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更新日:2006年4月9日 | ||
「人生に玩具あり2式」なんてものをやっていると、色々と面白い事態が見えてくる。 今回は、またまた「最近よく聞く言葉」系コラム。 テーマは「瞬殺」。 テストに出ますからね、しっかり覚えるのよ。
「瞬殺」というのは、用いられる対象によって、微妙に意味が変わってくる。
この一、二年で、いわゆる「完成品フィギュア」の人気が凄く高まっている。 ところが、この完成品フィギュア。 最近、やたらと「瞬殺現象」が多発している。 筆者がパッと思いつくだけでも、「マックスファクトリー 宇宙のステルヴィア藤沢やよい」「同 DOA霞C1Ver.」「メガハウス RAHDXルナマリアVer.1」「同 RAHDXミーア・キャンベル」「ユージンSR-DX ローゼンメイデン・トロイメント翠星石」「メガハウス 戦国キャノンこより」「グッドスマイルカンパニー マビノギ ナオ」「和風堂 宇宙のステルヴィア藤沢やよい」などがある。 これらはすべて、瞬殺現象を起こした商品だ。 恐らく他にもまだあったと思うが、これだけ見てもかなりのものだし、これらはすべて2004年末から2006年3月現在までに発売された商品だ。 瞬殺とはちょっと意味が違うが、「コトブキヤ セラちゃん」「同 ToHeart2向坂環 ドリマガVer」「CAVE 鋳薔薇テレサ・ローズ」「HJ限定 これが私のご主人様 沢渡いずみ」などのように、予約または通販受付期間が長かったものの、入手方法や受注タイミングが特殊だったために、発売後に未入手者の需要が異常に高まった商品などもある。 さらに、完売後すぐに再販が決定したため動乱は拡大しなかったものの、商品そのものはあっという間になくなった「コトブキヤ ToHeart2ルーシー・マリア・ミソラ」「同 柚原 このみ」という例もある。 このように、ほんの一時期のタイミングを見逃しただけで入手難易度が高まり、或いは再販待ちになるケースがあまりにも多くなった。 好きな時に好きなアイテムを気軽に買う、という図式が成立し辛くなったと捉えてもいいだろう。 少なくとも、雑誌記事やサイト巡回で情報を見つけた時にはすでに遅し、という場合が頻繁に起こるようになった。 とにかく、需要に対して供給バランスが完全におかしくなっている。 そして、その副作用的に、この完成品フィギュア業界が活性化しているわけだ。 なんともはや皮肉めいた話だが、どちらにしろ勢い付いている事は間違いない。 これを良い傾向とするか、不安要素の断片と判断するかは人それぞれだが、一昨年からこのような流れが見え始めてきた完成品フィギュア業界は、瞬殺現象多発の温床となっているのだ。
だが本当は、完成品フィギュア業界でいうところの「瞬殺」というのは、正しい意味ではない。
●隠しギミック搭載判明型:
これに該当するのは、「メガハウス RAHDXミーア・キャンベル」「同 戦国キャノンこより」だろう。これらの商品は、製品発表段階では「出来はそこそこいいけれど」という程度の評価に過ぎず、一部のファンを除いては、ごく普通の前評判を獲得しているに過ぎなかった。 ところが、ミーアは発売直後、こよりは発売の約二ヶ月ほど前に、ネット上で「隠しギミック」が公表された。 ミーアは、別パーツ構成のスカートを取ると、その下は極端なカットのTバック! こよりは、巫女服脱衣可能! この情報が出回った次の瞬間(比喩なし!)、あらゆるネット通販店は完売、リアル店舗も在庫がかっさらわれた。 また、あまりに多い予約注文のため、一部店舗ではショート(予約数を確保しきれず、お客にごめんなさいする事)多発、これにより、予約を済ませたつもりで安穏とした気持ちに居た人達が、突如飢餓感に襲われるパターンも多発。 それまで何ヶ月も放置状態だったのに、ほんのちょっとの「大変わかりやすい情報」が流れただけで、このような極端な展開が発生したわけだ。 ちなみに、ミーアの方は2006年3月現在、すでに充分な数の再販または再入荷が行われ、今では何の問題もなく割引価格で入手できる。 こよりの方はいまだ再販情報がない状態だが、さすがに時間が経ちすぎたためか、オークション相場も安定を見せ始めたようだ。
●作品人気との絶妙な合致型:
「ユージンSR-DX ローゼンメイデン・トロイメント翠星石」が該当。これの発売時期・2005年12月は、おりしもアニメ「ローゼンメイデン・トロイメント」の年内放送終了期であり、内容展開もクライマックス直前。 しかも、翠星石はそこに至るまでに究極とも言えるツンデレ展開を見せ、多くのファンを魅了していた。 そこに加え、比較的安価な完成品が発売されるわけだから、潜在需要はどんどん高まっていく。 で、実際に発売された瞬間、これが爆発。 ネット予約もリアル店舗も、一気にかっさらわれた。 ただしこの商品、実は「異常に入荷数が少なかった」という背景もあったようだ。 未確認情報によると、とある大手玩具問屋(実質的な元締格)がメーカーへの注文数を誤ったらしい。 そのせいか、各店舗に入荷した数がせいぜい数個単位だったとか。 これが益々焦燥感を煽ったという側面もあったようだ。 ここに加え、2006年1月に開催されたスーパーフェスティバル限定版(表情が微妙に違う)等も加わったが、決して需要を満たす事にはならず、むしろ飢餓状況を悪化させたような感があった。 そして、2006年冬ワンダーフェスティバル会場内において、ユージン側から「翠星石の再販はない」という正式コメントが発表され、これがトドメになった。。 こういった背景も、先の24000円プレミアの件に少なからず影響を与えているようだ。
●なんだかエロエロじゃないですか型:
一番判りやすい例だが、「マックスファクトリー 宇宙のステルヴィア藤沢やよい」「同 DOA霞C1Ver.」「メガハウス RAHDXルナマリアVer.1」「和風堂 宇宙のステルヴィア藤沢やよい」などが該当。大きな露出はないが、コスチュームフェチ的な魅力で注目を集め、早い時期から需要を獲得していた商品群。 やよい各種は、清楚なキャラクターイメージに反して凶暴な巨乳とメガネ、ミニスカート、オーバーニーという組み合わせで注目を集め、特に和風堂版は、太腿を強調したポージングでさらなる注目を集めた。 DOA霞は、もはやいうまでもないだろう。 ルナマリアも、ミニスカートにオーバーニーというフェティシズム炸裂な格好が受けたらしく、物凄い人気を獲得。 しかし、なぜか似たような造形のVer.2(ミーアと同時発売)は、ほとんど注目らしい注目を受けなかった。 なお「和風堂 藤沢やよい」は、発売後に“実質的な限定版”である事が判明。 メーカーが、わざと生産数を絞っている事を公表したのだ。 これがさらなる需要拡大に繋がってしまった感があり、現在でも、かなり入手が困難になっている。 言うまでもなく、発売日に店頭待機していても手に入らなかったという人も多かった。
●周りが焦っているからこっちも便乗型:
ほとんどの商品で当てはまる条件だが、「グッドスマイルカンパニー マビノギ ナオ」発売時などが、このパターンに当てはまる(のだろうか…実は自信がない)。世の中には、筆者のように「人気が出るとその商品が欲しくなる」という困った性癖を持っている人がおり、そういう人達は、こよりに人気が出るとそれを探し、翠星石が完売だと聞くとやっきになって、セラちゃんが再販されると聞くと、慌てて複数予約注文したりする。 そして、少なからず品薄状況に影響を与えるのだ。 ちなみにこのタイプ、人気が落ち着いてくると商品に対する執着心も薄れ始め、やがては転売したりするケースも出てくる(もちろん絶対ではないが)。 転売屋に転進するのも、このタイプの人に多い傾向らしい。 また一方で、執着心のなくなった商品を、ある時期から大量に放出するため、以前入手困難だった商品が突然安価で手に入るようになったりもする。 本当に商品が欲しいという人にとって、たまーに役立ったりする事もあるようだ。
●メーカー側が人気を煽る型:
ある意味、もっとも始末に負えないパターンがこれだったりする。コトブキヤばかりを責める意図では決してないが、先に挙げた例の中だと、どうしても「セラちゃん」と「向坂環 ドリマガVer.」を挙げざるをえない。 ちなみに、ボークスなども、スパロボヒロイン系やアージュ系完成品スタチューで、よくこのパターンを展開させる。 要するに、極端に入手の難しい商品を数限定で出したり、書籍・自サイト・店頭のみで予約を受け付け、その宣伝をあまりおおっぴらに行わないというパターン。 情報をあえて小出しにするというのが、セオリーだったりもする。 予約受付期間自体は長くても、宣伝が局所的なため予約していた事にすら気付かない人が多かったり、或いは「○○体限定」と公表し、さらに残り在庫数を間接的に表示する事でユーザーの購入意欲をあおり、注目度がピークの時期で突然予約を締め切る。 そして、後日あらたに再販予約を取り、その際は公表生産数の倍用意する。 これだと、初版品不足に煽られた人は、再版時に複数個注文する可能性が高まる。 人によっては卑怯とも思える方法だが、売り方としては大変巧い。 もっともこの売り方も、商品自体の完成度と前評判の高さが揃わないと出来ない手法なので、何にでも応用ができるというものではない。
色々述べてきたが、このような状況が複合的に発生するため、今では「発売日に買いに行っても買えないかもしれない」という雰囲気が、色濃く漂っている。 しかし、実際に発売されてみたら数は豊潤、しかも春にはリペイントバージョンという実質的な再販が確定してしまった。 これほどまで見事な、「情報の勘違い」による影響が見られたのも珍しい。 ここまで述べてきたように、現在は新規のフィギュアファンが増加した事もあり、どの商品がいつ瞬殺するか、大変読みにくい状況となりつつある。 とはいえ、もちろん原型・試作公開時点でファンからダメ出しされた物は除かれるが。 だが一方で、「マックスファクトリー おねがい☆ティーチャー風見みずほワイシャツVer.PVC完成品版」のように、以前コールドキャスト版が出た事から造形レベルの高さが保証されているにも関わらず、なぜか注目されないケースがある。 PVC版は、ワイシャツの中身(注:これはいわゆる裸ワイシャツ姿)まで作りこまれているという、ユーザー購入意欲増進ポイントを盛り込んだ商品であるはずなのに、おかしな話だ。 これでは、予想の立てようもない。
完成品フィギュアは、ほとんどが原型公開→店頭サンプル公開→製品画像公開→実販売というプロセスを踏む。
なお、一言で瞬殺といっても、それが実際どれくらいの時間の事なのか、今ひとつわからないという人も多いだろう。
聞くところによると、ネット通販でも、リアル店舗でも、入荷待機のノウハウというものがあるようだ。
以上の対策をもってしてもなお、購入できなかったというケースも多々あるようなので、この争奪戦は本当に恐ろしい。 「これはもう買い物じゃねえ。――戦(いくさ)だよ」 …という感じだ。
無論、他の商品でも似たような事はよく発生する。
瞬殺。 「買い物なら命は惜しいが、戦なら死んだって本望だ!」 中条きよし氏の有名なセリフの一つだが、筆者はとても、そこまで覚悟を決める勇気はない。
ここまで読んで、「でもこれなら、メーカーが商品数を増やせばいいだけなんじゃないの?」と思われる方もおられるだろう。 |
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