スーパー戦隊の秘密基地・地球署「特捜戦隊デカレンジャー」
 第5回  徒手空拳!
鷹羽飛鳥
更新日:2004年8月22日
 『デカレンジャー』には、早くも7人目の戦士が登場しました。

 6人目が地球署の署長であるデカマスターだったこともあって、7人目なのに胸の数字が6という面白いパターンになっています。
 それも、地球署の6人のようなアラビア数字ではなく、ローマ数字にして変化を付けているところが芸コマです。
 元々デカレンジャーの名乗りには、「1つ、非道な悪事を憎み…」といった数え歌系の部分がありますが、胸の数字が「100」のデカマスターは「百鬼夜行をぶった斬る!」ですし、「VI」のデカブレイクは「無法な悪を…」といった具合に、数えこそしないものの、ちゃんと数字に引っかけた言葉で名乗っています。
 8人目が出たら、やっぱり「な」か「しち」に引っかけるんでしょうね。
 それとも、また数字をすっ飛ばして「万」だったりして。


 さて、そのデカマスターとデカブレイクですが、アクションや武器の面でも5人と変化を付けようと頑張っています。
 基本が銃やスティックである5人に対し、デカマスターは日本刀型のディーソードベガを振るい、殺陣も時代劇的で重厚な動きです。
 このデカマスターの動き、スピード重視のスーパー戦隊系アクションを見慣れた目には鈍重に映るかもしれませんが、時代劇を見慣れていれば、重くても決してのろくはないということに気付くでしょう。
 構えたところで一旦止まり、一転して剣を一閃するなど、静と動、「溜め」と「決め」のメリハリを重視した剣劇であり、一撃に重みを感じさせるタイプのアクションなのです。
 時代劇系のアクションには、しのぎを削る鍔迫り合いとか、そこからパッと離れての睨み合いとか、睨み合いつつじりじりとすり足で移動したりとか、止まっていること自体が動きであるという見せ方になります。
 動き続けることばかりがアクションではないんです。
 逆に、こういう動きを見慣れている人が初めてほかの5人のアクションを見ると、“こいつら体重ないんじゃないの? 当たっても痛くないよ”と評します。

 『仮面ライダーBlack』では、アクション担当が以前のライダーシリーズの大野剣友会からJACになりましたが、その際、アクションのタイプが変わったことに賛否が分かれたものでした。
 大野剣友会は、時代劇の斬られ役などもやっていたところなので、そっち系のアクションですが、JACではトランポリンを多用したスピーディーなアクションだったからです。
 ちなみに『秘密戦隊ゴレンジャー』では、アクションを途中までが大野剣友会で、その後JACが担当しています。
 当初、アカレンジャーが新堀和男氏、後期で大葉健二(当時は高橋)氏になっていることは有名ですね。
 で、剣友会版『ゴレンジャー』のアクションは、スーパー戦隊系のアクションとはやはり違います。
 この辺も、鷹羽が『ゴレンジャー』をスーパー戦隊と認めない理由の1つです。

 『超力戦隊オーレンジャー』の後楽園野外劇場ショーで、ゴレンジャーとの共演がありますが、そこでもアクションの違いがはっきりと再現されていたことは、スーパー戦隊の秘密基地で書いたとおりです。
 これはアクションの方向性の違いであり、どちらがいいとか悪いとかではなく、一長一短なんですね。
 もっとも、前述の新堀氏は移籍して『バトルフィーバーJ』から『鳥人戦隊ジェットマン』までの歴代レッドを演じた人ですので、レッドの剣殺陣は結構時代劇的なところもありました。
 ともあれ、デカマスターについては、同じ番組の同じチームなのに、綺麗に差を付けたな〜と思います。


 一方、デカブレイクの方はというと、ほかの6人とは違い、警察手帳型のライセンスではなく変身ブレス(ブレスロットル)で変身、しかもスーツもデカベースからの電送ではなくブレスロットル内蔵のものを装着するという具合で、システムからしてスーツが別種であることを強調しています。
 これは、特定の警察署に属さず、宇宙各地に出没した特別指定凶悪犯を追うという特凶の行動様式からくる当然の要請であり、非常に納得できる違いです。
 いずれ、電波妨害等による変身不能といった展開になって、そんな中、デカブレイクだけが変身可能で突破口を開く、といった解決をしてくれたら大拍手ものですね。

 そして何よりも嬉しいことに、デカブレイクは武器を持っていません!

 ブレスロットルのグリップを捻ることで、スピードアップしたり、炎や雷撃などを左拳に宿らせて攻撃するという徒手空拳のアクションを見せてくれます。
 実は、手持ち武器を持たないヒーローというのは、スーパー戦隊のレギュラーでは初めてだったりします。
 まぁ、炎を宿した拳で殴るだけではなく、炎を飛ばしたり、地面に電撃を走らせたりといった遠距離攻撃も可能なため、距離を問わない戦いができるということもあって、イマイチ徒手空拳という実感に乏しいのも事実ですが。
 
 テレビヒーロー物の場合、当然作中に登場する武器や乗り物を商品として販売するため、武器を持たないヒーローは、それだけで商品の幅が狭まってしまい、企画されにくいという面があります。
 もちろん、劇場版作品やビデオ作品のように、“作品そのものが商品である”場合には、武器を持たせないことは簡単です。
 『仮面ライダーZO』なんかがそうですね。
 というより、劇場版の場合、そのためだけに商品を新規開発することの方が難しいんじゃないでしょうか。
 『ゴジラ』のような“元々映画シリーズ”ならともかく、今の東映の“テレビ番組の劇場版”方式では、かなり難しいです。
 なにせ映画公開中しか宣伝期間がないようなものですから、ソフビなどの廉価商品を除けば、『百獣戦隊ガオレンジャー劇場版』のガオナイト(ガオコング)や、『仮面ライダー555劇場版』のサイガ、オーガのベルトのようなマイナーチェンジならともかく、全くの新規アイテムなどが発売されることはなかなかありません。
 
 また、テレビ作品で武器を持たないヒーローの雄であるウルトラシリーズでは、防衛軍の武器や戦闘機を商品化することで商品点数を稼いでいます。
 ヒーロー以外が武器を持っていられるのは、敵が巨大だからです。
 怪獣相手に銃やバズーカ、戦闘機では大して役に立たないから、ヒーローが強いことに納得できるし、一応銃や戦闘機もそれなりに強そうに見えて、商品にできるのです。
 これが、等身大の怪人に撃ちまくって全然効かない銃では、商品として出しても売れません。
 等身大ヒーロー物で、ヒーロー以外の味方が特殊な武器を持っていることがほとんどないのは、そういった事情からです。
 巨大化する前の『シルバー仮面』には、白光銃や赤光銃といった武器が登場しますが、いずれも商品化されていません。
 
 単体ヒーローで武器を持たせないと、かなり辛いことになるという実例があります。
 1988年1月放送終了の『超人機メタルダー』も武器を持たないヒーローでしたが、主力商品を可動型人形とし、敵キャラの人形まで相当数発売することでコレクション性をアピールするという方向性で商品展開をしました。
 逆に言うと、商品展開を人形中心にしたお陰でメタルダーに武器を持たせる必要がなかったわけです。
 そして、それら人形用に、敵味方両方の基地が発売されましたが、いかんせん、肝心の人形が小さくて出来が悪いこともあってさっぱり売れず、結果的に3クールほどで放映打ち切りの憂き目を見ました。
 東映トクサツで、路線変更くらいならともかく、はっきりきっぱり途中打ち切りを食らった作品は、この『メタルダー』以降、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』しかなかったと記憶しています。


 そんなわけで、徒手空拳で戦うトクサツ等身大ヒーローというのは、非常に難しいのです。
 番組として考えれば、1996年放送の『七星闘神ガイファード』以降、徒手空拳ヒーローが主人公というテレビ作品はありません。
 あ、一応言っときますが、クウガやアギトは、武器を持つ形態にも変化するので除外しています。
 その前はというと、『メタルダー』の半年後に終了した『仮面ライダーBlack』です。


 ちなみに、主人公に限らず、ヒーロー側キャラの1人という条件ならば、徒手空拳のヒーローの例はその後も若干あります。
 『ガイファード』と同じ1996年放送の『超光戦士シャンゼリオン』に登場するザ・ブレイダー、『仮面ライダーアギト』に登場するギルスなどです。
 いずれも、複数ヒーローであるが故の“異色のヒーロー”です。
 今回のデカブレイクと同様、“ワン・オブ・ゼム”ですね。

 そのデカブレイクですが、既に7人目の戦士ということもあって、大型武器を商品として出しにくいのを逆手に取り、アイテムを変身ブレスのみに抑えるため、敢えて武器を持たせなかったのでしょう。
 しかも、そのブレスを特殊能力の源という扱いにすることで、装備に寂しさを感じさせません。
 これは、『555』で、デルタのベルトだけ追加装備がなかったことに通じますね。
 正直、ブレスロットルのデザインはもう少しなんとかならなかったのかと思いますが、作中での活かされ方は、なかなかいい感じです。
 
 
 また、増加メンバーがデフォルトメンバーと常に一緒にいるという展開は、これまで『超獣戦隊ライブマン』以外ありませんでした。

 デカブレイク:テツは、本来なら、立場上、別行動が多くなりそうなものですが、性格なのかどんな事件にも首を突っ込んでくるため、なんだか地球署に赴任して来たかのような印象を与えてしまうのは失敗だと思います。
 本来なら、方法論の違う5人に対し、上の立場からあれこれ文句を言って場を乱すべきキャラだと思うんですが。
 テツは、年齢の関係で5人を「先輩」と呼んではいますが、これまで5人の中でエリートとして描かれていたブルー:ホージーより遥かにエリートである特凶の所属ですから、年下であることが逆にエリート性を強調しています。
 警察学校首席卒業という肩書きのホージーに対し、幼少の頃から訓練を積んでスーパーエリートとして任官しているテツは、あらゆることをそつなくこなす天才肌として描かれているようです。
 なにしろ、「射撃はちょっと苦手で」と言いながら、「4発、外しちゃいました」などと言っています。
 変身後の武装には射撃はあまり関係なさそう(炎を飛ばすのも左手だし)ですが、苦手科目である射撃でさえ、二丁拳銃を武器とするレッド:バンより上手いんだから困っちゃいます。
 お陰で、ホージーは努力家ということに収まってしまいました。
 まぁ、その分、プライドの高さは努力に由来するものとして、人間味は増したようですが。
 テツ本人は、エリートであることを鼻にかけるでもなく、至って無邪気なので、この辺のズレを今後どう活かしてくれるかが楽しみですね。
 残念ながらテツは宇宙人ではないようなので、地球の風俗を知らないためのボケは期待できそうにありませんが、元々若者揃いのデカレンジャーの中で、飛び抜けて若い彼の若者っぷりに期待しておくとしましょう。
 
 初登場時は無茶苦茶強いのに、いつの間にかその他大勢化するのは増加メンバーの常ですが、デカブレイクの場合、武器を持っていないだけに、弱体化すると本気で弱く見えそうだから、絶対に弱体化しないでね。
 増加メンバーは、溶け込むほどに弱体化するものだから。

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