復活・プレミアについて 2
後藤夕貴
更新日:2005年11月20日
 今回は、近年のプレミア傾向について色々考察してみたいと思います。
 話題は、このサイトの趣旨に合わせて、コレクターアイテム中心とさせていただきます。

 前回は、「古いアイテムの価値観の崩壊?!」と称して、昔のようなプレミアの付き方が現在では通用しなくなり始めた事について、説明しました。
 さて、今回は…

第二回:昔プレミア、今はゴミ?
 以前「レアとシークレット」というコラムでも似たような話題を扱いましたが、今回は「昔は高かったのに、今はもう価値ナシ(あるいは叩き売り)」という、悲惨な状況に陥ってしまう「理屈」について触れましょう。

 世の中には一度付いたプレミアは二度と変化しないとか、またはそんなに大きな価格変動はしないものと決めてかかっている人達が、大変多いようです。

 例えば、ポピニカの「コンバトラーV・コンバインボックス」や各バラ売りバトルマシン、「ボルテスV・ボルトインボックス」と各ボルトマシンは、美品ならそれぞれセットで軽く十万円以上に達します。
 しかも、そんなすごい値段でも確実に売れてしまいます。
 オークションに1円出品したとしても、最終的にはかなりの値段が付くだろう事が容易に予想されます。
 これらの商品は、ある時期から十年間くらいで驚異的な価格上昇を見せ、現在の価値に落ち着きましたが、その後も価値が落ちるような様子もなく、代表的な「安定的プレミア商品例」として認識されています。
 コンバトラーVに続き、近々ボルテスVも超合金魂化しますが、それらはポピニカ版の代替には決してならず、コンバインボックスやボルトインボックスの価値を下げる要素にはならないようです。

 こういう例を見ていると、一度すごい評価を受けたものは二度と揺るがないという印象を与えられがちですが、決してそうだとは言い切れません。
 例えば、バンダイがコンバトラーVやボルテスVの各ポピニカを、当時の形態に忠実に復刻・販売したとしたら、さすがの十万円プレミアだって揺らぎかねません。
 だって、十万ウン円支払うより復刻版を買った方が安く済むわけですから、わざわざ高い物を買う必要性がない訳です。
 確かに、初版(というか当時物)と復刻版とでは、それぞれ別々の価値が付くものですが、それでも、以前のような高プレミアを維持し続けられるかは大変疑問なわけです。

 もちろん、そんな商品展開は、まず間違いなくありえないでしょうけど(涙)。

 前回紹介した「メガハウス ルナマリア」と「マックスファクトリー 霞」は、このパターンをごく短期間でやってしまったため、プレミアが長期持続しなかったわけです。
 欲しい商品が安価で手に入る状況は嬉しいのですが、とにかく、このように「何がきっかけでプレミア価格が低下するか」わかったものじゃないのです。

 プレミア低下のきっかけは、必ずしも再販・復刻だけとは限りません。
 要は獲得競争率が低下すればいいわけですから、どんな要因だって大きな影響を生み出しかねません。

 例えば十年近く前、未開封のポピニカ・ホバーパイルダーが大量に中古玩具業界に出回るという事態が発生し、その影響から、それまでのホバーパイルダーの価値は低下してしまいました。
 もちろん、それでも定価よりは高かったのですが、まさかそんな昔の商品が未開封で大量に出てくるなんて、普通は想像できないわけです。

 こういうイレギュラーな事態が発生する可能性は、常にあります。

 バンダイのSICで「アナザーシャドームーン」という、真っ赤なボディの限定版が発売され、コレクターが大騒ぎした事がありましたが、後にこれとほとんど同じ品質の「香港版」が大量に日本に持ち込まれ、価値が激変した事があります。
 また装着変身「仮面ライダークウガ・アメイジングマイティフォーム」のように、最初はごく一部のディーラーが輸入して高値販売していたのに、後に同業者が真似をしたために市場が潤い、あっという間に安価になってしまったという例もあります。
 安価といっても、それはもちろん場所にもよるわけで決して全体傾向ではありませんでしたが、間違いなく影響はあったのです。
 ある店舗では、「アナザーシャドームーン」がプレミア急上昇中にカートン単位で仕入れる機会を得てしまったそうです。
 もちろん香港版ですが。
 しかも、それはものすごい偶発的な出来事がきっかけだったそうなので、何が起こるか本当にわからないものです。

 このように、最近の商品はあっという間にプレミアが付く代わりに、すぐに熱が冷めて価値が暴落するという事態が起こりやすくなっています。
 他にも無数の例があると思われますが、これらをいちいち一つずつ分析していったらきりがないでしょう。
 こういった傾向から、プレミアというものを有効活用するためには、
「発売前に商品の注目度を調べる」
「発売後大量に購入」
「品不足になった瞬間にばら撒く(→プレミア価格で売れる)」
「再販される前に売り切る」

…というプロセスを行う必要性が出てきます。
 そしてこれは、店舗では大変やりにくい行程でして、特に買取・販売を行っている店にとっては、まったく異質なベクトルでもあるのです。

 では、このプロセスを的確に行えるのは、どういう人達なのか?

 それが、いわゆる転売屋と呼ばれる人達です。
 転売屋とは、人気の高いアイテムを沢山買占めて、その上でプレ値を付けて販売して利益を得る人達の事です。
 何人かでグループを組み、購入数量限定アイテムを大量に購入したり、或いは単純に一人で極端な複数買いをしたりします。
 その行動は、商品の需要と供給のバランスを無駄に崩してしまうため、普通のユーザーからは大変嫌われています。
 また、転売目的ではないけど複数買いするコレクターまで転売屋呼ばわりされたりと、副産的に悪影響を与えたりします。

 ここで「転売行為」の是非は問いませんが、とにかく個人レベルのフットワークと店舗クラスの資金力、そして何より情報収集力と少しの人材、最後にまめさを持っていれば、かなり確実に稼ぐ事が出来ます。
 もちろん、これは個人に限定されるわけではなく、同じような事が出来れば個人店舗の人でも、大型チェーン店自体が行っても構わないわけです。
 資金力にしても、最初は微額でも徐々に増やしていければいいわけで、スタート時はほんのちょっとの予算でもいいわけです。

 逆に言うと、上記要素のいずれかが欠けただけでも失敗してしまいますし、一回何かでズッコケてしまうと、その先が続かなくなるという危険もはらんでいます。
 また、転売に失敗した結果、余計に買い貯めてしまった品物を泣く泣く安価で手放すハメになり、かえってひどい目に遭う人達も大勢居ます。

 要するに、「プレミアというもので金を稼ぐ事は、それだけ難しくなった」わけです。
 最近のプレミアショップの元気がなくなり始めてきた理由も、なんとなくおわかりいただけるのではないでしょうか。

 ただし、ここまで述べてきた「プレミア低下の傾向」は、あくまで需要と供給のバランスが変化したために起こるものであり、決して商品そのものの出来の良さにケチがついたわけではありません。

 という事は、一度価格暴落を起こしたものでも、何年か経った頃に、再びプレミアが付く可能性もゼロではないのです。
 実際、そういう経緯でプレ値を付けたアイテムも、結構沢山あります。
 かつて叩き売りされていた商品が、数年後に定価の数倍の価格で取引されているのを知って驚いた人も居るでしょう。
 こういう変動があるから、中古流通は面白いのです。

 ですが。
 中には「今後、価値が付くとは考えられない」というアイテムジャンルも存在します。
 品物の出来さえ良ければ人気復活の可能性もある、という事は、逆に「見限られてしまったらそれっきり」という品物だってある筈です。

 その代表例が、「ガシャポン」。
 200円や300円のカプセルトイですね。

 97年頃から本格的に盛り上がり始めたガシャポンブームは、今でこそ落ち着いた感がありますが、それでも毎月結構な数の商品が発売されます。
 落ち着いたという事は、以前よりも商品に対する需要が減った、または注目度が落ちたという事です。
 バンダイのHGやユージンのSRシリーズなどは、ちょっとマニアックな路線でスタートして現在の地位を築きましたが、最近はマニアックでもちょっと方向性が異なり、「あまりメジャーではない特定の番組」からのラインナップだったり、時には複数の番組・作品の混ぜ合わせだったりと、なんだか妙な偏りが見え始めて来ました。
 そのため、その番組を放送していない地区の人達には浸透度が悪く、当然回転率も低くなる上、後から人気が出てくる事もあまりありません。

 その上で、商品自体にハイレベルな完成度が求められるような傾向も出始めました。

 これは、500〜600円前後で販売されているブラインドボックスフィギュアの進歩や、或いはPVC製の完成品フィギュアなどの需要が増え、しかもこれらの完成度が高まっているため、必然的にガシャポンフィギュアはそれらと比較されるようになったのです。
 200円単位の商品に、500円や数千円の商品と同じグレードを求めるのは間違っていると思われがちですが、一度目が肥えたユーザーには、そんな理屈は通りません。
 目が肥えるという事は、生半可な完成度では満足できなくなるわけで、当然商品の選別が始まります。
 だから、数年前のように「発売されればとりあえず買う」というユーザーは減り始めるわけですね。
 そんな事情があるためか、現在は爆発的な人気を誇るガシャポンフィギュアシリーズは滅多に登場しなくなりました。
 これを書いている時点で、いくつか注目を集めている発売前段階のシリーズはあるようですが、やばり以前のような熱気は感じられません。

 アニメや美少女系フィギュア以外のシリーズでも、苦戦を強いられているものは多いようです。
 シリーズが長く続きすぎたため、すでに飽きられ始めている「HG仮面ライダー」や「HGウルトラマン」などはその代表例で、かつて一体数千円の値段が付いた頃が嘘のようです。
 今でも、それなりに高い完成度のものが出ている筈なのに、ほとんど話題を聞かなくなってしまいました。
 また、「HG仮面ライダー」のスタチューシリーズのように“途中でライダーをオミットしてしまった”ために、コレクターの意欲を大きく削いでしまい、見捨てられたという側面もあったりします。
 シャドームーンを入れて、ロボライダー、バイオライダーを外したり、アナザーアギトがいないのに王蛇が入ったりと、もう訳がわかりません。
 これでは、注目度が薄まっていくのは当然なのでしょう。

 ちょっと話が逸れ始めたので、元に戻します。
 このように、ユーザーが求めるグレードが高くなりすぎて、商品の完成度や満足度が追いつかなくなり始めたという事は、当然、それ以前に発売された商品に対する見方も変わってしまう事を意味します。
 これが、先で「今後、価値が付くとは考えられないジャンル」と述べた理由です。
 現行&新作商品が、ユーザーの目に止まるかどうか怪しいという現状において、それより完成度が低い過去のシリーズが、どれほど評価されるでしょう?
 筆者が思いつく“過去シリーズで現在も需要のあるもの”というと、「SRヴァンパイアセイヴァーPART-4」くらいしか思いつきません。
 単体ならそこそこ人気のあるものはありますが(某ナコルルのように)、シリーズ全体がいまだ高く評価されているというものは、その全体数と比較すると、ごく僅かに過ぎません。

 これは、商品自体の良さそのものが変質してしまった結果です。
 かつては高く評価されたものの、それを上回る品物の登場で価値感がかすみ、そのまますたれていくというパターン。
 こうなると、もはやユーザーの需要自体が回復する事は難しくなります。
 かつては6体セットで5000円くらいの値が付いた200円ガシャポンも、数年後にはセットで1000円未満…なんてのはザラです。
 トイ系のイベントに行くと、この傾向はよくわかります。
 筆者は、かつて3000円前後で買ったシリーズのセットを、800〜900円くらいで見つけて愕然とした事が、数回はあります。
 こういうのって、発売直後はとても予想できないものなんですよね。

 ユーザーの求めるレベルが高くなるという事は、中古業界にとってさらなる厳しい状況を生み出しかねません。

 次回は、「過去の製品の完成度の否定」について、触れていきたいと思います。


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