『仮面ライダー龍騎』
第48話 最後の3日間
2003/1/5 放映
(Story)
あれから3週間が経ち、優衣の誕生日1月19日が3日後に迫っていた。
その間、自分がライダーを倒せないことを思い知らされた真司は、それでもじっとしていられず、香川の遺した資料を読み漁って解決策を見付けようとしていたが、内容がさっぱり理解できない。
そんな中、士郎からライダーに召集が掛かった。
教会に呼び出された真司、蓮、浅倉の3人は、士郎からあと3日のうちに戦いが終わらなければ願いが叶わなくなると告げられ、早く戦いを終わらせるよう急かされる。
北岡の姿がないことに不満を漏らす浅倉に、士郎は
ここに来なければ脱落とみなす
と、冷たく言い放った。
浅倉の
やるか…戦いが終わるのはつまらんが、勝ち残って戦いが続くよう願うのもいい
という言葉で、3人の戦いが始まろうとしたとき、真司達を追い掛けてきた優衣が飛び込んできた。
何を言っても、「帰れ」と相手にしない士郎に業を煮やし、優衣は
今すぐ全部終わらせて!
お兄ちゃんが終わらせないなら、あたしが終わらせる!
と叫んで飛び出して行った。
真司と蓮が優衣を追っていったことで戦う相手を失った浅倉は、
北岡…脱落だと? させるかよ
と北岡の事務所に向かう。
飛び出した優衣は、ビルの屋上に行き、士郎の
お前は分かっていない
消えてしまうこと、死んでしまうことがどれほど苦しいことか
という言葉に
分かってるよ、怖いよ、でも蓮や真司君や沢山の人が犠牲になるのはもっと嫌
そうやって手に入れた命なら、あたしはいらない
と飛び降りようとするが、一瞬の隙に士郎はガルドストームに連れ去られる。
戦いが終わるまで二度とこんなことはさせない
と、士郎は姿を消した。
その帰り道、真司は蓮に、優衣が「他人の命なんかいらない」と答えを出した以上それを尊重し、優衣を助け出すべきだと主張するが、蓮は
本人が望めば何でもいいってもんじゃないだろう
助け出して「自由に飛び降りろ」とでも言う気か?
と反対する。
真司は、「本当は、神埼相手だし手伝ってもらいたいんだけどさ」と1人で神埼邸へと向かった。
一方、入院した北岡の見舞いに来ためぐみと島田だったが、令子の耳に病気のことが入って同情されたくない北岡は、2人を門前払いする。
そして島田は、かつて病院で「もうすぐ死ぬ」と看護婦に噂話されていたのが北岡だったことを思いだし、顔色を変えていた。
その後、真司と別れた蓮は、脱落した北岡の病状が気になり、同じく病室を訪れる。
真司が立ち直ったことを知った北岡は、蓮の「確かに奴はバカだが」というセリフを奪って
俺やお前よりマシな人間、でしょ
まぁ、ちょっとは認めてやってもいいけどさ
奴がライダーだったのは、俺達にとって良かったのか悪かったのか
と続けた。
そして、北岡と戦うべく事務所に乗り込んだ浅倉は、事務所に誰もいないことから、鏡の向こうに見付けたレイドラグーンの大群と戦うことでストレス解消しようとするのだった。
そのころ、士郎の死を優衣に内緒にしておきたい沙奈子に花鶏を追い出された大久保と令子は、ローンで借金を返してようやく事務所に返り咲いていた。
2人とも士郎がアクレー大学に残した資料を読んでは見たものの内容が専門的すぎて理解できず、かろうじて行方不明事件の真相は『ミラーワールドのモンスター』が人間を襲っていたということ、『仮面ライダー』と呼ばれるミラーワールドに行ける特定の人間がいることくらいしか分からなかった。
令子は、ふと真司が士郎について調べていたらしいことを思い出し、真司が何かを知っているのではないかと思いつく。
そして、旧神埼邸では、士郎が優衣を一室に閉じ込めて
お前はただ待っているだけでいい。誕生日には何もかも終わっている
優衣、そこにいてくれ
と懇願していた。
優衣を奪い返すべく旧神埼邸に乗り込んだ真司は、オーディンに屋敷から追い出され、龍騎に変身してミラーワールドへと向かう。
神埼邸にやってきた令子は偶然その変身を目撃し、「まさか城戸君が…」と驚く。
ミラーワールドでは、テレポートを繰り返して攻撃してくるオーディンを相手に龍騎サバイブが苦戦していた。
そのとき、オーディンをシュートベントで弾き飛ばしてナイトサバイブが現れ、
勘違いするな。俺は戦いに来ただけだ
と言って、龍騎サバイブと共にファイナルベントでオーディンに向けて突っ込む。
そのころ優衣は、幼い頃にその部屋で兄と過ごしていた自分を思い出していた。
2人でモンスターの絵を描きながら
このモンスター達は強いんだ。俺達を助けてくれる
このミラーワールドは俺と優衣しかいないんだ
楽しいことしかないんだよ
と語りかける兄の姿、そして
優衣、駄目だ、逝っちゃ駄目だ
俺を1人にしないで
という悲痛な兄の叫びを…。
(傾向と対策)
素直じゃない男の友情物語。
中でも一番素直じゃないのは蓮だろう。
優衣を助け出そうとする真司と蓮の会話は、真司と蓮のスタンスの違いと、それでも真司を評価している蓮の言葉が印象的だ。
真司「無理矢理黙らせて新しい命を与えればそれでいいのかよ」
蓮 「無理矢理でも生きている方がいい。生きてさえいれば新しい道もある」
真司「本当は、神埼相手だし手伝ってもらいたいんだけど」
蓮 「力ずくで止めないだけでもありがたいと思え」
真司「だからお前は恵里さんを助けようとしているわけだし、俺、それを否定するつもりはないから」
蓮 「お前はそうやって何でも飲み込もうとするから迷うんだ」
という会話の後で、オーディンにやられている龍騎サバイブを助けて「勘違いするな。俺は戦いに来ただけだ」ときたもんだ。
かといって、蓮自身が戦いを割り切っているかというと、自分との戦いで全力を出しきっていないだろうという真司の突っ込みに対し「イエスでもノーでも俺の分が悪すぎる」と誤魔化している。
こういう蓮の素直じゃない言い回しは、対北岡にも発揮されていて、士郎が「脱落と見なす」という言葉を聞いたときの蓮の顔は、いかにも「心配だ」と言わんばかりだ。
そのくせ、北岡に会った後は、いきなり「神埼がお前は脱落したって言うからてっきりくたばったかと思ったんだが違うらしい」などと憎まれ口を叩いている。
そして北岡の「期待させて悪かったな」の言葉に「がっかりだ」と言った蓮の表情は、実に嬉しそうだ。
また、北岡との会話では、この後
北岡「おい、城戸の奴どうなったのよ」
蓮 「まぁ、元通りといったところだ」
北岡「へえぇ、やっぱりバカは立ち直り早いねぇ」
蓮 「確かに奴はバカだが…」
北岡「俺やお前よりマシな人間、でしょ?
まぁ、ちょっとは認めてやってもいいけどさ
奴がライダーだったのは、俺達にとって良かったのか悪かったのか」
と続いている。
この「奴はバカだが…」のくだりは、14話『復活の日』で、ゾルダ(=吾郎)を殺したと思いこんでいた真司が生きている吾郎を見て、騙されたことを怒るより先に吾郎の生存を喜んだ際、北岡が「まったく、見てらんないね。なんでこんなバカがライダーなわけ?」と言ったのに対する蓮の「確かにこいつはバカだが、俺やお前よりマシな人間かもな」に呼応しているのだ。
そして、この当時は真司を認めていなかった北岡が、今は真司のような生き方を認めてもいいと思うようになったという風に変化している。
ここでの北岡の最後のセリフは、恐らく『龍騎』という番組の根本を言い当てた言葉だろう。
ライダーでありながらライダーの戦いを拒み、しかも手塚のように趣旨が一貫していないキャラクターは、士郎にとって最も厄介な伏兵と言える。
真司がいたばかりに、本来殺伐とした関係であるべきライダー同士の蓮と北岡が、病気の見舞いに来るほどの親密な関係になってしまったのだから。
シザースのときには、ライダーの正体がばれる=寝首をかかれるだったのが、いつの間にか和やかに食事会を開く(29話『見合い合戦』)ほど仲良くなってしまった。
こうしてライダーとして以外の付き合いを持ったことが、戦いを途中で放り出す温床となっていったわけで、真司の存在がライダーの戦いに少なからぬ影響を与えているのは確かなのだ。
偶然真司がデッキを手に入れたことで士郎の計画は狂い始めたと言えるだろう。
一方、奇妙な友情といえば浅倉と北岡の間にも存在している。
43話『英雄は戦う』で、逃げ出した東條を見ながら浅倉が「奴は所詮小者だ」と言っていたように、浅倉も北岡の力はある程度評価しているらしい。
浅倉としては、北岡を自分で倒したいという部分があるんだろう。
だからこそレイドラグーンをバッタバッタとなぎ倒しながら、「足りないんだよ、これじゃ。もっと戦え。北岡〜!」と呼んでいるのだと思う。
さて、今回出番の少なかった沙奈子だが、やはり彼女は士郎の死を知った上で優衣に隠していたようだ。
お兄ちゃん子だった優衣にその死を告げるのが躊躇われたということなんだろうけど、逆に言うと沙奈子が知っているということは、士郎を引き取った高見家の人間が知らないはずないわけで、士郎が行方不明者リストに入っているのはどういうことだろうか?
死んだ人間の捜索願を出す親族っていないよねぇ?
間抜けな話といえば、どうして優衣を当時閉じ込められていたのと同じ部屋に閉じ込めるかな?
思い出しちゃったらどうしようとか考えないわけ? いや、実際思い出しちゃったみたいだし。
ここからは鷹羽の推測になるが、どうやらミラーワールドは優衣と士郎が生みだした精神世界で、ミラーワールドに人間がいないのも、士郎が「自分達2人しかいない」と設定したからのようだ。
もっと言ってしまうと、ミラーワールドにいるのは、士郎と優衣が絵に描いた生物だけだったかもしれない。
そんな中で何らかの原因で優衣が死に、ひとりぼっちになるのが嫌だった士郎は、自分達が“ずっと一緒にいられるように”描いた兄妹の絵を使ってミラーワールドの中に優衣の身体(命)を作り出して現実世界に引っぱり出したのではないだろうか。
爆発事故は、そのときの影響で起きたとも考えられる。
で、子供の絵だから“大人になる=20歳になる”と限界が来る、と。
今の優衣の身体が子供のころの士郎と優衣の精神世界の産物だとすると、当時の彼らの意識の中に「大人=20歳以上」という認識があれば、それに縛られてしまう可能性が高い。
そして、今の優衣の命が空蝉のようなものだとすれば、新たな優衣の命の受け皿となる肉体を作るために優衣の力が発揮されることは期待できない。
そうすると、士郎がアクレー大学や清明院大学で研究していたのは、“自分1人で新たな優衣の命を作り上げる方法”とも考えられる。
あくまで推論でしかなく、そもそも制作者側がどこまで考えて描写しているかが分からない以上、これ以上言っても詮無いことなのでこれくらいにしよう。
ともかく、ほかに閉じ込める部屋ってないの?
それと、脱落宣言するだけでライダーを減らせるなら、もっと簡単に最後の1人を決められるのでは?
富士の樹海に集合させて来ない奴は脱落とか。
で、今回のストレンジベント→スチールベントだけど、恐らく真司は「あの盾を何とかしないと」という意図でカードを抜いたんだと思う。
メテオバレットを受け止めてしまうゴルトシールドをどうにかするには、取り上げてしまうのが一番いいわけで、もし鷹羽の推測どおりストレンジベントが“そのとき最も有効なカードに変化するカード”なら、敵のカードがカードで召還したものを奪って自分のものにするスチールベントが有効なわけだ。
オーディンもその辺分かっているからこそ、以後の自分の攻撃を受け止めてしまいかねないゴルトシールドを取り上げるためだけにスチールベントを使ったのだろう。
さて、優衣の誕生日を1月19日に設定したせいで、前回(クリスマス)から3週間以上も経ったという妙な事態になってしまった。
優衣も真司も浅倉も士郎も、3週間も何の進展もないまま無為に過ごしてきたのだ。
冒頭の真司の「何もできずに時間が過ぎるのを待ってるなんて」というセリフが空虚に感じられて仕方ない。
3週間もボーっと資料を読んでいたのか。
もっと間抜けなのは士郎だ。
あと3日なんてギリギリまで待たないで、1か月近く余裕があるうちに急かしておくべきだったと思うぞ。
大久保達も、花鶏を追い出されてから3週間金策に走り回っていたらしいし。
15年ローンで返済って、一体いくら借りたんだろう。
しかも、年利1.5%ってことは、普通の金融機関だよね? 担保は何?
大久保達と言えば、ようやく「ミラーワールド」「仮面ライダー」という単語に辿り着いたようだ。
しかも令子は、真司がその仮面ライダーであるらしいことに気付いた。
果たして今更なこの展開が何かの役に立つのか?
次回が楽しみだ。
そうそう、ようやくといえば、10話『ナイトの危機』でネタが振られた不治の病のネタもやっと浮上してきた。
4月の放送だったのに、今頃…長い伏線だった。
これで令子にご注進してくれないと、目も当てられない…。
さて、今回の見所は“真司達を追って教会に辿り着いた優衣”だろう。
2人が出掛けたのに気付いて尾行するのはいいとして、バイクの2人をどうやって追ったの?
PS CDプレゼントのときに蓮が持っているドラグクロー型の獅子舞欲しいなぁ。