古物倉庫 第15回 ■ 永大 グリップレンド「No.8 ハンターゲーム」

2015年10月3日 更新

 今回は、ちょっと珍しいものを入手したので、いつもと毛色が違うものをご紹介。
 昭和40年代から50年代にかけて、ミニカーやプラモデル、また「グリップキャラクター」というキャラクター物のミニカー等を製造・販売していた「株式会社永大」という会社がありました。
 うちでも、過去いくつか商品を扱ったことがありますが、今回はそんな永大が販売していたゲームです。
 広義的な意味で語ると、現在のvitaや3DSのような携帯機の大先祖的存在といえる商品で、約35年以上という長い歴史を感じさせてくれる逸品です。
 というわけで、今回はその永大ゲームブランド「グリップレンド」から、No.8「ハンターゲーム」をご紹介します。

■ グリップレンド No.8 ハンターゲーム

 

 メーカー:株式会社永大※
 発売時期:不明
 当時定価:980円
 電源:単三電池2本使用 

※現存するリフォーム会社とは全く関連なし。

 筆者のおぼろな記憶では、77〜78年頃に発売された(?)商品です。
 この頃の携帯ゲーム……というか電池を使用する家庭用ゲームは、まだ液晶などは使われていなくて、否、基盤やLSIすらもなくて、非常にアナログな構造でした。
 本商品も、ただ単に「動く」「光る」くらいしか機能がなく、当然ながら音声も一切ありません(音は鳴りますが……後述)。
 とにかく、当時自宅で電気を使うゲームを楽しむ場合、こういったものしか選択肢がなかったという時代の産物です。
 今ではちょっと想像するのも難しいかもしれませんね。

 

 先にも触れた通り、永大とは1980年頃まで存在した玩具メーカーで、ミニカーやダイカスト(「キャ」じゃなくて、あえてこう書く)のキャラクター製品を製造販売していた会社なのですが、既に35年くらい前に倒産しているため、今では詳細情報が殆ど集められないという、半ば幻と化している企業です。
 70年代中盤から後半にかけての特撮やアニメ作品、海外作品のキャラクター商品化が有名で、「グリップキャラクター」はその代表例でした(画像の物が現物の一部です)。
 上の画像にある「ベニシャーク」のみ、レビューページがあります。

 

 パッケージ正面。
 大きさは、縦約16.3×横約11.3×奥行約6センチ。
 figma「渋谷凛 一般販売Ver.(約13センチ)」と比較すると、こんな対比になります。

 

 パッケージ側面・上部。
 下部も同じ印刷です。
 GL-8の下の「980」は、標準価格表示。

 

 パッケージ側面・左側。

 

 パッケージ側面・右側。

 

 パッケージは合わせ箱形式で、発泡スチロールの内箱に厚紙製の蓋がそのまま被せられている仕様となります。
 箱の内部形状から、本体以外の付属品はないように見受けられますが、詳細は不明です。

 

 蓋の裏側には、説明書きが記されています。

 

 本体を取り出してみます。
 購入時は汚れの付着や一部破損の補修跡があり、更に通電不可状態の所謂ジャンク状態でした。
 ひとまず、可能な限りクリーンアップ&修理を行いまして、プレイ可能な状態まで復元しました。

 

 プレイ内容は、いたってシンプル。
 本体下部の角丸四角型のハンドルを操作して、画面下側に表示されている赤い「ミサイル」の向きを操作します。
 本体下部・左側にある「FIRE」ボタンを押すと弾(?!)が発射され、画面上部を左から右に移動している動物に当てると、命中を示す赤い光が点灯します。
 以上、説明終わり。

 ――いや、マジでこれだけなんです。
 敵(ターゲット)からの反撃とか、ゲームオーバーとか得点とか、残機とか、そういった要素は一切ありません。

 

 現在の視点で見ると、ゲームとはとても呼べないようなシンプルさですが、これでも当時基準では、アーケードゲームの雰囲気を再現しようとした意欲作なのです。
 事実、この本体も当時のアーケード筐体の雰囲気をかなり再現しています(特にモニタの飾り絵や緑色とか)。

 1970年代のゲームセンターは、現在のようなメダルゲーやUFOキャッチャーもなければ、所謂TVゲームに属する物も殆どありませんでした。
 「ブロック崩し」や「スペースインベーダー」等が台頭し、ビデオゲームのスタイルが確立する以前のゲーセンは、大きな筐体にバックライトで照らし出された実体の的を狙って撃つとか、手前に向かって回っているベルトコンベアに付いたミニカーに当たらないように自機(これもミニカー)を左右に動かして避けるだけとか、どちらかというとエレメカに近いアナログな構造・構成のものが中心でした。
 敵も背景も自機も、映像ではなく総て実体が(筐体の中に)存在していたわけです。
 当然、凝ったゲーム性など存在せず、せいぜい一定時間内にどれだけ点数を稼げるとか、或いは多少のタイムエクステンドを得続けてどれだけ長くプレイできるかを競うくらいでした。
 本商品は、その時代の……所謂「忘れられた時代のゲーセン」の雰囲気を、家庭に持ち込もうと考えられた商品と云えます。

 ただ、そういった事を考えたのは、何も永大だけではありません。
 似たようなアナログ型ゲームは他社も開発しており、FL管を利用したLSIゲームが台頭してくるまでは、こういったゲームは本当に良く見かけました。
 いずれ機会があれば、その頃の商品をまた別途扱ってみたいと思います。

 

 さてハンターゲームですが、画面の上寄りには四種類の動物のシルエットが印刷されたフィルムが内蔵されていて、これが左右各一本ずつ配置されたロールの回転により、左から右にスクロールするという仕組みです。
 この画像は、ワニですね。

 

 こちらは、キリンのシルエット。

 

 こちらは、豹またはメスのライオン?
 猫科という以外ちょっと特定が難しいシルエットです。

 フィルムのロールは、内蔵されたモーターで巻き取られ、右から左に送られループします。

 

 こちらは、象。
 何となく、セガの「トランキライザーガン」を思い起こさせる?

 

 画面下寄りの部分には、所謂「自機」に相当するミサイルが表示されています。
 これは、ミサイルの「型」を通してライトの光が下から照らしているだけで、赤色は色つきフィルムのようなものです。

 

 FIREボタンを押すと、弾が発射され……と言いたいところですが、発射された弾や弾道は表示されません。
 弾道上に動物のシルエットがあれば、画面上部中央に命中を示す爆発マークが点灯します。
 勿論、命中音などの効果音は一切なし。
 命中判定は相当曖昧で(詳細は後述)、正直当たってなくても命中扱いになるし、当たってもスルーはしょっちゅうです。

 

 先の通り、このゲームには点数表示もなければ、ゲームオーバー要素もありません。
 電池が持つ限り、或いは飽きるまで、ひたすら延々と動物達をミサイルで一方的に攻撃(虐殺)し続けることが可能です。
 このゲームに限らず、グリップレンドの他シリーズも、どうやら同じような構成らしいです。
 今の視点では確かにチープですが、当時のこういった玩具ゲームの中には、ゼンマイ動力が止まるまでプレイ可(当然光らない)とか、もっと凄いのがあったので、実はこれくらいの構成は充分アリでした。
 その上で、当時価格980円という安価もあって、当時基準でも非常にリーズナブルな価格だったので、とてもありがたい商品だったと思われます。
 もっとも、まだ現在のような家庭用ゲームの概念が生まれる遥か前のものですので、カテゴリ的には電動玩具に限りなく近い認識のされ方だったかもしれません。

 

 その後に登場した後輩達との比較。
 エポック社ポケットデジコム「モンスターパニック」と任天堂ゲーム&ウオッチ「マンホール」、カシオ「ソーラーシャトル」です(いずれも完動品)。
 サイズ的にはこれらに近いものですが、カテゴリとしては、どちらかというとFL管LSIゲームの方が近いと思います。

 

 さて本商品は、改造には至らないレベルで手を加えていますが、せっかくなので内部構造解説も含めて、軽く触れてみたいと思います。

 今回の物は状態はそこまで良いものではなく、画面プレート上にはセロテープによる補修の跡があり、これのせいで一部茶色く変色を起こしていました。
 また、かなり長い間電池を入れっぱなしにしてあったようで、液漏れを経た金具への不純物付着による導通不良が発生(※詳しくはこちら)。
 更には、ハンドルとボタンの動きもおかしい様子だったので、結局全部分解して状態を確認する必要が生じました。

 まず本体表面に付着した埃やらゴミを除去&ウェットティッシュで払拭。
 表面はプラ素材なので、特に強力な洗剤などは必要なく、あっさりと綺麗になりました。

 

 画面プレート右側のセロテープは、時間が経っているため糊が変色してシール表面(台紙)を侵食していましたが、幸い面積が狭く、またセロハン自体が劣化して剥げ易くなっていたので、デザインナイフをテープと台紙の隙間に差し込んで削ぎ落とすように除去しました。
 その際、台紙のシールが剥げてしまいましたが、これは「テープのり」で画面プレート上に再接着。
 正直なところ、近年の製品であるテープのりの劣化具合がどのようなものになるか未知数なのですが、他の接着剤やペーパーセメントによる接着後の劣化は良く理解しているので、それ以外のもので…となると、現状筆者の手元にはこれしかないという相対的な選択だったわけです。

 

 分解した本体の内部構造は、特に痛みや破損はなかったのですが、FIREボタンの根本がハンドルの基部にある歯車と噛み合っている構造で、これが外れていたので再調整。

 

 FIREボタンが押されると、二枚の金具が接触して通電され、ハンドル基部と一体化しているミサイル(縦長の赤いフィルム部)先端にある金具まで電気が通ります。

 

 動物が描かれていたフィルムには、下の方に丸い穴がいくつか開けられています。
 ここにミサイル先端の金具が接触することで(※FIREボタンが押された時のみ)、フィルム下に敷かれた板状の金具に通電し、爆発マークのランプが点灯するという仕組みです。

 このフィルムは、破損も劣化もなかったのでそのまま使用することにしましたが、画面上に写らない上部の穴(フィルムの上下に必ずあるアレ)が、ごく一部千切れていました(これは支障なしと見て放置)。
 一番の問題である導通ですが、配線を見たところ断線やハンダ付けの剥離は見られず、基盤もないのでショートが発生した可能性はないと判断。
 本体向かって右側に収まっているモーターも、特に問題ありませんでした。

 

 やはり、非常に単純な導通の問題と判断し、電池金具を確認したところ、金色の端子部が青黒く変色していました。
 これを紙やすりで適当に磨いてみると、変色部が削れて見事に金色の下地が露出。
 単三電池を入れてスイッチを入れてみたところ、やかましいくらいのモーター駆動音が鳴り出しました。
 
 最後に、見た事もないくらい古いデザインの電池を廃棄。
 一体何年物だったんでしょうか…

 

 以上、グリップレンドNo.8「ハンターゲーム」でした。

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【買ってみて一言】

 とっても懐かしい、ゲーム機を語る上で割と重要なポジションにあるタイプの商品だと感じていますが、今この時代に巡り合えた幸運に驚いています。

 今回の商品は、近所のOFF HOUSEにたまたま立ち寄った際、ショーケースの隅にポツンと置かれていたのを見止めて購入したものです。
 商品自体は、本発売時にも知ってはいたのですが、当時は「ちっさい」「古臭い」という認識のせいで購入したいという気は起きませんでした。
 まあ、この感想は今でもさほど変わらないのですが、今となっては懐かしさも手伝って、とうとう購入した次第です。

 尚、パッケージの側面には購入時に貼られたテープが付いていましたが、赤地に白文字で「SEIYU」と。
 最初に買った人は、袋とかに入れてもらわずにテープ直貼りしてもらったようです。
 そんなにすぐに箱を開けたかったんでしょうかね、微笑ましいです。

 随分遊んで、大事にされていた痕跡が所々に見られるこの「ハンターゲーム」。
 及ばずながら、今後は筆者が大事に、大切に引き継がせて頂きたいと思います。

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