“サンダーウィングと私”
(サンダーウィングに関する体験談・手記等の投稿を随時お待ちしております。
↑ 軍事雑誌「丸」の「零戦と私」かっつーの)
突然ですが、鷹羽氏のオーレンジャーに割り込む形でコラムを書かせてもらう事になりました、“きっか”と申します。
特撮(戦隊シリーズ)は素人同然でありますが、オーレンジャー所属の国際空軍、特に戦闘機“サンダーウィング”については宇宙でも五本の指に入るであろう熱心なファンであると自負しております(笑)。
いえ、そういうマイナーなのはライバル不在だとか、そういう事は置いといてですね、国際空軍やサンダーウィングについて妄想を交えて語らせて頂く事になりました(ドキドキ)。
それゆえに、極めて限定的な内容になりますので、あらかじめご了承ください。
サンダーウィング
U.A.の主力戦闘機(細かいスペック等は不明なので判明している点のみ記します)。
胴体下にミサイルを4発、主翼基部下にミサイルを各1発づつ、主翼下に燃料増槽タンクを1基ずつ装備。搭載箇所不明ながら機関砲も装備。
二人乗りの機体ですが、少なくともオーレンジャー所属のサンダーウィングは、後席の隊員が不在でも前席のパイロットのみで運用が可能のようです。
第3話では昌平と裕司も一人で操縦しており、後席担当の樹里と桃は基地で待機していましたしね。
吾郎は常に一人で搭乗していますが、専用の一人乗りの機体ではなく、後席が無人の状態で発進させています。
(ただし、バイク投下機能を有しているのは吾郎の機体のみらしいので、そういった改造を施している可能性があります)
オーレンジャー所属のサンダーウィングには三浦参謀長が開発した超力砲が機首に内蔵されており、展開後に攻撃可能。
この超力砲は、通常兵器では歯が立たないバラノイア帝国兵器に対して有効な武器であります。
それにしても、「ヘッド・アウト!」の掛け声と共に吾郎がサンダーウィングからバイクごと下方に射出されるというギミック、これはただのヒコーキ好きには一生思いつかないであろう、特撮ならではの素晴らしいアイデアだと思いました。
もちろん、無人になったサンダーウィングは自動操縦で基地に帰還するのでしょうね、多分。(^^;
U.A.&サンダーウィングに燃える(笑)。
オーレンジャーを観て、真っ先にハマッたのはオープニングのサンダーウィング。
そして第1話冒頭のU.A.本部のセットと隊員の衣装、空中戦、そしてオーレンジャー基地の整備員(笑)。
なにがすごいのかといえば、“金をかけまくって凝った演出”ではなくて、“限られた予算でも、抑えるところはしっかり抑えている演出”といったらいいでしょうか。
オーレンジャーにおいては、特に司令部隊員・整備員の衣装はチョイ役にもかかわらず凝った出で立ちです。
明らかに航空機映画等に詳しい人間がテクニカルアドバイザーとして仕事をしている雰囲気であります。
例えばヘリから舞い降りた吾郎の顔にサングラス。
パイロットにサングラスという図式は映画『TOP GUN(トップガン)』がハードロックとともに後の戦闘機作品に多大な影響を与えた要素ですね。
そして、オーレンジャーの「腕に“U.A.O.H”と文字の入った青い戦闘服」はパイロットスーツをモチーフにデザインされています(そもそも、これを着てサンダーウィングを操縦するのだから当然ですが)。
胸のデザインマークはパイロットスーツの胸にある斜めのファスナーを図柄化したものでしょう。
同じく第1話の空戦のシーンにも光るものが多いです。
戦闘機の機動、カメラアングルこれまでの特撮作品からは考えられないリアリティを醸し出していました。
これは明らかに戦闘機映画の演出をフィードバックしています。
吊りによる操演とカメラワークも円熟の域に達していると思いました。
特に戦闘機を映すうえで、絶対に外してはいけないアングルがちゃんと押さえられている点は感心させられてしまいました。
機首側面視点、機体の下側視点、機体の背中から前方を眺める視点…等。
オープニングの2機編隊を下側から逆光で太陽を見せる演出には、もうメロメロでした、素敵。
また、過去の特撮では戦闘機が旋回を描く際に、まるで電車が線路を走るようなカーブの軌跡が多かったのです。
けれど、サンダーウィングは違いました。
例えるならば、自動車が猛スピードで急カーブを曲がったらどうなるでしょうか。
遠心力でテールが外側に振られてしまうでしょうね。
一方、戦闘機は時速数百キロという速度で飛行しているのです。
もちろん航空機の場合は旋回したい側へ機体を傾けてから機首を持ち上げるように旋回する為、振られる方向は横ではなく、機体の下側になります。
つまり、急旋回中の戦闘機の腹が手前に押し込まれてくるような演出が正しいのです。
サンダーウィングはスピードとカメラワークを伴ってこれをちゃんとやっていたんです。
賞賛するには大袈裟だとしても、少なくともナメられない演出です。
他にも機体が旋回する前にパイロットが操縦桿を操作するシーンを挿入したり、機体が傾く前に水平儀(機体の傾きを表示する計器)を動かしたり、エンジンが炎上した場面では火災警報装置が赤く点滅したりと、航空機作品の基本というべきツボを抑えています。
どれも一瞬で過ぎ去ってしまうシーンなのに、ちゃんと適切な計器まで用意し「どうしてここまで」と思わせるこだわり振りです。
これは仕事の範疇を越えた、「最低限、これ以上はクリアしないと承知しない」といった特撮スタッフの執念を感じるのは自分だけでしょうか。
立体としてのサンダーウィング
さて、次は立体としてのサンダーウィングそのものについてです。
詳しい人なら判断がつくと思いますが、サンダーウィングの撮影用プロップはプラモデルを改造して使用しているようです。
そのベースとなった機体こそが、アメリカ海軍の代表的戦闘機F-14 “トムキャット”であります。
F-14実機の写真を交えて述べてみたいと思います。
(快くF-14の写真を提供をしてくださったMACEさん、波紋 愛さんに感謝致します)
F-14トムキャット。
映画『トップガン』で世界的に知名度をあげた名戦闘機。
間もなく退役予定。
水と油の関係といってもいいライバルの空軍機・海軍機ですが、米海軍のシンボルといっていいF-14を空軍であるU.A.の主力戦闘機に持ってきているとはなんとも皮肉な話です。
(空軍派でF-15贔屓の自分にしてみれば、海軍のF-14は永遠のライバルですから)
もちろん、F-14を改造ベースに持ってきたのも二人乗りの機体という条件のほかに、製作スタッフが映画『トップガン』を意識していると推測してよい材料なのかもしれないですね。
サンダーウィングはリアリティの追求の為でしょうか、F-14の面影が多分に残る仕上がりとなっています。
サンダーウィング胴体下の4発のミサイルはAIM-54C“フェニックス”長距離ミサイルで、主翼基部下の各1発のミサイルはAIM-7“スパロー”中距離ミサイルです。
これはF-14と同じ搭載箇所に同じミサイルが装備されているのです。
改造箇所についてですが、おおざっぱに言えば、「機首側面にカナード翼を追加」、「機体上面(背中)と主翼の改造」、「垂直尾翼の上部に水平尾翼を増設」の3点ですね。
特に奇異なのが「垂直尾翼の上部に水平尾翼を増設」でして、自動車でいうところのリアウィングの様な形状で、最新戦闘機では見かけない外見です。
自動車のリアウィングは車体が浮きあがらないよう、空気の流れで下に押さえつけるという、航空機でいうところの「揚力」とは全く逆の役割を担っています。
サンダーウィングの場合、胴体に水平尾翼があるのにさらに上部に増設するとなると、空力的にどのようなメリット・デメリットがあるのか自分には分からないですが、外見的には架空戦闘機らしさを強調する為に行ったのではないかと思いますね(悪く言うとパチモン化?)。
☆カナード翼(先尾翼)…
主翼よりも前に位置する翼の事。
これがあると低速でも失速しにくくなるなど、飛行特性に関しては利点が多い。
欠点はステルス化に向かない、機構が複雑な為に整備が面倒になる…等。
☆垂直尾翼…
読んで字の如く垂直方向に置かれた翼。
ここにラダー(方向舵)が備えられており、機体を左右に振る(ヨー)事ができる。
☆水平尾翼…
読んで字の如く(略)。
機体を上下に傾ける(ピッチ)為のエレベータ(昇降舵)を備えているが、現用戦闘機では付け根を軸に可動し、水平尾翼そのものがエレベータになっている。
機体側面から。
オーレンジャー作中でよく使われるアングルのひとつ。
サンダーウィングではコクピット側面に
カナード翼を装備している。
機体後ろ斜めから。
サンダーウィングではこの素直尾翼の上を跨がる形で
さらにもう一枚の水平尾翼を装備している。
空力的効果のほどは不明?
さて、重要な事ですが、サンダーウィングは玩具化されていません(だから写真も載せられません ^^;)。
スポンサーの商品ラインナップからいくと玩具化はまず行われないアイテムだけに致し方ないのではありますが。
サンダーウィングにしても、最初からSFチックに適当な機体を作ればよいだけの事なのに、なぜリアル路線なのでしょうか。
製作スタッフは採算を度外視(商品化出来ない)するほどに、なんらかのこだわりがあったのか。
それとも、撮影の関係上、すぐに使える様にプラモデルを改造しただけなのか。
いずれにせよ、サンダーウィングはオープニングで舞い、エンディングでは実質的に同機の歌である“緊急発進!! オーレンジャー”が流され、“優遇”されてはいるのだけど…。
余談ですが、なぜ自分が“宇宙で一番サンダーウィングに燃える奴”だと断言出来ないかと申しますとね…。
模型雑誌“ホビージャパン”の読者投稿コーナーにて、サンダーウィングを格納庫ごと自作した強者がいたからなのですよ(笑)。
サンダーウィングの前にはしっかり変身後の5人も並べてあったりして、間違いなく彼が宇宙一なのでしょう。(^^;
その力作写真に対しての編集者コメントが本当の意味で泣かせてくれました。
『オーレンジャーロボもあったら良かったですね』
製作した本人でもないのに怒りが込み上げてきちゃいました(笑)。
自分は力作を作っても絶対にホビージャパンには投稿しません。
つーか、完成させないと投稿そのものも出来ません。<おい
国際空軍(U.A.)について
基地施設
吾郎が所属していたU.A.基地は「U.A.本部」なので、日本に本部があるという事か?
昌平達が所属していたのは「第12方面基地」。
同じくF-14のエンジンノズル。
サンダーウィング発進時にこの箇所がアップで映し出され、
同型のものである事が確認出来る。
階級
隊員の階級は自衛隊式の「2尉、1尉」ではなく、軍隊式の「中尉、大尉」である点が印象的。
2尉とか1尉とか変な呼称ですが、これは、自衛隊が「警察予備隊」→「保安隊」→「自衛隊」と名前を変えてきた歴史に関係あります。
極力、軍隊をイメージさせる呼称は採用しない方向だからです。
それゆえに警察予備隊時代は「戦車」は「特車」と呼称されていました。
現在でも「攻撃機」に相当するものは「支援戦闘機」と呼称され、階級についても同様に旧軍のイメージを避けている訳なのです。
…もちろん、呼び方が変ったところでモノの本質が変る訳はないのですが、その辺は“大人の事情”という事らしいです(笑)。
年令
吾郎が25歳、昌平が27歳。
戦闘機パイロットとしては血気盛んで絶妙な年令だなと思ったら、残りの3人は20〜22歳…。
日本でもっとも早く戦闘機パイロットになるには航空学生という狭き門をくぐり抜けるしかないのですが、これにしろ受験出来るのは18歳以上21歳未満という制限があります。
一人前の戦闘機パイロットになるのに約6年が必要である事を考えると、中学卒業後に利用できるパイロットの道が用意されているとみるべきでしょうか。
制服
士官はベージュ、下士官・兵はダークブルーの制服の様です。
U.A.の一般的なパイロットスーツは薄いグレー。
整備員は赤の識別帽にグリーンのジャケット(後述)、白のズボン。
ブルーのつなぎの作業服を着た整備員も存在しました。
国際空軍所属の整備員の服装について〜まとめ
初めてオーレンジャーを観た時、強烈に気になったのが整備員の服装なのです。
そう、赤の識別帽にグリーンのジャケットなのですが、とある映画を思い出したのです。
1990年12月15日に公開された邦画『BEST GUY(ベストガイ)』です。
F-15J要撃戦闘機。
映画『BEST GUY』だけでなく、近年では平成ガメラ三部作全ての作品に登場している
(空自の意向により撃墜させられなかったらしい)。
これは『トップガン』の自衛隊版オマージュ作品でして、F-15Jパイロットに扮する織田裕二が主演していました。
この作品に登場する201飛行隊整備員が赤の識別帽にグリーンのジャケットを着用していたのです。
(実際にはこの服装は見栄え重視の映画用の衣装で、この当時、実在の201隊員は紺色の識別帽とジャケットを着用していました)
念の為に両作品のジャケットを見比べてみましたが、どちらも同型(CWP-36/P系)のフライトジャケットでした。
単なる偶然でここまで一致するものでしょうか?
U.A.をよりリアルに描く為に何らかの関係があるのではないでしょうかね。
なお、『ベストガイ』の配給は東映によって行われていました。
製作:東北新社/ウイングス・ジャパン・インク/三井物産
配給:東映
また、この『BEST GUY』は公開当時、映画の台本をもとにした小説が角川ノベルズから出版されていました。
この著者である麻倉一矢氏のあとがきによれば、執筆にあたり航空自衛隊千歳基地への取材を行っており、これは東映のスタッフにセッティングしてもらったとの事です。
それと、オーレンジャー第1話のU.A.本部にて、隊員のPCモニターの上に“日の丸”を付けたF-15Jの模型がさりげなく飾られていたのが自分には暗示的でしたね。
…以上、手元の資料で根拠といえるものはこの程度しかなく、ネットで情報収拾しても新事実も見つからず、あくまで自分の想像の域を越えないレベルですが、“東映繋がり”でなにか関係あるんじゃないかなぁ
なぜ、オーレンジャーが“国際空軍”直属でなくてはならないのか。
またどういった理由でエンディングテーマに他の候補を差し置き、“緊急発進!! オーレンジャー”が決定されたのか興味深いところです。
…以上、長々と自分の妄想にお付き合い頂きまして、ありがとうございました。
最後に。
時々だけど“ヒコーキ野郎”をニヤリとさせる特撮が見られるのは嬉しい事です。
近年だと森永チョコボール“キョロちゃんを撃たないで!”CMが良かったね。
攻撃命令を受けたパイロットがバイザーを下げるシーン、一瞬だけど玄人好みでした。
あのシーンはパイロットの素顔が隠れて兵器の一部になる、また、攻撃の決意といった、ヒコーキ野郎にはたまらない凝縮のシーンだから。
この直後のミサイル発射シーンも秀逸でした。
軽く機体をロールさせ腹をこっちに見せて“ミサイル発射”を強調なんかしてたりね。
(なぜ、このCMではF-15E系の機体と対地ミサイルを日本が保有しているのか…とかは置いといて ^^;)