コラム 柏木悠里の徒然ビュー


\:こんなトコロで初期不良…

 無限に広がる大宇宙。
 そのうちローカル線(もちろんSL)型や戦艦型の乗り物であふれかえる予定の大銀河。

 …が、今はまだ、気象衛星や軍事衛星が飛び回るのがせいぜいな、太陽系第三惑星地球のちょっと外側を、移動要塞“ゴールデン・ニッポニア”が浮遊中。
 
 ふよよ。←浮遊音。

▲ドクター博士

ドクター博士(以下、博士):「いい加減、地球に帰るとするか。何だかずいぶん経ったような気がする(実際、4ヶ月も経っている事は忘れるように)」
 
 ピシーン!←モニター起動音。
 
博士:「目的地入力と」
 
 ぺけぺけぺけ。←キーボード入力音。
 
 「移動要塞“ゴールデン・ニッポニア”、日本国新潟県新発田市赤谷村上空へ移動します。妨害・遮断電波の発生無し、高速移動に切り替えます」(声:根谷美智子)

博士:「そりゃ、携帯のアンテナすら立ってない田舎なんだから、妨害電波なんか出ないわな。出てるとしたら毒電波くらいか」

 ぽい、ぽい、ぽぽい。

博士:「ん?」

 不審な音に気が付いた博士の頭上に、赤・青・黄の三色で彩られた包装紙が飛んできた! 
 
博士:「うわ!」

▲ハナモゲラミミズ星人

ハナモゲラミミズ星人(以下、星人):「あ、ごめ〜ん」
博士:「みみずん! 何だこれは!」
星人:「う〜ん、パソコン買ったの。包装紙はいらないから捨てるの」
博士:「ちゃんとごみ箱に捨てなさい!!」
星人:「だって、ダストシューター遠いんだもん」
博士:「ダストシューターに入れれば、自動的にこの要塞を動かすエネルギーとして使えるんじゃから、文句を言うな」
星人:「実は地球に優しいんだね」

 そんな事をつぶやきながら、みみずんはダストシューターへ向かった。
 そのスキに、博士はみみずんの買ったパソコンをながめた。

博士:「秋葉原のショッププランドか。宇宙人にしてはお手頃なモノを買うなあ。それにパソコンなんて、我がゴールデン・ニッポニア内のスパコンの性能に比べたら、月とすっぽんどころか、NASAとタワシ程の差があるのに」
ごみ捨てから戻ってきたみみずん:「だって、スパコンは遊びに使えないじゃない」
博士:「遊び、ねえ…」
星人:「みみずん、こんな三葉虫みたいなパソコン、初めて買ったから、嬉しいなあ」
博士:「…三葉虫…?」
星人:「ステゴサウルスでもいいや」
博士:「時代が随分違うぞ」
星人:「みみずんにとってはおんなじ〜♪」


 一方その頃、前回部屋を片付けてもらってた眼鏡の人:「っかし〜な〜、本棚がどうやっても開かないなぁ〜?」
 ※なお、部屋の中は元の状態に戻っている事は言うまでもない。
 ※また、日本語の文法上、この人は「眼鏡の人」ではなく、「眼鏡をかけている人」のハズだが、誰からも指摘されなかった。
  まあ、わざとだから別に良いのだが。


 閑話休題。


星人:「今、どうでもいい“一方その頃”が浮かんでる幻覚を見ていたよ」
博士:「幻覚かい!」


 またしても閑話休題 ←こら。


博士:「しかし、いつの間にどうやってパソコンを買ったんじゃ?」
星人:「博士が寝ているスキに東京都秋葉原区に行って買ったの」
博士:「人が寝ているスキに、勝手に要塞を動かすんじゃありません(怒)! それに秋葉原は区ではないぞ」

多分今回限り
▲カザミドリウシロムキ星人

星人:「え? そうなの? お隣の星系のカザミドリウシロムキ星人のカタカタ=ヨコムイテル君とかはそう呼んでたのにな」
博士:「待て! 地球の小さい島国のさらに小さい秋葉原が何でそんなに有名なんじゃ!」
星人:「だって、地球の庶民レベルの科学力を量るベスト・スポットって、この『宇宙未開の秘境・探索徹底ガイド』にも載ってるよ」
博士:「う、宇宙未開の秘境…(悲しくなったらしい)」
星人:「博士〜、悲しそうな顔しないで。ちゃんとこの本の編集部に、“秋葉原は区ではありませんでした”って報せとくから」


 余談だが、『宇宙未開の秘境・探索徹底ガイド』は、次の版から「地球星・日本国・東京都・秋葉原市=この星の庶民レベルの科学力を知るのに最適」と直しが入った。
 ※なお、秋葉原は市でもありません、念のため。

博士:「ふと冷静になったんで気が付いたんじゃが…」
星人:「なぁに〜?」 ←パソコンをセットの15インチディスプレイに繋げながら聞いている。
博士:「そのまんま店に入って、よく店員が気絶しなかったのぉ」
星人:「ん? コスプレだと思ったみたいだよ
博士:「何のコスプレじゃ!!」
星人:「第一、秋葉原は、ヘンな人達でいっぱい(←偏見)だから、ぜんっぜん目立たなかったよ


一方その頃、秋葉原某ショップ店員A:「今日さぁ〜、すっげぇコスプレの客が来たぜ」
秋葉原某ショップ店員B:「見た見た! 何だありゃ? 頭イってんのかな?」
店員A:「でも、即金だったから良かったよ。今日売り上げ目標いってなくてさぁ」


 金さえ払ってくれるなら、相手がK○Bだろうが日常ずっとコスプレしているよーな、イカれたコスプレイヤーだろうが侵略宇宙人だろうが、気にしない彼等であった…。


 またまたまた閑話休題。


 かちん。


星人:「あれ〜? つかないや」
博士:「どれどれ、うむ。確かに電源が入らんな」
星人:「ええ、初期不良かな〜」
博士:「まあ、待て。こういう“一見初期不良らしきモノ”はきちんと確認してから店に返さんと、いらん恥をかくぞ」
星人:「例えば〜?」
博士:「例えばじゃ。サポートセンターにかかってくる電話の中の『電源が入りません』というのに、コンセントが…(ちらりとパソコンを見る)」
 
 …見事にささっていないコンセント。

博士:「(コンセントを差しながら)まあ、こういう事じゃ」
星人:「えっ! コードレスじゃないの?」
博士:「こんな安いパソコンがそんな訳無いじゃろ! これだからうちうじんは!」
星人:「うん、確かにモニターセットで2万9800円(税込)だったけど…」

 かちん。
 ぶ〜ん。
←電源の入ったらしい音。


星人:「何も映らないねぇ」
博士:「映らないのぉ」
星人:「やっぱり、初期不良だよ〜」
博士:「まあ、待て。次に考えられるのは、意外にもディスプレイケーブルの接続ミ…」

 …見事に半分しかささっていないディスプレイ接続ケーブル。

博士:「(強く差し直しながら)…接続ミスというか、接触不良じゃな」
星人:「えっ? あれじゃダメなの?」
博士:「うちうじんは甘いのぉ」
星人:「違うもん! 地球人の科学力が低いのが悪いんだモン!!」
博士:「…」


 かちん。


星人:「何も映らないねぇ」
博士:「映らないのぉ」
星人:「やっぱり、やっぱりぃ、初期不良だよ〜」
博士:「まあ、待て。次に考えられるのは、さ〜ら〜に、意外にもディスプレイの…」

 …見事に電源の入っていないディスプレイ。

博士:「(がち! とディスプレイの電源を入れつつ)…みみずん…」
星人:「え〜ん、え〜ん」
博士:「泣いてごまかさんようにな。まあ、確かに本体の電源が入るとディスプレイの電源も同時に入るようには設定できるが、このパソコンはそうなっていないようじゃな」


 シーン。 ←真っ暗な画面。


星人:「何も映らないねぇ」
博士:「映らないのぉ」
星人:「やっぱり、やっぱりぃ、やぁぁっぱりぃ〜、初期不良だよ〜」
博士:「う〜む。ここまでの事はサポートセンターでもサポート担当者からしてみると『落ち着きやがれ、お客様!!』と言いたくなるような話じゃが、よくある事なのじゃ。しかし、ここまでのチェックでダメだとすると…アレ?」

 画面に映る“no system”の文字

博士:「???? このパソコン、OSがインストールされとらんではないか。さすが2万9800円。買う時にセットアップしてもらえばよいのに。どれ、OSはどこかな? 付属品を確認しよう。取説の「中身を確認して下さい」によると…」
星人:「どう?」
博士:「“OSは各自でお好みの物をセットアップして下さい”だ、そうだ(呆)。本体+ディスプレイセットモデルのくせにOSがついてないパソコンって一体…?」
星人:「じゃあ、この秋葉原のゴミ捨て場で拾ったやつは〜?」
博士:「何でそんな物を拾ってくる! 第一、そんな危険なシロモノ…」
博士は、星人の手元のOSを見つめた。

 星人の拾ったOS=MAC用
 星人の買ってきたパソコン=どこからどう見てもWINDOWSパソコン

博士:「…みみずん、これは例え危険じゃなくても、セットアップできんぞ。もっと秋葉原の店員にきちんと確認しなさい」
星人:「だって、OS入ってると思ってたもん…。あっ、『この拾ったOSはこのパソコンに使えますか?』って聞けば良かったの?」
博士:「おまえは某リンゴ社の怖さを知らない…。実はその店員はリンゴ社の回し者で、警察に通報されたり、場合によっては一番高いりんご社パソコンを買わないと許さん! とか言い出すかもしれん」
星人:「ええっ! 宇宙人に弁護士って頼めるかなぁ?」
博士:「そういう問題じゃないわ!」

 文句を言いながらも、どこからか取り出したOS(深く追求しないで下さい)をインストールしてあげる、うちうじんに優しい博士であった。

博士:「まあ、結局、サポートセンターに電話したり、店に返す前に、確認しておく事はけっこうある訳じゃ。もちろん、こちらは客なのじゃから、ささっと返してしまっても良いんじゃが、そういうタイプの人は交換品でもまた同じように、勝手に不良だと思ってしまうじゃろ。チェックする所は簡単な事ばかりなんじゃから(OSインストールはそうでもないケド)、ちゃんとやった方が自分の為…おや?」


 ピー! メモリーエラー♪


博士:「ホントに初期不良かい!!」
星人:「博士〜、どうすればいいの〜?」
博士:「まず、買ってきた箱に入れて…」
星人:「捨てちゃった」
博士:「ダメではないか! 起動チェックが済むまでは箱は取っておくのが地球、特に日本の常識じゃ!」
星人:「え〜? “いらない物はすぐ捨てよう”って、『捨てる! ○術』にも書かれているよォ〜?」
博士:「いらなくないの! ちゃんと電源が入って、OSが起動して2〜3日無事に使えたら、初めていらなくなるんじゃ」
星人:「どうして2〜3日もかかるの〜?」
博士:「一旦、無事起動しても、すぐ電源が入らなくなったり、連続稼働すると調子が悪くなる不良もあるからじゃ」
星人:「ふ〜ん。ところで、どうして“世界の常識”じゃないの?」
博士:「それはじゃな、“コーヒーが熱かったせいで火傷したじゃねーか! コノヤロウ”なんていうのが裁判沙汰になる国で、“箱が無いから初期不良受付しませんわ、ホホホ”なんて言ったら大変な事になるじゃろう」
星人:「世の中には変な国があるね。ちなみにハナモゲラミミズ星では、パソコンはすべてモバイルサイズだから箱なんかなくても大丈夫だよ」
博士:「それはすごいな。で、通信環境はケーブルレスなのか? ちょっと科学的興味がわいてきたのぉ」
星人:「ケーブルレス当たり前だよ! この傾向は半年前からで…」
博士:「おまえ、その頃から地球に来とるじゃろ!」
星人:「だって情報はメールでもらえるもん」
博士:「と、言うコトは、今、端末を持っているな。見せてくれたまえ」
星人:「『全宇宙侵略宇宙人同好会』の決まりで、まだその星に無いテクノロジーはあっさり見せちゃいけないの」
博士:「キャッタンはいいのか、キャッタンは!」
星人:「あれはテクノロジーじゃないもん」
博士:「ええい、もういいから箱!」
星人:「今頃、もうエネルギー」
博士:「…仕方ないのぉ。このみかん箱に入れよう。プチプチでくるんで、さらに梱包材を入れる。梱包材を入れ忘れると、店の人から嫌な顔をされるから、きちんとな」
星人:「わーい、プチプチ」 ←プチプチをつぶし始めるみみずん
博士:「くぉらっ(怒)!
星人:「アレ? つぶして遊ぶ物じゃなかったっけ?」
博士:「そういう用途もあるが、これは本当は梱包材なんじゃ」
星人:「プチプチ」
博士:「やめなさいって、言ってるデショ!」
星人:「遊んでから梱包すればいいのに〜」
博士:「そしたら、梱包材の意味がなくなるんじゃ!! パソコンがますます壊れちゃうかもしれんじゃろう」
星人:「え〜? だってすでに壊れてるのにぃ」
博士:「いいかい、みみずん。店の人はな、これを直してまた売ったりするんじゃ。それに客だからといって、あんまりテキトーにしていると、次からその店で買い物がし辛くなるし、素直に交換して貰えないかもしれんぞ」
星人:「博士はこみゅにゅけーしょんが苦手な割に、気配りの人なんだね」
博士:「梱包材は、新聞を丸めた物や毛布でも可じゃ。特に飛脚急便や暗黒猫便で送る時には厳重にな。飛脚は集荷センターのベルトコンベアーが、高い位置から物を下げて運ぶ構造になっておる所もあるから、大きい物は転がるし、猫便は配達員にお年寄りが多いから平気で落としやが…落としたりするからのぉ」
星人:「地球の宅配業者って…」
博士:「例外は宇宙を股にかけて活躍している…」
星人:「あ、中越運送だ(元ネタがわかった方は、掲示板に『パタリロ!』ツリーをたてて下さいますよう、お願い致します)。この間もアンドロメダ星系辺境の星・ハレトキドキアメ星のテンキヨホウオオハズレ村にもエリアを広げたらしいよ」
博士:「どっちみち、直接持って行くからすごく厳重にはしないがな」

星人:「ところでそのみかん箱、みみずんの机なんだけど」
博士:「みかん箱くらい、いつでも補充してあげるから、我慢しなさい!」
星人:「う〜、じゃあ早く持っていこうよ〜」
博士:「まあ待て。保証書がないんじゃが…あっ!」

 
 再度開かれる取扱説明書「中身を確認して下さい」のページ。“保証書は外箱に添付されています”


博士:「…みみずん…」
星人:「…」


 ゴールデン・ニッポニア号内に、秋の寂しい風が吹き抜けていった…。

博士:「仕方ない、“お買い上げ伝票”かレシートはどこじゃ? とりあえず、それだけでも交換してくれるかもしれん」
星人:「箱の中
博士:「…みみずん…」
星人:「…」


 ゴールデン・ニッポニア号内に、秋の寂しいアンニュイな雰囲気が漂った…。


 …3日後。


博士:「やはり最近の秋葉原は生存競争が厳しいとみえて、“お買い上げ伝票”を偽造しただけで交換してくれた(ニヤリ)」
星人:「そんなコトしていいの〜?」
博士:「当然、私文書偽造の犯罪じゃ。…が、私はいずれ世界を征服する男じゃからかまわんのじゃ。だから善人も悪人も真ん中人も真似しちゃいかんぞ」
星人:「真ん中人…?」
博士:「まあ、素人の皆様はこんな真似するより、店に電話して素直に相談した方が良いじゃろう。店にもよるが、POSレジならばお買いあげ時のデータが残っている事があるからな。それにパソコンは衣料品と違って…」
星人:「洋服がどうしたの?」
博士:「通信販売の返品係の人の逸話ですごいのがあってな。お客様(特におばちゃん)が返品してくる物の中には、明らかに試着レベルではなく、さんざん着用した後で汚れたまま返ってくる事があるらしい
星人:「ふーん。でも、世の中には“使用後返品OK”ってシステムもあるよね、そういうのは仕方ないんじゃないの?」
博士:「…使用済・未洗濯おばちゃんデザインパンティーでもか?」←実際にあるらしい(何か、まさに同じ女性として恥ずかしい…というより、理解不能だわ、これ)


 のように、知的な会話の最中にセットアップ終了〜♪

星人:「わーい! とにかくやっと遊べる〜♪」
博士:「ところで、何をして遊ぶんじゃ?」
星人:「このゲームやるの〜」


 →結果はこちら。


 ※良い子の皆さんは、起動チェックが終わるまで、パソコン等の箱+付属品+保証書+お買い上げ伝票は捨てないでネ! でないとメーカーや仕入れ業者に返せなくなるから! 守ってくれないと、呪うわヨ。
 (某店初期不良返品担当者:柏木悠里)





→NEXT


▲ 結 果