アバウトにめらんこりぃ 後藤夕貴
更新日:2004年8月26日
 自慢じゃないが、筆者は記憶力に自信がない。
 もちろん、頭脳がアホだという根源的要因は除いて考えても、どうやら元々集中力や観察力がないらしい。
 そのため、覚えているつもりでも見落としが多いようで、何かの記録について書く場合も、映像を何度も確認する必要があったり、ソース探しに苦労したりする。
 自分の記憶に従って何かを書いても、「あれ、これってホントにそうだっけ?」という猜疑心に襲われる。
 そんな訳で、筆者は、いつも半痴呆症状態で自らの記憶と戦っているのだ。

 が、しかし。
 その「記憶力のなさ」が、時には調子に乗ってとんでもない事をしでかす。
 ある物の事を、本来の姿とはまったく違うスタイルで記憶しているというもの。
 誰にでも多少はある事だが、昔のおぼろな記憶を引っ張り出し、現実のそれと比較してみると、なかなか大爆笑な発見があったりする。

 前置きが長くなったが。
 という訳で、ネタは「凄まじい記憶違い」の暴露話。
 色々思い当たる事が多いので、今回は映像作品編でまとめてみた。


 「仮面ライダーX」。
 他の人がなんと言おうと、筆者が一番好きなライダーである。
 この他にも、「最も好きなライダー」「一番だと思うライダー」「最高のライダー」「一番かっちょええライダー」「理想的なライダー」と多くの基準があるが、まあ細かい事は置いておこう。

 今更言うまでもないが、「仮面ライダーシリーズ」といえば、元々は“何者かの手によって改造人間にされた者が異形の姿に変身して戦う”というコンセプトだった。
 平成ライダーになって、かなりの数の例外も出てきたが、少なくとも「昭和ライダー」というカテゴリに分けられているものについては、「ライダーマン」以外すべて改造人間であった。

 だが、筆者は昔、Xライダーこと神敬介を「普通の人間が変身するライダー」だと信じていた事があった。

 理屈は簡単。
 Xライダーは、神敬介の素顔の上から、半分ずつレッドアイザー(マスク)をはめ込んでいき、最後にパーフェクター(口のパーツ)をはめるという変身スタイルだからだ。
 しかし、ご存知の通りXライダーは途中から「大変身」というのに切り替わってしまった。
 これにより、神敬介は一気にXライダーになれるようになってしまい、変身シーンのバンクからも、マスクを順番に装着する場面がなくなってしまった。

 ところが、なんと幼い頃の筆者は、これを「Xは敵に捕まって無理矢理改造され、途中から改造人間になってしまった!」からだと勘違いした。
 実際に、神敬介が改造されている場面を見た記憶もある。
 そのため、「最初は人間だったのに、途中から改造人間にされた杞憂なライダー」という認識が、筆者の心の中に刻み付けられてしまったのだ。

 Xライダーに詳しい方ならすぐにピンと来たと思うが、実はこの改造シーンとは「マーキュリー回路接続手術」の場面で、手術を行っていたのは先輩の仮面ライダーV3こと、風見志郎
 どうもこの場面だけを抜き出して、しかも話数を前後させて記憶していたようだ。
 もちろん、後にビデオで見返して誤解だったとわかったが、あやうくV3を、謎の秘密機関ゴッドの手先にしてしまう所だった。


 特撮ネタでもう一本。
 「レインボーマン」という作品がある。
 レスラー志望の青年・ヤマトタケシが、インドで聖人・ダイバダッタと出会い、彼の元で修行することによって超人レインボーマンとなり、第二次大戦時の逆恨みで日本を滅ぼそうとする外人軍団「死ね死ね団」と戦うという、説明文だけだとものすごくシュールな内容の作品だ。

 ヤマトタケシは、ダッシュ1からダッシュ7までの七つの力を発揮し、それぞれで個別の特殊能力を駆使して戦うのだが、これは今で言うところの「仮面ライダークウガのフォームチェンジ」に近いシチュエーションかもしれない。
 有名な、ターバンを巻いたような衣装はダッシュ7で、レインボーマンの基本体でもある。
 他の6つの姿は素顔がまったくわからないマスクタイプの姿なのだが、なぜかダッシュ7だけは役者の目元が露出している。
 そのためか、一目で「こいつは何か違う」と理解する事が出来たのだ。

 で、筆者は昔、この作品の根本的な設定を、ものすごく誤解していた。
 「ダッシュ7は、自分よりも“能力の劣る六人の仲間”と組み、七人で戦っている」というものだ。
 レインボーマンは、ダッシュ7だけを指して呼称するものだと思っていた訳だ。
 どういう理由から“他の6人の能力が劣っている”と判断したのかは、もう定かではない。
 で、実際にダッシュ2とヤマトタケシが戦っている場面を見た記憶があり、「絶対に同一人物であるはずがない」と確信していた。
 なので、何かの機会で本編を見る機会があっても、主人公の変身事情が全然理解できなかったのだ。

 レインボーマンは7人もいる筈なのに、他の連中はどうして出てこない?
 どうして、変身する奴は一人しかいない?
 ヤマトタケシが他のダッシュほにゃららに変身している? そんな事はありえないから、それは自分の勘違いだ! …ってな感じで。
 今にして思えば、「タケシはダッシュ7にしかなれない筈なのに、どうしてダッシュ4に?」とか、そういう疑問を抱き続けていたんだと思う。

 それから何年も経ってから、「実は全部一人が変身した姿だ」という事を知ったのだが、それはとても受け入れ難い事実だった。
 一時期など、「大勢の人がよってたかって自分をだまそうとしているんじゃないか」などという、超越的発想すら湧いてきた。
 雑誌媒体での宣伝スチールだって、七人揃って一度に写っているのが多かったんだもん! …って、今から考えると、あれってものすごく勘違いを併発するものだったんではないかとも感じてしまう。

 では、記憶の中にあった「タケシとダッシュ2の戦いはどういう事? おいらの脳内演出?!」と思ったら、この場面は間違いなく存在していた。
 …ダッシュ2、ダイバダッタが変身してんやん(笑)
 しかも、別に戦っていたわけじゃないし。
 こうして、筆者は泣く泣く現実を受け入れ(?!)、レインボーマンに対して「あ〜そうだよ、一人で七つに変身すんだよ! どーでもいいだろそんな事!!」というふて腐れた印象を抱いてしまい、その影響でいまだにレインボーマンが好きになれない(笑)。
 だって…ねえ。

 後にアニメ化されたレインボーマンでは、「ダッシュ1〜7が分身して合体し、巨大ロボット“レインボーセブン”になる」という、ほとんど冗談みたいな設定が出てきたが、これを見て筆者がわずかに溜飲を下げたというのは内緒である。



 「宇宙戦艦ヤマト」。
 なぜかよくわからないが、筆者はヤマトといえば、「最後は必ず敵に特攻して終わり」という結末を迎えるものだと信じ込んでいた事がある。
 多分、何かで聞きかじった「劇場版・さらば宇宙戦艦ヤマト」のラストシーン展開が刷り込みとして存在していたんだろうけど、そのため、劇場版公開の後に放送された「宇宙戦艦ヤマトII」のラストで、ヤマトが彗星帝国に突入する事なく終わってしまった事に、激しい憤りを感じた。
 「話が違うじゃないか! 納得の行く説明をお願いしたい!」状態である。
 この結末の違いに、当時、なぜかアニメ版のラスト展開を事前に知っていた父親と口論してしまった。
 しかし、よくわからないのが、どうも筆者は「一番最初のヤマトも、最後は特攻」と思い込んでいたらしく、「前作も特攻だったんだから今回も特攻しなきゃ!」と考えていたようなフシもある。
 毎回特攻して、また新しいパラレルワールドとして再開しているのが、後に続く続編だと考えていたのだ。
 だから「宇宙戦艦ヤマトIII」の第一話を見て、古代がかつての乗組員を集めているシーンで強烈な違和感を覚えたものだ。

 などと書いているが、一番わからないのは、やはりあの時代にしてネタバレ情報を握っていた筆者の父親だ。
 さすが「赤ん坊の筆者にマイティジャックの主題歌を睡眠学習させた」ツワモノ(本当)。
 なかなか侮れない人物である。


 「勇者シリーズ」。
 これが放送されていた頃、当然筆者はそこそこの年齢になっており、とても子供とは言えない年齢と体躯に成長していたが、それでも凄まじい勘違いをしていた。

 91年末の頃である。
 当時、勇者シリーズは二作目「太陽の勇者ファイバード」を放送していた。
 だが、筆者がこの作品を見始めたのは終盤も終盤で、すでにドライアスが従来の姿でなくなってしまっていた頃だった。
 本編展開を知っている人には、どれくらい終わり際だったかわかっていただけると思うが、とにかく、それまであまりトランスフォーマー系作品が好きじゃなかった筆者は、勇者シリーズも完全同系列と見なし、まったく見る気を起こしていなかったのだ。

 で、勇者シリーズに対して持っている断片情報だけで判断していた時期があるのだが、その当時は…

 勇者ロボットは、とにかく出てくる端から全部合体して巨大化するらしい

 …という、今から思うと噴飯物の見解を持っていた。
 もちろん、その後それは大嘘だったとわかったが。

 ところが色々思い返してみると、なぜ自分がそう思うようになったか、というきっかけがしっかり存在していた。
 ファイバードが好きで、当時懸命に私に奨めていた友人が「主役側のロボットが全部合体したんだ!」とのたまっていたのだ。
 今から思うに、その時はファイバードだけではなく、前番組のエクスカイザーもひっくるめて話していたのかもしれない。

 それで、いつのまにか私は「勇者ロボは、最終回には全部合体して敵のボスをぶちのめす作品なんだな」と信じ込んだようなのだ。

 で、てっきりファイバードもそうなのだと思っていた。

 しかし、その話をした当時、まだ勇者シリーズはたった2作品しか放送しておらず、さらに二作目はリアルタイム放送中なのである。
 最終回で全合体して決着などという力技が、まだファイバードで行われている筈がない。
 おかしいと思った私は、その時点からのファイバードを観て、さらにビデオを借りてきてエクスカイザーを遡った。
 エクスカイザーには、キングエクスカイザー、ドラゴンカイザー、ゴッドマックス、ウルトラレイカーなどが登場するが、とうとう一度も全合体なんかしなかった
 それどころか、全合体で決着をつけるなんてものよりも、数百倍燃え上がる展開で締めてくれた!

 …じゃあ、友人よ。
 ロボット全合体って、どこから持ってきたソースなんよ?

 という訳で、ファイバード終了後、再びこれのビデオを借りて全話観た。

 …合体してやがる(笑)

 本編内で、一度だけ、ファイバードの勇者ロボは全合体していたのだ。
 サンダーバロンを銃にして、それをスーパーガーディオンが構え、背後からグレートファイバードがさらに支えるというスタイルで。
 玩具ではまったく再現できなかったが(笑)、間違いなくやっていた。
 そうか、友人はこれの事を言っていたのか!
 んで、それを筆者が勝手に勘違いしていたと…。

 その後、猛省した筆者は都合三周回ずつくらいエクスカイザーとファイバードを観て、それぞれの最終回で号泣し、後に勇者ロボの玩具を全部揃えるまでに至ったのである。

 …友人よ、どうか許してくれい…(笑)。
 そして、その光景をはたから見ていたゆいな氏も、どうか記憶から抹消してくれい☆
 

 どうも、断片情報しかもっていない状態で、しったかぶりしている事が問題のようである。
 たとえどんなに雑誌や資料を読み込んでいても、実際の映像を見ていないととんでもない勘違いや偏見が生まれてしまうという事を、筆者は深く反省してこれからの人生に活かすのである。

 …誰ですか。
 「また同じこと、いつか絶対やるぞ」とか言って楽しみにしている人は?!


 次回、映像作品以外の「あばうとにめらんこりぃ」なネタを書き出して、人生の恥を晒してみようと思う(自爆)。



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