完成品フィギュアの最近 |
後藤夕貴 |
更新日:2008年1月1日
2007年に入ってからもその勢いは止まらず、毎月いくつもの新作が発売され、数ヶ月後に発売の新商品情報が公開され続けて来ました。
そして、2006年初頭から目立つようになってきた「脱衣ギミック“キャストオフ”」搭載の商品も注目を浴び、今ではある意味定番化しつつあるとも言えます。
ですが、最近になってこの業界をあらためて見てみると。
以前とは、結構事情が変わってきているように感じます。
というわけで、今回は一年ぶりに「完成品フィギュアの近況」について触れてみたいと思います。
●入手難易度:
2004年に発売された「マックスファクトリー DOA霞C1Ver」から、商品の瞬殺が目立つようになりました。これは、商品の前評判が高すぎたり、或いは後から特筆すべき注目ポイント(そのほとんどが脱衣)が発覚した際に発生しやすいもので、ネット通販店舗が秒単〜数分単位で予約満了になってしまうという凄い現象でした。
ここでも、瞬殺対象となった商品をいくつかレビューしてきましたが、これは現在でもたまに発生する事があるようです。
ただ、最近はさすがにその頻度も低下しました。
これは決して、話題になるフィギュアがなくなったという意味ではありません。
ちゃんと話題にはなるのですが、以前のようなピラニア現象(笑)が起こりにくくなったという意味です。
現在は、どんな話題作でも比較的長期(※以前に比べれば、という意)の予約期間が確保されるようになり、事前注文はかなり容易になりました。
購入者は充分な考慮期間を得られるようになり、以前のような「勢いで買って後悔」という事にはなりにくくなったとも言えます。
ええ、もちろん、この辺はあくまで個人単位の事情ですから例外はあるでしょうが。
いわば、ようやく正常に購入スタイルが構築されたというべきなんでしょうけど、こうなるまでに約2年半もかかったのかと思うと、色々と複雑な気分になってしまいます。
筆者が見た限り、2007年12月初頭現在、過激予約合戦に発展したのは「マックスファクトリー・長門有希(涼宮ハルヒの憂鬱)」と「同・西村キヌコレクション 不知火舞(KOFシリーズ)」が最後です。 前者は2007年6月27日、後者は同年8月11日発売で、いずれも予約開始は同年3月頃から。
長門有希は、既に発売されているハルヒシリーズの出来の良さが保証されていた事に加え、人気の要ともいえるキャラである点、不知火舞は2006年のワンフェスで公開された(この時点ではまだメーカー物ではない)ガレージキットが目を見張る完成度の高さで評価されていた点が注目度を高めており、それぞれに待ち焦がれたファンが存在したという背景がありました(不知火舞については筆者もその一人です)。
しかも両者の予約開始時期が近かった事もあり、予約合戦は相当な過熱レベルに達しました。
とはいえ、マックスファクトリーは過去何度も人気商品を再販した経緯があるメーカーなので、いずれは余裕で手に入るようになるだろうと読んでいた人達も多く、実際この2商品はすぐに増産告知が出されました。
つまり、予約合戦こそ一時的に過熱はしたものの、そこから先が伸びなかったわけです。
以前のように、入手出来なかった人が虎視眈々と中古流通を監視したり、在庫が残っている店舗情報を摸索したり、再販希望を吠えるように唱えたりはしなかったわけです。
また、一部では予約合戦後にキャンセルをしたり考えたりする人も結構出て来たらしく、良くも悪くも冷静に…言い換えれば「すぐに冷めた」ようです。
それ以降、細かな争奪戦は勃発していたようですが、その「戦」に参加しなかった者の耳にも届くほど白熱した事態は、どうも発生していないように感じます。
では、「難民(欲しい商品を手に入れられなくて嘆いている人)」はもういなくなったのかというと、そうでもない所がミソです。
瞬殺現象がなくなり、考慮期間が得られるようになったため、今度は「熟考しすぎて購入タイミングを逃す」という失態が起こりやすくなってしまいました。
人気のある商品は、やはり店頭から早々と姿を消していくのです。
発売日にリアル店舗で商品が全然見当たらないというのは、現在も尚頻繁に発生しています。
値引きが渋いところで残り続ける事は多々あるようですが、やはり、実物を見てから購入を判断するというのはいまだ難しい様子です。
かと思うと、ネット上で話題になっていた物がごく普通に売られていたり、また短期間で叩き売り状態にされてしまったりするケースも良く見られるようになりました。
少なくとも、一年半前ではあまり考えられなかった状況ですね。
で、「限定版」と銘打った商品。
これはまた、かなり微妙な状況になってきました。
当然、完成度と人気の高いものはそれなりに需要があり情報戦も飛び交うのですが、そうでない物は数の大小に関わらず見向きもされない感じです。
これについては、たまにとんでもない例が出てくる事があるので、別項にてあらためて触れましょう。
●完成度:
完成品フィギュアは、この数年で著しく精密度を高めてきました。となると、必然的にユーザーの求めるグレードも年々高まり、今では「無理にガレキを買わなくてもいいや」と考える元フィギュアモデラーさんも多いようです。
それでは、ユーザーの嗜好とメーカーの供給レベルが理想的な並走状態にあるのかというと、どうもそうではないようです。
むしろ、以前よりも辛い状況になってきたように感じられます。
ユーザーサイドから見てみると、近年ネット上では求めるグレードの高まりが極端になり、「これのどこに問題があるんだ?」というほどの美麗造形にも、多数のネガティブ意見が寄せられたりするようになりました。
しかも、その内容は単なる粘着や無意味なイチャモンとは云い切れない感じもしたり、かと思うと「重箱の隅突き」レベルとしか思えないものまで色々。
多分に「個人的嗜好の押し付け」ともとれる意見が多いとも感じられますが、中には否定的な意見を読んで初めて気付くバランスの悪さや造形の粗もあったりするので、一概にバカにはできません。
特に、最初に目にする事になるWEB上や雑誌のサンプル商品写真などはそれなりに良く見えるような加工を施されているわけで、パッと見の印象は実物より相当向上されています。
にも関わらず、きちんと問題箇所を指摘する人がいて、そこから購入意欲を減退させてしまう人も出る。
なんとも複雑なものですが、今はそんな「単にワガママと切り捨てられない」意見や見解も散見されるようになった気がするのです。
で、メーカーサイド…というかメーカー擁護寄りの視点に立って見てみると、実は結構「ユーザーの反応を取り入れて試作原型を改善する」商品が目立つようになりました。
正しくは、そういう動きがユーザーからも見て取れるようになったと言うべきでしょうか。
これは一見当然のように思えますが、ちょっと前では考えられないものでした。
試作原型写真と実際の商品の比較画像が、WEB上の(悪い意味での)話題になっていた時期もあるくらいで、改善どころか「改悪」に等しい変更が生産開始の土壇場で行われるなんてケースも多々ありました。
こちらのレビューで扱った商品としては、ユージンSRDX「水銀燈」がこの例に該当します(リンク先の「前髪改修」の辺りをお読みください)。
それから考えると、これはなかなか素晴らしい事なんじゃないかな、とも思えたりします。
特に、「原型破壊」とまで罵られたメーカー「やまと」は、今年度からフィギュアに対するスタンスを変えたのか、以前からは考えられないくらい製品グレードが高まっています。
「やまと クリエイターズラボ 山下しゅんや のんのん」等は、コスチュームの一部に手が加えられてはいるもののかなりの高評価で、「目の塗装がもう少しなんとかなれば」という以外、目立ったアンチ意見はほぼありませんでした。
正確には、造形的には確かに改良されているのですが、全体を見ると人によっては納得いかない微妙な差異が感じられたり、或いは余計な部分に手を加えすぎ、全体のバランスを崩してしまったりするという事です。
例えば、元々頭と胴体のバランスが悪いモデルなのに、なぜか手足のディテールだけが改良されて後は放置とか。
これらはすごく細かい例なので、どれがどうと参考例を挙げづらいのですが、とにかくそういう事もあるようです。
ちなみに、以前某ブランドから発表されたとあるフィギュアは、頭部のバランスがかなり狂って見え(ものすごくデッサンの狂った絵のようにみえる)相当な顰蹙を買っていましたが、いつのまにか発売中止になってしまったという事がありました。
彩色済みサンプル?まで発表されていた筈なのに中止というのは、相当なものだと思うのですが、時にはそういう事も起こるようです。
さて、完成度の話になると触れなければならないのが、「透け塗装」です。
これはどういうものかというと、白い水着のような所謂透ける素材の服を身にまとった状態を再現したフィギュアの事で、一時期はやたらとそういう売り文句を見かけた気がします。
ところが、この透け状態再現というのは実際にはフェイクであるわけで、それっぽく見せているだけに過ぎません。
本当に透けた状態を再現するためには「メガハウス イズルハ-黄金の歌姫Ver-」のように、透明素材でキャストオフもできるような構造にしないと厳しい筈です。
ですから、こういった透け塗装バージョンは、ほとんどが「通常版のリペ」だったりします。
水着や衣服そのものが、立体物として身体と一体化している構造なのに、微妙な塗装だけで透けている風に見せるわけですから、当然「透け具合」に対する解釈は幅広くなりますし、個体差の開きも大きくなります。
結論から言うと、透けVerで高評価を得られたものは、これまでほとんどありませんでした。
透けている部分と透けていない部分の差が極端すぎたり(布の厚みからして違うようにしか見えなかったり)、どう見ても透けているようには見えなかったり、あげくには異常に不自然すぎたり。
実は、ノーマル版はごく普通に流通したのに、限定の透けVerだけ予約殺到・瞬殺状態になった商品もいくつかあったのですが、実販売後の評価はいずれも酷いもの。
良くて「話題に出なくなる」程度のものばかりです。
また透け塗装にしても、「肌色成型色の上から極薄で生地色を吹きかける」という真っ当な処置を取るものから、「肌色成型色の上に一旦生地色をペンキ塗りし、その上から更に肌色をうす塗りして透けを再現」という、なんかちょっと間違っているものまであります。
このパターンで最悪の評価を受けてしまったのが、A-label「斬魔大聖デモンベイン アル&ライカ水着版透けver.」という商品です。
こちらは300体限定商品なのですが、発売の一月以上前から「通常版の水着の上から“透けた胸”のペイントをしているだけ」だと看破されてしまいました。
ぶっちゃけると、ライカの乳首部分だけが白い水着の上に書き足されているのです。
この商品は、一番最初に通常版サンプルが発表された時点で水着が透けていて、そのスジが好きな人達の注目を集めましたが、実販売されたものはまったく透けていないという仕様変更が成されていました。
そのせいか、はたまたフィギュア2体セットのため定価が高すぎたためか、或いは貧乳と巨乳キャラを合わせたことでそれぞれのフェチの方の反感を買ったのか(笑)、本商品の人気は瞬時に下落し、あっという間に叩き売り対象品に成り下がってしまいました。
そして、その後あらためて透けVerが発表されたわけですが、どうもこれは通常版の在庫を改修しただけ……にも見えてしまうお粗末な処置しか施されていません。
これでは、最初期にサンプルを見て購入を決意し、一度騙されて涙を呑んだ人の神経を逆撫でするだけでしょう。
これを書いている現在はまだ発売されていないのですが、どのような顛末になるものか注目したいところです。
え、筆者はどうなのかって?
透けは全面スルーですねー、それならキャストオフの方がまだマシと確信を持ってますから。
●価格上昇:
最近ファンの間で囁かれているのが、「完成品フィギュアの定価が全体的に高まっている」という点です。これが、結構シビアな状況を作っています。
以前は4000円台で買えたものが5000円台以上になるとか、1/6以上の大型のものは一万円前後に達するようになったとか、そういう話は本当によく耳にするのですが、それでも出来が良い物なら売れるわけで、今の時点ではまだそれほど深刻ではない気がします。
ところが、中には「明らかに価格に見合わない出来の高額商品」がよく見られるようになり、結果的に叩き売り対象品が増加するという傾向も生まれています。
以前は、生産数が多すぎて需要と供給のバランスが狂う事で叩き売りが発生していましたが、今はそこに加えて「本当の意味での処分品」に堕してしまうケースも目立つわけです。
しかも、これは結構大型の商品に多く見られるパターンのようにも感じます。
価格が高すぎても、生産数が絞られていれば理屈の上では叩き売りにされたりはしないのですが、ある程度以上生産しない訳にはいかない完成品フィギュアは、どうしても一定数以上市場に出ます。
その結果、メーカーにとって残酷な事態が発生してしまうと……
2006年頃は、多少売りに乏しい商品でもキャラの選択やポージング・構図、キャストオフなどで売り込む事ができるようになりましたが、今はそれだけでは巧くいかないため、どうしても「どこかに大きなマイナス点を持つ商品」の評価は下がりやすくなります。
大きい商品はそれだけ粗も目立ちやすくなるから、小さいものより辛い評価を受ける事もあるのかもしれません。
勿論、小さめの商品でも多々発生している現象ですから、一概に理由は特定できませんが。
こうして見ると、メーカー側としては「ユーザーに考慮の隙を与えずに商品を買わせる」という状況はそれなりに旨味が強かったんだなと考えさせられます。
いえ、もちろん実態はわからないですから、あくまで個人的な想像に過ぎませんが。
中には、実際の完成度の高さに関係なく、WEB上でごく限られた難点を指摘されただけで全体評価が低迷し、結果的に叩き売り対象にされてしまった商品なんてのもあります。
代表例がこれでしょうか。
顎周りに若干気になる難があるとはいえ、それ以外はすごくしっかりした出来なんだけどなあ…ああもったいないもったいない。
価格が5桁に達するPVC完成品がちらちら見られるようになった点も、特筆すべきでしょうか。
コールドキャスト完成品なら別におかしくない価格帯ですが、それまで数千円単位が常識だったPVC製品で万単位というのは、やっぱり脅威です。
その分、商品にも相応のボリュームがあるのですが…。
大型サイズのガレージキットのPVC完成品フィギュア化を行っているダイキ工業の製品には、特によく見られるパターンです。
1/4のこより(戦国キャノン)は、元々はコブラ会がイベント限定ガレージキットとして販売していたものでしたが、即完売してしまったほどの人気でした。
このサイズでキャストオフやパーツ差し替えによる若干のポーズ変更が出来るという事でも話題になりましたが、とにかくその巨大さが一番の注目点でした。
価格も15,750円(税込)と凄まじいもので、製品化を喜んだ人も一瞬硬直してしまったようです。
最終的な評価は結構割れたようですが、是非はともあれ、現在はこのような商品も出るようになったという点は触れておくべきでしょう。
●キャストオフは果たして必要なのか:
「キャストオフ」でも少し触れましたが、脱衣ギミックは確かに一時期大きな注目を集めましたが、それが現在も尚続いているのかと言われると、疑問を唱えざるをえません。勿論、需要が完全に途絶えたというわけではないのですが、2007年後半辺りからは、ファンの間では「なんだまたキャストオフかよ?」みたいな空気が漂っており、必ずしも売りの決め手となる要素ではなくなってしまった感が拭えません。
例えば、先に挙げた瞬殺対象商品「長門有希」も「不知火舞」も、キャストオフギミックはありませんでした。
また、瞬殺騒動にはならなかったものの、かなりの前人気を誇り発売後も高い需要を示した「アルター・エスカレイヤー(超昂天使エスカレイヤー)」や「同・メイドセイバー(Fate/hollow ataraxia)」等は、スカート着脱ギミックすらない状態の上、特に露出過多というわけではない普通の物でした。
レビューはこちらから
で、キャストオフ製品では意外な変化が見られました。
もちろん悪い意味で。
メガハウスが続けている「クイーンズブレイド」シリーズのフィギュアは、基本的にすべてキャストオフが可能という事でいまだ新作が注目を集めていますが、第三弾として発売された「武者巫女トモエ」と「近衛隊長エリナ」は、発売直後に突然人気が下落し、品物もダダ余りになってしまいました。
また、トモエに至っては身体に衣服パーツの色が移ってしまうという致命的な難点を抱えており、これが評価低迷の決定打になった感が強いです。
これは塗装皮膜の癒着ではなく、衣服パーツの成型色そのものが色移りしてしまうというどうしようもない問題で、癒着防止のビニールですら防げないという困ったものでした。
一応ガンプラマーカーの消しペンで消す事ができるのですが、大弱りさせられた人も多かったと思います。
明らかにキャストオフが裏目に出てしまった好例ですね。
特に、トモエはQBシリーズでも人気が高く、製品化を願うファンが多かった事もあり、この問題点は各方面でかなり大きく取り上げられました。
また、この商品は「厚着キャラをキャストオフさせると異常に身体が細くなる」という、避け様のない問題点を更に引き立てた事も見逃せません。
肉感的で、どちらかというとがっしりした太めの体格のキャラが、ひょろひょろの体型(それなのに不自然に巨乳)になってしまうとなると、そりゃ考えてしまいますよね…。
また、シークレット的にキャストオフギミックを仕込む事があるマックスファクトリーも、「朝比奈みくる(涼宮ハルヒの憂鬱)」にこれを導入しましたが、まったく話題にならず埋没してしまいました(一応それなりに需要はありましたが…他キャラ人気に遠く及ばず)。
せいぜい、限定版はパンツの塗装がちょっと違うという程度の話しか出ず…なんか哀れ? です。
他にも、「別になくてもいいのに」的なキャストオフが組み込まれた製品が多々ありましたが、それが強烈なアピールに繋がった例は近年ほとんどなかったように感じます。 ただ、唯一かつ強烈な例外が「イズルハ-黄金の歌姫Ver-」でしょう。
詳しくはリンク先のページを見ていただきたいのですが、これはキャストオフ後のボディを頭部以外すべて一体成形で構成した事、更にその造形美が突出している事で話題と人気を集めました。
誌上限定販売品だったため、告知から配送までタイムラグがあり、その間話題が途切れたり評価が二転三転する事はありましたが、手に入れた人達の評価は概ね良好だったようです。
これのキャストオフは、他製品に比べてあまり特殊性はないのですが、とにかく出来の良さをアピールし切った良商品だったと言い切って良いでしょう。
要するに、キャストオフの有無はもう関係なく、出来の良さが一番に求められるようになりつつあるという事なのでしょうか。
ただ、大きなブームの後にユーザー側が完成度向上の徹底要求を行った結果、そのジャンルが廃れてしまったという例が過去いくつか見られたので、個人的には、なんとなくきな臭い雰囲気を感じていたりもします。
そう、振り返れば、ギャルガシャブームもVS4以降そんな経過を辿りましたね…はてさて。
●まとめ・完成品フィギュアの今後?:
ここまで記してきた内容を思い切り要約すると、「安定期に入ったが、同時に奇妙な問題も散見し始めた」といったところでしょうか。ある時期、どこぞの場で「完成品フィギュアのバブルは弾けた」という意見を見た記憶がありますが、筆者もこれに同意します。
ただ、それがそのまま低迷に繋がるのかどうかはわかりません。
無論、筆者自身がこの趣味に食傷気味(以前に比べれば、と付きますが)になり始めたため同感できたのかもしれませんが、ポイントを見て行くと確かに、そう取られても仕方ないかなという条件が含まれている気がします。
今尚月数万円もフィギュアに費やしている人達はいますし、コンスタントに商品が売れている現状もありますから、一概に「もう終わり」とか「末期だ」などとは言えません。
確実なのは、以前のような過熱ぶりは発生しにくくなるだろうという事です。
一時的に湧く事はあっても、所謂「祭」状態が連発するようなケースは、まずありえないのではないでしょうか。
これからは、気に入った商品をじっくり選んで、必要な数だけ確保していくのが正解なのかもしれません。
言うまでもなく、その結果部屋の中が大変な事になっちゃう人もいるでしょうけど(笑)。
ここからは私見ですが、最近中国工場の人件費が上がったため、その分製品の価格が高騰し始めたという噂をよく耳にするようになりました。
かつては200円だったギャルガシャ系も、今では最低価格帯が300円からで、しかもその完成度・販売形式・アソート等が比較にならないほど極悪になり、バンダイのヒーロー系ガシャにも同様の影響が見て取れます。
以前から同数アソートなどによる「セット販売をしにくくする要素」が存在しましたが、今ではあれ以上にセットを売りにくい…言い換えれば、ユーザーもフルコンプし辛いアソート内容になってしまっています。
また、ブラインドボックスフィギュアの定価上昇も凄い域に達してしまい、今では600〜800円単位の「ダブる可能性の高い」売り方が普通に行われています。
これは明らかに自ら首絞め行為なのですが、それはともかく。
どちらにしろ、数年前と比べると購入側も販売側も、それぞれかなり過酷な状況に追い込まれた感があります。
完成品フィギュアも、独自の形とはいえ、じわりじわりと難儀な状態にシフトしつつあるような気がします。
オタク向けの商売は景気の影響を受けない注目の市場…などと以前は言われていましたが、実際は他の市場より遥かにシビアで、商品のグレードを常に上げ続けないとならないという自転車操業的恐ろしさを内包しています。
ですから、一時的な過熱ブームの後、信じられないほど短期で廃れてしまうものが多く輩出されますし、実際それで潰れたお店・倒産した会社もかなりの数に昇ります。
別な見方をすれば、ものすごく短期間に儲ける事は可能でも、長期間安定して収益を得続けるのは並大抵の努力では足りないという事です。
ジャンルの肥大化が著しければ著しいほど、安定化・定番化は比例して難しくなっていくのではないかと筆者は考えています。
フィギュアに限った話ではありませんが。
過熱ブームというものは、ユーザーが他のユーザーの情報に踊らされ、本人の意志とは無関係に動かされてしまった結果、本当は特に必要でもない物を無数に手に入れようとしてしまう事で発生する傾向があります。
だから、そんな盲目状態から一旦覚めるとブームに踊らされていた自分の愚かさが見えてきて、同時にブームの本性も垣間見えるのです。
そこでブームに乗るのを止めてしまうか、或いは良さを追求し続けていくのかが分かれ道なのですが、今尚完成品フィギュアに魅力を感じている私達のようなファンは、これからはじっくり時間をかけて、ゆっくり良い品物を選んで行きたいものですね。
本来、それが正しい買物の筈なんだし。
ひとまず筆者は、新製品情報確認→即ポチ、だけはもうしない事にしました。
よく言われている事ですが、商品注文ボタンを押すまでに、2〜3日空けると、商品に対して冷静な判断ができるようになりますよ。
時にはおいしい商品を逃してしまう事もありますが、その時は素直に諦める事も出来たり。
これ、結構オススメだったりします。
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