第119回 ■ バンダイ S.H.フィギュアーツ「サイドマシーン」

2014年12月7日 更新

 

 「人造人間キカイダー」は、一部の噂によると、平成ライダーの放送枠の次作候補として過去何度も名前が挙がっていたとかナントカ。
 それがどこまで本当の話かは知る由もないのですが、2014年5月24日に、ついに「キカイダーREBOOT」として劇場公開されました。
 その関連で、新キカイダーもきっとフィギュアーツ化か……と思ったファンも多かったかと思いますが、意外や意外、商品化決定したのは、なんと昭和のキカイダーの方と、サイドマシーン!
 一体なぜこんな嬉しい展開が始まったのか全く不明ですが、昭和特撮ヒーロー好きには願ってもない機会です。

 というわけで、今回はキカイダーとサイドマシーンをレビューいたします。
 諸事情により、サイドマシーンをメイン、キカイダーをサブ的に扱っていますが、それぞれ全く別な時期に発売されたものですので、予めご理解願います。

 ……って、ただ単に出し遅れただけなんだけどね、キカイダー。

▲ TOP ▲

■ S.H.フィギュアーツ サイドマシーン

 

 2014年5月23日〜8月27日まで、「魂ウェブ」上にて受注受付。
 2014年11月17日配送開始(24日頃到着)。
 同時配送物は、下記参照。
 2014年11月のラインナップは、以下の通り。

  • 11/17(配送開始日)「ブロリー(ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない 他)」「仮面ライダーファム(仮面ライダー龍騎)」「仮面ライダー電王ウイングフォーム」 (すべて魂ウェブ限定)
  • 11/21(配送開始日)「仮面ライダー武神鎧武(仮面ライダー×仮面ライダー 鎧武&ウィザード 天下分け目の戦極Movie大合戦)」(東映ヒーローネット)
  • 11/22 「仮面ライダー鎧武 極アームズ」
  • 11/29 「バットマン (INJUSTICE ver.)」「ジョーカー (INJUSTICE ver.)」

 交換用ハンドル一組付属。
 シール一枚付属。
 台座などのオプションはなし。
 価格は税込6,480円。

 

 サイドマシーン。
 キカイダーの愛車で、飛行・潜水能力を持つサイドカー型のスーパーマシン。
 第一話からの登場で、普段ジローが搭乗しているサイドカーが、チェンジ(変身)に連動して変型する設定。
 ただし、変型前は市販のオンロードタイプのバイクにサイドカー部分を増設した物を使用していた上、サイドカーの形状も接続位置も違っていた。
 特撮作品車両全体の中でも、大変珍しいカラーリングと形状で、膝で下半身を支えるようなライディングスタイルになる。

 

 サイドマシーンは次作「キカイダー01」でも登場しているが、その際は変型機構はなくなり、ジローの姿でもサイドマシーンをそのまま運転している。
 これは、通常形態のサイドカーとして使用されていたものが、01=イチローの搭乗する「ダブルマシーン」に改造されたという制作上の都合があったため。

 サイドマシーンの撮影用車両は、普通の路上で通常の走行を行うにも、慣れていないとまっすぐ走らせることすら難しい上、バイクアクション時には他のバイク以上に大きな体重移動が必要だったとのことで、OP映像からもその苦労の一端が窺い知れる。

 

 サイドマシーンのベース車は、1970年モーターショーにてカワサキが発表した未来車をイメージしたコンセプトカー「カワサキマッハIII500 GTスペシャルサイドカー」で、本来のカラーは白。
 本作のバイクスタント担当の室町健三がカワサキから借りてきた物を、全面塗装&リアウィング増設してこの形状にした上、貸与時の条件を破って荒地での走行を派手に行ったため、返却時にはカワサキとの間で些かトラブルが発生した(という)エピソードは有名。

 

 さて、サイドマシーンです。
 サイドマシーンは、本放送当時から非常に人気が高く、「仮面ライダー」のサイクロン号や「ロボット刑事」のジョーカー等と並び、「ポピニカ」の初期ラインナップにも加わっていました。
 いわば、東映昭和ヒーローマシンの代名詞の一つとも云えるわけです。

 

 その特異なフォルムとカラーリング、レトロフューチャー感の組み合わせが独特の魅力を感じさせるため、40年以上経つ現在に於いても好きな人にはたまらないマシンなのです。
 それが、まさかのフィギュアーツ化ですからねぇ。
 ホント、素晴らしい時代になったもんです。

 

 サイドマシーンの商品化情報は、4月22日にネット上で広まりましたが、ソース元は「フィギュア王」の早売り情報だったので、公式には本書の発売日と言っても良いかもしれません。
 この時は、キカイダーの発売情報と併せて「企画中」という触れ込みでした(ハカイダーの企画情報もあり)。
 2014年5月10日に、東京・秋葉原で開催された、バンダイコレクターズ事業部「魂の夏コレ2014」にて、キカイダーとハカイダー(この時点ではまだ参考出品)と共に参考展示されたのが、立体物としては初でした。
 その後、実商品情報は、予約開始前日辺りから広まり、これで商品化確定となりました。

 

 サイドマシーンは、ポピニカ以外にも様々なブランドで何回か商品化されています。
 タイヨーのラジコンや、ノスタルジックヒーローズの懐合金などが有名です。
 また、S.I.Cシリーズでも(アレンジ物ではありますが)商品化されており、またガシャポンでも「カプセルポピニカ」で登場しています。
 その他、プライズ品でパチ物的な商品もいくつか出ているという話ですが、そちらはあまり詳しくわかりません。
 今回、そこにフィギュアーツが加わったわけですが、所謂1/12フィギュアに絡められるサイズのものが少なかった(なかった?)ため、そういう意味でも、今回の商品化は大変貴重と云えます。

 

 それでは、フロントビュー。
 サイドカー付きですから、バイクモデルなのに幅があります。
 ハの字に傾いたハンドルが、特徴的です。

 

 リアビュー。
 ナンバープレートも、劇中のものを上手く再現しています。

 

 サイドビュー。
 極端に低い車高と縦長のフォルムが、やたらスピーディさを感じさせます。
 ライトサイドから見ると、サイドカー部分のボリュームの大きさが、改めて分かります。
 ちなみに、ベース車は公証180km/hだったそうなので、見た目の印象よりは遅めだったようです(当時の基準はよくわかりませんが)。

 

 その他、様々な角度から。
 本当に美しいフォルムで、見るほどにうっとりします。
 なお、本体は塗装ではなく、成型色です。
 こう書くと安っぽく思われるかもしれませんが、表面に目の細かい梨地加工(のようなもの?)が施されているので、意外に質感が高まっています。
 塗装にしなかった理由は、多分色移り対策なのではないでしょうか。

 

 フロントカウルアップ。
 大型の丸一灯ライトに、楕円形のフードが付いた独特の形状を見事に再現しています。
 フード縁の固定具も、カウル部の模様も、塗分けシッカリ。
 前方下部に向けてしなやかに垂れ下がるような形状のカウルは、実車画像と比較しても違和感をまるで感じない仕上がりです。
 尚、実車は右ハンドル部からアクセルワイヤーが二本カウル脇に飛び出して弧を描いてるのですが、さすがにそこまでは再現されていません。

 

 前輪部アップ。
 サスペンションやドラムブレーキなども、精密に再現されています。
 そして何より驚きなのが、今回、タイヤが全てゴム製です。
 勿論、サイドカーも同様。
 ゴムタイヤ使用玩具に激しい恍惚感を覚えるマニアには、ヨダレダラダラ物の感動です。
 経年劣化? そんな先のことはキニシナイ!!

 

 エンジン部アップ。
 質感の高い、これまた良く出来た部位です。
 エンジン周辺の奥行きを感じさせる構造が、実にたまりません。
 さらに、後輪駆動用のチェーンが、この位置からしっかり伸びているのが素晴らしいです(色はともかくとして)。
 クラッチカバー部分に本来ある筈の文字(ロゴ?)は、後述するシールで再現されます。

 

 バイク本体とサイドカーの合間。
 画像の中央左から飛び出ているのは、エンジンをかけるためのキックペダル。
 画像中央下部にあるのは、搭乗者の右すね部分が乗るニーレストです。

 

 後輪部とニーレスト左側アップ。
 先で触れたチェーンが、エンジンからちゃんと繋がっています。
 ペダルといいホイールといい、マフラー口の内部といい、ここまでやるかと思うくらい作りこまれています。
 尚、フィギュアーツバイク恒例の後輪サスペンションは、今回はありません。

 

 エンジン部右側を、別角度で。
 ベース車には、右ハンドルの末端からバックミラーが生えていたのですが、サイドマシーンでは取り外されていました(当然、今回もありません)。
 キックペダルは一見動きそうですが、「新サイクロン号」同様、非可動です。
 無理に動かして、ヘシ折らないようにしましょう。

 

 フロントカウルと一体化している、アナログスピードメーターとタコメーター。
 盤面はシールで再現ですが、これは最初から貼られています。
 ハンドルグリップのモールドが美しい……

 

 サイドマシーンのウィンカーランプは、面白いところに付いています。
 左側のものは、なんとハンドルの端にあるのです。
 本商品では、クリアパーツで再現されていますが、直径約4ミリ程度の小さいパーツにも関わらず、きちんと銀縁も塗装されています。

 

 このウィンカーパーツは、取り外しが可能です。
 こういう構造じゃないと、グリップを握らせにくいためなんですが。
 くれぐれも、なくさないように注意が必要ですね。

 

 サイドカー部分。
 右ウィンカーランプはクリアオレンジのパーツで、こんな所に付いています。
 これだけで、全長約15センチ、全幅約6センチ(タンク部除く)という、かなりの大きさを誇ります。
 実車でも、光明寺マサルとミツコが同時に搭乗したりしていたので、かなりの大きさがあったようです。

 

 そうなると、サイドカーに何か別なフィギュアを乗せてみたくなるのが人情というものですが。
 手元にあったフィギュアーツ「セーラーヴィーナス」を乗せてみたいと思います。
 ご覧の通り、かなり脚が長くてしかも(短いとはいえ)スカートも付いているため、一見乗せ辛そうに思えますが。

 

 バッチリ乗れました。
 もっとも、後ろ髪がリアウィングに干渉するので、そっちが厳しかったですけど。
 ちなみに、サイドカーの中では特に脚を曲げたりはしていません。
 まあとにかく、これくらい余裕があるということです。
 ネタアイテムとしても重宝しそうな予感がします。

 

 直径約3.8センチ、太さ約1.1センチ(設置面のみ)という、極太のゴムタイヤ。
 ホイールも、当時よく見かけた一般的なものを再現した造型になっています。
 この、今やレトロになったホイール、好きなんだよなあ。
 意外に立体化の機会も少ないし。

 

 サイドカーのリア部分アップ。
 本当なら、メッシュ部には「MACHIII 500」のエンブレムがあるのですが、今回はオミットされています。
 シールにも該当するものはありません。
 ブレーキランプはクリアパーツ。

 

 今回は、なんとなくシャーシ側の画像なんかも。
 三本のマフラーの構成が見事です。
 実車のシャーシ側の構造資料がないので、比較は出来ませんが、普段見えない部分なので、そこまで細かく比較するのも野暮かなという気もします。

 

 改めて、キカイダー搭乗。
 一見簡単そうですが、実は結構乗せるのが難しいです。
 キカイダーの体勢を、サイドマシーンに覆いかぶさるようにする必要があったり、手前に向かってハの字に開いているハンドルを握らせるため、手首の角度を微調整しなければならなかったり。
 あと、ニーステップに脛部分を置きながら下半身の位置を決めるのが面倒だったり。
 慣れればなんてことないのですが、従来のバイク型に乗せるのとは訳が違うので、出来るなら撮影用スチールなどを見つつ搭乗ポーズを調整した方がいいかもしれません。 
 (通常の場合、キカイダーの胸下辺りがタンクに接触するくらい低姿勢になります)

 

 キカイダー搭乗時は、股間の引き出し関節をフルに使用します。
 そのため、この角度からだと些か不恰好にも思えてしまいますが、これは仕方ないかと。
 あと、尻がシート部分に触れてないのでキチンと乗れないのか! という人がたまにいますが、この構造の場合は引き出された太股の付け根辺りが尻肉に相当するので、これで限界なのです。

 

 キカイダー搭乗状態のフロントビュー。

 

 リアビュー。
 キカイダーの足裏が、ちゃんとペダルにかかっているのがわかります。

 

 サイドビュー。
 バイク本体にかなり密着するライディングポジションです。
 実際は、もっと腕を伸ばして腕立てするような姿勢で搭乗することも可能なんですが、やはりこの体勢で乗せないと、キカイダーという気がしません。

 

 左ニーレストに、キカイダーの左脛が乗っている状態。
 実際は、股関節の構造の都合上、若干膝が浮くような感じになるんですが、ニーレストに隠れるので、さほど違和感は覚えずに済みます。

 

 サイドマシーンの後輪部は、個体差で垂直になっていないものがあるようです。
 この撮影に使用したものも、若干傾いている感がありますが、個人的には許容範囲。
 でも中には、ちょっとこれは酷いというくらい傾いている個体もあるようです。

 

 キカイダーの手首は、ハンドルを握らせる時は軸を横に傾ける必要があります。
 ただ、そうすると手首を上げる事(グリップを捻った動作)が不可能になるため、劇中のスタイルと同様にするのは難しいです。

 

 同じく昭和のヒーロー「仮面ライダー新1号」&「新サイクロン号」と共に。
 当時のスチール写真では、キカイダーと新1号がコラボしているものがいくつかありましたが、これで好きなように絡ませることが可能になりました。
 しかも、各マシン込みで!
 これはかなり燃えるものがあります。

 

 本商品付属のシールです。
 今回は、タンポ印刷によるロゴのプリントなどはなく、ユーザーが自分でシールを貼るスタイルになります。
 シールは貼らない主義ですので、本ページでは一切使用しておりませんが、これを用いればより雰囲気が高まりそうですね。
 シールの貼る位置は、説明書に記述されています。

 

 フィギュアーツ・キカイダーシリーズのパッケージアートは、各キャラまたはメカの特徴的な部分のみを、単純化した絵で表すスタイルとなっています。
 ですが、正直なところあまり良いセンスとはいえず、逆に玩具商品のパッケージとしてはマイナスイメージが強まってしまいます。
 裏側は、製品写真(実際は試作だろうけど)を加工してコントラストを高めた画像を用いていて、そちらはなかなか渋いのですけど。
 なんでまた、こんな珍奇なデザインにしちゃったのかなあ……

 とはいえ、それでも「KAWASAKI」のロゴは外さないセンスに、ちょっぴりときめいたりもしています。

 

 以上、サイドマシーンでした。
 引き続き、「キカイダー」のレビューに参ります。

▲ TOP ▲

【買ってみて一言】

 

 キカイダー好きなら、買わないという選択肢はありえない。
 個人的にそう断言したいほど、今回のサイドマシーンのクオリティは高いです。
 確かに、プレイバリューといったらキカイダーを乗せるだけで、それ以外に何もないのですが、その「キカイダーが乗った姿」こそが、あらゆる諸問題を無に帰す。
 それくらいの魅力がある気がします。
 個人の思い入れをあえて外し、出来るだけ客観的に評価しても、想像以上に作りこまれた細部の表現や、こだわりを感じさせる各部のボディライン、バランス等は、かなりの高評価です。
 確かに、後輪傾き問題や、本体が成型色そのままという気になる点もなきにしもですが、後者についてはむしろ塗装じゃなくて正解と感じますし(先の通り、癒着が怖いから)、逆に安っぽくなりがちな黄色の成型色を、よくぞここまで落ち着いた形に整えたものだと感心してしまうほどです。
 また、サイドカー部分を利用して色々ネタ的な遊び方も楽しめるという、俺的プレイバリューもあり、本当に素晴らしい出来栄えです。
 バイクの形状の都合で、キカイダー以外だと限られた可動フィギュアしか搭乗させられないのがネックではありますが、それは本来求められるプレイバリューではありませんから、しょうがないかと思います。

 

 とにかく、想像を超える出来の良さ、あらゆる意味での安定感、そして「名車」としての佇まいは、フィギュアーツバイクシリーズの中でも特筆モノです。
 WEB限定品のため、今からだと中古業者かオークションでしか入手出来ませんが、もし予算が許す範囲でチャンスがあれば、キカイダー好きは是非とも手に入れてみてください。

 個人的には、ポピニカ版と懐合金版を入手しそこねた溜飲が、これでやっと下がりました。

「人生に玩具あり 2式」トップページへ戻る