いつまで待てばCD出ますか? PART-2
後藤夕貴
更新日:2006年1月1日
 前回、“いまだにCD化されていない名曲”について語ったが、今回はアニソンではなく、別なジャンルの話をしてみたい。
 で…書くごとに無念さがつのっていくのだけど、いつになったら発売してくれるのかしらん?

“心の傷痕痛み出す 悲しい夜が絡みつく 振り返れば…振り返れば、いつも…闇の道!”

“傷つくことそれは とても悲しいけれど きっと幸せめぐり合えるよ”

“あなたがくれた津軽の林檎 噛めば幸せ思い出す”

 この歌詞すべてに反応した人は、間違いなく「必殺シリーズマニア」である。
 そう、決してファンなどではない。
 絶対に、そんな生っちょろいレベルではない筈だ!

 上に挙げたのは、それぞれ
闇の道」京本政樹(必殺仕事人V)
涙の裏側」三田村邦彦(新・必殺仕事人)
みちのく流れ旅」金沢明子(必殺仕事人)
 という曲で、本編内では未使用の挿入歌である。
 否、正確には「闇の道」だけ挿入歌ではなく、没主題歌なのだが。
 さらにさらに正確には、「涙の裏側」はメロオケのみの劇中未使用BGMが制作され、「みちのく流れ旅」も、1話冒頭の八王子・中村家の場面でアレンジ版BGMが使用されている。
 「闇の道」が使われていた記憶はないんだけど…もし使われていたらごめんなさい。
 また、この三曲はすべてB面曲で、順番に「哀しみ色の…(仕事人V挿入歌)」「想い出の糸車(新・仕事人主題歌)」「浜千鳥情話(仕事人主題歌)」のEPに収録されている。
 筆者は、当然アナログ盤でこれらを所有してはいるものの、やはりCDが欲しくてたまらない。
 まあ、最終手段としてデジタル音源化させて聴くという手もあるけど…やっぱり、ねえ。

 さて、いきなり「必殺シリーズ」の話にしてしまったが、今回は時代劇やドラマの主題歌の話。
 今更説明の必要はないと思うが、必殺シリーズは1972年9月から87年9月まで丸15年間続いた時代劇シリーズで、その後も断続的に作品が作られ、91年には全21回放送の「必殺仕事人・激突!」も制作されたが、現在は劇場版「必殺! 三味線屋勇次」で途切れたままになっている。
 小学一年生の時からこのシリーズにどっぷりハマっている筆者がこれについて書くと、それだけで専門コーナーが出来てしまうのでまたまた断腸の思いで割愛するが、とにかく「許せぬ悪を裁く、独自の正義感によるカタルシス」と「時代劇らしからぬ音楽」を導入し、それまでの時代劇のイメージをぶち壊しまくった名作群だと理解していただければ嬉しい。
 また、番組とそこに使用されたBGM・主題歌と区分して考える人が多いが、必殺シリーズはそれが出来ないほど密接な繋がりを持っており、シリーズを追求すればするほど、主題歌やBGM、またはそれに使われた楽器や演奏スタイルの追求、構成、または劇中での奇跡のような使われ方(音響演出)の分析へと、興味が移行していくのだ。
 なので、必殺シリーズで使用された音源の追及者は大変多く、またいずれも例外なくディープである。
 筆者も30年近く追い求め続けており、幸いにして主題歌はCD音源でフルコンプしているが、ここで紹介したもののように、どうしてもままならないものがいくつも残っているのだ。

 主題歌ではないが、他にも「西陽のあたる部屋(仕業人・西崎みどりバージョン)」「同(歌詞違いバージョン)」や「川田とも子・あかね雲(新・仕置人主題歌担当の川田氏と師・平尾昌昭氏による、シリーズ主題歌カバー&語り)」など、細かく突っつくと膨大な数の未CD化音源がある。
 中には、デジタル化どころかもう二度とお目にかかれなさそうなものも含まれているが、それでもマニアは欲しがるものなのだ。

 とはいえ、必殺関係の音源はたまにすごい事をしでかしてくれる事があるので、油断ならないのも事実だ。
 86年1月に発売された、1作目「必殺仕掛人」、2作目「必殺仕置人」、三作目「助け人走る」の代表的なBGMをアレンジした「THE必殺!」というLPが、近年突然CD化されてファンを驚かせたり、キングレコードが、全シリーズの主題歌・挿入歌・BGMをまとめた全16+1枚ものCDシリーズを展開したりと、誰も想像できない事が起こりうる。
 なので、その微かな希望に賭けたくなってしまうのは、もはや人情なのだ。
 もっともこのCD群を買えば、主題歌と代表的な挿入歌がすべて揃う、というほど生易しいものではなかった。
 「必殺仕事人III」挿入歌「忘れ草」、「必殺渡し人」主題歌「瞬間(ひととき)の愛」、「必殺仕事人V・風雲竜虎編」主題歌「愛は別離(わかれ)」などは収録されておらず、これらは別個CDを購入しなければならなかった。
 また当時、「瞬間の愛」は中村雅俊の限定版4枚組CDボックス「20th Anniversary」にしか収録されていなかったので、フルコンプ目的の場合、この一曲のためだけに一万円以上もの出費をしなければならなかった。
 もっとも、筆者がこれを買った後に、同曲が収録されたごく普通の定価のCDが発売されて、ものすごくヘコまされたものだが(笑)。

 必殺関連で思い出したのだが、「仕事人」シリーズ他で「飾りの秀」を演じた三田村邦彦が歌う、「透きとおる季節」という曲がある。
 
 これは、1983年4月20日から同年10月26日までNHKで放送された、「壬生の恋歌」という時代劇ドラマの主題歌だ。
 「ここに今 お前が居ても 俺は 俺は 行くだろう 胸の輝きが消えないうちに 透き通る季節の中へ」
 …というのがサビ部分の歌詞なのだが、記憶にある人はおられるだろうか?
 「壬生の恋歌」は新撰組の物語で、いまだにファンが多い名作だ(残念ながら筆者は少ししか見ていないが)。
 天下のNHKで流れた三田村邦彦の歌という事で、実は結構有名な筈なのだが、一向にCD化される気配がないまま、今日に至っている。
 そのタイトルの通り、透明感のある爽やかで静かな名曲なのだが…是非ともCD音源で聴いてみたいものだ。

 「ルパン三世」や「星雲仮面マシンマン」、「スペースコブラ」や「学園戦記ムリョウ」などの音楽を担当した大野雄二氏。
 日本が誇る実力派の作曲家で根強いファンの多い人だが、氏の作で「男と女がいて」という歌がある。
 これもマイナーながらも名曲で、未CD化が悔やまれる一曲だ。

 この曲は、1981年12月6日から1982年3月14日にNTV系列で全14回放送されたドラマ「俺はご先祖さま」の主題歌で…って、ちょっと貴方、何、呆然としてますか!
 まさか知らないなんてことは…え、知らない?
 当時は結構メジャーだったと思うんだけどなあ…って、もう23年前かよ(笑)。

 この作品は、週刊誌カメラマン・白石伴吉(石坂浩二)の下に、ある日突然、22世紀の未来から子孫のミミ(正式名はSAP333号。演じるのはこれが役者デビューのマリアン)がやってくるという、ドタバタ系の物話。
 未来の世界では、人間はすべてのものが徹底管理されており、指定された男女の生殖細胞から人工授精で誕生させられるというプロセスを踏まされているため、未来人は家族や、恋愛感情というものが理解できない。
 ミミは、それを研究するためにタイムマシンでやって来たが、まさか未来人と公表するわけには行かず、伴吉はやむなく、海外生活の長かった自分の妹であるという設定を施し、自分の下宿で預かる事にする。
 ミミは、伴吉が将来結婚する女性の名前が「ヨーコ」であるという事を家系図で知っており、やたらと「ヨーコ」の名を持つ女性との関係を迫る。
 別な名前の恋人(あべ静江)が、すでに居るというのに…。
 また、ミミは過去(白石伴吉にとっては近未来)の新聞を、データで(物語の舞台から)三年先の分までストックしているため、伴吉や同僚の飛沢(井上順)は、その記事を利用してスクープを獲得しようとやっきになる。
 現代についての知識も常識感も持ち合わせていないミミは、トンチキ極まりない行動を繰り返して周囲を混乱させていくが、やがてそのキャラクターが認められて行き、すっかり伴吉の妹として認知されていく。
 しかし、伴吉の本当の妹がやってきたり、ミミの「恋愛が理解できない」という発言が、極端な貞操観念の欠如と見なされて軽蔑されたり、あげくには、滞在期間超過のために未来からポリスロボット(津村隆。なぜか腰にはスーパー1のサイクロードが…)が処罰にやって来たり。
 最終的に、ミミは伴吉自身を好きになってしまうが、自らの意志で未来に戻り、かつて自分が予言した、ヨーコというハーフの女性(演じるのはやはりマリアン)と伴吉が結ばれる事を確かめる。
 …とまあ、こんなお話だった。
 超マニアックな話をすると、「うる星やつら」の濃いファンにとっては、挿入歌「心細いな」を唄ったヘレン笹野氏が、ミミの友達のミヨ役で登場している事でも有名だ。

 今でいうなら、ちょっと毛色の変わったトレンディドラマ的な位置付けにあった作品だが、これがなかなかバカに出来ない内容で、大変面白かった。
 キャラクターがやたら多いくせに、それぞれ個性がアピールされていて、しかも各個のバックボーンがきちんとあり、関係がわかりやすく、出された伏線や疑問点もしっかり消化されていて、驚くほど隙がない。
 カプセル食品しか口にしない未来人のミミが、現代の食べ物の美味しさに目覚めて暴飲暴食を繰り返すというエピソードが数回あったが、当時筆者は「カプセルだけで生きてたなら、食べ物なんかろくに消化できないんじゃないの?」と思わされた。
 そしたら、数話後にミミは突然ぶっ倒れ、その理由として「胃が退化していて食道とほとんど同じになっている(つまりろくに消化が出来ない)」という身体事情が提示され、物凄く納得させられた。
 ミミ本人は豆腐が大好物なのだが、これも、消化が良い食べ物だからという裏付けがありそうだ。
 このように、押さえるべき所をきっちり見定めて、しっかり押さえている内容だったのだ。
 とにかく、たった1クール+1話の間の放送作品だったなんて、信じられないくらいの情報密度だった。
 かなり登場キャラクターが多いのに、それぞれにきちんと個別エピソードが描かれているため、人物の混同が起こりにくいというのも凄いわけで。
 これだけの条件を満たした上で、作劇をしっかりこなしている作品は、現在どれだけあるだろうか?
 言うまでもないが、これはれっきとした一般向け作品で、決してマニア向け番組ではなかったのだ。
 「仮面ライダー○ギト」に、爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。

 最近、内容や演出がやたらスカスカな作品が増えたが、「○○ジャンルの作品だからしょうがない」とか「所詮○○番組だから」という、みっともないフォローが平気でまかり通るようになってしまった。
 でも、昔はこんな(どちらかというとショボめの)ドラマでも、骨子はしっかりと作りこんでいたのだ。
 そう考えると、やっぱり内容は昔に比べて劣化しているんだなあと思い知らされるばかりで……って、全然関係ないな、こりゃ。

 閑話休題。
 とにかく、今となっては知る人もほとんどいない「俺はご先祖さま」だが、その主題歌は大変な名曲で、作品の雰囲気にも大変合っていた。
 だから、この作品を見ていた人にとっては、どうしても外せないものなのだ。
 静かな曲調だけどメリハリがあって、歌詞もアダルトないい感じの内容。
 何より、メロディラインが素晴らしくて、思わず聴き入ってしまう。
 あんな名曲がCD化していないなんて…嗚呼、なんてこの世は世知辛いのだろう。

 さて、ここまで色々と、未CD化音源の話をしてきたが、逆に、「とてもCD音源化はされていないだろう」と思っていたら、実はとっくにされていて、思わず大歓喜というケースも多々ある。

 例えば、「はぐれ刑事」の主題歌、「陽かげりの街」。
 …はい、そこで藤田まことを思い浮かべた貴方はダウト!
 “純情派”ではなくて、タイトルは「はぐれ刑事」のみで、サブタイなし。
 1975年に放送された、平幹次郎と沖雅也様が主演なされている、渋すぎる刑事ドラマだ。

 ――は?
 沖様には「サマ」付けは基本ですが、何か?
 呼び捨てにしたら琉球空手と、超往復ビンタと超巨大ブーメランが炸裂しましてよ!

 誤って発砲した銃弾が、先輩刑事の脊髄を損傷し、その責任の重圧に苦しむ若手刑事と、それを許しながらも、より強い男になってほしいと願う先輩刑事の、渋熱い漢ドラマ。
 70年代中期の東京・下町の雰囲気を、これ以上ないくらい画面に表現しまくった、明と暗の程よく入り混じった珠玉の…って、褒めすぎかしらん?
 まあとにかく、これのオープニングとして使われている「陽かげりの街(ペドロ&カプリシャス)」は、アルバム内の一曲ではあるけどCD化されており、新品でも定価が安い“名盤”なので、かなり手軽に入手できる。
 あのサビ部分、いつ聴いても魂が揺さぶられる気がする。
 …ああ、あなたに逢いたいけど…流れて今日も行くだろう…。
 こんな小さな街を染めて、静かに朝日が今昇るわけだ(意味不明)。

 東宝創立50周年記念映画「南十字星」という作品がある。
 1982年のものだが、これの主題歌「南十字星(西条秀樹)」も、長い間CD音源化しなかった曲で、筆者は大変長い間焦がれ、捜し求めたものだが、数年前にやっとCD化された。
 いや、なんか変なアレンジの入ったCDだったら、結構早い時期からあったんだけど、やっぱり原曲が欲しかったのだ。
 これは、映画主題歌だから欲しかったのではなく、昔筆者が邦楽マニアだった頃に聴いて、心底惚れた曲だったものだ。
 当時はもちろんシングルも購入し、割れるほど聴いたくらいなので、このCD化は本当に嬉しかった。

 この「南十字星」は、映画の内容を知らなくても泣けるほどいい曲なので、機会があったら是非とも聴いていただきたい。
 ターンエーターンばっかり聴いてちゃいけないんだ!

 特撮作品になるが、1980年4月22日から同年9月22日まで、東京12チャンネル(現・テレビ東京)系で全18話放送された、「ぼくら野球探偵団」という番組があった。
 これはものすごくマイナーな作品で、また人気もないためほとんど知られていないが、当時にして主題歌がヘヴィメタだったり、堤大二郎が主演、宍戸錠やガッツ石松がレギュラー出演していたりと、色々話題が多い。
 この主題歌「マジカルアクション!!」と「I'm Dandy」は、実は未だに、円谷関連の特撮オムニバスCDに収録されないという、不遇な扱いを受けている。
 十数年前、円谷作品の主題歌・挿入歌・劇中曲・代表的なBGMなどを幅広く収録した30枚組くらいの限定版CDボックス(商品名失念)が出たが、それにすら収録されておらず、代わりにアレンジBGMがちょっと入っているだけという扱いだった。
 さらに、主題歌を歌う「ノヴェラ」自体のCDアルバムにも収録される兆しがまったくないという程の徹底振り。
 そのため、これのCD音源は完全に諦めるしかないと、筆者は一時期思っていた。

 ところが今から12年前の93年8月21日、突然ノヴェラが「シークレット・テイクス」という、それまで未CD化だったタイトルをまとめたアルバムを発表した。
 言うまでもなく、これには先の二曲がしっかり収められていた!
 特撮系CDばかりチェックしていたのでは、絶対見つけられなかったと思う。
 これにより、幻の曲がデジタル音源で手に入ったわけだが、この「シークレット・テイクス」自体、現在はすでに入手困難になっている。
 しかも、活動暦の長いノヴェラのディープなファンも欲しがっている物のため、中古品を巡る競争率も高い。
 まだまだ気軽に聴ける曲ではないようだ。

 ―――なんて書いてたら。
 誰だよ、こんなマイナーなのをカラオケでリクエストしたのは!
 HYPER-JOYにしっかり入ってるじゃないか!
 しかもこれ、結構最近だぞ?!
 誰も歌えねーよこんなの!(笑)
 どーせ入れるなら、ヴォーカルが途中で息切れ始めるエンディングの方を(まて)

 他には、「太川陽介の猿飛佐助」とか「斬り抜ける」とか、「ザ・ハングマンシリーズ」とか「プリンプリン物語」とか(笑)、色々なもののCD音源を発見している。
 ちょっとだけアニメの話になるが、鷹羽氏に尋ねられた「ノックはいらない(くりいむレモンのイメージソング)」も、実は単独でCD音源化されている事が判明し、筆者は現在探索中だ。
 あと、「笑福亭鶴光のオールナイトニッポン」で有名な元トリオ・ザ・ゴミの一員、松本明子のデビュー曲「♂♀KISS」も、CD音源を確認。
 一方、小森みち子の「リメンバー」や柳沢純子の「あなたに片想い」は、現在探索中。
 その他、「夏色のギャルソン」「キャラメル・ラブ」「パールライスは国の花」などは、探し方が悪いのかもしれないがまったく情報がつかめていない。

 このように、一見難しそうだけど、意外に音源化が果たされているタイトルもあるのだ。
 そういう意味で、この音源探求は、本当に面白いのだ。
 さて、筆者はこれから、どんな音源にめぐり合えるのだろうか?


 で、どなたか。
 「プリンプリン物語」のエンディングテーマ「ハッピーアドベンチャー」の完全版音源についてご存知の方はおられませぬか?
 この曲、一応CD化されてはいるんだけど、TVから録音されたショボい音源をそのままデジタル化したもののみで、綺麗な音源が存在しないようなのだ。
 ひょっとしたら、NHKのおバカのせいで永久消滅してしまった可能性もなくはないが…ああ、聴きたいなあ。


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