第7回 ■ バンダイ 「DX魔神合体マジキング」 4.魔神合体マジキング

2005年3月7日 更新

●「魔神合体!!」

 いよいよ、メインのマジキングへの合体。

 合体プロセスは「ダンクーガ」的イメージが感じられるものの、実際のギミックはまったく似ていない。
 基本形は、マジタウロスに他のマジマジンが合体していくというスタイルになっている。

 マジフェニックスの両肩&両腕を前方にスライドさせ、肩の隙間にマジフェアリー(マジドラゴンの頭部形態)を挟み込む。

 次に頭部を胴体内にしまい込み、両脚を真横に折りたたむ。
 本来肩のあるべき位置に、足の裏が来るような形になるわけだ。

 これで完成するブロックが、そのままマジキングの胸部になる。

 マジマーメイドを、またまた二枚におろそう。

 頭部を収納したら、つま先を真横に向けて直角に折り、マジキングのつま先とすねを構成する。

 マジガルーダは、マジドラゴン合体時の形態に整え、首になっていたパーツを折りたたむ(元に戻す)。

 ここまでは、よくありがちな普通の変形なのだが、ここからのマジタウロスの変形がすごい!

 まず、背中を中央から割り、左右のブロックを外側に回す。
 その結果、タウロスの腕が肩ごと前方に向けられるわけだが、なんと、この状態から「腕と(半分に割った)胴体を合体」させて、新しい腕を作り出す。

 つまり、タウロスの胴体がマジキングの腕の前面部になり、タウロスの腕が後面部になるわけだ。
 その後、タウロスの手首を回転させて取り出した「マジキングの拳」で、腕全体にロックをかけて結合する。

 これで、タウロスの二倍くらい太い、立派な豪腕が完成する。

 次に、両脚をまっすぐ引き伸ばす。
 今度は、マジドラゴンの時のような折り曲げ状態ではなく、完全に引き伸ばす。
 タウロスのつま先が膝小僧裏側の位置までぐるりと回り込み、ドラゴンの爪にあたる部分がかかとに来る。
 この爪部分、マジドラゴン時とは「足の裏」になる面が変わっている事に注目。

 この状態にすると、タウロスの脚の裏側がスカスカになるが、ここにマジマーメイドの変形した「すねとつま先」が合体して足になる。

 開かれたタウロスの背中は、当然ポッカリ空いているので、ここに先のマジフェニックス&フェアリー変形ブロックを合体させる。

 続けて、ドラゴンの時と同じ場所にガルーダを接続する。

 最後に、タウロスの角を重ね合わせ、マジキングの頭頂部を形成する。
 この時点で、タウロス頭部の裏側にあるマジキングの顔は、帽子を真深に被ったような状態になっているので、クイッと(←ここ重要)引き上げてやる。

 これで、マジキングが完成。

 武器は、各マジマジンの武器をすべて合体させた「キングカリバー」。
 寄せ集め系武器にしては、なかなかのデザインとインパクトがある。

 マジキングの高さは約27センチ弱、肩幅約16センチ強(翼長はマジドラゴンと同じ)。
 先に紹介したマジドラゴンとまったく異なるデザインラインに、驚愕させられる事必至。
 とても、同一体とは思えないほどの変わり様だ。
 よくもまあ、こんなにとんでもないデザインとギミックを考え出したものだと感心させられる。
 マジキングを完成させると、そこまでの合体行程の凄さを、あらためて思い知らされる。
 いやホント、一つの玩具商品をいじって、これほど感無量だったのは、ひょっとしたら初めてだったかもしれない。
 「超合金魂」のように、途中で「作業」しているような感覚にならないというのも素晴らしい。

 筆者は、これまでほぼ一通りの戦隊ロボをいじってきたが(例外はメガボイジャーだけだったかな?)、合体変形についてここまで感激させられた戦隊ロボ玩具は、はっきり言ってなかったと思う。
 もちろん、それぞれのロボには独自の魅力があるので、一概に比較するのは間違いなんだけど。
 とにかく、純粋に「いじり倒す事を楽しむ」という意味では、今のところかなり上位に食い込むアイテムだと、筆者は強く信じている。

 ただし、マジキングにも当然問題点がある。
 ある程度の問題は、どんな玩具にも含まれているものなのだが、マジキングのは「いくらなんでもこりゃないだろ」というものが多く、もしこれが今よりちょっとでも改善されていたら、より素晴らしいものになっただろうと思わされる事ばかりなのだ。

 まず、全体のプロポーションの問題。
 マジキングは、凄まじいほどのハト胸の上、真正面以外から見た際のスタイルが、かなりとんでもない。
 ハト胸といえば、以前にも「ファイブロボ」などがあったが、このように「胸ブロックをボディにはめ込むタイプ」の合体ロボは、どうしても上半身のボリュームが過剰になる傾向があり、今回もそれは見事に踏襲されてしまった。

 また、腕があまりにも短すぎるというのも、酷すぎる。

 先の通り、腕構成の変形ギミックは素晴らしいのだが、結果的にマジタウロスの上半身分の長さしか確保できないため、どうしてもこのような寸足らずになってしまうのだ。
 もし、腕を今よりもっと長くしたなら、今度はマジタウロスの胴体が無駄に長くなってしまい、結果としてそれはマジキングの体格にはね返ってしまう。
 そう考えると、この長さで甘んじるしかなかったのはわかるが…それでも、ねえ。

 ロホット同士が合体して、さらなる巨大ロボットになる場合、腕のボリュームをどうやって稼ぐかというのは、昔から大きな課題だった。
 バクリュウオーの胴体全体を腕に被せて、無茶苦茶な豪腕にしてしまった「ゴッドライジンオー」や、開き直ってノーマル時の腕をそのまま流用する「スーパーガーディオン」「グレートゴルドラン」、ノーマルの腕にちょっとした追加武装をくっつける「ファイヤージェイデッカー」や、まったく別なパーツを引っ張ってきて、新しい腕をでっち上げる「スーパーデカレンジャーロボ」など、他にも様々な手法が存在する。
 だが、どんな増加パーツにも頼らず、自分の身体だけで腕をボリュームアップさせるというパターンは、意外に例がない。
 そういう「あらたな試み」の果てに、本来もっとも重要な筈の「リーチ」が犠牲になってしまったというのは、とても複雑な心境だ。

 世間的には、今後登場する二台目ロボットなどの登場・スーパー合体によるボリューム&リーチアップが期待されているようだが、現状この腕部分だけを見る限りだとパーツ追加によるリーチ確保は難しいようだ
 これならむしろ、新しい腕をでっち上げた方がいいくらいだ。

 だが、ここまで意外な変形・合体プロセスを盛り込んだマジキングなのだから、合体によるパワーアップについても期待する価値は大いにあると思う。
 …合体するなら、という条件が付くけど。

 もう一つの大きな問題は「翼」だ。
 これ自体はかなりかっこよく、かなりの個性を発揮している事は間違いない。
 決して無駄な部分だとは思いたくは…ないのだが、やっぱり横幅を取りすぎている感は否めない。
 もちろん、マジガルーダの脚部によるロックを外せば、ウイングガンダムのような理屈で背中に畳む事ができるが、そうやって考えると「なぜ脚でロックをかける必要があるのか」という根源的な疑問が出てくるのだ。
 実際、ロックを外してもプレイバリューにはまったく問題がない。
 翼にしても、ロックがなくなった事でプラプラしてしまう事もなく、関節強度はしっかりしているのだ。
 しかし、ロックを外して用のなくなったガルーダの両脚がマジキングの背中からブラ下がっている光景は、ちょっとみっともない。
 ならば、いっそガルーダを取り外してしまえば…

 そう、それでもマジキングとしてのスタイルが崩れないというところに、この問題の根深さがある。
 つまり、ガルーダは「いらない子?」という疑問が湧くわけだ。
 マジガルーダは、イマイチ合体しているという実感に乏しい。
 マジドラゴンの時は、竜の外観として重要な「首」を構成していたため、このような印象はなかったのだ。
 だがマジキングには、ガルーダのパーツを借りて表現する「身体の一部」がどこにもないのだ。

 やっぱりロボの背中は、いつの時代も余り物の集積所なのだろうか…

 そして、大問題。
 どうして、キングカリバーをしっかり持たせる事ができないのだろう?

 DXマジキングは、なぜか拳の穴が貫通していないためキングカリバーの柄の尻をちょっとつまむ程度の保持しかできなくなっていて、凄まじい違和感がある。
 せっかく、こんなに長い柄を持つ剣だというのに、これでは台無しではないか。
 しかも、キングカリバーの刃部分がめちゃくちゃごっつい事もあって、端っこしか持てないその姿は激しく涙をそそってしまう。
 強度的な理由、あるいは今後のプレイバリューの事情など、色々原因はあるのかもしれないが、とにかく、この商品単体の中でいかんともしがたい難である事は間違いない。
 むしろ、首を回転させる作業よりも、拳穴を貫通させる作業の方がメリットあったりして。
 でも…この先どうなるかが本当にわからないからなあ…怖くて手が出せないんだよなあ。
 多分、全然関係ないとは思うんだけど。

 各マジマジンは、それぞれなかなか良いフェイスを持っているのに、肝心のマジキングだけは、顔がなんとなくへにょってるのもいただけない。
 なんというか、妙に縦長すぎるような印象があるのだ。
 まるで、顔を無理矢理横から押さえ込まれたかのような。
 頭部全体はいいのだが、顔だけはもう少し良くして欲しかったかなと筆者は思うわけだ。

 マジキングの顔、OPで惚れちゃったから、尚更気になるんだよね。
 まあ、最悪というほどではないからいいんだけど。

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■総括

 「DX魔神合体マジキング」は、過去二年の失敗“一号ロボに電気系ギミックを内蔵”という要素を完全に廃し、純粋に変形合体の妙を楽しむものになった。
 普通に考えると、これは「忍風戦隊ハリケンジャー」の頃の感覚に戻ったのか、とも考えがちだが、実際はそれとも違うようだ。
 本しょうひんは、これまで戦隊シリーズのロボ玩具によくあった「ブロック単位の変形合体」と一見似ているように見えて、実際は「ムゲンバイン」などのような、フリー合体プレイ系のアイテムに近いような印象を受けるのだ。
 実際、「オレ合体」させる事も可能だし。
 マジキングも、一応はブロック単位の変形合体で、五体のマジマジンの変形と組み替えでシルエットを形作るわけだが、合体の位置が大幅に変わったり、別な向きに関節が曲がったり動いたりする事でスタイルを変化させるというプロセスがあるため、単純なブロック合体とは言い難い。
 これは筆者の雑感なのだが、「タイムロボの組換特性」と「精霊王(ガオレンジャー)の外観変化」、そして過去多く存在した「第二合体形態を持つロボ」の要素を全部取り込んで、おいしい部分だけを寄せ集めたものが、今回のマジキングのような気がする。

 とにかく今年は、電飾ギミック等を廃してくれた事を、素直に喜びたい。
 過去何度か書いてきた通り、「爆竜戦隊アバレンジャー」のアバレンオー等や、「特捜戦隊デカレンジャー」のデカレンジャーロボは、胴体を構成するメカに電気系統のパーツが組み込まれるため、どうしてもボディ内部にある程度以上の体積を確保せざるを得ず、そのために大きくシルエットを変える変形・合体が出来なかった。
 スーパーデカレンジャーロボは、それでもかなり頑張った方だとは思うが、胴体を構成するパトストライカーがそのまんまのため、どうしても限界があった。
 電飾はないものの、「ハリケンジャー」の旋風神も、胴体に「カラクリボール収納ギミック」という大スペースを占有するシステムがあったため、轟雷旋風神になる時はこのギミックを裏側に回してしまったりと苦しい処理を行っていた。
 結局、これも大きな冒険は出来なかったわけだ。
 もちろん、もっと以前には「電飾などはないけど、同様の疑問(大きな胴体がほとんど無変化)を抱えているロボ」は沢山あった。
 だがアバレンオーは「腕を回転させる必要性」があり、デカレンジャーロボは「ボディの一部を光らせる必要性」があった。
 そのため、これらを殺してしまうようなパーツ組み換えや増加装甲は付加できないという制約を背負わされていた。
 その結果、造形的には優れていても、プレイバリューに乏しいアイテムが連発してしまったのだ。
 電池箱に四肢をくっつけただけでロボにする、という単純すぎるノリが、二年も続いてしまったわけだ。
 その上で、いずれも価格が高め設定だったのだからたまらない。
 結局、これらは各商品の品余り状態発生という結末を迎えるハメになった(もちろん他の理由もあるけど)。

 以前、DXデカレンジャーロボのレビューでも書いたが、これは番組への思い入れを無視すれば、玩具としては「割高」「つまらない」アイテムでしかなかった。
 各メカの大幅な変形もなく、手足合体分離と武器収納だけしか旨味がなかったのだから、当然だろう。
 もちろん、それでも精一杯の工夫が詰まっている事はわかるし、全面的に悪く言う気はないのだが、こうして見てみると、やはり問題点の方が山積みなのだ。

 閑話休題。
 そこで、玩具の基本「いじってナンボ」に立ち直ったマジキングは、大変新鮮な喜びを与えてくれると思う。
 個人的には、それでもまだ割高感を感じるのだが(7,000円ってのはいくらなんでも…)、面白さについては、本来小難しい弁を用いる必要などない。
 造形的な難や、部分的な疑問点こそあるが、そういったものもひっくるめて、いじってみれば魅力がわかるというアイテムは、戦隊シリーズとしては大変貴重なのではないかと考える。

 DXマジキングは定価こそ高いものの、実際には結構値引きされているようで、そこそこ手軽な価格で入手する事もできるようだ。
 去年のデカレンジャーロボの時もそうだったが、やはり定価が高すぎると、値引きも目立つのだろう。
 そこそこ大きな店にいけば、千円引きくらいは当たり前であるし、通販などを探せば、2,000円近く安く入手できるところもある(ただし送料がかかるが)。
 ちなみに筆者は、送料込み5,200円程度で入手したが、なんと5,000円を割っている直売店もあるそうで、だいたいこの辺りが、実質的な適正値段なのではないかとも感じる。
 いや、決して定価売りを咎めているわけじゃないんだけど。

 最後に、恒例の「未使用ギミック探し」をしてみよう。
 二台目以降のロボットとの合体を匂わせるような、謎のジョイントなどを探すのも、この時期ならではの楽しみ方だ。
 果たして、「ライジンオーの腹の穴」のような、驚愕の謎ギミックは存在するのか!?

 …と言いたいところだが、残念ながらそれらしき部分は、今回あまり見当たらなかった。
 もちろん、筆者が見落としている可能性は大いにあるが。
 ただし、一部のジョイントが、従来の用途とは別なものに利用される可能性は高く、そういう視点で見た場合、怪しい箇所がいくつかみつかる。

 筆者が一番気になったのは、脚部…マジマーメイドの背中にあるグレーのジョイントで、マジキング時には脚の外側を向く部分。
 なんとなくだが、ここに何か別なものを接続できそうな予感がする。
 実際、このパーツは外側に凸形状のジョイントがあるのだが、これは現状どこにも使用される事はない。

 また、「マジタウロスの首元」「同・前垂れの凹ジョイント」なども、別なものを接続できそうな気配があるし、マジマーメイドなども、中に何かを挟みこむ事ができそうだ。
 マジタウロスの頭部が、根元から前方に倒れるのも、単にマジフェニックスを合体させる際に避けるため…とするには、無理があるようにも感じる。
 とはいえ、頭部を前に倒した後は収まり所がまったくないのだが。
 少なくとも、マジキングの胸に別なものが合体するとかはありそうだ。

 いずれにしても、今年もロボット二体以上のスーパー合体があるかどうかわからないわけで、現状はなんともいえない。
 でも、「これをこう使うか!」と思わされるような、意外性の高いギミックが今後登場する事に期待したいと思う。

※結局何もありませんでした。

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