第104回 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツ「セーラームーン」

2013年8月12日 更新

 

 なんでも今年は、「美少女戦士セーラームーン」20周年だそうで。
 それは去年だったんじゃないか? とも思うんですが、97年まで続いた作品だし当面こじつけられそうですね。
 それはともかく、その20周年企画の一環として、S.H.フィギュアーツでセーラームーンが発売されました。
 セラムンの立体化は本放送当時からありましたが、出来はいずれもナニアレ状態で……真っ当なコンセプトで可動フィギュア化されたのは、今回が事実上初と言っても過言じゃないでしょう。
 というわけで、今回は90年代を代表するスーパーヒロイン・セーラームーンをレビューします。

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■ S.H.フィギュアーツ セーラームーン

 

 2013年8月10日発売。
 同時販売物は、「サイクロン号(仮面ライダー)」「リュウレンジャー(五星戦隊ダイレンジャー)」。
 2013年8月のラインナップは、以下の通り。

 全高は約14.2センチ(頭頂部まで。おダンゴ除く)。
 合計6種9個の手首付き。
 表情パーツ計6個付属※
 ムーンスティック(初期型)付属。
 ムーンスティック(銀水晶着装型)付属。
 ムーンティアラ(右手首と一体型)付属。
 ルナ付属。
 専用台座付属。
 価格は税込4,410円。

 

 セーラームーン。
 1992年3月7日から1997年2月8日まで、約5年間全5期200話にも渡って放映された、東映動画作品「美少女戦士セーラームーン」シリーズの主人公・月野うさぎが変身した姿。
 本商品は1作目時点での姿の立体化で、胸のリボンの中心にあるアクセサリーは最初期の変身アイテム「変身ブローチ」と同じ。
 麻布十番中学校2年生・月野うさぎは、成績最悪・ドジっ娘・遅刻常習犯という困った(しかしごく普通の)娘だったが、ある日出会った人語を操る謎の黒猫ルナからもらったブローチの力で、妖魔と闘うスーパーヒロイン・セーラームーンに変身する能力を得る。
 その正体は、かつて存在した月の王国シルバーミレニアムの王女・プリンセスセレニティ(の転生体)で、「幻の銀水晶」と呼ばれるアイテムの力を使いこなせる唯一の人物にして守護者でもあった。
 変身前と変身後のスタイルにあまり差がなく、基本的には直接戦闘(肉弾戦・射撃戦などの遠距離攻撃など)は殆ど行わず、時折威力に乏しい不意討ち的な攻撃を仕掛ける程度で、殆ど必殺技専門要員。
 基本的には、他の4人のセーラー戦士の撹乱や攻撃で弱まった敵に対し、浄化攻撃(トドメ)を刺す役割だが、単独の戦闘力が全くないわけではない。
 飛び蹴りや体当たり、頭部に着けた超音波増幅バレッタから発する超音波攻撃をはじめ、いくつかの戦闘技を持つが、代表的なものは全てトドメの必殺技になる。
 額部に装着したティアラを外し、円盤状に変型させて放つ「ムーンティアラ・アクション」が最初期の技で、その他ムーンスティックを用いた「ムーンヒーリング・エスカレーション」なども用いる。
 実際には、この他にも様々な決め技があるが、第一期の技はこれくらいである。
 その他、応用技として「ムーンティアラ・スターダスト」という妖魔の集団洗脳を解除する浄化技や、飛翔中にティアラの状態を元に戻し、打撃だけを与える奇襲技「ムーンティアラ・アクションちょっとだけよ」などもある。

 

 というわけで、今回はセーラームーンです。
 この20年間、様々な分野でパロのネタとして扱われるほど一般に浸透した、恐るべき人気を誇るスーパーヒロイン(しかし役立たず)。
 ふた昔も前のキャラなのに今更フィギュアーツにしても……という意見も見受けられましたが、最初に書いた通り、本放送当時からろくな玩具商品がなかった媒体でして、今回の商品化は、いわば当時からのファンの願いがようやく叶った形になるわけです。
 いやぁ、当時これだけ動かせる可動フィギュアがあったとしたら、えらい需要が生まれてたことでしょうね。

 

 フィギュアーツ・セーラームーンの情報は、2012年10月開催の「魂ネイション2012」が初出でしたが、当時は「何故今になってセラムン?!」といった疑問の声が多かった印象がありました。
 会場で公開された試作品は非常に出来が良く見え、それなりに評判となりましたが、この時点ではまだ商品化されるかどうか良く判らない状況だったこともあり、ファンも少し距離を置いて眺めている感じでした。
 その後、2013年4月下旬に正式な商品化が決定し、東京・秋葉原の駅前広場に巨大な看板が掲げられたり、フィギュアーツ単独商品としては初のTVCMまで放送されました。
 これらは、先にも記した「セーラームーン20周年」企画の一環だったようで、かなり本腰を入れている様子が窺えましたが、ご存知の通り、これまでバンダイが発売してきた女性型可動フィギュアはいずれも評価が低く、ごく一部の例外を除いて鬼門とされるカテゴリでもありました。
 そのため、(いつものように)商品化の際には劣化するだろうと、誰もが高をくくっていたような空気だったんですが――
 よもやまさか、本腰の入れようがここまで凄かったとは。
 良い意味で、予想外だったと言わざるを得ません。

 

 細かい部分は追って見て行きますが、まずは恒例の前後比較から。
 素立ちでも、あまりチープ感を感じさせません。
 四肢のバランスも良好で、脚が長すぎるということもなく、いい感じにまとまっています。
 おさげはクリアパーツで、末端に行くほど透明感が増すようになっています。

 

 頭部アップ。
 顔の出来は、おいおいどうしたんだよ一体?! と思わされるくらい完璧に、第1期セラムンの作風を表現しています。
 画像ではわかりづらいですが、前髪もクリアパーツになっています。
 ただ、それにより眉毛が透けて見えるといった効果は、残念ながらありません。

 

 斜めから。
 三日月型のイヤリングも丁寧に塗り分けられています。
 この角度だと、かなり元絵を忠実に再現していることがわかるかと思います。

 

 なんと、今回は表情パーツが全部で6つもあります。
 そのうち2点は、初回版限定ということですが。
 まずは、キリッとした真面目顔。

 

 怒り顔ないしは叫び顔。
 必殺技再現時に、重宝します。

 

 ムーンティアラなし顔。
 これは、ムーンティアラ・アクション専用パーツといったところでしょうか。

 

 ここからは、特典パーツ。
 まずは、ウィンク顔。

 

 特典2。
 まさかの泣き顔パーツ。
 しっかり涙の粒まで再現されています。
 無論……

 

 最初期の技・超音波攻撃再現にも活用できます。
 その他、ムーン恒例の敵前逃亡用とか。
 実に良い表情をセレクトしてくださった!

 

 表情パーツの付け替え及び、頭部の接続方法は完全にfigma式に。
 まぁ今更なことなんですけど、もうちょっとオリジナリティが欲しかったなと。
 かといって「フレッシュプリキュア!」みたいな超交換しづらい仕様は勘弁ですけど。

 

 表情パーツは、このように独立したトレイ状に並べられています。
 これなら、再販で表情パーツが2つ減っても対応可能ですね。
 ……出来れば初版だけじゃなくずっと6種類付けて欲しいところなんですが。

 

 特徴的なお下げは、基部から回転可能になっています。
 ただし、横方向のみで縦方向には可動させられません。
 湾曲しているので横回転のみでもかなり融通が利きますが、やはり縦の可動も欲しかったかなぁと。
 まぁ、贅沢な不満ですけどね。

 

 腕部の可動範囲について。
 セーラームーンは上腕ロールがなく、GEアリサのように腕の付け根で回転する構造です。
 また、ジャバラ状の肩アーマー全体が可動するため、意外に広い可動範囲を確保出来ています。
 肘も90度以上曲がり、表情付けに一役買ってます。

 

 肩のスイングですが、前方はここまで腕を寄せることが可能。
 「刑事さん、お願いします」のポーズもバッチリ決まります。

 

 後方スイング。
 ちょっと判りづらいかもしれませんが、肩ブロックが目測3ミリ程度後方にスライドしています。
 この機構のおかげで、胸を突き出すような動きも作れます。

 

 腰の回転も、当然可能。
 画像だとわかりづらいですが、スカート上部のふくらみの部分を境に、90度以上回ります。
 形状の都合で、さすがにこれ以上回転はしませんが、普通の人間が腰を捻るくらいは充分いけます。
 尚、回し過ぎると腰が外れますが、簡単に元に戻せます。

 

 手首の差し替え方式は、新しいものに変わりました。
 正確には、この一週間前に発売された「キュアピース」からの採用なんですが。
 これのおかげで、今まで以上に交換がやりやすくなりました。

 ――と素直に書ければよかったんですが、手首によっては抜け落ちやすかったり逆にはまりづらかったりと大変にムラがあり、まだちょっと改善の余地がありそうです。
 今回撮影に使用したものは、平手首が抜けやすく拳手首がはまりにくいという状況です。
 勿論個体差もあるでしょうけど。

 

 前方向の腰部可動ですが、実はあまり動きません。
 これは、腹部がVの字型にカットされてるからという事情もあります。

 

 こちらは背面に反った状態。
 股関節は一切動かさず、あくまで腰関節だけを動かした場合です。

 

 このように、腰可動はあまり得意じゃないので、股関節の広い可動範囲で補う感じになります。
 出来れば、引き出し式関節なども使って、もっとえび反れるようにして欲しかった気もします。

 

 続いて、脚部の関節構造についてです。
 当然、ミニスカートの中にも言及せざるを得ませんが、今回はエロスを求めるというよりも、可動範囲確保について語るのが中心になります。
 よって、以下は決してよこしまな気持ちで触れていくわけではありませんので、くれぐれもご理解よろしくお願いいたします。

 よし、カンペキな言い訳終了!

 

 というわけで、内部公開。
 股関節構造は、所謂昔のガンプラ方式みたいなもので、横軸が長めになっています。
 そのため、このように隙間がかなり開いているので、正直お色気的要素は皆無になってしまいました。

 

 お尻側。
 まぁ……仕方ないわな、と。
 こういった構造のため、脚を曲げすぎるとスカートの裾から尻付近の関節部が露出して、ちょっとみっともなくなってしまう弊害も生じます。
 ちなみに、お尻部分はスカートパーツとくっついている構造のため、一時期某所で話題になった「figmaの下半身と交換する改造」は、非常にやりづらくなっています。

 

 しかし、この見栄えの悪い股関節構造のおかげで、脚部の可動範囲はちょっとした脅威レベルに達しています。
 また、スカートも軟質樹脂製で、しかもfigmaのように前後分割されているため、前後左右の動きに干渉しません。

 

 加えて、股関節は仮面ライダーやスーパー戦隊系アーツでも多様されている引き出し式を採用。
 このため、なんと仮面ライダーギルスをも凌ぐかかと落とし姿勢が取れます。
 しかも、スカートの弾性で脚が押し戻されることもありません。
 この機構を女性型フィギュアに採用したのは驚きでしたが、さりげに斜め立ちなどにも役立つので、大変活用の幅が広いです。

 

 基本仕様は、以上になります。
 以降は、オプションやポージングについて。

 しかし、使い道に困っていたショッカー戦闘員、思ったより親和性がある気がする。

 

 本商品には、ムーンティアラ付きの右手首が付属します。
 正確には、ティアラが変化した状態ですけど。
 これに合わせて、表情パーツもティアラなしのものに交換します。

 

 (例のBGM)

 

 ピキーン!

 このポーズがきっちり決まるのは、嬉しいですね。
 自立が非常に困難ですけど。

 

 「ムーンティアラー……!!」

 

 「アクショーン!!」

 残念ながら、ティアラなし+口開け表情パーツはないので、これが精一杯。

 

 初代ムーンスティック。
 これを握るための手首が、右手だけ付属。

 

「ムーンヒーリングー、エスカレイショーン!!」

 

 上の無加工画像版。
 ムーンスティックを構えるポーズですが、上腕ロールがないせいで劇中と全く同じように右腕を上げることが出来ません。
 ただし、肩の後方スイングを利用することで、かろうじて曲げた肘を斜め前方に向ける形にすることは出来ます。
 ちょっと調整に手間取りますけど。

 

 後期ムーンスティックも付属。
 銀水晶が付いて、更にグリップ部の塗装が若干変わっています。

 

 ムーンスティック比較。
 大きさは、どちらも約2.7センチ程度。
 塗装はかなり細かく、大変良く出来ています。
 銀水晶のクリア部分が、なかなかいい味わい。

 

 パートナーの黒猫ルナも、当然付属します。
 大きさは、全長最大約4センチ、全高最大約4.5センチ(頭頂部までは約3センチ)。
 こちらも、妙に良く出来ています。

 

 後ろ?姿。

 

 首がボールジョイントになっているので、頭部の向きを変えられます。
 ちなみに、首のボールジョイントが何故か白いんですけど、恐らくこれは癒着防止のためあえて塗装してないんじゃないかと思います。

 

 シッポも付け根が可動。
 でも、何故かこっちはボールジョイント部まで塗装されています。
 そのため、軽い塗装皮膜の癒着が起きていて、動かす時には細心の注意が求められます。
 下手に動かそうとすると、ぶっ千切れてしまう危険も。

 

 今回は、専用台座も付属します。
 形状は、キュアピースに付属しているものと同型のハート型で、支柱は分離式。
 デフォルトでは、支柱はハートの尖った先端部分に近い穴に挿すようになってますが、それだと文字が隠れたり反転したりするので、横に移した方がいいかもしれません。

 

 台座にセーラームーンを飾った状態。
 初代OPの影絵風に。

 ちなみにこのセーラームーン、自立性はかなり悪いです。
 プリキュア勢みたいなトップヘビー系よりはましなんですけど、足首の自由度があまりないせいなのか、或いは関節強度的に踏ん張りが利かないのか、ちょっと脚を開くポーズを取らせるとすぐコケます。
 正直、そのためにたった一枚撮影するだけで十数分なんてこともザラでした。
 そういう見地からも、台座は非常に重宝するかと思います。

 

 せっかくだし、名乗りもやってみる。

 「ワープ郎ちゃんが、怒ってる!
  変換出来ないって、怒ってる!!」

 腕組みは、実際には出来ません。
 これはそれっぽく見せるために、かなり無理してます。

 

 「愛と正義の!」

 

「セーラー服、美少女戦士!」 

 三枚目の右手首の形が違いますが、人差し指をまっすぐかつ小指を直角に曲げた形なんてこの一瞬しかないから、入ってないのも仕方なしというものです。

 

 「セーラームーン!!」

 これも右手の形が違いますが、それは左手首と対になる手首パーツが入ってないからです。
 つうか、このポーズは第一段階の決めなんだから、これくらいは同梱しとけよと思います。
 せっかくここまでやったんだから、土壇場でケチるなと。

 

 「月に代わって――」

 

 「おっしおきよっ!」

 さすがに、これはバッチリ決まります。

 

 最後に、8月前半発売分のフィギュアーツ勢と共に。
 小さいんだか大きいんだか、判断が惑わされがちなキュアピースが素敵。
 (仮面ライダー旧1号は7月発売です)

 

 以上、セーラームーンでした。

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【買ってみて一言】

 もしかしたらですが、これまで出たフィギュアーツの中でも、五指に入るレベルの完成度かもしれません。
 とはいえ、さすがに全種類のフィギュアーツを弄ったわけではないため、あくまで「そう感じさせるほど凄い」という意味に留まりますが。
 少なくとも、女性型フィギュアーツとしては間違いなく現状最高峰の出来なのは、間違いありません。
 多少オーバーな表現に感じられるかもしれませんが、本商品は、これまでのフィギュアーツ(或いはバンダイ製品)の常識を覆しています。
 女性フィギュアに当たりなしとまで言われたバンダイが、今回はかなり気合を入れてくれたようで、全てにおいて高いグレードを誇っています。
 顔の出来、プロポーション、全体のバランス、加えて可動範囲など、殆ど文句のつけようがありません。
 同月に発売された「キュアピース」と比較しても、あまりのグレードの差に愕然とさせられます。
 筆者は、正直あまりセラムンが好きではない(むしろプリキュア推し)なんですが、それでもこう評価せざるを得ないほど、両者には圧倒的な差があります。
 もっと早く、これくらいのグレードで作ってくれよ! とか、 是非ともこれくらいの入魂度を今後のデフォルトにいて頂きたいと思うこともなきにしもですが。

 一部可動範囲に難があったり、手首がもう少しだけ多く欲しかったかなというポイントもあるんですが、それを踏まえても充分な充実度で、大変楽しく遊べます。
 とにかく、劇中ポージングの再現がバシバシ決まるだけでも、気持ち良いものがあります。
 セーラームーン好きな方は当然として、ちょっとだけ興味があるとか、美少女可動フィギュア全般が好きだという方には、かなりオススメ出来ます。
 ただ、顔が古めの絵柄の再現なんで、それが苦手だという方には、いささかきついものがあるかもわかりません……

 

 フィギュアーツシリーズは、この後、10月に「セーラーマーキュリー」、12月に「セーラーマーズ」発売が決定してまして、さらに「セーラージュピター」「セーラーヴィーナス」の原型も公開されています。
 個人的には「セーラーV」も欲しいところなんですが、是非とも外惑星戦士4人までは進めて欲しいところですね。

 その前に、「R版セーラームーン」とか「S版〜」「SS版〜」みたいなマイナーチェンジ版が連発しなきゃいいんですけど。

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