炎神合体 |
後藤夕貴 |
更新日:2009年1月10日
新年明けましておめでとうございます。
今年も気分屋な記聞ならびに「九拾八式工房」をよろしくお願いします。
2008年度スーパー戦隊シリーズ「炎神戦隊ゴーオンジャー」。
本作のメインロボット・エンジンオーの画像がネット上に広まり物議を醸したのも、もう一年以上前のことになります。
思えば、当時は「何この目玉ふざけてんの」とか「トーテムポールロボ」とか「今年のロボは終わったな」等と散々なことを言われており、筆者も“今年も出費の必要性はなさそうだな”と考えていたものです。
信号機と呼ばれるのもやむなしかと。
だけど、どこぞの幼児向け番組から抜け出してきたマスコットのようなギョロ目デザイン&動物デフォルメ意匠の混合メカはないでしょう!
しかも、その上に比較的まともな面持ちのロボ頭部ヘッドが乗っかっているんですから。
歴代戦隊を見続けてきた人達でも、エンジンオーの悪い意味でのインパクトを受けた人は多かったでしょう。
ここまで酷いデザインだと、歴代戦隊最悪デザインのレッテルは免れない。
「戦隊は動いてみないとわからない」というが、こればかりはどうしようもない。
この時ばかりは、筆者もこれらの意見に深く同意せざるをえませんでした。
――が。
2008年12月。
すみません、なんだかんだ言って買っちまいました! DXエンジンオーG12!!
まさかねー、アレがねー、ここまでバケるとはね〜。
それに、よもやロボット玩具史上初の快挙を成し遂げてしまうなんてね。
すみませんごめんなさい、僕が悪かったです。
ここまで来ると、あの独特なデザインも立派な個性です。
それどころか、もうあの目玉とかないと違和感バリバリになりました!
いつの間にか、頭カチカチになっていた事を思い知らされてしまいました。
というわけで、年末押し迫るクリスマス時期にようやくエンジンオーG12を揃えた筆者、あまりの(良い意味の)衝撃に触発され、勢いでコラムしたためてます。
今回は、この炎神合体について、思ったことを色々書いてみようかと。
いつもの玩具レビューとは違う切り口で行きたいと思いますので、よろしくお付き合い願います。
●知らない人のために・炎神合体とは
ここを読まれている人達にとって説明は不要な気もしますが、一応簡単な説明を。「炎神戦隊ゴーオンジャー」では、炎神と呼ばれる機械生命体が登場します。
劇中では、人間の住む現実世界は「ヒューマンワールド」という“11の次元のうちの一つ”で、炎神はそれとは別な次元世界「マシンワールド」からやって来ました。
同じくマシンワールドから逃亡してきた蛮機族ガイアークを追い、これを倒すことが目的なのですが、彼らはヒューマンワールドでは本来の姿を長時間維持できません。
マシンワールドに居た頃の全長20〜30メートルクラスの体躯を維持するにはエネルギーの消耗が激しすぎ、(一部の例外を除き)10分間程度しか活動できないのです。
そのため、彼らは自身の肉体と精神を分離させ、それぞれ「炎神キャスト」「炎神ソウル」として小型化させ、有事に備えます。
その間は当然無力なわけですが、炎神キャストと炎神ソウルはヒューマンワールドの住人の中から選んだ信頼できるパートナーに託します。
このパートナーが、ゴーオンジャーというわけです。
炎神は、炎神ソウルの状態でも会話出来ますが、ゴーオンジャー(&ゴーオンウイングス)の持つ変身アイテム「ゴーフォン」「シフトチェンジャー」「ウイングトリガー」内部に挿入されることで、デフォルメ化した立体映像を表示させつつパートナーや他の炎神とコミュニケーションが取れます。
また、ゴーオンゴールドに変身する須塔大翔が開発した「ゴローダーGT」に挿入されることで、等身大ロボットとして活動することも可能です。
更に、炎神ソウルが分離している状態であれば、炎神自身にダメージを与えることなく炎神キャスト(肉体)の改造・修理が可能で、これにより幾度もパワーアップしていきます。
ついでに言うと、キャストとソウルが入れ違っても活動は可能で、一度中身と見た目がまったく異なった状態で巨大化した炎神達がG6に合体するというエピソードがありました(見た目スピードル、中身バルカ等)。
戦闘の際は、パートナーの手により炎神キャストの中に炎神ソウルがセットされます。
すると、今まで手の平に乗る程度の大きさしかなかった炎神は突如巨大化し、本来のサイズに戻ります。
その後、パートナーを中に搭乗させ、心を一つにして戦うわけです。
巨大化した炎神は体当たりを敢行したり、ミサイルや弾丸を発射したりしてガイアークに挑みます。
「その弾やミサイルって、とどのつまり分泌物なのでは?!」などと間違っても考えてはいけません。
三体の炎神が特定の組み合わせで「炎神合体」することにより、エンジンオーなどのロボットになります。
合体後も、三体それぞれの意志は個別に存在し、某ロボットシリーズのような融合人格にはなりません。
炎神は劇中では12体登場し、3体ずつの組み合わせで合計4体のロボットになります。
そして、その先には更にロボット同士の合体パターンが存在します。
- 炎神スピードル+バスオン+ベアールV=エンジンオー
- 炎神バルカ+ガンパード+キャリゲーター=ガンバルオー
- 炎神トリプター+ジェットラス+ジャンボエール=セイクウオー
- 炎神キシャモス+ティライン+ケライン=キョウレツオー
- エンジンオー+ガンバルオー=エンジンオーG6
- エンジンオー+ガンバルオー+セイクウオー=エンジンオーG9
- エンジンオー+ガンバルオー+セイクウオー+キョウレツオー=エンジンオーG12
この他、エンジンオーにガンパード、バルカ、トリプター、ジェットラスが合体するバリエーションもあり。
このように、炎神は過去の戦隊メカではありえなかった特長的な性質を持っています。
●炎神合体の「快挙」
先の通り、ゴーオンジャーは戦隊シリーズのみならず、特撮・アニメ含めたすべてのロボット玩具製品でこれまでなかった、「12体合体」を成し遂げました。こう書くと、15体合体という記録を保持し続けている「機甲艦隊ダイラガーXV」が比較対照に挙げられがちですが、「商品合計数」「合体編成内容」を含めて見た場合、G12はこれを凌駕しています。
確かに合体数だけではダイラガーに劣りはするものの、
- セット販売されている商品を複数必要とする編成
- 総合計価格
- サイズ・重量
- すべての単体メカが電飾ギミック対応
特に、最後の電飾ギミック付きというのが大きいです。
残念ながら、12体中4体は別売りのなりきり玩具(ハイウェイバスター、マンタンガン、カンカンバー)を買わないと炎神ソウルが手に入らないため、電飾ギミックを活かしていると厳密には言い切れませんが、一応カウントしても良いでしょう。
ちなみに、2002年度作品「忍風戦隊ハリケンジャー」に登場した「リボルバー天雷旋風神(天雷旋風神+リボルバーマンモス)」が、総合体積・合体数・総合価格面で上回っているため、G12がシリーズ中最大・最多数合体というわけではありません。※
※最終形態への合体にはカラクリボールのほぼすべてが必要になるため、商品数と価格面でどうしても上回る。
また、武器系カラクリボール抜きでも定価約35,000円前後となる。
高さこそG12にやや劣るものの、全長はG12を僅かだが上回っている(筆者未確認だが重量もこちらの方が重いらしい…)。
しかし、電飾ギミックはリボルバーマンモスにしかなく、また手前の天雷旋風神が実質的な最終合体とみなされるケースも多い(カラクリボール合体はアルティマレインボー使用時専用のフォーメーションと解釈されがち?)。
●どんどん巨大化する玩具と、高まる期待
G12は、今まで多くのファンが望んでいた「出てきたメカを全部合体させちゃえばいいのに」という願望を、直球ストレートで果たしたものです。2006年度作品「轟轟戦隊ボウケンジャー」では、1台目から10台目までのメカが最終的にすべて合体し、アルティメットダイボウケンになるという(当時としては)快挙を成しましたが、11台目以降は別ロボットの編成になってしまい、11体以上の合体は果たされませんでした(ミニコーナーで一発ネタ的な12体合体はありましたが)。
ボウケンジャーは、番組開始直後辺りに「今年は(実質24周年記念だったガオレンジャーが24体のパワーアニマルと換装バリエーションを出したように)30体メカが出る」「しかも全部合体するらしい」という、どこから湧いたんだと云いたくなる噂が流布されていましたが、アルティメットダイボウケンが出た時点で、ある程度玩具に詳しい人間は「安全基準的な意味でも、これ以上の合体は厳しいだろう」と見切りをつけていました。
その後に出たサイレンビルダーやダイボイジャーも、それなりに人気は高かったのですが、この頃「全合体」を期待していた人達の間には、どこか寂しい空気が漂っていた気がします。
▲ アルティメットダイボウケン(轟轟戦隊ボウケンジャー。画像はブラックバージョン)
G12は、まるでその時の無念を払拭するかの如く、全合体を果たしました。
この意味は、とても大きいでしょう。
しかも、ただ一気に合体するのではなく、最初に6体、次に9体と合体バリエーションを増やし、「このままいくと、もしや…」という期待感を煽ったのも効果的でした。
しかも、G9の時点で未使用だったエンジンオーのジョイントの一部が、リデコ品である「DX炎神大将軍」の新規パーツ接続用に使用されていたことも手伝って、これ以上の合体はないだろうという予想が述べられていた点も見逃せません。
今考えると、これは実に見事なカモフラージュだったと思います。
一度全合体の希望を打ち砕かれた後に「実は可能だった」と判明したわけですから、相当大きなサプライズ感を味わった人も居たのではないでしょうか。
DX炎神合体エンジンオー自体が、過去の戦隊ロボよりも若干大きめなため(実際はパーツ各部が大振りなためそういった印象を受けやすい)、ガンバルオーとの合体を果たした時点で、所謂スーパー合体としては充分なボリュームを誇っていました。
その上で、更にセイクウオーを編成する三体が合体して、G9誕生です。
この時点で、既に充分過ぎるほどデカすぎたのです。
縦・横・高さのいずれも、歴代の中でも稀有な巨大さ……恐らく、この時点で満腹感を味わった人も多かったでしょう。
しかし、ここにキョウレツオーという、よりによってゴーオン全ロボ中最大ボリュームを誇る最終ロボが登場し、あまつさえこれまで合体に加わるというのですから、もはやそれは脅威を通り越し“信じ難い事態”の域です。
そのせいか、キョウレツオー登場の報が流れた当時、G12登場を予想した人は多かったものの、どこかに「いや、でもまさか……いくらなんでも」という雰囲気が漂っていたのを記憶しています。
中には「トゥエルブ」などという、子供に発音しにくい単語をロボの名前に用いる筈がない、といった意見も見られましたが、恐らくこういうのも、「否定はするけど…でも…」といった期待感がどこかに潜んでいたのかもしれませんね。
ですから、本当に12体合体が果たされると判明した時のファンの驚きと歓喜ぶりは、凄まじいものがありました。
筆者も、正直ホントかよと疑ったほどです。
先の炎神大将軍の件と合わせ、いわば二重のサプライズとなったわけです。
この当時のネット上での盛り上がりぶりは、玩具方面的にも特撮話題的にも凄いものがありました。
まあ結局は「全部合体かよ! マジか?!」といった声の繰り返しがほとんどでしたが。
それでも、ロボットの合体という1シチュエーションだけで、あれだけ盛り上がれたのは素晴らしいことだったと筆者は考えています。
ただ、残念ながら実際に発表されたG12のデザイン……というか、DX玩具の合体形態は、お世辞にも格好良いとは言えず…
ぶっちゃけてしまえば、ものすごおぉぉく、かっこ悪かったわけです。
しかも、商品カタログ用のものと思われるイラストでは比較的整って見えていた分、ギャップの凄まじさは相当なレベルでした。
もっとも、G9の時点で既にデザインラインの破綻が見えていたわけですから、そこに大きなパーツを追加すれば、そりゃ破綻は激化します。
そしてここから、G12のデザインを容認出来た人達とそうでない人達の議論が激しく繰り返されることになっていくのですが……
●炎神ソウルが与えた影響
デザイン云々を語る前に、DXエンジンオー発売前頃から物議をかもしていた「炎神ソウルシステム」について語ってみたいと思います。▲ 炎神ソウル
炎神ソウル及び別種ソウルパーツ(変身用のチェンジソウル等)の玩具は、長さ約5.7センチ、横幅約4.4センチ、奥行約1.5センチで縦に引き延ばした八角形をしており、基本的には一商品に一つ付属します(DXカンカンバーのみ二個。同梱されていない商品もあり)。
内部にボタン電池と基盤を内蔵し、(エンブレムを正位置で見た場合の)底面部に、3つのボタンを配しています。
ボタンは、中央のものが突出しており、右と左が底面と面イチになっています。
中央ボタンは「炎神ソウル、セット!」時の起動音を鳴らすため、他の二つは他の玩具に収納した際に音声を鳴らすためのものです。
左右のボタンは、それぞれ押し方によって複数種類の音声や効果音を鳴らす事が出来、劇中のシチュエーションをかなり忠実に再現しています。
これが、炎神一体につき最低一つ存在し、互換性を持つ食玩やガシャポン等を含めると、一つで複数のソウルを持つ炎神もあります。
▲ ロボ玩具購入のみで揃う炎神ソウル
さてこの炎神ソウル、劇中でも上手く用いられていたこともあり、単なる音声ギミックの集約装置としてではなく、「炎神に魂を注ぎ込む重要アイテム(というか魂そのもの)」として充分に認知されました。
また、炎神ソウルを取り外すとメカ(炎神)が縮小するという設定のおかげで、「大型基地または格納庫の描写のオミット」「メカを戦闘シーン以外出せないデメリットの回避」「メカ描写を巡る合成・演出の簡略化」「主人公達のフットワークの軽さの表現」など、数多くの利点を生み出す事にも成功しました。
恐らくですが、炎神が常に巨大で、普段はどこか基地のようなものに格納されているという設定にされていたら、ゴーオンメンバーとの交流は描きにくくなったでしょうし、またギンジロー号のような移動基地的な物も登場させづらくなり、ゴーオンジャー特有のフリーダムな活動イメージは作れなかったことでしょう(この辺はアバレンジャーの爆竜の描写を見れば明白です)。
また大型基地がある場合、その存在を巡って色々な付加設定も出さざるをえなくなるでしょうから、下手をしたらゴーオンジャーの基本設定すら変質させかねません。
まあ巨大メカ→基地に収納、というパターンから外れた戦隊も過去多くあったし、大型収納基地がありながらその存在をあまり感じさせなかったシリーズもありましたから、必ずしも上記のようになるとは思えませんが、少なくとも現在のスタイル通りにはし辛かったのではないでしょうか。
こうして考えると、「炎神戦隊ゴーオンジャー」という番組は、近年稀に見る“玩具素材を劇中で上手く活用している作品”と云えるでしょう。
ところが、炎神ソウルは確かに販促効果高揚の要になれはしたものの、玩具的に大成功だったのかというと、異論を唱える人も少なくありません。
実は、筆者もその一人です。
先ほど炎神ソウル実物のサイズを示しましたが、炎神の玩具はすべてこれが中に収納されます。
ということは、パーツ強度や安全性確保のため、本体はどうしてもソウルより二周り以上も肥大化してしまいます。
また、内部収納などが行えない構造上、特異な変形も行えなくなってしまいます。
言い換えれば、縦長八角形の電池ボックスを収納する「箱」になってしまうのです。
▲ 炎神ソウルセット!
これのせいで、ロボットはすべてデザインや合体ギミックに大きな制約を受けるハメになり、ロボット合体に多少なりとも複雑な変形行程を求めるタイプのファンの反感を買いました。
その上、各部位が「ブロックをただ寄せ集めて接続しただけ」の合体にしか見えず、しかもプロポーションを整えるための変形もほとんどないため、合体数が増加するほど人型からかけ離れるという欠点も露見していきました。
特に、G9・G12に見られる「肩に乗っているトリプター&ジェットラス」「足にくっついているバルカ&ガンパード」は、ただそこにあるだけで外観上は何の役にも立っていない事も手伝い、かなりの批判を浴びました。
過去、電飾ギミックを内蔵した戦隊シリーズの合体ロボは、どれか一つのメカがシステムを搭載していれば、後の物も連動するというタイプがほとんどでした。
パトストライカーに振動探知・電飾ギミックを集中させ、胸部・脚部の発光や各部合体接続&歩行音を再現した「DXデカレンジャーロボ(同・スーパーデカレンジャーロボ)」、歩行・自動変形・武器回転ギミックをマジライオンに集中させた「DXマジレジェンド」、ギア駆動システムを中核のゴーゴーキャリアーに集中させ、拳の回転と胸の大車輪の回転を再現した「DXダイボイジャー」等がその代表例でしょう。
ところが炎神合体は、すべてのメカに電飾があります(加えられます)。
実は玩具マニアの中には「電飾など不要」と考える人もかなり多かったりします。
電飾があると、電池や基盤を収納する関係上どうしてもボディが大型・肥大化してしまい、全体のバランスに影響を与えてしまうからです。
また、単純に「玩具に光らせる(鳴らせる)必要性を感じない」という考えを持つ人もいます。
更にコアなマニアになると、長期保存を前提とした場合、電池劣化による腐食や汚染、本体やパッケージの破損が発生しうるため、本気で邪魔だと考えるケースがあります。
その他、マニアじゃない人の中でも、生活環境の都合で「音を鳴らすと周囲に迷惑がかかる」と敬遠しがちになるタイプが存在します(疑問をお持ちの方は、炎神ソウルを綺麗に重ねて、総ての底面部を一度に床やテーブルに押し付けてスイッチを入れてみましょう)。
こういう人達にとっては、電飾なんぞ廃して単純に変形合体を楽しませて欲しいという欲求が前面に出がちです。
特に、前年度の「獣拳戦隊ゲキレンジャー」の各ロボがすべて電動ギミックを搭載していた(そのため可動やプロポーション、ギミックに大きな悪影響を与えた)事もあり、益々食傷気味になった人もいたことでしょう。
そういう見地に立ってみると、確かに炎神ソウルシステムはやっかいでしょうし、またそれにより「単なる寄せ集め合体に甘んじた」ことは許し難いのでしょう。
事実、筆者も秋頃まではこの考えに全面同意でした。
●だが、しかし……
G12は、確かにロボットとしてのデザインは大きく破綻しており、決してバランスが整った格好良さを誇っているわけではありません。どちらかと言えば、ブサイク系に分類されるでしょう。
普通、作品に登場するロボは初期企画段階でパワーアップ後の最終デザインまで確定しているのですが(ライブマンのスーパーライブロボは例外。こちらは後付デザインによる)、G12はとてもそうには見えない強烈な寄せ集め感があります。
ファンの一部には、G12のプロポーションが素晴らしいと言う人がいますが、これは「あれだけの数を合体させた割には」と付く場合と「本当に心の底からそう感じる(心酔している?)」場合とがあり、一概にまとめられないようです。
中には、劇中での活躍ぶりも含めてデザインを評価する人、逆にデザインを区別して考える人もいますから、ここで「G12のデザインはダメダメなのか否か」を結論付ける事は難しいでしょう。
ちなみに筆者は、これ以前に人型から大きくかけ離れたスーパー合体「DXマックスビクトリーロボ(救急戦隊ゴーゴーV)」を容認出来た下地があるためか、“非人間型の移動要塞的存在”と解釈する事で納得出来るようになりました。
▲ マックスビクトリーロボ(救急戦隊ゴーゴーファイブ)
どちらにしろ、良い悪い関係なく、それだけ多くの人の話題に上っているという時点で、充分凄い影響力があったんだなと、筆者は感じています。
ただ、ネット上を見ていると、たまに「最初はどうかと思ったんだけど、実物を見て(または手にとって)考えが変わった」といった旨の意見も確実に存在していましたし、これは決して無視出来ない点だと思われます。
では、最初はG12のデザインに拒絶反応を示していた人達は、何故途中から掌を返したのでしょう?
ここからは、筆者の個人的な体験となりますが。
筆者は、今年度はミニプラ程度で留め、DX版のロボは一切買わない予定でした。
ミニプラ版は、DXで可能な合体シチュを総て再現できる上に、DXでは絶対にありえないほどの関節可動、ポージング幅を持っており、また彩色すれば更にグレードを高める事も可能という、とても食玩とは思えない完成度を誇る商品でした。
これだけで充分過ぎるほどの満足感があり、“膝が曲がり足を大きく開いても倒れない”G12を完成させてしまった時点で、筆者のゴーオン関連玩具への関心は一旦完結をみました。
みせたつもりでした。
時は11月末。
ある用事で、某所ビックカメラのおもちゃ売り場に立ち寄った際、初めてDX版のG12サンプルを間近で見ることが出来ました。
――その瞬間、やっと理解しました。
デザインがどうとか、ギミックがどうとか。
そんなものは、もはや関係ない。
12体合体して、これほどまでに巨大な「塔」が完成する。
その迫力だけで、充分すぎるほどの説得力と魅力があるじゃないかと。
なるほど、これは確かに「実物を目の当たりにしない限り絶対に理解できない感覚」です。
筆者はこの時、ようやく肯定派と否定派の意見が食い違う最大の理由に気づけました。
そして、肯定派の人が具体的な良さを述べることなくG12を擁護する原因も判りました。
――つか、こんなん上手く説明しろって方が無茶です!
ミニプラを弄り慣れていたせいでしょうか、それのサイズが感覚的に染み付いていたせいで、全高約50センチ、総重量約3.2キロに達する暴力的なスケールは、筆者にとってあまりにも衝撃的でした。
この瞬間、エンジンオー関連に抱いていたマイナスイメージは、全部吹っ飛んでしまいました。
ええもう、玩具見てこれほどまでの衝撃を受けたのは、下手したら初めてだったかもしれません。
おもちゃ売り場の展示物見て無条件に欲しくなるなんて、何年ぶりに体感する感覚なのでしょう。
否、むしろ最初は購入意欲マイナスだったわけですから、そんな生易しいものではないのかも。
そしてその翌週から、早速DX玩具の価格や在庫状況を調査しまくる筆者がおりました……
結局のところ、G12はこの巨大さ、合体規模の大きさという「迫力」を押しつける、直球ストレートな魅力を内包しているのでしょう。
他にも様々な意見があるとは思いますが、少なくとも筆者はそう理解しています。
あっさりとDX版購入に傾いた筆者が一番最初に購入したのは、セイクウオーを編成する3体(トリプター、ジェットラス、ジャンボエール)でしたが、合体時の予想外の大きさに驚きました。
ダイボウケンや、それをコアとするバリエーションは複雑なギミックを持っていたにも関わらず比較的小型だった事もあって、ゴーオン関連ロボのボリューム感はかなり新鮮でした。
なんというか、メガレンジャー以前のロボ玩具に再び触れたような感覚を覚えます。
また、既にミニプラでG12を揃えていたこともあり、「これだけの大きさを誇るセイクウオーが、G12形態の際には(正面からは)ほとんど目立たなくなる」という現実がとても受け容れ難かったものです。
セイクウオーだけで高さ最大約30センチ、最大幅約41センチ、最大奥行約24センチ(これはかなり曖昧な実測)もあるんですから、この感想はきっと筆者だけのものではないと思いたいです。 これほどのサイズのロボ(パーツ)が目立たなくなってしまうほど、G12完成型は巨大……それがどれくらいとんでもないことか。
あまりに受け容れがたいことなので、実際は目立たなくなるなんてことはなく、単に見る角度によってそう感じる事もあるという意味だと、この時は(かなり無理矢理に)解釈することにしました。
ええまあ、現実逃避だったんでしょうね、きっと。
同日、少し遅れてキョウレツオーが届きました。
今度は、キシャモスのイヤンなくらいのぶっとさと、33センチにも及ぶ長さに圧倒されます。 33センチって、成人男性が思い切り手を開いた時の、親指から小指までの長さ×約1.5倍ですよ!
合体させたら、高さ約29.5センチ、最大幅約17.5センチ、奥行が約25センチという、これまたとんでもないサイズになってしまいました。 奥行は数値的だけ見た場合はセイクウオーと大差ないですが、あちらは後方に伸びたウイングで稼いでいるだけですから、こちらの方がインパクトは遙かにキョウレツです。 これだけでっかいのが、G12の脚の一部と腕にしかならないという現実も、かなり認知し難いものがあります。
先に完成したセイクウオーと並べた時点で、なんだかとんでもないものに手を出してしまったんじゃないかという気がして来ます。
しかし、既にエンジンオーもガンバルオーも注文済み、後は届くのを待つばかり。
いやが上にも現実を直視せねばなりません。
下駄にしかならないんだよなあ、と。
下駄ですら、これだけの大きさがあるのかと。
一通りの炎神が揃ったので、まず最初はG6に合体させてみることにしました。
腕とつま先を縮めたエンジンオーを二分割したキャリゲーターに載せ、肩穴にガンパードとバルカを差し込み、キャリゲーターに付属するG6マスクを顔に被せるという、シンプルな合体。 この時点で、他の戦隊ロボのスーパー合体くらいのサイズがあるのが怖いです。
それどころか、前方に出っ張った形状のキャリゲーターのおかげで奥行が長くなる上、左右の腕はそれぞれ単品販売されるほどボリュームがあるバルカとガンパードがぶら下がってる訳ですから、ヘタしたらスーパー合体の中でもこれに劣るサイズのものがいくつかあるかもしれません(実測した訳ではないのであくまで印象論ですが…)。
続けて、G9にしてみました。
G6に巨大な翼(ジャンボエール)と踵(ジャンボエールのジェットエンジン部)が付属し、トリプターとジェットラスが両肩に乗ります。 ネット上ではこの「肩に乗るだけ合体」に対して批判的な意見も多かったですが、既に認知した上で触れるとこれはこれでよい感じのボリューム増加要素です。
というか、むしろこれによりG6時の足首周辺にややボリューム負けしていた印象が薄まりました。
マスクと胸周りがエンジンオー及びG6とは違うものに替わるというのも、さりげに芸コマです。
G6時のマスクの行き場(ジャンボエールの尻辺りに接続)にやっつけ感が拭えませんが、踵周辺の事情から元の位置に戻せなくなってしまっているため、これはやむをえないでしょう。
G9完成は、個人的にはあまり大きな衝撃がありませんでした。
これは恐らく、既にG12の存在を知った上で触れたからだと思います。
また、縦の大きさがG6時からそれほど大きく変化していなかった点も大きいでしょう。
筆者は諸事情あり、ゴーオンジャー本編視聴はガンバルオー登場直前からG9登場後まで大きな穴を空けており、後から追っかけたのですが、もしリアルタイム視聴が叶っていてG9登場前後の情報を巡る各所の話題に参加していたら、また違った印象を抱いたかもしれません。
とは云うものの、「G6の背中にでっかいウイングを背負わせた」スタイルはやはり凄みを覚えます。
また、この時点ではまだウイング(ジャンボエール)が自己主張を果たしている点が、先述の件も絡んで異様な存在感を実感させます。
そして、いよいよG12…
11月末に見てショックを受けたあの巨大な「物体」が、自室に現れようとしている……
こう考えると、なんだかよくわからない不思議な高揚感に捉われます。
でも、なぜか一気に組み上げようという気が起こらず、無意味に後伸ばしにしたがる自分の感性に疑問を呈しながら、先にゴローダーGTを開封してみました。 ゴローダーGTは、ミニプラ版(正確な商品名称は「ゴーオンジャーファイナルウェポン」)が12月21日に発売されていましたが、筆者は29日まで入手出来ませんでした。
ですから、このDX版が初めて触れるゴローダーだったのです。 手に余るほどの大きさを誇るホイールモード、思ったより分厚い手応え、重量感、良い意味で大振りな四肢、そして変形過程の都合で予想外に大きい関節可動幅。
脚を前方向に出せない難点はありましたが、それでも充分過ぎる満足感があります。
遡ること約13年前、自動変形という言葉に惑わされ、某力戦隊のDXタックル某イで味わわされたスカスカ感も手伝い、あの時の無念が払拭されるような気もしました。
残念ながら、本編への露出が思ったより少なくそのせいか人気もイマイチらしいゴローダーは、ゴーオン関連アイテムの中では珍しい「ロボットなのに叩き売りされた商品」となってしまいましたが、出来自体は充分過ぎるほどのクオリティです。 傾斜台を背に配置するという小技も利いて、余剰パーツが出ないのも嬉しい配慮です。
また、全体のボリュームが大きいのでG9他との対比もばっちりという所が実に良いものです。
唯一、同梱されている「トーコンソウル」のサウンドがどれも似たり寄ったりなのが惜しいですが、これは贅沢な悩みかもしれません。
個人的には、他炎神にソウルを挿入して遊ぶより、こちらにスロットインさせた方が楽しいような気がしました。
さて、そろそろ現実と向かい合わねばなりません。
わざわざG9を一旦分解して、各炎神形態まで戻してから、あらためてG12を組み立てて行くことにします。
システムと組み立て行程は全部頭の中に入っているのですが、あえて説明書を開いて参照しながら合体させていきます。
なぜか、自分で自分にもったいぶらせるという意味不明なことをしているわけです。
まず、キャリゲーターを解体して、同じくバラバラ解体したキシャモスのパーツを合体します。
そこにガンパードとバルカを合体させ、踵にジャンボエールのエンジン部を合体。
サイド部分にキョウレツオーの腰部分とベアールVのシャーシ(Vシールド)を接続。
これで、G12の足首が完成です。
この時点で、なんとも表現し難い謎の笑みが口元に浮かびます。
だって、この時点で充分ロボット一体分以上のボリュームがあるんですもの!
サイズ的には問題ないとわかってはいるものの、この調子だと完成したG12はテーブルに乗り切らないんじゃないか、なんて不安が湧いてきます。
次にエンジンオーを組み立て、肩と手をG9合体待機状態にしてから「G12の足首」の上に乗っけます。
この段階で、ようやくG12完成時の身長がだいたい把握出来るようになります。
――何、この超トーテムポール?
1号ロボが台座に乗っているだけで、まだまだ先がある状態だというのに、もう充分お腹一杯な大きさになっちゃってます。
『確か、グレートイカロス組み立てた時ですら、こんなインパクト感じなかったよな…』と、昔を思い返しながら作業を進めます。
エンジンオーの両脚側面にキョウレツオーの腕を着け、スピードルの顔にトリプターの後部パーツを被せ、トリプターとジェットラスを肩に乗せ……G12用マスクを取り外してエンジンオーの顔に接続。
ティライン、ケラインを合体させて両腕を作ったら、前面部完成。
なんとなく「ハハ、ハハ…」と乾いた笑いが湧いてきますが、まだ終わりではありません。
続けて、G6マスクを接続したジャンボエールを背面部に合体、セイクウオーの頭部にキシャモス先頭部を乗っけて、牙を前方向に倒します。
G12、ついに完成――
アハ、アハ……アハハハハハハハ♪
ア〜ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!
立った! 建った! 塔が建ったー!!(声:杉山佳寿子)
「こんなんありかよ!!」
これが、完成時に思わず漏れた一言でした。
勿論、口元は笑った形のまま凍りついてます。
G6の時点で、充分大きかった。
G9の段階で、やりすぎだと思った。
ならば、このG12はどう表現すればいいのでしょう?
なんか、訳のわからない感想が脳内を駆け巡ります。
おもちゃ売り場で見ただけでは判らなかった奥行の凄さ、重量感が伝わり、これはもう笑うしかありません。
先にも述べましたが、デザインとか、ギミックとか、合体方法とか、目がいっぱいとか、ここまで来るとそんなものはもうどーでも良くなります。
ただとにかく、暴力的なまでにデカいシロモノが今眼前にそびえ「建って」いる。
それだけで、もう総てが満たされてしまう思いでした。
思い返せば、ここしばらくはギミックやプロポーション重視なハイエイジトイを弄り続けていたため、知らぬうちに筆者の価値基準はそちら寄りに矯正? されていたのかもしれません。
でもよく考えたら、このような「無闇にデカい」こと“だけ”がセールスポイントになる玩具もあっていい筈だし、立派なアピールポイントになりえると理解出来ます。
というか、手法がどうであれ購入者が「すげぇ!」と感じた時点で、それは立派な“玩具的完成度”なんだなと、改めて思い知らされました。
筆者も随分長いところ玩具コレクターをやっていましたが、いつのまにか初心を忘れていたようです。
G12は、筆者に「玩具の“細かい事にはこだわるな的な”魅力(もある)」という事を再度教えてくれた、大変嬉しいアイテムになりました。
●それだけで終わらないG12
炎神戦隊ゴーオンジャーは、劇場版オリジナル炎神ロボとして「炎神大将軍」が登場しています。当然ながら、エンジンオーの持つギミックは(ゴーオンソード付属の有無を除き)すべて残されているため、これを中心とした合体も可能になります。
本編未登場ですが、炎神大将軍G6やG9、G12などの合体バリエーションも作れるわけです。 残念ながら、これを含めた全15体合体は不可能ですが、これによりちょっとした中核換装合体が楽しめるのも、注目すべき点でしょう。
なんとなく、ジュウレンジャーの大獣神&剛竜神、ダイレンジャーの大連王&牙大王、ガオレンジャーのガオキング&ガオマッスル他のパターンを彷彿とさせる気がしますが、こういったプレイバリューの幅がさりげなく設けられているのもファンとしては嬉しい限りです。
ガンバルオーとキョウレツオーを構成する各炎神には黒いパーツ部分が多いためか、炎神大将軍と合体させると妙な統一感が生まれるのも面白い特徴です。 残念ながら、トリプターの後部パーツを烈鷹に被せると炎神大将軍の鍬形(ツノ)が嘴部分に接続し辛くなってしまうため、部分的に不安定な箇所が発生してしまいますが(トリプターパーツを若干浮かせれば一応安定は可能)、どうせユーザーオリジナル合体なのですから、頭部を炎神大将軍にしたままG9やG12にしても良いでしょう。
鍬形が大きいこともあり、どちらの形態でも頭部が他パーツにボリューム負けしないのも強みです。 この場合、キシャモスの牙が若干正位置より浮いてしまいますが、気にしてはいけません。
黒と金の配色が中央部に集中することで、まったく別なロボっぽくなってしまいます。
G9やG12だけでなく、G6にしても良いでしょうし、腕換装合体を行うのも赴き深いものです。
●炎神合体再考
この辺で、一度頭を冷まして炎神合体をもう一度見つめ直してみましょう。炎神合体シリーズは、ここまでしつこく記して来た通り、12体合体or4体のロボが合体といったわかりやすくかつストレートなシステムを導入した点が、最大の売りだと言い切れるでしょう。
勿論それ以外にも旨味はあるわけですが、この「誰もが考えはするものの今まで実現されなかった」事が叶うというのは、それだけで充分過ぎるほどのセールスポイントです。
恐らく今後のスーパー戦隊シリーズでも、複数ロボ合体が行われる度に炎神合体が比較対照にされるのではないでしょうか。
これは、換装合体が出る度に比較としてガオレンジャーの百獣合体が挙げられていたような意味です。
実際にはどうなるかわかりませんが、今の時点ではそう予想されるほど、G12の全合体のインパクトは強烈だったのです。
ただ、炎神合体システムが完璧なものだったかというと、決してそうは言えない気がします。
筆者もかつてそうだったから良く判りますが、やはりゴテゴテと全部のパーツをくっつけただけの合体に何の魅力も感じないという人は多いようです。
G12を指して「これだけの合体でよく余剰を出さなかったものだ」という意見が見られますが、よくよく見ればVシールドやキョウレツオーの腰部などは事実上の余剰パーツであり、とりあえず脇にくっつけてみたという域を超えていません。
元々、新しい炎神を次々に乗っけたりぶら下げたりするような合体のエンジンオーですから、この程度の数の余剰パーツなら適当な所にくっつけておく事くらい余裕だったのでしょう。
特にVシールドは、G9の時点で既に行き場に困っている様子でしたし。
仮にですが、もしこれらのパーツが適当な接続としてではなく、身体の一部を構成するパーツとしてしっかり組み込まれていたとしたら、評価はより向上していたのではないでしょうか。
もっとも別な見方をすれば、あれだけの合体規模にも関わらず余剰っぽいのがたった2パーツに留まっている、という解釈も可能です。
そう考えると、これはこれでやっぱり大したものなんだなと唸らされます。
大きな合体ロボ商品というと、91年度作品「元気爆発ガンバルガー」の玩具・DXグレートガンバルガー(旧TOMY製)が思い起こされますが、あちらは三体合体で構成されるロボ「ガンバルガー」と単体変形ロボ「リボルガー」「ゲキリュウガー」が合体して更なる巨大ロボになるというシステムでした。
その大きさ・価格・ボリューム感は当時はおろか現在に於いても尚語り草になるほどですが、同時にとんでもない数の余剰パーツが発生する事でも知られています。
その中には、ガンバルガーの胸や盾、ゲキリュウガーの頭(ロボ・アニマル形態の両方)や首・尾が丸ごと含まれていたり、リボルガーの足首や背面部がそっくりそのまま残されていたりして、いくら合体後のスタイルを整えるためとはいえ削ぎ落とし過ぎだろうという感が拭えませんでした。
一応、この余剰パーツ群を寄せ集めることでオリジナルのライフル型武器にする事が可能でしたが、説明書に記述のない所謂「俺合体」の域を出ないもので、オフィシャルとは云い難いものでした。
17年も前の作品(商品)な上、メーカーも異なるためこれとG12を単純比較することは難しいですが、ここまで行かなくても、G12はより多くの余剰が出ていても(本当は)おかしくなかったのかもしれませんね。
次に、G12への合体が念頭に置かれているせいか、すべての合体がコアロボ・エンジンオー主体で設計されており、他ロボ同士のコラボレーションが腕換装のみに留まってしまっているというのも、難点として指摘されたことがありました。
あれだけ豊富なロボがいるにも関わらず、合体以外は腕換装のみというのも、確かに寂しい話です。
正確にはエンジンオー+バルカorガンパードは換装ではなく純粋な合体なのですが、位置付けとしては腕換装に近いものと見て良いでしょう。
エンジンオー+ガンバルオーだけでなく、ガンバルオー+セイクウオーとかセイクウオー+キョウレツオー、またはガンバルオー+キョウレツオーなんてアナザーG6的バリエーションがあったらもっと楽しかったかもしれません。
まあ、それを叶えるためには設計を根本的に見直す必要性が生じる気もしますが……
どちらにしろ、「すべてがエンジンオーを中心とした合体」の範疇を逸脱していないのは、マイナスポイントとまでは云えなくても惜しい点でしょう。
玩具としては、エンジンオー+セイクウオーという俺合体が可能ですが、さすがに足元のバランスがおぼつかず決して良いスタイルには見えないのが残念です。
でも、たとえ本編には出なくてもそういった玩具オリジナル合体的テイストが残されていても良いように思えてなりません。
まあ、そんなゆとりがなかった事も理解は出来るのですが。
こういった別フォーメーションは、今後のシリーズの課題となっていくと嬉しいですね。
それからこれは些細な点なのかもしれませんが、一応書いておきましょう。
G9からキョウレツオーパーツを付け足してG12を作る場合、キャリゲーターから分離させたボディの置き場に難儀するというのも、やや困り者です。
あれだけ大きくて重い物を一時的に避けておくにしては、安定感に乏しすぎる気がします。
手近に座布団や布団があれば横倒しにしておくことも出来ますが、これも状況次第では部分的な圧壊を引き起こしそうで怖い気がします。
なにせ総重量3.2キロという、ただでさえ子供には扱い難いレベルの玩具です。
倒壊時の事故をある程度想定しておいても決して過剰対策にはならないでしょう。
分離状態のメカにまで安定性を求めるのは普通はどうかと思われますが(個人的にも違和感はあります)、G12はとにかく滅茶苦茶重いですからね。
大人でも、片手で持ち上げるのに相当気を遣うレベルなんですから。
たとえ長時間の保持は難しくても、何かしらの対策があれば、ありがたかった気がします。
……まあ、この大きさだからこそ初めて見えてくる、他商品には見られない難点なのでしょう。
●炎神ソウル商法は正解だったのか?
G12を総て揃える為には、定価計算で合計36,225円もの出費が必要となりますが、実はこれだけでは不充分と云えます。炎神シリーズだけ集めたのでは、バスオン・ベアールV・ティライン・ケラインの炎神ソウルが手に入らないため、これらが付属する「マンタンガン」「ハイウェイバスター」「カンカンバー」の3商品を追加購入しなければならず、これを含めると更に13,440円がプラスされ総額は49,665円にまで跳ね上がります。
ロボットを全部揃えたいと思う人は、ここに更に炎神大将軍とゴローダーの価格がプラスされますから、本当に大変です(追加金額合計は13,230円です…最終総額は各自で計算してください)。
炎神ソウルは各炎神の要的アイテムのため、これが欠けているとなんとなく充実感に乏しくなって仕舞いがちです。
一応、食玩やガシャポンで廉価版が入手出来るとはいえ、これらもあっという間に品薄になってしまいました。
戦隊シリーズの玩具は、なりきり系とロボット・メカ系とに大きく二分され、それぞれにファンがいますが、両方とも全部欲しいと考える人は(合計金額の都合もあり)そんなに多くはない、と考えられがちでした。
勿論実際のところはよくわからないですが、確かにコレクターにも、本来のユーザーである子供にも、どちらか一方という人が多かったような印象は確かにあります。
ところがゴーオンジャーでは、炎神ソウルを集めるためには、必然的に両方のジャンルを買わなければならなくなります。
結果的にこの売り方は大成功だったようで、クリスマス商戦期以降からゴーオン関連玩具はなりきり・ロボ問わずほとんどが品切れ状態となりました。
一部の商品は残りがちだったとはいえ、メインクラスの品物のほとんどが全国規模で、しかも放映期間中に売り切れるというのは本当に凄いことです。
そういう意味では、炎神ソウル商法? は本当に上手く行ったのでしょう。
ただ一部では、最終販売アイテムだったカンカンバーの極端な品不足を嘆く声や、単体推定価格1,000円未満と思われる炎神ソウルを入手するために数千円もの追加出費を強いる売り方に不満を抱く声も目立ったようです。
前者は、年末の爆発的な売れ行きを見込めなかったバンダイ側の読み違いとも考えられ、一種の事故として納得も出来るでしょうが、後者はどうでしょう?
どうも筆者が見た限りでは、(コレクターの懐事情は別として)あまり好評に受け容れられたわけではなかったようです。
筆者の知人の勤める玩具店では、ガオレンジャーのパワーアニマルの時と同様かそれ以上のクレームが、お客さんより寄せられたそうです。
ガオレンジャーの時は、例えばガオマッスルが欲しい場合は「DXガオキング」+「PAシリーズ・ガオゴリラ」+「同・ガオベアー&ガオポーラー」を総て買わなければならなかったり(後にDXガオマッスルセットが発売されましたが)、また「DXガオライオン」を購入した場合、これを組み込む唯一の合体形態ガオケンタウロスを再現するために「PAシリーズ・ガオファルコン(またはDXガオイカロス)」+「同・ガオエレファント」+「DXガオキング」を追加購入する必要がありました。
その上、このパターンで購入すると合体に使用されない余剰PAがいくつか発生するという難点があり、何より精霊王(ガオレンジャーのロボ総称)の構成パターンと必要商品の組み合わせを正確に把握することが求められました。
一説によると、PAパターンの合体システムがこれ以降(腕換装を除き)なくなったのは、この時のクレームが原因だと云われています。
今回のゴーオンジャーでも、これと似たような問題点が見受けられたそうで、特に「何をいくつ買えばどのロボが完成するのか」「なぜロボット玩具に必要な炎神ソウルが全部入っていないのか」というクレームが多かったそうです。
前者は、ガンバルオーとセイクウオーだけセット売りがなかった事による単純な困惑と考えられますが、後者は非コレクター視点で見れば当然の疑問でしょう。
「バンダイめ、そういう売り方で来たか(ニヤリ)」と出来る人でなければ、たかが小さなパーツに過ぎない炎神ソウルのためだけに追加で数千円もの出費を強いられるというのは、ほとんど詐欺としか思えません。
炎神ソウルも含めてG12が欲しいと思う子供は、具体的な商品事情など考慮せずに「サンタさんにお願い」するでしょうから、頼まれた側としてはたまったものではありません。
先の知人も、システムと商品の説明をした後で散々詐欺呼ばわりされて困惑したとか。
結果、怒り狂うお客さんをなだめるため、やむなく「マッハで発進!! エンジンオーG12セット※」を薦めざるをえなくなり、その人は大変な罪の意識に苛まれたそうです。
まあこれは所詮一店舗内で起きた極端な一例だと思いたいですが、大なり小なりこういった反応をするお客さんが他にも居たとのことなので、無視し難いものを感じさせられます。
※ネット上では「G12スターター」「コレジャナイG12」などと称された商品で、非合体タイプのG12に金色のスピードルを含む計5体の炎神ミニカーが付属する廉価版セット。
実際のギミックは、脚部分からミニカーを走らせる程度しかなく、DX版とは似ても似つかずプロポーションも全くの別物になっている上、炎神ソウルも付属しない。
DX版G12のセット売りが存在しない事もあり、「エンジンオーG12という商品を探している」親御さんの手に取られやすい、一種トラップ的な位置付けにある。
マニアの間では、これをプレゼントされた子供達が十数年後にどんな恨み言を述べるかという話題がよく述べられている。
ちなみに、こんな商品でも年明けには店頭からほとんど姿を消してしまった。
2009年度作品「侍戦隊シンケンジャー」では、炎神ソウルに次ぐ秘伝ディスクというアイテムが登場しますが、こちらが玩具商品的・番組的にどのような活かされ方をするかは大きな注目点です。
電池内蔵・複数の音声ギミックを搭載した炎神ソウルに続くものが、なぜか非電源式の単なる歯車部品になってしまったというのも興味深いものがあります。
単なるコストダウンを計った結果なのか、それとも炎神ソウルシステムに見られた(ここで挙げられたor挙げられていない)問題点の改善に努めた結果なのか、或いは単に新たな試みの結果なのか……じっくり見定めてみたいものです。
以下は筆者の個人的な考えですが、炎神ソウル同梱商品と炎神合体シリーズは、購入者に選択の余地がある玩具群だったのではないかと思っています。
炎神ソウルがなくても構わない(合体遊びさえ出来ればいい)と考える人はロボだけ買えばいいし、なりきり系をメインに考える人はそれだけ買っていればプレイバリューに支障は来しません。
ただ、よりプレイバリューの幅を持たせたいと考えた時に、他商品の必要性が生まれてくるだけの話です。
割り切るか割り切れるかは、その人次第といったところなのでしょう。
もし、ロボ系もなりきり系もすべて買わせようという意図があったとしたら、炎神ソウルの配分はもっと徹底的にバラけていたでしょう。
炎神ソウルが付属しない「ジャンクションライフルセット」にバルカかガンパードの炎神ソウルを同梱し、ガンバルオーをセット売りさせる事も可能だったでしょうし。
同じように、ロケットブースターにトリプターかジェットラスの炎神ソウルを付属させ、セイクウオーをセット売り…というパターンも使えたかも。
この例だとロボ1セットにつき炎神ソウル2個と中途半端になってしまいますが、散らせようと思えばいくらでも可能でしょう。
これまでは、一つの商品に複数の電飾ギミックパーツが同梱されるケースはほとんどなかったため、ロケットブースター&ソウルは難しいかもしれませんが、カンカンバーでダブル炎神ソウル同梱をやった以上、不可能ではなかったと見られてもおかしくはないでしょう(実際の事情はわかりませんけど)。
こうして見てみると、一見あこぎな「なんでも全部買わせよう」商法に思える炎神ソウルの売り方も、そんなに酷いものではない気がしてならないのです。
炎神ソウルは、本編に登場しないオリジナルの限定版が多く存在しますが、こういうのは炎神ソウルを全部(または出来るだけ多く)集めたいとする人向けのものと考えるのが自然でしょう。
このような見地から、筆者は「炎神ソウルは必ずしも全炎神分集める必要はない」と割り切っています。
ええまあ、そう言いつつも、炎神ソウルタブレットでティライン・ケライン分を補完したりしてるんですけどね。
製作スタッフのインタビューによると、スーパー戦隊シリーズは隔年でスーパー合体システムを用いているとのことで、この例にならうと次の注目合体は2010年度作品かそれ以降になってしまいそうです。
しかし、G12が好意的に受け容れられたこともあり、またシンケンジャーに登場するメカ「折神」が、サポートメカ同士でロボとは別な合体を行うシステムが判明していますから、このパターンが破られる可能性もゼロではない気がしてきます。
ただ、「全合体」「12体以上の合体」が叶うかどうかは、今のところは微妙と云わざるをえません。
賛否両論あるとはいえ、G12の規格がある意味で頂点を極めてしまった感が強いため、これを超える規模のものがそう簡単に出てくるとは、普通なら考え難いでしょう。
…が、同時に、スーパー戦隊は「まさか」が起こりやすいシリーズでもあります。
フラッシュマン時の「まさか」だった複数ロボ登場はその後定着化し、ライブマン時の「まさか」だったスーパー合体も定番化、カクレンジャーのロボット大増殖も意外なほどあっさりと後に引き継がれ、ボウケンジャーでは複数ロボ登場に加え10体合体をも果たしました。
そして、それは翌々年にはあっさりと超えられたのです。
ですから、今年ここまでやったんだからもう当分ありえないだろう、という油断は出来ないでしょうね。
この辺は、素直にサプライズを待ちたい心境です。
果たして、G12はどこまで「スーパー戦隊シリーズ最大の合体(&ギミック)規模」を維持できるのか、また「ロボット玩具史上初」をいつまで保てるのか……
これを、今後じっくり見定めていきたいものですね。
勿論、私達ファンとしては、この記録が出来るだけ速やかに破られて欲しいなと願うわけですが。