第4回 ■ 百獣戦隊ガオレンジャー「パワーアニマルシリーズ」2

2002年2月3日 更新
2010年11月17日 一部画像再撮影
2010年11月27日 ガオハンター画像再撮影

百獣戦隊ガオレンジャー 超合金 パワーアニマルシリーズ QUEST-02

4.百獣合体(&魔獣合体)DXガオハンター 定価5,000円

  • ガオウルフ
  • ガオハンマーヘッド
  • ガオリゲーター
  • 取扱説明書
  • シール

●ガオハンターの設定面:

 ガオハンターは、ちょっと変わった設定を持って登場した、事実上の3号ロボ。
 6人目のメンバー・ガオシルバーが一人で3体のPAを召還し、それが合体する事で誕生する。

 しかし、当初ガオシルバーは「デュークオルグ・狼鬼」という敵として登場しており、その際は邪悪な怨念を利用したパワーを使いこなしていた。
 もちろん3体のPAも悪の存在だった。  番組内でまだガオハンター相手に戦っていた時期は『DX魔獣合体』という表記の特別パッケージで発売されており、第二期生産分より『DX百獣合体』というおなじみのものになった。

▲ 左:ガオハンター・イビル時 右:ガオハンター・ジャスティス時

 ガオハンターは、敵だった時と、解放されて味方になった後とでフェイスデザインが変わっている。
 当初は狼を模した邪悪な表情であったが、後にヒーローロボ的なフェイスになる。
 これは両方とも、単一の玩具で再現出来る。 狼顔をぐいと引き上げ、顎パーツを下にさげると口の中からギャラクシーメガ風味のフェイスが出てくるようになっている。
 どちらでも好きな方で飾れるので、これは大変嬉しい。

 ガオハンターの構成は

  • 左腕→ガオウルフ
  • 右腕→ガオハンマーヘッド
  • 頭部・胴体・脚部(残り全て)→ガオリゲーター
  • 武器:リゲーターブレード→ガオリゲーターとガオハンマーヘッドの尾が合体(合体するシーンはない)
    クレセントブーメラン→ガオウルフの尾を流用

 狼鬼時は、半月状の黒い短刀(名称不明…児童誌などにあるかな?)に3体のガオの宝珠をはめ込み、これを笛として使う事で“魔獣”召還。
 ガオシルバー時は、専用武器「ガオハスラーロッド」でガオの宝珠をビリヤードのように射出して召還。
 この際、狼鬼の笛と同じ音が鳴る所がオシャレ。
 ガオシルバーになってからの召還は、PA達にとってさぞかし痛かったに違いない。
 
 唯一下半身の換装が不可能な精霊王であり、両腕のみの組み替えでバージョン違いを構成する。
 敵の時にもガオレンジャー側のPAを洗脳して合体、戦った事がある。

  • 初期通常形態→“ガオハンター・イビル” 必殺技「天地震撼ビーストハリケーン」
  • ガオジュラフ→イビル時にガオハンマーヘッド(右腕)と換装→“ガオハンタースピアー” 必殺技「精霊貫徹ネックスラスト」
  • ガオベアー・ガオポーラー→イビル時に両腕と換装→“ガオハンターダブルナックル” 必殺技「精霊炎滅ベアーストライク」

※この他にも、洗脳したガオエレファントのソード&シールドを装着したパージョンもあるが、玩具では再現不能。

▲ ガオハンター・ジャスティス

▲ ガオハンター・イビル

▲ ガオハンター・スピアー

▲ ガオハンター・ダブルナックル

  • ガオシルバー覚醒後形態→“ガオハンター・ジャスティス”
    必殺技「悪鬼突貫リボルバーファントム」「天地震撼ビーストハリケーン」「ハンター聖獣球」
  • 特殊形態→“ガオハンター・ブルームーン”
    必殺技「月下咆哮ブルームーンハート」

※このうち“ガオハンター・ブルームーン”はちょっと特殊な限定版として発売されたため、別項にて紹介。

 クレセントブーメランとフィンブレードを装備。
 フィンブレードはちょっと構えづらい。

●前評判:

 ガオハンターは、「魔獣合体」版が2001年6月30日、そして「百獣合体」版が7月下旬の発売だった。
 ガオキングなどの時とは違い、比較的早い時期から「初回分はパッケージが異なる」という情報が流れていたためか、結構な数のコレクターさん達が注目していた感がある。
 いわばガオハンターは、ガオレンジャー超合金商品展開全体の縮図的なものを持っていたとも言えるだろう。

●概要

・ガオウルフ:

 ガオハンターの左腕を構成(尻尾は胸のプレート&武器になる)

 狼鬼&ガオシルバーのメインパートナーであり、全身銀色という思い切ったカラーリング。
 基本体はガオタイガー等の流用で、背中や下腹部のプレート(合体時の肩)の模様と頭部、そして尻尾の着脱ギミックだけが異なっている。
 非常に精悍な作りで、かなりカッコイイ。
 スタイルだけなら、4つ足PAの中では個人的にナンバー1ではないか、とも考えている。

 面白いのは、首部分が2重関節になっており、ガオタイガー等よりも可動範囲・表情付けの幅が広い事。
 下をのぞき込むような動作の他、合体時には手首を内側に回し込むような可動も出来、非常に素晴らしい。
 惜しむらくは、下顎のパーツが上顎側にめり込んでしまいやすい事だが、これは他にもガオイーグルなどでも起こるようで、ガオウルフ特有の欠点という訳ではなさそうだ。
 他にも表面塗装が剥げやすいという問題があるが、これは塗料や素材の関係で仕方ないといえるだろう。

 尻尾は個別武器“クレセントブーメラン”として利用できるが、これをガオウルフがくわえた時に落ちにくいよう、ちゃんと上顎の牙が収まる穴があいているのが嬉しい。
 この穴は、ガオハンターの胸パーツとして固定する際の穴とも共通であるため、非常に合理的だ。

 ガオウルフは、流用ボディで構成されている割にはガオタイガー等との印象混合が少ないという、ある意味理想的な造形である。
 とにかく表面の傷に気を付けて、ちょっと高い所に“遠吠え”を模したポーズを取らせておくと、なかなかに素敵。

・ガオハンマーヘッド:

 ガオハンターの右腕を構成(尻尾はリゲーターブレードの一部に合体)

 まさか撞木鮫がモチーフになるとは思っていなかったので、その反動も手伝ってか、かなりのお気に入りになってしまったPA(サメ系全部好きとの噂)。
 残念ながら本編では、その特徴的な頭部を生かしたアクションは見られなかった。
 ただの頭突きだもんなあ。
 ガオジュラフ並の“往復ビンタ”が見たかったような…いややや、話が反れるゾ。

 ハンマーヘッドは、下腹部プレート(合体時の肩)の模様と頭部先端の形状、そしてあるジョイントが異なるだけで、残りのほとんどはガオシャークの流用である。
 ガオシャークの目の位置から先端にかけての青い部分(に相当する所)を大幅にカット、そこに新造のハンマーヘッドパーツが接続されている。
 他にも、若干顎下の車輪を引き出しやすくなっている感がある。
 全身が赤紫のラメカラーに統一されており、色合いが似ているとはいえ外した尻尾(フィンブレード?)をガオシャークと間違える事はない。
 頭部形状以外でもっともガオシャークと違うのは、口の中の武器ホールド用ジョイント。
 フィンブレードの端をひっかけるだけだったガオシャークに対し、ガオハンマーヘッドはリゲーターブレードを横からくわえて固定するため、音叉のような二股の形状になっている。
 ここにガオリゲーターから外した尻尾を挟んで加える訳だが、なかなかにホールド力が強く、滅多な事では外れない。
 ただしホールドが強すぎて、おかしな位置でリゲーターブレードを構え続けていると、自重によってブレードのグリップ部分がひん曲がり始めてくる。
 以上の理由から水平に構えて飾る事はお勧め出来ないが、垂直に構えるには非常に適している(口そのものはダランと開いてしまうのだが)。
 コツとしては、リゲーターブレードの底部分をガオハンマーヘッドの目の突起にひっかけるように飾るというものがある。
 こうすると、立ち飾りの時にさらに保持力が高まるようだ。

・ガオリゲーター:

 ガオハンターの頭部・胴体全部を構成(尻尾はリゲーターブレードの本体として使用)

 ガオファルコンやDXガオライオンと並ぶ、最大クラスのPA。
 なんと全長が40センチ弱にも達し、それまでに発売されたすべてのPAに比べて圧倒的な存在感をアピールしていた。
 本編内ではガオウルフがメインだったようだが、商品的にはまちがいなくこちらがメイン。
 上顎と下顎が連動して開くギミックをはじめとして(開口幅10センチ!)、変形時には意外と多彩な動きを見せる。
 ガオリゲーターとしての可動は、口以外は尻尾の若干の可動程度に過ぎないが、変形過程の脚部の動きや、PA時にはグリーンメタリックのボディが、ガオハンター時にはブルーメインに変わるという配色バランスは秀逸と言って良いだろう。
 
 ただし、前足の処理だけはどうしても不満が集中する。
 PA時は、両腕のジョイントを保護するカバーの役目を果たしているだけで、合体時はそのまま背後に折り返し、リゲーターブレードのマウントラッチ
になる…という触れ込みなのだが、正直マウントの安定感は最悪で、ほとんど「余りパーツに無理矢理存在理由を付加しました」的な印象が拭えないのが残念だ。
 また、この部分は合体時に背後方向に飛び出てしまっているため、非常に他所にぶつけやすい。
 一応負荷がかかると破損する前に外れる仕組みになっているようだが、難がある事は否めない。
 本体厚みが約5センチなのに対し、マウントを含めると10センチにまで達してしまう。

 合体後のスタイルとしては、ある程度玩具的なフォルムなのは仕方ないとしても、なかなかのプロポーションを維持している。
 足の短さがさほど気にならないのは、ポイントが高い。
 ガオハンター頭部は、ガオリゲーターを展開させた時のデフォルトポジションでイビルフェイス、上に引き出すとジャスティスフェイスのポジションとなる。

 残念ながら、必殺技「天地震撼ビーストハリケーン」や「悪鬼突貫リボルバーファントム」のポーズは一切取れなくなっている。
 リボルバーファントムはやむを得ないとしても、ビーストハリケーンが出来ないのはかなり悲しい。
 ガオリゲーターのフェイスを持ち上げ、ガオハンターの頭部の長さを微調整、本体底部に耳を引っかけるようにしてうまく固定できれば「なんちゃってビーストハリケーン形態」を取る事は可能だが、肝心のハンターフェイスが隠れてしまうため、どうしてもとなるともはや改造しかないようだ。

 リゲーターブレードは4段関節で構成されているが、先端2カ所が可動・回転可能で、3つ目は無可動(単なるパーツの境か?)。4つ目はガオリゲーターの尻尾としてのうにょうにょ可動用関節で、真横にしか動かない。
 さすがに全体が回転…という訳にはいかないようだ。

 ガオの宝珠用フィギュアは、ガオハンターのセットには付属していない。
 別商品の「ガオハスラーロッド」に付属しているためだ。
 宝珠を全部揃えるためには、なりきり武器まで買わないとならないと。
 うまく出来てるなぁ。

●展開

 実際には、玩具自体よりも「狼鬼はその後どうなる?!」といった方向に皆の興味は集中しており、ガオハンターはそれにぶら下がるような形で話題になっていたに過ぎなかった感が強い。
 あらゆるメディアにも「戦隊初・敵合体ロボ」と紹介され、本当に(これまでのパターンを破って)最後まで敵に徹するのか、それともやはり…といった憶測が交わされていた。
 それにちなみ、まだ商品が発売される前の頃は、ジャスティスのフェイスの有無にまつわる様々な見解が各所で見受けられた。
 あげくには「フェイス違いで別商品で発売される」なんて情報まで流出していたくらいだ。
 いちはやく「魔獣合体」を購入していた人はこの論争の解答を先に知っていた訳で、こういったやりとりを高見の見物する権利(?)を獲得していたとも言える。

 商品発売後は初回生産分を巡る争奪戦らしきものも発生せず、おだやかにそれなりの期間を乗り切ったようだ。
 ギミックそのものは他のセット物に比べて乏しいものの、本編内でのガオシルバー人気にあやかって、それなりに売れたようだ。
 こういう登場をしたロボットの中では、歴代最高の人気だったのではなかろうか?
 
 やはり番組終盤頃にはほとんど店舗で見かけなくなってしまい、まだ残っている所は珍重されるケースもあったようだ。

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5.百獣合体ガオハンター・ブルーリゲーターバージョン(限定) 定価5,000円

  • ガオウルフ
  • ガオハンマーヘッド
  • ガオリゲーター・ブルーバージョン
  • 取扱説明書
  • シール

●ガオハンター・ブルーリゲーターの設定面:

 40話のみに登場した、ガオハンターの一時的な強化形態。
 本編内での名称は「ガオハンター・ブルームーンモード」。
 「ブルーリゲーターバージョン」というのは、商品の名称に過ぎない。
 まあどちらでも間違いじゃないのだが、便宜上「ガオハンター・ブルームーン」で構わないと思う(以下もこれで統一)。
 独自の必殺技として「月下咆哮ブルームーンハート」等がある。

●前評判:

 関東・中部・関西地方の玩具問屋グループ『JP21』。
 ここが企画した限定品…であるというのが、この商品「ガオハンター・ブルームーン」の触れ込み…というか事前情報だった。
 どうやら流通・問屋限定という事自体は本当らしいが、どこまで真実なのか明確な裏付けは取れなかった。
 まあ、別に疑う必要もない情報だと思うんだけど。
 ただ、この「問屋流通限定」というあまり聞かない販売形式は、コレクター達を緊張させるのに充分な効果があったようだ。
 
 各方面では、流通経路情報…つまり「○○では販売しない筈」「いつもみたいに○○では買えない」等の話題が盛り上がり、ブラックガオキングの時以上に盛り上がった。
 もちろん、限定とはいえほんの一部の色替えバージョンに過ぎないという事もすでに広まっていたため、一部ではこういった“限定版の乱立”に立腹する人達も多くいたように感じられる。
 そりゃあそうだろう。
 問屋が企画した限定…という、テレビ本編の展開にはまったく無関係の流れで発売される訳だから、そう解釈されたとしても仕方がない。
 ブリスタートイなどでむやみやたらと量産される“リペイントバージョン”などに怒りを覚えるタイプの人は、特にイライラしていたのではなかろうか?
 少なくとも、第一印象は全体的にそんな感じだった。
 そういった複雑な心境渦巻く中、問題の発売日が近づいていったのである。

 ところが、そんなある日「ガオハンター・ブルームーンは本編内でも登場する事が決定」という、さらなる情報が流れた。
 
 これによって、場合によっては無視する事も出来た筈のブルームーンも、正式にコレクションに加えなきゃならなくなってしまった人が大勢発生。
 販売開始と同時に、この商品は予想通りの争奪戦になった。
 ちなみに、流通関係のその後の事情はよくわからなかったのだが、「○○では買えない」という事は結局ほとんどなく、どこでも一応購入する事が出来たらしい。
 情報によると、まず絶対入荷しない筈だったトイザラスでも発売し、各個人商店でも販売した(実際、筆者は年明けに個人商店で購入している)。
 普通に玩具問屋とやりとりしている所であれば、仕入れる事は至って普通に出来たようである(こちらは業者確認しました)。
 争奪戦も落ち着き始めた頃、実は“生産数そのものは結構多かった”事が判明し、所々でまだ品物が残っているという情報も交錯した。ひょっとしたら、ひょんな所にまだ残っていたとしても不思議ではないかも。
 まあ、事前情報が猛威を振るった、という好例だった訳だ。
 
 もちろん、この後「DXガオライオン」「DXガオゴッド」という二大最終新規商品の争奪戦が待ちかまえているのだが、この時点では、まだそれらに対する極限の緊張感は漂ってはいなかった…と、思う。
 ブルームーンの発売は、2001年11月。本編登場よりもかなり早い時期の発売だった(登場はクリスマス前)。

 最後の二大新商品は、12/8以降に発売を控えていた…

●概要

 「DXガオキング」と「DXガオキング・ブラックバージョン」以上にノーマルとの違いが少ない本商品。
 ガオウルフとガオハンマーヘッドは、「どーせだったらこっちも色替えしてくんねーかな?」と思わず考えてしまうくらいに変化ナシだった…(泣)。

 という訳で、唯一変化のあったガオリゲーターのみ。

・ガオリゲーター・ブルーバージョン

 厳密には、本編ではガオハンター合体後にブルームーンモードに変化した都合から、この形態は存在しない事になっている。

 てっとり早く言えば、

  • PA時背中側のメインカラーだったメタリックグリーンが、全部ブルーカラーに変化
  • 銀色彩色部分のほとんどが、金色に変化」「ガオリゲーター頭頂部が濃ブルーラメに変化
  • ガオハンター・ジャスティスの瞳がグリーンラメに変化
  • ガオリゲーター裏腹部も青に変化

という程度で、造形的な部分に一切の違いはない。
 まあ、表裏ともどもブルーとゴールドに染まったようなものだ。

 ただそれだけの違いなのに、思いっきり印象が変化してしまっているのは面白い。
 全体的な色の統一がさらに際立った事と、ガオリゲーターの鼻っ面のラインがゴールドになったため、ボディ中心に大きな金ラインが挿入されたからだろう。
 ブラックバージョンのように、遠くからもすぐに区別がつくほどの決定的な違いはないが、気に入った人向けのセレクトとしては良い方なのではないか。
 
 不思議なもので、当初ブルームーンに難色を示していた筆者は「正直どうでもいい」状態だったのだが、いざノーマルガオハンターを入手した途端、突然購入欲求に駆られてしまった。
  ガオハンターの造形自体には人それぞれ好き嫌いがあるだろうが、だいたいにおいて“色彩の統一”がもう少し計られていたら…と考える部分はないだろうか?
 少なくとも、そういう事をちらりと考えた人にとっては、それなりに魅力的な存在となるだろう“ブルームーン”。
 しかし、わざわざ血眼になって探す必要があるかどうかは…ま、これも人それぞれかも。
 どこかでふと見かけて、ゆとりがあったら購入してみるのも良いアイテム、といったレベルを逸脱していないのだが、残念ながらもはやそんな事を行うのは難しくなってしまった事だろう。

●展開

 ガオハンターブルームーンについては、「ガオリゲーター色違い」と「限定騒ぎ」くらいしか話題がないので、ちょっとだけ他の方面からアプローチしてみよう。

 ガオレンジャーのDX超合金シリーズはこの後さらに争奪戦を白熱化させていく事になるが、これについては理由がある。
 今回に限っては「マニア人気」「お子様人気」がかなり高い位置で両立してしまった事が原因だ。

 クリスマス商戦向けに大量に増えた筈の商品が、クリスマス当日にはほとんど店頭から姿を消していたという本末転倒な結果となり、「クリスマスになったら買ってあげるからね」とうかつに子供と約束してしまったがために、血眼になって探しまくるお父さん・お母さんなんかもいたようだ。
 しかし、さすがにこのブルームーンがそういう人達のターゲットになったという話は聞かない。
 もちろん子供用に購入した人もいただろうが、もっぱらコレクターだけが注目していたようで、発売直後にそれほど売場が殺気立つという事はなかったらしい(逆にいえば、この後の商品では殺気立っていたわけだ…)。
 お子さん自体、何かの理由で40話を見逃していたら全然存在が分からない訳だからね。

 ヤフーオークションなどでは、だいたい7,000〜10,000円前後を目指して出品されるケースが多く見られたが、やはり最初からその辺りを提示していたものには入札があまり入らなかったらしい。
 むしろ安値からスタートした物の方が入札が集まり、結果初期価格が高い出品者よりも高額になるケースも見られた。

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6.百獣合体 DXガオナイト(トイザラス限定発売商品) 定価8,000円

セット内容:

  • ガオコング
  • ガオイーグル
  • ガオシャーク
  • ガオバイソン
  • ガオタイガー
  • ガオエレファント・ブラックバージョン
  • マッスルアンカー
  • ガオの宝珠用フィギュア×2(ガオコング・ガオエレファント)
  • 取扱説明書
  • 台座
  • 特別製下敷き
  • シール

●ガオナイトの設定面:

 2001年9月22日封切りの劇場版『百獣戦隊ガオレンジャー〜火の山、吠える』だけに登場した、かなりイレギュラーな精霊王。
 異世界の伝説にあるPA・ガオコングが復活し、それがガオイーグル他を呼び寄せて合体に至る。
 全精霊王の中で、唯一の6体合体である(ガオエレファントは百獣武装コードで合体したものではないため、デフォルトの一体とする)。
 基本的にはガオマッスルのバージョン違いなのだが、かなり印象が異なる。
 一時的にピンチに陥り、ガオゴッドに助けられるもののかなりの攻撃力を有しているらしく、必殺技「森羅万象ビッグバン・バースト」は、放出したエネルギーによって刀身が巨大化したエレファントソードで、敵をめった斬りにする大迫力の技だ。
 また、敵に背を向けたままで合体したり、すれ違い様に居合い抜きの如き高速斬撃を加えたりと、他の精霊王ではお目にかかれない“着ぐるみだから出来る殺陣・演出”をたっぷり魅せてくれた。
 筆者最高のお気に入りで、かつ一番最初に購入したPAである(そして、ここから…すべてが始まった)。

●前評判:

 ある日突然、降って沸いたかのように発売情報が広まったという面白い経緯がある。
 発売は2001年11月21日だが、それまでこういった情報をチェックしていた筆者にとっても、かなり唐突な印象が強かった。事実、筆者は掲示板のお客さんからの報告でこれを知ったというパターンだった。
 そういった訳で、一部の先行情報を持っていた人達以外は騒ぎたくても騒ぐに至れない状況だったようだ。
 これについては、むしろ発売後の反応の方が面白かったといえるだろう。
 なにせ、セットの中にはネットオークションを騒がせた曲者・ガオコングが含まれているのだから…

●概要

 DXガオナイトは、実はこのセットを購入しなくても作る事は出来る。
 DXガオキングとガオエレファント、そしてPAスペシャルという唯一のブランド名を持つ商品「ガオコング」を持っていれば良いのだから。
 このセットは、そういった意味でも本来あまり需要がないものの筈だった。

 しかし、現実には「PASPガオコング」と「ガオエレファント・ブラックバージョン」の需要が予想以上に多く、結構な人気商品になったようである。
 それは、当初各店舗(もちろんトイザらスに限られるが)に山のように積まれていたのに、最終的には店頭だけでなく通販サイト上からも消滅した事が物語っている。

 合体後のプロポーションは(これもまた)かなりのもので、ガオマッスルを引き締めたようなボディラインがなかなか格好良い。
 これはガオシャーク&ガオタイガーを合体させる事で体躯の幅が狭まったための効果であるが、それだけでガオキングともガオマッスルとも異なるラインになるのはさすがと言おうか。
 また不思議な事に、他の精霊王だとやや大降り過ぎると感じられるエレファントソード&シールドの対比に、ほとんど不自然さが感じられない。
 元々大きな上半身であるため、ガオキングの時みたいに“装備品に負けている”感がないためだろうか。

 ガオイーグル&ガオシャーク&ガオタイガー&ガオバイソンは、前回紹介したものと完全に同じ物なので、ここでは割愛させていただく。

 「特別製下敷き」は、このセットにのみ付属するもので、パワーアニマルシリーズのどこまでを集めたかがチェックできるようになっている。
 もちろんこの商品発売までのPAが対象なので、DXガオライオンは掲載されていない。

・PAスペシャル・ガオコング 定価2,000円

 ガオナイトの頭部・胴体を構成

単品販売セット内容:

  • ガオコング
  • マッスルアンカー
  • ガオの宝珠用フィギュア/取扱説明書

 ガオコングは、他の単独販売PAとは大きく異なり、事実上たった2ヶ月未満しか発売されなかった。
 2001年9/14発売(との話)だったが10月中にはすでに見かけなくなっており、11月では完全に手遅れとなっていた。
 発売当初はものすごい量の陳列だったのだが、あれが全部完売してしまったのかと思うといまだに信じられない気すらする。
 そういった状況を見た人は「まだしばらく大丈夫だろう」と油断して買い時期を逃し、後で大泣きするハメとなったらしい。
 思い返してみれば、ほぼ同時期の発売だった「ブラックガオキング」の方に興味が集中していたようにも思い出される。
  かくいう筆者も、このパターンだった。

 商品概要に移ってみよう。
 ガオコングは、造形上は完全にガオゴリラと同様。
 ボディカラー(成形色)がグリーンラメから赤に変更されただけで、それに伴う若干のカラーリング変化を除けばほとんど違いが見当たらない。
 劇場版では一切使用していないにも関わらず、ガオゴリラの武器「マッスルアンカー」がついてくるくらいだ。
 つまり、ガオコングの代わりにガオゴリラを使用すれば、「ガオナイト2Pカラー」が容易に作れるという事だ。
 …と言いたいが、実際は「なんちゃってガオナイト」止まりだろう。
 実は唯一大きく違うポイントがあり、それが“ガオナイトのフェイスデザイン”であるためだ。
 ガオナイトの頭は、ガオマッスルの顔の上に西洋鎧のバイザーを思わせるカバーが乗っているデザインで、かなり特徴的である。
 顔としての表情が見えないため、大胆不敵なイメージすら感じてしまう。
 まだ「仮面ライダー龍騎」のデザインが公になっていなかった頃、そのデザインを知っている人が知らない人に説明する時「ライダーの顔の上にガオナイトみたいなマスクが…」といった説明がよく行われたという(本当?)。
 ちなみにガオの宝珠は、ガオゴリラのものと同型だが、金色の材質に変更されている。 

 さてガオコングだが、人気はともかく発売環境はあまり良くなかったようだ。
 これは売れ行きの事ではなく、あくまで販売状況の事。
 筆者が訪ねたいくつかの個人玩具店で聞けたエピソードとしては、

  1. 「もう同じのを持ってるでしょ!」と親にたしなめられ、ガオコングとガオゴリラの違いを説明しつつも無視されて、結局買ってもらえなかった子供
  2. 「〜の誕生日に買ってあげる(同・クリスマス)」と言われてその場は引き下がったが、後で品物がなくなって結局手に入らなかった子供
  3. 1と同じ理由で、ガオゴリラとガオコングを一緒に買ってもらえず、涙の二択を迫られた子供
    (どうやら口約束段階ではOKをもらっていたらしい)
  4. 「どーせセットで出るから」と、無理矢理諦めさせられた子供

というのがあった。

 3と4はちょっと特殊だが(4の子供はこのセットを買ってもらえただろうか…心配)、1と2はシャレにならないくらいよくあったケースらしく、特に1はすごく痛々しい。
 もちろんこういう場合、お店の方が子供の側に立って商品説明をしてあげられれば理想なのだが、残念ながらそこまで綿密な商品知識を持っている個人商店の店員は少ない。
 せいぜい「多分違うらしいですよ」といった程度の説明が関の山だろう(店員がマニアックでない限り)。
 この場合、結局子供が泣きを見る結果に終わってしまうらしい。
 一つや二つの出来事ではなく、何回も各所で大なり小なり発生していたというのに驚かされる。
 
 考えてみれば、PAは数こそ多いものの金型の流用によるバリエーションがかなりある。

  • ガオゴリラ=ガオコング
  • ガオシャーク=ガオハンマーヘッド=ガオソーシャーク
  • ガオタイガー=ガオウルフ=ガオジャガー
  • ガオバイソン=ガオバッファロー
  • ガオライオン=ガオレオン
  • ガオイーグル=ガオコンドル
  • ガオベアー=ガオポーラー=ガオパンダ*
  • ガオジュラフ=ガオディアス

 このうち「ガオジュラフ&ガオディアス」は首や頭部、ツノ、脚部などに大きな特徴の違いがあるためまだ別物として認識しやすく、またその他のものもセット販売のうちの一つに過ぎなかったから、同型とはいえ混乱を招く事は少ない。
 しかしガオコングとガオゴリラだけは、それぞれ単体販売が存在するただ一組の同型PAなのだ。

 2にしても、販売時期限定という形式にかなりの疑問を感じてしまうエピソードだ。
 劇場版はアギト共々かなりの成功を収め、特撮番組の映画化という媒体にしては珍しくロングランで上映された。
 つまり、映画の本来期間…一ヶ月を遙かに越える期間、子供達の目に触れる機会があった事を示す。
 さらにガオナイトは、テレビとはまったく異なるタイプの殺陣・かっこよさをたっぷり魅せてくれた。
 これなら、おもちゃが欲しがられても当然と言えるかもしれない。
 単純に、全部集めたいという願望によるものもあるだろうけど。
 それなのに、肝心の玩具の販売形態がこれでは、全然欲しがる層に行き渡らない。
 パッケージのどこにもそういった情報は記されていないし、商品宣伝媒体でもそんな事には触れていない。
 「ブラックガオキング」や「ガオハンターブルームーン」等と違い、一般販売の顔した限定版として登場した事になる。
 これが番組終了間際の登場…というならまだわからなくもないが、まだまだ新商品発売の機会に溢れた時期である。
 これを求めていた人達の間に、相当な混乱があっただろう事は想像に難くない。
 
 その後、限定とはいえ「DXガオナイト」が発売された事によりガオコング騒動は一段落着く事にはなるが、それまでの展開はまさしく“激動”だった。
 ネットオークションでは高値設定の出品が並び、いつもなら流れるだろう雰囲気の条件でも入札者が入り、まさしく“是が非でも”状態が連発していた。
 また、在庫がまだ残っている店舗情報を売買する連中まで出現し(筆者はガオコング関連でしか見ていないが)、意図的であるにせよないにせよ混乱をさらに発展させていた感は否めなかった。

・ガオエレファント・ブラックバージョン(「DXガオナイト」にのみ付属)

・ガオエレファント 定価1,500円

 エレファントソード&シールドに分離変形/ガオシャーク&タイガーを腕とする精霊王に合体

 ブラックバージョンについて記すよりも先に、その原型となったノーマル版から触れてみたい。
 なにせメインPAの中で唯一の単品商品だから。

 ガオエレファントは、「DXガオキング」と同時に2001年3月31日に発売された。
 すでにこの段階から、ガオキング等のDX系との連携を前面に押し出していた訳だ。
 商品の位置付けとしては、前年度『未来戦隊タイムレンジャー』の「DXタイムロボ」に対する「タイムフライヤー&レンジャーセット」みたいなものだったのだろうか。

 変形も合体も、かなりのクセがある。
 まず象の鼻部分を90度回転させ、前半身と後ろ半身を分離させる。
 すると、なんと頭部分を突き抜けていた鼻パーツがズルリと抜け、ソードの刀身が露出する。
 角度を付けている都合で折れ曲がった刀身をカチッと接続、胴体に対して垂直に立たせると、ソードが完成する。
 この時、PA形態時の時はふにゃふにゃだった鼻に芯が通って、かっちりとそそり立つギミックはなかなか秀逸だ。
 どうやらワイヤーとバネが鼻(刀身)内部に通っており、これの根本が引き起こされると引っ張られ、ふにゃふにゃを引き締めるようになっているらしい。
 PA時に変な角度に曲げて遊んでいたりすると、延ばした後の座りが悪くなるという欠点があるにはあるが、なかなか興味深いギミックだ。
 
 しかし、デカイ!
 とにもかくにも、意外にデ・カ・イ!!

 ソードの刃渡りだけで、合体時の上半身以上の長さがあるというのは、なかなかに感動的だ。
 その代わり、前年度までの「対比が妙に小さいメイン武器」という図式を越える事は出来るが。
 PAの大きさを揃えたためか、ガオキングなどに百獣武装させると「武器に持たさせれる」感が強くなってしまう。
 それなりの体躯の精霊王でないと、バランスが悪くなってしまうかもしれない。
 やはり事実上は「ガオナイト」や、次回に触れる「ガオケンタウロス」用の存在なのかもしれない。

 一方ブラックバージョンだが、前回触れた通り「ブラックガオキング」と同様のカラーリングが施されており、組み合わせた時の一体感はなかなかのものになる。
 もちろん先程から触れてる大きさの問題はあるが、この組み合わせに限ってはさほど問題が感じられないような気がする。
 ただし、本来「DXガオナイト」のセットの一つであるため、本当ならばガオナイトに装備させるのが本道…なんだろうなぁ…やっぱり。
 それだと、カラーリングバランスはあまり誉められたものではなくなってしまう。
 でも、どう考えても狙っていますねえ。

 要であるガオコングさえ押さえていれば、「DXガオナイト」のセットを購入しなくても問題がない事は先にも触れた。
 つまり、いくら限定と銘打ったとしてもこれを購入する層は“バラ売りとセットは別商品と考えるマニアさん”か“ガオコングを買い逃した人”に限られてしまう。
 だとすると、わざわざ商品化する事に懸念が生じる。
 もっと多くの人に、このセット商品を購入させる気持ちにさせる“牽引力”が必要だ。
 …そういった結論から、ガオエレファントのブラックバージョンが制作されただろう事は想像に難くない。
 ひょっとしたらもっと別な理由もあったかもしれないが、だいたいそんな範囲なのではないだろうか?

 そして、誰もが予想していた事態も当然発生する。
 ネットオークションでは、ガオナイトセットから抜き取られたブラックガオエレファントが、何故か大量に出品されていた。
 だいたいの相場は、最盛期で一体4000円前後平均だったようだ。
 オークション価格を実際の販売価格と比べるのは愚の骨頂かもしれないが、本体の半分くらいというのはある意味凄い。
 「DXガオナイト」自体がなくなってしまった今となってはそれなりに意味はあっただろうが、本商品が山積みだった頃からこういう流通があった事を考えると、色々と複雑な印象である。
 まあ、店舗限定だから必ず買える訳じゃなし、ブラックのために他の品物まで買う気がない人も多いのだろう、という事で納得する事にした。
 うーん、でも、わざわざこのためにセットを買って、そこから抜いたのかな…? 

 ガオエレファントはPAシリーズナンバー1と銘打つだけあって、比較的早い時期に生産終了、その後は生産分を長期間かけて販売していた。
 実はさりげに後半登場の精霊王作成に必要だという事もあり、ある時期を境に突然市場から姿を消してしまった感すらある。
 ガオケンタウロス登場とほぼ同時に追加生産を行った(…らしいが、裏付けナシ)ガオファルコンが、ものすごい品余りを見せてしまった事を考えると、全体的な在庫の流れを計算した上での展開だった事が推察出来る。

 ガオファルコンの事は、とりあえずおいといて。

●展開

 「PASPガオコング」と「DXガオナイト」の話でまったく事情が異なっていたのだが、ガオナイトは突然出てきて突然消えた…という話に収束してしまうため、ここではもう少しだけガオコングに触れてみたいと思う。

 先に触れた通り、ガオコングの商品展開はお客だけでなく店舗にも大きな影響を与えたようだ。
 ガオコングだけが原因ではないのかもしれないが、とにかくPAを巡る商品問い合わせないしは品不足から来るクレーム対応はかなりの数にのぼったようで、規模の小さな個人商店は、かなり辟易させられたようだ。
 
 ここしばらくの「スーパー戦隊」や「仮面ライダー」、またアニメ等のキャラクターグッズは、1年未満で需要のスパンが切り替わる。
 つまり、実際には10ヶ月あるかないかの期間で、そのシリーズの人気がとぎれてしまうという事を意味する。
 3月頃からメイン商品の販売が(各番組のスポンサーより)発売され、その10ヶ月後の1月頃に安売りが見られるようになる事を考えれば、これは信用できるデータだと考えられる。
 個人商店や、長い間経験を積んで来た業者などはこれを充分熟知していて、年末が近づくにつれて商品発注数を調整する。さもないと、年始以降に在庫をダブらせてしまい、うかつな安売りも出来ないまま無駄に商品を陳列し続けるハメになる。
 そして、結果各店舗の倉庫行きとなるわけだが、店舗にとってこれはとても怖い事だ。
 こういう流れを避けるため、それぞれに独自の工夫や調整があるという訳だ。

 ところが『百獣戦隊ガオレンジャー』はこのパターンを大きく逸脱した商品展開を行い、経験豊富な業者だけでなく、限定物などの流通パターンに詳しいマニアの予想をも覆してしまった。
 しかも大人気だったという(本来嬉しい筈の反応)事実も手伝って、展開に対応出来ない業者と、一方的に問いつめる購入者…という悪循環パターンが発生してしまったという図式だ。
 これについては後にまた触れるが、とにかくこういった問題点が浮上し始めたきっかけが「PASPガオコング」辺りであった事を、まずは記憶に留めておいていただきたい。

 「ガオコングが限定だったなんて、こっちは全然知らなかったよ! もし知っていたら、それなりの対応したのに」

 これは、筆者がお話を伺ったとある業者さんの言葉だ。

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●総括

 次回第3回ではいよいよ「DXガオゴッド」「DXガオライオン」などの“事実上の限定販売品”を扱うため、その前に“限定品”について簡単にまとめておきたいと思う。
 ちなみにこれが、前回ちょっとだけ記したPAシリーズ最大の問題の一端でもある。

 PA関連商品は、とにかくやたらと“限定”という言葉がつきまとった。
 流通限定、店舗限定、第一次生産のみ…パターンは様々だったが、とにかくやたらとそんなのが多かった事は間違いない。
 一応限定と銘打っている商品は「ブラックガオキング」「ガオハンターブルームーン」「ガオナイト」「ガオコング」の4種類。
 現行放映作品のキャラクター玩具シリーズとしては、異例の多さだ。
 以前『超獣戦隊ライブマン』の放送時期、それまでの戦隊ロボットの復刻版が一通り販売されたのだが、現行商品の中に限定はなかった。
 そう考えると、やはり凄い事なのだ。

 ただし、「ブラックガオキング」みたいに“ある程度違った年齢層”をターゲットとしていた商品ならいざ知らず、それ以外のものは本来のターゲット層が限定版であるという事にすら気付かない可能性だってあるのだ。
 この場合「ブルームーンなんかパッケージに堂々とステッカー貼られてるじゃん、わからない奴がアホなんちゃう?」という理屈は通用しない。
 実際に商品を目の当たりにするのではなく、入手前から欲しい商品についての購入タイミング等を考えてしまうのが、本来一般的な姿だ。
 玩具を欲しがる子供や、それに買い与える立場の親御さんが、限定版という意味を意識している事は少ない。
 というよりも、そういう物に品数制限があるなんて普通考えつかないものだ。
 いざ買いに行ったら物がなく、言われた事が「実は限定だったんです」では、怒ったとしても無理はない。
 実際にそういうケースもかなりあったらしいので、やっぱシャレになっていなかったのだ。
 問題は、そういう勘違いが発生しやすい環境ばかりだったという事なんだけど。
 ましてや「ブルームーン」のステッカー表記は「特別版」で、さらに誤解を招きかねない表現な訳だし。
 
 たとえば、上で挙げた商品はテレビCMでは一切宣伝していない。
 つまり、これの商品が出ているという事実は、おもちゃ屋に直接出向くか、一部の児童誌の広告などをみるしか知る術がないとも言える。
 もちろんマニア向け雑誌にも記載されている情報があるし、そっちの方が正確さは高いだろうが、それらがすべて本来のターゲットに伝わるものではない。
 こういった事から、トラブルが各所でしかも何回も発生してしまったというのが、『百獣戦隊ガオレンジャー』関連商品のもたらした重大な問題だった。
 これにより、子供・親・マニアの三つどもえの争奪戦が開始され、年末の「ガオゴッド騒動」に至るのだが…それについては次回。
 
 こういった背景から、少なくとも個人玩具店のキャラクター商品の認識は、さらに辛いものになってしまったようだ。
 もちろん、全部が全部そうだとは思わないけど。

 ただ、商品供給側にとって問題だったとしても、過去と比較して非常に消費者側が盛り上がっていた事は事実であり、「限定版」というものがその片棒を担いでいただろう事は否定できない。

 実際、クリスマスの時期を前後して各所の玩具売場はかなりの盛況ぶりだったらしく、なんとなく残ってしまいそうな傾向の商品すらも姿を消してしまった。
 もちろん「ガオレンジャー」だけが影響を及ぼしていた訳ではないが、そう感じられる事は多々あった。
 事実上、クリスマスの遙か以前に新商品展開が停止した「仮面ライダーアギト」と比較してしまうと、益々そう感じられてしまうのだ。

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