『仮面ライダー龍騎』
第49話 叶えたい願い
2003/1/12 放映


(Story)
 オーディンは、龍騎サバイブとナイトサバイブのファイナルベント“ドラゴンファイヤーストーム”“疾風断”を軽く避けて反撃する。
 そのとき、優衣の悲鳴が響き、オーディンの動きが一瞬止まった。
 龍騎はその隙を逃さずオーディンに組み付き、ナイトがファイナルベント“飛翔斬”でオーディンを倒した。

 屋敷に飛び込んだ真司と蓮は、記憶を取り戻した優衣の口から驚愕の真実を知る。
 12年前の爆発事故のあった日、本当の優衣は死んでいたのだ。
 そのとき、悲しむ士郎の前に姿を見せたミラーワールドの優衣は
  あたしがそっちに行っていい?
  お兄ちゃんと一緒にいていい?
  でも大人になったら死んじゃうよ
  20回目の誕生日が来たら消えちゃうよ
  それでもいい?

と問い掛け、士郎の求めに応じて現実世界に現れて優衣の亡骸と一体になった。
 爆発は、ミラーワールドの優衣が現実世界に出現した際に起きたものだった。
 そこに姿を見せた士郎は
  そうだ。俺と優衣が作り出した鏡像だ
  だがそれが何だ? お前はお前だ、こうして生きている

と言う。
 だが、優衣は
  これでいいんだよ
  ねぇ、お兄ちゃん、もしもう1度絵が描けたら、モンスターなんかいる世界じゃなくて、2人だけの世界じゃなくて、みんなが幸せに笑っている絵をお兄ちゃんと一緒に…

と言って蒸散してしまった。
 動揺する士郎だが、
  まだだ、まだ2日ある、優衣は助かる
と言って戦いを続けるよう迫り、真司の
  お前、兄貴のくせに優衣ちゃんの気持ち分かんないのかよ
  優衣ちゃんはなぁ、お前のために戦いを止めたいと言ってたんだ
  お前が幸せそうじゃないからって

という言葉に耳を貸さずに部屋を出ていった。
 そして、蓮も
  まだ戦いは有効ってわけだ
と言って出ていく。

 1人神埼邸を後にしようとした真司に、令子が
  城戸君、あなたが…仮面ライダーなの?
と声を掛けた。
 
 翌日、北岡は、ライダーの戦いから身を引くことを決め、残り少ない時間を意義あるものにするために令子を食事に誘おうとするが、既に手に力が入らなくなってきており、電話を取り落としてしまう。
 北岡の身体は、限界に近付いていた。
 
 真司は大久保と2人になって、これまでのこと、ミラーワールドや仮面ライダーのことなどを話した。
 話を聞いた大久保は、答えを出せないことに悩んでいる真司に
  考えてきたんだろ、今まで、お前のその出来の悪い頭で
  それだけで十分なんじゃないのか
  ただしだ、何が正しいのか選べないのはいいが、その選択肢の中に自分のこともちゃんと入れとけよ
  お前の信じるものだよ
  お前もここ(胸)んとこにしっかり芯がねえと話し合いにもなんねえし、誰もお前の言うことなんか聞いちゃくれねえだろ
と言う。

 話が終わるのを待って事務所に入ってきた令子に、北岡からの誘いの電話が入る。
 渋る令子に食事に行くよう勧めるめぐみと島田。
 2人の様子がおかしいことに気付いた真司は、島田から、北岡が病気で余命幾ばくもないことを知らされる。
 北岡の戦う目的は自分の命だった…間違っているとは言えない動機に揺れる真司の心に、蓮の「お前はそうやって何でも飲み込もうとするから迷うんだ」という言葉が響く。
 
 その夜、浅倉の潜伏先を突き止めた警察は、翌朝踏み込んで逮捕することを決定していた。
 場合によっては射殺もやむなしとの決意を持って。
 
 そして最後の1日:1月19日になった。
 突然大挙して現実世界に押し寄せたレイドラグーンが人々を襲う。
 蓮は襲われている人々を助けつつ変身してミラーワールドへ向かうが、真司は少女を庇ってレイドラグーンの攻撃を食らってしまった。
 なんとか少女を逃がした真司は、変身しようとするが痛みと出血にデッキを落としてしまう。
 そんな真司の脳裏に大久保の「お前が信じるものだよ」という言葉が響く。
 死力を振り絞って立ち上がり変身した真司は、ミラーワールドでナイトと共にレイドラグーンを一掃したが、現実に戻った後は立ち上がる力も残っていなかった。

 駆け寄った蓮に、真司は
  やっと、ちっとは答えらしいものが見付かったかもしんない
  でも、駄目かもしんない
  俺さ、昨日からずっと考えてて、それでも分かんなくて
  でも、さっき思った。やっぱりミラーワールドなんか閉じたい、戦いを止めたいって
  それは正しいかどうかじゃなくて、俺のライダーの1人としての願いがそれなんだ

と語りかける。
 そして、蓮の
  だったら生きてその願いを叶えろ
  死んだら終わりだぞ
  死ぬな

という言葉に、
  お前が俺にそんな風に言ってくれるなんてな…
と言い残して事切れた。

 悲しむ蓮の前に士郎が現れ
  時間がない
  オーディンと決着をつけさせてやる。最後の仮面ライダーとして

と言った。
 
 そのころ、なんとか令子とのデートを約束できた北岡は、
  吾郎ちゃん、俺、やっぱり浅倉とはちゃんと決着つけてやんないといけないと思うのよ
と再び戦うことを決意する。

 また、兄妹の絵の上には、黒い羽が降りかかっていた。


(傾向と対策)
 まーた残り少ない日数を無駄にして。
 一気に3日目の昼になってしまった。
 龍騎がミラーワールドでレイドラグーンと戦い始めたのは、午後1時だ。
 真司はともかく士郎は何をやってたんでしょ。
 18日は丸一日誰も戦ってないよ。
 せめて蓮と浅倉を戦わせる努力くらいはした方がいいと思うんだけど。
 …あれ? 午後1時? てことは、北岡は令子とディナーなのか。
 頑張って交渉したんだね。
 
 さて。
 ライダーとしての願いが「ミラーワールドを閉じること」という結論に達して死んでしまった真司なのだけど、ごめん、鷹羽は頭にマークが浮かんで仕方ない。
 たしかに見せ方は巧かったと思うし、演技も良かった。
 ヘロヘロになって、低空飛行のドラゴンライダーキック、ほとんど火球だけでレイドラグーンを一層したドラゴンファイヤーストームなど、龍騎になった後も苦しそうでいい。

 けど、脚本的にまずいのだ。

 「ライダーとしての願い」というのは、“ほかのライダー全員が倒れ、最後に生き残った後に叶えたい願い”だ。
 真司のこの願いは、ライダーも死なせたくないという想いから生じているもので、明らかに矛盾する。
 まぁ、頭の悪い真司のセリフと考えれば、「またバカなこと言って」ですむのだが、死ぬ間際までバカなのかと思うと、感動とは違う意味で涙が出そうだ。
 サブタイトルが珍しく格好良く『叶えたい願い』なのはいいが、「ライダーの願い」というものの本質をはき違えた内容になってしまったのは残念だ。
 「ライダーの願い」にさえ拘らなければ、つまり“「ライダーの願い」とは違う意味で「叶えたい願い」”ならば素晴らしいものだっただろうに。
 これまで異質なライダーであり続けた真司には、最期も異質なライダーのまま終わってほしかった。
 最後に助けた少女の名前が「みらい」というのは、きっと何かの意味あってのことだと思う。
 みらい役の子役の名が「未来」だから、多分この少女も未来と書くのだろうし、“未来を救う”とかいう意味が与えられているのだと思うけど。
 次回、そういう希望の持てる最終回になるんだろうか?
 もし真司が復活しなければ、非常に珍しい“最終回前に死んだ主人公”になるのだけれど。
 
 で、結局この騒ぎの元凶は、神崎“シスコン”士郎の「俺を1人にしないで」だったわけだ。
 ミラーワールド自体が幼い頃の士郎と優衣の共同製作による異世界だったわけだが、どちらかというと士郎に依存する世界のように感じられる。
 この悲惨な戦いは、“鏡像でも何でもいいから優衣に側にいてほしい”という士郎の淋しさが原動力だったのだ。
 よくある“立場の逆転”現象で、士郎は優衣を保護することにより優衣が側に居続けてくれる状態を維持していたかっただけで、妹離れのできなかった哀れな男なのだ。
 そのために優衣の意志を無視して生き続けさせようとしていたのであり、「妹のため実験は成功した」などと言いつつ士郎のために成功したのだ。 
 だから、優衣は「お兄ちゃん、全然幸せそうじゃない」と言っていたが、それは優衣の勘違いで、ライダーの戦いが終わった後に士郎の幸せがやってくるのだ。
 こういう兄貴が、妹に彼氏ができた際どういう嫉妬をするかを考えると背筋が寒くなる。
 で、「この戦いの最後に得られる新しい命をお前にやる」という士郎の言葉から、ライダー同士の戦いが“新しい命”を生み出すための儀式であるらしいことが分かる。
 何がどうなって新しい命が得られるのかについては、恐らく解答は与えられないだろうが、「金持ちになりたい」というインペラーの願いは叶うことなく終わるものだったらしい。
 ライダーが13人という理由も、多分明かされないで終わるんだろう。
 オーディンだけで4人登場するというネタも考えたけど、どうやら3人で終わっちゃいそうだし。
 ナイトに2回も倒されたオーディンは、小さな視聴者から「オーディン今度こそ勝てるかな?」なんて思われてたりして。
 っていうか、半死人のゾルダはともかく、王蛇がピンピンしてるのにどうしてナイトが最後の1人として認定されるわけ!?
 そんないい加減なんだったら、もっと早く誰か1人以外のデッキを取り上げて、残った1人に「お前が最後の1人だ」とか言って終わらせても良かったんじゃ?
 
 手に力が入らないことを吾郎に隠さない北岡、北岡の選択に口を出さない吾郎、北岡の病気のことを隠しながら令子にデートを勧めるめぐみと島田、などなど、今回は非常にキャラクターが生きていただけに、優衣消滅後に真司と蓮が18日の夜をどこで過ごしたかが気になる。
 まさか花鶏には戻っておるまいな?

 
 さて、今回の見所は“予定時刻を過ぎても突入しない警官隊”だろう。
 しかも、最初から射殺する気満々みたいだし
 私情入ってないか?


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