『仮面ライダーアギト』研究室
第2回


 
  人の手による最強の装甲強化服システム:G3は、曲がりなりにもアンノウンと戦い、一応の成果を挙げた。
 その後G3はG3-Xにバージョンアップし、劇場版ではG4,スペシャルではG3・MILDという新型が登場しているが、劇場版とスペシャルでの細かい齟齬などもあり、その開発過程は今ひとつ不明瞭になっている。
 そこで、研究室の第2回は、劇場版レビューでの予告どおりこれらの開発順序やその性能、進化の系譜などについてちょっとまとめてみたいと思う。
 題して
G3システムの系譜
 まずはG3からいってみよう。
 G3はGeneration3の略で、正式名称は
   第三世代対未確認生命体戦闘用強化外筋及び外骨格
という。
 S.A.U.L.(サウル:Squad Against Unidentified Lifeforms=未確認生命体対策班)が開発した装甲強化服であり、これ1体で未確認生命体を倒せるだけの戦力を持つことを目標に開発されたが、アンノウン相手に苦戦を続け、ギルスとの戦いで大破してしまった。

 G3の構造は、アクチュエータを内蔵したアンダースーツに装甲パーツをはめ込んで固定し、装甲を基点にしてアクチュエータが関節を動かすという昆虫のような外骨格生物型のようだ。
 『強化外筋及び外骨格』という名称は、この構造を表している。
 恐らく頭部に組み込まれたAIが神経電流を感知したり、意志ないし脳波を感知して関節を制御しているのだろう。
 また、G3がかなりの重量を持ちながら、マスクを外した後もさほど重くなった印象もなく動けるということは、マスクからの制御だけではなく、各関節部に設置されたセンサーが装着員の挙動を拾ってアシストしているからだと思われる。
 ここに、AIが学習した装着員の動きの癖などを元に予想した先回りをすることで、素早い行動が可能になっているのだ。
 だが、走る・跳ぶといった単純な動きは挙動を与えた後、先を予測して動かせるが、殴る・避けるといった複雑で柔軟な動きは先を読めないため、装着員の判断を待って一拍遅れる。
 それがG3の接近戦での弱さの一因だ。
 このシステムは、装着員の挙動に合わせる必要があるため、恐らく装着員の動くタイミングに合わせて関節制御のソフトの変更も必要になるはずだ。
 だからこそ、装着員の変更にはアンダースーツや装甲の調整が必要になる。
 G3が装着員交代の度に改修されていたのは、そういうことだったと思われる。
 そして、その点をクリアするための方策の1つが、G3-Xで導入されたオートフィット機能なのだ。

 G3の基本運用は、運搬用車両であるGトレーラー内で装着後、武器運搬&高速移動用車両ガードチェイサーで出動し、メンテナンス&バックアップスタッフの指示・補助を受けながら戦闘するというものだ。
 そのためマスク左顎部分にカメラが設置され、G3の見たものがGトレーラー内でも確認できるようになっている。

 スピード・パワーとも大したことはなく肉弾戦能力に欠ける分、GM-01(ハンドガン)、GG-02(グレネードユニット)による射撃主体の攻撃が主体となる。
 一応近接戦闘用としてGS-03(振動ブレードユニット)や、ガードチェイサーのハンドルグリップを兼ねるガードアクセラー(警棒)も使用可能だが、特に戦闘では役に立っていないことからも、肉弾戦に向かないことが分かる。
 ギルスとの戦いでは左手にGM-01、右手にGS-03を装備しているが、これは中〜近距離での戦闘を予測しての最強装備であり、GM-01で攻撃しつつ、懐に入られたらGS-03で斬りつけるという戦法を目的としている。
 敢えて最強武器であるGG-02を装備しなかったのは、GS-03を装備することによって右手が使用できず装弾が不可能になるからであり、大型ユニットであるGS-03の弱点を如実に示したものと言える。


 G3-X(Generation3-eXtensin)は、G3で得られた実践データを元に小沢が開発した改良型だ。
 『extensin』は拡張という意味であり、つまり『機能拡張版』という意味合いだろう。
 この名称から、これまでの戦いで明らかになったG3の欠点を改修し、カバーするという観点で設計されていることが分かる。
 G3の欠点としては
  1 装甲強度の問題による打たれ弱さ
  2 接近戦におけるスピード不足
  3 接近戦用武装のはずのGS-03が大きく重すぎて接近戦で役に立たない
  4 同時携行できる武装が限られているため、実質使えない武装が多い
  5 GM-01、GG-02のアンノウンに対する決定的な攻撃力の不足

といったものが挙げられる。
 4は、前述のとおりGS-03を装備すると右手が使えなくなるためGG-02が使用できず、GM-01も左手での使用になるため真価を発揮できないという欠点だ。
 ギルスとの戦いを考えれば、接近しての一撃でGM-01をロスト、次いで当たりもしなかったGS-03をロストして丸腰になっている。
 そこで
  1 装甲の材質強化・形状変更による防御力の増加
  2 AI主導による行動の最適化
  3 接近戦用武器GK-06の標準装備
  4 両太股にマウント部を設けたことによる携行武器の増加
  5 GX-05の装備による攻撃力アップ

といった改良がなされた。
 1については、G3-Xのボディの装甲がダメージを受けて破壊されたという展開になっていないことから、相当頑丈になっているものと思われる。
 細かいことだが、このほかにバッテリーパックの小型化という改良も加えられている。
 また3〜5による複合効果として、標準装備である左腕のGK-06のほか右脚にGM-01、左足にガードアクセラー、背中にGX-05の予備弾倉2つを装備し、GX-05という強力な武装を得た上、GM-01とアクセラーという予備武装の携行が可能になった。
 本来ならナイフ型であるGK-06の方が接近戦向きなのだが、電磁ブレードであるために使用には電力を必要とし、あの小さなナイフの中に蓄えた電力では長時間使えないことが予想されるため、最後の武器としての位置づけになっているのだろう。
 38話『その正体…』で、ガードアクセラーを装備せずに戦闘開始したG3-Xが初使用していることからも、予備の武器であると言えるだろう。

 さて2の行動の最適化だが、これは、AIが状況を判断し、最適の行動を判断して戦闘行動を決定するというシステムだ。
 つまり小沢は、G3の接近戦闘力強化のために、人間の反射神経を超えた反応速度を叩き出すことを選んだのだ。
 それには、装着員の意志を感知して先回りすることが必要となる。
 そこで、大まかな戦略については装着員が、細かい戦術についてはAIが決定するというシステムが取られているようだ。
 つまり、装着員が大雑把な行動目的を与えれば、AIが自動的に最適な行動を選択するということだ。
 人間の神経反射を待たずして戦闘行動が取れることにより、行動のロスタイムが軽減され、合理的な行動を取れるために更に早くなる。
 だがこのAI優先の行動は、装着員に過大な負担を要求する。
 いかに装着員の関節可動域を超えないとはいえ、身体が外力、しかも人間の力では抗えないほどのパワーによって本人の予想外の方向や角度に無理矢理動かされるのだ。
 逆関節を極められるわけではないが、曲げたい方に曲げられず、曲げたくない方に曲げられるわけだから、筋肉や腱にモロに負担がかかる。
 この場合AIの動きに逆らわず、その求める動きに身体を任せられれば、G3-Xは最大限の強さを発揮できることになる。
 これが高村教授言うところの『無我の境地』であり、翔一が装着した場合、自然とこの状態になる。
 氷川が暴走させたときの状況を見る限り、このAIの自己判断機能は非常に問題が多いが、判断基準にこそ不安を抱えるものの、求められている機能そのものはきちんと持っているようだ。
 例えば先の暴走事件の際には、V-1が向けた銃口を見て“自分に銃を向ける者=敵”と判断して攻撃開始している。
 この“自分に銃を向ける者=敵”という短絡的な判断は未熟極まりないが、少なくともあれが銃口であることを見て理解しているということは驚嘆に値する。
 おそらくは、銃口を見た氷川の意識から“銃を向けられた”ということを察知したのだろう。
 このとき氷川は、本来ならムッとして射撃場に向かうはずだ。
 だが、銃口を向けられたことによって瞬間的に緊張したため“射撃場へ行こう”と思わないうちにAIが行動を始め、その後振り回されて半失神状態に陥ってしまった。
 このとき、AIの判断は“銃を向けられた”→“装着員が緊張している”→“敵だ”というプロセスで判断を下しているはずだが、とにかく反撃するまでが早かった。
 たとえあれが本当に敵で、氷川が戦う意志があったとしても、恐らくAIの反応速度より早く動くのは無理だっただろう。
 またアンノウン出現の連絡が入ったとき、既に反撃能力が失われていたであろうV-1を放り出して飛び出して行った。
 あの連絡が入ったとき、既に氷川は意識が朦朧としていた。
 そして、「アンノウン出現」という言葉に無意識に「行かなければ…」と考えた氷川の意志を読み取ったAIは、既に反撃の恐れの少ないV-1は放置して、“氷川の知識に基づいて”Gトレーラーに向かい、ガードチェイサーを運転しつつおぼろげな意識の中で聞いた現場に向かい、GX-05を武器に選んでアンノウン(アピス・メリトゥス)と戦い、途中で弾丸が切れるとすかさず背中の予備弾倉をセットして撃破している。
 その後アギトを見て攻撃したのは、多分氷川が朦朧とした意識で「まだ動いている…終わっていない」と考えたためだろう。
 つまり、意志を異様に過敏に感知しすぎることと判断力の問題を除けば、こんなに便利な強化服はない。
 ただし、装着する人間を選ぶことになる。
 AIに逆らわないという特性を持った人間でなければ、装着しているだけで身体を壊してしまう。
 逆を返せば特殊な才能を持った人間でなければ使いこなせないアイテムというのはよくある話なので、そういう人間を警視庁内部で見付けられば問題ないという言い方もできる。
 氷川を装着員にするという考えに固執しなければ、G3-Xは僅かな改修で完璧に能力を発揮できるのだ。

 しかしまぁ、本来の開発意図は誰でも使えるシステムだったのだろうから、AIの機能を低下させるという高村教授の考えは正しかったのだろう。
 民間人の翔一に装着させるわけにはいかないし、警察内部に適任者がいるという保証もないのだから。

 改修後のG3-Xは、装着者の意志を感知した後、装着者の動きたいように動く形式になっているはずだ。
 これにより、G3よりは若干早いものの、最適化された動きという訳にはいかなくなり、接近戦は装着員の格闘センスに依存することになった。
 それでも、G3に比べれば接近戦用の武装も強化されているわけだから、かなり強くなっている。

 G3-Xの今後の課題は、強くなっていくアンノウンに対し、攻撃力をどう強化していくかということが挙げられるだろう。
 既にGX-05で倒せないアンノウンが数体出ているわけだから、これは急務だ。


 次に、G3の廉価版であるG3・MILDについて考えてみよう。
 正式名称は
   第三世代対未確認生命体戦闘用強化外筋及び外骨格 簡易生産化試作版
であり、G3の構造を単純化することで生産コストと工程を抑え、量産可能にしたものと考えられる。
 続発するアンノウン事件に、G3-Xだけで対応するのは困難と考えた警視庁上層部の発案であり、小沢の設計ではなくG3・G3-Xを元に誰かが設計したものだ。
 廉価版とはいえG3より優れた部分も持っており、G3-X同様のオートフィット機能を持ち、バッテリーもG3-Xと同じものを使用している。
 最初、背中に装備されているのがGX-05の予備弾倉だと思ったのだが、よく見るとGM-01の予備弾倉のようだ。
 尾室が装着した試作版は素手で出動しているが、ガードチェイサーもあったので、ある程度の装備は予定されているのだろう。
 左肩に「00」と書いてあることから、少なくとも10体以上は量産するつもりだったようだ。
 まさか“試作品だからゼロゼロナンバー”などと考えていたわけではなかろう。
 装甲のショックアブソーバー機能などは簡略化されていると思われるが、電源が切れた状態でスカラベウス・フォルティスの蹴りを食らってもかすり傷で済んでいるところを見ると、それなりに頑丈な作りでもある。
 恐らく都内の警察署に1〜2体ずつ配備し、アンノウンによる事件が発生したら、G3-X到着までの牽制に使うのが主目的だったのではないだろうか。
 生身の警官を5人や10人投入するよりG3・MILDを1体投入する方が有効だし生存率も高そうだ。
 警官が殉職することを考えれば、G3・MILDの10体や20体安いものだろう。


 最後に、現時点最強最悪のシステム:G4について考えてみよう。
 このシステムについては、開発過程がイマイチ不明確だ。
 画面に出たのは、まず旧OPに映っている『G3に間に合わず盛り込めなかった機能はG4で採用する予定』という意味の一文と劇場版での説明・描写をメインに追い掛けていくしかない。
 そのほかに、スペシャルのラストに少し映った設計図、東映公式HPの劇場版ページにある『G4システム研究』という解説があるが、基本的に『アギト』は“画面上で描写されたもの以外は、たとえ公式に発表された設定であっても信用できない”という凄い番組なので、あくまで参考程度にしかなりそうにない。


 まず、G4はいつ開発されたのかを考えてみよう。
 劇場版での小沢と深海の会話を見ると
   小沢「私のコンピュータから盗んだわね!? G4システムの設計図を!
   深海「盗む? 人聞きが悪いですねぇ
       埋もれていた宝を世に出してあげただけですよ、私は
   小沢「あれが、G4システムがどういうものか分かってるの?
   深海「天才・小沢澄子が設計した最高傑作。素晴らしいシステムです
   小沢「違うわ! あれは存在してはならないシステムよ!
       あなたにも分かってるはずだわ
   深海「あなたはG3システムと同時に既にG4システムを完成させていた
   小沢「違う! 完成なんかしていない!
   深海「そして、テスト段階での些細な事故のせいで同システムを破棄した
   小沢「些細な事故!?
       G4の装着員に会わせなさい、あれを装着してただで済むはずがないわ!
   深海「しかし大いなる成果の前には犠牲は付き物ですよ、小沢管理官?
となっている。
 深海は『G3システムと同時に』と言っているから、額面どおりに受け取れば、G3-Xよりも前に開発されていたということになる。
 だが、深海がG3とG3-Xを敢えて区別せずに喋っていたとしたらG3-Xと同時期、つまりG3-Xの発展型でも話は通じる。
 果たしてどちらなのだろうか。

 もし、後者…つまりG3-Xの発展型だったとしたら、『テスト段階での些細な事故』というのは氷川がG3-Xの訓練中に筋肉組織を痛めたことを表すだろう。
 この考え方では“小沢はG3-Xを人間のものにするためにAI制御チップを内蔵させたが、その一方で思いっきりAI主導のG4を設計した”という流れになりそうだ。
 また、公式HPに記載されている
あくまでも「人間のための道具」であるG3システムに対し、G3-Xにおいて、その主従関係は微妙なものとなっている。
人間が機械を使うのか、機械が人間を使うのか。
それは戦闘状況によって変動する。
この関係が、ほぼ完全に逆転しているのがG4システムである。
人間がG4を装着するというより、G4が人間を1個の部品として使用する。
これにより、G4システムは、人間にはありえないパワーとスピード、そして機械にはありえない柔軟性を兼ね備えた、理想の戦力となっている。


公式HPより引用 (c)2001 石森プロ・テレビ朝日・ASATSU D.K.・東映
という文章からは、あたかもG3-X以降に開発されたかのような印象を受ける。
 G4がG3-X以降に作られたのだとしたら、小沢は“G3-Xで『些細な事故』を起こしたにもかかわらず、G4を設計した挙げ句封印した”ということになる。
 そして前述の文章内には
澄子がG4システムを設計したのは、警察官という公的な立場としてではなく、あくまでも個人的動機によるものだ。
G4システムが設計できることが分かっている以上、彼女は設計せざるをえなかった。
創作欲を押さえきれない芸術家のように。
それは、「天才」小沢澄子のエゴともいえる。

公式HPより引用 (c)2001 石森プロ・テレビ朝日・ASATSU D.K.・東映
とも書いてあるから、世に出す気がないのに敢えて設計したということもありえる。
 また、登場順に開発された方が感覚的に納得できるという一面もある。

 だが、ここで1つ思い出さなければならないことがある。
 G4は装着員が死んでも再起動するシステムであるという事実だ。
 これは水城史朗が装着する以前、つまり深海理沙がプレディクション・システムを稼動させる以前から起きていた現象であり、元の設計自体が抱えていた問題点だ。
 しかしG3-Xは、AI全開だった最初の暴走時でも、装着員である氷川の意識が失われた後は停止した。
 ここにG3-XとG4の大きな差異がある。
 ということは、G4の“テスト段階での些細な事故”というのは、氷川の怪我のことなどではないのだ。
 だが、G3-X完成後に小沢が何らかの実験で事故を起こしたという描写はないし、その可能性も低い。
 しかもG3-Xで氷川を大分痛い目に遭わせた後で、それより凶悪なシステムを、設計するだけならまだしもテスト段階までもっていくということは考えにくい。
 従ってG4はG3開発途中で開発が始まり、G3試作のころにはテスト段階までまとまっていたが、その際に事故が起きて制作を断念して封印されたと考えられる。

 そもそも「G4」と言うからには、当然Generation4の略称であり、正式名称は
   世代対未確認生命体戦闘用強化外筋及び外骨格
のはずだ。
 G3-XがあくまでG3の後継機なのに対し、G4は次世代機なのだ。
 とすれば、当然その設計コンセプトに何らかの根本的な違いがあるはずだ。
 このコンセプトの違いについては後で詳しく検討するが、少なくとも装着員が死んでも動けるようなAIシステムを搭載していることは間違いない。
 そして、そのAIこそがG4を封印せざるを得なかった理由なのだ。

 これを前提としてG3-Xの開発過程を見てみよう。
 G4の外見は、マスク部分以外は非常にG3-Xに似ている。
 G3-Xの肩をG3のものと交換し、GX-05の予備弾倉をGM-01の予備弾倉にすればそっくりだ。
 つまり、G3とG3-Xの中間的な形と言える。
 これらを“お蔵入りしたG4に盛り込まれていた外的機能”だけを付加したと考えれば、G3-Xの構造はある程度納得できる。
 つまりG3のAIシステムをベースに、G4のオートフィット機能、より強度の高い装甲形状、新型のバッテリーパックなどを搭載したものと考えるのだ。
 もちろん完全にG4の受け売りではなく、G3の実践データから得られた武器の携行問題や格闘戦能力といった弱点の克服なども盛り込まれている。
 前者が太股等のマウント部であり、後者が効率的な行動を判断するAIシステムだ。
 要するにG3-Xとは、G4の外装にG3の発展型AIを組み込んだ中間型であり、ある意味G4のマイナーダウンとも言える。
 小沢があっという間にG3-Xの設計図を完成させてしまったことも、これなら納得できる。

 では、G4に搭載されたAIシステムはどういうものだったのだろう。
 前掲の公式HPの文章には
トレードオフとして差し出さなければならないのは、装着員の生命。
G4システムが必要とするのは、極論すれば「装着員の筋肉や神経組織」という部品であり、「生きている人間」である必要はない。
人間の限界を越えた活動をつづけることの負荷によって、装着員はやがて死に至る。
しかし、装着員が死んでも、肉体が腐敗しないかぎり、G4システムは機能しつづけることができる。


公式HPより引用 (c)2001 石森プロ・テレビ朝日・ASATSU D.K.・東映

とある。

 この部分は、G4とG3-Xの根本的な違いを示していると同時に、これが手放しに信用できない文章であることも示している。
 G3-Xでは、勝手に動くボディに振り回された装着員は筋肉の断裂や靱帯の損傷といった人体が動くために必要な部分の破壊を招いているが、そもそも人間の力を遙かに超えるパワーで稼動するG3-XやG4には装着員の筋力など必要ないはずだし、激痛でショック死でもしなければ命に別状はない。
 しかも筋肉繊維が断裂するということは、その筋肉が使い物にならなくなるということだ。
 G4が装着員の筋肉を何らかの部品として使っているのだとすれば、断裂しまくった筋肉では意味がないはずだ。
 また、仮にG4のシステムが“装着員の神経にAIが働きかけ、筋肉の反応速度を無理矢理早くすることで挙動自体を早くする”ものだったとしよう。
 何らかの手段で神経を刺激し、“本人が考えるより先に身体が動く”状態を作ることは可能だろう。
 例えば膝下をブラブラさせた状態でイスに座り、膝の皿の下を叩くと膝が勝手に伸びる。
 脚気(かっけ)の診断に利用される『脊髄反射』と呼ばれる反応だが、このように情報を脳に認識させないうちに筋肉を動かすことは可能だ。
 この場合、筋肉は酷使されるが無理矢理曲げられるわけではないので断裂する恐れはほとんどない。
 だが、酷使されることによって筋肉や神経は疲弊するにせよ、命を失うほど消耗する前に現実問題として筋肉の方が燃え尽き現象を起こして動かなくなる。
 薬物を使って無理矢理筋肉をもたせれば、薬物の副作用で死ぬのが先だ。
 装着中に死ぬとは限らないことになる。
 そして、何よりもこれはAIの反応に装着員の身体がついてこれないことを前提にした発想だ。
 小沢は、AIが求める動きに人間がついてこれないという可能性に思い至らないままG3-Xを設計しているのだから、装着者の反応速度を速めるという発想は小沢にはあり得ない
 従って、こと筋肉に関する限り、G4に必要なパーツでもなければ、それが原因で装着員の生命に関わる問題の起きるものでもないはずなのだ。
 つまり“装着員の筋肉や神経組織を必要とする”という先の文章は、手放しで信じることはできないことになる。

 そこで、一旦この公式HPの文章は忘れて、別の方向からアプローチしてみよう。
 そもそもG3・G4は、人間が装着することを前提として開発された強化装甲服だ。
 いかに素晴らしいAIを搭載したとしても、人間が装着しなければ意味をなさないはずだが、一方でG4は死体でも動く。
 この点を小沢が認識していたのか偶然の産物だったのかはさておき、ここが第三世代と第四世代の決定的な違いになっているわけだ。
 では、死体でも動かせるシステムとはどういうものだろうか?

 G4を設計したのが小沢であるからには、小沢の設計思想が反映されていることは間違いない。
 そして、小沢はどちらかというと人間の判断力よりAIの判断力の方を重視しているように思われる。
 G3-Xで見られたAI優先の設計思想は、G4にも生きているはずだ。というより、G3-XがG4の機能限定版だとすれば、むしろG4により強く現れていなければおかしい。
 より早く、より正確にAIに判断させ、その結果を最も早く行動に反映させる方法…それは、装着員を感覚器官の一部と割り切り、“装着員が感知したものを直接AIに認識させ、それを装着員にフィードバックする”ことだ。
 こう書くと分かりにくいだろうが、要するにこういうことだ。
 断片的な情報から全体像を把握する能力、例えば犬の尻尾だけが見えたときにそれが犬の一部であることを認識する能力は、やはり人間の方が高い。
 だから、AIは装着員の脳に直接アクセスして装着員の五感に情報を収集させ、それに基づいた判断を装着員に与えつつ行動に移すのだ。
 もちろん、AIが装着者に与えるのは状況認識に必要なデータであり、行動指針を決めるのは装着員だから、そこで一旦装着員の判断を待つことになる。
 ここでもう1度、G3-Xの暴走を思い出してみよう。
 G3-Xは、氷川の意識が朦朧としていたにもかかわらず、メリトゥスが現れた現場にガードチェイサーを走らせている。
 ガードチェイサーの運転そのものはAIにプログラムされていたとしても、Gトレーラーからの発進方法や現場への経路などがプログラムされていたとは思いにくい。
 つまり、G3-XのAIには装着者の知識を脳から吸い出し、データベースとして利用できるような機能があるとも考えられる。
 ということは、双方向で脳とアクセスできるG4のAIなら、そんなことは簡単だろう。
 逆にたどれば、AIが蓄積した知識を装着員の脳に提供して総合判断を仰ぐようなこともできるかもしれない。
 つまり装着員が知らない知識…例えば敵がいる建物の内部構造データをバックアップスタッフから受信し、それを装着員の脳に直接伝えることで、装着員はより有効な攻撃方法を考えることができるわけだ。
 あくまで難しいことを考えるのは人間の役目であり、AIの仕事は“より効率的な行動”を計算して実行することなのだ。
 だが、それ以外の場合はAIの判断のまま動いてしまった方が効率的になる。
 さらに、何らかの手段で装着員の感覚速度を高めれば、情報入力速度は上がってますます早くなる。
 一例を挙げれば、アドレナリンが分泌されているとき、人は反応速度が速くなる。
 こういった刺激を装着中ずっと続けたとしよう。
 確かに人体の限界ギリギリの高速化ができるが、装着員の脳への負担は計り知れない。
 アドレナリンが分泌されている状態というのは、極度の緊張状態と言える。
 そんな状態を装着中ずっと持続すれば、装着者の脳は疲労を蓄積し続けることになり、回復にはある程度の期間、リラックスした状態にしなければならない。
 だがG4装着者にそんな余裕が与えられるとは思えないから、装着者はやがて自律神経失調を起こし、生命維持機能を狂わせて死んでしまうだろう。

 これらをまとめると、G4の開発主眼は、人間の脳をAIと一体化させることによる人機一体の頭脳の誕生だったと思われる。
 だが、それは失敗した。
 テスト中の事故がどのようなものだったかは分からないが、AIと人間の同調試験の際に、被験者が脳波異常を起こすとかしたのではないだろうか。
 それにより、小沢は人間の脳をAIと同調させるシステムの危険性に気付きG4の開発を中止し、G3の実用化に集中するようになったのだ。

 だが、このG4の設計図を入手した深海は、装着員を消耗品と割り切ることでこの悪魔のシステムを実現してしまった。
 その際、基本システムには手を入れていないようだが、細かい点でいくつかの改造を行っているようだ。
 鷹羽としては、マスクの形状がその第一だと思っている。
 ここで一応断っておくが、鷹羽は、スペシャルのラストで画面に映っていたG4の設計図が劇場版に登場したG4とそっくりなことは承知している。
 ただ鷹羽は、あれは設定3面図からCG化しただけのものだと解釈している。
 というのも、あのCGがあのシーンのためだけに作られていて、ほかに使っていないからだ。
 元々あのシーンは劇場版の宣伝を兼ねたパートであり、そのためだけにG4の別デザインを用意する手間を掛けるとは思いにくい。
 ほんの数秒間画面に映るだけなのに、わざわざ実物と違うデザインを起こすのは、ガンダムくらいのものだろう。
 どうしてこんなことをわざわざ考えたかと言えば、G4のマスクにモニター用のカメラが付いていないからだ。
 G3は、上記のとおり常に指揮官が行動をモニターしていることになる。
 バッテリーの関係もあるが、警察という組織の構成上、単独行動を行うことはないからでもある。
 これはG4であっても同じはずで、たとえバッテリー持続時間が延長されようとも、指揮官の命令なしに行動することにはならないはずだ。
 だから、本来ならG4の左顎にもカメラが付いていなければならない。
 だが、自衛隊の装備となれば話は別だ。
 自衛隊が使うならばそれは兵器であり、量産化を前提とする以上は全員の行動をモニターすることなど不可能だし、戦場で常に電波を発信し続けるなど、自分の居場所を敵に教えるようなものだ。
 第一、戦場では電波妨害が激しいだろうから、モニター通信などするだけバッテリーの無駄だ。
 そういう理由から、鷹羽は、深海がマスクのカメラを外したのだと思う。
 同様の理由で、ミサイルランチャー・ギガントについても深海が用意したものだと思う。
 警察の装備でミサイルというのはあまり現実的ではないからだ。
 ただGX-05という、流れ弾が危なそうな装備を持っているG3-Xもいるし、強敵に対するための最大攻撃力として用意されてもおかしくないという考え方もある。
 また、このギガントはG4のベルト右バックルのコネクターから電源を供給して使用しているようなのだが、このコネクター自体はG3にも装備されている。
 となると、G3開発当初から本体から電源を供給して使用する大型武器の開発が予定されていた可能性もあるので、この点については判断が難しい。

 さて、G4の危険性はこれまで述べたとおりだが、ではなぜ、深海はG4を採用させたのか。
 それは、深海が兵器としてのG4に魅力を感じたからだ。
 深海が小沢に
   G4を量産することにより、我が国の鎧は完成する
と言っていることから考えると、日本の防衛力強化が目的のようだ。
 深海が“兵器としての超能力”を研究していたのも、元々そのためだったと考えられる。
 劇場版ではペデスやアギトを相手に戦っているが、あれはあくまで実戦テストだ。
 深海が作ろうとしたのは、人間相手に使う武器だったのだから。
 ここに深海がG4を採用した理由がある。

 小沢は、G4を対未確認生命体用の強化服、つまり警察官が1人で人間以外の敵と戦うための装備として設計した。
 警察は、時に動物園から逃げだした虎の捕獲作戦などにも駆り出されるが、元来は人間を相手にするための組織であり、相手も自分も生きている状態で終わるのが基本だ。
 従って、人間以上の攻撃力・防御力の持ち主である未確認生命体が相手とはいえ、警官が殉職しては困る。
 だから、装着員の生命に危険を及ぼすシステムを採用することはできない。
 それに対して、深海はG4を戦争のための武器と位置づけて採用したのだ。
 戦争において、兵士の戦死は避けられない。
 一等陸尉、分かりやすく言うと大尉に当たる深海は、防衛大学を出たエリートだろう。
 そして戦略を練る上では、“いかに消耗(戦死者・装備の破壊)を抑えるか”ということに重点が置かれるわけで、これは言い換えれば“多少の死者を出すことはやむを得ない”ということになる。
 実戦をしないのが原則の自衛隊の上層部がG4生産について了解していたかは分からないが、少なくとも深海に超能力者養成施設やG4の研究施設を与えていたのだから、ある程度の権限を与えていたものと思われる。
 単純に考えれば、深海が上層部に嘘を付いて施設を維持していたのだろうが、穿った見方をすれば、上層部が細かい説明を敢えて受けずに深海の暴走を利用して研究データだけ手に入れようとしていた可能性もある。
 いずれにしても、上層部の本意まで話が進むと泥沼なので深海の暴走レベルで話を進めることにしよう。
 とりあえず、指揮官にとって“兵士をコマとして扱う”という考え方で行くと、装着員の死は大した問題ではなくなるのだ。
 例えばテロリストに対しての拠点防衛を考えた場合、警備に当たる兵士にはかなりの犠牲が出ることが見込まれ、しかも拠点を守りきれる保証はない。
 だが、ここにG4を数体配置したらどうか。
 並の銃器では破壊できない装甲と人間の限界を超えた反応速度を持った警備兵に対して、どんな装備のテロリストが対抗できるだろう。
 ましてやプレディクション・システムと組み合わせた場合、敵の侵入個所に先回りして迎撃することすら可能だ。
 同じ犠牲者が出るならどちらがいいか、考えるまでもない。
 G4なら、少なくとも拠点防衛という目的だけは達成できるのだから。
 事実、水城が装着したG4は、テロリストとは比較にならないほど強いペデスの群を相手に一方的とも言える戦闘をしてのけた。
 深海の計画どおり、プレディクション(予知)・システムを完成させてG4を量産できたなら、恐ろしい部隊が生まれていただろう。

 さて、この恐るべきプレディクション・システムは、元々深海が研究していた兵器としての超能力の応用によって“常に全開状態の能力を発揮する”という実用性の高いものに仕上がっている。
 本来真魚の予知能力は、本人ですら自由に使いきれない不安定なものなのに、プレディクション・システムに組み込まれている間は、翔一の死を予知してしまうまではG4の補助能力として機能していた。
 兵器として使うにはムラのない安定した力が要求されるわけで、どうやら超能力者の脳波に刺激を与えることで無理矢理安定した出力を得られるようになっていたらしい。
 深海は、単体では使いにくいその力を、他の戦力との併用で有効に使えるようにしたようだ。
 最終的には、真魚を制御しきっていなかったために不調を来したが、それでもかなりいい線行っていた。

 それでは、肉弾戦でアギトを圧倒する脅威の戦闘能力の源であるプレディクション・システムがどういうシステムなのか考えてみよう。
 まず、予知能力者をプレディクション・システムとリンクさせる。
 これで、何らかの刺激を与えることで予知能力レベルを最大限に引き上げる。
 そして、プレディクション・システムとG4のAIをESP波で繋ぎ、AIが周辺状況を予知能力者に伝える。
 この際、AIの主観(=G4の主観)が能力者に送られることで、能力者は擬似的にG4と一体化し、“自分の未来”としてG4周囲で起きる近未来の出来事を予知、それが映像としてAIに送り返される。
 予知映像を受けたAIは、それを装着員に見せる。
 この場合の『見せる』とは、脳が『見た』のと同じ感覚で情報を与えるということであり、予知だと認識させた上で『見える』状態にするのだろう。

 どういうことか、もう少し説明しよう。
 例えばG3-Xやアギトと格闘戦をしているときは、主にAIが判断するだけで足りる。
 だが、フォルミカ・ペデスの群との戦いで、ギガントを使って一網打尽にしようとしたのは、装着者である水城の戦術だっただろう。
 この“ギガントを使う”という水城の方針を受けたAIが、最大の効果を上げる発射タイミングを計ったのが、あの待ち伏せ発射だったと思う。
 “数秒後にペデスがどこにどんな状態で現れるか”を予知できることを利用し、その時その場所を狙ってあらかじめ発射するというG4ならではの戦い方だ。
 しかも、このプレディクション・システムとの通信には電波妨害も効かない。
 劇場版のラストで、GトレーラーとG3-Xの間に通信が回復したとき、小沢は「やっと繋がった」というようなことを言っていた。
 つまり、小沢はG3-XがG4に破れた後、ずっと氷川を呼び続けていたようなのだ。
 それほど電波状態が悪い中で、G4と真魚を結ぶ通信は全く影響を受けていない。
 これは、妨害電波等の干渉を受けないESP波を使っているからだと考えられる。
 G4の戦いをモニターしていたのが、プレディクション・システムの管制部と基地内の有線カメラ画像だったことも、この裏付けとなろう。

 コンピュータより柔軟な発想ができ、人間を超えるスピードとパワーを持ち、妨害電波にも影響されず、敵の先手を打って迎撃できる…実に理想的な武器だ。
 だが、このプレディクション・システムには重大な欠陥が2つある。
 1つ目は、プレディクション・システムの最重要パーツである予知能力者が消耗品であることだ。
 上記のとおり、予知能力者はシステム稼働中は常に能力を全開にしている状態であるため、とんでもない負担を強いられる。
 ちょうど、ギルスが変身するたびに生体エネルギーを大量消費して老化現象を起こしていたようなものだが、プレディクション・システムの場合、完全にマシンの一部として扱って人間らしい休養など与えられないから、回復がほとんど望めない。
 実際、いつでも捨てられるように半分袋詰めにして接続してあるくらいだ。
 これは、深海としては超能力者も消耗品として扱うという意識の表れなのだろうが、ある程度以上のレベルの予知能力者など、そう関単に補充できない。
 実際、深海は予知能力者として、生きているかどうかもはっきりしなかった紗綾香を捜していたのだ。
 それほど貴重な予知能力者を深海は使い捨てのコマにしている。
 恐らく真魚が死んだら、再び紗綾香を捕まえに行くのだろうが、それは泥縄というものだ。
 紗綾香まで死んでしまえば、もう補充のアテはない。
 かといって、簡単に予知能力者を育成できないことは、既に経験済みのことでもある。
 消耗部品の補充が難しい、維持に手間の掛かるシステムと言える。

 もう1つは、システムの一部である予知能力者を完全には掌握できないことだ。
 実際、真魚が翔一の死を予知して自我を取り戻しかけたために、AIが混乱してG4はほとんど戦闘不能になってしまった。
 これは、真魚自身が予知能力を制御しきれていないせいもあるだろうが、逆に言えば、完全に能力を制御できない能力者を利用する限り、いつこのようなことが起きるか分からないということでもある。
 そして、なまじ能力者の主観がAIの主観になっているため、能力者が妙な予知映像を見るとAIは能力者の主観と装着員の主観の相違に混乱し、何をしていいか分からなくなってしまう。
 この2つの欠陥をどうにかしないことには、G4の実用化は困難と言わざるを得ないだろう。

 ところで、水城の死後再起動したG4が、GM-01の一撃で沈黙した理由について考えてみよう。
 GM-01の弾丸くらいでG4の装甲を貫けないのは、G3-Xの装甲がGM-01改を数発受けて破壊されていないことから明らかだ。
 つまり、GM-01にはG4を一撃で破壊することは不可能だ。
 ということは、G4には弱点があって、そこを破壊すれば動かなくなると考えるしかない。
 一撃で駆動系の中枢を破壊するにしても、駆動系は各部独立したアクチュエータ方式だろうから、メインモーターを破壊するということはできないし、ベルトはエネルギーインジケーターに過ぎないから、破壊したところで電源がカットされることはないだろう。
 何より、敵の攻撃を受けることを前提にされているボディ前面に弱点を配置することは自殺行為だから、絶対にやらないはずだ。
 それなのに氷川は、一撃でG4を止めた。
 どうやったのか。

 G3シリーズやG4には、構造上どうしても守れない部分がある。
 それは首とマスクの接合部だ。
 AIシステムがマスクに内蔵されている以上、AIからの駆動系への伝達回路や、AIへの電力供給ケーブルとのコネクターがマスクと首の接合部には存在する。
 ここを破壊すればAIは機能しなくなり、G4はただの金属の鎧に成り下がるしかない。
 正面から狙い撃ちするのは難しい角度だし、そこをやられたときは装着員も死ぬだろうし、装甲服と戦うときに首を狙うのは当然のことだから、取り立てて弱点とも言えないが、G4を一撃で止められる場所はそこしかないはずだ。
 起動スイッチや緊急停止装置を狙い撃っても、スイッチが切れるとは限らない。
 氷川が撃った場所は画面上には出ていなかったと記憶しているが、撃ったときにはG4は起き上がっている最中だったから、顎の下を狙える角度だったと思う。
 G3から装着し続けている氷川は、その場所、つまり自分自身にとっても弱点であるコネクターの位置を知っていたはずだから、そこを狙ったのだろう。
 水城が生きているうちにそこを狙おうとしなかったのは、狙い撃ちが難しいせいもあるが、何より、それはG4を倒すというより水城を殺すという意味だからだ。
 この意味で、水城が死んでいることが氷川の勝利には絶対条件だったのだ。
 こう考えてみると、G4が“装着員が死んでも再起動する”ことを氷川が知っていることは、演出上必要だったと思える。
 水城が生きていると思っているうちは、氷川は勝てなかっただろう。
 もしかしたら、小沢の『氷川誠として戦いなさい!』という言葉には、“装着者氷川としての知識と経験を生かして戦え”という意味が込められていたのかもしれない。
 だとすれば、一見何の意味もないあのセリフにも立派な根拠があったことになる。

 こういう再発見があるから、研究室はやめられないのだ。


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