」で出力を最大にして胸部から放つ熱光線:アルティメットブラスター
 また、巨大化した聖剣形態のズバーンを掲げて振り下ろす(握ってはいないのだが)大聖剣斬りも使える。

サイレンビルダー

  

▲サイレンビルダー

 「緊急轟轟合体!」の掛け声と共に、ゴーゴーチェンジャーのダイヤルで11〜13を入力してボタンを押すことで合体し、「ジャッキアップ!」の掛け声と共に脚部が変形して完成する。
 ファイヤー(シルバー搭乗)が頭部・胴体部・脚部を構成し、エイダー(自動操縦)が右腕、ポリス(自動操縦)が左腕になる。

 

▲上はゴーゴーファイヤー、下段左はゴーゴーエイダー、右はゴーゴーポリス。

 本来はサージェスレスキューの人命救助用ロボとして開発されたが、戦闘用として使用されている。
 必殺技は頭部・両肩のノズルから超高圧の水流を噴射するトリプルリキッドボンバー

ダイタンケン

 

▲画像はブラックバージョン。

 「轟轟合体!」の掛け声と共に、アクセルラーの合体ボタンと6〜10のボタンを押し、タービンを回すことで、「合体シフトオン! ドリル、ショベル、ミキサー、クレーン、ジェット、ボウケンフォーメーション2!」の声がアクセルラーから発せられ、合体する。
 ジェットが頭部・胴体部になり、ドリルが右腕、ショベルが左腕、ミキサーが右脚、クレーンが左脚になる。
 武器は、手足の4つのビークルからエネルギーを放射するボウケンフラッシュと、頭部を発射して敵を貫くビッグヘッドボンバー
 何故かアルティメットダイボウケンが完成した後で合体機能を開発された。
 5人揃って操縦したことはなく、劇場版ではレッドが、42話『クエスターの時代』ではブラックが1人で操縦した。

ダイボイジャー

 ダイボウケンと同時期に開発研究されていたが、そのあまりの破壊力に開発が中断されていた超強力ロボ。
 13機のゴーゴービークルの更に下の階層に移動要塞ゴーゴーボイジャー形態で格納されており、アクセルラーの発進ボタンを押し、「ボイジャー、アンドック!」と音声入力することで発進する。
 ゴーゴーボイジャーにレッド以下5人が搭乗後、「超絶轟轟合体! ボイジャーフォーメーション!」の掛け声で5機のビークルに分離する。
 5人が(レッド)「コマンダー!」(浮上、頭部に)、(ブラック)「キャリアー!」(本体が起きて胴体部・脚部に)、(ブルー)「ファイター!」(左右に分離する)、(イエロー)「アタッカー!」(キャリアーの駆動輪部に合体して胸部装甲に)、(ピンク)「ローダー!」(左右に分離しつつそれぞれにファイターのパーツが合体して腕部に)と叫びつつ、変形合体して完成する。
 この過程があるため、ゴーゴーボイジャー、ダイボイジャー共に1人でも操縦可能にもかかわらず、ダイボイジャーへの合体は5人揃わないとできない。
 必殺技は、胸部の駆動輪の高速回転で生みだしたパワーを乗せ、両拳を回転させて放つアドベンチャーダブルスクリュー
 また、特に呼称していないが、両腕をダイボウケンなどのビークルと入れ替えることも可能。

ボイジャーダイボウケン

 ゴーゴーボイジャーの上にダイボウケンが乗った状態。
 前述のとおり、ゴーゴーボイジャーは5人揃わないとダイボイジャーに合体できないため、シルバーがゴーゴーボイジャーを操縦し、5人が操縦するダイボウケンを乗せる形が多い。
 「ボイジャーダイボウケン合体完了!」と叫ぶものの特段の合体コードはなく、正確には合体ですらないかもしれない。
 だが、直列することでパラレルエンジンの出力を加算できるというゴーゴービークルの特性を考えると、何らかの形で出力合成をしていると考えられ、事実、出力が上がっている。
 この状態でアドベンチャードライブを放つライディングアドベンチャードライブが必殺技。
 どう見ても剣が敵に届きそうにないが、正面から切り裂く。
 更に、この状態で聖剣形態のズバーンを使用して放つスーパーライディングアドベンチャードライブはそれ以上の破壊力を持つ。

 ダイボウケンは、『ガオレンジャー』からの流れとなる武装合体型の巨大ロボだが、武装用のメカが同時にスーパー合体用のメカにもなるという初の試みがなされている。
 5機合体のダイボウケンをベースに、ナンバー6〜9の4機のビークルによる轟轟武装と超轟轟合体というのがそれだが、更に、ジェットを加えた10機による究極轟轟合体という超スーパー合体が用意されている。
 しかも、増加ビークル5機だけで構成されるダイタンケンまであり、前作『マジレンジャー』で失敗したパズル的な取り替え合体ギミックを無理なく昇華している。
 演出的にも、初登場は劇場版で、専用のパーツ購入を必要としない劇場版専用ロボといった趣だった。
 ただし、1回だけながらクリスマス決戦時にはテレビ本編に登場しており、実際には劇場版専用ではない。
 これは、前作『マジレンジャー』のセイントカイザーでの“劇場版専用合体の本編ゲスト出演”方式の継承と思われる。
 だが、当然ダイタンケンはアルティメットダイボウケンより弱いわけで、“応急修理でアルティメットダイボウケンに合体できない”というエクスキューズを持たせた上での登場にしているのはうまい。

 10機合体という数字はスーパー戦隊シリーズの最高記録であり、これまでの最高記録である7機合体の究極大獣神・重甲気殿・キングピラミッダーバトルフォーメーション・リボルバー天雷旋風神がいずれも人型とは言い難い形状だったことを考え合わせると、アルティメットダイボウケンのプロポーションの良さは特筆に値する(なお、『ゴーゴーファイブ』のグランドライナーは、初期は内部に5台の99マシンを収納していないと動かなかったので、合体はしていないが機械的には10機のメカを接続していた)。
 その分、合体パターンごとにビークルの位置関係がめまぐるしく入れ替わることとなった。
 ボディ基幹部をダンプ1台で賄っているのは、武装とスーパー合体を両立させるためにほかならない。
 また、各接合部の強度も玩具としての安全基準の限界近いものだったようで、正に究極の多重合体と言えそうだ。
 
 また、シルバー専用のサイレンビルダーとダイボウケンでは、互いに腕の換装が可能で、本編中でもかなり頻繁に腕を入れ替えている。
 
 さすがに、アルティメットダイボウケン以上の人型多重合体は不可能だったようで、新型ロボ:ダイボイジャーは別系統のロボになった。
 普通に考えると5機のビークルが空母型のゴーゴーボイジャーと巨大ロボ:ダイボイジャーの2種類の合体パターンを持っているかのようだが、実際にはゴーゴーボイジャーで出撃→5機のビークルに分離→ダイボイジャーに合体というパターンのみで5機のビークルの個別の活躍シーンがなく、ロボへの合体のためだけに分離しているという印象が拭えない。
 空母がそのままロボに組替変形すると理解してもいいかもしれない。
 ゴーゴーボイジャーの砲撃戦等シーンは結構あるのに、分離したビークルに戦闘シーンが皆無なのも、そういった印象を強めている。
 直接戦闘し、ロボのパーツメカを積むのではないので、空母(運び屋)というより戦艦といった感じだが、番組の性質上、戦というわけにはいかず、巨大なロードローラーの上に船が乗っているような作りになっている。
 これは、玩具が電動走行をウリにしているためで、ボイジャーダイボウケンにしても、玩具でのプレイバリューを本編で再現しているに過ぎない。
 ダイボウケンとは別パターンながら、電動にするためにボディのほとんどをゴーゴーキャリアーで賄っており、申し訳程度でも5機に分離できることは、前年のマジレジェンドの失敗を反省してのことだろう。
 ただし、本編での扱いは、なまじ分離合体方式であるため5人乗っていないと人型になれず、下手をするとシルバーが1人で操縦してゴーゴーボイジャーのままで戦闘し、ダイボウケンを載せる(ボイジャーダイボウケンになる)だけということもあった。
 戦隊ロボの場合、通常はバンクだけでも、分離した各メカの戦闘シーンがあるものなのだが、それがないのだ。
 まぁ、分離したメカそれぞれに人が乗っているだけ、『ギンガマン』のギガライノス&ギガフェニックスよりマシというところだろうか。

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敵組織:ネガティブシンジケート

 本作では、スーパー戦隊シリーズで初めて、敵組織が同時期に複数登場する。
 ゴードム文明、ジャリュウ一族、ダークシャドウ、クエスター(アシュ)の4団体(登場順)が存在し、それぞれ異なる目的を持ってプレシャスを求めている。
 「ネガティブシンジケート」或いは「ネガティブ」とひとまとめに呼ばれることが多いが、要するに、ボウケンジャー側から見た場合のプレシャスを悪用しようとする組織の総称であり、世界中に※数百もの組織が存在する。
 残念ながら、作中にはレギュラーの4つ以外の組織は登場しなかった。

■ 組織その1:ゴードム文明

 宇宙から飛来した巨大ロボ:ゴードムを神とし、その技術を利用した文明。
 4万年前に古代人類の手で封印されたが、真墨のミスにより復活した。
 その目的は、人類を滅ぼすこと。

首領:大神官ガジャ→ガジャドム

 ゴードム文明の神官で、呪術を得意とする。
 共に封印されていたプレシャス:ゴードムの心臓を使って巨大ロボ:ゴードムを復活させたが、ダイボウケンに破壊され、以後、ジャリュウ一族などの力を利用しながら人類抹殺を目論んでいた。
 他者を利用するのが得意だが、相手の信頼を勝ち取るために譲歩することが多く、カースをダークシャドウに与えたりもしている。
 一度見たものを忘れないという特技を持っており、パラレルエンジンの基となったレオン・ジョルダーナの図面の記憶を基にゴードムエンジンを開発するなど、エンジニアとしてもかなりの能力を持っている。
 野望潰えた後、再び目覚める日を待って自らを封印した。
 演じたのは、大高洋夫氏。

戦闘員:カース

 ガジャが呪術によって生み出す一種のゴーレム。
 石の中から発生し、口の部分に蝋燭が灯っている。
 武器は、手に持っている蝋燭が変形する鎌。

■ 組織その2:ジャリュウ一族

 竜のようなトカゲのような外観を持つジャリュウの集団。
 その目的は、人類を滅ぼし、リュウオーンの王国を築くこと。

首領:リュウオーン

 約200年前、学術研究のためレムリア文明の秘宝を探し求める中、財宝に目が眩んだ仲間に裏切られた冒険者のなれの果て。
 人間に絶望し、深い憎しみを持っている。
 世界各地に残るレムリア文明の遺跡から遺伝子操作の知識や技術を拾い集め、自らを遺伝子操作して不滅の生命力を持つジャリュウとなった。
 その後、自らの細胞から部下を生み出し、大邪竜、邪機竜などの武器を作り出しては人類滅亡を画策していた。
 高い戦闘能力を持ち、倒されても復活し続けてきたが、遂に力尽きてジャリュウを生み出せなくなり、更に人間の姿に戻ってしまった。
 プレシャス:レムリアの太陽の力でジャリュウに戻ろうとしたが、サージェスのプレシャス保管庫の爆発に巻き込まれて死亡した。
 声を演じた森田順平氏は、29話『黄金の剣』、47話『絶望の函』で、人間の頃のリュウオーンの役で顔出し出演もしている。

怪人:邪悪竜

 リュウオーンがその肉体から生み出すジャリュウの中から、特に優れた者が様々な手法で強化された直接戦闘用のジャリュウ。

戦闘員:ジャリュウ

 リュウオーンがその肉体から生み出す竜人。
 知恵の実を食べて知恵が付いた際、リュウオーンに待遇面などについて文句を言ったところからすると、知能は人間の大人よりかなり下程度と思われる。

巨大メカ:大邪竜、邪機竜

 リュウオーンが開発する巨大メカ。

■ 組織その3:ダークシャドウ

 影忍法を使う忍者の末裔。
 入手したプレシャスを高値で売ったり、他人の依頼を受けてプレシャスを入手したりする闇の商社で、表向きの顔はDSカンパニーという会社。
 その目的は、金儲け。

首領:幻のゲッコウ

 身長30センチほどのミミズクの置物のような姿をしている。
 肉体的には、人間を1人ぶら下げて飛ぶのがやっと程度の力しかないが、影忍法の達人で、ツクモガミを生み出したり、倒されたツクモガミを巨大化させたりする影忍法を使う。
 実は、かつて魔鳥と呼ばれる怪物を封印した際に自分の肉体を失って、そんな姿になった。
 魔鳥と肉体的に繋がっており、封印を解かれると自らが魔鳥になってしまう。
 声を演じたのは、『アバレンジャー』で爆竜ブラキオサウルスの声を演じた銀河万丈氏。

幹部:闇のヤイバ

 実質的に動けないゲッコウに代わり、前線で指揮を取る忍者。
 常に闇に身を置くためにダークシャドウに入ったようなもので、元々がゲッコウの弟子というわけではないようだ。
 折り鶴を使った忍法が得意で、千羽鶴闇吹雪が必殺技。
 かつて真墨の仲間を殺した際、真墨の中に眠る闇を感じ、いずれ仲間にしようと思っていた。
 最後にはダークシャドウを裏切り、真墨を利用して闇の三ツ首竜を呼び出そうとしたが、真墨に倒された。
 声を演じたのは、『リングにかけろ1  日米決戦編』のドン・ジュリアーノ役:黒田崇矢氏。

下級幹部:風のシズカ

 ヤイバの片腕として、前線で指揮を取るくノ一。
 だが、腕はあまり立たず、足を引っ張ることも多い。
 「ぺぺぺのぺ〜」とあかんべえをするのが癖。
 演じたのは、ミスマガジン2004読者特別賞の山崎真実氏。

怪人:ツクモガミ

 何らかの古い物と新しい物が、ゲッコウの影忍法ツクモガミの術で命を吹き込まれた怪物。
 ○○ガミという名前を持つ。

戦闘員:カース

 ガジャによってもたらされたもので、ガジャが使役するカースと同種の存在。

巨大化

 倒されたツクモガミは、ゲッコウの影忍法巨大神の術で巨大化する。

■ 組織その4:クエスター

 人類と違う進化の道筋を辿った異生物アシュの生き残り2体が、映士によって魂滅された後、ガジャによってゴードムエンジンを与えられ復活した姿。
 生まれ変わったことで、アシュの苦手な波動をものともしなくなった。
 ガジャは、元々クエスターを強力な部下として生みだしたのだが、ガイもレイも生き返らせてもらった恩を感じておらず、また洗脳もされていなかったため、ガジャを裏切り、ゴードムエンジンの技術を盗んで独立した。
 その目的は、自分達だけの世界を作ること。

幹部:ガイ

 アシュの生き残り。
 かつて映士の父に追い詰められたものの、映士を利用して殺した悪知恵の働くタイプ。
 ボウケンジャーに敗れ、映士によってアシュ魂滅の術を掛けられたが、ガジャにゴードムエンジンを埋め込まれ、クエスターとして復活した。
 戦闘能力は高いが、特殊能力の類は持っていない。
 そのせいか、作戦行動時には、レイが何かをしている間ボウケンジャーの足止め役になることが多い肉体労働者。
 独特のイントネーションで喋り、映士のことを「高丘のぉ」と呼ぶ。
 二丁拳銃を武器とする。
 声を演じた三宅健太氏は、『BLEACH』で銀彦を演じている。

幹部:レイ

 ガイによって百鬼界から人間界に呼び出されたアシュだったが、ガイ同様滅ぼされ、クエスターとして蘇った。
 アシュ時代は、人間の記憶を利用して幻を見せる術を得意としており、クエスターとなった後も、催眠術のような術を使う。
 どちらかというと単純な力押しを好むガイに対し、知能犯的な傾向があり、作戦立案などをする頭脳労働者。
 銃にもなる剣を武器とする。
 声を演じた鈴木千尋氏は、『破邪巨星Gダンガイオー』で天城空也を演じている。

怪人:クエスターロボ

 等身大の怪人はおらず、巨大ロボを建造しては攻めてくる。
 名前は、「将(エリート)」「進(ラジアル)」など、漢字一文字をカタカナの当て字読みさせるものだが、本編中は特に名前を呼んでいない。
 巨大なゴードムエンジンを積んでいるため出力が高く、パイロットであるクエスター2人の体内のゴードムエンジンを直列させることで更に高出力となる。

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真実の物語

 クエスターは、最終作戦に必要なプレシャス:メルクリウスの器を手に入れるため、西のアシュ:オウガを復活させてボウケンジャーを足止めさせることにし、映士は、オウガを倒したものの、その呪いにより石化させられてオウガが化けた母と過ごす幻の世界に閉じ込められてしまった。
 明石とさくらの判断ミスに乗じてまんまとメルクリウスの器を手に入れたクエスターは、他のネガティブシンジケートの力を利用して、自分達の力では入手できないプレシャス:カドゥケウスの杖、賢者のハーブ、パラケルススの水銀を集めさせ、自ら入手したメルクリウスの器を使って合成して巨大なホムンクルスを生みだした。
 クエスタージェット:奪(オーバー)を合体させることで自由にホムンクルスを操るクエスターは、ダイボイジャーとアルティメットダイボウケンを難なく撃破する。
 各ビークルの応急修理が急ピッチで行われるが、修理の完了を待っていては、ホムンクルスによって世界が滅ぼされてしまう。
 明石は、唯一無傷のサイレンビルダーでホムンクルスと共に自爆しようとするが、応急修理を終えたビークルで駆け付けたさくら達に妨害されたため、断念した。
 そして、10機のビークルはアルティメットダイボウケンへの合体機構の修理が終わっていないため、さくら達はダイボウケンとダイタンケンに合体して挑む。
 3体のロボで持ちこたえた5人の前に、自力でオウガの呪縛を解いた映士がゴーゴーボイジャーで駆け付け、ボイジャーダイボウケンのスーパーライディングアドベンチャードライブでホムンクルスを撃破した。
 そして、脱出したガイをシルバーが、レイを5人が倒し、クエスターは滅んだ。
 
 ボウケンジャーを倒すために禁断の魔鳥を復活させようとしてゲッコウを裏切り、抜け忍となったヤイバは、真墨の心の闇を利用して宇宙から闇のエネルギーを呼び寄せようとするが、仲間の叫びに心の光を呼び覚ました真墨に敗死した。
 だが、その戦いで、自らの心の闇を自覚してしまった真墨は、ボウケンジャーを辞めて姿を消してしまう。
 
 そして、真墨が欠けたボウケンジャーに、リュウオーンが戦いを挑む。
 リュウオーンは、肉体の限界を迎え、ジャリュウを生み出す力を失ったため、かつてボウケンジャーが手にしたレムリアの太陽(セリフではレムリアの太陽と言っているが、実際は幻獣の卵)を奪って自らを怪物化しようとする。
 敢えてレッドに敗れることで、自らの頭部をプレシャスと誤認させてプレシャス保管庫(プレシャスバンク)に運び込ませ、保管庫内で復活するが、計略を察知して駆け付けた明石の妨害により失敗、人間の姿に戻ってしまう。
 一方、さくら達4人の前には、ガジャと怪人デスペラートが現れた。
 ガジャは、自らの身体にゴードムエンジンを3基埋め込み、ゴードムの心臓と脳髄を吸収することで究極の生命体になろうとしていた。
 そして、ガジャにプレシャスを与えないため、サージェスはプレシャスバンクを破壊し、リュウオーンは爆発に巻き込まれて死んだ。
 
 この保管庫の爆発で明石も行方不明になったが、捜索のためサイレンビルダーで消火しようとするボウケンジャー達の前に、ガジャが現れる。
 ガジャによってエネルギー源のプレシャスを吸い取られてしまったサイレンビルダーは作動不能となり、シルバーの変身も解けてしまった。
 そのため、ガジャにプレシャスを奪われることを恐れたサージェスは全てのゴーゴービークルを封印してしまい、エネルギー供給を絶たれたボウケンジャーは変身不能となって敗北し、ちりぢりになってしまった。
 逃走の中で、蒼太はシズカから励まされ、菜月と真墨は再会し、映士は見守ってくれていた母の幻影から勇気づけられ、さくらはゴードムの脳髄を守る少女を保護して、それぞれが見付けた自分だけの宝を反芻する。
 各々戦う意味を見出して合流した5人は、生身のままデュアルクラッシャーでデスペラートを撃破する。
 だが、巨大化したデスペラートの前には為す術もなく、ゴードムの脳髄を奪われるかと思われたその時、ダイボイジャーに乗った明石が駆け付けた。
 明石は、ズバーンによって爆発から守られていたのだ。
 アドベンチャーナックルで聖剣形態のズバーンを発射しデスペラートを撃破した6人は、ガジャを倒すためゴーゴーボイジャーでゴードムの遺跡に向かう。
 最強怪人ガジャドムとなったガジャは、ゴーゴーボイジャーのパラレルエンジンからプレシャスを奪おうとするが、ゴーゴーボイジャー内部にプレシャスはなかった。
 明石は、牧野らと共にネオパラレルエンジンの最終リミッターを解除することで、プレシャスなしで稼動させられるようにしていたのだ。
 6人は変身してガジャドムを倒すが、巨大化したガジャドムにはボイジャーダイボウケンさえ歯が立たず、ゴーゴーボイジャーは大破してしまった。
 アルティメットダイボウケンに合体して立ち向かう6人。
 ネオパラレルエンジンの最終リミッターを外したことによる効果は、乗っている明石達自身の精神エネルギーを物理的なエネルギーに変えられるというものだった。
 アルティメットダイボウケンでさえ勝てないため、明石達は、分離して13台のビークルで体当たりしてゴードムエンジンを破壊する。
 ガジャドムのゴードムエンジンの爆発と共に沈み始めた島から脱出する6人。
 そして、ゴードムエンジンを破壊されて元の姿に戻ったガジャは、かつて封印されていた石棺に戻り、いつの日かまた復活することを誓って自ら石化した。
 戦いが終わり、沢山のプレシャスが失われてしまったと言う映士に、明石は「また探せばいい。プレシャスのあるところならどこまでも、ボウケンジャーの冒険は無限だ」と明るく答えた。
 
 半年後。
 映士はサージェスレスキューとして災害救助に従事していた。
 そして、明石は、宇宙活動用に改造したゴーゴーボイジャーで1人宇宙に旅立つ。
 明石を見送るさくら達5人。
 だが、見送っているさくらは実は牧野の変装で、本物はボイジャーに密航していた。
 一緒に宇宙プレシャス探しに行けることにはなったものの、明石はさくらの気持ちには全く気付かない。
 そんなさくらに「ピンクちゃん、頑張ってね」とエールを送るミスターボイス(実は、ゴードムの脳髄を守っていた少女がボイスチェンジャーを使っていた)。
 
 そしてボウケンジャーは、ブラックを新たなチーフとして、戦力不足を補うため戻ってきたシルバーと共に、今日もネガティブシンジケートとプレシャスを奪い合う日々を送っていた。

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Vシネマ 轟轟戦隊ボウケンジャーVSスーパー戦隊

 VシネマでのVSシリーズ第12弾。
 25周年記念作品『ガオレンジャー』の時に倣い、前作品とのコラボではなく『VSスーパー戦隊』となっている。
 そのため、OPナレーション〜タイトルコールを
  命賭けで戦って、今日も世界を守る者がいる。危険な敵から地球を救ってきた30のスーパー戦隊
  「轟轟戦隊ボウケンジャーVSスーパー戦隊」

としている。
 本作品用のオリジナルキャラ:アカレッドは、全身ほとんど真っ赤な上に、マスクに「V」の字、バックルには「XXX」、左胸に30周年マークと、いかにもなデザインになっている。
 ゴーグルが黒くないのは、アバレキラー以来だ。
 “赤の魂を受け継ぐ者”と名乗り、全ての戦隊のレッドに変身できるほか、各レッドの武器を召喚できるなど不思議な力を振るうが、その正体は言及されていない。
 声を演じたのは、『機動戦士ガンダム』アムロ・レイなどの古谷徹氏。
 
 また、ED曲『伝説』は、スーパー戦隊シリーズ黎明期作品の主題歌を歌ってきた

の3氏の合唱になっており、歌詞に「赤い火」「青い空」「黄に光る電撃」「緑なすこの地球」とボウケンジャーの色だけでなく、緑が入っているなど、多分に記念碑的な曲となった。
 本編中では流れないが、2番の歌詞には「親から子へ/そして明日へ/語り継がれる伝説」という節がある。
 ちなみに、鷹羽はこの部分、つい「親から子へ/そして孫へ」と歌いそうになる。
 
 また、登場する悪役キャラもツエツエ(『ガオレンジャー』)、フラビージョ(『ハリケンジャー』)、メーミィ(『マジレンジャー』)と、ここ数年の作品から登場させている。
 『アバレンジャー』と『デカレンジャー』が抜けているが、これは両作品に巫女に相当する(死亡した)敵キャラがいないせいなので、まあいいだろう。
 ただ、正義側の過去キャラが、ハリケンブルー、アバレブラック、デカブレイク、マジイエロー、マジシャインとなっており、マジレンジャーのキャラが2人もいるのにガオレンジャーからのキャラがいないためにツエツエと絡めないなど、キャラ選択に若干の難がある。
 前回の『ガオレンジャーVSスーパー戦隊』と違い、映士が住所録で戦士を訪ねていく関係上、登場する(=訪ねる)戦士の選択に必然性が感じられないことが鼻につくのだ。
 この違和感は、登場してすぐ消える役割をフラビージョからツエツエに入れ替えるだけでもかなり緩和されたはずだが、役者のスケジュール等の関係もあるのでどうにもならないのだろう。
 また、同じく役者の問題があってできなかったのだろうが、キャラ選択として、マジイエローの代わりにガオシルバーを登場させれば、映士と過去キャラ4人が手を合わせて決意するシーンで、左手にブレスを付けたキャラだけの構成にできて、より絵になっただろう。
 そして、こうすることで、終盤の戦闘シーンでもシルバー・ブレイク・シャインという絵を、シルバー・シルバー・ブレイクと白・銀系3人にまとめられたわけで、ちょっと勿体なかった。

 ただ、全体としてはなかなか過去キャラの設定を生かしており、翼はプロボクサー(日本タイトル戦なのにショボイが)として活躍中、テツは潜入捜査中、七海は人気歌手として活動中、アスカは2人目の子供が生まれているなど、結構芸コマな作りになっている。
 アカレッドがソウル降臨で変身するマジレッド・ガオレッドへの変身シーンもなかなか芸コマだった。
 なにしろ、いずれもまず身体がアカレッドのものからマジ・ガオのものに変わり、その後マスクがアカレッドからマジ・ガオに変化するという、オリジナルを踏襲した形で描写されるのだ。
 
 巨大ロボがボウケンジャー系のものしか登場しない辺りに低予算が見え隠れするが、両手の拳と胸の「V」の字エンブレム、背中の羽だけの変化とは言え、特別形態:バーニングレジェンドダイボイジャーは、過去キャラ達から貰った力という設定で、ボウケンシルバーの「希望」とマジシャインの「愛」はともかく、マジイエローの「勇気」、デカブレイクの「正義」、アバレブラックの「情熱」、ハリケンブルーの「友情」と、それぞれのキャラに拘ったキーワードになっているのも好印象だ。
 必殺技がサーティースーパーセンタイソウルというのも安直だが、この手の作品ととしてはよくあることなので、及第点だろう。

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傾向と対策

 シリーズ28作目(『ゴレンジャー』からは30作目)となった『ボウケンジャー』は、スーパー戦隊シリーズ30作記念として、いくつか新機軸を盛り込んで制作された。
 のっけから余談だが、番組冒頭に表示されるスーパー戦隊マークには、「30th ANNIVERSARY」と書かれている。
 一応「ANNIVERSARY」には「記念」という意味もあるので、「30作記念」という訳もありなのだが、一般的に「○th ANNIVERSARY」と書いた場合は「○周年」いう意味だ。
 そのため、本作を「30周年記念作品」と誤解した人も多かったらしい。
 どうして去年の『マジレンジャー』で、「30th ANNIVERSARY」としなかったかというと、途中中断ありのシリーズ30周年ということにはあまり魅力を感じなかったのだろう。
 この中断は、『ジャッカー』終了から『バトルフィーバー』開始までに1年2か月空いているためで、『ゴレンジャー』からシリーズを数えるようになった影響だ。
 『バトルフィーバー』以降で見ると、番組放映期間中には時間移動や特番などの影響で放送していない週があるものの、1つの番組の最終回の翌週には新番組の1話が放映されるという連続性は常に保たれている。
 そもそも今時1年スパンで放映される番組というだけでも珍しい(トクサツやアニメ以外では、NHKの大河ドラマくらい)。
 そして、1作品が約1年続くということは、『バトルフィーバー』以降の28年間中断なしで放映されていることを意味する。
 この28年連続は、“毎週放送するテレビ番組シリーズ”としては世界最長である。
 これがどれくらい凄いかを考えてみよう。
 『ウルトラマン』シリーズと『仮面ライダー』シリーズは、一般人からの知名度で言えばスーパー戦隊を凌駕する。
 ある程度年輩の普通の人がヒーロー名をいくつ言えるかを考えれば、それが分かる。
 『ウルトラマン』で言えば、どんな人でも「マン」と「セブン」くらいは知っている(ただし、「ウルトラマンセブン」と誤解している人は多い)。
 『仮面ライダー』なら、1号、2号、V3くらいは知っている。
 だが、悲しいかな、普通の人にとっては、「戦隊」と言えば「ゴレンジャー」でしかない。
 それも、「スーパー戦隊」と言われて即座に「ああ、ゴレンジャーね!」と反応するのではなく、大抵は「すうぱあせんたい?」と聞き返され、軽く説明すると「ああ、ゴレンジャーか!」と反応できる程度だ。
 「戦隊」という言葉自体がマイナーなものであり、『ゴレンジャー』の後番組が『ジャッカー』だということを知っている(覚えている)人は、ある程度トクサツに詳しい人なのだ。
 だが、『ウルトラマン』と『仮面ライダー』は、何度もシリーズが中断している。
 いや、トクサツに限らず、あの『水戸黄門』シリーズですら、1作ごとに半年なりの中断を挟む。
 このことを考えれば、スーパー戦隊シリーズがいかに特殊な存在であるかが分かるだろう。
 スーパー戦隊シリーズ10周年を記念した特番が、形式上『ターボレンジャー』第1話『10大戦隊集合! 頼むぞターボレンジャー』として放送されていたり、シリーズ25周年記念番組が『タイムレンジャー』最終話としての体裁を持っていたりするのは、この連続性を損なわないためという側面もあるのだろう。
 もちろん、この時間帯以外に特番用の枠が取れないということもあるのだろうが、黙っていても、じきに本当に30年連続になるのだ。
 個人的には、こんな理由もあって、敢えて『ゴレンジャー』から数える必要はないだろうと思っているのだが、いつまでも続くという保証がない以上、少しでも早く数字を大きくしたいという思いも分からないではない。
 で、どうして「周年」でなく「作品数」で数えるのかというと、恐らくは他のシリーズとの兼ね合いではないかと思われる。
 奇しくも『ウルトラマン』シリーズと『仮面ライダー』シリーズは、第1作が始まった年にちょうど5年の開きがあるため、キリのいい「○周年」の年が同時に訪れる。
 本作が放映された2006年は、『仮面ライダー』シリーズが35周年、『ウルトラマン』シリーズが40周年であり、『仮面ライダーカブト』が放送中、『ウルトラマンメビウス』が10月から放送予定だったこともあり、スーパー戦隊を作品数で数えれば「30、35、40」と並べられるということが大きかったのではないかと思われる。
 勿論、それに先だって、5年前の『ガオレンジャー』の際に25作品記念と銘打っていたこともあるだろう。
 ちなみに、この2001年は1月から『仮面ライダーアギト』が、7月からは『ウルトラマンコスモス』がそれぞれ放送されている。
 ちなみに、単独の番組としては、『サザエさん』の37年(本作放送期間現在)が最長で、なおも更新中。

 まぁ、ともかく、30作記念としての新機軸は色々あるが、その1つが地上波デジタル放送対応のワイド画面・ハイビジョン制作になったことだ。
 既に『仮面ライダー』シリーズでは、2000年放送の『仮面ライダークウガ』からワイド画面化されていたが、それに遅れること6年で、遂にスーパー戦隊もワイド画面になったわけだ。
 
 戦隊名の「轟轟戦隊」の読みが「ごうごうせんたい」ではなく「ゴーゴーせんたい」と、音だけを利用した無意味な造語になっているのも初の試みだ。
 
 変身ポーズそのものを見せ場にしようとしたというのも面白い試みの1つだ。
 「変身ヒーロー物で何を当たり前のことを」と思うかもしれないが、本作で狙ったのは、変身ポーズから変身シーンへのバンクを見せ場にするという意味ではなく、変身するポーズそのものなのだ。
 変身ポーズを特定しないとでも言えばいいだろうか。
 変身のコーナーで書いたとおり、ボウケンジャーは、アクセルラーのスイッチを押し、ゴーゴータービンを回すことで変身する。
 それ自体はさほど絵になるものではないが、逆にタービンを回すシーンを見せ場にしたわけだ。
 通常は、アクセルラーを左腕に沿わせて上から下に走らせることでタービンを回すが、ある時は敵の攻撃を避けながらすれ違いざまに敵の身体に走らせ、ある時は敵の剣を受け止め刃の上を走らせ、ある時は銃弾をかわしざまその銃弾の上を走らせる、敵に向かって走りながら脇の壁を走らせるなど、戦いに際してのアクション自体が変身ポーズを構成するため、変身に不自然さが出にくい。
 同時に、子供が遊ぶ上でも色々なバリエーションが広がるわけで、なりきり玩具としてのアクセルラーのプレイバリューは非常に大きい。
  
 また、レギュラーの敵組織が同時に複数活動していることも特徴の1つだ。
 メタルヒーローシリーズでは、既に『特捜ロボ ジャンパーソン』で、3つの組織がレギュラーで登場していたが、スーパー戦隊では初めてのことだった。
 厳密には、『忍者戦隊カクレンジャー』では、ヌラリヒョン率いる妖怪忍軍と、大魔王配下の妖怪軍団という2つの組織が存在している。
 だが、妖怪忍軍の方はほとんど立ち消えになっているし、好意的に解釈しても『仮面ライダーアマゾン』でのゲドン・ガランダーのように、片方の消滅に伴って2つ目の組織が出現しているのであって、やはり複数の組織が同時に行動しているのは初めてなのだ。
 また、これら組織ごとにデザインラインを変えるわけだが、各組織の幹部や怪人のデザインには、スーパー戦隊シリーズの各種メカをモチーフとして取り入れるという、30作記念らしい試みがなされている。
 具体的には、ゴードム文明には戦隊飛行メカとオーレンジャー・マジレンジャーのロボ、ジャリュウ一族には大獣神、ブイレックスなどの恐竜系ロボ、ダークシャドウ幹部は『カクレンジャー』の三神将で怪人は戦隊シリーズのロボ系、クエスターは『ダイレンジャー』の大連王、牙大王などという具合だ。
 もっとも、絵心のない鷹羽としては、ゲッコウがツバサマル、ヤイバが無敵将軍、シズカが隠大将軍などと言われても、ヤイバの頭の飾りが折り鶴に似ている(=無敵将軍の頭部と一致する)と思う以外はピンとこない。
 このようなモチーフが隠されていることに気付いた人は、偉いと思う。
 また、蒼太のパソコン画面に登場するネガティブシンジケートの名前の中には、「灰十字軍」(黒十字軍・ゴレンジャー)や「ジャンシンガー・一族」(ジャシンカ・ダイナマン)など、過去の悪の軍団名をもじったものが並んでいる。
 
 なお、この複数組織制は、『ジャンパーソン』でもそうだったが、1つ1つの組織が小粒に見えるという欠点がある。
 通常、敵組織の基地は1年を通して使用するパーマネントセットとして組まれるが、3つも4つもあるとそれぞれがこぢんまりとしたセットにならざるを得ないし、レギュラー幹部が増え過ぎるのを避けるため、それぞれの組織の幹部キャラ数に制約を受け、組織として人材不足に見えるからだ。
 実際、本作に登場する組織は、

と、いずれも組織と言うにはあまりに小規模すぎるし、本拠地を持っているのはダークシャドウの民家風隠れ家だけだ。
 こんなしょぼい組織ばかりでは、世界を滅ぼそうとしているとか言われてもピンと来ない。
 敵組織が迫力に乏しいことは、この手の作品としてはマイナスに働くことが多いので、この点だけでもかなり損をしている感がある。
 また、要するに毎回プレシャス争奪戦をしてはボウケンジャーに敗れている組織ばかりなわけで、これまた“弱い組織”に感じてしまう。
 これはプレシャス争奪戦を主眼においた本作の特殊性なのだが、プレシャスを使わずに恐ろしい作戦を実行した例が挙げられるだろうか?
 
 この“プレシャス争奪戦を主眼”という企画意図は、ボウケンジャーというチームの性格にも大きな影響を与えている。
 ボウケンジャーの存在目的は、世界の平和を守ることでも人間の命を守ることでもなく、プレシャスを手に入れることなのだ。
 一般に、ヒーローは、例えば敵の新兵器に対抗するために特殊な物質を必要とするなどの場合以外に、自らのために何かを手に入れるということはしない。
 この点、プレシャスを集めることを主目的としているボウケンジャーは、明らかにそれらと趣を異にしている。
 このことは、視聴者からも賛否別れた部分だが、詳しくは後述する。

 さて、ボウケンジャーは、このシリーズでは非常に珍しい“番組開始前から活動していたが番組開始後に全員揃った戦隊”だ。
 番組以前から存在した戦隊は結構あるが、前から数人いたが1話でメンバーが揃ったというのは、ボウケンジャーと『ガオレンジャー』、『デカレンジャー』くらいのものだ。
 この背景事情が想像できるというのは、本作の長所の1つと言える。
 “不滅の牙”明石をスカウトしたサージェスは、次に戦闘のプロであるさくらを、次いで情報収集のプロである蒼太をスカウトしている。
 さくらを口説いたのが明石本人であることを考えると、人選の段階から明石主導で進められてきたことが窺われる。
 恐らく明石は、自分の不得手な分野をフォローできる存在を求めていたのだろう。
 また、2人が操縦するゴーゴービークルとして、水中作業用のマリン、空中からの管制を可能にするジャイロをそれぞれ与えており、作業可能エリアを広げようとしていることが窺える。
 その後、ダイボウケン合体に必要な残り2台のビークルの操縦者として、現役のトレジャーハンターをスカウトしたわけだ。
 真墨の能力について、明石は最初からかなり高く評価していた様子があり、さくらや蒼太の反対を押し切ってテスト入隊させたであろうことまで見える。
 そして、蒼太の危惧どおり真墨は裏切ったわけで、“裏切ることを承知でスカウトした明石”とさくら達との感覚の違いが浮き彫りにされている。
 
 さて、こうして5人揃った『ボウケンジャー』は、2話では、現場でジャリュウと接触した菜月への疑惑を軸に話が進む。
 ここで明らかにされた菜月の記憶喪失ネタは、1話での予知シーン、3話でシズカにブレスレットを見せるシーンと併せて、菜月のキャラ描写の中心となっていく。
 この菜月の正体ネタは、敵組織が複数ある『ボウケンジャー』という番組にあって、“1年通しての縦糸”というポジションを与えられたようだ。
 そして、この菜月縦糸方式は、『ボウケンジャー』という番組の年間構成を支配している。
 少し考察してみよう。
 
 まず2話『竜の略奪者』で、菜月は、ジャリュウにブレスレットを見せていたため、スパイではないかとさくらに疑われる。
 そして、菜月が、自分が遺跡で発見されたことから、どこかのネガティブシンジケートの関係者ではないかと考えていることが示される。
 続く3話『覇者の剣』で、菜月は、初登場のシズカにブレスレットを見せている。
 ガジャは封印が解けたばかりだから菜月の関係者のわけはない(と作中誰もが考えている)し、ジャリュウ一族、ダークシャドウもブレスレットに見覚えがない。
 これで、この時点での全ての登場組織が菜月の正体を知らないことが明示され、菜月の自分探しという縦糸が紡がれ始める。
 9話『折鶴の忍者』で唐物屋の女主人がブレスレットに見覚えがあると言い、14話『甦る過去』で記憶喪失を利用される話を見せた後、17話『アシュの鏡』ではガイが菜月の正体に気付くシーンがある。
 そうして引っ張ってきた物語に、34話『レムリアの太陽』35話『遼かなる記憶』の前後編で、唐物屋に保管されていた“菜月と同じブレスレットをはめ、ズバーンを持った女性像”で伏線を消化しつつ、クエスターがリュウオーンに“菜月がレムリア人の生き残り”であることを語る。
 そして、事件終結後、天涯孤独であることがはっきりした菜月は、ボウケンジャーというチームを家として生きることを決意するわけだ。
 このことは、番組ラストで、菜月の“自分だけの宝”がボウケンイエロー間宮菜月としての思い出となっていることで結実している。
 これら一連の流れをもって、菜月についての謎解きは綺麗に終わったと見る向きも少なくないようだ。
 
 だが、本当にそうだろうか?
 たしかに、菜月の過去話とは一見無関係な真墨とヤイバの因縁話や、シルバー誕生編に紛れて小粒な伏線を散りばめていることは評価に値するが、菜月が自身の過去を気にするのは伏線を用意したエピソードの時だけで、それ以外のエピソードではやっていない。
 そして菜月は、自分が現人類ではなく既に滅亡したレムリア人だと知った後も特にショックを受けることもなく、ボウケンジャーとして明るく生きている。
 
 ちょっと待て。
 “人間でない”ことがはっきりした菜月が、以後全くそのことを悩まないのはなぜなのだろう?
 たしかに自分のルーツは分かったが、知っていればそれでいいというものではないだろう。
 今まで人間のつもりだったのに、いきなりそうではないことを突きつけられたのだ。
 1話から時たま描かれてきた菜月の予知能力や怪力は、レムリア人としての特殊能力、つまり人間でないことに起因するものだ。
 健康診断等で引っかかった形跡もないから、一応肉体的には現人類とほとんど変わらないのだろうが、ガイが血を舐めただけでレムリア人だと気付くほど、生物としての種そのものが異なっているというのに、菜月はどうして気にせず一緒に生きていけるのか。
 その答えは、正に菜月のエピソードが番組の縦糸として用意されたものだからなのだ。
 この「縦糸」の方式は、ここ数年見られなかったものだ。
 『フラッシュマン』での親探しのような“戦いとは関係ないところで貫かれた年間のテーマ”と言うと分かりやすいだろう。
 同じ年間のテーマでも、『ハリケンジャー』での“アレ(と呼ばれる忍の奥義)争奪戦”のように、戦いそのものの目的と深く関わりを持っているものとは、若干意味が異なる。
 なぜなら、戦いの描写とは関係のないところで進行させなければならないからだ。
 『ハリケンジャー』の例で言えば、「アレ」は戦う目的そのものだから、戦いの中でその正体を徐々に明らかにしていくことが、ごく自然にできる。
 だが、『フラッシュマン』の親は、戦っているだけでは決して現れないから、親の手掛かりを巧く絡めた戦いを時折混ぜていかなければいつまで経っても進展しないし、親探しだけやるエピソードを作ると、戦う相手がいなくなってしまうのだ。
 こういった縦糸としては、一番最近の例では、『タイムレンジャー』での“誰が何の目的で緊急システムを発動しているのか”“タックのデータを改変したのは誰か”という謎解きが挙げられるだろう。
 つまり、戦闘と関連のない部分で縦糸が用意されたのは、6年ぶりということになる。
 
 上記のとおり、菜月のエピソードは35話『遼かなる記憶』で決着をみるが、その後、『ボウケンジャー』という番組は、39話『プロメテウスの石』〜42話『クエスターの時代』のクリスマス総力戦、44話『仙人の温泉』以降の最終決戦へと移行する。
 この“レムリアの太陽”前後編は、ダイボイジャー登場編としての側面も持っていたため、その後のクリスマス総力戦に向けて、ダイボイジャーの活躍を見せておく必要がある。
 何しろ41話では、ピンチを演出するためにダイボイジャーが敗北しなければならないのだから、それまでにある程度強さを見せておかないと、新商品がクリスマスに売れ残るという最悪の事態になってしまうのだ。
 また、アルティメットダイボウケンが敗れて新ロボが登場するという決戦編の後には、少し軽い話を挟まないと重苦しくなるという面もある。
 39話がおちゃらけ総集編でありながら次に控えるクエスター決着編を匂わせる形になっているのは、そういった決戦前の軽い箸休めとしての意味合いを持っている。
 こういった作劇上の計算をすると、クリスマス総力戦〜最終決戦への流れから逆算して、菜月の過去話は35話ころには終わらせる必要があったというわけだ。
 そして、菜月のエピソードは、とりあえず決着を着けた以上はもう触れる必要がない、というより、菜月が人間でないことを悩み始めたりすると物語が方向性を見失ってしまいかねないから、逆に触れてはならない部分になってしまったのだ。
 つまり、菜月のエピソードが比較的丁寧に描かれたのは、それが作品の縦糸だからに過ぎなかった(=作劇上の要請)ということになる。
 
 そうではないと思うなら、少し考えてみてほしい。
 菜月の正体が分かって以降、菜月は特殊能力を発揮しているだろうか?
 例えば、48話『恐怖なる大神官』で、デスペラートを相手に生身の5人がデュアルクラッシャーを撃つ際、真墨が菜月中心に構えさせ、菜月がその怪力を発揮して発射の衝撃に耐えたならば、真墨の判断力も菜月の特殊能力も描写できた上、“(パラレルスーツを着ていてもダメなのに)生身でデュアルクラッシャー”という無茶を正当化できただろうに、そういうところではちっとも思い出さない。
 また、ズバーンが登場当初から菜月に(後で見直して分かる程度でも)何らかの反応をしていれば面白い伏線になったのだが、結局何もなかった。
 菜月の特殊能力は、伏線の一環として、忘れられない程度に見せてきたに過ぎなかったのだ。
 伏線を張る、或いは菜月の記憶喪失を中心にするといったエピソードでその描写があるのは当たり前で、そのほかの回でどれだけそういう部分を見せられたかが問題なのだが、残念ながら努力したとは言い難い。
 こういった積み重ねがキャラクターの掘り下げというものだと思うが、最も美味しいネタを持っている菜月についてすらこのざまだ。
 
 このキャラクターの掘り下げが全く上手くいっていないというのが、本作の欠点の1つだ。
 前作『マジレンジャー』とは対照的に、『ボウケンジャー』ではキャラクターの掘り下げが甘い。
 彼らの私生活が見えないことも理由の1つなのだが、それぞれの“自分だけの宝”について、口で言っているだけで重みが感じられないというのも大きい。
 たしかに、5話『帝国の真珠』では、堅物なさくらが笑えないという話が語られているし、3話『覇者の剣』や23話『あぶない相棒』では、蒼太が元産業スパイで、人を信じられないという話が語られている。
 だが、それらは、いずれもセリフによる描写がほとんどで、実態として感じられない。
 物語を牽引するため以外で、そういう設定をきちんと描写していないせいだ。
 例えば、蒼太が人を信用しないという具体的な例を、蒼太主人公回以外で挙げることができるだろうか?
 “信頼できる仲間”に対しては、警戒しなくていい。
 だが、それ以外の者に心を許していないという描写があったか?
 2話『竜の略奪者』では、まだ仲間として溶け込んでおらず、怪しい行動を取る菜月に対し、蒼太よりむしろさくらの方が警戒している。
 また、蒼太はサージェスに対する不信感を露わにすることがあっても、裏切られないように手を打っておくという自衛策を講じたことはない。
 同様に、明石への想いを全員に気付かれているさくらが、自分の本音を表現するのが下手だと思えるだろうか。
 さくらの恋心については、本編中何度も示されてきているので、ラストで明石に付いていくことに関して違和感はないし、それなりの決着を着けたと言えるので、個人的には比較的好感触なのだが、それとても悪く言えば“最初から明石に心酔していたさくらがどこまでもお供している”だけでしかない。
 真墨に至っては、1話で誓った“明石を超える”という目標をさっさと忘れてしまい、思い出したのは最終回近くなってからだ。
 これでは、誰が見たって唐突すぎるだろう。
 映士が高丘家の宿命を気にしていたのも23話『あぶない相棒』以前に限られる。
 たしかにガイやレイとは戦い続け、最後には墓まで作ってやったが、それはガイ達との宿命の戦い故というわけではなかった。
 例えば、映士がクエスターと戦うのは、プレシャス争奪戦にクエスターが参戦している時だけであって、常にクエスターを追い掛けようとはしていない。
 映士が非番の時、いつもクエスターを探しているという描写はない。
 いささか現実味に乏しいが、目の前にプレシャスがあってジャリュウが狙っているという状況で、プレシャスを狙っていないクエスターが通りがかったとして、映士はプレシャスを放ってクエスターを追うだろうか?
 ガイ達との戦いが宿命なら、プレシャスを放り出してでも追わなければならないが、恐らく映士はそうはしないだろう。
 現実にそんなシチュエーションはありえないだろうが、そういう予測ができてしまうこと自体が、映士の描写としてアシュとの戦いは宿命足り得ないことの表れなのだ。
 実際、40話『西のアシュ』でも、オウガが母の関係者だと知る前は、1人で突っ走るようなことはしなかった。
 そうやって考えていくと、結局、誰1人として与えられた役割以上のことを果たしていないと言えるだろう。
 明石以外は。
 明石だけは、キャラが立っていた。
 ただし、世間的に言われているような“凛々しくて頼りがいのあるリーダー”ということではない。
 どちらかというと、“しっかりしていそうで実は間抜けな二枚目半レッド”といったところだろう。
 12話『ハーメルンの笛』での、しどろもどろになりながらさくらを擁護する姿、32話『ボウケン学校の秘密』で入学試験に落第して惚けている姿など、「凛々しい」とはかけ離れた印象が、明石のキャラを掘り下げていったからだ。
 これらは、いずれも明石の主役回ではなく、ほかのキャラが主役の回でのちょっとしたシーンだが、正にそういう部分での描写がキャラクターを掘り下げていったわけだ。
 ただ明石の場合、残念ながら、本来進みたかった方向とは別のベクトルでキャラが掘り下げられていったようだ。
 明石自身の主役回でも、27話『風水占いの罠』のように間抜けな話はあるので、もうこれはどうしようもないだろう。
 それでも、明石って、凛々しいようで、実は間抜けな男だったんだと印象づけられただけ、他のキャラより数段マシだったと思う。
 
 敵方にしても、キャラの立っている者は少ない。
 ヤイバがどういう経緯でダークシャドウに身を置いたのか、素顔は到底人間とは思えず、死んだら爆発するような奴が本当は何者だったのかなど、さっぱり見えないままだった。
 クエスターは、しゃべり方が独特でインパクトもあったが、やはりキャラが弱い。
 リュウオーンは、正体が思わせぶりなだけで、逆に29話『黄金の剣』まで正体を明かさないまま来ていた分、キャラが弱くなってしまっていた。
 ガジャに何度も騙されるという役回りは、その学習能力のなさに涙が出そうになる。
 敵方でキャラが立っていたのは、役者が顔を出しているガジャだけではなかろうか。
 『メガレンジャー』のDr.ヒネラー以来8年ぶりの顔出し男性幹部なのだが、独特の声もあいまって、さすがに影の濃いキャラだった。
 11話『孤島の決戦』での「私に今時の機械のことを聞くなーっ!!」は爆笑ものだ。

 商品展開的には、なりきり系が強化されている感がある。
 前作『マジレンジャー』の特徴だった変身アイテムの音声システムは、アクセルラーではより本編とリンクする形になっているし、前述のとおり、変身ポーズを固定化しないことで玩具のプレイバリューに幅を持たせた。
 また、ここ数年で家庭用DVDプレイヤーが急速に普及したことを受け、DVDプレイヤーとリンクさせるボウケンドライバーの商品が発売されている。
 これは、ゴーゴービークルなどの操縦装置であるボウケンドライバーを象った一種のリモコンであり、家庭用DVDプレイヤーにセットした付属DVDを再生してアクションゲームを楽しむ機構で、同時期放送の『ウルトラマンメビウス』でも同種のシミュレーター玩具が発売されている。
 この商品では、本編に準拠してアクセルラーをセットするパーツも付属しており、なりきり感を高めている。
 もちろん、アクセルラーは単なる飾りで、セットしなくても全く問題ない。
 ケーキのキャラデコも、前作での流れを継いで、2段階で発売されている。
 上半期の誕生日ケーキバージョンと、下半期のクリスマスケーキバージョンだが、それぞれ上に載っているキャラクターがダイボウケンからダイボイジャーへと変化している。
 また、これも前作の流れを継いで、真墨のピアスなどアクセサリーも商品化されている。
 
 これもまた伝統となっている悪側幹部としての女優の顔出しレギュラー出演は、風のシズカ役として、グラビアアイドル系の山崎真実氏がセミレギュラー出演している。
 演技はお世辞にも巧いとは言えない(思いっきり棒読みなのだ)が、夜中にパジャマでトイレに行く悪の幹部という非常にラブリーなものを見せてくれた。

 これまでの流れを引き継ぐ一方で、意図的にここ数年の伝統を排することもしている。
 伝統のサブタイトルの拘りや主役キャラによるアイキャッチ、強化二段変身、京都太秦映画村でのロケは、今回はオミットされているし、エンディングでのキャラによるダンスやエンディング中でのミニコーナーも行われていない。
 プロデューサーが前後の作品と違うから、というのが理由と思われるが、ミニコーナーがなくなったのは、3話から始まったED後の『30戦隊大全集』に時間を食われたせいだろう。
 このコーナーでは、4〜33話まで『30戦隊大全集』と題して歴代の戦隊を、34〜48話までは『30戦隊大全集スペシャルファイル』と題してシリーズ初のスーパー合体や二段変身、6人目の新戦士などの歴史を、それぞれ紹介している。
 歴代戦隊紹介では(なにしろ30秒しかないので)超早口で解説するのだが、それぞれの戦隊ごとに趣向を凝らした小道具を用意しているのが楽しい。
 まず、戦隊名を紹介する際には、名乗りポーズか変身ポーズの一部を取っている。
 また、『ゴレンジャー』解説の回では(スペシャルファイルでの「初の戦隊」でも)菜月がカレーを食べていたり、『ジャッカー』では5人がババ抜きをしていて明石がババ(ジョーカー)を引いて終わったり、『ハリケンジャー』の時に後ろの画面でシズカが「ボウケンジャー、0点!」と言っていたりする。
 『ゴーゴーファイブ』以降の紹介の際は、その戦隊の変身前着用のジャケットなどを6人が着ていたりと、さりげなく歴史を見せていたりもする。
 更に、スペシャルファイルの「悪の戦隊」では、BGMに「暴走戦隊ゾクレンジャー」を流しつつ、花のくノ一組(『カクレンジャー』)、邪電戦隊ネジレンジャー(『メガレンジャー』)、銀河戦隊ギンガマン(『ファイブマン』)、暴走戦隊ゾクレンジャー(『カーレンジャー』)を紹介している。
 特にギンガマンは、正規の戦隊に『星獣戦隊ギンガマン』がいて混同されやすいだけに、ある意味貴重な映像だろう。
 個人的には、邪命戦隊エヴォレンジャー(『アバレンジャー』)が出ていなかったのが残念だ。
 やはり、再生怪人だけで構成され、登場して数分で全滅したのがまずかったか。
 一応、OP映像まである悪の戦隊はこいつらだけなんだけどなぁ(途中で終わるけど)。
 また、この回のラストにはガジャが4色のカースを率いて「我ら、ガジャ電撃隊!」と名乗って、もの凄くお茶目な顔で自分を指さしながら「ビッグワン」と紹介している。
 確かに白いけど…。
 
 前作『マジレンジャー』で途切れたクリスマス商戦前の総力戦とその後のおちゃらけ総集編の伝統だが、本作もまた一応回避された。
 もっとも、“総力戦の後のおちゃらけ総集編”が回避されただけであって、上記のとおり39話『プロメテウスの石』で、おちゃらけ総集編はしっかりやっているのだが。

 そして、民間の営利団体に所属する戦隊というのが、この作品最大の新機軸であり特徴と言える。
 これまでも『ゴーグルファイブ』『ダイナマン』『ターボレンジャー』等のように、市井の科学者が自費で民間人戦隊を組織することはあったが、営利企業が結成した戦隊というのは、シリーズ初の試みだ。
 それでは、“民間企業戦隊”であるボウケンジャーの性格について考えてみよう。
 アバンタイトルで言っているように、ボウケンジャーは、「危険な秘宝を守り抜くために命がけの冒険に旅立ち、あらゆる困難を乗り越え進む冒険者」として設定されている。
 彼らの目的は、プレシャスという秘宝を入手することそれ自体であり、決して世界やご近所の平和を守ることではない。
 もちろん、「あらゆる困難」の中には、ネガティブシンジケートとの争奪戦も含まれているが、それにしたって、その困難を乗り越えるのはあくまで“プレシャスを手に入れる”という目的の前に立ち塞がっているからに過ぎない。
 つまりボウケンジャーは、宝を手に入れる邪魔をするなら戦うと言っているに等しい。
 街にネガティブシンジケートの巨大メカが現れた時に出撃するのは、主にそれが持っているプレシャスを奪うため、或いはこれから奪おうとするプレシャスを横取りするためであり、街を守るのは主目的ではない。
 明石達が正義感を全く持っていないというわけではないが、少なくともボウケンジャーの存在意義としては、世界の平和など二の次三の次で、あくまでプレシャス入手が優先なのだ。
 だが、恐らく視聴者の多くは、彼らが正義の味方だと誤解しているだろう。
 どうやら、ボウケンジャー本人達も自分達が世のため人のために活動していると誤解しているようだ。
 だが、彼らは間違っても正義の味方などではない。

 “正義の味方”でない者を主人公にしたヒーロー番組を探すのは、とても大変だ。
 トクサツヒーロー物でなければ、例えば『ルパン三世』や『CAT'S EYE』のように、主人公が泥棒、つまり世間的にいう「悪人」ということもある。
 まぁ、『CAT'S EYE』の場合は、彼女らなりの倫理観に基づいて、奪われた父の遺産を取り戻そうとしていたわけだから、単純に悪と断じるわけにいかないところもある。
 また、『ルパン三世』にしても、映画『カリオストロの城』のように、ルパンがむしろ正義と思える行動を取ることもあるし、テレビシリーズにだって、ルパンがより悪い奴を打ち負かすといったパターンの話も多い。
 だが、たとえそうであっても、あくまでもルパンやCAT'Sは犯罪者として公権力に追われる身として描写されているし、世間から英雄ともてはやされることもない。
 特にルパンの場合、追っているのが銭形警部だから、かなりコミカルな追いかけっこになってはいるが、あれは世界的な犯罪者が公権力に追われている図にほかならない。
 だが、トクサツにおいては、主人公が正義の味方でないものは全くと言っていいほどない…少なくとも、主人公が“自分なりの正義と信念”を守っていないものを探すのは難しい。
 『仮面ライダー龍騎』以降の平成ライダーでは、利己的な目的のために戦うライダーが多く登場するが、少なくとも番組タイトルになっている主人公についてだけ見れば、自分なりの正義と信念を貫こうとはしている。
 人間的に小粒で近視眼的なため大局的に見るとさほど意味のない信念である、ということも多いが、それでも利己主義的ではない。
 1つには、トクサツでは長らく“正義の味方”を描こうとしてきた伝統があるということもあるだろう。
 また、アニメに比して対象年齢の下限が低いことも挙げられるだろう。
 ヒーローの風上にも置けないと評判の『超光戦士シャンゼリオン』でさえ、一応ダークザイドとの戦いは優先的にこなしている。
 両親の仲を良くしてもらう代わりに酉年の平和を守る『有言実行三姉妹シュシュトリアン』にしても、動機はともかく“酉年の平和を守る”という目的意識はしっかりしている。
 だが、ボウケンジャーは、その非常に珍しい“正義の味方”であることを放棄したヒーロー物なのだ。
 
 いきなりこんなことを言うと、「何をバカなことを言ってるんだ」と思われるかもしれないが、事実だ。
 その辺の事情を説明しよう。
 ボウケンジャーというのは、明石が言っているとおり冒険するための集団であり、冒険の目的としてプレシャス入手を掲げているだけだ。
 「僕達は戦いのプロじゃない」という蒼太の言葉は、“悪を倒す”という目的を持たないことを明示している。
 冒険したい明石達と、プレシャスを手に入れたいサージェスの利害が一致しているからこそ、サージェスは彼らに常識では考えられないほど充実した装備を与え、間違いなくプレシャスが入手できるように様々なバックアップを行っているわけだ。
 なお、巷では、「あれほどの装備を持っていて何が“命懸けの冒険”だ」と言う向きもあるが、それについては、まぁ、どんなに重装備でも死ぬことはあるのだから、許す。
 だが、サージェスの装備でサージェスの指令に従って活動していることがボウケンジャーの行動に与える影響は、計り知れないものがある。
 
 まず、スポンサーから目標を与えられながらする冒険が純粋に「冒険」たり得るのかという疑問は拭いきれない。
 勿論、目標が何もなければそれは「冒険」ではなく「放浪」でしかないから、目標があることが悪いとは言わない。
 だが、ことは「次は、視聴率が取れそうな“無一文シルクロード横断”に挑戦してくれ!」とかいう冒険の過程そのものを目的にしたものではなく、「次は○○を手に入れて来い!」という具体的な物品を目的とした利得的なものだ。
 入手したプレシャスをサージェスに渡すことが義務づけられているボウケンジャーにとって、プレシャス入手という行動は、商品の仕入れと同義でしかないのだ。
 明石・真墨・菜月の3人は、元々はトレジャーハンターだ。
 サージェスに雇われる前から、入手した秘宝をどうにかすることによって生計を立て、次なる冒険の活動資金を得ていたはずだ。
 簡単に言えば、手に入れた物を誰かに売っ払っていたのだ。
 ならば、ボウケンジャーになって変わったことといえば、売る相手がサージェスに限定されただけということにはなるまいか。
 これまでフリーランスとして、プレシャスを入手するたびに買い手を探していた、或いは誰かから依頼されてからプレシャスを探しに行っていた盗掘家が、サラリーマンとしてプレシャスを仕入れてきて雇い主に献上するようになっただけの話なのだ。
 定額給料制なのか歩合制なのかは分からないが、企業に雇われている以上、サラリーマンであることに変わりはない。
 自分で使うわけではないから、集める物がどういった性質のものなのか、手に入れた後サージェスがどう使うつもりなのかは、ボウケンジャーにとって関係も興味もないことだ。
 実際、ボウケンジャーは、プレシャスを持ち帰った後、“プレシャス保管庫に保管されている”としか知らない。
 渡した後、どこでどのように保管されるか、それをサージェスが何かに悪用したりしないかについては、全く考えていないのだ。
 飼い主が投げた物を「ほうら、取って行い」と言われて取りに行く犬にとって、それが棒きれなのかボールなのかはあまり関係ないが、正にそういう状態だ。
 そう考えてくると、ボウケンジャーとダークシャドウとの違いは、スポンサーに雇われているかどうかでしかない。
 ボウケンジャーは、人類絶滅という目的でプレシャスを求めるジャリュウ一族などだけでなく、プレシャスを売り物として見ているダークシャドウも「ネガティブシンジケート」と呼んでいる。
 ダークシャドウが人を殺しているシーンは、作中存在しない。
 確かにヤイバがかつて何人も人を殺したことは言及されているが、あくまで昔の話だ。
 そんなことを言ったら、どこぞの国でクーデターを起こさせて何十、何百という人を殺させた蒼太の方がよほどの悪人だ。
 自分自身の手を汚していないという点で、より一層悪人かもしれない。
 ダークシャドウは他人の物を盗んだりもするじゃないか、と言いたくなるかもしれないが、人を騙して預けさせた物を燃やす行為だって立派に犯罪だ。
 9話『折鶴の忍者』10話『消えたボウケンレッド』では、サージェスが何年も前から預けるよう説得してきた人形を軸にストーリーが展開する。
 ボウケンジャーがようやく預かってきたその人形を、ミスターボイスは燃やすよう命じた。
 詳しくは後述するが、ボウケンジャーは、燃やすために騙し取ろうとしているサージェスの真意は知らなかったし、結果的に燃やさずに済んだのも事実だが、本来なら詐欺の片棒を担ぐところだったのだ。
 そして、考古学的な価値があるであろう各種遺跡を(わざとかどうかはともかく)破壊しているのも、ジャリュウ一族やクエスターと同レベルだ。
 ダークシャドウがネガティブシンジケートならば、ボウケンジャー自身もネガティブシンジケートでしかない。
 要するに「ネガティブシンジケート」とは、ボウケンジャーにとってプレシャス入手の障害となる集団を指す言葉なのであって、別に世界を滅ぼそうとする悪人の総称ではない。
 ボウケンジャー自身、公的機関に所属しておらず承認もされていない以上、遺跡を壊して許されるようなエクスキューズはない。
 そう考えてみると、『ボウケンジャー』という番組は、自分が悪人呼ばわりしている相手と同じことをしているくせに、自分は悪人でないと思いこんでいる勘違い野郎どもを主人公に据えているわけだ。
 せめて自分が悪である或いは正義でないという自覚でもあれば、単に“悪人”が主人公というだけのちょっと経路の変わった番組でしかないのだが、その自覚がないから“悪のくせに正義だと思っている”偽善者達と評価するしかないのだ。
 これほど明確に正義を捨てた戦隊は、他にない。
 これで、せめて公的組織や正義を守る組織に雇われているというなら、やっていることは同じでも、意味が随分変わってくるのだが、そうは問屋が卸さない。
 ボウケンジャーを雇っているサージェスは、滅多にお目にかかれないほど悪辣な組織なのだ。

 それでは、次にサージェスがどれほどひどい組織なのかを見てみよう。
 そもそも、なぜサージェスはプレシャスを集めるのだろう?
 プレシャスとは、アクセルラーによって計測されるハザードレベルなる数値が検出される物体だ。
 この「ハザードレベル」という数字が何を基にどう計算されるのかは、本編中明かされずじまいだったが、視聴者は、当初これをもって「危険な秘宝」なのだと考えていたはずだ。
 危険な品物を世間から隔離するということ自体は、一見正義の行いに見える。
 だが、サージェスは、決して“世のため人のため”にプレシャスを集めているわけではない。
 そもそも“ゴードムの心臓”を手に入れようと余計なことをしてガジャを目覚めさせたのはボウケンジャー自身なわけだが、それだけ見れば、“他のネガティブシンジケートが狙う前に保護しようとしたが、ちょっと失敗した”と言えなくもない。
 事実、1話ラストでは“ゴードムの心臓”を狙ってジャリュウが現れているのだから、一歩遅れれば“ゴードムの心臓”を奪われ悪用されていた可能性は高い。
 だが、サージェスの悪辣さは、プレシャスを集める目的がどうこういうレベルではない。
 その片鱗は、前述のとおり、9、10話から見え始める。
 何年も前から、ハザードレベルが0の人形を預けるよう言い続け、ようやく預かった途端に燃やそうとするサージェス。
 その目的は、人形の服に隠された地図を消滅させたいというものだった。
 しかも、「(秘密が暴かれると)サージェスが崩壊する」としか説明せずに、人形を燃やすようボウケンジャーに命じる理不尽さ。
 地図だけ燃やせば済むものを、配下であるボウケンジャーに理由も知らせず人形そのものを焼くよう命じるというのは、ボウケンジャーに教えると外部に漏れる(ボウケンジャーが勝手に地図をコピーする)恐れがあると考えてのことで、ボウケンジャーを手足としてしか見ておらず、信用もしていないことの表れだ。
 もっとも、実際、明石は盗み見た地図を記憶して自分の好奇心のために勝手に行動し、結果としてゴードムエンジン誕生に手を貸すことになっているのだから、サージェスの危惧は正鵠を射ていると言えるだろう。
 まったくもって、雇い主が雇い主なら従業員も従業員だ。
 
 ともあれ、地図それ自体はプレシャスではない。
 しかも地図が示すレオン・ジョルダーナの写本にしても、パラレルエンジンの基礎となるデッサン描かれているというだけで、本来的に危険なものとは言えない。
 このデッサンを見たガジャが後にゴードムエンジンを開発していることを理由に、やはり隔離すべき危険な存在だったと考えることもできるだろうが、それは使用目的の問題であって、世に出てはいけない存在とは言えないだろう。
 少なくとも、自分達がパラレルエンジンを開発し、それを応用した武器・兵器まで作っておいて、他人にとやかく言うのはおかしい。
 そう、レオン・ジョルダーナのデッサンからパラレルエンジンを開発し、火竜のウロコを組み込んでアクセルテクターを完成させたように、サージェスは、入手したプレシャスそのもの、或いは解析したノウハウを利用して自らの技術を進歩させている。
 しかも、そのノウハウは、他者には一切秘密だ。
 
 パラレルエンジンひとつとってみても、善人ぶってサージェスレスキューなど稼動させるより、そのノウハウを一般に流通させた方がどれほど有効か。
 たった1人のサージェスレスキューが動き回るより、全国の消防署の何カ所かにゴーゴーファイヤークラスの設備を置いた方が有効に決まっている。
 もしサージェスにそうしない理由を問い質したなら、きっと“あれほどの高出力デバイスを悪用されると危険だから”と答えるだろう。
 視聴者からは、“エネルギー源が特殊なんだから、量産はできないだろう”という答えが返ってくるかもしれない。
 だが、そんなことはない。
 エネルギー源が特殊という点については後に理由を述べるとして、まず、悪用されるとまずいという論理について考えてみよう。
 技術が一般化されれば、当然悪用する人間は出るだろう。
 しかし、戦車の製造理論が一般化したからといって、犯罪者が戦車に乗ってやって来るわけではない。
 戦車は一般には売っていないし、自作するにはかなりの技術力と資金・設備が必要だからだ。
 ガソリンエンジンという一般化された技術にしても、それを乗せる車体の設計やタイヤの配置、細かい調整次第で性能が大きく変わるからこそモーターレースというものが存在する。
 拳銃だって、理屈は誰でも知っているようなものだが、日本でそれなりの精度のものを手に入れようとすれば、警官を襲うか密輸入でもするしかない。
 パラレルエンジンの技術も、たとえ理論を公表したとしても、誰でも使えるような安っぽいものではないだろう。
 技術の使用にパテントを取り、使用そのものを規制するなどすれば、大規模な悪用は防げるはずだ。
 また、パラレルスーツを着た犯罪者が暴れたとしても、それを取り締まる警察の方でも同じ力を持てるわけだから、捕り物としてさほど困ることにはならない。
 勿論被害はある程度大きくなるだろうが、それは技術を隠す理由としては弱い。
 第一、サージェスが作ったわけではないレオン・ジョルダーナの写本を隠す理由にはならないのだ。
 では、サージェスはどうして秘密にしたいのか。
 それは、自らの優位性を崩したくないからだ。
 
 同レベルの身体能力を持った者同士なら、人数の多い方が有利だ。
 5人のボウケンジャーに対してネガティブシンジケートが10人でパラレルスーツを纏って当たれば、ボウケンジャーが勝つのは至難の業となる。
 それはつまり、プレシャス争奪戦で敗れることを意味する。
 前述の「サージェスが崩壊する」という言葉は、正にそういう状況を指すのだろう。
 だから、サージェスが常にプレシャスを独占するためには、技術を秘匿し、他者が優れた技術を入手することを阻止しなければならない。
 メルクリウスの器をクエスターと奪い合うために映士を見殺しにするよう命じる、或いはガジャにプレシャスを渡さないために、蒼太らが戦闘中なのを承知の上で全てのパラレルエンジンを封印してスーツを使用不能にするというサージェスのやり方は、正にプレシャス独占を優先したものと言える。
 そのくせ、4話『失われたビークル』のマッドネス・ウェザーのように、手に負えないならプレシャスを破壊することさえ厭わない。
 しかもボウケンジャー4人をゴーゴービークルごと爆破して、だ。
 もっとも、この場合そんなことをしようとしたのは、1つの文明を滅ぼしたほどのマシンの暴走を止めるためだ。
 ミスターボイスは、この時、人々の命には代えられないと言っている。
 確かにそれもあるのかもしれないが、この時危険に曝されている「人々」にはサージェスのトップも含まれているので、素直に聞くわけにもいくまい。
 背後にサージェスという企業=営利団体がいる以上、サージェスの損になることはしない、というよりできないのだ。
 この“サージェスの利益のためにはボウケンジャーを犠牲にすることを厭わない”という体質が現れているのは、4話だけではない。
 9話『折鶴の忍者』では、ボウケンジャーが使者となって、その信用でようやく保管委託を受けた人形を焼くように命じている。
 そんなことをすれば、ボウケンジャーが女主人を騙して奪い取ったことになるわけだが、そんなことはお構いなしだ。
 41話『メルクリウスの器』では、「シルバーは見捨てて今度こそプレシャスを優先するように」という意味の命令を下しているし、48話『恐怖なる大神官』では、戦闘中のピンク達のパラレルスーツを使用不能にしている。
 パラレルスーツを着ていてすら苦戦している最中だというのに、丸腰にしたらどういうことになるか分からないはずがないのだが、それでも敢えてやっているのだ。
 しかも、彼らの装着しているパラレルスーツにエネルギーを供給しているビークルはその場にはない、つまり直ちにプレシャスを吸収されてしまう危険があるとは言い難い場面で、だ。
 蒼太から「だからサージェスは…」的な怒りの声が上がるのは、至極もっともな話だ。
 司令部と実働部隊の間でこれほどギスギスしたものを隠し持っている戦隊は他にない。

 サージェス財団が主に何をして儲けているのかについては特に触れられていないが、プレシャス以外にも様々な秘宝を収集し、プレシャス以外のものについてはサージェスミュージアムで一般に公開しているようだ。
 もちろん、秘宝入手に掛かった費用は、ミュージアムの入場料で賄える程度のものではないはずだから、これは本業ではあるまい。
 つまり、莫大な利益を上げる本業を持ちつつ、文化事業として秘宝集めをしている財団というのが世間での見方だろう。
 そういう言い方をすれば、全て自腹で秘密基地ベイエリア55や各種ロボを建造した『ゴーゴーファイブ』の巽博士とそう変わらないように見える。
 だが、根幹が「企業」である以上、伊達や酔狂で湯水の如く金を使うわけにはいかないし、ボウケンジャーも、そこに雇われている従業員であるからには、雇い主の意向に反する行動はそうそう取れない。
 これは、本編で明確に語られているわけではないが、自明の理だ。
 実際、38話『虹の反物』では、蒼太が「サージェスの規約に、ペットを飼っちゃいけないとは書いてない」と言っており、サージェスの規約に反して行動すれば何らかのペナルティがあることを匂わせている。
 そして、この民間企業戦隊であることが、本作最大の失敗要因となっている。
 
 サージェスは、自らが開発した特殊技術でボウケンジャーを組織したわけではない。
 ボウケンジャーは、プレシャスの解析結果を生かした技術を用い、新たなプレシャスを手に入れるという無限回廊を行く存在だ。
 口ではどう言おうとも、サージェスの目的はあくまでプレシャスを手に入れることであり、その過程において、どんな歴史的文化的価値のある遺跡を破壊しようと全く意に介さない。
 また、最終決戦では、せっかく集めたプレシャスを他人に渡さないために、倉庫ごと爆破するという暴挙に出ている。
 それらコレクションは二度と復元できないものがほとんどで、また、破壊したら危険なものや爆破した程度では破壊できないものが含まれていることを承知の上で、だ。
 特に、ガジャが求めていたゴードムの心臓が破壊できないから封印されていたことは1話で明石が言っているし、実際ゴードムの爆発から無傷で回収されているというのに、すっかり忘れて保管庫を爆破したせいでやすやすとガジャに奪われているところを見ると、手に入れたプレシャスの性質をきちんと理解して管理しているわけでもなさそうだ。
 その上、明石達6人組は、プレシャスを入手する過程を楽しむトレジャーハッピーどもであり、過去に手に入れたものがどうなろうと知ったことではない。
 ダークシャドウなら、大事な金蔓をあっさり破壊できるような神経は持っていないだろう。
 前述のとおり、私利私欲のためにプレシャスを求め、非合法な入手方法を厭わないという点において、ダークシャドウもサージェスも変わらない。
 無駄な遺跡破壊を行わないという意味では、ダークシャドウの方がまともかもしれない。
 いずれにせよ、ネガティブシンジケートがサージェスの商売敵程度にしか見えないほどにサージェスが悪辣に感じられるというのは問題だろう。
 そして、サージェスが悪辣であることを熟知した上で、一向に離反する気を起こさないボウケンジャーも間違いなく同罪である。
 つまり、ボウケンジャーは、“目くそ鼻くそを笑う”どころではなく自分達よりちょっとはマシなダークシャドウを悪者呼ばわりして自分が正義だと言い張るひどい奴らなのだ。

 さて、先程“エネルギー源が特殊なんだから、量産はできないだろう”という疑問に対して、そうではないと述べた。
 その理由は、単純にパラレルエンジンのエネルギー源がプレシャスだというのは、最終回近辺における唐突な設定変更だからだ。
 もっとも、これはサージェスの設定そのものによる問題点というより、単に番組がラストでコケたという演出上の話に過ぎない。
 
 パラレルエンジンのエネルギー源に関しては、確かに最終回近くになるまで明らかにされてはいない。
 だが、プレシャスを持たないガジャが生みだしたクエスターにゴードムエンジンが内蔵され、機能している以上、“プレシャスがエネルギー源”などという素っ頓狂な設定はあり得ない。
 第一、ガジャ同様プレシャスを持っていないクエスターは、プレシャスを入手するためにゴードムエンジン内蔵のクエスターロボを使うのだ。
 そして、28話『伝説の鎧』では、入手したプレシャスをクエスターロボに装備させている。
 搭載してエネルギー源に、ではなく、装備させて鎧として使っているのだ。
 また、33話『レムリアの太陽』では、ゴードムエンジンの出力を持ってしても動かない邪機竜グランドを動かすためのエネルギー源として、レムリアの太陽を求めている。
 断っておくが、“レムリアの太陽に込められた夢のエネルギーを利用してゴードムエンジンの出力を上げる”のではなく、レムリアの太陽に菜月の生体エネルギーを注ぐことによって発生したエネルギーを利用するためだ。
 
 たしかにエンジンである以上、何らかのエネルギー源は必要だろうが、それはそもそも発想者であるレオン・ジョルダーナが想定できるものでなくてはならない。
 “謎の秘宝に秘められた制作者の夢”で動くエンジンなど、お呼びでない。
 それに、誰も乗っていないビークルからのエネルギー供給で6人が変身できたり、エネルギー源を載せていないビークルがゴードムの遺跡の島まで移動してこられたり、誰も乗ってない&操縦してないビークルが勝手にブンブン飛び回ってガジャドムを攻撃できたりするのもおかしい。
 第一、“プレシャスに込められた制作者の夢のエネルギー”などというものが、魔鳥やレオン・ジョルダーナの写本にあるとは思えない。
 制作者以外の者が複製したから「写本」なのだ。
 
 試しに、あくまで“本編中で語られたことは全て真実である”という立場に立ってプレシャスがエネルギー源であるという前提で考察してみよう。
 そうすると、“制作者に込められた夢のエネルギー”が無尽蔵なわけがないから、いずれ放出しきってしまうだろう。
 物理的な機能は勿論残るだろうが、エネルギー源としてはもう使えまい。
 つまり、プレシャスは、一種の電池として“夢のエネルギー”を放出する物体ということになる。
 つまり、エネルギーを放出しなくなったら取り替える必要があるというわけだ。
 最終回でボウケンジャー自身からエネルギーを得ていた際は、要するに『ゴーゴーファイブ』最終回のマックスビクトリーロボBバージョン同様、精神エネルギーで動くロボットだったわけだ。
 精神力を放出し続けない限り、出力は落ちる一方だ。
 そう考えていくと、プレシャスがエネルギー源ならば、ボウケンジャーのやっていることは単なる電池集めとなってしまい、これまた彼らの行動の無意味さを裏付けるものにしかならない。

 以上のような理由から推測するに、プレシャスがパラレルエンジンのエネルギー源であるという突然の設定変更は、最後の敵をガジャにしたためだろう。
 敵組織が複数登場する本作において、最終回の敵として、1話に登場(しかもボウケンジャーのミスによって出現)した敵であるガジャを選ぶというのは、妥当な選択と言える。
 そこで、ガジャ自身を最強最後の敵に仕立て上げつつ

というこれまで出てきた要素を絡めて作劇した結果が、あの最終回前後編だと思われる。
 前者は問題ないが、後者が問題だ。
 ガジャとの因縁であるゴードムの心臓・ゴードムの脳髄を絡めようにも、とっくの昔にボウケンジャーが確保してしまっている。
 となると、簡単なのはアイテム争奪戦という形式なのだが、問題は争奪する必然性の作出だ。
 ゴードム本体は、ノーマルのダイボウケンにすら敗れた弱っちい存在なので、今更復活させたとしても脅威にはなりえない。
 そこで考えられたのが、それらを取り込むことでガジャが最強の敵になるという展開だ。
 ゴードムエンジン、ゴードムの心臓、ゴードムの脳髄の3つが揃った時、ガジャが手に負えない最強の敵になるとすれば、第1段階(心臓)の争奪戦の敗北によるピンチと、第2段階(脳髄)の争奪戦の勝利による決着という形で展開できる。
 実際、本編では、ゴードムエンジンを内蔵したガジャがゴードムの心臓を取り込むことで強化され、一度はボウケンジャーを叩きのめした。
 そして、ちりぢりになったボウケンジャーは、再び集結してゴードムの脳髄を守り抜き、完全体になりきれなかったガジャを打ち倒した。
 狙ったとおりの流れになっている。
 ただ、ゴードムの心臓・脳髄とゴードムエンジンは、全く異なるテクノロジーによって生み出されたわけで、それらを単に吸収しただけで強くなるというのは理由付けが難しい。
 そこで、ゴードムエンジンのエネルギー源がプレシャスであるということにして、プレシャス争奪戦の様相を持たせたのだろう。
 素直にゴードムを再生してゴードムエンジンを搭載し、心臓と脳髄を内蔵させて完全体にするという方が無駄がないような気もするが、それだと等身大戦闘をこなせる最後の敵がいなくなるし、そもそもゴードムがそんなに強くなる気はしないからできなかったのだと思われる。
 そして、ゴードムエンジンを搭載したクエスターが既に滅んでいたことも、設定の変更を隠蔽するのに役立っていた。

 ついでに言うと、ラストで、集めたプレシャスのほとんどを失う形にしたのは、“新たなる冒険への旅立ち”のつもりだったのだろうが、明石の「また集めればいい」という明るい一言が逆にぶちこわしにしてしまった。
 失われたプレシャスのほとんどは、二度と手に入らない過去の遺物だ。
 それが失われたことを気にも止めず、別のものでいいから「また集めればいい」というのは、手に入れた1つ1つのプレシャスそのものには個別の価値を認めていないということにほかならない。
 ラストシーン間際で、ボウケンジャーがトレジャーハッピーでしかないことを自ら証言してしまったことは、なんとも情けない話だった。
 
 こうしてサージェスは、地球のプレシャス独占に飽きたらず、宇宙にまで進出してオーバーテクノロジーの独占を目指す。
 宇宙に行きたがったのは明石だろうと言いたい人もいると思うが、そのために使用しているのがサージェスの装備である以上、入手した宇宙プレシャスがサージェスのものになることは確定だ。
 結局、手っ取り早く冒険の種を求める明石は、宇宙へ行くための装備も予算もサージェスに任せ、あくまでもサージェスの庇護の下でしか冒険できないことをさらけ出してしまった。
 戻ってきたらボウケンジャーのリーダーの座を奪い返すというのも、既に帰ってきた後の生活費(或いは冒険の種)を確保しているということだ。
 やはり、有力なスポンサーの下でないと冒険者という商売は成立しないのか。
 悲しいが、ある意味リアルと言えるかもしれない。

 このように大きな問題を内包してはいるが、番組としては、一応、複数の組織との決着を段階的に付けていこうと努力している。
 クリスマス商戦は、最も戦闘能力の高いクエスターを中心にほかの3組織が利用される形で参加しており、敵味方共に総力戦の様相を呈している。
 そして、クエスターに比べると戦力的に数段落ちるダークシャドウ、ジャリュウ一族との戦いに関しては、ヤイバとブラック=真墨の一騎打ちの形にしたり、ブラックが戦闘に参加できない形にすることで、ボウケンジャー側の戦力をダウンさせ、相対的にパワーバランスを取っていることも見逃せない。
 最もしょぼいと思われるジャリュウ一族との最終決戦時には、ブラックがいないままだ。
 そして、明石も生死不明になり、ガジャ&デスペラートとの戦いに敗れた蒼太以下4人の前に真墨が駆け付け、更に明石がロボと共に現れて全員揃うという形で、ラストのうねりを作っている。
 また、敗北の中で、蒼太らそれぞれが自分なりの宝を再確認するというのも、明石が再三言っていた“誰にでも自分だけの宝がある”という言葉と、ボウケンジャーであることの意味のおさらいといったところだろう。
 だからこそ、自分なりの宝というものが希薄な(正に冒険そのものが宝である)明石についてだけその行程が省かれたのだろう。
 残念ながら、前述のとおり、キャラクターの掘り下げが不十分なまま最終回を迎えたため、その目論見は若干形骸化しているのだが。

 そろそろまとめに入ろう。

 この『ボウケンジャー』は、基本設定で致命的な問題点を内包してしまったとはいえ、シリーズ集大成としての側面と、新たな方向性の模索とを両立させようとした意欲作だ。
 デザインラインに過去の戦隊をちりばめ、リーダーとしてのレッドを復活させ、剣と銃になる共通武装を持たせた原点回帰を目指したメンバー構成。
 完全非生物のロボながら、商品展開を充実させるため両腕を換装するシステムを搭載。
 その一方で、戦いそのものを目的としない戦隊という新機軸を打ち出し、個々のエピソードを繋ぎ止めるための年間通してのテーマ:菜月の自分探しによる大河ドラマ的展開を目指している。
 残念ながら、スーパー戦隊という戦うチームの番組にとって、戦う理由を強く持たない本作の方向性は失敗だったと言わざるを得ない。
 だが、いい加減ネタも尽きかけている長期シリーズにあって、それでもまだ新しい方向性を模索する冒険心を見せたという点は評価するべきだろう。
 マンネリという困難を乗り越え進もうとした「冒険者」達の作った作品だった。

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