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更新日:2005年10月16日 | ||
「プレミアについて」とは、当「九拾八式工房」運営開始時から掲載していた「雑文通信!」内のコラムで、約2年半前に掲載終了しています。 所謂プレミアが付いているアイテムなどを例に挙げ、どういう条件やプロセスが整う事で値段評価が上がるのかを研究・検討するという内容のコラムだったのですが、ここ数年でプレミアの概念が大きく変化したため、あえて取り下げたわけです。 今回は、あの当時では今ひとつ見定め切れなかった「現在のプレミアの傾向」について、あらためて研究してみたいと思います。 ただ、一口にプレミアと区切ってしまうと、あまりにも膨大なジャンルを扱わなくてはならなくなるため、ここでは当サイト内でよく話題になる、玩具やゲームなどのコレクターアイテム系に話を絞っていきます。 では本文! 第一回:古いアイテムの価値観崩壊?!
以前のコラムがWEB上にないため、本文のリンク参照が出来ません。なので、昔書いた事をわざわざもう一度繰り返して記述します(笑)。 プレミアというのは、「需要の多さに対して供給が少ない場合に発生する価値観」みたいなもので、あらゆるアイテムに適応される概念です。 コレクターアイテムに限らず、様々なジャンルのアイテムに適応されます。 大変流動的な概念ですから、長い間相場と思われていた価格帯が、ある時期から突然大きく変化するというケースもありえます。 ですから、プレミアアイテムを購入したい・集めたいと考える人は、それなりに勉強しなければならず、また時間をかけて流通状況を判断していかなくてはなりません。 欲しい時にすぐ買えるという、一般流通とは異質な世界なのです。 ただし、この価値観を無意識に曲解し、「古いアイテム→現存数が少なくなる→供給が足りなくなる→プレミアが付く」という、とにかく古ければ何でも高くなると考える人も大勢居ます。 ここで勘違いを正しておきますと、「供給不足」には、アイテムの古さは必ずしも当てはまりません。 何十年も前の物でも、人気がなかったら「需要がない」わけで、結局高値など付きません。 そういった物が、ある時突然価値を見込まれるようになるというのは、相当レアなケースなのです。 この理屈を把握していないショップなどでは、この先何年放って置いても絶対売れっこないような品物に、トンデモ価格を付加していたりするわけです。 いきつけのプレミアショップに、何年もホコリを被り続けている高価アイテムがいくつか見られるでしょう? 鋭い人は、ここまで読んで「では、新しい商品でも供給不足になれば、プレミアが付くんじゃないの?」と思われるでしょう。 まさにその通りでして、現在は、むしろ新規アイテムの方がプレミアが付きやすい傾向が出てきました。 そしてこの傾向は、それまでの「古い物崇拝的価値観」を、大きく脅かすようになったのです。 ▲ ルナマリア。画像はプライズ
▲ マックスファクトリー霞 これがものすごい人気を博しまして、初回生産分は瞬く間に完売し、再販もネット予約は瞬殺状態、再々販になって、ようやく少しゆとりが見えてきた感じになったようですが、まだまだ人気は根強いようで、入手できていない人は多いらしいです。 筆者も、いまだに店頭で直接見た事がありません。 この商品は、定価6300円。 対して、再販前には一体10000円前後ものプレミア価格になりました。 また、「人生に玩具あり2式」で取り扱った、マックスファクトリーの霞(DEAD OR ALIVE)も、再販前は定価8190円に対して15000円前後ものプレミア価格が付きまくり、どうしても欲しいという人は、定価より遥かに高いと理解しつつも、泣く泣くその値段で購入していました。 あくまでネット上の評価になりますが、上記のルナマリアや霞は、コスチュームフェチ的な人気を博し、大元のキャラクターを知らない人も欲しがった結果、大ブレイクを巻き起こしたようです。 また、世の中には「評価の高いアイテムを欲しがる好事家」というのも居まして、そんな人達の注目をも集めたのが大きかったようです。 ところが、現在この二品の価値は、すでに暴落しています。 2005年8月上旬現在のヤフーオークションを見る限り、ルナマリアはだいたい3000円台後半から4000円程度の取引価格に落ち着き、霞も、4000円を割る取引がひんぱんに出てきたりする状態。 しかもこれらは、10月現在でもさほど変化していません。 ルナマリアと霞とでは、それぞれ流通事情が違うため完全に同列には扱えないのですが、とにかく両方とも「一気に価値が付いて、一気に価値が下がった」という現象を見せたわけです。 以上のことから、これらが近年のプレミア傾向を説明するのに、一番わかりやすい例だと筆者は考えます。 繰り返しになりますが、プレミアとは需要に対して供給が足りないという条件が整うと、おのずと発生するものです。 流通の少ない商品を、どうしても欲しいと考える人が多ければ多いほど、プレミアは付いて行きます。 なぜなら、これは一種の獲得競争になるからです。 どうしても欲しいから、ライバルを蹴落としてでも(より高い金額を支払っても)手に入れる、という意地同士がぶつかり合うわけですね。 そんな風に、金に糸目を付けないと考えた人が二人居たとして互いに競り合ったとしたら、結果的にとんでもない価格に釣り上がる事は、想像に難くありません。 そして、その様子を見ていた第三者が、競り落とされた時の価格に目を付け、同じ商品を仕入れて似たような価格帯で販売したとします。 そして、もしそれがすぐに売れてしまったとしたら、それは新しい「相場」になるのです。 このパターンを踏襲した代表例が、小学館てんとう虫コミックス「魔女っ子メグちゃん(全1巻)」です。 もう十年近く前になりますが、この本が、とあるオークションで二十万円くらいの値段を付けられた事がありました。 その後、この落札価格は業界に広まり、「魔女っ子メグちゃん」は一時期とんでもない超希少本として取り扱われました。 ちなみにこの「魔女っ子メグちゃん」、現在ではだいたい五万円前後くらいが相場のようで、また近年、未収録内容も加えた分厚い復刻版も出たため、内容の希少性はなくなりました。 あくまでコレクターアイテムとして評価されるようになったと言ってもいいでしょう。 ※なお、「魔女っ子メグちゃん」の詳細については、どうか検索でお調べください。 ここで説明すると、多分本文が三倍くらいの長さになりますから(笑)。 話を、新しいアイテムに戻しましょう。 最近、コレクターの中にもライトユーザーが増えたため、色々事情が変わっているそうです。 元々コレクターというのは、集めていくうちにどんどん源流を辿り、古い物の探求へ向かうものなのですが、そこまで至らないレベルの人達は、あくまで自分の知っている範囲内での商品だけを捜し求めるようになったのです。 例えば、90年代のテレビ番組を見て育った世代の玩具コレクターのほとんどは、70年代や80年代の超合金やポピニカなどには目もくれませんし、あまり価値を認めてくれません。 そりゃ、自分達が子供の時に知らなかったり、触れなかったアイテムに価値を見出せという方が難しいですから、これは当然の結果でしょう。 また、タカトクや永大、中嶋製作所やタケミ、ブルマァクや旧世代の野村トーイの商品など、彼らはほとんど知りません。 せいぜい、タカトクやクローバーが昔倒産したとか、バンダイではない会社がダンバインやガンダムの玩具を発売していた事を知っている程度です。 こういうのを世代の移り変わりというのかもしれませんが、似たような影響は玩具系以外のジャンルにも見えており、過去の価値観が大きく揺らいでいるのです。 だから、十年前に五万円くらいの相場だったものが、もはやその値段では売れなくなっています。 かつては高嶺の花だった旧超合金・ポピニカなども、最近の傾向の影響を受けてか、十数年前では考えられなかった価格で買えるようになったりもしています。 もちろん、全部が全部というわけではありませんが。 それについては、別な機会で触れましょう。 最近は、新規商品でも限定版と称されるものが増え、発売された直後なのに入手困難という事態が発生しやすくなりました。 先に挙げたルナマリアや霞のように、限定版ではありませんが超人気を誇ったため、似たような結果を出した商品もあります。 また、「スーパー戦隊シリーズ」や「仮面ライダーシリーズ」のように、番組終盤に発売されたため生産数が少なく、番組終了後になって突然付加価値が発生するというケースもあります。 「百獣戦隊ガオレンジャー」のパワーアニマルの一部は、まさにこの典型的なパターンでした。 これらはすべて玩具の例ですが、現在はこういうパターンで注目を集めるアイテムが多々あります。 だからユーザーも、新規商品の情報を常にチェックし、発売のタイミングを検討しなくてはならなくなりました。 買い逃したら、定価より遥かに高いお金を支払わなければならなくなるわけですから、どうしても欲しい人は必死になります。 こうして、新商品プレミア対象が発生していくのです。 でもこういうパターンは、実は昔から結構あったのです。 玩具ではありませんが、一大ブームを起こしたG-SHOCKなどはその一例ですね。 新商品なのにプレミア対象となるためには、最低条件として「品物としてのグレードが高くなければならない」というものがあります。 どんなに数が少なくても、限定品でも、出来がカスなら扱いはぞんざいです。 誰が見ても「これはすごい」と思わされるような品物が、手に入りにくいという状況になって、初めてプレミアが付くのです。 現在のプレミアの傾向は、単に珍しいだけではなく、「注目するだけの価値があるか」という部分が重要になってきています。 つまり、昔よりも商品そのものの完成度の高さが求められるようになったのです。 情報誌の発達によって、以前よりも早く、かつ多くの製品情報が事前に知られるようになりましたし、インターネット上で情報を検索しやすくなり、発売前に熟考する事が可能になったというのが、大きいでしょう。 各種コレクターにとって、完成度に不満のあるものなど、何の価値もありません。 これは、注目を受けるアイテムとそうでないものとの扱いの差異が、以前よりも極端になった事を意味します。 そしてそれは同時に、過去大絶賛を受けた物であっても、あらたな価値観に晒された場合、後からその価値を貶められるケースも出てきたのです。 ガシャポンフィギュアが、その良い例ですね。 技術の進化、あるいは購入層の求めるグレードの高まりが加わり、現在のガシャポン商品は、数年前のものよりも遥かにハイレベルなものでなければ、売れなくなってしまいました。 そして、かつては大人気でプレミアもついていたアイテムが、今では叩き売り同然に扱われる事もザラです。 コレクターの求めるレベルが高まると、連動して商品の進化も急激に高まり、そして過去の商品の評価が低下していく。 これはまるで、昔のプレミア傾向とはまったく逆の展開ではないでしょうか?! というわけで、次回は「昔プレミア、今はゴミ」と題して、さらに価値観の変化について追求してみたいと思います。 → NEXT COLUM |
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