第22回 ■ バンダイ 超合金(1979復刻版)「帰ってきたガチャガチャドラえもん」
2006年3月1日 更新
今回は、2006年2月11日に発売された、「超合金 1979復刻版 帰ってきたガチャガチャドラえもん」。
これは、1979年のシンエイ動画版放映開始当時に発売され、なんと80万個も売りさばいたというロングセラー商品でした。
本来なら、これは「古物倉庫」で扱うべきアイテムなのですが、一応最新版である上、 筆 者 の 思 い 入 れ が 並 々 な ら な い の で あえてこちらに掲載します。
ちなみに昔、これの原版を指して「これはね、73年に放送されていた(日本テレビ版)ドラえもんの放送当時に発売されたものなんだよ」と嘘説明し、知人に本気で信じ込ませてしまった経験のある筆者。
ここを読んでいる貴方は絶対やらないでね。
超合金ガチャガチャドラえもん。
2005年9月に、同様の機構を持つリニューアル版が発売されました。
そちらは、基本的なプレイバリューは旧超合金版を踏襲してはいるものの、映像のドラえもんにそっくりの造形、丁寧に彩色されたひみつ道具、幅の広がったギミック等、あらゆるところがグレードアップして、素晴らしいアイテムになりました。
いけませんね、そんなことでは。
このページを、懐かしさに惹かれて開いてしまった貴方は、そんなものでは満足できない筈。
あるいは、「でも、何かが違う」と故・鈴木ヒロミツ氏のような事を考えた筈です。
「ガチャガチャドラえもん」に求められるのは、映像の立体化・再現性ではないのです。
幅広いプレイバリューではないのです。
彩色された綺麗なひみつ道具ではないのです。
小さいカプセルの中に、無彩色の“消しゴム(※塩ビパーツだろ、などという人はもう寝なさい)”が入っている。
これが、いいのです!
振り返れば70年代後半、十円玉を沢山ポケットに入れて、駄菓子屋に走ったあの頃の思い出。
それを手の中で再現できるという、ノスタルジーの縮図が込められているからこそ、本商品は魅力的だったのです。
そう、「ドラえもん」だから売れたのではない。
「ガチャガチャ遊び」ができるから、売れたのです。
そして出てくる物は、ドラえもんでおなじみのひみつ道具。
まさに無敵のコンビネーション!
これで売れない筈がありません。
というわけで、三十代以上でないと全然ピンと来ないような、大昔の懐かしい記憶をチョビチョビと刺激される快感が詰まっているのが、この復刻版というわけです。
いやもう、発売告知から指折り数えて発売日を待ったなんて、本当に久しぶりです。
商品パッケージ正面。
ウインドウパッケージが、やっぱり嬉しい。
商品パッケージ背面。
パッケージは、なんと二重構造。
新しいものの中に、わざわざ当時と同じ仕様の箱が収納されています。
復刻版の文字が加わっているものの、なんとGナンバーまで当時のまま!
ポピーだよポピー!!
しかも、「ドラえもん絵かき歌」までしっかり掲載。
これって、今はもう知ってる人少ないのかな?
「。ま〜る書いてま〜る書いてま〜る書いてま〜る書いてチョンチョンチョン」と歌い間違えて、見るもおぞましいドラえもんを描いてしまった、苦い思い出が…
内パッケージ側面部。
今や懐かしいひみつ道具図解。
今とはまったく違うドラえもんの姿が…
あれ、でも当時こんな絵柄だったっけな?!
今や懐かしい、発泡スチロールの内箱。
カプセルは個別に分けられたブリスターに収められています。
一個だけ別な所に配置されているのも、オリジナル通り。
今回、ひみつ道具はこのように収納されています。
これは復刻版オリジナルの収納で、塩ビパーツの癒着を防ぐための処置。
空のカプセルは、別途ブリスターに収められ、オリジナルと同じ位置に収められています。
(入りきらなかったネズミ一匹も、そちらに収められています)
これは、コレクターにとって大変ありがたい処理。
ひみつ道具。
オリジナル版はロングセラーだったため、付属のひみつ道具にバリエーションがあり、オリジナルのリデコ商品「もてもてドラミちゃん」付属の物を含めると、なんと60種類以上に及んだそうです。
(フルコンプした人など居るのだろうか?!)
で、今回の復刻は、その中から12種類を選別・固定しています。
ですから、当時オリジナルを持っていた人は「あれ、こんなのなかったと思ったけどな」と感じる事があるでしょうね。
筆者は、おぼろな記憶では「ガリバートンネル」や「スモールライト」「水から水へジャンプする潜水艇(水槽の中で沈没しかけたアレ)」なんかが入っていたような気がします。
まずは、左から「あべこべクリーム」「どこでもドア」「ドロボウホイホイ」。
あべこべクリームは、ちゃんと「ABEKOBE」と文字が刻まれています。
同じく、左から「コンピューターペンシル」「予定メモ帳」「フエルミラー」。
フエルミラーのみ自立できないため、やむなく寝かせています。
予定メモ帳は、名前部分が浮き彫り処理されています。
左から「わすれトンカチ」「実景プラネタリウム」「タマシイムマシン」。
殴って記憶をぶっ飛ばすという、どこがひみつ道具なのかよくわからないトンカチが素敵でした。
左から、おなじみの「タイムマシン」、「XYZ線カメラ」「きせかえカメラ」。
本来タイムマシンは、ドラえもんのボケットからは出てこないわけですが、野暮はいいっこなし。
きせかえカメラって、本当にあったらコスプレイヤーさん重宝するだろうなあ。
付属のネズミは、二色あり。
下に吸盤が付いてますので…
このような地獄絵図の再現もできます。
こちらは、ひみつ道具一式とカプセル、そしてオマケの“ネズミ”。
道具とネズミは塩ビ製(なんか今回はPVCと言いたくない)で、当時品と同じように柔らかな質感です。
ぷにぷにしている塩ビは、安全基準の関係で、簡単に使えなくなったそうです。
本来なら固めのPVCになってしまうところなのですが、これは嬉しい配慮。
やっぱりガチャガチャから出てくる“消しゴム”は、ぷにぷにじゃなきゃダメなのです。
カプセルは、赤色と黄色の二色のみで、12個付属。
ひみつ道具はすべて収納できますが、ネズミが二体余ります。
無論、ネズミをカプセルに収める事も可能。
ドラえもんのポケットの中からネズミという、地獄のシチュエーションも楽しめます。
本商品付属カプセルと、70年代当時の「20円ガチャガチャカプセル」の対比。
20円カプセルも相当小さいのですが、それよりさらに小さいです。
開ける時は、潰して壊さないように注意が必要。
もっとも、透明プラ部分がかなり分厚いので、多分大丈夫だとは思いますが。
今度は、20円カプセルと、現在の200円ガシャポンカプセル(画面左奥)と、 300円カプセル(画面右奥)との比較。
こうして見ると、今やすっかり馴染んでしまった200〜300円カプセルは、凄まじい大きさなんだなと実感させられます。
残念ながら、100円カプセルは筆者の手元にはなかったため、比較できませんでした。
参考に、20円ガチャカプセルの当時品を。
中身は、今回のひみつ道具同様の塩ビ人形(今野産業・バイキン軍団)でした。
写真のものは、約25年間ずっと未開封だったものなのですが、このように、カプセルの内側がドロドロになってしまっています。
なぜこうなるか、詳しくは「気分屋な記聞・癒着と硬化」を参照していただきたいですが、こんなになっても、塩ビ人形自体は無傷だというのが恐ろしいです。
言うまでもないですが、本商品のオリジナルのカプセルも、現在はこんな感じになっちゃってます。
本商品も、カプセルに入れっぱなしだといずれこうなってしまうので、保管には注意したいものですね。
ドラえもん本体です。
今見ると、なんとも不気味な印象ですが。
目は、カプセル状になっている眼の中を黒目がころころ移動するという、チープかつ懐かしいもの。
気を抜くと、片目が上、片目が下になっていたりして、ものすごくビビらされる事に!
首輪はリボン、鈴は本物です。
ただし鈴は、ほとんど音らしい音がしません。
足の裏のコピーライト等の表記が、オリジナルと違っていますが、こりゃしょうがない。
側面写真。
手がマグネットになっています。
背面写真。
頭部の色が違う部分がハッチになっていて、ここにカプセルを入れます。
反対側面。
右手は「はさめるハンド」になっています。
…が、持たせられるひみつ道具がほとんどない!
せいぜいわすれトンカチくらいかな?
頭部ハッチは、指などで押すと内側に折れて開く構造。
カプセルを押し込みます。
ドラえもんの頭の中が空洞になっていて、この中に入れたカプセルがランダムで落ちてくるわけですね。
入れたらドラえもんをガラガラと振りましょう。
重い物が先に出てくるとか、そーいう事はありませんからご安心を。
説明書によると、カプセルは7つ入れるのが限度という事です。
しかし実際にやってみたところ、なんと11個まで挿入する事が可能でした(12個目はどんなに頑張っても無理)。
しかも、一応ジャムったりはしません。
とはいえ、念のため説明書通り、7個前後以内の挿入で留めておくべきでしょうね。
まして11個も入れたら、振ってもカプセルは動かないし。
尻尾を引っ張ると…
腹部ハッチ(ポケット部分)を押し開き、カプセルが飛び出します。
結構な勢いで出てきますので、なくさないように〜。
構造的には、ドラえもんの首と胴体の境界辺りに、尻尾と連動した(というか一体成形の)シャッター兼プッシュボードが配置されており、尻尾を引く事で頭部内のカプセルが、腹の位置に落ちてくる(そして押し出される)という流れになっているようです。
この尻尾パーツ一式に張力を与えているバネは、意外に強力。
きせかえカメラとXYZ線カメラのみ、裏側にメタルパーツが。
これを利用して…
左手の磁石にくっつけられます。
おお、設定通りのペタリハンド再現!
オリジナルは、腹部や頭部ハッチ付近に「いかにも旧超合金的な」シールが貼ってありましたが、本商品はシール別添え。
シールを貼ると、どうしても糊部分からの劣化が始まってしまいますので、これは大変ありがたいです。
これといいカプセルの中身の別収納といい、長期保存が前提とされているかのような心配りは、嬉しくなると共に、何かニヤリとさせられてしまいますね。
シールのロゴは白フチが追加され、以前より文字がくっきり読めるようになりました。
こういうさりげない気配りが、本当に嬉しい!
「うーふーふーふー」
【買ってみて一言】
復刻版なので、その出来の良し悪しを現在の基準で語るのは、論外でしょう。
なのでここは、あくまで「当時のオリジナルをどこまで再現しているか」を問うべきだと思います。
一言で云うなら、本商品は「買う価値ありすぎ」というくらい、素晴らしい商品だと思います。
もちろん、これはオリジナルを多少なりとも知っている人限定の評価なのかもしれませんが、オリジナルではまったく考慮されていなかった保存性についても対処が成され、しかも極力オリジナルと同じ仕様にするというこだわりが感じられます。
復刻にあたり、これだけ心配りが徹底されているアイテムというのも、そうはありません。
それだけで、本商品には「金額に換算できない価値」が含まれていると筆者は思います。
値段も決して高くなく(定価\3,675。ただし大概のショップでは\3,000前後で販売されている)、しかも生産数が比較的多いため、気軽に入手できるというのも嬉しいポイントですね。
もし、どこかで見かける事があり、思わず目に留めてしまったのなら、思い切って購入するのもいいでしょうね。
中身を出さなくても、パッケージ状態で飾っていても、なかなか赴き深いものがあると思いますよ。
ただし、これらの旨味は、あくまで世代限定。
これが、数少ない本商品の難点かと。
三十代未満の人は、ビンテージアイテムコレクターでもない限り、リニューアル版を購入した方が無難かもしれません。
以前、某所で「無彩色の塩ビアイテムのどこに存在価値があるのか」という話題で激論が交わされておりまして、そこを見た限りでは、「特定世代以下の人達にとって、無彩色塩ビ製品は評価に値しない・価値が見出せない」という雰囲気でした。
まあ、これも時代の移り変わりなのでしょうなあ。
どちらにもそれぞれの魅力がある、という事でいいと思いますけどね、筆者は。
なお、この「超合金ドラえもん」は、当時リデコの姉妹品だった「もてもてドラミちゃん」の他に、大型版・小型版が存在しました。
大型版は、当時パッケージしか見た事ないのでギミック詳細はわかりませんが、小型版は、確かカプセルの中身が塩ビではなく、紙に印刷されたひみつ道具だったような。
一応、超合金ではあったんですけどね。
さて、リニューアル版の方は、映画「のび太の恐竜2006」に合わせてひみつ道具の内訳が変更されたバージョンが発売されますが、こちらの復刻版の、残り48種類ほどのひみつ道具は、果たして復刻される事があるのでしょうか?!
――難しいだろうなあ。