第44回補足 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーBLACK

2009年6月6日 更新

 せっかくなので、オマケとしてBLACKのレビューも。

■ S.H.フィギュアーツ 仮面ライダーBLACK

 2009年5月30日、「強化外骨格・零」と同時発売。
 全高約14センチ(ツノ含まず)、全4種の手首付き。
 価格は2,625円(税込)。

 2009年5月現在、フィギュアーツで唯一の「昭和期に全話放送された仮面ライダー」からの商品化。
 関連商品は現時点では存在しないが、7月に続編「仮面ライダーBLACK RX」から仮面ライダーBLACK RXが発売予定。
 2009年8月劇場公開「仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」にて、倉田てつを氏演じる南光太郎&仮面ライダーBLACKが登場するが、RXも含め、これに関連した商品化とも考えられる。

 圧倒的な完成度の高さを誇る零に対して、こちらはかなり残念な出来となってしまいました。
 すみません、今回は辛口評価です。

 体型が全然違うとか、脚が長すぎるとか頭が小さ過ぎるといったフィギュアーツ的アレンジについては、この際不問に伏すとして。
 それ以外の部分を見ても、とても充分な出来とは云えません。
 遠目に見ると良い感じに思えるので、確かにごまかしは利くのですが、実際に手に取るとあまりの違和感に驚いてしまいます。

 まず、首の軸がほとんど見えないくらい、短く見えてしまうという問題が目立ちます。
 これのおかげで、全身のバランスが物凄く奇妙になってしまいました。
 BLACKは、元々首の周りがすっきりしたフォルムで軸もちゃんと見えるラインですから、こんなに首が埋まって見えることはありません。
 写真では若干顎が引き気味になってしまいましたが、普通にしてもあまり大差ないイメージです。

 普通に立たせて全身を撮影すると、首の短さが異様に目立っていることがわかります。
 胴体にめり込んでいるようにも見えます。

 頭部を検証すると、多くの違いが目立ちます。
 特に極端な部分だけピックアップしてみましょう。

  • 目の形状が全然違う(下膨れの楕円に対して縦長の楕円形になっている)
  • クラッシャー(顎)の上辺端が下がっておらず、吊り上がっている
  • 顎の側面積が広過ぎで、マスク部分とのバランスが悪い(口ないしは顔の下半分がバカでかく見える)
  • 顎が異常に長く大きい
  • 眉間の感覚が狭すぎる

 ツノの太さや複眼部分の構造、頭の大きさのバランスなど、耐久性考慮やサイズ的な問題については無視するにしても、頭だけでこれだけ多くの問題点があるのはどうかと。
 こんな構造のため、フィギュアーツBLACKは「ひょうきん目玉のニヤケ顔」に見えてしまい、劇中とは全く異なる印象になってしまいました。
 特に顎の大きさはかなり致命的ですが、どうやらこれのせいで首が短く見えてしまうようです。
 首そのものは、ややめり込み気味ではあるものの、実は他のとあまり大差ないんですよね。

 幸い、首は頭部を若干引き上げ、ボールジョイントを浅くはめ込めば多少ましな見栄えになりますが、当然抜け落ちやすくなるデメリットも生じます。
 また、なんとなく座りが悪くなることもあるので、玩具改造を良しとしない方は、ある程度の割り切りが必要かと考えられます。

 最初に紹介された原型では比較的まともだったのに、改修されてからこんなに酷くなってしまいました。
 ものすごく無念でなりません。

 変身ベルト(名称無し)自体の彩色が色々足りてないのは仕方ないとしても(エナジーリアクター周辺が黒く塗られていないのだけは個人的に我慢なりませんが)。
 周囲の造形がまったくの別物になってしまっている点は、無視し難いものがあります。
 実際のBLACKのバックル部分は、周囲より一段へこんだ状態で接続されています。
 具体的には、バックル全体を縁取るように段差があるのです。
 また、左右の四角いパーツとバックル脇は切り離されているのが正解です。
 腹部を可動させる都合上、着ぐるみとまったく同じには出来ませんから若干のアレンジが入るのは全然構わないんですが、だからってバックル上辺部分にありもしない銀色のパーツをねつ造したり、左右のパーツをバックルと一体化させてしまうのはどうかと。
 また、ベルト部分もかなり太くて、まるで胴体に巻きついているように見えます。
 ――こう書くと「は?」と思われるかもしれませんが、BLACKのベルトって、バックルも含めて胴体に少しめり込んでいる構造で、ボディラインに溶け込んでるデザインなんです。
 だから、腹にベルトを巻き付けているというイメージとは違ってるんですよね。
 というか、商品化の関係でベルトっぽく見える形状にされているだけで、本当はベルトですらないんですが。

 これらのアレンジのおかげで、ベルト全体がまったくの別物に見え、顔問題に並ぶ難点となってしまっています。

 顔やベルトの細かい出来具合は気にせず、あくまで全体のラインを重視する人、プレイバリュー優先の人にとっては、確かに良い商品と言えるでしょう。
 全身の可動はほぼ文句なしですし、BLACK独特の「関節の隙間の細胞状組織」も、可能な範囲でしっかり再現されています。
 脚の可動幅はクウガより圧倒的に広く、ストレスはほとんど感じません。
 前方向だけでなく、後方にも大きくスイング出来るのは魅力です。
 やや肘が固めに感じられますが、支障を来たすほどではないので、充分許容範囲でしょう。
 ただ、個人的にはもうちょっと深く曲がってくれたら嬉しかったですね。

 左胸のマークですが、ヘタするとすぐに削れ落ちてしまうという報告が上がっています。
 仮面ライダー龍騎R&Mシリーズの、バックルの紋章みたいなものかも?
 筆者のものはまだ問題ありませんが、管理には充分注意したいものです。
 試してはいませんが、トップコートを吹いてコーティングしてしまう手段もあるそうです。
 試す人は自己責任で。

 名乗りポーズ再現時の迫力は、なかなかのもの。
 動作中、ほんの一瞬だけ行なう「二本指を伸ばした右手首」まで付属。
 こういうところはよくわかっているなと、褒めてやりたい気持ちはあるんですが……

 本商品は、「装着変身EXバトルホッパー」と良く合うと言われています。
 ですが、実物を見る限り正直ベストバランスにはほど遠く、バイクの方がかなり小さくなってしまいます。
 上の写真では一見まともに搭乗しているように見えるかもしれませんが、実際は酷い物で、とてもまともに乗っているとは表現できません。

 バトルホッパーのサドル位置に尻を乗せるとブラックの体は車体に対してかなり前寄りになってしまい、ハンドルの位置が腰の前あたりに来てしまいます。
 これでは、実際に運転している風には絶対に見えません。

 正面から見てみれば、違和感がよくわかります。
 写真ではちょっと脚が綺麗に整ってませんが、それは別にしても、まるで大人が子供用の自転車にまたがっているようにしか見えません。
 座高が高いため、ハンドル位置が低すぎるようです。

 さらに別角度から。
 バトルホッパーは、元車が125ccなので確かに小型ではあるんですが、これはいくらなんでもバランスが違いすぎます。
 こんな位前寄りな位置でしかも腕がほとんど伸ばせない状態でハンドルを持つなんて、ライディングスタイルでは全くありません。
 これだけ対比が違うのに、それでも両足がきちんとステップに乗るのはさすがですが……

 ちなみに、これら搭乗写真では、S.H.フィギュアーツ「仮面ライダーガタック」の武器持ち手を流用しています。

 大変残念なことに、BLACKには握り手(武器持ち手)が付属していません
 このため、単独ではバイク系玩具に乗せることは出来なくなってしまいました。
 確かに、正式な関連商品はないので本来は無問題の筈なのですが、これの前に出たクウガ・マイティフォームがサービスオプション的に(本来必要ない筈の)握り手付属で、DXトライゴウラムやビートゴウラムを絡めてプレイバリューを拡張出来たことを考えると、なんともすっきりしません。
 装着変身シャドームーンに付属したサタンサーベル等を持たせるとか、活用の仕方は色々あると思うんですけどね。
 製品担当者のブログでは、「BLACKは武器を持たないから(握り手は)付けなかった」「どうしても欲しいなら、この後発売されるRXの(リボルケインを持つ)手を流用してくれ」といった発言があり、これがファンの間で物議を醸しています。
 この発言から、製品担当者は装着変身EXバトルホッパーの存在を完全に度外視していることが窺えますが、筆者は個人的に「単なる手抜き・片手落ちの言い訳」と捉えています。
 強化外骨格・零の指差し手首がないとか、クウガ・マイティフォーム以外に超変身用の手首が付いてないとか、フィギュアーツは他にも「どうしてここでアレを抜くかな」と言いたくなる難点が、しょっちゅうありますから。

 結論から言って、装着変身EXバトルホッパーとフィギュアーツは合いません。

 WEB上ではベストバランスと唱えている人も多いですが、これはかなり脳内補完されているか、或いはバイクのライディングスタイルをあまり良く把握されていない人による感想だと思われます。
 とにかく、そう云わざるをえないほど、両者を組み合わせた時の違和感は絶大です。
 ここに掲載した写真は、それでもまだわりかしまともに見えるレベルです。
 実物とのギャップは相当なものなので、もしこれから両方揃えるつもりの人は、かなりの覚悟をしておいた方がいいかと思います。
 また、このバランスからアクロバッター&フィギュアーツRXの組み合わせも期待出来ないことでしょう……
 もっとも、かの悪名高い「装着変身版・仮面ライダーBLACK」の時点で既にサイズが合ってなかったんですから、これはしょうがないと思います。
 まあそれに、これは決してフィギュアーツの欠点というわけではありませんからね。
 
 どうしてもバトルホッパーを絡めたいなら、上の写真のように搭乗はさせず、並べて飾るのが関の山でしょうね。

 角度美人ではあるんだよなあ…。
 惜しいな、とは思うんだ、惜しいとは……

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【買ってみて一言】

 総合評価としては、細かいことを気にしない人・フィギュアーツのアレンジを許容出来る人には充分オススメできるアイテムです。
 よく動き、ポージングはスムーズかつガジガシ決まりますし、ボディラインも比較的良く整っています。
 また、手首パーツはBLACKの着ぐるみのそれを本当に良く再現しようとしていて、モールドの細かさには驚かされます。
 更に、腕可動時の肩アーマーのめくれ具合が劇中アクションの雰囲気を巧く再現していて、良い味わいとなっている点も見逃せません。

 しかし、BLACKに対して並々ならぬ思い入れを持つ人、これまでのフィギュアーツ的アレンジにいくらかの違和感を覚えている人には、絶対にオススメ出来ません。
 特に、顔の造形に拘る人には絶望的にNGです。
 言い方を変えれば、違和感をもたらすポイント自体はそれぞれ小さなものなのですが、よりによって一番注目される部分ばかりに集中しているのです。
 先では顔や首の長さを中心に差異を述べましたが、その他にも手首・足首周辺、上半身の造形と凹凸の雰囲気(個人的にはここまで追求するのはどうかと思いますが)等、気になる箇所は本当に多いです。
 製品担当者が思い入れバッチリで製作したとされ、実際その完成度が驚くほど高かった強化外骨格・零と比較すると、思い入れやこだわりの不足感が感じられてしまい、とても寂しいものがあります。
 残念ながら、装着変身の時のリベンジならず、といったところでしょうか。
 本放送当時BLACKを齧り付いて見ていた筆者としては、とにかく無念でたまりません。

 仕様はこのままでも良いとして、あとちょっと、ほんのちょっとだけ気を遣ってくれれば、もっと化けた筈なんですよ。

 これら諸問題は、(本レビューを含む)WEB上の写真では分かり辛い場合もありますので、気になる人は直接実物を見て判断されると良いかと思います。
 筆者の総合的感想は、「装着変身よりはマシ」という程度です。

 本商品で感動したという人も多いと思いますが、ごめんなさい、これが筆者の率直な評価と感想です。

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