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更新日:2004年11月18日 | |||||||||||||||||||||||||
1980年頃。 当時の子供達の間では、「ウルトラマンの怪獣塩ビ人形」の収集が大流行していた。 初代マン・セブン・新マン(反論却下)・エース・タロウ・レオ・ザ〜・80の各種怪獣をデフォルメ化させたキャラクター人形で、一部例外はあるものの、主にガチャガチャ(現在のガシャポン等)にて販売されていた。 これらは正規品・コピー品・版権無認可品すべてひっくるめて「怪獣消しゴム」と統一呼称されており、いずれも大変な人気を誇っていた。 そんな中、ウルトラ怪獣モノ以外でも、様々な塩ビ人形モノがひっそり生産・販売されていた。 怪獣ほどの知名度もなく、またトントン相撲などのプレイバリューも持たない、マイナー系の商品群…そんな中に、燦然と輝く(?!)名商品が存在していた。 それが、今野産業株式会社(以下、今野産業)製品「バイキン軍団大行進」シリーズ! 今となっては懐かしすぎる、20円ガチャガチャなどで販売されていた、ちょっと独特な質感の塩ビ人形。 背中についた吸盤で、ガラスなどにペタペタ貼り付けるだけしかプレイバリューのなかった商品。 だが、これらはオリジナルでありながら、あまりにも独走的な造形とセンス、魅力を内包しており、25年近く経過した現在ではコレクターの間で高額取引が行われている。 というわけで、今回はこちらについて色々書いてみたい。 あ、またまた、20代以下完全に置いてけ堀なネタでごめんなさい。 【バイキン軍団】
それでは早速、その「バイキン軍団」の現物を見ていただこう。
先の文でピンと来なかった人の中にも、この画像で記憶が蘇った方がおられるのではないだろうか?「バイキン軍団大行進」は、前期14種類、中期14種類、後期14種類の計42種類が存在し、独特の光沢と質感の材質で作られている。 この材質は、現在では色々な制約の都合で使用困難だという話も聞いている。 個体により大きさは異なるが、だいたい高さ3センチ未満程のサイズで、いずれも背中に吸盤が付いている。 これで、ガラスやステンレスなど、表面がつるつるの物にひっつけて遊ぶ事が出来る(よく落ちるけど)。 それぞれに個別名称が付いており、これらは付属のカタログ(現在のミニブックに相当)にて確認できる。 名称は、それぞれ「菌」または「キン」という単語が含まれており、スタンダードな「バイ菌」から、「バイキン大王」「大菌獣」「カリカリ菌」「でめ菌」「キントン雲」など、実に様々なものが存在する。 もちろん、ストレートすぎる「うんち菌」「おなら菌」などというものも存在し、こういうのが好きなおガキ様のハート鷲掴み状態だ。 このカタログにはそれぞれの菌の個別説明が記されており、その内容も、なんとも言えない味わいがある。 また、発売時期によって成形色や塗装(なぜか銀色のスプレーがかけられていたり)にバリエーションが存在したりする。 コレクターにとってはこの成形色違いというのも重要で、たとえ同じバイキンでも、色が違えばまた別の価値を見出している。 当然、スプレーカラーが異なればまた違うものになる。 もちろん、それは当時集めていた子供達の感覚の延長である事は、言うまでもない。 その後、このバイキン軍団は他の塩ビ人形商品とは違う独自路線を突っ走り始める。 背中に付いていた吸盤を真下(両足の間)に移し、砲塔のあるべき部分に穴の空いた戦車の塩ビモデルに搭乗させられる「戦車軍団シリーズ」というものが、後に発売される。 これは、別商品の塩ビ戦車の車体部分のみを流用し、バイキン軍団の吸盤を穴にねじ込む事で合体できるというプレイバリューを追加したものだ。 当時、まだガシャポンは「一つのカプセルに複数の商品が入っている」という事は稀だったせいか、バイキンと戦車が別々にカプセルに入っていたりした。 そのため、バイキンばっかり出て戦車がほとんど出ないという者や、その逆の者が出現し、それぞれを補うために交換が行われたりした。 バイキンと戦車が一緒になった販売形態もあったような記憶があるが…この辺はちょっと自信がない。 もちろん、この戦車も決してリアルな造形ではなく、相当チープなデフォルメが成されたものだったが、当子供達にしてみれば充分立派なスケールモデルで、とても重宝したものだ。
さらにその後、今度は「暴走族シリーズ」というものが登場した。 これは、すべてのバイキンが新造形となり、足が延長され、別のバイクに乗せられるようになったものだ。 中には、ヘルメットを被っていたり、顔全体が大幅に変わったものもある。 バイク本体は塩ビ性ではなく、プラ製の簡素な組み立て済みのもの。 どちらかというと、昔懐かしいポケバイ的な印象を与える造形だ。 もちろん、タイヤもきちんと回転する。 ハンドルを握る事はさすがに出来ないので、搭乗と言ってもただまたがるだけなのだが、これによりさらにプレイバリューが増加したのは間違いない。 このシリーズも、バイクは別商品の流用だったようで、なかなか面白い再利用(?)である。 このシリーズ発売当時、世間では暴走族(いまだにこういう呼び方されてるけど、なんか違和感あるなあ…)が社会問題となり始めていた。 だが反面、暴走族という存在にある種のカタルシスみたいなものが見出されているような時代でもあった。 そのため、プラモデルやキャラクターグッズ等でも暴走族をモチーフにしたものが多く流通し、このシリーズも、その一貫として世に出た物なのではないだろうか。
その他にも、筆者は手に入れられなかったのだが「夏まつりシリーズ」という、射的を模したシリーズ(吸盤位置は2タイプ混合だったらしい)や、「軍人シリーズ」という武器持ち・ヘルメット装備の新造形シリーズ、またほぼ完全に全体を作り直したと思われる「ヘッドフォン族シリーズ」などがあった。 また、商品形状はまったく違うのだが、バイキン軍団の絵柄入りベーゴマや、投げると壁にべったりくっつく「ぺたぺたシリーズ(?)」なるものもあったらしい。 こうして見てみると、全部ひっくるめたらかなりの商品数になる。 想像以上に大規模なシリーズだったという事だろうか。 …と、締めようとしたのだが、まだシリーズが存在している事を思い出した。 実はこのバイキン軍団、95年頃に突然復活した事がある。 この先は「バイキン缶シリーズ」という名称で、4個の新造形バイキン人形を4つほどまとめ、これを軟質プラ製の缶詰に押し込み、100円ガシャポンとして販売したのだ。 缶詰を開けるとバイキン…という、考えようによっては、むちゃくちゃ怖いシチュエーションだ。 この時のものは、材質が現在よく利用されているような硬めの塩ビになり(正式材質名失念)、あの独特の質感がなくなってしまった。 また、このシリーズのものはなぜか手にマイクを持っており、そのため別名「カラオケシリーズ」とも呼称された。 腕がないものには無理矢理腕を付けていたり、中にはなぜか足が長くなった(暴走族のとはまた違う形状で)ものがいたりする。 今野産業さんのお話によると、この発売当時はカラオケが市民権を本格的に得始めた頃でもあったので、シチュエーションとして組み込んでみたという事だ。 【当時を振り返っても、知らない人多数】
しかし、1980年当時リアル小学生だった人達の中にも、「バイキン? 何それ?」という人はかなり多い。その頃、ガチャガチャにハマっていた人達の中にも、結局バイキン軍団と出会う事がなかったというケースが大変多いように見受けられる。 現に、筆者と世代の近い人達に色々聞いて回ってみたのだが、誰一人として知っている人がいなかったほどだ。 なんでなのだろう? これは、当時のガチャガチャ事情を考察すると、なんとなく解答が見えてくる。 80年前後、恐らくガチャガチャ(ガシャポン)の第一次絶頂期とも呼べる時代は、現在ではとても想像できないほどに混沌としていた。 とにかく、真っ当なブランド商品の比率は少なく、無版権物や無認可パチモノ商品が渦巻き、本家の知らぬところで別バリエーションが作られていたりもして、どこまでが正規品なのかよくわからない状態になっていたのだ。 現在のように、メーカー名やブランドが確立している200円フィギュアガシャポンなどとはまったく異質な、まさに対極に位置するような状況である。 もちろん、今でもノーブランド的チープトイガシャポンは無数にあるが、当時はこんなものではなかったのだ。 そのため、物凄い数の商品シリーズが存在し、それぞれにファンが付いた。 火のつかない、ただ火花が出るだけのライターとか、覚えている人はいないだろうか? ひょっとしたら、全国的に大失敗した商品が、ごく一部の土地だけで大ブームとなっていた…などという事態もあったかもしれない。 そんなノリで、この「バイキン軍団」も、全国規模で見た場合、さほど大きく広まったというものではなかった…のかもしれない。 さすがに、断言はできないのだが。 ともあれ、この時期の各ブームは大変デリケートで、ほんの数ヶ月経過しただけで人気の対象が入れ替わったりしていた。 そんな中で、何年も人気を維持するのは大変な事で、いかにウルトラ怪獣消しゴムが異質な存在であったかが伺える。 現在のガシャポン事情を舗装道路にたとえるなら、当時はまちがいなく未舗装道路・砂利道・獣道と言えるだろう。 そんな状況だから、この「バイキン軍団」を知らない人が大勢いたとしても、まったく不思議ではないだろう。 筆者にしても、これ以外どこまでガチャガチャ商品を把握しているものか、まったく自信がないのだから。 あ、コスモスの自販機はすごーくお世話になったからよく知ってるけど。 でも、「バイキン軍団」を知らないという人達も、ここで紹介した画像などを見て、なんとなく当時の雰囲気を思い出してくれるかもしれない。 そんな気がしてならない。 【2004年・復刻版!!】
ところでつい最近、再び「バイキン軍団」が復刻された!実際は、これまでもユージン(SRシリーズなどのガシャポン製作会社)製ガシャポン玩具のハズレ景品という形で、時々混入されていたというのだが、今回のは大元・今野産業自身が売り出す完全オリジナル復刻商品! さすがに全種復刻とまでは行かなかったが、全24種類(内2種類バリエーションあり)、「カラオケシリーズ」を中心として「軍人シリーズ」「暴走族シリーズ」が混在している。 バイクまではないけれど。 今野産業さんに直接伺ったところ、これらは現状回収できた原型のすべてを使用したものらしく、残念ながら今回復刻されなかったものは、原型が散在してしまっているそうな。 う〜ん、大変もったいないお話。 誰か、腕の良い職人さんが原型単位で復刻してくれればいいのだが(なんて他力本願な!)。 ちなみにこの復刻シリーズは、100円カプセルに4個混入&ミニブック付きで、ミニブックのバイキンカタログの解説は、なんと当時の文面そのまま! (ビールス菌の絵が、なぜか下くちびる菌の絵になってしまっているのが惜しいけど) 残念ながらこの復刻はあまり需要がないそうで、あまり出回っていないとの事だから、もしどこかで見かけた場合、鬼回ししておく必要があるかもしれない。 もちろん、筆者も数千円分回しておいた。 …それでもフルコンプ、たったの1セットだけだよ…(泣) この復刻版は、初期シリーズに用いられた素材と良く似たものを使用されており、あの懐かしいフニフニ感がきっちり再現されている。 それだけでも、大変おいしい! また、ものすごくモールドがシャープなものもあり、過去の復刻に比べてかなりグレードが高くなっている。 さすがに成形色は6種類程度しかなく、またスプレー塗装もないが、当時大好きだったという人は、是非とも大人の財力に物を言わせてガンガン回していただきたい。 そして、売り上げを高めることが出来たなら…今野産業さんは、また新たなリアクションを起こしてくださるかもしれない!? このシリーズ、すでに今野産業社内でも知っている人が少なくなっているようだが、社長がとても思い入れている商品だという事なので、今後もなんとか発展していって欲しいものである。 この夏に開催された「ワンダーフェスティバル」では、バイキン大王のソフビがガーガメルより発売されたくらいだし。 これからも注目する価値があるかも…わからない! 【緊急事態!! 驚異のイベント開催!】
…などと書いていたら、さらに驚くべき続報が飛び込んできた!なんと、来る11/20・21の土日、原宿「GREY」にて、ユージン主催の「バイキン軍団個展」が開催される事になった! ええ、もちろんネタじゃないです。 当時の商品や、今となっては貴重な品々を展示する他、会場限定の特別版「バイキン軍団」ガチャガチャの販売もされるとの事。 これは、ファンなら是非駆けつけなければなりますまい!
いやあ、現物を親に捨てられ、枕を涙で濡らしてから早や24年…まさかこんな時代が来ようとは! ホント、21世紀というのは素晴らしい時代ですなあ(遠い目)。 過去に失われたものが、突然帰ってくる喜び。 忘れかけていた懐かしい思い出との再会…そんな素晴らしいものに出会うため、筆者も、当日は会場に駆けつけて鬼回しさせていただく予定。 皆さんも、是非ご参加を! なお、この「復刻版・バイキン軍団」は、11月現在、高円寺のスラッシュアウト、秋葉原のガシャポン会館に置かれています。 それ以外の場所にもあると思いますが、あえて駄菓子屋などを探してみるのもいいかもしれませんね! 筆者より:
2007年から、「人生に玩具あり2式」にて、バイキン軍団のレビューページを掲載しています。2011年現在、初期シリーズ全42種をはじめに「戦車部隊」「暴走族」「復刻版&イベント限定版」を取り扱っています。 ご興味のある方は、是非こちらよりご覧ください。 今回の原稿執筆にあたり、「趣味人」(2011年現在サイト消滅)のハマール様より、当時の品物や各種情報をご提供いただきました。 また、今野産業株式会社様より、大変貴重なお話を伺わせていただきました。 心より感謝いたします。 |
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