乾電池使用玩具の罠

後藤夕貴

更新日:2010年2月5日

 久しぶりに、玩具関連のコラムなんか書いてみたいと思います。

 私見ですが、この十ン年で玩具コレクターがかなり増えたように感じます。
 そういった人達とネット上で色々情報交換をしている際、必ずと言って良いほど「経年劣化」についての話題が上るようになりました。
 PVC製品等の経年劣化については、以前こちらでも取り扱いましたが、最近、もう一つ取り上げておきたいものが出てきました。

 それが、タイトルにもある「乾電池使用玩具」。
 これの取り扱い方次第で、その人のコレクター度がわかるというほど重要なものなのですが、意外に度外視されがちな要素でもあります。
 というわけで、今回は「乾電池使用玩具の経年劣化とその対策」について、触れてみたいと思います。

 以下では「乾電池使用玩具」と漠然と表現していますが、このコラム内に限り「電池を使用するギミック内蔵の玩具全般」を指しているものとご解釈ください。
 つまり、動いたりはしないけど光ったり鳴ったりする物も含まれるということです。

●電池の恐ろしさ

 今更言うまでもありませんが、電動または電飾ギミックが仕込まれた玩具には乾電池・ボタン電池が使われます。
 中にはごく少数「ソーラー電池」を利用するものもありますが、こちらは対象外とします。
 マンガン電池、アルカリ電池、また最近ではニッケル充電池など様々な種類が増え、寿命や電力、耐久性も格段に向上しましたが、どうしたわけか「電池はいずれ劣化する」という事は意外に頭から飛ばされがちのようです。
 これは恐らく、乾電池やボタン電池が見た感じガッシリ作られていて、自然破損するようにはとても思えない(或いは簡単には壊れない)というイメージから来るものではないかと、個人的に考えています。
 しかし実際は、電池は思ったよりも短期間で劣化破損してしまうものなんです。
 これを失念していると、玩具を長期保管しようと考えた場合、恐ろしい事態を発生させてしまいます。
 具体的に言うと、玩具内部に電池を入れたまま長期間放置すると、電池からの液漏れが発生しこれが電池金具を侵食。
 更に進行すると金具周囲のプラ等も汚染・変色させ、酷い場合にはパッケージまで侵食してしまいます。
 これは、開封・未開封問わず起こるもので、しかもPVCやABS素材の経年劣化や、可塑剤気化による塗装皮膜溶解のような“保存状態によっては発生しにくい”物とは違い、対策を怠ると将来確実に発生してしまうものです。
 こういった事情があるため、長い間玩具コレクターをしている人達にとって、玩具内から電池を抜き取っておくのはセオリーとなっています。
 またゲームウォッチ等の液晶携帯ゲームコレクターは、本体から抜き取るのは当然としてパッケージ内からも除去するようにします。
 ゲームウォッチ系(厳密にはゲームデジタルやポケットデジコム等、当時の液晶携帯ゲーム全般を含む)のほとんどは本体と電池がパッケージ内で分けられているので直接本体を冒すことはありませんが、絶対に安全とは限らないため念には念を入れるわけです。

▲ 任天堂GAME&WATCH「マンホール」

 現実には、80年代初頭当時からずっと未開封保管されている液晶携帯ゲームの付属電池(ほとんどがボタン電池ですが)が経年劣化によって著しく破損したという例はほとんどありませんが、まったく影響がないわけでもないので(後述)、やはり取り除いておく必要性はあります。
 たとえ、それにより「未開封新品」というステイタスが失われたとしても、です。

 以前中古業に携わっていた際、30年以上前の未開封玩具(ブリスター入りの電池使用玩具)の劣化したものを見たことがありますが、そりゃあもう酷いものでした。
 これは玩具本体と電池が別に分けられた状態で、同一の吊式ブリスターパックに収められているというものでした。
 電池は表面の印刷すらわからないほど黒く変色し、更に元が単三だったとは思えないほどおかしな形に変形しており、電池が収まっていたブリスター部分は完全に溶解し穴が開いてました。
 当然、台紙もその部分だけ黒くなっていて、まるでカビが大量発生したように見えます。
 玩具本体は電池から離れていたため、幸いにも電解液の侵食を免れましたが、どちらにしろあまり手を触れたくないなと思わされる物でした。

●具体的にどうなってしまうのか?

 それでは、筆者が2009年6月、都内某所で発見・購入した「DX特警手帳」を例に挙げて説明してみたいと思います。

 「DX特警手帳」とは、90年度テレビ朝日放送作品「特警ウインスペクター」に登場するアイテムで、主人公・香川竜馬らWSPの身分証明書兼特殊携帯ツールボックスです。
 

▲ DX特警手帳(画像右は展開&通電状態)

 誤解のないように補足すると、変身アイテムではありません※1
 見た目はちょっと大型で分厚い警察手帳型機器、センサーやらレーダーやら色々と搭載されているもので、画面露出も多く結構印象的な存在でした。
 実はこの玩具には、LED点滅を利用した簡単なミニゲームが2種類組み込まれています。
 付属のカードを差し込むことで30秒タイマー、スパイ撃退ゲーム(反射神経ゲーム)、サポートロイドのメンテナンスチェック(記憶反応ゲーム)と切り替えが可能。
 今となってはそんなに凄いものではなく、当時にしてもややチープ感漂うものですが、なんとなく懐かしさを覚えてつい買ってしまいました。

 ところが、絶縁体を引き抜いてスイッチを入れても、ウンともスンともいいません。
 同じ物を以前にも持っていたことがあるので、操作ミスなどではありません。
 この「DX特警手帳」は、LR-44のボタン電池を3個使用するのですが、最初から本体内に収められており、しかも蓋は小さなネジでガッチリ固定されていますから、何かの不手際で抜け落ちたわけでもないのです。
 嫌な予感に駆られ、電池の蓋を開けて中を確認してみたところ、ボタン電池が――腐ってました
 否、正しくは液漏れが発生し、それにより内部金具が青白い霜のようなもの※2で覆われていました。
 新品の電池に交換してもダメでしたから、金具の通電性能も失われていたわけです。
 同梱されていた電池がどんな状態だったかは、写真を見ていただいた方が理解が早いでしょう。

▲ DX特警手帳に内蔵されていたボタン電池(現物)

 結局、これはこのままでは使用できず、また古い商品のため購入元やメーカーに交換依頼を出すのも躊躇われ、やむなく自分で修理することにしました。
 幸いにも、本体分解後電池金具をヤスリで研磨し、青白い霜状の付着物を取り除いたら通電性能が復活し、現在では何の問題もなく使用可能になっています。
 しかし、この霜みたいなものが予想以上に硬くなっていて、当初の予想を上回る難作業になってしまいました。

※1:変身アイテムに相当するのは、特警手帳ではなく専用自動車「ウインスコード」。
運転席内で「着化」のかけ声と共にスイッチを押し、クラステクターを装着して「ファイア」になる。
余談だが、以後「特捜エクシードラフト」まで続く「レスキューポリス(または特警)シリーズ」の主人公達は、歴代特撮ヒーローの中でも屈指の巨大な変身アイテム使用キャラだったりする。

※2:これは電解液が二酸化炭素などに反応して凝固した水酸化カリウムで、大変危険なもの。
素手で触れたり目に入れたりするのは絶対厳禁。
筆者みたいに、迂闊にヤスリで削って粉塵を撒き散らすなんてもっての他です!

 さて、90年放送ということは、現在から約20年前、購入当時から見ても19年前の商品です。
 この商品は電池が最初から入れっぱなしで、絶縁体を引き抜くことで通電開始します。
 最近の商品だと、食玩の「サウンドガイアメモリ(仮面ライダーW)」や「カプセルガイアメモリ」と同じですね。

▲ サウンドガイアメモリ&カプセルガイアメモリ

 20年も経っていれば電池がわやくちゃになっていても仕方ない気がしますが、これが懐かしい商品で、しかも新品購入だったという点がピンチです。
 「DX特警手帳」はさほどレアなものではありませんし、分解修理も気兼ねなく行えるものでしたが、もしこれがレア度MAXの入手難アイテムだった場合、少なからずショックを受けてしまうことでしょうね。

 筆者は、玩具以外にもゲームウォッチのような液晶携帯ゲームを集めていますが、こういうものに携わっていると20年以上前の付属電池というものにはよくお目にかかります。
 今の所、ごく一部を除いて「付属電池が酷い事になっていた液晶携帯ゲーム」というものにはお目にかかった事はありませんが※1、この時もそういった経験があったため「90年代のものなら大丈夫だろう」と高をくくっていたのです。
 こうなると、「それはその店の保管状況が悪かっただけだろう」という見方も可能ですが、実はこれと同じ所で更に複数の液晶携帯ゲームの新品を購入してまして、そちらは全く問題がなかったのです。
 ただ運が悪かっただけ、とも考えられますが、どちらにしろこういう凄いことになってしまった物に巡り合う可能性は、今後もありうるだろうということです。

※1:しかし、中にはエポック社の「ゲームボックス ペンタ」のようにボタン電池ではなく単三乾電池を使用するものがあったりするので、油断は禁物。
筆者が最近購入した当時品も、やはり電池がえらいことになっていた。

▲ エポック社「ゲームボックス ペンタ」

 ちなみに、液晶携帯ゲームでもおかしなものを手にしたことがあります。
 数年前、筆者の実家近くにある玩具店から、「ポピーANIMEST スペースコブラ・プロフェッショナル」というゲームの在庫が大量に発見され、物凄い安価で叩き売りられた事がありました。

▲ ポピーANIMEST「スペースコブラ・プロフェッショナル」

 筆者はその中からいくつか購入したのですが、どれも新品だったにも関わらず接触が異常に悪く、電池蓋を外側から強く押し続けていないと画面が消えてしまうという困った状態になっていました。
 こちらも「DX特警手帳」同様、元々電池が本体内に収められており絶縁体を抜いてから使用するタイプの商品です。
 この時は特に電池の破損や液漏れ、金具の破損はありませんでしたが、電池を新しいものに交換してもこの状況は変わらず、やむなくこのまま保管している状況です。
 ちなみにその後、ふとした事から「発売当時に開封されたと思われる中古品の同商品」に触れる機会に恵まれたのですが、そちらは何の問題もなく快適にプレイが出来ました(やや液晶表示が薄まっていましたが)。
 そちらは電池を抜いて保管されていたようで、見た目はボロボロだったにも関わらずゲームとしてのコンディション的には未開封品を上回っていた事になります。
 不思議な話ではありますが、これらは電池の仕組みを考えると案外納得出来そうです。

●電池の液漏れは何故起こるのか?

 一般的に使われる乾電池について、詳しく触れてみましょう。

 まず、最も歴史が古い「マンガン電池」。
 黒と赤の二種類があり、黒の方が容量が大きいです。
 最近ではアルカリ電池や水素電池といったハイパワー電池に押されて、イマイチ使い出がないものと思われがちですが、実は自然放電に強く、時計やリモコンなど長期間使用し、かつ頻繁に電池交換する必要のない物には最適です。
 つまり、「長期間少しずつ電力を消費する物に向いている」わけです。
 また、休ませると電力が回復するという特徴もあります。

 次に「アルカリ電池」。
 こちらはマンガン電池より大容量・電圧低下が少なく、電力が強いためラジカセやサーチライト、シェーバーなどに向いています。
 また最近では、アルカリ電池でも対応可能なデジカメも増えてきました(以前は必要電力が大きすぎたためアルカリ電池でも厳しかった)。
 玩具に向いているのは、こちらの方です。

 次に、ニッケル水素・ニカド電池など所謂「充電池(二次電池)」。
 こちらは様々な形状や用途があり、単純にマンガン・アルカリ電池とは比較出来ませんが、ここでは単一〜単四などの一般的サイズの物に限定します。
 これらはマンガン・アルカリを越える大容量と電力を発揮し、しかも充電可能という事もあり大変利便性が高く、先に挙げたアルカリ電池に向いている物をほぼすべて兼ねた上、さらにPDAや携帯ゲーム機、デジカメなどに最適です。
 勿論、玩具に使用するのもアリです。
 しかし、「自然放電※1」や「メモリー効果※2」という、マンガン・アルカリに(ほぼ)存在しない欠点を持っており、そのため大変に物を選ぶ造りになっています。

 次に「ボタン電池」。
 超小型で様々な形状があり、最近は玩具の小型化もあり使用頻度が高まってきた感があります。
 一言にボタン電池と言っても様々な種類があり、酸化銀・アルカリマンガン・空気亜鉛・リチウム・水銀が存在します。
 これらはいずれも電力が小さく、単一〜単五の乾電池とは完全に用途が異なります。
 小型機器の外部電源として用いられることが多く、また同時に複数(2〜3個)使われることもよくあります。
 代表的なのが液晶表示画面を持つ小型電子機器で、電卓や液晶ゲーム(古いものだとゲームウォッチ等)に向いています。
 しかし電力の関係で、電飾までは可能でもパワーが求められる電動には向かないようです。

 それぞれ代表的な特性と性格をまとめてみましたが、これらの耐久性については様々な見解があり、一概には断定は出来ません。
 例えば、アルカリ電池の方がマンガン電池より破損が少ないとか、そういう事は言い難いわけです。
 これらはメーカー製品の品質によっても変わりますし、また製造から使用するまでの年数によっても変化が起こります。
 よって、この辺りの判断には多分に経験則が求められがちです。

 電池の劣化というと、代表的なのが「液漏れ」です。
 外装が腐食してしまい、中身が漏れて周囲に影響を与えるというものですが、これについて結構誤解が多いようです。
 だいたいの人は「外装が錆びたり耐久性が落ちたために中身がはみ出た」と解釈しがちですが、実はこれ間違いです。
 乾電池は、元々「ガス抜き穴」というものが設けられていまして、液漏れはここから発生します。

 では何故、穴が開いているのかというと。

 乾電池は過放電し続けると内部にガス(反応ガス)が溜まり、これにより内部が強い圧力を受けてしまいます。
 大昔の劣化した電池の腹が膨らんでいるのは、大概これが原因です。
 現在では、この状態になると内部に設置された安全弁が作動し、反応ガスを外部に逃がして圧壊を防ぎます。
 「液漏れ」とは、この際に中の電解液が漏れてしまう現象なのです。

 これは、言うまでもなくすべての乾電池に起こり得ます。
 ちなみに、最も発生しやすいのがマンガン電池で、こちらは外装缶がそのままマイナス電極を兼ねている構造で、過放電が続くとマンガンと反応を起こしてどんどん薄くなっていきます。
 その結果、(ガス抜き穴とは別に)外装缶が破損してしまうという事態が起こります。
 対してアルカリ電池は外装がマイナス電極とイコールではなく、マンガン電池の外装に相当する物(亜鉛管)が中心にある構造なため、少なくともマンガン電池と同じような経緯で破損を起こすことはあまりありません(またこれによって搭載出来る二酸化マンガンの量が増え、結果的に容量が向上しています)。

 ちなみに、電池メーカーの人によると「ガス抜き穴のない電池はもっと危険」だそうで、爆発事故などが発生する危険もあるそうです。
 さすがに爆発と比較するなら、まだ液漏れの方がマシではありますが……

 さて漏れる液「電解液」ですが、これは塩化亜鉛溶剤や水酸化カリウムと呼ばれるもので、前者はマンガン電池に用いられ強酸性、後者はアルカリ電池に用いられ酸と激しく反応する性質、亜鉛や鉛、スズ、アルミニウムを腐食させる性質を持ちます。
 言うまでもなくどちらも毒性が非常に高く、触れるのは大変危険です。
(ボタン電池は非水系有機電解液というものが、現在最も多く使用されています)
 ともあれ、電池の中の物が漏れるととんでもない事になるというのは、おわかりだと思います。
 金具は冒すわ本体は冒すわで、放置すると本当にろくでもないことになります。

 さて、液漏れについて説明しましたが、所々に挙げられている「過放電」という単語が気になった方もおられると思います。
 実は、これが乾電池使用玩具保管の際、電池を抜かなければならない最大の理由だったりします。

※1:充電していても使用しない期間が長いと勝手に電気が減っていく現象。
物によっては一週間前後でほぼ使用不能なくらいに電力低下してしまう。
ただしサンヨー製「eneloop」等、これらが低減された充電池も存在する。

※2:完全に電気を使い切らないうちに充電していくと発生するもので、所謂電量の底上げ効果のようなもの。
これが深刻化すると実質的な充電量が減り、かつまだ電力が残っているにも関わらず、電力不足と認識されて使えなくなってしまう。
これを避けるためには「リフレッシュ機能」という完全放電後に充電を行う専用機器が求められる。
先述の「eneloop」は、こちらの対策も施されている。

●「過放電」とは?

 過放電という現象が起こると、電池が液漏れしやすくなる……というか、液漏れのトリガーになります。
 この過放電とは何なのか、説明していきます。

 「過放電」というのは、乾電池が限界にも関わらず、更に放電させられている状態を言います。
 ちなみに放電ってのは、この場合電池を普通に使っている状態を意味します(蓄えている電気を使用する=放電)。
 もう限界に達してるのに更に無理をさせている訳ですから、例えるなら

「うふふ、まだまだ、もぉっと搾り取ってあげるわぁ♪」

「む、無理ですぅ! 僕……もう、出ないよおぉぉ!!」

 ってな状況に似ています。
 この限界ってのは「放電終止電圧」と言いまして、これ以上使用すると乾電池が破損しかねないというレベルです。
 過放電の前に「完全放電」という状態があり、いわばこれが本来普通の「安全圏内に於ける電池の使用限界」です。
 それを更に酷使するわけですから、乾電池によろしいわけがありません。
 高価な電子機器などは、充電池に負担がかからないよう放電終止電圧に達する前にストップをかける安全機能が搭載されています。
 とにかく、この「放電終止電圧」「完全放電」「過放電」については、ある程度覚えておくと良いかと思われます。

 さて、過放電によって先述の「液漏れ」が発生しやすくなるわけですが、とにかく使いすぎると電池そのものが劣化しやすくなる、という仕組みはお分かりいただけたかと思います。
 乾電池は内部で化学反応を起こして発電しているため、無理をすればそりゃあ破損します。
 つまり、電池には経年劣化とは全く異質の「状態悪化に繋がる要因」があるという事です。

 ところが、この過放電ってのは結構頻繁に発生しやすいのです。
 いや、正しくは「発生させられやすい」と言うべきでしょうか。
 その最大の原因が「電池入れっぱなし」。
 古い時計の電池蓋を開けてみたら、電池がえらいことになっていた、なんて経験はありませんか?
 ああいう事が、乾電池使用玩具でもごく普通に発生するのです。

 これが、「乾電池使用玩具から電池を抜かなければならない」最大の理由です。

 未使用乾電池をパッケージ内に封入したままの状態よりも、本体内に差し込んでおいたままの方が状態は悪化しやすいのです。
 先に挙げた、液晶携帯ゲームの別添電池が20年以上経過しても割と平気なケースが多い理由は、ここにもあります。
 ただし、それにしても絶対ではありません。
 どのような状況下で放電が行われるかは、わからないですからね。
 そう、充電池の自然放電現象からもわかる通り、金具に接しない限り放電しないというわけではないのですから。
 また、それとは別に単純な外装劣化による液漏れもありますし(冒頭のブリスター商品の例)。

 乾電池使用玩具は、電池の力で大きなパーツが動いたり、移動したり、光ったり鳴ったりと様々な効果を発揮します。
 これにより、通常では味わえないダイナミックなプレイバリューを楽しめるのが魅力ですが、よく考えたらこれらは精密機器の集積体。
 使い捨てるつもりならともかく、大事にしたいならその精密さを理解しないといけません。
 少なくとも、電池放り込みっぱなしで過放電させまくりというのは、確実によろしくないでしょう。
 電池の破損・液漏れだけでなく、基盤を傷める可能性も無視出来ませんし、接触不良を誘発する恐れもあります。
 ここに加え、ダンボール内や押入れのような高温・高湿度の場所に長期間保存していたら、もう目も当てられない事態に発展しても不思議ではありません。
 もし思い当たる事があったら、今からでも手持ちの乾電池使用玩具のチェックをしてみてはいかがでしょう?

「けど、それってあくまで長期間保存したらの場合だろ?
 最近の玩具だったらまだ大丈夫だよ、気にしなくったって平気だってば!」

 多分、このようにお考えの方もおられると思います。
 だが、その考えはぶっちゃけ「甘い」と言わざるを得ません。

 次の最終項では、最近報告された「比較的近年発売の玩具で起きた電池破損例」について触れてみます。

●炎神ソウル

 この項目名を見て、もしギクッとした人がおられたら、今すぐお手持ちの「DX炎神合体」シリーズをチェックしてみてください。
 実は、2008年度作品「炎神戦隊ゴーオンジャー」の玩具・炎神ソウルの電池について、既に多数の破損報告が挙げられています。
 このコラムを書いている、ほんの一年前まで発売されていたものですよ!
 それなのに、もう液漏れやら電池破損やらあるんですから、たまったもんじゃありません。

 炎神ソウルは、“ボタン電池3個を使用して複数の音声を鳴らせる内蔵型タブレット”で、本作に登場する12体のメカ「炎神」や、ゴーオンジャー(またはゴーオンウイングス)の使用する各種武器に組み込む事でプレイバリューを拡張出来る、大人気を博したアイテムです。
 本作の放送終了は2009年1月で、最終アイテムだった「DX炎神合体キョウレツオー」と「DXカンカンバー」の発売が2008年11月。
 「DX炎神合体」について詳しくはこちらを。
 とにかく、この炎神ソウルは筆者が知る限り、最も早く電池系トラブルが報告された乾電池使用玩具となりました。

 具体的には、  というパターンで発覚するケースが多いようです。
 炎神ソウルも、「DX特警手帳」のように元々電池が組み込まれているタイプで、絶縁体を抜いて使用しますが、絶縁体を再度差し込んでおいても発生します。
 調べてみると、どうも以前問題を起こしたブランドの電池が使用されているようで、元々耐久性は高くなかったみたいです。
 筆者も、手持ちの「DX炎神合体」を全て開封して確認したところ、液漏れ破損が複数発見されました。

▲ 炎神ソウルに使用されていたボタン電池・現物

 これは、「DXガンパード」付属の炎神ソウルから発見されたもので、購入時期は2008年のクリスマス前です。
 生産時期は不明ですが、せいぜい一年半経っているかどうかというところでしょう。
  

▲ それぞれのアップ

 著しい破損が確認されたのはこれだけですが、一見問題なさそうだった他の電池も、よくよく見ると+極の周りの縁が変色またはうっすらと液漏れしており、なんとほぼ全ての電池がダメになっていました。
 ちなみに、この状態でも全ての炎神ソウルは音が鳴りましたから、「鳴った=無問題」と安易に解釈するのは危険かもしれません。
 筆者は炎神ソウルを全種は持っていませんが、炎神用計9個(炎神大将軍含む)、ゴローダーGT用ソウル1個のうち、見た目全く問題ないと思われる電池がたった5つ程度しかなかった事を考えると、かなり怖いものがあります。
 破損電池の中には、この中で最新商品だった「DXキョウレツオー」から出てきた物もありました。
 ちなみに、炎神ソウルタブレットもいくつか持っていますが、こちらの電池は特に破損は見当たりませんでした(一応電池は抜きましたが)。

 玩具に元々入れられている電池は「テスト用」であり、本来は購入後すぐに新規のものに交換してくれというものです。
 そのため、あまり質の良いものは使われていないようです。
 物によっては結構な耐久性があるものもありますが、一応はそういう事になっているようです。
 一般的な玩具については、そう解釈しておくべきでしょう。
 ただし、電子ゲームは時計として利用する用途のものもあるため、そのまま本使用出来る電池を付属させる必要性があり、またちょっと意味が違ってきます。
 よく考えれば、「炎神ソウルタブレット」や「カプセルガイアメモリ」等は、あの低価格にも関わらずボタン電池が2〜3個使用されているわけです。
 現在ではボタン電池は100均で気軽に買えるほど安価になりはしましたが、それでも商品原価を考えると高価でしょう。
 そう考えれば、充分な耐久性を誇るブランド品を使うというわけにもいかないかもしれません。
 いっそ電池別売形式にすれば楽なのかもしれませんが、それだと購入後すぐに遊べずユーザビリティに欠けてしまうし、結果的に割高になってしまいます。
 こういう風に考えると、質の良くないテスト電池の存在は、仕方ないのかもしれません。
 逆に言えば、テスト電池はあくまでほんの一時的なもの、購入直後の起動テスト程度にしか使“えない”物だと、考えを改めるべきなのかも。

 筆者は今回たまたま気づけましたが、そうでなければDX炎神合体シリーズは倉庫の奥で死蔵されていた可能性が高く、後々とんでもない事になってしまったかもしれません。
 2009年度以降では、同じく電池を使用した大人気玩具として「仮面ライダーW」のガイアメモリがあります。
 こちらも、今後気をつけておきたいものですね。
 幸い、DX版も食玩版も電池の交換は可能なので取り外しておけますが、ガシャポン版はどうだったかな?

 玩具コレクターの中には、このようなトラブルを嫌って乾電池使用玩具に手を出さない人も存在します。
 一方で、電池が入っている事を失念しやすい人も多いようです。
 そういう人は、多少無理してでも自分のライブラリを振り返るべきかもしれません。
 筆者も、これを書きながら「装着変身・仮面ライダークウガ ライジングセット」にボタン電池がデフォで組み込まれていた事を思い出し、ゾッとしました。
 あれですらもう10年前ですからね、危険度は高いかも?
 それに、「仮面ライダーディケイド」人気からかトライチェイサーやビートチェイサー等の需要も高まっていますが、ビートチェイサー内部にもボタン電池が3個デフォ挿入されています。
 筆者の持ち物は取り出されていますが、つい最近まで9年以上封入しっ放しでしたから、かなりやばかったかもです(幸い電池・本体・機能共に無事でした)。
 ひょっしたら、忘れてるだけでもっと色々出てくるかもしれません。
 ああ怖い……

 電動玩具、電飾玩具好きな人は、長く保管したいなら、或いはまた遠い将来にギミックを楽しみたいと考えるなら、多少面倒でも電池は必ず抜き取りましょう。
 手間を惜しんで貴重なアイテムが破損したら、それこそ目も当てられないのですから。

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